ポワゾン

Mon, February 04, 2019

テーマ：映画

2001年　アメリカ映画

監督：　マイケル・クリストファー

原題：　Original Sin

原作：　ウィリアム・アイリッシュ『暗闇へのワルツ』

～若き日のアンジェとバンデラスの画力に釘付け～

WOWOWにて録画鑑賞。なんとなく「デスペラード」からのアントニオ・バンデラス続きです。これ、むかーしDVDレンタルで観て主演二人のムンムン溢れる色気に「うぅーん、大人の泥沼恋愛ドラマだ！」とまさに別世界を眺めるようだったのを覚えています。よほど刺激が強かったのか(笑)、妙に記憶に残ってて、去年もふと思い出してなんとなくもう一度観てみたいなぁ～なんて思っていたタイミングでした。原作小説があったんですね。

19世紀キューバ。ハバナの監獄で死刑囚の女性が最後の告解の為に訪れた修道士を相手に語る「愛の物語」。キューバのコーヒー貿易で成功したハンサムな富豪と、アメリカからやってきた彼の美しい妻の、波乱万丈の激しい生き様。

ビジネスに成功し富と名声を手に入れ、自分の人生に満足していたルイス・バーガス（アントニオ・バンデラス）。後はその自分の社会生活を補強する「妻」を手に入れれば美しい人生は完成です。愛に興味のないルイスは新聞の「花嫁募集」の公告に応じたアメリカ人女性ジュリア・ラッセルを選びます。ところが、いざ船を降りてきたジュリア（アンジェリーナ・ジョリー）と対面すると、事前の文通と写真から描いていた地味な女性とは余りにも印象が違っていて驚きます。

「自分の容姿だけで判断されたくないから」わざと別人の写真を送った、試すようなことをして申し訳なかったと告白するジュリア。一方ルイスも、財産目当ての女性を避けるために自分が貿易会社の経営者だということは伏せ、ただの従業員のひとりであると伝えていました。お互いさま、ということでウソは帳消し。それ以上に、ルイスは一目でジュリアに強く惹かれてしまっていました。キューバの上流社会に美男美女のカップルが誕生です。

打ち解けるに従って、徐々に情熱的に蠱惑的になっていくジュリアに、ルイスは魂まるごと溺れてゆきます。生まれて初めて愛を知った、もうジュリアなしでは生きていけないと公然とのろけて憚らないルイス。共同経営者のアラン（ジャック・トンプソン）の妻オーガスタ（アリソン・マッキー）が、ジュリアの振る舞いを淑女らしくないと暗に批判しても、皆で訪れた劇場でジュリアが見知らぬ男と親し気に話しているところを目撃しても、恋は盲目、一瞬疑問に思ってもすぐに払拭されてしまうのです。しばらくは、容姿にも財産にも恵まれた熱愛カップルの絵に描いたような幸せな日々。

でもそれじゃあドラマになりません。徐々に完璧な愛の生活に暗雲が立ち込め始めます。ジュリアから一向に音信がないことを不審に思った姉のエミリー（コーデリア・リチャーズ）に雇われたという私立探偵ウォルター・ダウンズ（トーマス・ジェーン）がルイスの前に現れたり。ついに姉のエミリー本人もキューバへ現れ、ジュリアが書いてよこした手紙の筆跡が違う、と言い出します。そしてジュリアはルイスの現金を全て持ち出して行方をくらまします。さぁ、泥沼劇の始まり！

ジュリアだと思っていた女性の正体が暴かれ、可愛さ余って憎さ百倍、復讐の鬼となったルイスは仕事を投げ出し地の果てまでも、の勢いでダウンズと共にジュリアの行方を追います。が、ついに見つけ出してみれば結局、どうしようもなくジュリアへの愛にがんじがらめな自分を見出すのです。犯罪者のジュリアと共に生きる決意をしたルイスは共に新しい土地へ逃亡しつかの間の蜜月を過ごしますが思いがけない人物と再会してしまい・・・ついにジュリアの為に自身までもが恐ろしい罪を犯してしまうルイス。

そこから先はさらにこれでもかこれでもかの転落ジェットコースター。未来の見えない袋小路。でも、まだ、ルイスの知らない秘密が・・・。出会う男を次々と虜にし、例え愛に一途に生きようと一度は思っても、本能がそれを許さない、男を翻弄し共に破滅の道にひたすら突き進むファム・ファタール。10月にブルガリア国立劇場の来日公演でも観たオペラ「カルメン」のようなジュリア。彼女自身が、彼女の決心を裏切るのを止められない、窒息しそうな愛。そんな彼女の本質を理解しながらも全身全霊で愛さずにいられないルイス。

息詰まる2人の最後は、やはり悲劇・・・でしょうか？

ラストは、予想範囲内とはいえ鮮やかなある種のカタルシス。終わり際が小気味よい、というのはエンタメ作品の大事な要素。

とにかくまだ若きアンジェとバンデラスの、フェロモン溢れすぎる野性的な美しさが、19世紀の植民地時代のキューバの風景やコスチュームと相まって独特の完璧な世界が作られています。この時期の、この2人のキャスティングでこの原作、これ以外はあり得ないでしょう？という完璧さ。スパイシーな目の保養でした＾＾。