ノーサンガー・アベイ | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

2007年 イギリス

ジョン・ジョーンズ 監督

原題: Northanger Abbey

 

 

ジェイン・オースティン祭り。Northanger Abbey、日本語翻訳は「ノーサンガー・アベイ」もしくは「ノーサンガー・アビー」あるいは「ノーサンガー僧院」。「Abbey=アベイ/アビー=僧院」です。余談ですが最近間違ってAmazonプライム会員になってしまった元を取ろうと、再びシーズン1から無料視聴でハマっている、空前のイギリスブームを巻き起こしたドラマ「ダウントン・アビー」の「アビー」も同じ。邸宅の名前に「僧院」ってついているんですが、その由来はお屋敷の大広間は元々古い僧院が建っていた名残だから・・・とファイナル・シーズンで説明されていました。ノーサンガー・アビーも、ある大邸宅の名称です。

ジェイン・オースティンの6つの長編小説のうち、「ノーサンガー・アビー」と「マンスフィールド・パーク」「説得」は原作も映像作品も観たことがありませんでした(というか映像を観て気に入った3作品しか読んでいないのか・・・そういえば^^;)。タイトルに「僧院」ってついているので勝手に僧院の女学校で見習い修行をした(「ボヴァリー夫人」のエマのように)真面目な中流階級の女の子が社交界でもまれて恋を見つけるお話かしらんとか想像していたのですが、「ジェイン・オースティンの読書会」でホラー好きの女の子ってなっていたのであれっ勝手に作ってたイメージと違う?!と興味を持ちました。探してみたらイギリスのテレビ映画のDVDレンタルを発見~しかも主演が「博士と彼女のセオリー」や「ローグ・ワン/スタウォーズ・ストーリー」「トゥルー・ストーリー」などで近年輝いているジェリシティ・ジョーンズと知って大喜び(*^-^*)。


今より10年分若いフェリシティ・ジョーンズちゃん、めちゃ可愛です♡幼く見えるけれど、当時22-23歳。相手役のJJ・フィールドも爽やかハンサム君で大変可愛い素敵カップル^^。

田舎の子だくさんの牧師の娘として生まれたキャサリン(フェリシティ・ジョーンズ)は、資産もなければ器量もイマイチ、性格的美質に恵まれているわけでもないし特にこれといった才能もないド平凡なパッとしない女の子でしたが15歳にもなるとそれなりに可愛らしく娘らしく成長したのでお隣のアレン夫妻も「おやおや、そろそろキャサリンもお婿さんを探してあげないとじゃない?」と目を付けて、昔から保養地、リゾートの社交場として有名だったバースへとキャサリンを誘います。

「赤毛のアン」のアン・シャーリーばりに小説が大好きで想像力、いや妄想力が逞しい(笑)キャサリンは、日常生活から突然、恋愛小説や悲劇のヒロインになる展開を想像しまくりで、華やかなバースの社交場の様子にもウキウキワクワクときめきますが、所詮階級社会の内輪社会。楽しそうな紳士淑女はそこら中に溢れていますが、誰かに紹介されていない相手には話しかけることもできず、そしてキャサリンと同じ田舎者のアレン夫婦は残念ながらさほど顔が広いわけでもなく、大勢の他人の中で無視される状況に寂しさとガッカリ感を覚えてしまいます。



でも、同じようにあまりツテのない同世代のイザベラ(キャリー・マリガン)と親しくなれてキャサリンのウキウキも復活。イザベラは後から来たハンサムなキャサリンの兄ジェームズにモーションかけまくって見事婚約までこぎつけますが、自分とジェームズの縁を強めるためにキャサリンには自分の兄ジョン(ウィリアム・ベック)を売り込みまくります。 ところがこのジョン、勘違いの退屈男でちっともキャサリンのタイプじゃない。タイプじゃない相手に限って好かれてしまうのは古今東西、世の常らしくジョンはキャサリンをたいそう気に入って猛アタック(苦笑)。



キャサリンは、ジョンよりも舞踏会で知り合った優しくて素敵な青年ヘンリー(JJ.フィールド)のことが断然気になります。ヘンリーもキャサリンのことを気にしていてデートの約束なんかもしちゃうのですが、それぞれに自分の欲望のためにキャサリンを独占したいイザベラとジョンのソープ兄妹は、ヘンリーとその妹エレナー(キャサリン・ウォーカー)の悪口を吹き込み、キャサリンとの接近を邪魔して遠ざけようとします。その為にせっかくいい感じになりかけたヘンリーに誤解をさせて気まずくなってしまうキャサリン。困ったぞ(;´Д`)。



でも兄同様心の優しいお嬢さんであるエリナーとキャサリンはお互いに惹かれて打ち解け合い、結果的にヘンリーとエリナーの兄妹から彼らの実家のノーサンガー・アベイへ招待されます。なにせ「僧院」だし、古い古い建物で幽霊が出るよ、なんて脅されたりして想像逞しいキャサリンは大好きなホラー小説を思い出して怖い想像をいっぱいしますが、実際にはとても広大で美しいお屋敷と領地でヘンリー、エリナーと楽しい時間を過ごします。

ですが2人の父親のティルニー将軍が、傲慢で貧乏人を馬鹿にした偏屈で恐ろしい男性であること、2人の母親の死に不穏な噂が存在するらしいことを知るにつけ、キャサリンの妄想力が暴走してしまい、せっかくいい感じだったヘンリーを呆れて怒らせてしまいます・・・やっちまった、キャサリン。後悔するけれど後の祭り(/_;)。がっくりうなだれて自分の家に戻り、落ち込む日々を過ごすキャサリンの元にある日思いがけない人が訪ねてきて・・・ジェイン・オースティンですから、もちろん最後はハッピー・エンドですけれどね^^。

エマやエリザベス、エレノアとまた違った愛すべきヒロインのキャサリンの成長と恋の失敗と成就。最初はごく素敵なお嬢さんに見えたイザベラが(当時としてはそれが当たり前のことではありますが)打算的で利己的な性格で、自分からモーションかけておきながらキャサリンの兄に満足できず破廉恥な行動に出てしまったり、運命の2人の間に誤解や障壁があって一旦は絶望的な状況になってしまうのも、ヒロインの助けになる心優しい女性の存在があるのも、ジェイン・オースティンのアルアル。

とにかくキャサリンが愛らしくて憎めないし、ちょいちょい挿入される妄想シーンも「おいおいおいっ(笑)」と思わずツッコミ入れてしまう昭和の少女マンガ的ノリで笑っちゃうし、ジェイン・オースティンもののもう一つの魅力、景色の、映像の美しさもしっかり堪能されて「Emma/エマ」に次ぐお気に入りになるかもしれない、そんな気がします( *´艸`)。