シティ・オブ・エンジェル | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

1998年 アメリカ
監督: ブラッド・シルバーリング
原題: City of Angels
 
 
なんだか懐かしい映画をやっていたので、WOWOWで録画鑑賞。20年近く前ですよね?!あんれまァー(笑)。当時、ニコラス・ケイジが好きで観たんですけれど。メグ・ライアンがアイドルばりに人気絶頂期でロマコメの女王とか呼ばれていた頃でしたので。人気のメグ・ライアンで、お手軽なリメイクで(ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン 天使の詩」)、胸キュンなロマンス映画に仕立てれば皆喜ぶでしょ、なアイドル映画的な製作意図モリモリの映画だよねーとナナメ横目で穿ってとらえていて、観たら観たで普通にじぃーんと浸りつつ、そのまま忘れておりましたが・・・。今になって観直すと、いやいや意外とちゃんといいじゃないか、と再発見でした(´ω`*)。
 
 
死者の魂を天国へ導くのが仕事の天使セス(ニコラス・ケイジ)、迎えに行く先は必然的に病院が多くなります。ある日、外科医マギー(メグ・ライアン)の患者が手術直後に急変します。患者を迎えに来ていたセスが、患者を蘇生させようと必死に戦うマギーの姿を見つめていると、マギーが姿は見えないはずの自分の目を見て「絶対に救ってみせる」と宣言したのでドキーっ。残念ながら、蘇生はならず。決して難しい状態でもなく、手順も間違っていなかったはずなのに・・・患者の急変の原因がわからず、死なせてしまったことにショックを受けるマギーと、マギーの視線に射貫かれて彼女のことが忘れられなくなってしまったセス。
 
 
天使の街、ロサンゼルス。天使は、黒いコートにマフラーを身につけている。図書館に住み、世界中の言葉を理解し、人間の心の声も聞くことができる。そして毎日、日の出と日の入りに海辺に集まり、太陽の調べを聴く。人間のように恐怖や苦しみや痛みを感じず永遠の命を持ち、人間が感じることのできない太陽や風の音楽を聞くことができる。普段は人間からは天使の姿は見えず声も届かず、姿を現して触れても天使にはその感覚を感じることができない。
 
そんな天使であるセスが人間のマギーに一目惚れをしてしまい、彼女と触れ合いたい、彼女を感じて共に生きたいと願い、マギーも正体不明のセスを最初は警戒しながらも、その純粋さや優しさに惹かれ恋人の同僚医師ジョーダン(コルム・フィオール)よりも大きい存在になっていきます。出会うべきではない、恋に落ちてはいけない2人のファンタジーなラブ・ストーリーです。セスが人間ではないと知りマギーが絶望したり、昔セスと同じように人間の女性に恋をして地上に落ちて人間として生きることを決めた堕天使ナサニエル(デニス・フランツ)と出会ったり。
 
 
「ベルリン天使の詩」のリメイクと言いながら、内容は大幅にアレンジされているらしいですね。内容はどうといったことのない、まさに当時の印象「適当にウレセン狙ったアイドル映画」から逸脱しない感じなのですが、主演の2人、特にニコラス・ケイジがすごくいい。え、彼が天使?と思うのですが、無垢な透明感を見た目ではなくオーラで演じる底力!(笑) 目線とか、手の動きとか、細やかな演技が効いていて、セスが天使だと知った後、マギーが「あなたって綺麗・・・永遠に汚れない存在ね」とため息と共に呟く台詞がスンナリ納得。後に、地上に落ちて人間になった後と、よく見ると表情筋の動かし方も手足の使い方も全然違います。役者ってすごい。Σ(・ω・ノ)ノ!
 
 
そして、映像が、すごく綺麗。何か特別な技術を駆使しているとか、派手な演出があるわけでないのですが、SFX技術でこれでもか的に”スゴイ”映像を見せられ慣れた今日この頃、そんな高額映像にまったく引けを取らない、優雅でウットリする映像です。キャストの存在感と映像の美しさからか、20年近い前のある意味トレンディ映画のはずなのに、古さやダサさ、安っぽさが全く感じられません。むしろ、昔観たよりも心と目に沁みます。これは、予想外。
 
旬真っ只中のメグ・ライアンも素晴らしく可愛いです。が・・・マギーのキャラクターに関して言えば、残念ながら”可愛い”以外の魅力が解からない・・・。でも、まぁ、何せ相手は天使ですから。そういうものかもしれませんね。動物だってギリシャ神話の神々だって、恋に落ちる理由は相手が強いからとか美しいからとか、ごくシンプル。人間性が・・・とか価値観・・・とか趣味・・・とかゴチャゴチャした観念は人間が大地にはびこり生活文化を構築していくうちに作り出したものですもんねー。
 
 
・・・とはいえ。レジデントではなく立派なアテンダントらしいマギー、患者が死んだり理不尽な結果を迎えるのはもうすでに散々目の当たりにしてきたはず。平気になれとは言わないですが、今更そんな風にショックを受けてメソメソ悩んで仕事に支障をきたすとかどうよ・・・。そして、セスを振り回すのもあざとさが見える。セスが全てを捨てれば人間になることができると知ると、恋人に結婚を申し込まれた、断る理由がないわ、だって天使とは結ばれないでしょう?とピュアなセスに言い放つあたりがあまりにあざとすぎる・・・(-_-;)。
 
素直に「私の為に人間になって」と言えばいいのに、責任重大のリスクを背負いたくない、あら私は天使をやめてなんて言ってないわの逃げ道確保であくまでも男性側に行動させようとするズルさにイラっ(笑)。それに、外科で散々事故や事件での死傷を知っているはずなのに、山道(しかも下り坂)でその行動あり得なくない?あざとくて浅はかでお馬鹿ちゃんで全てを台無しにしながらもか弱く美しい存在でいつづける自己愛・・・おいおい、マギーよ。・・・と、自分もピュアで精神的にまだ幼かった若かりし頃には感じなかった苛立ちを感じたのも面白いといえば、面白い発見でした(笑)。
 
 
そんな偶然ってある?人間も天使も人口密度の高いロサンゼルス内のことだから、あるかもね(*‘ω‘ *)。元天使で建築現場で働く享楽的にあっかるーいオジチャンのナサニエル演じるデニス・フランツも好演でした。セスもマギーとこんな風になりたかったのにねぇ・・・。天使は美男子揃い・・・って、え、じゃあナサニエルさんも人間世界の悪徳を知る前、天使の時代は若くて、髪の毛もあって、痩せてて・・・?と思わず想像してしまいました( *´艸`)。
 
 
セスが一番親しくしていた同僚の天使、カシエル(アンドレ・ブラウアー)。好奇心旺盛なセスが見聞きしたり想像した話をいつも興味深そうに聞き、セスを眩しそうに、危なっかしそうに、愛しそうに見守ってきました。セスの背中を押すでもなく、諫めるでもなく、ただ、側にいて話を聞く。否定も肯定もせずそこにある存在。なんかちょっといいんです。
 
セスがナサニエルから、人間になる方法を教わって興奮しながらカシエルに報告をするシーン。ナサニエルがそんなにマギーの事が好きで一緒にいたいと思うなら、相手も好意を持ってくれているなら、そしてその方法があるとわかったのなら、地上に落ちることを「何故迷う?」と訊きます。するとセスは眼下の街と遠い空に目線を向けてから小さな声で呟きます。「上の世界が美しすぎて」。セスとナサニエルの、印象に残ったシーン。そして、セスの気持ちに共感するほど、美しい映像。
 
ラストシーンでの感情までセスを持って行きたかったのは、わかります。最後の最後に言いたかったことも、理解できます。が、そこに導くための”やっと幸せ~♡”からのマギーの愚行が招く悲劇、の悪評高い(笑)結末も含め、全体的に脚本があちこちガッサガサなのは感じます。が、それをしても尚、美しい映画であることに不思議な感動を覚えます。残念ながら主演の2人とも、すっかり良作・大作で観ることがなくなりキャリアもプライベートも残念な感じ(ニコラス・ケイジは好きなので哀しい・・・)なので、曇りのない美しい2人の姿が観られるのも今となってはお宝。内容はどうってことないって思うのに、結末にはムカつくってわかっているのに(笑)、でも心惹かれる、しかも時間が経つほど良さが際立つ不思議な映画。好きです。(*'ω'*)