ノック・ノック | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

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2015年 チリ、アメリカ

イーライ・ロス 監督

原題: Knock Knock

 

 

なんだか最近WOWOWでやたらとこの映画リピート放送していて、キアヌ・リーヴス主演のサスペンスということでちょっと期待して観たのですが・・・。

 

 

元DJ、今建築家のハンサムな夫エヴァン(キアヌ・リーヴス)に個展の準備で忙しい新進喜悦の芸術家で美しい妻カレン(イグナシア・アラマンド)と、可愛い一男一女。絵に描いたようなパーフェクト・カップル、幸せいっぱいのセレブ・ファミリー。父の日の祭日に家族揃ってビーチ・バカンスに出かけるはずが、予定外の仕事の都合でエヴァンだけ留守番することに。

 

 

久しぶりに家族と離れて1人の夜、外は豪雨。お気に入りの音楽をかけながら仕事に集中していると玄関ドアをノックする音が。外にはずぶ濡れの若い美女2人。CAをやっているというベル(アナ・デ・アルマス)とジェネシス(ロレンツァ・イッツォ)。知人宅のパーティーに行く途中で道に迷って、雨に濡れて携帯が壊れて連絡もできず途方に暮れているらしいのです。最初は警戒していたエヴァンですが、あまりに気の毒で、FacebookへアクセスするためのiPadを貸すことに同意し、玄関先へ招き入れてしまします。

 

 

ほんの玄関先で済む親切心のつもりが・・・目的地と全然違う場所にいることがわかり、タクシーを呼んであげることになり、タクシー到着まで45分かかることがわかり、すると濡れた服を乾かしたいと頼まれバスローブと乾燥機を貸し、その間に質問されるままに答えていく形で会話が進み、だんだん彼女たちが大っぴらなセックスの話題を語り始め、胸元や足もあらわなバスローブ姿で接近してきて・・・。

 

サスペンスというし、タイトルがノック・ノック(日本語だと「トントン」とか「コンコン」とか、ドアをノックする様子や音を表現する時に英語だと「Knock Knock」と言います)だし、この2人が実は強盗じゃないかとか、この後偶然か故意にかどちらかまたは2人とも死んでエヴァンが事件に巻き込まれるのか・・・とか思ってハラハラしながら観ていたのですが、どうも空気がピンク色に染まりはじめて・・・(苦笑)。家庭を大事にする紳士らしく最後まで精一杯色気ガードしていたエヴァンですが、とうとう2人がかりの力技に負けてしまって、あとはもう情欲を貪るばかりの一夜。

 

あ~あ、やっちゃった・・・ですが、正直エヴァンに同情。男性の気持ちはわかりませんが、恐らく、あそこまでされてなおかつ抗うなんてほぼ不可能なんじゃ・・・ほとんどレイプも同然ですよね・・・ま、裁判になった場合陪審員は決して情状酌量してくれないでしょうけれど(-_-;)。うかつな情事に疲れ果てて眠ったエヴァンを両脇から意味ありげに微笑みあうベルとジェネシス。朝、ベッドで1人目覚めたエヴァンは彼女たちが立ち去ったかと思うのですが・・・ここからエヴァンの地獄の始まり。

 

 

エヴァンが寝ている間に家じゅうメチャクチャに汚されて、本性まるだしのイカれた美女2人に「私たち本当は15歳なのに無理やり犯されたわ!」と脅され、拘束され、無理やり馬乗りになられてセックス動画を撮影され、殴られ、なぶられ、、、の生き地獄。おまけに殺人侵して高笑い。・・・えーと、なんだこの映画(;゚Д゚)。

 

殺人事件とか強盗事件に巻き込まれてサバイバルする感じのサスペンスな展開になるのかと思えば、途中で企画ものポルノな展開になるのか?(-_-;) と不安にさせられ、いや悪趣味なバイオレンスものだろうか、それとも・・・いったい何??途中で観るの止めようかとも思ったものの、なんとなく不快なまま終わるのがいやなのと、いったい何をいいたい映画なのか見極めたかったのとで最後まで取りあえず観ることにしたのですが、最後まで結局スッキリはしませんでした^^;。最終的に思ったことは、狂気じみたホラー映画・・・なのかなぁ?

 

怖がるのが正解なのか、面白がるのが正解なのか、もうまったくわからない(◎_◎;)。なぜキアヌはこの映画に出たのだろう。すでにスーパー・スターの地位まで上り詰めて人生2回分くらい余裕で過ごせるだけのお金も稼いで、しかも自分の煩悩を満たすためにお金を浪費することもハリウッドでの地位に固執することにも興味はなさそう。つまり、切羽つまってお金のためにとか栄光よ再びという野心や破れかぶれな動機で映画に出る必要はなくて、何かしら心を打つ作品だけ気が向いたら出ればいいだけ。ということは、この映画の何かがキアヌの心に響いたはずで・・・ただの悪趣味でグロテスクなB級映画じゃないはず、そうであって欲しいと一晩考えました。というか、強烈すぎて夢にまで出てきました^^;。

 

この映画、誰に向かっても是非観てみて~とお勧めするつもりはありませんので、この先は多少のネタバレも含めて自分の解釈を披露しますので、もし自分で観おわるまでネタバレされたくない!という方がいらっしゃったらここまでにしておいてくださいまし。結末やそこまでの顛末は書きませんけれど。

 

 

少なくとも最初はスケベ心ではなく純粋に親切心を発揮しただけの、基本的にはとっても誠実な夫であり父親であるはずのエヴァンなのに、なぜこんな目に・・・悲惨でしかありません。

 

ベルとジェネシス、まぁまずこの名前からして、「美女と野獣」のヒロインでもお馴染の”美しい女性”という意味のベルと、聖書の創世記=ジェネシス、いかにも思惑ありげでウソくさい偽名だと思われますが、彼女たちのセリフや行動から解釈するに、少なくともベルは恐らく義父から性的虐待を受けたトラウマがあり、加えて二人ともその若さと美貌とセックスアピールで品のない男たちに直接的間接的な性の餌食にされ続けてきてウンザリ&男を見下していて、自分達が常に汚されている悪夢に苛まれてきたのではないかと。

 

そこで、男への復讐、あるいは救いを求める本能的衝動でエヴァンのような男性をハメて凌辱し破滅させるゲームをこれまでも何度も繰り返してきているのでしょう。前々からエヴァンに狙いを定めて入念なリサーチと盗聴までしていたことが明らかです。どこでエヴァンに目を付けたのか、どうやってそこまでリサーチしたのか、またよく都合よく祭日に近所の家が全部留守になってあんな豪雨になったもんだと、都合良すぎる点はひっかかりますが。その辺の風俗に普段から通うような低俗なおっさんじゃあ意味がない、いかにも上等そうで誠実そうで過ちをおかさなそうなエヴァンのような紳士だからこそ狙われる。「一瞬だけ、この人は最後まで断るかもって思ったのに、ざーんねん」と呟くように、すまし顔の男を破滅させる喜びに浸る一方で、欲情に負けない立派な人間もいると信じたい気持ちが表裏一体なんだろうなと。

 

とはいえ。なんだろうなー。レイプ被害者は、自分がレイプされたと世間から隠したいし、忌まわしい記憶を忘れたいがために被害届を出すのをためらうのと同じ心理で、彼女たちの被害者たちも人生メチャクチャになりながらも泣き寧入りしてきたのかもしれませんが、彼女たちは明らかにどんどん歯止めが効かなくなっていくし、今回死体も出ちゃってるから、例えエヴァンが隠そうとしても少なくとも殺人事件の捜査は免れられるはずがないし。彼女たちの指紋も唾液もベタベタ残しまくっているし。家族が帰ってきたときエヴァンがあのままの状態だったらばあからさまにエヴァンがなにがしの暴行の被害者だってわかるし・・・とか、つい”まともに”色々考えちゃうのですけれどね^^;。

 

そういう理屈全部とっぱらっちゃって、ちょっとした気の迷いがとんでもない悲劇と恐怖を巻き起こすことになるぞ、という警告のこもったホラーとして観るか、スーパー・スターのキアヌがなぶられて苦しむ珍しい姿を斬新がって観るか、不条理ホラーとして恐怖を楽しむか、ベルとジェネシスの無茶苦茶な暴れっぷりでスカっとするか(実際にはやらないけれど、食器を全部割ったり教室の窓ガラス全部割って歩いたらある種のストレス解消になるだろうという誘惑は誰しも一度は考えることがあるでしょうから、その代理実行者として2人を見たてる)、美女2人のお色気を楽しむか、男どもへの女の復讐としていい気味!と思うか、人によって受け止め方次第で、解釈や楽しみ方は色々あるのだろうなと思いました。

 

 

役者もやっていたらしいイーライ・ロス監督、監督作品はどれも観たことがありませんが何となく狂気さも感じるホラー映画が得意そうな感じです。そしてジェネシスを演じたロレンツァ・イッツォは奥さんらしいです。なんて感じの良い素敵な美男美女のプライベート・ショット↑でしょうか。

 

この映画の受け止め方、の正解は結局まだわかりませんが、色々考えて一周した後で、不条理ホラーとして「ひゃーこわい!」「メチャクチャやん」Σ(・ω・ノ)ノ!とヒヤヒヤ他人事として楽しんでおくべかなぁ、という気分に今はなっています。まぁ、取りあえず当分観直そうとは思いませんけれど(苦笑)。モヤモヤも嫌悪も収まりの悪さも、一晩捕らわれて一通り考えたので一旦それはそれ、と距離感を取ることができて、なんか逆に笑っちゃえそうな感じ?もしこの映画ご覧になった方がいらっしゃったら、皆さんはどう解釈したか、感想を聞いてみたいです(´_ゝ`)。

 

そういえば・・・ストーリーにはほとんど関係なかろうと思われるわりにはなんで?と思う程しつこく、3Dプリンターのシーンが挿入されていましたっけ。エヴァンが取り掛かっている設計図の模型だと思われますが、プリンターが少しづつ模型を成形していく様子が何度も画面に映されていました。単に時間の経過を示すだけなら、同じく何度も映った時計だけで十分だし、あの3Dプリンターにも何か監督の隠された意図が込められていたのでしょうか?案外何の意味もなさそうな気もします(笑)。そういえばこの映画、1977年に製作された「メイク・アップ(Death Game)」という映画のリメイクだそうです。元ネタ映画についての情報は特に見つからなかったんですが、どんな感じだったんでしょうね?