■2020年8月に観た映画
41本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)
・ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー (原題:Booksmart) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2020.8.31)
監督:オリヴィア・ワイルド。2018年。日本公開2020年。イケてない秀才女子2人が高校卒業式前夜のパーティに参加しようとして...というお話。中盤までは"すごく普通な映画だなー"と思いながら見てましたが後半の追い上げを頑張りこの点数に。そんなに皆が言うほどかなというのが正直な所。もちろん良かったし、全然悪くないんだけど普通に良いねくらいの感じ。ラストの卒業式スピーチシーンがめちゃくちゃグッとくるような小演説を期待して待ってしまったので拍子抜け。期待しすぎましたね。それでも全編通して面白かったし、映画としてのストーリーテリングも良く出来ていた。前半のパーティ会場探しのくだりが冗長に感じてしまい徐々にテンション下がっていたのが原因ではないでしょうか。下ネタギャグがずっと笑えなかったのがちょっと残念ではありましたが、さっぱりとして良い映画だった。
・レディ プレイヤー1 (原題:Ready Player One) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2020.8.30)
監督:スティーヴン・スピルバーグ。2018年。すごく周到に考えられておりものすごく良く出来ている一作。私の様にこういった類の映像(自体)が苦手な人間でも最後までしっかりと楽しむ事が出来た。が、途中でダレる事も無かったし面白かったけどむちゃくちゃ面白いわけでは無かった、というのが正直な感想。というか、長い。でも長いのに最後までしっかり見れたのは構成力や演出その他すべての要素が完璧なエンタメ作品として機能しているからだろうと思う。簡単に書いたけど、それがすごい。名作映画やゲームなどのオマージュはイントロクイズやこれは何でしょうクイズ的な面白さやオールスター戦の様なワクワク加減もあり楽しくは見られた。でも2045年?の設定なのに結局80年代に思いを馳せるのはどうかなと思う。
・かぐや姫の物語 - 3.9/5.0 (Blu-ray/2020.8.29)
監督:高畑勲。脚本:高畑勲/坂口理子。2013年。勲の方がしっくり来るんじゃないか説検証シリーズ。今のところ当てはまっています。というか、駿の作る作品も好きだし、もちろんジブリ自体も好きなのでこの検証はどうなんだという感じもしますけどね。"ジブリのこの作品が好き"というのはあまり無く、二人の持つ作家性にすごく惹かれる部分が強い。この作品は、日本最古の物語としても知られる「竹取物語」のリメイク。ですが、2020年を生きる私にはどうにもパッと浮かばないくらいには歴史的書物の様なものになってしまっているかと思います。話自体はすごくシンプルで、"月=死の世界、無の世界"という最後の部分をどう解釈するかで意味合いが違ってくるかと。画がジブリっぽくないとか、話が知ってて詰まんないとか色々感想はあると思うが、かぐや姫の人間(生物)としての成長譚としてキッチリと描かれていて、子供にももちろんしっかりと届く内容になっている。かぐや姫が駆け出すシーンの緊張感だったり、クライマックスの脱走してお兄ちゃんと会った時の空飛ぶシークエンスとかは画の迫力と演出で泣きそうになる。静かながらどっしりと重い感想を宿す作品。好きです。"作画:しりあがり寿"かと思った。(じじいだけ漫☆画太郎)
・2001年宇宙の旅 (原題:2001: A Space Odyssey) - 4.2/5.0 (Blu-ray/2020.8.28)
監督脚本:スタンリー・キューブリック。1968年。ようやく鑑賞。キューブリック作品全般そうなんですが、この作品はとにかく映像美。とても52年前の作品とは思えないCGも無い時代に見せるこの宇宙描写。宇宙船の中でのシーンもこれ一体どうやって撮影したんだと思う様なシーンが多くこの作品自体に宿っているパワーを感じざるを得ない。特に後半からのさもすれば狂気を感じるAI暴走(今思えばこの設定も68年とは思えない)からの光のシークエンスからの宇宙に生命が誕生するという一連の流れには美しさ、怖さすら感じる。とにかく完璧に美しい一作。自分の映画的教養が低く、これ以上言葉にすることが難しい。
・ノンフィクションW 大林宣彦&恭子の成城物語 [完全版] ~夫婦で歩んだ60年の映画作り~ - 3.8/5.0 (U-NEXT/2020.8.26)
監督:犬童一心、高橋栄樹。2019年。WOWOWオンラインのオリジナルドキュメンタリーとして製作された。大林監督と恭子さんの出会いから結婚~CM作家から映画監督になるまで~晩年の2作品の映像を長塚圭史のナレーションと共にドキュメンタリー化。貴重な映像やエピソードが多くとても興味深かった。中でも、大林監督がまだ子供の頃(小学校低中学年?)に書いた"之(え)日記"。完全に漫画になった絵日記は最初のコマが時計のアップから始まり最後のコマも時計のコマだったり、過去と現在が混同する時計、時計の中にある現実、ぺージやコマの枠からはみ出した銃弾など、非常にアーティスティックな味わいで大林監督は幼少期からそういった感性を発揮していたという事がよく分かったのが良かった。時計モチーフが多かったのか、そこだけ抜粋されたのかは不明。そして、妻である恭子さんにもかなりのスポットを当てたこの作品は、恭子さんの大林作品に対する思いや姿勢も見て取る事が出来る。遺作となった「海辺の映画館~」のスタッフエピソードとして"恭子さんがプロデューサーだからこれだけの大林組常連が集まったんだと思います"という言葉には、恭子夫人への信頼度や彼女の貢献度、重要度が伺えた。ラストシーン、娘である千茱萸さんの"この映画のジャンルはなんですか?【映画だ!!】これでいいんだと思います。"というスピーチ(劇中のセリフの引用)には胸を打つものがあった。犬童一心監督もラストシーンに向けてきちんと映画的に作品的にと編集をされており良かった。ファンとしても非常に楽しめるドキュメンタリーであった。あと5倍見たい。「もうやめよう、弾けないもん」
・死霊のはらわた II (原題:EVIL DEAD 2-DEAD BY DAWN) - 3.4/5.0 (DVD/2020.8.26)
監督脚本:サム・ライミ。1987年。先日鑑賞の「死霊のはらわた」から6年。"だいたい2は何ともな事になるだろうけどなあ"と思いながらも鑑賞。「悪魔のいけにえ」同様やはり続編は難しいなという部分もある。がこれは「悪魔の~2」よりも好き。6年の年月は映像的(おそらく資金的にも)な豊かさを呼び、描写がブラッシュアップされ前作よりも面白く強烈な画になっていたのが良かった。序盤全く同じ話で"リメイクか?"と思ったが逆にそこも面白いくらいだった。面白さ自体は徐々に失速していき後半はダレた感が否めなかった(1は後半から怒涛の神がかり展開を見せる)。ラストシーンは突然のかつまさかのSFオチで無言になってしまった。壁に向かってショットガンを何発か打ち、壁に空いたいくつかの穴から文字通り"超"大量の血が飛び出してきて主人公が血塗れになっていくシーンで爆笑した。シャイニングもびっくり。
・パッチギ! - 3.4/5.0 (U-NEXT/2020.8.24)
監督脚本:井筒和幸。2005年。井筒監督作品は映画好きになってからは初めて。昔に「岸和田少年愚連隊」は鑑賞したが何が何だかさっぱり覚えていない。日本人と在日韓国朝鮮人の差別や共存、そして主人公の国籍を超えた恋。すれ違いを繰り返す両人が最終的にはなんとなく和解をする話。それ自体が一方的に見えるし、勝手に日本人がすり寄っていっただけであくまで韓国人の反日は変わらないだろうとこれを見て、普通は思う。最後にラジオで韓国の曲を主人公が歌ったとてこれまでにも出てくる描写だし、それが説得力になるなんて到底思えない。全編にわたり謎に都合の良い条件というか脚本が続き何だかノレなかった。こういうのを見ると大林監督の「北京的西瓜」がいかに誠実で名作かが分かりますね。暴力や差別で和解は描けない。井筒監督は、これが最高傑作と言われてるっぽいのでどうかなという感じ。(一応あと「ガキ帝国」は観ておくつもり)あ、若かりし頃の沢尻エリカは非常に可愛かった。
・真夏の夜のジャズ 4K (原題:JAZZ ON A SUMMER’S DAY) - 3.0/5.0 (センチュリーシネマ/2020.8.24)
監督:バート・スターン。オリジナル1956年。4K修復版として再上映。内容を調べずに行った自分も悪いのですが、ひたすらに56年当時のライブ映像と観客を映していくだけのドキュメンタリー。正直言ってたるかった。オープニング、揺れる水面がたばこの煙や夏の蜃気楼、ゆらゆらと音楽でトリップしていく表現しているだろう描写などと一緒になって冒頭からいきなり超美しく映画的なシークエンスから始まり、期待度が高まった。ライブシーンも横顔の接写だったり、通常のライブ映像では味わえないなんとも絶妙な表現となった。観客を映し出すシーンも多く、ドキュメンタリックでもありながら何気ない瞬間を捉えた映像はタイトル通り「真夏の夜の」なんでもない1日に起こった、でも全員が登場人物であるかの様なこのミニマムな映像体験にぴったりだった。著名なジャズマンたちのライブ映像ももちろん良かったのですが、ただ凝ったライブ映像を見せられただけで感動するものがなかった。そういう映画だから仕方ないのですが。とんこつラーメン屋に入って"さっぱりしたラーメンが食べたかった"という感想くらい筋違いではあるが、映像の美しさ以外の良さがあまり拾えなかった。
くもりときどきミートボール (原題:Cloudy with a Chance of Meatballs) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2020.8.23)
監督脚本:フィル・ロード/クリストファー・ミラー。2009年。某ラジオ番組の影響で視聴。パッと目についたのはとにかく色味が綺麗。様々な描写をカラフルにかつ繊細に色使いされており、観ているだけで満足度の高いアニメーションとして成立していた。水分を食べ物に変える装置を発明し、それが暴走を起こして巨大食べ物が街を襲うというプロットは面白かった。わりと軽く何も考えずにみられる内容で良かった。子供は喜ぶだろうなあと思う。ただ、絶賛されていて期待したほどでは無かった。まあ良かった。
・ベイビー ドライバー (原題:Baby Driver) - 4.0/5.0 (Blu-ray/2020.8.22)
監督脚本:エドガー・ライト。2017年。「ショーンオブザデッド」以来の鑑賞。たぶんその間にもいくつかの良作があると思いますがいろいろ見たいのが多すぎて追いつかない。ずっと見たいと思っていたこちらを。ベイビーと呼ばれる若いゲッタウェイドライバーが事件を起こし...という内容。メロドラマな一面もあったりするのですが、この映画は何よりも音楽と痛快なカーアクション。"あぶない!"とギリギリ回避し安堵した次の瞬間にはまたピンチ(または事故)がちゃんと良いしてある辺り抜け目なくエンタメしていて終始ハラハラ&ヒャッハー出来て最高だった。音楽のリズムと映像が同期する瞬間の気持ち良さが劇中何度も出てくる。そういった部分も非常に楽しい。罪を犯した主人公に対し(まあちゃんと逮捕されるのだが)仮釈放の余地があったり、彼女であるデボラが何故そんなに惚れるのかがよく分からなかったり、何だか甘いな~と思う様な箇所や都合の良さはあったがそれをチャラにするくらいそこ以外がわりとずっと面白かったので問題なし!という感じでした。IMAXとかドライブインシアターとかで是非見てみたい一作。良かった。
・死霊のはらわた (原題:THE EVIL DEAD) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2020.8.22)
監督脚本:サム・ライミ。1981年。「悪魔のいけにえ」と並び語られるカルト作品。「悪魔の~」が大好きなのでどんなもんじゃい状態で鑑賞。中盤までは"まあ面白いけどそんなに?"という感じで見てましたが後半一気にめちゃくちゃな展開かつ熱心に作られたグロ&ホラー描写によって最狂のスプラッタームービーとなった。とにかく描写の狂い度がひどい(褒めてます)。怖いというよりもひどい。何でこんな事になるのか、まともな思考回路では絶対に作れない。何で死霊状態が伝染するのかもよく分からないけどそんなのどうでもよくなる描写の説得力。クライマックスの「死者の書」を暖炉に投げ入れ焼く事ですべて終わらせようとするのは「ヘレディタリー/継承」のクライマックスを彷彿とさせ嬉しかった。ラストで生き残った一人もたぶん死んだのも全く救いも、そもそも作品自体の意味もなくて良かった。
・コクリコ坂から - 2.7/5.0 (TV地上波/2020.8.21)
監督:宮崎吾朗。2011年。宮崎吾朗2作目。1作目「ゲド戦記」がすごい(酷い)らしいという事で、ジブリ強化期間とは言え吾朗作品は一番後回しにしようと思っていたのですが、地上波金曜ロードショーでやっていたので鑑賞。まず、作画が微妙。アニメーションとしても微妙。描写が微妙。音楽が酷い。話が無い。つまんない。見てられないほどかと言われればそうでは無いのだが、とにかく何の感想もないくらいに人畜無害かつつまらない。見ながら"こういうオチにした方が良かったんじゃないか"という事まで言いたくなってしまうほどにお話としてどうかなという状態(ラストは主人公の元に本当の父親がやって来て、取り壊し阻止vs親父との再会の選択を迫られ、取り壊し阻止を取り"親父が何者であるか"よりも"自分が何者であるか"を選択した事で人間的に成長するお話)。あとはとにかくひたすらに音楽が酷い。音楽の使い方が知っている中で一番ひどい映画かも知れない。あんなにずっと鳴っている必要もないし選曲も悪いし音量もでかい。音楽的な素養も感性もまるで無いのだなと感じた。
・ゾンビデオ - 3.2/5.0 (U-NEXT/2020.8.21)
監督:村上賢司。2012年。70分ほど時間が空くという何とも都合のいいタイミングがあったので見た。近代アイドル映画はホラーとかゾンビものですね、やはり。基本的にB級を通り越してD級のような質感。まあ正直内容としてはどうなんだという感じですがw、そんなに嫌ではなかった。頑張ったスプラッター描写(もうちょい直接的でも良かったのに)や、登場人物がゾンビマニア的な脚本だったり、タイトルロゴがサスペリアだったりと小さな幸せ多めで許せた。ラストの緑の体液を吐き出すの描写は別に実写で良かったのでは?とちと残念。血塗れの矢島舞美が5万点!
・クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 - 3.6/5.0 (DVD/2020.8.20)
監督脚本:原恵一。2002年。先日見た「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」が良かったので同監督でもう一つ評判の良いこちらを。「オトナ~」は"家族を守る"事をテーマにしんちゃんが奮闘する見せ場がテーマになっているが今作は"命を守る"事がテーマ。これがまずは前作とはっきり違う所でしょう。故に、もちろん命を題材にしているので"泣き度"で言えば今作の方が圧倒的に高い!...はずが、、内容の面白さ自体が結構低く「オトナ~」の方が数倍面白い仕上がりに。続けて観ると結構残念な出来に...というか、とにかくこの作品はしんちゃんの活躍する見せ場が少ない!これに尽きます。基本的には"おまたのおじさん"の頑張りをしんちゃん達と一緒に見守るスタイルなので、どうしても感情移入しにくい。しんちゃんが活躍するシーンがもっと、3,4つ多ければ(圧倒的に足りていないという意味です!)、ラストの"金打!"のシーンなんて号泣できたのに。。という感じで非常に勿体ない出来。映画的なシークエンスの面白さも「オトナ~」の方があったかな。ひろしが刀じゃなくてダイエットの棒的なやつを振り回すのは笑った。し、やっぱりきちんとTVシリーズのノリを継承しつつも映画的な魅せ方をブラッシュアップして描いているこの監督は本当にえらい!(し、仕事が出来る!)ですね。あと、ダンスマンのエンディング曲が良かった。
・セブン (原題:Se7en/SEVEN) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.8.20)
監督:デヴィッド・フィンチャー。1996年。何故か食指が伸びずにそのままにしていた作品をようやく。ブラピとモーガンフリーマン演じる2人の刑事が"七つの大罪"をなぞって連続殺人を行うシリアルキラー逮捕へ向けて事件を追う。かなり親切な作りで分かり易いし見やすい、引っかかる所もなくスルスルとクライマックスまで来つつも、物語の要点やアクション、スリラーシーンなどはしっかりと見所として押さえつつ描写していく。ラストも胸糞悪くなんとも言えない観後感や衝撃を(一般的には)与えます。が。それだけ。個人的には物足りないなーと感じた。「ゴーンガール」などもそうですが、むちゃくちゃ良く出来てて分かり易いし上手な話だけど、特にこれと言って印象的なシーンも無ければ名言もない感じで残らない。今作で言えばオチであるブラピの奥さんとお腹の中の子供が最後の2人なんてのは予想出来たし驚きもしない。モーガンフリーマンが段ボール開けてドカンと爆死しなくて良かったなとは思った。最後の段ボール開けるハラハラシーンみたいなのが作中に何度か出てくれば満足度は高かったのですが。。。すごくよく出来てはいますけどね。何も考えずお菓子食べながら映画を見たい人向け。
・機動警察パトレイバー THE MOVIE - 3.2/5.0 (中川コロナシネマワールド/4DX/2020.8.20)
監督:押井守。1989年。4DX最終日に。4DXだし高いし迷いましたが一応監督のネームバリューを信じて。結論から言うと、うっすい。薄味。出汁入れ忘れたのか?と。当時の時代背景はイマイチ分かりませんが話自体なんか途中から始まったみたいだし、特に山もないままラストへ向かっていった。登場人物たちの行動動機に感情移入できない(させる気もない作りでしたが)。話がつまらない。し、描写もなんだか子供の頃に夕方やってたシティハンターの再放送(苦手だったな~..)を見ているような描写ばかりで非常につらいものがあった。あと、これは知らなかったのですが、作【ゆうきまさみ】と出た時点で漫画読んでいた身としては嫌な予感がしましたがそりゃそうだよなという感じ。OSという概念が無い時代にああいったテーマで作品つくりをしているのはすごいのかも知れませんが、同じ2020年に鑑賞した「AKIRA」がいかにすごかったのかがよく分かった。作品の賞味期限も重要だと思う。つまんなかった。
・オール アバウト マイ マザー (原題:TODO SOBRE MI MADRE) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2020.8.19)
監督脚本:ペドロ・アルモドバル。1999年。「talk to her」の前作。やはり基本的にはドラッグだったり、同性愛だったり、"どうしようもない+(逃れられない一癖)"の様な構成で登場人物たちが作られているというのは、3作観て同一の印象ではある。それがノイズになっている訳では全く無くむしろその逆で、最新作「ペインアンドグローリー」内でも同性愛男性(しかも初老)のキスシーンで不覚にも落涙間近であったように、どれもこれも生々しく痛々しい、痛切に美しいままに響いてくる画面になっていることがまずは素晴らしい。自分にそういう感情は無いと思うがそれでも胸が痛く締め付けられる。キャラクター描写が実に見事。前回のペドロ・アルモドバル作品評でも書いたが個人的な物語をスクリーンで重厚的にドラマに仕上げていく事で観客の中にもリアリティを持たせて引き込ませているのが良い(それって実はむちゃくちゃ高度な事やってないですか?!)。もちろん今作にも映画的なシークエンスも多く、作品美術がこだわられているのは有名ですが監督自身の美的センスが光りまくっている印象を受ける。尚且つ、物語や場面に無駄が無くダラダラと長くなる事を避ける尺で本当にソリッドで素晴らしい。女とオカマでスナック菓子を食べながらパーティするシーンが無駄に楽しそうだったりするのも素敵だった。やっぱり"ちょっとヘン(敢えてこういう表現をします)"な登場人物たちの物語の方が好きだな、と改めて思った。それを作品にまとめ上げる監督に脱帽。
・間違えられた男 (原題:THE WRONG MAN) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.8.19)
監督:アルフレット・ヒッチコック。1956年。フィルモグラフィー上で「めまい」後「サイコ」前にあたる今作。カメオ出演はほぼしないヒッチコックがオープニングに登場し、"これまでの作品とは違い、実話です"という事を告げ、違うテーマで描いている事を示します。【誤認逮捕】がテーマ。途中まで淡々と進んでいくな~と思いきや中盤に"誤認逮捕されて狂ってしまったのは本人ではなく奥さんの方"という何とも恐ろしい話に展開。お、これは良いぞどうなるんだと思って観ましたが最終的には一家は何とかなりましたエンディングでちょっと拍子抜け。まあそれが実話らしさであってイイのかなとは思います。「十二人の怒れる男」の時も思いましたが、ヘンリー・フォンダの顔が好きではない。"誤認逮捕されて狂ってしまったのは本人ではなく奥さんの方"という風に上記しましたが、"そりゃあんだけ何言われても何にも分かってなさそうなスットボケ顔してる奴なんだから何にも考えてなかったんだろうむしろそっちのが恐怖だよ"と思った。
・パブリック 図書館の奇跡 (原題:The Public) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2020.8.18)
監督脚本:エミリオ・エステヴェス。2018年製作、日本公開2020年。極寒の米シンシナティでシェルターに入れなかったホームレス集団が図書館を占拠して...というお話。根深く残る貧困格差によって行き場を失う人達が辿り着く場所(実際に近年増加しており社会問題にもなっているらしい)、そして市民としての権利を与えられている場所図書館。図書館スタッフも実は元ホームレスで共に抵抗をする様は、一見すると重たくなりそうな所を時折挟まれるコメディタッチを交えながら軽快に進行していく。観ていて若干長尺に感じられたがそうやってジワジワと広げた風呂敷はオチのためには必要だったんだなと最後まで見ると理解。丁寧に作られているしあくまでエンタメ作品として見せようとするエミリオ・エステヴェス監督の手腕が光った。"公立図書館が身分関係なく平等に知識や情報を取り入れる事の出来る施設であり人々はその権利がある"という事は知っていた様でよく意識していなかった部分でもあり、日本とアメリカでは確かに似ている様で違う存在感なんだなと感じる。公立図書館が開かれて文化や人権を保持し広げていく役割を担っているという事が一つ勉強になった。
・クラッシュ (原題:Crash) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2020.8.17)
監督脚本:ポール・ハギス。2004年製作、日本公開2006年。アカデミー賞作品脚本編集賞。様々な人種や地位の人々が事故をきっかけに関わりを持っていき、最終的にはなんとなーくうまく交わるという何ともファンタジーな作品。何をどうしたいのかイマイチよく分からなかったというか何も残らなかった。いろいろと都合よく行き過ぎな部分ももちろん沢山ある。映像自体は映画的な画面も多くて楽しめた。話にノレなかったかな。作品内での時間経過が36時間と短いながらも様々な登場人物の時系列とか感情とかを入り乱れさせながら着地させていく様は普通に上手だったし、タイトルの"クラッシュ"も、普段ならば交わる事の無い人達が"事故の時は"交わってしまうという意味合いだったり、それ自体が"事故"なんじゃないかという皮肉めいたスタイルはわりと良いなと感じる。
・風立ちぬ - 3.1/5.0 (Blu-ray/2020.8.16)
監督脚本:宮崎駿。2013年。ジブリ強化月間という事で鑑賞。当時劇場で見たはずだが記憶が無い。最初から最後まで山もなく盛り上がりもなく、オチも無く何だか非常に微妙な作品だった。基本的には"飛行機作り"の前後談(後日のゼロ船の事も)、と二郎と結核娘の恋のお話が平行して描かれているのだが、これがうまく無くなんの感動もなかった。あくまでそういう魅せ方をしている作品なのにこれは致命的では無いのか。"商業映画だから恋模様の部分は付けなきゃいけなかったのかも知れないよな~これだと"と思わせるくらいなら描かなきゃいいのにと思ってしまう。"そこじゃない"と言うのなら中途半端すぎだろう。シークエンスに関してはこれまでの駿描写よりもより内向的で妄想っぽくてイメージっぽい(頭の中の様な)カラフルで良いなあと感じる部分も多かったし、飛行船を見せる時にスクリーンが開けていく様な描写は"これこそ映画体験!"と思う様な素晴らしいシーンだった。そういう箇所がいくつもいくつもあっただけに内容の薄さ(というか中途半端さ)が何だか非常に残念だった。
・オデッセイ (原題:The Martian) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2020.8.16)
監督:リドリー・スコット。2016年。遭難SFモノ。もっとシリアスでぐちゃぐちゃになりながらも何とか生還する話かなと思いきや、火星で野菜を栽培したり(ワクワクした)、主人公がかなり前向きで明るいやつだったりとパワー溢れる作品だった。状況に戦慄したり、落胆したり、うまくいってガッツポーズだったり、作品内と外の感情共有が素晴らしく気持ちよく没入感高く見る事が出来た。クライマックスは超フィクション展開が待っていますが、まあ、良かった。救出決定した瞬間はもっと感情爆発してもいいだろうと思ったけれど出発前にクウウと1人涙を流すのがこの主人公の美学なのかも知れなくキャラクター描写も◎。皆さん仰られておりますが、ラストの"質問ある人~"全員手を挙げるからのエンディング!には鳥肌が立った。エンタメ作品として、明るくパワーを貰える良い映画だった。
・スウィング キッズ (原題:스윙키즈/Swing Kids) - 3.9/5.0 (DVD/2020.8.15)
監督脚本:カン・ヒョンチョル。2018年製作2020年日本公開。コロナの関係で上映期間が結構短くなってしまったのかな確か。ようやく鑑賞。最初結構構えて観ていたがすぐに"あ、わりと気軽に見れるようにしてるんだ"と、きちんと敷居を低くでもブレずに作っているのを感じられる。タップダンスの上達っぷりとか時間経過が分かりにくいというかあまり描いていない部分や気になる点はいくつかあります("Fucking Ideology"なんてタイトル言った時点で公演中止だろう)が、笑える要素もありながら(キム・ミノ演じる中国人ぽっちゃりダンサーの画での笑い力)、当時のシビアな状況も観客に把握させていく作りはうまかった。実はサムシクが黒幕で米軍暗殺を目論んでいたり、ギスの兄貴がアニメ的な存在感で描かれていたりとか苦笑いな箇所もあったりしながらも最後まで興味持続を持たせるのはさすが。ラストは韓国映画らしく一筋縄ではいかず。余韻も含めて良い作品だった。
・シェイプ オブ ウォーター (原題:The Shape of Water) - 3.4/5.0 (DVD/2020.8.15)
監督脚本:ギレルモ・デル・トロ。2018年。やっと見られたという感じで鑑賞。アカデミー賞とか獲ってるんですね。うーん、微妙。微妙というか全然ノレなかった。まずいろいろな部分が気になってしまったし魚人との恋にはどう頑張っても感情移入出来ない。魚人ビジュアルも無理だった。普通に気持ち悪くないすか。ちょっとググってみると"同性愛とか様々な差別がある中で人間と魚人の恋も同じなんだよ"的な方向性らしいのですが全く理解できない。"いや違うだろ話が"と言いたい。ここまでファンタジーに振り切った内容でそこを結び付けて観られる様な寛容性が無かった。部屋を水槽の様にして抱き合うクライマックスのシーンも"トイレが汚いな~うわあ~"とかそういう事が気になって全然感動どころではなかった。個人的なそういう潔癖部分を除いても"どうなの?!"という映画でした。全然良くないでしょコレ。
・インテリア (原題:INTERIORS) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2020.8.14)
監督脚本:ウディ・アレン。1978年。同監督初鑑賞。いきなりこんなベルイマンオマージュの物から入っていいのかという気もしますがそれが良いのか悪かったのか分からないがイマイチだった。というかつまらなかった。"そりゃ真似出来ないって!"と言いたい。ウディ・アレンのフィルモグラフィーを見たがあまりソソられなかったのでこれまでの縁かなとも感じる。内容が無さ過ぎてもう...。という感じでした。(完)
・インセプション (原題:Inception) - 3.7/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2020.8.14)
監督脚本:クリストファー・ノーラン。2010年。ノーラン強化月間IMAX再上映シリーズ。「ダークナイト」「ダンケルク」とIMAXで鑑賞したがどういう訳かは分からないがこの作品が一番集中して観る事が出来た。夢の中の話という事でフィクションラインとかそういう話では無くなって割とやりたい放題感が出ていて良かったのかも。それでも都合よすぎな部分や辻褄が合わない部分だったり言い出せばキリが無いのですが、ようやく"コレがノーランっぽさなのかなー"と思えるようになって来た。やっぱり圧倒的に映像的な面白さが特筆していて観ていて楽しかった。アクションシーンがどうこうという事もあるらしいですが個人的にはあまり気にならなかった、というかアクションシーン自体そこまで無かったような。クライマックスにかけて~ラストシーンまでという最大に重要な部分がイマイチ消化不良感のある仕上がりに感じてコレでいいのかなと微妙な気持ちに。ルール説明は長かったが結構ワクワクして観られた。
・クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 - 3.9/5.0 (DVD/2020.8.13)
監督脚本:原恵一。2001年。89分。劇場版クレヨンしんちゃん初鑑賞。2020年に初めて見る人の短文評。中盤まではどうかなーという感じで見ていましたが、後半にかけての盛り上がりで一気に巻き返しこの点数に。まずは、テレビ版では絶対にやらないよなという映画的シークエンスがきちんと多い事、そしてテレビ版でも見る見慣れた(定番の・安心な)描写を更にブラッシュアップして映画なりに濃く見せていく手法に監督のきちんとした態度が伺えた。主人公であるシンちゃんが動く動機も彼のチャーミングさも所謂劇場版仕様ではあるがきちんとキャラクターキープされているし(劇場版ドラえもんの様な過度な"劇場版感"も無く)、結果にはちゃんと理由がある描き方をしており非常によく出来ているなと感じた。お話の内容的にもラストは誰もが"シンちゃん頑張れ!!!"と応援したくなるし胸を打つクライマックス。中盤のカーチェイスシーンが無駄に長く感じて一瞬飽きかけたが他の余りある部分で挽回しチャラ。カーチェイスを短くして85分くらいだったら素晴らしかったかも。(まあそれでも90分切りとかなりソリッドには作られているが)
・悪魔のいけにえ2 (原題:THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE PART 2) - 3.3/5.0 (DVD/2020.8.12)
監督:トビー・フーパー。1986年。大傑作「悪魔のいけにえ」の続編かつ公式OMV的な。ちょっとした奇跡が起きていた1作目と比べるのが野暮なのでもう別物として捉えるんだけど、監督は同じだし、続編と言えばそうだし、という感じでとても困惑する出来。インディ魂を感じた前作が評価されて時間もお金も使えるので大衆向けにしてみようというトビー・フーパーのチャレンジ精神は評価する。コメディ路線に舵を切った(と言われているがそんなにコメディ感は感じない)結果、謎の作品に仕上がるという。きちんとしていて別に普通に楽しめるものにはなっているのですが、どうしても1を好きな身としては点数は上がらず。結構1と揃っている(揃えている)シーンも多く楽しめる。ラストシーンのチェインソー持ってダンスするのに爆笑した。"デニスホッパーのTHE チェインソー☆チャンバラ"という邦題が正しいかと。
・スイス アーミー マン (原題:Swiss Army Man) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2020.8.12)
監督:ダン・クワン。脚本:ダニエル・シャイナート。2017年。先日鑑賞した「ディック ロングはなぜ死んだのか?」がかなり不発だったので"何かの間違いでは?"と思い、ダン・クワン監督の前作を。デビュー作。製作配給は同じくA24。こちらは同じくかなりシュールな路線で何といって形容したらいいのか...()というこれはこれでかなり衝撃作なんですが、"ディックロング~"とは明らかに違う面白さ。"「死体がオナラをしたら奇跡が起きた」という妄想を一目惚れした人妻の家の裏の森でストーカーしながら考えていたら死にたくなって首を吊ってみた時に観た走馬灯"映画。というのが私の考えです。死体とバディになるプロットはじわじわと面白く、フィクションラインが曖昧で終始ふわふわした内容。ラストで主人公以外にも見えるのは意外だったけれど、まあ妄想世界という事でwというくらいには甘くしたくなる面白さでした。わりと好き。
・遊星からの物体X <デジタルリマスター版> (原題:THE THING) - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2020.8.11)
監督:ジョン・カーペンター。脚本:ビル・ランカスター。1982年。権利の関係上、日本での上映はこれで最後だという事でスコーレにて鑑賞。圧倒的にグロテスクなモンスター(エイリアン?)の造形と素晴らしい撮影。最終的に建物ごとぶっ飛ばす豪快さ。などカルト的になっているのは見たらよく分かります。物語的なカタルシスは特に無いのでそういう面ではかなりB級(というと言葉が簡単だが)なのは間違いないが、これが最高の珍味として長く味わえるのは頷ける。個人嗜好で言うと話がかなりのっぺりしているので集中力が削がれたのは間違いない。もっとスピーディに展開していくと85分くらいになってしまうか。むしろそれくらいで良いような気がするくらい内容の無いストーリー部分がダラダラしていて残念だった。
・ディック ロングはなぜ死んだのか? (原題:The Death of Dick Long) - 3.3/5.0 (センチュリーシネマ/2020.8.10)
監督:ダニエル・シャイナート。脚本:ビリー・チュー。製作:A24。"信頼のA24作品を..."と言いたい所でしたが、A24の作品をいくつか見ていくと"あ~そうでもないのかな"と段々と思えてくるのですがその典型のパターンでした。全てが中途半端。プロット自体もどうかなという感じですが、とにかくシリアスなのか笑えるのかちょっとどちらにも転ぶことが出来ずそしてなにかにつけて中途半端な出来という。オチというか死因も別にそんなに面白くないし、主人公たちや家族が狼狽えたり怪しんだり悲しんだりするにしても何だかそんなに切迫感や切実感がある様に感じないし、そこをすべて回収する様なクライマックスの事態が待っているわけでもなかったし。ほんと全編的に"中途半端!!"が一番しっくりくるなあと強く思った。話題のA24作品だからでしょうか、劇場は結構人が入っていましたがコレは誰が見てもわりとがっかり系だったんじゃないかな。(隣のおっさんは始めからラスト20分くらいまでずっと寝てた)
・アイアンマン (原題:Iron Man) - 3.2/5.0 (Blu-ray/2020.8.9)
監督:ジョン・ファブロー。2008年。"デッドプールイケるなら"と推奨されて鑑賞。つまんない。CGの感じも苦手だったし、なによりも物語が幼稚すぎる。主人公は戦う相手を間違えているし、変身?自体にもワクワクしない。メカとかコンピューターとかヒーローとか大好きな"ザ・男の子"映画。少年の心を持っている大人には響くのではないでしょうか。"リアリティが~"とかは言うつもりは無いありません、別に作品内のリアリティはちゃんとあったし。描写が微妙なのとアクションシーンがイマイチだし、主人公の動機もイマイチ乗り切れなかった。
・この世界の片隅に - 4.1/5.0 (地上波:NHK/2020.8.9)
原作:こうの史代。監督:片渕須直。2016年。長崎原爆投下の日にNHKで放送されており鑑賞。2020年は戦後75年。改めたまた平和について考えるタイミングでもあります。物語のクライマックスは広島原爆投下(とその後)。本題に入っていく前に昭和10年からしっかりと10年間主人公すずに起こる出来事を描写してから本題に入っており観客がより感情移入出来る素晴らしいオープニングになっている。すずの得意な絵、そして絵を描く右手、大切なものを掴む右手、過去を未来を触るはずだった右手、切迫感を持って観客に届く演出は非常にアニメーション的でもあり映画的でもあるその美しい描写の数々に感服。右手を失い背景がグニャリと歪んだ画になった瞬間にはもううまく描けない(過ごせない)事をはっきりと伝える。戦中過ごした人間が突然戦争の終わりを告げられた時の戸惑いなど戦後生まれの自分たちには想像が難しく、でも絶対に大切な部分を分かり易く伝わりやすくされており秀逸だった。また、8月6日の広島原爆投下、8月9日長崎原爆投下、8月15日敗戦。そしてその後と歴史を少しずつではあるがしっかりと描写して子供でも知識としてもちゃんと学ぶことが出来る作品となっていた。素晴らしかった。
・ドント ブリーズ (原題:Don't Breathe ) - 4.0/5.0 (Blu-ray/2020.8.8)
監督脚本:フェデ・アルバレス。これはホラーとジャンル付けされているが、ホラーか?と思う。最高のかくれんぼ映画だった。「MAD MAX怒りのデスロード」や「アポカリプト」など"最高のおにごっこ映画"は見たことあったが"かくれんぼ映画"もあるんだ!と感動。ストーリーはあるが理解しててもしてなくても全然楽しめる内容。ひたすらイカれた退役老人とのスリルを楽しむ事が出来る一作。もちろん、"主人公たちが悪いじゃん"とか"老人そんなに悪くないじゃん"という部分もあるとは思いますが、個人的には途中までそう思っていましたがやはりそれでも明らかに人道を外れた孕ませ描写の瞬間には絶対的に"この老人は悪い奴だ"と観客に思わざるを得なかった。あれをクリアしたと思ったら次はこれと次々に難関が押し寄せるストーリーはフィクションラインをギリで破綻させない超絶妙なバランスでグワングワンとぐらつきながらも最後までハラハラドキドキさせられた。最高でしょ。終盤の犬のくだりはちょっと微妙でしたがそれでも全然面白かったし"まだ終わらないんだ..."と思わせる最後の描き方も良かった。88分の作品にしてはやや冗長に感じたのは謎だったがそれだけ濃度が濃かったという事でしょうか。
・はちどり (原題:벌새) - 3.6/5.0 (名古屋シネマテーク/2020.8.7)
監督:キム・ボラ。2020年。話題のこちら。先日1日の日に観に行ったら満席で入れずでしたが平日14時という微妙な時間に行ってもほぼ満席(夜の回もあるにも関わらず)。"あーこりゃ1日に入れるわけないわ"と思いながら鑑賞。監督初作品という事でした。まずは映像が綺麗だし、画で情報を伝えていくのは非常に映画的だし、演出も気が利いているし、主演のパク・ジフの演技、存在感も含めてとても良かったのですが、(先日見た"WAVES"とかも同じなんですが)話がどうにも合わず。でなかなか大変でした。言ってることの大切さはよく分かるんですがイマイチ自分自身が没入していく事が出来ず。違う作品が早くも観てみたいなという感想。お話部分と出番少ないのにも関わらずイマイチな音楽以外はむちゃくちゃ良かったと思います!!!あと長い。
・ハニーランド 永遠の谷 (原題:Honeyland) - 3.5/5.0 (伏見ミリオン座/2020.8.5)
監督:タマラ・コテフスカ、リュボミル・ステファノフ。2020年。水も電気も無い地帯ではちみつを採りながら暮らす一人の女性と、彼女に介護される寝たきりの盲目の母。そして、その隣のDQN大家族。3年以上/400時間以上掛けて撮影したドキュメンタリー作品。膨大な映像から物語を紡いでいき、季節の移り変わりと母の老衰と共に描かれていく。ドキュメンタリーと言えどもきちんと立派過ぎるストーリーが紡がれており物語としても楽しむ事が出来る。蜂の羽音、風の音、動物たちの声、人工物の音の無い世界。映像も美しく満足度もあったのだが、一体この話を誰が何のためにやっているのかがよく分からず"何を見ているんだろうコレは"状態に途中陥ってしまい、集中が途切れたりもした。見終わっても"ん~で?"という感想が出てきてしまい、ジャンル映画の難しさを知る。
・めまい (原題:Vertigo) - 4.0/5.0 (DVD/2020.8.5)
監督:アルフレッド・ヒッチコック。1958年。いよいよヒッチコック「めまい」。62年も前の作品なんですね。やはりこうして2020年に観ると若干というか色々と突っ込みたくなるところはありますが、58年当時にこういった切れ味鋭すぎる作品を残している事に驚愕。美しく、気味が悪く、モラルにも直結するようなラブストーリー。素晴らしかった。中盤の悪夢演出や、階段のめまいシーンなど目の醒める様な描写がクール。いくつも描かれる背景合成は大林ファンとしては歓喜せざるを得ないが、これ58年にやってたんですねすごい。自殺だけに終わらず(その時点ではわかってないけど)飛び降り女に似た女を見つけ執拗にそれこそ異常に昔の女の面影を求め重ね合わせていく後半の主人公の描き方の濃度にクラクラ。ラストはまさかの真相を突き止め真に迫っていく内容で予想を裏切られた。ラストシーンで飛び降りてバスッと終わりってのが若干うーんとは思いますが、今まで見たヒッチコック作品はそんな感じだったのでこれは色なのでしょう。お話って感じがして段々と癖になると思う。
・So long ! The Movie - 3.5/5.0 (DVD/2020.8.4)
監督:大林宣彦。2013年。AKB48の30枚目のシングル「So long !」のMVとして製作された。MVを依頼されたのに楽曲とはほぼ関係ない「この空の花~」の続編?(姉妹作?)として1本の中編映画(64分)を作り上げてしまった。撮影期間は3日間。いろいろと素材が少ない故か、合成&編集荒業が炸裂しまくっておりこれまた様子のおかしい珍品となっている。話は「この空~」に絡ませながら、東北大震災からの復興を強調した作りに。被災地訪問をしているAKBとタッグを組んで何かやるならばやはり東北の復興の力になるようなものをと監督が考えるのは当然で、"AKBのMVかと思いきやAKBを素材に大林監督が好き勝手映画を作った(金も秋元が出してくれるし)"という、作れるならば何でもいい状態なのがなんとも頼もしい。「この空~」にはなかった編集技工もさることながら本当に大林ワールド全開でかなり面白かった。入浴シーンが水着なのはいかがなものか問題はありますが。もちろんAKBファンには大不評だったようで、監督の思う"戦争なんて関係ないのに"という事は目の前で震災を見たはずの現代を生きるクソボケアケカスには正にその通りで、不安視する若者像はそのまま。監督の想いは届かないのであった。(当たり前体操)(アケカスバカしかいないんだから)
・アルプススタンドのはしの方 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2020.8.3)
監督脚本:城定秀夫。2020年。何だかんだと話題になっていたのでせっかくなので劇場で。高校演劇の戯曲という事でやっぱりどうしても舞台っぽくなってしまうのは仕方ないかなとも思いつつ。若い役者たちのこってりな演技や、微妙に間延びしたタイミング、1人が何かしている時に1人がぼけーっと突っ立っている所とか、さっきまで下にいたエキストラが真横にいたりとか、気になる部分は挙げ出したら割とまあまあ有ったり、すごく予想通りの展開を見せていったりもするのですが、最終的には物語がドライブしていくスピード感と青春のちょっとイタくもあり、刹那的なあの(過去に誰もが味わった)感覚をグググっと思い出させ映画の結末と繋がっていく様子はよく出来ておりとても楽しめた。高校生が主人公という事で、若者が青春時代に頑張る姿、自分や他者との関わりで価値観や気持ちが動いていく姿を見るのはやはりグッとくる。僕らがとっくの昔に通過してしまった"もう戻る事の出来ない青春"を遠巻きに振り返るには"アルプススタンドの橋の方"はとても良い距離感だった。ミニシアターだけではなくシネコンでも多少公開されているっぽくて、コテコテの演技やベタでストレートに伝わる展開などは所謂映画ファン以外の若者やなんなら子供にもしっかりと伝わる作品だと思う。この夏休みというか夏公開作品には内容的にぴったりじゃないでしょうか。非常にスカッとした良い作品だった。とても満足。
・透明人間 (原題:The Invisible Man) - 3.7/5.0 (109シネマズ名古屋/2020.8.1)
監督:リー・ワネル。2020年。本来ならば"はちどり"を鑑賞しようと思い今池まで出向いたのですが、満席かつ即席も出してくず、ケチくさ!と吐き捨てて109名古屋へ。DVDで良いかなと思っていたこちらを。せっかく1日なので。基本的に"透明人間"なので見えない。から怖くないというのが自分の中には前提としてあって"ふ~ん"って感じで見ていたのですが、中盤で透明人間化している理由・スーツが出てきた時点で最後まで楽しめるのかかなり不安に。スーツには超高性能なカメラが無数についておりそれが人間を透明化させるというプロット付きで"あーまだよかったそれなら納得"という感じで気が付いたらなんだかんだ最後までわりと楽しめました。今の時代で透明人間をとなるとこういう描き方は逆にリアリティがあって良かった。いろいろとやっぱりね的な展開もあってきちんと安心して楽しめる高水準作品でした。映画館ならではの音や"そこに無いもの"が見える瞬間とか、タイミングとか音量のダイナミクスもばっちりで娯楽作品として十二分に機能するジャンル映画。