【作品#0197】学校(1993) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

学校

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

1993年の日本映画

上映時間は128分

 

【あらすじ】

 

とある夜間中学校を舞台に、先生と生徒の交流を描く。

 

【スタッフ】

 

監督は山田洋次

脚本は山田洋次/朝間義隆

音楽は冨田勲

撮影は高羽哲夫/長沼六男

 

【キャスト】

 

西田敏行(黒井先生)

竹下景子(田島先生)

田中邦衛(イノさん)

萩原聖人(カズ)

裕木奈江(みどり)

中江有里(えり子)

渥美清(八百屋)※特別出演

 

【感想】

 

山田洋次監督による「学校」シリーズの1作目。山田洋次監督による構想から15年以上の時を経て実現した規格である。田中邦衛の演じたイノさんにはモデルがあり、松崎運之助による書籍「青春 夜間中学界隈」が下敷きになっている。

 

「こんな先生いるよな」という先生を西田敏行が好演。彼が授業を始めるともうそれはただの芸術である。歌を口ずさむ場面もあり、彼の芸達者ぶりが遺憾なく発揮されている。彼の姿を見た生徒が「将来学校の先生になりたい」と言う辺りに、本作が夜間中学校にスポットを当てて存続、拡大させたいと言う思いを感じるし、その生徒が憧れるだけの説得力が西田敏行には間違いなくあった。そして、西田敏行演じた黒井先生がこの学校に来る最初の場面は校長との面談であった。過去にも異動の話を断ってきた黒井先生が「この学校に居続けたい。自分の思いを根付かせたい」と語るのは、映画を見終えて振り返ると、この夜間中学校のことを言っているのだと感じる。この夜間中学校の存在をこの世に根付かせたい、その思いをこの主人公に託しているのだ。

 

それから、回想シーンで最も尺を取って描かれたのはイノさんだった。彼を演じた田中邦衛はやや仰々しいキライこそあるが、彼以外には考えられない役だった。特にオグリキャップについて先生を差し置いて生徒たちに語り始める場面は大きな印象を残す。強いて言えばこの場面での彼の語りには観客を引き込む大きな力があったので、途中で実際の有馬記念の映像を挟まなくても良かった。彼の語りだけで十分に画が浮かんできたし、彼の語りを長回しで捉えてほしかった。あとは、焼肉屋でハガキを黒井先生が持っているという疑問に気付いた時の表情の変わり方が絶妙。事態に気付いて酒の酔いも醒めて優しそうな笑顔から真顔になる瞬間は忘れ難い。

 

そして、ラストはイノさんが亡くなったという知らせを受けて、ホームルームで「幸せについて考える」というシーンになる。この「幸せについて考える」というテーマで話し始めるのはやや唐突であり、蛇足にも思える。特にイノさんが幸せだったかは観客も回想シーンの中で十分に伝わったと思うので、敢えて彼が幸せだったかについて話す必要はなかったように思える。まして、映画の最後にこのような場面が入ると、説教じみた印象になるし、実際ややそのようにも見える。ただ、本作が「幸せ」という誰もが当たり前になれる、目指せるものについて真摯に向き合おうとした姿勢は評価したいし、学校教育を終えてから道徳的なことを受動的に学ぶ機会がなくなる大人にとっては、まさに本作自体がその道徳のような存在であるとも言える。

 

ラストは黒井先生と田島先生が校門を出たところでその開いた校門が映りっぱなしのままエンドクレジットが流れ始める。校門は開かれている。どんな人にでも受け皿はある。ややベタな終わらせ方だが、本作のテーマや監督のメッセージを考えるとこの上ない終わり方だった。

 

【関連作品】

 

「学校(1993)」…シリーズ1作目

学校Ⅱ(1996)」…シリーズ2作目

学校Ⅲ(1998)」…シリーズ3作目

十五才 学校Ⅳ(2000)」…シリーズ4作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

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【ソフト関連】

<DVD>

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映像特典

├山田洋次監督 自作を語る