ジェイン・オースティン 秘められた恋 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

2007年 イギリス、アメリカ

ジュリアン・ジャロルド 監督

原題: Becoming Jane

 

 

ジェイン・オースティン関連の映画を検索していた時に見つけました。アン・ハサウェイと「X-MEN」シリーズのヤング・プロフェッサー役のジェームズ・マカヴォイ共演の、ジェイン・オースティンの伝記映画。監督は先日観たばかりの「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」と同じ、ジュリアン・ジャロイドです。こんな映画があったんだ!と発掘気分、キャストも魅力的だし早速レンタル♪・・・観始めて暫くしてからおや、デジャヴ?もしかして観たことある・・・?

 

なんと、昔観て、タイトルや内容はすっかり忘れてしまったのだけれどもイメージが強く残っているシーンがいくつかあって、たまにフラッシュバックしては「あの映画、なんだったんだろう・・・?」とぼんやり思っていた映画でしたΣ(・ω・ノ)ノ!嬉しビックリの再会。そっか、コレだったんだぁ。ジェイン・オースティン祭りをやってよかった(T_T)。なんでオースティンの映画だってことすら覚えていなかったんだろう??とよぉーく考えてみました。

 

10年前・・・多分、私が「Emma/エマ」や「高慢と偏見(BBC)」を観てジェイン・オースティンにハマったのは、この映画のちょっと後だったんだと思われます。だから当時はまだ、ピンと来てなかくて、内容自体に特別な感慨も思い入れもないから覚えていなかったけれど印象深いシーンの映像のイメージだけは忘れられず脳裏に焼き付いて、気になり続けていたのでしょう。まさかこういう形で再会できるとは。人生は楽しいサプライズに満ちています^^。

 

前書きが長くなりすみません。物語は、イギリス随一の女流作家として世紀を超えて愛され続けるジャイン・オースティンがまだ若かった頃の物語です。結婚の機会がなかったわけではなく、中には(経済的に)恵まれた条件のお相手もありましたが生涯独身を通したジェインが、生涯で唯一度、恋をした相手との出会いと別れの成り行きを中心に、まだ作家としてデビューする前の初々しく瑞々しいジェインの姿が描かれています。

 

 

ハンプシャーの牧師の娘として生まれたジェイン・オースティン。姉のカサンドラ(アンナ・マックスウェル・マーティン)の他に6人もの兄弟、の大家族です。男兄弟とお転婆もする一方で、文学にも傾倒して幼い頃から文章を書くのが大好きだったジェイン。家族は活発で機知に富んで自尊心が強く理想が高く夢見る少女な(当時の社会規範的には)破天荒で個性的なジェインを心から愛する一方で、心配もしていました。母親(ジュリー・ウォルターズ)は経済的に恵まれた結婚をして安心させて欲しいと強く願いますが、父親(ジェームズ・クロムウェル)は条件よりも娘の気持ちを大事にしたいと思います。

 

愛しかない結婚の末路は惨めな貧乏暮らしよ!とイラつく母親と哀しそうな父親は、少しデフォルメしたら「高慢と偏見」のベネット夫妻の姿にそのまま重なります。どちらも娘の幸せを願うのは同じなんですけれどね~。他にもちょいちょい、オースティン文学の登場人物やエピソードを彷彿とさせるポイント多数あり。実際にジェインが自分の身の回りの出来事を作品に反映させたことも多かったでしょうし、この映画の脚本を作る際にわざとジェイン・オースティン本人と作品を重ねる工夫もしたと思うのですが、ジェイン・オースティン好きには色々と楽しい演出が見つかります( *´艸`)。

 

 

姉のカサンドラはジェインにとってとても大切な存在。理解者で、親友で、心の支え。婚約者が戦死してしまうカサンドラも生涯独身を通すことになります(/_;)。自伝の類を書き残していないジェイン・オースティンの人となりを後世の研究者がはかり知る一番の有効な資料となったのはジェインが生前カサンドラに宛てて書いた手紙の数々でした。映画の中でも、事あるごとに姉宛てに語りかけるジェインの姿が見られます。

 

 

安心、安定のやかまし屋役はやっぱりマギー・スミス(*‘ω‘ *)。裕福なレディ・グレシャムは早くに両親を亡くした甥のお坊ちゃんウィスリー(ローレンス・フォックス)の後見人です。大人しくて内気なウィスリーにとってジェインは眩しい存在。グレシャム夫人は貧乏で生意気なジェインが気に食わないのですが、甥っ子可愛さの為に寛大な態度をとって”あげて”います。そのこと自体がジェインの自尊心をカチンとさせるのですがねー^^;。ウィスリーも気立ての良い紳士ですが、何分退屈だし不器用でダンスも下手だし、とてもトキメキは感じられません。トキメキに拘らなければ、結婚相手として最高なんですけれどねぇ。人間って難しいものです。

 


ウィスリーが苦戦している間にとうとう最強のライバル出現。ロンドンで最高判事の叔父の援助の下、法律家を目指して勉強中のトム・ルフロイ(ジェームズ・マカヴォイ)。イギリス一の都会ロンドンで、数々の浮名を流しその放蕩ぶりは周知の事実、自信過剰な女ったらしで田舎嫌い。最初はお互いに最悪の印象のジェインとトム。設定は違うけれども、お互いに噂や先入観だけで判断して反目しあうスタートはまさにエリザベスとダーシーそっくり(*'ω'*)。



イギリスのコスチューム・プレイに欠かせない舞踏会のシーン♪もちろん、あります^^。舞踏会で女性が余っているのに踊ろうとしないトムの不作法をけなすのも、エリザベスとダーシーの舞踏会での出会いを思い出させます( *´艸`)。そんなトムとプンスカしながらまさか会話が止められずうっかり3曲も踊っちゃうジェイン。大好きなジェインを目の前でトンビに奪われるのを呆然と眺めるしかない哀れなウィスリー、、、。



お互い気に食わない、と思いながらもバリバリ意識しあう2人。訪問先の友人宅の図書室で偶然二人っきりになって内心ドキドキ。この図書室のシーンと、大勢でクリケットをするシーンと、村にサーカスの一座がやってきて皆で見物に出かける幻想的なシーンがすごく印象に残って気になり続けていました。改めて観たらやっぱりどのシーンも素晴らしかったです(*‘ω‘ *)。



いがみあっていた2人の、こんなお姫様抱っこシーンも有り〼( *´艸`)。一旦意識し出したら止まらない2人の気持ち。一気にラブラブモード突入。恋に酔いしれた状態にある2人は本当に幸せそうですが、常に言い知れぬ不安と儚さが漂います。それは、結局2人は結ばれないという結果を私たちが知っているからかも知れません。一度はお金の為にトムに裏切られ、それでもお互いに全てを捨てて一緒になろうと決心しますが、トムの本当の真実の姿を知ったジェインは辛い決断をすることに・・・。ジェインの気持ちが、切なすぎます(/_;)。



ジェインが自分には物足りなさを感じていること、自分の地位と財産がジェイン相手には何の魅力にも映らないことを自覚しながらも精一杯勇気を出してプロポーズするウィスリーの誠実で一生懸命な姿に心打たれます。でも、人の心はどうしようもない。ウィスリーに足りないのは本当は魅力ではなく、自信。愛されなくてもずっと待ち続けるウィスリーの姿は健気ではありますが、卑屈で自身がなくて傷つくのを怖がっているだけ。だから魅力的じゃない。でも、そんなウィスリーが物語終盤で、大きく成長。色々振り切って成長したウィスリーは一気に魅力的な男性に変身します~。いいぞ、ウィスリー♪



年月が経ち、作家として成功し穏やかな人生を送っていたジェインですがある日忘れられない青春時代の思い出と思いがけず再会するラストシーンは、美しくて切ないです。ウルウル、キュウキュウしながら頭の片隅で(結局、耐え忍び乗り越える強さは女性のもので、男性ってちゃっかり新しい幸せを受け入れちゃうんだよね・・・)なんて一般論的事実にモヤモヤプンプンしないでもありませんでしたが・・・(苦笑)。

特典映像でキャストやスタッフのインタビューも興味深かったです。アン・ハサウェイが大学で英文学を専攻していたこと、在学中にジェイン・オースティンの論文を書いたことも初めて知りました。元々オースティン好きだし知識もあったアンですが、この映画の役作りの為に、全てのオースティン作品と、彼女に関する伝記や論文などあらゆる文献を読み漁って改めて研究したそうです。カメラの前で演じている時間以外の部分の努力が、大変なお仕事です、、、改めて。

ジェインの衣装もどれも素晴らしかったのですが、日常的な装いは暗い色の服を着ているのは、最低限の使用人しか雇えず家畜や畑仕事、洗濯など火事といった仕事を自分達でこなさなければならず、その為に汚れが目立たない色の服装である必要があったと説明に成程、と納得。モスリンやシルク、オーガンジーにレース・・・裕福な女性の日常着に淡い色や繊細な素材がふんだんに使用されているのは、それが高価で美しい素材だから、というだけでなく、汚れ仕事をしなくてもよい立場であることを示しているんですよね。

当時の紳士服の仕立ても、今と違って独特で、その為に背筋をそらした紳士然とした姿勢や動きに自然となるなど、普段何気なく見過ごしている細かい視点も得られました。1本の映画を作るのに、なんて膨大なリサーチと努力と心配りが要するのか、考えるとクラクラします。それが劇場でも2千円札があれば楽しめるしDVDがあれば自宅でいつでも何度でも楽しめるのだから、全く有り難いことです(*‘ω‘ *)。