2009年 アメリカ
監督: クエンティン・タランティーノ
原題: Inglourious Basterds
~ 復讐、バイオレンス、ブラック・ユーモア、タラティーノ ~
夏休みどころじゃないのに(いや、だからか)Blog上は8月の半分は夏休み状態・・・よって、もう10件以上鑑賞記録が溜まっております。これもお盆よりずっと前に観たような・・・思い出せるか、自分^^;。
タランティーノ監督でございます。私はむかーし一度多くの人が熱狂的に語る「キル・ビル」を観た以外、タランティーノ作品についてはまったくもってよくわかりません。「キル・ビル」は楽しめないわけではなかったけれど、多くの人がハマった”良さ”は当時何も分らなかった・・・ので何とも言えないのですが、この映画を観ていてあぁ、これはきっとまさにタランティーノなんだなぁ、と「キル・ビル」を思い出しました。復讐とバイオレンスと不条理なブラック(ユーモア?)と蛇足と問答無用な展開。「タランティーノ」がいっぱい。
舞台は第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが猛威を振るっていた頃。タランティーノはドイツ占領下のフランスへなぜか米陸軍中尉のアルド・レイン(ブラッド・ピット)を送り込み、ユダヤ系アメリカ人の部下と共にナチス将校を次から次へと惨殺しまくる秘密特殊部隊を結成さえて、架空のヒトラー暗殺計画なんて立てちゃうのです。冷血非道なナチ狩りをバンバンやっちゃう彼らは「イングロリアス・バスターズ」の異名で畏れられていましたとさ。全ての秘密を牛耳るバスターズのボスの名前はきっとタランティーノっていうんだと思う( *´艸`)。
因みに上↑のバスターズ3人衆の写真、一番右の 「ユダヤの熊」 ドニー軍曹に扮するイーライ・ロスは、キアヌ主演の独特なホラー・サスペンス「ノック・ノック」を監督した人です。どうも見覚えがある顔だが過去出演作に覚えがない・・・と思ったら、「ノック・ノック」の記事を書くときにSNSで見つけた、映画出演の美女コンビの1人だった奥さまとのプライベート・ショット写真で見おぼえていたようです。あの映画も微妙なB級感溢れる独特な作品でしたが「フレードランナー 2049」のジョイ役で強烈な印象を残したアナ・デ・アルマスの出演作ということで今や貴重なお宝映画になりましたねぇ。可憐なジョイも捨てがたいですが、猟奇的なクレイジー美女のアナ嬢もまたキラッキラの輝き( *´艸`)。
映画は5章仕立てになっていて、それぞれの章が違った趣でまるで連作短編集のよう。そしてそれらの物語が段々一点に集中していき怒涛のクライマックスへと繋がるスリリングさ。ストーリーがあってないような、ベースの骨子にはちゃめちゃをふんだんにデコレーションしたというのが「キル・ビル」の朧げな印象なのですが、こちらは物語の構造も凝っています。そして全章を通じてナチスの象徴とばかりに巨大で不気味な存在として登場するのが「ユダヤ・ハンター」の異名をとるナチス親衛隊のランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)。
物語の基本構成は、ナチス対バスターズ、そしてランダ対ショシャナ(後述)の二重構造で、ヒトラーも登場するにはしますが、もうほぼ、ナチス≒ランダ。ブラピやらのハリウッド有名人キャストの陰も霞むほどのランダの存在感の強さ、陰の濃さ、不気味さ。クリストフ・ヴァルツの怪演が見ものです。ランダあってのイングロリアス・バスターズ、クリストフ・ヴァルツあってのランダ。このBlogでは「グリーン・ホーネット」での敵ボス、「ジャンゴ 繋がれざる者」でジャンゴと行動を共にする元歯科医の賞金稼ぎとして登場。あ、ジャンゴもタランティーノでしたっけね。あぁ、やっぱり復讐とバイオレンスと不条理がタランティーノのお家芸な気がする。
一方パリでは死んだ叔母から映画館を受け継いだ若き経営者エマニュエル・ミミュー(メラニー・ロラン)に、映画好きのドイツ国防軍の狙撃手フレデリック・ツォラー(ダニエル・ブリュール)が恋をしています。ドイツ兵であるフレデリックに対し警戒している様子のミミューはそっけない態度を取りますがフレデリックはすでに盲目、礼儀正しくも強引なアタックが続きます。実はフレデリックは戦争の英雄で、本人主演の映画まで製作されるわ、街でサインを求められまくるやらの大人気。一方謎めいたクール美女のミミューは、本名はショシャナ・ドレフュスというユダヤ人。第1章でランダ大佐にユダヤ狩りに遭って虐殺された家族の唯一の生き残りだったのです。
イギリスのフェネク将軍(マイク・マイヤーズ)の指示でフレデリック主演映画のプレミア上映会へ潜入し爆破する作戦の実行任務を命じられたヒコックス中尉(マイケル・ファスベンダー)はバスターズと協力しドイツ人将校に扮してプレミア上映の案内役となるイギリス側のスパイであるドイツの人気女優ブリジット・フォン・ハマーシュマルク(ダイアン・クルーガー)とバーで落ち合いますが、想定外の状況となり思いがけない騒動へと展開していきます。何事も、予定通りにはいかない。ハプニングが付きものなのが秘密作戦です。それにしても実に豪華なキャスティングが続きます。
予定外の変更は他にも発生。プレミア上映の会場が、恋する英雄フレデリックのたっての希望でショシャナの映画館へと変更になります。ハプニングにつぐハプニング、変更につぐ変更。ドイツ語のわからないバスターズたちはこのまま臨機応変に乗りきれるのか?何せ恐ろしいほどの嗅覚の持ち主、ランダ大佐も目を光らせていますから。それに、彼らのあずかり知らぬもう一つの「爆弾」も・・・。
ショシャナもまた、映写技術士でショシャナの事情も知っている恋人マルセル(ジャッキー・イド)と共に、一世一代の決意を固めていました。映画の上映途中で出口を封鎖し、引火性の強い大量のフィルムを利用して映画館ごと憎いナチス高官たちを皆殺しにする計画を立てていました。バスターズ&イギリス連合の爆破作戦、ショシャナの放火計画、そしてランダ大佐の不気味に光る目。そこに目が♡の気の良い戦争の英雄がウロウロして・・・緊張感高まりつつクライマックスへ。
レインとランダ大佐の最終対決の駆け引きもまた見所。同じ画面に並んでももはやブラピが引き立て役。クリストフ・ヴァルツ恐るべし。色々細かいところは割愛したので登場の余地がありませんでしたが、他にも豪華なキャストがズラズラゴロゴロしています。タランティーノ監督ってだけで参加したがる俳優さんも多いんでしょうねぇ。ざっとご紹介しますと、、、。
第1章でショシャナたち一家をかくまっていたフランス人農家のラパディット家の家長に「アサシン クリード」にも出演していたドゥニ・メノーシェ、その長女役に今を時めくフランス若手女優ナンバーワンなレア・セドゥ。レインが無線で連絡をとる司令部のお偉いさんの声はなんとハーヴェイ・カイテルだったらしく、往年の名優ロッド・テイラー(2015年逝去)がウィンストン・チャーチル役で出演していたり、ランダ大佐の愛人兼通訳のフランス人女性役には日本でもNHK教育番組を始めタレント活動をしているジュリー・ドレフュスなど。
他のタランティーノ作品同様、個人的には物凄くハマるというわけでも特に好みというわけでもなく、消化しきれない部分もありながらも普段触れない異文化という感じで新鮮な楽しみ方ができました。さて、この映画。戦争関連の映画まとめの第二次世界大戦編で、ヒトラー&ナチスに関する映画として加えようかとも思ったのですが、戦争に関る映画というより先に何よりもタランティーノ作品の色が濃いため割愛しました。
そう言いながら第一次大戦編では思いっきりフィクションで、マーベル作品な「ワンダーウーマン」もリストに入れていたではないかと言われればそれまでなのですが、何となくのフィーリングで選んでおり大そうな指針も存在しないのでご容赦を^^;。しいて言えば、第二次世界大戦ものは数が多すぎるため・・・ということで。
戦争映画というよりも、豪華キャストとタランティーノ作品に興味がある方で未見ならば、ぜひ一度。