『イラストで読む ギリシア神話の神々』 杉全美帆子 著 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

 

西加奈子さんのエッセイ本に続いて、『マンスフィールド・パーク』の余韻覚ましの気分転換に^^。ギリシャ神話が題材になっている舞台や映画を観たり、西洋美術の企画展に足を運んだりするたびに、あぁ、しっかりと体系的に、でも解かりやすくギリシャ神話を整理してくれている本は無いだろうか・・・という思いが強くなる一方の今日この頃。子供の頃からちょいちょい触れる機会も多く、一通り読んだり聞いたり学んだことはあるハズのギリシャ神話。でも、日常的にいつも関係するわけじゃないから、そのややこしさにどうしてもこんがらがって、えーっと、誰と誰の子供が誰で・・・何やったんだっけ?と混乱してしまいます(T_T)。

 

だいたい、ギリシャ神話とその後のローマ神話がほぼカブっている割に名前を変えてくれちゃっているし、さらに英語名まであるから本当にややこしい(>_<)。アポロン(ギリシャ)=アポロ(ローマ)=アポロ(英語)は問題ないとしてもアフロディテ(ギ)=ウェヌス(ロ)=ヴィーナス(英)って何故よ(;´Д`)。まぁ美人さんは超有名だからまだいいとして、ヘパイストス(ギ)=ウルカヌス(ロ)=ヴァルカン(英)って、ただでさえマイナーなのにコロコロ名前変えてどうする、余計に影薄くなるやんか!と大そう身勝手で理不尽な文句を言いたくなります(笑)。

 

あんまりアカデミックな文献じゃなくて、サラっと読めて、そうそう子供の頃読んでいた「まんが日本の歴史」みたいなノリのギリシャ神話の解説本、ないかな~。とぼんやり思っていたら「あるよ。」の天の声が!(笑)

いや、ちょっと探せばすぐ見つかったんだと思いますが、他力本願な私は偶然その情報が転がり込んでくるまで放置していました^^;。まさに、希望通りの一冊!まず最初にざっくりギリシャ神話の世界の成り立ちや性質についての概要と、神様と英雄の関係図などの全体像の軽いジャブ的導入。初めにカオスが生じ、そこからガイア(大地)が生まれ、ガイアからウラノス(天)とポントス(海)を産み、ガイアとウラノスが交わってティタン族が生まれ・・・文字だと途中で道を見失う姻戚関係、イラスト関係図になっても相当ややこしかった^^;。

 

 

さらに関係が複雑すぎて1つのツリーでは表しきれず、別表も必要なわけでして・・・。

 

 

もーお、近親相姦と浮気しすぎですよ、神様たち!(苦笑) 神様家系図の下の方にヘルメスのイラストに「今、この人物相関図観てウゲって思ったでしょ~。でも大丈夫。この本を読み終わるころには全員が誰が誰だかわかるようになってるから!」とありますが、実際”ウゲっ”て思ったし、読み終わるころには色々と整理整頓されてスッキリしました♪途中で何度も何度も、これらの関係図に立ち戻って「えっと・・・この神様の親兄弟は・・・」と確認作業が必要でしたが^^;。

 

すぐに忘却の彼方へ飛んで行ってしまうものの、一応一通りの知識は吸収したことがあるので、でも自力で整理整頓できなかったことを分りやすく指南してもらえて、本当に助かりました~。ギリシャ神話を多少知っている方なら知識の確認に役立つし、初心者の方でもとっかかりを掴みやすい構成になっています。勿論、あえて端折っている部分も触れていない部分も沢山ありますが、全体像と流れを把握し、ポイントポイントに興味を持つきっかけを提示するという意味で非常によく選別しまとめてあります。ものすごく大変だったろうなぁ、この本作るの・・・それをランチ2回分くらいで手に入れられる有り難さ!

 

杉全さんのイラストも、可愛らしいけれど変なクセがないから万人に受け入れられるし、神様や英雄のイラストも、添えられているコメントの数々も、彼らの特徴を上手に、しかもユーモアたっぷりに端的にとらえてあって、本文を一通り読んだ後の2回目は、イラストや、関連の名画の数々(ここ2年で実物を観られた作品もイロイロあって嬉しさ増し増し)に添えられたコメントを中心に読んでいくのが、すごく楽しかったです( *´艸`)。

 

世界のなりたちと歴史を辿りつつ主要なキャラクターの解説や関係が解説された後、主だった神様たちの個別紹介ページ、そして『イリアス』『オデュッセイア』『アルゴーセンの物語』などに登場する英雄たちの解説もあって、必要十分な充実ぶりです。トロイ戦争は神話の物語、と思っていたのですが、学術的に紆余曲折のあった末にトロイの遺跡が発見されたこと、トロイが実在したことは初めて知りました。邪馬台国を巡る論争のようなことが、トロイを巡ってもあったんですね~。

 

4月に観た舞台「エレクトラ」に関連する、トロイ戦争の関係者たちと、アガメムノンとクリュタイムネストラーの夫婦とその子供たちとの悲劇についても触れられていました( *´艸`)。ラストはチャート式のギリシャ神占いなんていう楽しいコンテンツも♪

 

 

因みに私はヘパイストスでした。嬉しい・・・けれど微妙に残念なような・・・ライトなお遊びなんだから、せっかくなら”最高に美しい”アフロディテとか”異性の支持率No.1”ヘラとか”誰もが認めるリーダー格”とか派手な結果がよかった・・・とないものねだり(笑)。

 

今度から西洋美術の展示を観に行く時はこの本常に持って行こうかな~。期待以上の素敵本でした( *´艸`)。杉全美帆子さんの他の「イラストで読む」シリーズも集めてみたくなります♪