トゥルー・ストーリー | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。


2015年 アメリカ
ルパート・グルード 監督
ブラッド・ピット 製作総指揮
原題: True Story
 
記事を書くのに細かい点の確認をしておこうと思って検索
かけても、どうも情報がHitしない・・・と思ったらコレ、日本未公開
でしたか。ブラピが製作総指揮、キャストがジョナ・ヒル、ジェーム
ズ・フランコ、フェリシティ・ジョーンズ共演の実話に基づいた社会
派サスペンス。と、これだけでも面白そうですが、実際期待を
裏切らない、見応えある作品でした。早くも今年の個人的ヒット
上位の予感。脚本も、俳優の演技も、演出も、全て素晴らしくて
どっぷり引き込まれてしまいました。面白かったです。
 
NYタイムズの敏腕記者だったマイケル・フィンケル(ジョナ・ヒル)
は、アフリカ取材で書き上げた子供の奴隷労役に関する記事
の写真が表紙を飾り、「賞をもらえるかも」と上機嫌。ですが、
その記事の内容を一部ねつ造していたことが発覚してしまい
解雇、記者としての信用も一気に失って次の仕事も見つからず
苦しんでいる時に、あるジャーナリストから連絡が入ります。
妻と3人の子供を殺害、死体遺棄した疑いをかけられ逃亡中
だった容疑者がメキシコで逮捕された際に、マイケル・フィンケル
と名乗ったというのです。
 
容疑者の名前はクリスチャン・ロンゴ(ジェームズ・フランコ)。
フィンケルにとっては全く見ず知らずの男でした。なぜ赤の他人
の容疑者が自分の名前を名乗ったのか?出来心で記事を捏造
してしまい失業し、自分は何者かという命題の迷路を彷徨って
いたところだったフィケルはロンゴに興味を持ち、面会を申し出
ます。ロンゴは、ずっとフィンケルの記事のファンだったと語り、
フィンケルだけに真実を話すので独占取材をしないかと持ち
掛けます。ロンゴは本当に妻子を殺した凶悪犯なのか。この男
は、そして自分はいったい何者か。フィンケルは強い興味を持ち
ます。また、独占取材でスクープ記事を発表できれば、自分の
記者生命も名誉も挽回できるのではという欲も動きます。
 

 
面会を重ねるごとに、またロンゴの書く文章や絵に、どんどん
惹きこまれていくフィンケル。いつしかロンゴに自分を投影
していくようになります。また、ロンゴの取材をしているつもりが
逆にロンゴに自分を晒しているような状況にも。
いつしか二人の間には信頼と、友情のようなものが芽生えて
いました。ロンゴの独白はとても魅力的で興味深く、記事では
なく本を出版しようということになり、ますます精力的に取材に
没頭していくフィンケル。
 
この、フィンケル-ロンゴの会話がものすごくスリリングで目を
離せません。記者-容疑者、取材者-取材対象の関係では
ありますが、それを超えたところでの心理的な駆け引きや
心の揺らぎ、焦り、思惑etc・・・色々なものが内包されています。
二人の俳優の緊迫感ある演技も素晴らしく、ドキドキしながら
観ている方もどんどん惹き込まれてしまいました。
 

 
普段はコミカルな役が多いジョナ・ヒルのシリアルな演技も素晴ら
しいです。特に目の表情。劇中、彼のアップで目元にズームが
当たる場面が多いのですが、まさに目が口以上にモノ言う演技。
劇中、「二重否定(Double Negative)」という文法の単語がKey
Wordの一つとして効果的に使用されるのですが、思いがけない
場面でその単語を耳にした時のフィンケルの驚愕、そして戸惑い
と疑念に変わっていく表情は圧巻です。
 

 
『スパイダーマン』シリーズで主人公の親友役を演じていた美少年
が渋みと落ち着きを備えてこんな素敵な大人の男性に。『スパイダ
ーマン』の頃から、どこか危険な香りの感じさせる魅力と繊細な
演技力を発揮していましたが、今回の役はまさにジェームズ・フ
ランコの魅力炸裂。ハンサムで妖しい魅力に溢れた謎の男性。
繊細だけど人懐っこさもあって人に安心感を親しみを感じさせる
のに、何か見透かされているような。警戒しようと思いつつ、つい
つい近づいていってしまいそうです。
 
そして、フィンケルの妻ジルを演じるのが、近頃引っ張りだこの
売れっ子、我らが(笑)フェリシティー・ジョーンズ。彼女も勿論
ステッキーです。
 

 
夫がどんどんロンゴにのめり込んで行くのを、心配しながら
応援し支える妻。彼女はフィンケルがロンゴに肩入れしていく
のを冷静に見守りながら、ロンゴの発言の信ぴょう性について
は懐疑的な立場を保ちます。
ジルがロンゴの接見に訪れるシーンは、緊張感に溢れてドラマ
チック!フェリシティ・ジョーンズの演技力と存在感に、痺れます。
刑務所の面会室でロンゴに対峙するジルの表情が
脳裏に焼き付いて離れません。
 
法廷シーンもある犯罪ドラマでもあり、真実と報道の狭間で揺れる
1人のジャーナリストの苦悩と葛藤の物語でもあり、夫婦や他者と
の関係における信頼について考えさせられる部分もあり、実際の
事件を追ったノンフィクションの要素もあり。事実は小説よりも
奇なり。その事実をさらに才能の塊がよってたかってドラマチック
に料理するとこんなすごい映画が出来上がります。
 
残念ながら今のところ、日本での公開は未定の様子。どうして
どの配給会社も買い付けないんだろう?大きいスクリーンで観たい
よぉ。いつか叶うことを祈りつつ・・・安心してください、ちゃんと
日本語字幕付きで鑑賞できます。私はWOWOWで録画しましたが
また何度か再放送するでしょうし、同様に他局の衛星放送、また
は有料動画配信サービスなどでも視聴できるようです。
機会があればぜひ^^。
 
エンドロールで、本物のフィンケルとロンゴの写真と、その後の
二人についての情報が少しだけあります。もちろんフランコには
及びませんが、本物のロンゴも相当のハンサムマンのようです。
 
 

トゥルー・ストーリー (字幕版)
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2015年