キンキーブーツ | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2005年 アメリカ、イギリス
監督: ジュリアン・ジャロルド
原題: Kinky Boots
 
 
イギリスの「W.J. Brookes Ltd」という老舗紳士靴メーカーの経営を立て直した実話に基づいた映画。2013年にはシンディ・ローパーが作詞作曲に携わりミュージカル化され、私も去年来日版を観ました(*^-^*)。舞台を観てから、久しぶりに映画も観たいな・・・と思っていたので。監督は「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」や「ジェイン・オースティン 秘められた恋」のジュリアン・ジャロルド。あぁなんだ、好きなヤツばっかやん!(*‘∀‘)
 
なぜこの日この映画を選んだか。なんだかやることなすこと上手くいかず、踏んだり蹴ったりな事ばかりだった非情に消耗して久しぶりにローになった1日。こんな時はミュージカル・パワーに助けてもらおう!そうだ、去年最高に楽しかった舞台版「キンキーブーツ」のあのハッピーとワクワクが、今こそ必要だ!と、息まいてAmazonビデオにて鑑賞。ある意味この日は最後の最後まで失敗づくしで終わるとは思いもせず・・・。
 
観始めて暫くして、あれぇ?映画の方ってこんなにミュージカル色薄かったんだっけ?最初のうちしんどい状況なのは仕方ないけど、早く上向きにノリノリでウキウキに歌って踊らないかなぁ・・・。私ときたら、うっかり忘れていたんですよねぇ。ミュージカルの方が後だということ。映画が先にあって、この時点ではミュージカルではなく普通のドラマだったということ。よって、シンディのご機嫌なナンバーも映画では味わえないということ・・・Σ(゚Д゚)。
 
だから、ローラ様もショーの場面でしか歌わない、踊らない。そして・・・歌とダンスがないと、むやみにウキウキしない・・・自分のテンションがローだと、上向き展開になっても、その後すぐまた次の困難が出てくる、そちらの方に気がいってしまい、ズン、ズンっとのしかかってくる・・・まぁだからこそ、フィナーレでのカタルシスが効いてくるのだけれど。でも途中いちいち、しんどい・・・。うーん、ミュージカルって偉大だなぁ。
 
一応言い訳しておきますが、基本はハートウォーミングなコメディです。決して暗い話じゃありません。逆境から前へ、前へ、と前進していきますが途中でちょいちょい、アクシデントや障害などのトラップやハードルが障害物競走のように配置されます。普通ですよね^^;。しかし、何せ底抜けに明るくハッピーに盛り上がって嫌なことゼロオフしようゼ♪のつもりだったこの日のアテは微妙に外してしまって、いちいち辛いこと、しんどいこと、哀しいこと、の陰の部分に過剰反応してしまっていただけです。でもちゃんと楽しみましたよ^^。そして、ミュージカル映画ではなく普通のドラマではありますが、ローラちゃんとエンジェルスは歌って踊るし、「ラブソングができるまで」同様、拡大解釈で秋のミュージカル祭りに加えちゃいますよー。
 
 
こちら↑が映画版ローラちゃん、本名サイモン(キウェテル・イジョフォー)。ある時(「ラブ・アクチュアリー」)はキーラ・ナイトレイの夫、またある時(「ドクター・ストレンジ」)の兄弟子の芸達者なキウェテル・イジョフォー、歌唱力も抜群。ロンドンでは「オセロ」などのシェイクスピア俳優としても活躍、ローレンス・オリヴィエ賞など受賞歴多数の実力者です。
 
 
あらすじはミュージカル版と共通なので、よければコチラの記事もご参照くださいね。偶然ローラと出会って、会社再生のカギとなるニッチ市場の開拓を思いついた新社長のチャーリー(ジョエル・エドガートン)は若い女性社員のローレン(サラ=ジェーン・ポッツ)を連れて再びローラに会って協力依頼。ところが試作品1号はセクシーさゼロのオバサンブーツで、激しくダメ出し!ブーツはSexよ!私が欲しいのは、筒状の、75cmの、Sex!と熱弁するローラ。成人男性を支えるピンヒールなんて無理・・・と諦めかけたところに、職人のおじいちゃんのピタゴラスイッチが入って実現可能かも?!よっし、やり直し!デザインはローラ、宜しく!
 
 
超保守的て排他的な田舎者社員との軋轢を割けて受け入れてもらうために、勇気を出して職場では男装して頑張るローラとチャーリーの熱意と職人の熟練の決勝、真の試作1号がついに完成の感動シーン。生産ラインのベルトコンベヤーに、紳士靴の後ろにブーツが直立した状態で流れてくるシーンはマンガな演出ですが、おぉおーっとなります(笑)。
 
 
ローラにイチャモンつけて意地悪しかけてくる、怪力しか自慢できない旧時代の男尊女卑ボンクラ男のドン(ニック・フロスト)もハマり役(笑)。段々、ローラと打ち解けていく女性陣からもバカにされちゃう情けない男になり下がりますが、単細胞ゆえのピュアな素直さ、優しさ、男の仁義は備わった男、ドン。ここぞ、というところでバラバラになってしまった皆の心を一つにまとめる立役者になることで全ての不名誉は挽回。それに、ローラを目の敵にして面白くないとふてくされている時でも、毎日ちゃんと仕事してるしそのローラのブーツも真面目に作っている模範社員なんですよね~。こちらこそ逆に見た目で判断して悪かった、ドンよ。
 
 
沢山の痛みを抱えて生きてきたからこそ、他人の辛さに共感できるし優しいローラ。彼女自身もつねに悩み、葛藤を抱えて自分の道を模索していますが、彼女の細やかな思いやりや配慮は、チャーリーの強い支えとなり、強固な信頼関係と友情が築かれていきます。そして、ローラの存在は周囲にもプラスの魔法を振りまいていきます。ローラ素敵。ローラ頑張れ(*‘ω‘ *)。
 
 
ザ・ギフト」ではあんなにいかつくて恐ろしかったジョエル・エガートンが、ほんの10年前はこんなに線の細い(肉体的にも精神的にも)頼りなげな青年を演じていたというのも驚きですが、ぴったりハマり役で納得のキャスティング。でも・・・ミュージカル版を観た後だと益々、納得がいかないのはチャーリーの婚約者、ニコラ(ジェミマ・ルーパー)。失礼だけれど、どこがいいのか、チャーリーが終着する理由がさっぱりわからない・・・。
 
勿論、わかりやすい美人じゃないとおかしいと自ら同性を軽んずるような発言はしません。ただ、ミュージカル版では、都会生活が好きな派手めの美人で俗物的、未婚の男性にとっては魅力的な存在というのがとても解かりやすくスンナリ納得できたので・・・。長年の付き合いで、地に足付けた信頼し合える関係・・・でも勿論いいのですが、その割にはニコラの方に思いやりが無さすぎるし、そんな簡単に不動産の営業マンに口説かれるような、分りやすい魅力も感じられない・・・。パッと見の外見のスタイリングだけじゃなく、性格づけとかトータルで腑に落ちないんですよねぇ・・・「女は自分の欲しいものを変えられないのよ」って、この子が言ってるのを聞いてもハァ?何ゆっちゃってんのアナタって反射的に思っちゃう。もしかしたらそれが狙いなのかもしれません^^;。
 
 
ニコラの魅力がヒトカケラも理解できないため、そのニコラに浮気されたからといって荒れて、ローラに対してまごうことなき八つ当たりをしてローラを悲しませるチャーリーにもMaxムカムカ( `ー´)。おいおい、こっちは一日のイライラとグッタリを払拭したくて観てんのに何してくれちゃうん、とこちらも八つ当たりの言いがかり(苦笑)。大事なミラノコレクションの前夜に最悪な雰囲気のまま別れてしまう2人・・・ローラ、どうする?チャーリー、どないしてくれるねん。
 
まぁ、最終的にどうなるのかはわかっているのですが・・・今までで一番陰テンションで観て、ちっちゃなハッピーよりも大したことのないアンハッピーに過剰反応して悶々としていた今回、この後、映画の冒頭シーン、子供の頃のローラ(サイモン)が海辺のボードウォークらしき場所で赤いエナメルのヒール靴を履いて踊っているところを怖い父親に怒られた、あの思い出の場所らしい場所に一人たたずみ過去を振り返っているローラのシーンがこれまで以上に胸に刺さって、もう号泣でした(T_T)。ローラぁ!!今すぐ駆け寄って思いっきりハグしてあげたい。
 
 
なんだかんだあっての、ミラノコレクションのランウェイ・シーンは、ここばかりはどんなコンディションで観ても、映画版がサイコー!あぁ、よかった、やっとここまでたどり着けた(笑)。
 
 
最後はもちろん、皆で朗らかハッピー!そういえば、ニコラはあの後どうしたんでしょうねぇ。今度は大切なものを逃さずに済むといいですね。(と、気持ちが落ち着いたので少し優しい気持ちになってみる(笑))
 
観る時のコンディションによって、自分のリアクションってこんなに変わるものなんだなぁ。そして、ミュージカルじゃなくドラマだと、怒りとか屈折とか哀しみとかのシーンはダイレクトにくるんだなぁ。同じシーンなのに、負の要素さえも包み込んで昇華させる音楽と歌とダンスってすごいなぁ。と、色々と改めて感慨深かったです。ちょっと思惑は外してしまったなぁ、やっぱり今日は何かしらケチがつく、そんな日なんだなと感じた一方、いつも何でも現実逃避して気持ち切り替えてスルーしてばかりじゃなく、たまにはちゃんと、とことんローテンションに真面目に向き合うことも大切だぞ、と神様に言われたような気もしました。
 
そうだね。嫌なことをすぐ忘れる、簡単にご機嫌になれるのは私の特技だけれど、常に現実逃避してばかりではいけないよね。逃げられないことだって世の中にはあるし。落ち着いて自分を内省する時間も必要だよね。安易にばかり逃げてはだめですよね。ごめんなさい神様。よくわかりました・・・といいつつ、一日ため込んでいたミュージカル欲求がどうしても収まらず、この映画の後にブロードウェイ・キャスト版のサントラ聴いて、YouTubeでブロードウェイ・キャストによるパフォーマンスの動画みて溜飲おさめた逃避人間です。ミュージカルって偉大です(笑)。
 
でも映画のローラちゃんだって凄いのよ!というわけで、ドラァグ・クイーンのローラのステージ・ナンバーから「Whatever Lola Wants (ローラの欲しいもの)」と、大好きなミラノコレクションでのランウェイショーをお楽しみくださーい(*^-^*)。