今回取り上げるのは、ダボス会議において行われた「日本」をテーマとするセッションである。この会議はテレビ東京との共催で実施され、その内容はテレビ東京によってYouTube上に公開されている動画として視聴可能である。登壇者には日本の片山財務大臣をはじめ、豪州の元首相、国内外の企業経営者が名を連ね、形式としては「日本経済の現状と将来」を国際社会に説明する場であった。
https://www.youtube.com/watch?v=Bou7c3eI7sc
結論から言えば、ここで語られた日本像は、国際会議という場の性質を色濃く反映した、政府目線のきわめて楽観的な物語であり、国内で生活する人々の実感とは大きな隔たりがある。
1.片山さつき in Davos
ダボス会議のような国際政治・経済の舞台では、「日本」とはほぼ自動的に日本政府を意味する。ここで語られるのは、家計や労働者、地方経済ではなく、財政運営、国家戦略としての産業政策、そして地政学的な立ち位置である。
これは日本固有の問題ではない。米国でも欧州でも、国際会議において語られる「国の姿」は、常に“政府の政府による政府のための”日本の姿勢である。生活水準の低下や家計の逼迫といった論点は、構造的に議題から外れやすい。
今回のセッションも、その例外ではなかった。
若者支持率56%という「空気の数値」
片山大臣は、若年層の政治への信頼が56%に達したという数字を示し、日本社会に新たな楽観が広がっていると述べた。しかし、この種の支持率は、実質賃金の持続的上昇や可処分所得の改善と結びついたものではない。
多くの場合、新政権発足直後の期待、「変化が起きている」という演出、そして国際舞台での肯定的評価、等によって生じる短期的な高揚感である。実体を伴わない「祭りの空気」と言ってよく、これをもって日本経済の基調判断とすることはできない。
プライマリーバランス改善の実像
片山大臣は、日本のプライマリーバランスが改善していることを強調した。しかし、この点についても重要な前提が語られていない。日本では長年にわたる異次元の金融緩和によってインフレが進行し、その結果として名目税収が増加している。
すなわち、プライマリーバランスの改善は、政策努力の成果というより、インフレを通じた実質的な増税の結果である。しかもインフレや間接税は、低所得層ほど負担が重くなる。財政指標の改善と国民生活の改善は、必ずしも一致しない。
この帰結が、**Engel係数28.6%**という数字である。これは過去40年間で最悪水準であり、同時期の米国(16.4%)と比べても、日本の生活の余裕が大きく失われていることを示している。
この事実を前にして「これから積極財政に転じる」と語ることは、政策転換ではない。それは、これまでの無策にも等しい財政拡大策を肯定的に言い換えているにすぎない。
2.今さら積極財政とは何を意味するのか
——本当に日本は、これまで積極財政ではなかったのか
今回のセッションでは、日本がこれから「積極財政」に転じるかのような語りがなされた。しかし、ここで一つの根本的な疑問が生じる。日本は、これまで積極財政ではなかったのか?結論から言えば、その否定は成り立たない。
日本はすでに長年にわたり、異次元の金融緩和、国債発行を前提とした財政運営、資産市場を強く意識した政策対応を継続してきた。問題は「積極か否か」ではない。どの主体に対して積極だったのかである。実態を見れば、日本の財政運営は一貫して二重構造を持っていた。
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金融・資本市場に対しては極めて積極的
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一方で、家計・実体経済に対しては抑制的
この矛盾を最も端的に示しているのが、消費税の新設と度重なる税率引き上げである。消費税とは、形式上は「消費」に課される税であるが、その実体は付加価値税である。すなわちそれは、「価値を加える」経済活動そのものに広く網をかける税であり、生産・流通・サービス・労働といった実体経済のあらゆる段階にコストとして作用する。
日本は、異次元の金融緩和を続けながら、同時にこの付加価値税を新設し、さらに税率を引き上げるという政策を実行してきた。これは、経済を刺激する政策と、経済活動を抑制する税制を同時に進めるという、きわめて特異な組み合わせである。結果として、
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株価は上昇した
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名目税収は増えた
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しかし生活コストも同時に上昇した
そして上の図にしめしたように、Engel係数の先進国最大値という結果、つまり国民は食うのがやっとという事態になったのだ。
おわりに
今回のダボス会議・テレビ東京共催セッションは、国際社会に向けた「国家としての日本の説明」としては整合的である。しかし、それをそのまま日本経済の実態評価とみなすことはできない。
国家の数字が改善していることと、国民の生活が良くなっていることは、もはや自動的には結びつかない。
この二つを峻別すること――それが、今回のセッションを読む上で最も重要な視点である。
(本稿は、筆者の思考整理および文章構成において、OpenAI ChatGPTの協力を得て作成した。)

