オースティンランド 恋するテーマパーク | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

2013年 イギリス、アメリカ

ジェルーシャ・ヘス 監督

原題: Austenland

 

 

ジェイン・オースティン祭りにあたって関連映画を検索していた時にヒットした掘り出しもの。日本未公開。まぁ、そうでしょうねぇ。日本で一般ウケするほどのオースティンの知名度、浸透度が足りないし内容観てもそもそものジェイン・オースティンって誰?高慢と偏見?ダーシー?何それ??状態だったら全く意味不明の世界(苦笑)。「ジェイン・オースティン 秘められた恋」はアン・ハサウェイの知名度と日本での人気度、それに一人の女性の成就しなかったラブストーリーという普遍性でいけたんでしょうけれども。

 

 

過度のオースティンオタク、いやもはやオースティン依存症のアラサー独身女性ジェーン(ケリー・ラッセル)の、逃避と幻想のカタマリのようなダーシーグッズ、オースティングッズに溢れたファンシーなお部屋↑(笑)。等身大のダーシー様パネルまであります。ちなみにジェーンがBFそっちのけでファンタジーに浸っている「高慢と偏見」のミスター・ダーシーはここでもやっぱり、BBC版ドラマのコリン・ファースなのでした( *´艸`)。当然か必然か、現実での恋愛には失敗続き、どんづまり。で、友人の反対を押し切って貯金はたいて向かった先は、イギリスにある架空の体験型施設オースティンランド、別名「ダーシーの館」。

 

 

オースティンランドはジェーンのようなオースティン世界に憧れる女性のためのエンタテイメント施設。滞在期間はおそらく一週間程度でワンクール3人程度の限られたゲストが18-19世紀のイギリスを彷彿とさせるお屋敷と調度品に囲まれて当時のコスプレをして、オースティン世界を疑似体験。滞在するお屋敷のホストと男性客、使用人たちは全員オースティンランドの”キャスト”達。年上の貴族の紳士もいれば、ダーシーぽい紳士もいたりして全員独身。それぞれのゲストに合わせてオースティン的ラブストーリー風の展開が用意されています。晩餐会やクリケット、狩り、音楽会などのアクティビティが繰り広げられてハイライトは最終日夜の舞踏会での求婚というコテコテっぷり(笑)。

 

最初のうちは、何だこれ・・・チープで薄いB級コメディか?(◎_◎;) とソワソワしましたが、段々と「やだ・・・これ、アリかも」とハマりはじめる自分(笑)。最後には大笑いで、すっかりお気に入りになっていました(´ω`*)。敢えて散らばめてあるツッコミどころ満載のパロディやボケも気が利いているし、何より何気にキャスティングがお宝級でした。

 

 

どうやら車まで売って貯金もはたいてツアーに申し込んだのに、ジェーンは一番安い「スタンダード・コース」。一方底抜けに明るいキャラのエリザベス・チャーミング(ジェニファー・クーリッジ)ともう一人の自信過剰典型ブロンド美人(つまりオバカキャラ)のアルメリア・ハートライト(ジョージア・キング)は「プラチナ・コース」で、何から何まで境遇に差が。方や盛りヘア+きんきらジュエリー+高級素材のヒラヒラドレスに豪華な寝室、方やひっつめヘア+ノーアクセサリー+ダークカラーの地味な日常着と屋根裏の使用人部屋。それでも舞踏会のイメトレなどでウキウキ夢見る気持ちが破裂せんばかりの序盤のジェーンが痛々しくも可愛いです。

 

 

アメリカのコメディエンヌの定型のひとつに、アメリア的ステレオタイプなブロンド女性の対局、つまりブロンド系白人女性でふくよかであけっぴろげで底抜けにポジティブていうのがありますがまさにこの映画のリズ(=エリザベス)がそのタイプで、ジェニファー・クーリッジはそんなコメディエンヌをやらせたら抜群♪騒々しくて馬鹿々々しいだけじゃなくて、人間らしさや温かさピュアネスまできちんと表現できる素敵な女優さん(*‘ω‘ *)。リース・ヴィザースプーンの出世作「キューティー・ブロンド」にもレギュラー出演でとってもいいアクセントを添えていました。ライバル的ポジションのアメリアとのバランスやオバカ合戦(笑)も、見どころ。リズのお相手役を振り当てられたアンドリュース大佐(ジェームズ・カリス)の苦戦模様も笑えます( *´艸`)。

 

 

ちなみに屋敷の女主人、つまりオースティンランドの経営者で元女優のワトルスブルック夫人。オープニングでいきなりオースティンランドの宣伝ビデオに登場でその奇抜さと謎さ(笑)に度肝を抜かれてしまいますがよくよく見るとなんと、まさかのジェーン・シーモアΣ(・ω・ノ)ノ!

元ボンド・ガールで、そのうち観なおしてレビュー書こうと心に決めているクリストファー・リーヴと共演した「ある日どこかで」での神々しい美しさが忘れられません。

 

 

そして、女子の憧れ、妄想の彼氏、ミスター・ダーシー的存在感バリ放出なのはワトルスブルック夫人甥のヘンリー・ノーブリー氏。なんとつい先日観た「ノーサンガー・アベイ」のJJ・フィールドと再会でハッピー・サプライズ(*‘ω‘ *)。不機嫌な不愛想ヅラがもうたまりません(笑)。この一週間で急速にJJ・フィールドのファンになっちまいました(´_ゝ`)。

何気に「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」で、キャプテン・アメリカが結成する特別部隊のメンバーの1人として出演していたらしい・・・やばい、もう一度観直したい(笑)。

 

 

プラチナ・コースとの待遇の違いや、虚構世界のごっこに若干の失望や虚しさを感じるジェーンの心の隙間に入り込むのは、運転手兼馬番の使用人マーティン(ブレット・マッケンジー)。スタッフとゲストの私的な会話や接触はNG、音楽や楽器やスマホなどの近代的なツールは持ち込みNGなど厳しい規則があるオースティンランドで、お互い小さなルール破りの目撃者という罪の共有と共感とで俄かに接近しますが・・・。

 

 

親しみやすく優しいマーティンと親密になる一方で、目も合せようとしないし不愛想なノーブリーのことも何だか気になるジェーン。ノーブリーも、チラチラとジェーンのことを気にしている様子。2人の男性の間で揺れる夢のようなヒロイン体験がジェーンを待っているこれみよがしな予感にニヤニヤ( *´艸`)。ノーブリーの不器用っぷりにキュンキュン(笑)。ちなみにブレット・マッケンジーは「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」のシリーズにもちょい出演していて、そのネタをイジるワン・ギャグもありますよ(笑)。

 

 

途中で参加(戦場から凱旋という設定)のマッチョ男ジョージ・イースト艦長(リッキー・ホウィットル)の存在もあり得なくて笑えます。良心的な悪ふざけとユルさのさじ加減が本当に抜群で、観るほどにツボる映画。好みは勿論別れると思いますが、ちょっとお疲れモードの気分にもヒットして、映画観おわってからもう一度ハイライトシーン観直しちゃいました(笑)。

 

 

ところでジェーンは何かっちゃあ「I♡MR DARCY」のロゴ入りグッズを愛用しているんですが、このエコバッグ、帰りの空港の通りすがりのオースティンランドと無関係そうな一般男性が同じものを肩にかけているという仕込みもあったりして笑いました。画面の隅々までチェックしたら山ほどコダワリが詰め込まれているんだろうなぁ。ちなみにこのオースティンランドをすっかりお気に召した我らがリズのお陰でとんでもない未来の展開があるのですが、そこでもこのロゴはまさかの爆笑小ネタで登場します( *´艸`)。

 

そうそう、リズといえば、ジェーンが落ち込んでいたときの励まし方が好きです。「元気を出して。早まったりしないで。必ずいいこともあるから」という趣旨なんですが、その説明に「自殺した人のことを考えてみて?彼らは翌日後悔しても、もう手遅れなんだから!」って・・・オイオイ(苦笑)。励まされるのかたしなめるべきなのかよくわかんないけれど、なんだかとにかくリズらしくって思わず微笑まずにいられません。そんな台詞を邪気なくこなせるジェニファー・クーリッジやっぱり素敵^^。

 

- Am I your fantasy?

 

そして、この映画の大きなテーマのは「ファンタジー」。何度も、fantasyっていう言葉が登場します。そして、最後の最後に、ようやくたどり着いた現実・・・はい、メロッメロの王道ラブ・ストーリーなオチですが、もうそこにはツッコむ気力もさらさらない、ほのぼの、楽しくて素直にあぁ、よかったよかった♡な気分になるのでした。

- You are my fantasy.

少年の心と夢見る乙女心をこっそり抱えて、しっかり足を地面につけて前を向いて現実を逞しく生きていきまっしょい、なのでした。

ジェイン・オースティン祭り、残りあと1本の予定です(´_ゝ`)。