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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年8月に観た映画

26本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編:2本

 

・仁義なき戦い 広島死闘篇 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.8.30)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1973年。先月の「仁義なき戦い」に続いてミッドランドがやっている35mmフィルム上映企画の続編として「広島死闘編」。タイミング的に千葉真一の追悼上映のようなものになってしまった部分もありましたが、このタイミングで映画館で観られて良かった。個人的には千葉真一の大友より北大路欣也の山中の方が好きだった。今作は何だかメロドラマっぽい展開を主軸に置いているところもあるので前作の方が好きではあるのですが両作共に圧倒的な画面の熱量を感じさせられ、メロドラマ部分でさえも今これをこう描かなきゃならんのだという情念の様なものが画面から垂れ流れていた様にも感じた。改めて、初作のヤバさを感じる結果になったので上方修正したいなと思う。

 

・ヴィジット (原題:The Visit) - 4.1/5.0 (U-NEXT/2021.8.29)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2015年。シャマラン作品の観てないものも順々に観ていきたいなと思いまずはこちらを。が、これが面白かった!!所謂、POV映画の設定ではありますがそれ自体は実はどうでも良く、きちんと編集が効いていたりハッキリとドキュメンタリー作品風に仕上げされている部分に、主役の姉弟の今作における大切な矜持を感じます(エンディングにも繋がります)。謎の老人の家に訪問してしまった2人のお話なんですが、終盤(しかも結構長く引っ張ったので余計に怖かった)に種明かしされる展開にたどり着くまで、ゲロ吐き徘徊やオムツ溜め込み蔵、ドッキリカメラ、狂いインタビューなど、めちゃくちゃ面白いシーンの連発で否応なく不安な、嫌〜ぁな気持ちにさせられる。その上で遂に明かされる"祖父母だと思っていた老人が実は全くの他人だった"という最もシンプルな真実に辿り着いた瞬間の気味悪さ、怖さ、戸惑い、などなど一言では言い表せない"嫌さ"がもう満点。普通に1人で観てて声出た。子供2人で狂気の老人を殺す(?)のですが、あそこはもっとグチャグチャにしても良かったのではとも思いましたが(コメディとするならば)、全然無問題。最高に嫌な面白いホラーでした。
 

・ジョン ウィック (原題:John Wick) - 3.6/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.8.29)

監督:チャド・スタエルスキー。脚本:デレック・コルスタッド。2015年。「Mr.ノーバディ」に続き「ジョン・ウィック」シリーズの初作を鑑賞。「Mr.〜」もそうですが"無茶苦茶なバイオレンスアクション"と言うよりは、しっかりとお話に沿って観客に登場人物の気持ちをきちんと共有させながら展開していく作劇が得意なんだなという印象。もちろんアクションシーンはきちんとしているし、今作はとにかく銃撃戦の爽快さと、銃を持った格闘アクションの痛快さ、の2つが面白いポイントではないでしょうか。特に、地下室のプールのシーンでムキムキのマッチョを殴って殴って最後は脳天をワンショットのアクションシーンの痛快さと斬新さに爆笑。"猫ちゃんのペンダント紛失"だったり"飼い犬を殺されたので"とか非常に単純明快分かり易い動機で主人公の殺戮マシーンが大活躍するという設定はめちゃくちゃ何も考えずに見られて最高。シリーズものなので続きが早くも観たくなった。

 

・スタートアップ! (原題:시동) - 3.4/5.0 (wowow/2021.8.28)

監督:チェ・ジョンヨル。2019年。こちらも内容的にちょうどサクッと観たいタイミングだったので鑑賞。最初こそ"う〜んこれは..."と言う様な、如何にも商業映画然とした画面や展開が続いていたのですが(マドンソクの役もスベってる感が強かった)、終盤辺りから一気に自分の知っている韓国映画のテイスト、要は容赦無い展開が続き最後にはやはり少しビターに終わっていく締め方で、結構面白かったなぁという印象で見終えた。主役のパク・ジョンミンも良い役者さんだなと思いましたが意外にもあまり映画出ていなくてビックリ。まだ若いからか。TTするマブリーが見られる位しか見所という見所は無い。

 

・スパイキッズ (原題:Spy Kids) - 3.6/5.0 (wowow/2021.8.28)

監督 脚本:ロバート・ロドリゲス。2001年。WOWOWで録画したものを時間的にちょうど良かったので鑑賞。タイトルそのまま、所謂キッズムービーで、子供が活躍します。話の大筋が大切で細かいところは良いのさと思って見れば非常に楽しめた。ロバート・ロドリゲスが監督していますが、もっと悪趣味描写や人外表現を突き詰めても良かったのではないでしょうかとも思うが、それこそキッズムービーでは無くなってしまうのでこれくらいのバランスでいいのかも。オチの取ってつけた様な"ファミリー感"には若干の違和感が残りましたが。2もある様なのでそのまま普通に"今度は子供が主役なんだ!楽しみ!"と単純に思える終わりにして欲しくはあった。

・オールド (原題:Old) - 3.5/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2021.8.27)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2021年。シャマラン監督最新作ということで公開初日に鑑賞。平日昼間、客入りは20人ほど男女共に居るという感じでしょうか。"とある砂浜では1日で50年の時間が過ぎてしまう"というプロット1つで突き進んだ感がある108分のホラーテイスト映画。リゾートホテルに泊まっていた老若男女それぞれ入り混じる3つの家族とラッパーカップルが砂浜に集められ時間を共有する。人数分の老化のパターンや死んでいくパターンなど見せられ、単純にその部分は面白く観る事が出来た。が、プロットのツメの甘さのせいか余りにも一辺倒な流れや、少しの辻褄が合わない事が積み重なり最終的にはあまり響かない内容になってしまった気がする。段々と飽きてきてしまった。飽きるスピードの速さもビーチ譲りか。108分が長く感じた。オチも"お、おん。。。"としか言いようが無い出来で結構イマイチだったなぁという。

 

・シュシュシュの娘 - 2.9/5.0 (シネマスコーレ/2021.8.24)

監督 脚本:入江悠。2021年。アトロクの課題作品になったので鑑賞。久しぶりにスコーレに。お客さんは平日昼間で5人程。入江作品には、あまり興味を持って居なかったので初めての鑑賞となった。まず始まってすぐ思うのは、スタンダードサイズでの画面作り。最近で言えば「ライトハウス」などもそうで、物語の閉塞感と画面の狭さが非常にマッチしており良かったのですが、今作でのスタンダードサイズは正直、最後まで観てもあまり意味がわからなかった。そしてどうやら入江監督の作家性らしいのですが、長回しが多い。話自体が正直面白く無いので、画面でなんとかしようとしたのか、全編に渡りきちんと整頓されたスクエアサイズの画面が続き、長回しだったりそういった画面の部分でとても気を遣って作られているのが分かった。し、そこは良かった。今も書きましたがただひたすらに話が面白くなく、悪役や悪のテーマ自体も非常にステレオタイプに感じあまり没入する事が出来なかった。所謂"ツッコミどころ"みたいな部分はまあ別にそこまで気にならなかったのですが、ひたすらに何だか適当な話に感じてしまい、あまりノレなかった。

 

・トロメオ&ジュリエット (原題:TROMEO & JULIET) - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.8.23)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。ロイド・カウフマン。1996年。「ザ・スーサイドスクワッド」鑑賞記念、U-NEXTで見られるのでトロマ時代のジェームズ・ガン作品も観てみよう鑑賞。元々の「ロミオ&ジュリエット」を未観なのでどこまで忠実でどこからがふざけているのか分からないのがちょっと残念(自分に)でしたが、全体に初期作にある初期衝動や荒さが逆に味になっているように微笑ましく観た(とはいえなかなかの完成度なのですが)。ストーリー的にはきちんと、ルッキズムや人と向き合うという所にピークを作っており「スーサイド〜」とかジェームズ・ガン作品全てに通ずるフラットな視野を感じる。本当に優しいよね、この人は。だからゴアや残酷描写がより活きるし、ウソ故の説得力があるのだろうと思う。

 

・ドント ブリーズ2 (原題:Don't Breathe 2) - 3.0/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.8.23)

監督 脚本:ロド・サヤゲス。脚本:フェデ・アルバレス。2021年。初作が大好きでかなり楽しみにしていた。が、予告やちょっとした解禁されている内容から"これはもしかしたら..."と不安に思っていましたが悪い方向で的中。どこから言っていいやら、前作を全く無にするような駄作でちょっと如何なものかという感じでした。序盤こそ盲目老人の家の中(テリトリーの中)での格闘になりますので前作とあまり変わらずなのですが、家の中を飛び出し少女を救いに行く後半から、前作でそうだったように勝手知ったる家の中だからこそ面白く感じていた部分や納得がいっていた部分が一気に破綻し始め、ただのご都合主義な話にすごいスピードで転落していく様に途中から本当にどうでも良くなってしまった。改めて前作も非常にギリギリのバランスで面白さが保たれていてだからこそ最高に面白かったのだなと思った。監督が変わった事が影響しているのかどうなのかは分からないがとにかくガッカリした。イーライ・ロスは製作総指揮として名があるのですが何とも残念な出来だった。あと画面が暗すぎて判りにくい。

 

宇宙人ポール (原題:Paul) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.8.22)

監督:グレッグ・モットーラ。脚本:サイモン・ペッグ。ニック・フロスト。2011年。宇多丸氏の過去の映画評を聴いてチェックした一作。サイモン・ペッグとニック・フロストが宇宙人コメディなんて絶対面白いでしょ!と思いながら鑑賞。エドガーライトじゃないのは意外だと思いましたが、全く問題なく面白かった(評によればグレッグ・モットーラ監督作でこのコンビで観られる方がやばいでしょとの事でしたが)。僕の様な映画リテラシー低めの観客でもしっかりと分かるスピルバーグやSF作品へのオマージュに満ち溢れており、隅々まで楽しめた。特に脚本が良く出来ており、非常にスムーズにストーリーの把握もさせつつ面白さの核の部分を提示してくれているように感じた。しょうもないギャグも笑えた。父親が死んだと思い駆け寄るものの辛うじて生きてると分かるや否や凄い速さでUターンするシーンには思わず声が出た。

 

Beau (原題/2013年)

Munchausen (原題/2011年)

監督 脚本:アリ・アスター。特段見るつもりというか見るタイミングを探ったわけでは無いのですが、SNS所でリンクが張られておりちょうど短くて見られそうなタイミングだったのでvimeoとYouTubeで視聴。共にとても短い短編で、台詞も少なく字幕無くともほぼ画面だけで理解していく事が出来た。「Munchausen」は観たことある様な気もしたが思い出せない。「Beau」の方が気持ち悪くて良かった。早くアリ・アスターの新作映画を観たい。

 

・その街のこども 劇場版 - 4.0/5.0 (DVD/2021.8.20)

監督:井上剛。脚本:渡辺あや。2010年。阪神淡路大震災の15年後の節目にNHKにて製作されたドラマの再編集劇場版。主人公である森山未來と佐藤江梨子が1月7日に行われている慰霊祭の会場へと夜通し歩くだけ、の作品。演じている二人が実際に少年少女時代に震災を経験したというリアルと劇映画のフィクション部分とが折り重なり混ざり合う不思議な座組。お話自体は"ノンフィクションに近い劇作品"という様な具合なのですが実際に震災を経験している立場の2人が演じる事でもちろん劇中は自分とは別の人間を演じているのですが、謎にリアルだったり実感が籠っている演技演出になっている。カメラがいかにもデジカメ然としているのはちょっと気になりますが画面のルックは丁寧で、構図や魅せ方で持っていこうとする姿勢が良かった。淡々と進んでいく会話の中で二人がしてきた会話が繋がる瞬間や、聞いた話がいざ目の前に現れる瞬間にこの作品のカタルシスがある。クライマックスに用意されている美夏の友人宅へと向かうシーンから戻ってくるシーンまでの一連の流れと結果はとてもドラマチックで、先述した虚実ない交ぜが産む面白さが見事に映像として画面に映された場面の様に思う。直後の長い直線道のシーンも印象的だった。ロードムービーと言えばそうなのかも知れませんが、とてもチャレンジングな姿勢で作られた映画的な一作だった。

 

・ザ スーサイド スクワッド "極"悪党、集結 (原題:The Suicide Squad) - 4.0/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2021.8.19)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2021年。「フリーガイ」に続き今週公開で非常に楽しみにしていた作品をIMAXにて鑑賞。平日昼間、客入りは20人ほどと言った感じか。どうしてもIMAXで観たかったのですが微妙な時間しか上映が無く来週になったらもっと大変な事になりそうだったので何とかIMAXシアターに滑り込み。「スーパー!」で大好きなジェームズ・ガンが復活の一作且つしかもDCオールスター、SNSでも高評価だったので期待値高く観た。中盤の塔に入ってすぐのテンポと求心力のゆるみが若干気になったけれど、全体的にはとても面白かった。全編ふざけていると言えばふざけているし、真面目だと言えば真面目なんですが、あくまでも"フィクションだからこそ出来る強度"の様なものを利用して監督は作劇していっているなあと感じた。もちろんトロマ印の悪趣味や残虐描写はフィクションなんだけれど。そういうものを積み重ねて、嘘を嘘だと分かって描き切るからこそ描きうる真理(やメッセージ)が浮かびあがる作品に自分は非常に弱い。ラストのネズミが怪獣を襲うシーンなんてめちゃくちゃ気持ち悪かったのに何故かちょっと泣けてきた。フィクションの力を信じる。と言えば聞こえがいいですが、とてもそういうものを強く感じる作品だった。そりゃ大人になってまで真剣に頭吹き飛ばしたり、四肢を引き裂いてる人がフィクションと真摯に向き合っていないはずがないので。(大人になっても"冗談"でそういう表現をしようとする・するバカはいるが)

 

 

・フリー ガイ (原題:Free Guy) - 3.6/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.8.17)

監督:ショーン・レヴィ。脚本:マット・リーバーマン。2021年。デッドプールのライアンレイノルズが主演を務める予告編から楽しみにしていたこちらをドルビーシネマにて鑑賞。客入りは平日昼間で40人程か。ゲーム内でのモブキャラである主人公・ガイが人格と知能を持ち合わせてしまい(人間的な)成長をすると共に"自分"を手に入れようともがく。もちろんツッコミどころは満載ですがそういうものなので別にそこはいいのだが、肝心のお話や画面に全く目新しいものがなく全て"どこかで見たような"ものの連発。これも、そういうものでしょと言われればそうなのかも知れないが20世紀フォックスとディズニーがそれなりにお金をかけてこの程度なのかよ...とは思う。中盤のメロドラマシーンの背景を嫌味なほどに玉ボケさせていたり、メタ的なギャグはまあそれなりに観られる部分もあったが、何だか全体的にテンションの上がらない出来だった。ドルビーシネマの音響はやっぱり良かった。こんだけ爆音で派手な映画だったのにすごい地味な印象なのは何だろうと思う。帰りのエレベーターで乗り合わせた陰キャ高校生2人組が"「フリーガイめちゃくちゃ面白かった」て○○に教えないと"などと話しているのを聴きながら微笑ましくなった。

 

・キック アス ジャスティス フォーエバー (原題:Kick-Ass 2) - 3.3/5.0 (Blu-ray/2021.8.16)

監督 脚本:ジェフ・ワドロウ。原作:マーク・ミラー。ジョン・ロミータ・Jr。2014年。「キック・アス」の続編。ですが、監督脚本共に交代しており全く違うものに仕上がっていた。元から不評でしたが改めてちゃんと見てもこれは...という様な内容。ハッキリ言って"ナメてるだろ?"と思うし、全く持って愛情を感じない出来上がりにファンでなくとも憤慨。別に1もそこまで盛り上がった様な良い観客では無いのですが、それでも今作は各キャラクターの行動すべてが"脚本の都合"でしか動いていない印象を受ける。特にクロエ・モレッツ演じるヒットガールの酷い扱いにはさすがに言葉が出ない。全編に渡って提示される悪趣味風()(センスが無いんだからこんな事やれるわけないだろ!!)の描写や、必要のない性的描写、それだけでも結構の不快感があったのですが、クロエの行動がキャラクターを道具としか思っていないんだろうなと思う程に根拠も信条も無くコマの様に動かされていて腹が立った。それなりに評価された作品のキャラクターをこういう風に文字通り"使う"のはいかがなものか。そりゃクロエももう次作は出ないと言うわなと。オープニングの"待望のあの続き!"感はワクワクしたし、もちろんそれなりに良い所(ゲロゲリ棒とか)はあるのですが製作再度の心根の様なものがマジで腐っていて、作品全体としても価値無し!と言いたくなるのは仕方ないのでは。

 

マイ ライフ ディレクテッド バイ ニコラス ウィンディング レフン (原題:My Life Directed by Nicolas Winding Refn) - 3.5/5.0 (2021.8.12)

監督:リヴ・コーフィックセン。2014年。日本公開2017年。「オンリーゴッド」の撮影前後、最中に密着したドキュメンタリー。監督撮影は、ニコラスウィンディングレフン監督の奥様でもあり元女優のリヴ・コーフィックセン。まあ作品を作ったというよりは撮れと言われて撮っているという様な感じでしょうか。「Drive」の成功後、観客の期待と評価を一身に背負い対峙する事にふさぎ込むレフン監督のリアルな表情やその夫婦のやり取りを記録した。基本的にはずっと"自信がない"、"良いものになるはずがない"、"(作り終わってから)全然ダメだ"と超マイナス発言を発しまくり。家族に対して日に日に気遣いの出来なくなっていく様が観られる。世界規模で活躍する芸術家の苦悩が分かり易くみられた。全く持ってダメ男として奥さんに当たるレフン監督を見て、""あ、意外とこういう人なんだ"とすごく普通な人でびっくりした。「drive」「オンリーゴッド」を観た身としてはもっと鋭くとがった人なのかなと勝手に思っていたので意外だった。そこが良いよね、とも言いにくい微妙な感じだった。

 

・アイネクライネナハトムジーク - 2.7/5.0 (U-NEXT/2021.8.12)

監督:今泉力哉。脚本:伊坂幸太郎。2019年。「街の上で」で信頼大回復の今泉力哉作品を他のものもと思い鑑賞。が、これは何と言っていいやら.....ひどかった。もしかして「あの頃。」もそうだったように所謂"お仕事映画"と自分の作品で圧倒的にテンションの差を付ける人なのかなと。正直と言えば正直なんだけどそういう仕事も楽しんで"自分のもの"にしていく監督の方が好みなのでやっぱり今泉力哉とは相いれないのかなと改めて思った。今作の何が酷いってどこから言っていいやらという感じですが、まずは監督本人のせいではない部分から言えば脚本、演技。なんだこの子供の絵本みたいなセリフと学芸会みたいな演技はと非常に怒りを覚えた。寒すぎる。無意識にため息が出た。そしてそこに輪をかけて酷い今泉演出。数日経って記憶に残っていないほど(怒りのあまり記憶から消した説)なので本当にしょうもなかったんだろうと思いますが、うすーい、さむーい演出で本当に「あの頃」を観ている時の様な気分になった。やる気ないなら撮らなけりゃいいのに。むかつく。

 

・サマーフィルムにのって - (伏見ミリオン座/2021.8.10)

監督 脚本:松本壮史。脚本:三浦直之。2021年。タイトルは知ってはいたものの演者や諸々の情報で劇場で観るまでも無いかなと思っていましたが、予告編を観て鑑賞を決めた。主演の伊藤万理華(元乃木坂らしい)のファンなのか若い観客の姿も見られた。客入りは結構入っており、50人ほどはいたのではないでしょうか。高校生、青春、映画作り、と聞くと「桐島、部活辞めるってよ」を連想させずにはいられないのですが「桐島~」とは全く異なる"映画作り映画"になっていた。特に女の子版ズッコケ三人組とも言わんばかりのハダシ、ビート板、ブルーハワイの3人のシスターフッドものともいえる全体像をメインに、様々な映画ジャンルを横断しながら(批判の対象としているキラキラ青春映画でさえ)、そのすべての要素とエピソードが絡まり合って進んでいく作劇に驚く。もちろんツッコミどころや、都合の良い場面は多々ありましたが、この作品が描きたいのはあくまでクライマックスにあるのです。作品自体がメタ的なのは言うまでもないのですが、メタにメタを重ねてミルフィーユの様な、はたまたロールキャベツの様な状態になったまま突入するクライマックスの超展開には脱帽&落涙。ハダシが描く登場人物たちはハダシ自身だし、そのハダシ自体が松本監督自身を描いているラストの展開には、映画作りとはなんだ、映画とはなんだ、という部分を真摯に考える姿勢があるからこそのチャレンジだと思い、非常に感動をした。殺陣からの壁ドンなんて超名シーンだろう。ただのキラキラ映画を批判するだけの物語にならずですごいなとも思った。クライマックスの展開に関しては、"映画を止めるなんて"という様な批判の声もある様ですが、それはあくまで作品を止めないために(何ならダメ押しの一歩のために)、ハダシと松本監督のラストシーンに向かうために必要だったと思うので、まあそういう批判があるのは分かりますが個人的には気にならなかった。ものを作る際に"本当にコレでいいのか?このラストでいいのか?"とか最後の最後まで悩むその姿の再現にもなっており、良かったと思う。

 

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~ (原題:Why Are We Creative?) - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.8.9)

監督:ハーマン・ヴァスケ。2019年。デヴィッド・ボウイにタランティーノ、ジム・ジャームッシュ、ビョーク、ペドロ・アルモドバルなどなどなど...の有名芸術家に"Why Are We Creative?"と質問を投げかける"だけ"のドキュメンタリー。はっきり言って途中からどうでも良くなってしまった。偉人たちの言葉は興味があるがあまりにも工夫の無い構成がダラダラと続くために集中力を保つことが出来なかった。序盤こそは面白く観られたのですが、知っている人もいればもちろん知らない人もいて、そこがつまんないと言っている訳ではなく、観客はほぼ全ての人がそうであろうにその谷間というか波の部分へのどう魅せていくかの工夫が無い所がなんだかドキュメンタリーとして残念だったなと思った。序盤で誰かが言った"複数の価値観がある環境でのみ創造力は生まれる"と"子供はみんな創造力があるが、年を取るにつれてどんどんとそれを失っていく"いう様な内容の話がなるほどなと思った。
 

・ヒューゴの不思議な発明 (原題:Hugo) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.8.8)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:ジョン・ローガン。原作:ブライアン・セルズニック。2012年。スコセッシ作品の中でも明らかに異質な一品を鑑賞。いかにもジュブナイル、キッズムービー的な画の佇まいとは裏腹に"映画史"の発端を明らかにし、それを登場人物のお話の中に入れ込むという構造(そういう原作らしいです)でした。スコセッシがこの作品の肝と見据えたのは、あくまでも"映画"というものにかつて燃やした情熱、対して少年が存在の意義を見出そうとする情熱とをうまく昇華させるという部分で、さすがの着地になっていた。クライマックスでヒューゴが公安官に懇願する"分からないんだ...!"という訴えは非常にクるものがあった。3D作品らしいので描写のいくつかが不自然なのは劇場で観たかったなあとは思う。全体的にまったりとした温度の作品ではありますが、名匠マーティンスコセッシ。さすがでした。意外に良かった。

 

・オンリー ゴッド (原題:Only God Forgives) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.8.8)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2013年。「ブロンソン」「Drive」に続きニコラス・ウィンディング・レフン作品を鑑賞。一言で言えば相変わらずのクセっぷり。大クセにもほどがあるでしょう。終盤のグルグルと周りながら串刺しにしていくシーンが印象的すぎた。話全体としては非常に陰惨かつ地味な話で、台詞もあまりない、音もない、とかなりとっつきにくい表現になっている。また、鑑賞後にいろいろと調べると信仰の話だったりしたようなのでそのあたりは不勉強が出てまたしても旨味の理解不足があったよなと感じる。ただ、そういった部分は一旦忘れてもそれでも強烈に印象に残る作品だった事に間違いはないので成功なのだろうと思う。ギャグなのか大真面目なのか表裏一体、紙一重、そういうかなりキ○ガイじみた雰囲気も正直感じ取れた。

 

・すばらしき映画音楽たち - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.8.7)

監督 脚本:マット・シュレイダー。2017年。「ようこそ映画音響の世界へ」を観てとても楽しかったのでそれよりも前に作られていたこちらも楽しみにして鑑賞。全編、"映画音楽がどう普通の音楽と違うか、こういった作品でこういう音楽が使われています"という様な内容で、もちろんそれはそれで"へ~"と思いながら観たのですが、結構それだけという感じ。「ようこそ~」の時の様な発見や感動はあまりなかったかなというのが率直な感想。終盤眠たくなった。もっとこういう場面でこういう音楽が流れているのにはこういう理由や効果があって~とか、存在の理由や効果を知りたかった。

 

・映画 太陽の子 - 3.3/5.0 (MOVIX三好/2021.8.6)

監督 脚本:黒崎博。2021年。公開初日。20人ほどの客入り。年齢層は高め。有村架純主演という事とパッとみた感じのメインビジュアルが良かったので見る事は決めていた。そもそもが原子力爆弾をつくるための科学者が主人公のお話なので8月6日に公開されたのかもしれないが、まず先に書いておくと、この映画の良い部分はそこくらい。8月6日に見て改めて原子力爆弾や戦争について考える事に意味があるのだと思う。結論からいえば、映画はわりとつまらなかった。もしかしたら反戦や戦争の悲惨さを伝える事が主目的では無いのか?と思うくらいに、甘く、薄っぺらく、表層をなぞっただけの様な話を120分見せられただけだった。文句を言いだせばかなりたくさんあるのだが、3人の主要人物たちみんなに、ある。柳楽優弥演じる科学者は原子力爆弾をつくる事自体に葛藤をしているらしい(し実際に"これでいいのか?!"と喚く画面もある)が、そこに至るまでの気持ちの揺れ動きが圧倒的に描き足りないと思う。それがうまくいっていない事がこの作品の一番の失敗だろう。今から有村架純と三浦春馬のキャラクターにも文句を書くが、そうやって3人の心情を見せようと欲張った結果がこのザマなのではないかと思う。初めからこの人1人の葛藤を深く深く描けばもっと違った味わいになっていたのに。有村架純は居る意味があるんだかないんだかわからない非常に空気の様な人物になってしまっていて、どう見せたかったのかがマジでわからない。終盤で(予告でも使われていたが)"勝ち負けなんてどうでもいいから戦争が終わって欲しい"と叫ぶシーンがいかにも良いシーンげにくさ劇伴とともに配置されているが、たしかに言っている事は本当にそうなのだがどうしても綺麗ごとにしか聴こえないし、"うん、そうだね"くらいしか思う所が無い。これは大失敗ではないのだろうか。三浦春馬に関しても入水自殺するまでに追い詰められているようにも見えない。まず、主要人物の行動や描写に全くもって説得力がない。そして、まだまだあるが、一つだけ。食べ物だ。基本的にこの映画に出てくる食卓はとても敗戦直前の日本の食卓とは思えない内容が並ぶ。主人公が結構裕福なのかなと思ったが、終盤プルトニウムを取りに行くシーンでも仏前には盛りに盛られた米が輝いており、とても気になった(あとから食べるから良いのかもしれないが)。そして、極めつけはこの映画のクライマックス、一番泣かせたいのであろう、ラストのおにぎりもぐもぐロングショット。うん、でかすぎるよね。なけなしの米を全て握ってくれたのかもしれないけど、そんなのわかんないし。こういう事をされると作品自体が非常にどうでも良くなる。途中から結構どうでも良くなっていたが終わる頃にはあきれ返ってしまった。福山雅治の気色悪いファルセット歌唱の主題歌もはっきり言って気持ち悪い。いや、気色悪い。

 

・アフターショック (原題:Aftershock) - 3.1/5.0 (U-NEXT/2021.8.5)

監督:ニコラス・ロペス。脚本:イーライ・ロス。アンドレア・オズヴァルト。アリエル・レヴィ。製作:イーライ・ロス。2012年。昔のアトロク音源で絶賛されておりチェックしていたものを鑑賞。全体は90分の作品なのですが、まず最初のアイドリングが長い。40分はさすがにやりすぎだろう。せめて30分でなんとかして欲しい。地震をきっかけに惨事が起こり出した最初はテンションが上がったし、結構コメディ的な描写も多く意外なバランスだよなと思いながら興味深く見た。金持ちデブファザコンハゲのポヨというキャラクターが中盤の仲間のために涙を流して助けを請うシーンや、イーライロスが動けなくなる所から焼き殺されるまでの一連の流れなど、スプラッタ映画の中にも人間味やドラマ部分などがウェットなまでに表現されていてこの作品の特徴として光る。ただ、(夜中に見たのがいけないのだが)だんだんと興味の持続が難しくなってきて最後の方はかなり眠かった。クライマックスの地下道の伏線には、おー!となったがラストシーンの津波は、あ、そういえばそうだったね程度の感想になってしまった。またいつか見直してみたい。

・屋敷女 ノーカット 完全版 (原題:Á l'interiéur/Inside) - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.8.5)

監督 脚本:ジュリアン・モーリー。アレクサンドル・バスティロ。脚本:アレクサンドル・バスティロ。オリジナル版2007年。「返校」を見るつもりでいたのに何故か「屋敷女」を見ていた。メインビジュアルからして韓国のホラーなのかなと勝手に思っていたがフランススプラッターだった。特にこれは"四天王"と呼ばれている作品の一つで、この度ノーカット版が公開されたという事らしい。上映スケジュールとにらめっこしながらもこちらのを観劇。平日昼間にして20人ほどは入っていたか。話はあって無いようなもので、ひたすら無音プラス突然の狂気的な効果音(これがすごい)、容赦無いゴア描写と結構きつめのシーンが続く。果たしてこれを良しとしていいのかという事すらわからなくなる様な壮絶な内容だ。作品としては、フランス映画だからか知らないがとにかくテンポが悪い。悪いというか、遅い。遅遅スプラッター。ある意味スローコアの様な破壊力で、遅いながらも一撃が激重。的な。そして、こちらもアイドリングが長く、最初の30分ほどは物語もいきなり動いてないし、かなり眠かった。中盤から最後まではすごすぎて集中して観ましたが。クライマックスで突然ゾンビ風になったり、いろいろと疑問が残る展開もありますが、話を力技で超強引に締めようとするのが逆にちょっと面白かった。中高生くらいの男女4人グループが開始直前にいそいそと入場していたが見終わったあとどんな話をしたんだろうか、そっちが気になって仕方ない。

 

 

・いとみち - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.8.2)
監督 脚本:横浜聡子。原作:越谷オサム。2021年。全編青森にて撮影。横浜監督の生まれも青森だ。不勉強のため同氏監督作品は初鑑賞。SNSでの評判が高かったので楽しみにしていたがなかなかタイミングが合わずギリギリのタイミングでなんとか観る
事が出来た。月曜日昼間、観客は7人ほど。センチュリーシネマの2番スクリーンは数年ぶりに入ったが2列目でも圧迫感無く、こんなにだったかなと思う程こじんまりしていた。普段は大きな映画館、スクリーンが好きなのだがここの小さいスクリーンは何故だか嫌いじゃない。"三味線"と"方言"をキーワードに女子高生・いとの成長とシスターフッド的なメイド喫茶仲間たちとの繋がりを描いた。まず何がいいって、画が良い。これは間違いない。すごく綺麗にバシッと要所を抑えて青森の愛おしさの様なものを撮るなあと思っていたら横浜監督の地元だという事でなんとなく納得。一瞬、観光地の宣伝ムービーみたいなあざといカットも観られるが、美麗な画面で美しい自然の実景を見られるのはとても気分が良い。前半は地味というか、どちらかというと"漫画っぽい"演出や展開が気になってあと一歩ノレずにいたのが後半、いとが自ら"動くために"はとする行動と、仲間たちと潰れかけたメイド喫茶を"止めないために"はとする行動がリンクしていき、映画としてのスピード感やドラマティックさがグイグイと熱を帯びていく作劇がとても良かった。終盤は、それまでコツコツと積み上げてきた描写でいとの周りとの関係性や家族のドラマを魅せられ、特に何か起きるわけではないのだが涙が溢れた。ラストの三味線でのライブシーンが個人的にはかなり微妙、というかあそこだけ何だか非常に安っぽく、薄っぺらく見えてしまい、最後をどう見せたかったのかが分からず最終打に欠けるなという感想になってしまったのが残念だった。ラストで大泣きする準備は出来ていたのに。でも良い映画でした。他の作品も観てみようと思う。

 

・ドライヴ (原題:Drive) - 4.1/5.0 (DVD/2021.8.1)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:ホセイン・アミニ。2011年。「ブロンソン」に続き同氏の作品を鑑賞。続きで言える事かもしれないがとにかく"この監督は変わっている"と小学生並みの感想だがこれは大きな声で言える。そして、圧倒的に他者視点というか、俯瞰しているかの様な冷たい表現、描写、画面、がかなりクールに綴られる。これも小学生的に一言でいえば、"かっけえええええ!!!"、に尽きるのではないでしょうか。今作も後半タガが外れた様に一気に悲惨な事態を迎える展開や容赦無い暴力描写に感動。編集テンポも独特で強烈な作家性を感じずにはいられない。が、自分の映画リテラシーでは語る事はまだまだ難しそうなので、これくらいしか書けませんがとにかく非常にクセがあって変わっていて硬派でクールでかっこいい!そして、面白い!見るしか無いでしょう。

■2021年7月に観た映画

24本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ブロンソン (原題:BRONSON) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.7.27)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:ブロック・ノーマン・ブロック。2008年。「Drive」評を聴いていた時にニコラス・ウィンディング・レフンの前作として紹介されており興味が沸き鑑賞。"イギリスで最も有名な犯罪者を描くバイオレンスアクション"という事で、実話(ベース?)で構成され、それがそうさせたのかは分からないが何だかものすごく淡々と独白が続く映画だなという感想を持った。もっと所謂"ワルモノ"的なバイオレンスシーンや、こちらの倫理観を完全無視する凶悪さを見られるのかなと思ったのですが、何だか可愛らしい暴れっぷりで拍子抜け。これはアクションシーンがどうも下手クソなんじゃないかなという事を思わずにはいられなかった。テムポ自体もわりとゆっくりめに進んでいくので(冒頭のスロー再生のアクションシーン+クラシック音楽というのもそれを予感させるような演出だったのかもしれませんが)、何だか"優雅な暴力シーン"という様に映った。それが狂気だと言われればそうかも知れないし、ある意味この作品におけるアートバランスなのかも知れない。終盤にかけて虚実がない交ぜになったかの様な印象を受ける。ちょっと最後の方適当に観てしまったので何とも言えないのですが...()。全体的に画はばっちり決まった画面が多くて良かった。

 

・竜とそばかすの姫 - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.7.26)

監督 脚本 原作:細田守。2021年。観る予定ではなかったのですがアトロク課題作品になり鑑賞。IMAXに行く気にはなれなかったので、時間を選びつつせめてと思いイオンシネマワンダーの1番大きなスクリーンを選択。仮想世界(オンライン)と現実世界との棲み分けだったり、実はそれは地続きなんだけどそれ故の良さや怖さがあるという様々なポイントを掻い摘んで並べてどんどん全体的にテーマがうす~く引き伸ばされた結果"何味のものを食べたんだっけ?"となる様な微妙な後味の作品だった。掬い上げている各キーワード自体は、今の現実世界を生きる、そしてこれからの時代を生きていく子供たちへ向けたメッセージとして非常に良いものではある(やっぱり子供向けだなと)のですが、どうしても脚本なのか何なのかテーマ自体が散漫になってしまいあまり効果的に機能したとは思えなかった。画面に関しては、現実世界の画はいつもの絵柄でなんとなく見れたのですが、仮想世界のデザインが何とも苦手な感じでつらかった。そして、極めつけは今回の作劇の肝となる"音楽で魅せていく"という内容。King Gnu常田大希率いるmillennium parade(結構映画音楽やってますよね、良い悪いは別として)と中村佳穂のタッグという2021年の日本の音楽シーンとしては限りなく攻めている布陣で、劇中の非常に大切な部分で彼らの音楽がほぼむき出しの状態で大音量で鳴り響く。好みは置いておいて、良かったのではないでしょうか。なんならグダグダの作劇を音楽で救っているなと思う。しかしこれだけは言いたいのは、映画として大きな部分を音楽に頼らざるを得ないのは本当にどうかと思う。勿論、映画音楽の重要性や一緒になって発揮される景色もありますが、今作に関してはそこまでの機能を(目指したのだろうけれど)果たしていないと思う。画面的にもクライマックスとかかなり頑張っていたとは思うけれど、それは時すでに遅しというものではないのか。終盤の倫理観や終始ツッコミどころの多い内容で途中でどうでも良くなってしまったのも事実。中村佳穂の声優は結構良かったと思う。

 

・まともじゃないのは君も一緒 - 3.6/5.0 (wowow録画/2021.7.25)

監督:前田弘二。脚本:高田亮。2021年。評判は良かったもののタイミング逃し劇場鑑賞できなかったこちらの一作。WOWOW放送にて。今売り出し中の清原果耶と、もはや安定の"変なヤツ役"役者・成田凌の主に二人の会話劇小作品。テーマ的にはタイトルそのまま"普通とは?""誰にとっても普通は普通ではない"という様な内容で、お話自体も正にそのままという感じでしょうか。女子高生と塾の先生の関係性に思えなかったり、いくらなんでも成田凌が変な(浮世離れし過ぎな)奴過ぎるだろうとか、小泉孝太郎の演技とか、なかなかばっちり沢山のツッコミどころに溢れていて、観る前までのイメージとは結構違ったなという感じ。印象的なセリフが多くみられ、特に以前に観た朝ドラではイマイチだった清原果耶ちゃんの演技っぷりがなかなか良いものがあった。98分という時間もそうですが、内容的にも演出的にもバジェット的にも非常に小粒なでも良質な、安心して観られる様な作品だった。わりと心地よかった。

 

・ウォーリー (原題:WALL・E) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.7.25)

監督 脚本:アンドリュー・スタントン。脚本:ジム・リアドン。2008年。良いらしいので鑑賞。まず自宅のテレビで見てしまったのが大間違いでした。せっかくホームシアターがあるのに一体何を...という反省はありますが、なかなかもう一度見る気にはなれない。全体を通してセリフはほぼ排除されて、ウォーリーとイヴの無言のコミュニケートを見つめるのがメインの作品。髄所にあからさまな「2001年宇宙の旅」オマージュが散りばめられていて、しかもそのオマージュの仕方が露骨で"オマージュしている"という事をこんなにも描写内にというか表現の中に盛り込んでいいんだと思う程の踏み込み方でこれはこれで面白かったし、良かったと思う。お話的にはツッコミどころはありますが、まあこういうものなのでしょう。同時上映されたという「バーニー」「マジシャン・プレスト」の2本の短編もBlu-ray収録されており観ましたが、特に「バーニー」の方は"この時実はこんなことしてました"系作品で面白かった。し、可愛かった。

 

・ガンズ アキンボ (原題:Guns Akimbo) - 3.2/5.0 (DVD/2021.7.25)

監督 脚本:ジェイソン・レイ・ホーデン。2019年。日本公開2021年。評判もまあまあで、上映期間に行きたかったのですがタイミング合わずで見逃していた今作を新作レンタルで鑑賞。結論から言えば、見逃して良かったし、なんなら見なくても良かったな!!という。言いたい事は山ほどありますが、まずは画作りからしてひどい!と声を大にして言いたい。この作品が"スキズム"という一般参加型の殺しのネット配信ライブをメインテーマとして置いているのであれば肝であるはずのアクション・ゴアシーンが重要なのは誰でも分かるはずなのですが、何を思ったのかそれとも全くもって技術もアイデアも無いのか、取って付けた様な中途半端さ(何を魅せたいのか分からない)。とりあえずやってみました感がすごい。この映画のメインのビジュアルのはずのその部分がこれでは作品が全く走り出さないのは言うまでもないかと思います。また、ゲーム的な演出というかSNSとか動画サイトのコメントとかそういう演出もいいのですが、入ってくるタイミングもいちいち間が悪く、アクションを妨げているという風にしか思えなかった。そして大事な所では謎にスローモーションになったり、"え、こんなショボいCGで終わらせちゃうんだ"とがっかりする場面の連続で、上映時間が進むにつれて徐々に眠たくもなってくるし、興味も失われていった。個人的には結構アクションシーンで眠くなる事は多いのですが、飽和した画面と音量が続くとどうしてもそうなってしまうのは否めないかなと思う。タルいアクションシーンほど眠気を誘うものはない。ダニエル・ラドクリフは選べるほど仕事が無いのかこんな映画の仕事は受けなきゃいいのにと心底思った。金玉スプラッター。

 

・未知との遭遇 (原題:Close Encounters of the Third Kind) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.7.24)

監督 脚本:スティーヴン・スピルバーグ。1977年。まだ見ていなかったので鑑賞。昔の作品を見ると"とても○年前とは思えない"とかそういう事を言いたくなりますが、そうなりました。まずは、全体を通してダレる事なくグイグイと観客の集中を引っ張っていくストーリーテリングは素晴らしかったし、特に序盤の最初にUFOを見るシーンや中盤のロイが狂ったように山に取り憑かれていく様は全く持って未知のものが人間自体を乗ってってしまう様な恐怖を実に見事に描写していた。話だけではなく、光の演出や後ろのトラックが空へと連れ去られてしまうシーンなど、画的な刺激も満載。終盤の展開は、(後発ですが)まさにドゥニ・ヴィルヌーヴ「メッセージ」を思わせる様な"宇宙人との交信"で、読んでそのまま、"未知"と遭遇する壮大な結末が素晴らしいなと感じた。主人公のロイも最終的には一人だけUFOに連れていかれてしまう点も怖い。ロイとジリアンとウディアレンみたいなおじさんの山登りシーン。

 

・トラスト ミー (原題:TRUST) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.7.22)

監督 脚本:ハル・ハートリー。1990年。アトロクの特集を聴き鑑賞。なんとも地味で不思議なプロットのラブストーリー。主人公の女の子の自立を描いている、とは思う。嫌なワケではなく最後までしっかりと見られたのですが特段これと言った感動もなく見終わってしまったというのが正直なところ。良かったは良かったんだけども。チープさというか、インディ作品なので別にこういうものなんだろうけどラストの爆発のしょぼさから最後の展開までがなんだか気になってしまった。観た環境が良くなかったかも。

 

・ベルヴィル ランデブー (原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE) - 4.2/5.0 (DVD/2021.7.21)

監督 脚本:シルヴァン・ショメ。2002年。劇場で予告編を見てコレは楽しみだと思っていたが調べてみると旧作だという事に気付く。今月の映画に使っている金額を考えてもここはレンタルで我慢か...と思いながら自宅にて鑑賞。したのですが、これはしっかりとスクリーンで見るべきだった!ほぼセリフの無いアニメーションなので画面から伝わってくる情報量、チャームさ、どこを取ってもそれらが溢れんばかりに出ていて、時折混じるCG背景の画面も非常に面白く、大画面高画質で見るべきだったと後悔。まだやっているので見にいこうかなあ...。とにかく画面に現れる登場キャラクターたちの"なんかヘンさ"。「フリークス」とかタイトル出すのはアレかも知れないですが、そんなノリ。基本的にどこか異形のキャラ達が自信たっぷりに暴れまわる様はかなりクセになり、まさに映画的でもあった。デヴィッド・リンチとかそういうものを感じた。お話も一直線で分かり易くてgood。

 

・プロミシング ヤング ウーマン (原題:Promising Young Woman) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.7.20)

監督 脚本:エメラルド・フェンネル。2021年。予告を見た時点では微妙な感じだったんですが、SNSでの高評価を目にして鑑賞。"昔の親友をレイプによって殺された女の復讐譚"というのが一言で出来る説明か。ミリオン座の一番シアターでしたが平日昼にも関わらずかなり入っていた様に感じた。60人くらいはいたのでは。「ブラックウィドウ」ばりに普段相容れない客層の中観たのも新鮮だった。エンタメ作品としてかなりしっかりとしていたので、非常に簡単に楽しむ事が出来た。が、わりと構えて観ていたので終盤くらいまではノリ切れない部分も無くはなかったのですが、最後にしっかりと主人公が殺されビターなバランスを取っていたので良かった(ラストの時差復讐の件は、まあこういうお話なんだからいいんじゃない?程度の感想です)。しかしながらキャリー・マリガンが30歳の役って無理が無いか?この人50代くらいでしょ...?と思い唸りながら観ていたが鑑賞後に調べたら36才で絶句。

 

・ライトハウス (原題:The Lighthouse) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.7.20)

監督 脚本:ロバート・エガース。脚本:マックス・エガース。2019年。日本公開2021年。A24製作。客入りは20人ほど。全編モノクロ且つスクエアに区切られた画面が劇中の閉鎖感と共鳴し、より閉所の強度を強める役割を果たしている。灯台守の仕事をするために男二人が嵐の灯台で過ごすうちに...という内容なのですがお話的なカタルシスは特に無く、これもどちらかというと映像や表現、ギョッとする様な仕掛けの連発で"逃げ場のない恐怖"の様なものと対峙しなければならない不安さを描いている。上記した画面効果はもちろん、要所で絶望的な不安が襲う様な描写が散りばめられていて、何も考えずに見ているだけでもまあそれなりに楽しめるとは思う。"灯台"を舞台に限られた中で様々な構図や表現にチャレンジしている姿はかなり好感が持てるし実際面白かった。クライマックスのモノクロ画面を生かした(暗闇の黒と光の白)灯台の光演出は狂った音とも相まってなかなかに良かった。結構楽しめたけども正直、中盤は眠気も襲ったし、ダレた感は否めなかった。もっとめちゃくちゃグチャグチャに恐ろしい展開(や画面)が待っていても良かったのでは。

 

・アレックス (原題:IRREVERSIBLE) - 3.8/5.0 (DVD/2021.7.19)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2003年。久しぶりのギャスパー・ノエ作品鑑賞。彼の出世作らしい。時系列が逆向きに進んでいくところからレビューなどでは「メメント」と並べられていますが全く持って違うなと。というかノーランはラストの展開まで含めてきちんとお話として成立させようとていますが(当然だろ!)、ギャスパー・ノエはそんなの関係なしお構いなし!ノエ印のグワングワンと揺すりまくるカメラワークと激しく点滅する画面はこの時点から健在で一貫した姿勢を感じて良かった。お話自体は、もう結末が分かっているので当然"どうしてそうなった?"という部分にワクワクさせる部分があるハズなのですがそういった部分は特に無く、ただ時間を遡って並べただけというのは否めないかなとは思う。でも別にそれはそれ!アレックスの恋人の男が必死に犯人を捜すのですがしっかりと惨殺されるのが面白かった。鈍器、消火器。めちゃくちゃなゴア描写に戦慄。

 

・search/サーチ (原題:Searching) - 3.4/5.0 (DVD/2021.7.18)

監督 脚本:アニーシュ・チャガンティ。脚本:セブ・オハニアン。2018年。「RUN」アニーシュ・チャガンティのデビュー作。PCの画面のみで構成されるSNSを舞台としたサスペンス、ミステリー映画。最後まで観て思うのは、もうすごいアイデア一発勝負だったなという。最初こそは"これは面白い!"と思いながら観ましたが最後の方は結構飽きたのが事実。このプロットを最優先させるが故にどうしてもご都合主義的な展開や脚本にならざるを得ないのが現実。何だかどの展開も"あくまで最後の着地をするための仕掛け"に全てが見えてきてしまい、予想も出来る範囲の話で、あまり優れているとは思えなかった。しかもコレ2018年の作品なので、3年後の2021年の今は観るのがギリかなあという印象。もっと後で見ると結構残念な感じになるんじゃないかなあとも思います。「RUN」も巷の評判ほどは...という感じだったので今の所あまりハマってない感はある。次作も観ますけどね!

 

・2001年宇宙の旅 新世紀特別版 - 4.3/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.18)

監督 脚本:スタンリー・キューブリック。脚本:アーサー・C・クラーク。1968年。[午前十時の映画祭11]にて新世紀特別版が上映されており鑑賞。オリジナル版に比べて10分長くなっている。オリジナル版をBlu-rayで鑑賞したのが1年前でしたのでそれぶり且つ初めてスクリーンでの鑑賞。1日1回上映、土日は最後という事もあり、かなり客は入っており、50人くらいはいたのでは。事前にネットでも書かれていた様に画面の上下左右が若干カットされて何とも残念な上映状態ではありましたが、音響などはしっかりと再生されていたのでこの作品特有の無音と音有の境目を十分に(他者と)体感する事が出来て良かった。インターミッションも実際にあり(5分くらい?)、その間も不穏な音の中トイレに立ち上がる人達を眺めるのも良い経験だった。インターミッション後の後半、上記した無音の宇宙空間のシーンが多くなるのですが、無音シーンの連発は否が応にも高まる緊張感を生み出し"宇宙の無音と音楽のブレイク(休符)は似ているな"とかそんな事を思いながら画面を眺めた。映画も音楽も共に時間芸術であり、本来ならば止める事が出ないものが止まる瞬間、そこには歪みが生じるし意志やリズムが生まれるのだと思う。緊張感も当然そこには生まれるし、明らかな意図を持ってそういう瞬間は作られるのだなと感じた。エンドロール後にはヨハン・シュトラウス2世『美しく青きドナウ』が流れるのですが、その時点で客電は点かず全てが終わってから明るくなり退場したので、本当ならばエンドロールは終わっているのだからこの『美しく青きドナウ』を聞きながら退場したかったなあと思った。ミッドランドスクエアシネマは名古屋空港に比べてこの本店はそういう部分がいかんよなあと。

 

・スーパー! (原題:SUPER) - 4.1/5.0 (DVD/2021.7.17)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2011年。「キックアス」とセットで語られる事が多い様な印象ですが、全く持って異なるものでした。というか、基本的にはそういったものに対するカウンターとしての位置に居て、もっと"映画とは一体どういうものなのか、ヒーローとはどういうものなのか"という問いを深く自問していく様な作品だった。前半は、ヒーローはあくまで題材にしてコメディタッチで冴えない主人公の奮起物語をインディな調子で描いていくのかなと思っていたのですが、徐々に"でもこれって本当にそうでいいのかな"と思える様な出来事が増え、この作品が大きな意味で"ヒーロー映画とは"、または"ヒーロー映画を作る事とは"というものを描いている様な感覚になっていきます。劇中に2度繰り返される(エリオットペイジにコミックを元に話す場面とラストシーン)"コマとコマの隙間で本当の事が起きている"というメッセージと"目(コマ)に見えるものだけが真実ではないし、見えないものが重要な事もある"(原文ママの引用ではない)というまさに"映画そのもの"を示す(1/24コマで映画は出来ている)サインになっており、それらのパーツがカチっとハマった瞬間の"これは映画だ!映画を見ているのだ!"という気付きにはハッさせられるものがあった。悪役として登場するケビンベーコンも殺されてしまう瞬間には、なんだか少し彼に同情させられる(同情という言葉があっているが微妙ですが)。劇中の"手作りヒーロー"を目指す主人公と、こうして自主映画の様な手触りでヒーロー映画を(なんなら映画自体を!)作ろうとするジェームズ・ガン監督がガチっとリンクしたこの作品に強いメッセージと作家性を感じずにはいられなかった。映画の本質を見たと思う。この後に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「スーサイドスクワット」と"ホンモノ"のヒーロー映画を作っていくストーリーまで含めてこんなにシビれる話は無いのではないでしょうか。

 

・ブラック ウィドウ (原題:Black Widow) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.16)

監督:ケイト・ショートランド。脚本ネッド・ベンソン。ジャック・スカエファー。2021年。完全にピューチャソ目当てで鑑賞。50人くらいはいたのでは。MCUとか正直興味ないし、以前に勧められた「アイアンマン」見てもマジで響かなかったし、でちゃんと見る事が出来るか心配だったのですが何とか完走(ウトウトはした)。所謂イメージしていたマーベルヒーローものよりはスパイアクションものにシフトしていたせいなのかかなり見やすく感じた。脚本も(当然ですが)かなりしっかりしていて、話も分かるしすごく丁寧だなあと思った。他のMCU作品もクオリティはこれが平均のはずなのできちんと意志を持ってみれば飽きずに観られるのかなと少しだけ苦手意識が薄くなった。中盤の家族再会シーンのフローレンスピューの演技が"実際にこうだろうなあ"と映画内リアリティがすごくて非常に関心したし、感動した。やっぱりすごい。終盤に行くにつれアクションもCGも派手に豪華になっていって荒唐無稽さというかむちゃくちゃさがグングンと上がっていくのですが、"こういうものなんだ"と割り切れば非常に楽しめた。まあ皆そうやって見てるのかも知れませんね(でもやっぱり子供向けというか、オトナでこの話を真剣に楽しんでる人ってどうなんだろう...とは思いましたが)。公開からは1週経ってるのかな?それでも平日朝の回で40人ほどは入っていました。今回客入りが...と言われているみたいなんですが普段のMCU作品の人気を知らないので何とも言えませんが見に行った日に限っては両隣に人もいるしなかなか好評だった様に感じました。

 

・オー!スジョン (原題:오!수정/Oh! Soo-jung/洋題:VIRGIN STRIPPED BARE BY HER BACHELORS) - 3.8/5.0 (今池シネマテーク/2021.7.15)

監督 脚本:ホン・サンス。2000年。日本公開2003年。先日鑑賞した「逃げた女」のホン・サンス監督作品が今池シネマテークにて特集上映されているという事で勇んで参上。今回は初期作品である「カンウォンドの恋」「オー!スジョン」の2作を上映していた。「逃げた女」が何だか癖になっていて、鑑賞後も色々とネットで調べたりなどもして興味があったので今回の特集上映はありがたかった。この作品は、とある不倫関係の男女とその間男のアレコレという感じのお話なのですが、12章に分かれて話が時制無視で並べられている。前半と後半で同じ場面が繰り返されるのだが、何故か微妙に内容が、違う。これ見ながら"え、どういうことなの?"と困惑した。終わってから<主人公の男と女のそれぞれの目線から語り直している>という事に気付き、自分の理解力の低さに悔しさが。。それ分かった上で観たらまた結構違うだろうなあとかなり思った。ただ、なぜかホン・サンスは見返すとなるとなかなか根気がいるよなあとも思う。非常にシュールなというか静か且つ特徴的な作品群になるので、こう、"好きです!"と声を大にして言えない様な(自身のリテラシー不足による)ところもあるので、この先も作品を見ながらいつかフェイバリットに感じられる日が来るといいなと思います。映画は奥が深い。深すぎる。パンフレット?として売っていた「作家主義サン・サンス」というムックも購入。

 

・ミザリー (原題:Misery) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.7.14)

監督:ロブ・ライナー。脚本:ウィリアム・ゴールドマン。原作:スティーヴン・キング。1990年。「RUN」を観たからではないがようやく「ミザリー」を鑑賞。狂った女ヲタ役のキャシーベイツが超ハマり役でほぼキャシーベイツ映画だった。本作でアカデミー主演女優賞も受賞。こういったスリラー的な作品でもアカデミー受賞出来るんだと意外だった。でもそれくらいに怪演で納得。結局、飲ませている薬はなんだったのかとかわかんないし、嫌な感じでジワジワ攻めてくるというよりはもっと物理的に攻撃してくるのが面白かった。終盤のおばさんvsおじさんの流血肉弾戦は思わず声出して笑った。結構チャーミングな作品だなと感じた。映画としてどうかと言われると困りますが、画面の面白さや映画的な興奮は無かった様に感じる。ドラマ的というか。

 

・シャイニング 北米公開版(原題:The Shining) - 4.0/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港/2021.7.14)

監督:スタンリー・キューブリック。脚本:スタンリー・キューブリック。ダイアン・ジョンソン。1980年。[午前十時の映画祭11]にて北米公開版が上映されており鑑賞。オリジナル版に比べていくつかのシーンが追加されており24分長くなっている。そのせいか(そのせいだろ)全体的にもっさりとしたテンポになっていて正直中だるみしたのは否めない。ただ、スクリーンで観るのは初めてで、冒頭の空撮ショットの雄大さや、オーバールックホテル内の廊下などの奥行きの立体感はさすがの劇場上映という感じだった。劇中の美術なども大きなスクリーンでしっかりと見る事が出来て良かった。ダニー乗る三輪車がカーペットとフローリングで音が変わっていくのが非常に心地よかった。増えたシーンも結局はクールで素晴らしいシーンばかりなのでとても体感143分では無いのはさすが過ぎた。オリジナル版の方が好み。

 

・パディントン (原題:Paddington) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.7.12)

監督 脚本:ポール・キング。2014年。日本公開2016年。何かでお勧めされておりU-NEXTの配信期限が迫っている事もあり鑑賞。実写の中にCGのクマのパディントンが共存する。お話的には非常に子供向けの、クマと人間の種族を越えた友情・家族愛のようなものを描いたオーソドックスな作品。悪役もしっかりと悪役らしくいるしきちんと最後は負かされて反省させられている。家の中をめちゃくちゃにしても何故か許されてしまうパディントンの存在が謎。
 

・生きちゃった (洋題:All the Things We Never Said) - 3.7/5.0 (DVD/2021.7.11)

監督 脚本:石井裕也。2020年。「茜色に焼かれる」「アジアの天使」に続いて石井監督のこちらの作品を。評判が良かったので楽しみにしていましたが、観終わった感想は想像以上にチャレンジングで変な映画だったし、なかなかいろいろと理解が難しい作品だった。好きでしたけどね。何となく大林宣彦映画にも通じる様なめちゃくちゃさで驚いた。濃い口演技の中野太賀までもがあっさりとした無機質演技になるくらい、作為的に大げさな演技は排除されており、一体これが現実なのかどう受け止めていいのかを迷わせる味わいになっていた。石井監督の今まで観てきた作品にも通じるシングルマザーのセックスワーカー問題や、外国人との理解不足なども描かれており、少し散らかった印象があるのが残念だったけれど(いつもそうなのか?)、編集テンポやカット割りの不思議さがこの作品の一筋縄ではいかないチャームになっておりとても面白かった。中盤、主人公の両親が兄貴に発する"大麻やめろ~!大麻やめて仕事探せ~!"のセリフには思わず笑ってしまった。結果的には結構楽しんだと思う。「茜色~」のレビューで"大クセ映画監督の~"みたいなのを見てそうかなあと思っていましたが"これ(ら)の事かあ"と納得。俄然、他の作品にも興味が出てきたのでしっかりと遡って観ていこうと思う。

 

・プラットフォーム (原題:El Hoyo) - 3.3/5.0 (DVD/2021.7.10)

監督:ガルダー・ガステル=ウルティア。脚本:David Desola ペドロ・リベロ。2019年。日本公開2021年。公開時、映画館で観たいと思っていたが見逃していた為、新作レンタルでようやく鑑賞。縦型SFスリラーという謳い文句でしたがそのまま。予告を観る限りでは、その"穴"をもっと登ったり下りたりしてアクションしつつもハラハラする様なものが観られるのかなと思っていましたが、割としっかりと会話劇中心の心理スリラーだった。ジャンル映画としても非常に良く出来ていてクライマックスのゴア描写含めてバッチリじゃなかったんじゃないでしょうか。物語が訴えるものは100分の中に多くあり、色々な謎やいくつかのテーマが折り重なっており、ただのジャンル映画に収まらない重いメッセージ性を持たせてはありましたが、個人的にはそういうの要らないからもっとスカッと気楽に観たかったかなという感想で、この点数。赤を印象的に使っており、終盤最初の主人公の顔とキーパーソンのじいさんの顔が重なるシークエンスはゾクっとして良かった(その後すぐ全員が重なって浮かんできて漫画かよと冷めたけど)。ラスト階層に子供が居たのが謎だったし、理屈がいまいち分からないけれど、きっと主人公たちは250階で既に殴り殺されており、ラストのひとエピソードは死後の部分なんだろうなあと思う。

 

・仁義なき戦い - 3.8/5.0 (35mmフィルム上映/ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.13)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。1973年。35mmフィルム上映。平日昼20人くらいの客入り。劇場のHPを見ていたらフィルム上映のニュースが出ていて滑り込み鑑賞。以前に同じくミッドランドシネマ名古屋空港にて深作欣二「県警対組織暴力」を鑑賞したのだがあまり響かなかった身としてはどうかなという部分もありましたが前回鑑賞が1年前"漏れの映画リテラシーもさぞ上がったことだろう!"と意気込んで見に行ってきました。結論から言うと、あんま感想変わらないかなという感じ。中盤くらいまでは集中して観られましたが、あまりに一辺調子な画面と演出、音楽(さすがに人が死ぬシーンのあの例の音楽のリフレインは面白かったが)にヤラれてしまいやはり徐々に眠たくなってきて...という感じ。寝る事はなかったですが。終盤の誰かが死んで次の人が死ぬまでの間隔が段々と短くなっていき、演出も音楽もつんのめって行く感じはある意味、前衛芸術の様な攻め感を感じ良かった。フィルムのざらついた質感が劇中の雰囲気ともマッチしてより良かった。一番印象的だったのは、菅原文太演じる広能が一番最初に拳銃で人を撃ち殺し、あの音楽が流れるシーンの構図。広能、被害者、その他取り巻きを1つの画面に落とし込み、且つ極端に傾いた画面は事のショッキングさ、広能の感覚の変貌(人を殺したという事)をバキっと表しており、シビれる構図だった、素晴らしかった。客席は20人ほど。前回よりも年齢層は少しだけ低く、ジジイばかりではなくおじさんばかりでした。

 

・アジアの天使 - 3.4/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.7.5)

監督 脚本:石井裕也。2012年。「茜色に焼かれる」の石井裕也監督早くも新作。製作自体は「茜色に~」よりも前に行っており公開を待っている状態だったよう。日韓合作なのかな?オール韓国ロケにて撮影。撮影も韓国のチームだそうです。一言で言えば"異文化ロードムービー"的な。日本人主演のオダギリジョーと池松壮亮の食い合わせは良かったのでしっかりと入り込んで観る事は出来たのですが、話自体がちょっと散らかっている印象を受けた。結局何が言いたかったんだろうという感想が残ってしまったのが残念だった。劇中のセリフとしても繰り返される(でも序盤だけ)"結局は相互理解だよ?"ってのが異国文化を理解していくコミュニケーションを取っていく事へのテーマなのかなとも思いましたが、途中で日韓の嫌国感情だったりの話が出てきたり、出てきた割にはそこに何もなかったり、わりと記号的にテーマ"っぽいもの"が並べられているだけで結局何?というふうに思ってしまった。場面やエピソードも無駄に多く、散らかったままクライマックスの"おもしろ天使()"ケレンシーンからの激近手振れエモエモカメラ()シーンに突入されても、置いてきぼりを食らったような気持ちでただスクリーンを眺めるしかなかった。冗長だし、上手じゃないなと感じた。オダギリジョーのオダギリジョー力(オダギリジョーリョク)は健在。

 

・ペトルーニャに祝福を (原題:Gospod postoi, imeto i' e Petrunija/God Exists, Her Name Is Petrunya) - 3.6/5.0 (名演小劇場/2021.7.1)

監督 脚本:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ。脚本:エルマ・タタラギッチ。2019年。日本公開2021年。先月にアトロクの課題作品になっていたが名古屋でなかなか上映されず、ようやく公開されたタイミングで鑑賞。いつも予告編とか見ずにポスタービジュアルだけで映画を観る事が多いので、この作品ももう少し厳かな且つ所謂多幸感!的な作品なのかなーとか思いつつ観ましたが全然違った。女性差別や信仰に関する事柄をクールかつ時にはチャーミングに描いた作品という印象を受けた。主人公家族が結構受け入れがたい造形で描かれたおり、なかなか感情移入(というかヤダミが勝ってしまって)できなかったのですが、この作品はとにかく細部まで練られた構図と、画から伝えようとする"映画的"な姿勢が素晴らしかった。それだけでも観る価値が十分にある作品だと思います。お話部分は割と想像の範囲内感がぬぐえなかったし、ラストの主人公が取る"十字架を返す"という決断も既視感があってそこまでノレなかった。ただ、原題や今回の作劇を踏まえて考えるとただの"女性の自立と解放"だけに留まっていないのは感じられるのでそういった部分はこの作品にしかない良い部分だよなと感じた。

 

■2021年6月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・エイリアン2 (原題:Aliens) - 3.2/5.0 (Blu-ray/2021.6.29)

監督 脚本:ジェームズ・キャメロン。1986年。1作目が好きだったので続いて鑑賞。シリーズ毎に監督が変わっているのですが2は、「ターミネーター」「タイタニック」「アバター」のジェームズ・キャメロン。まさかとは思っていましたが137分の長尺作品。正直117分だった1でもかなり序盤にダレたのに大丈夫かなと思っていたがマジでダレにダレた。90分で済む事に137分もかけるな。まず初作もそうだったがエイリアン登場までに1時間以上もかけないで欲しい。見てられない。ようやく出て来ても何だか小出し感が否めないしが終始続く感じ。クライマックスの胴体真っ二つからの宇宙に吸い込まれるかの悶着シーンは面白かったがそれだけ。そのテンションで90分にして走り切る様な作品が観たい。3もフィンチャーなので不安。観るけど。

 

・逃げた女 (原題:도망친 여자 洋題:The Woman Who Ran) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.29)

監督:ホン・サンス。2019年。日本公開2021年。(局所的に)話題のこちらを。ホン・サンス作品は初めてでしたがかなり独特な表現だなとまずは感じた。フィックスの長回しでキャラクターを捉え内情や事情をじっくりと描き(逆にそれだけしか無いとも言える)、カットの最後にはあからさまなデジタルズームをウィーー---ーンとキメる。77分の中に3人の女性と主人公女性の物語を紡いでいく。3つに章立てられた作劇は非常に分かり易く主人公の所謂"心の、自身の解放"へと繋がっている。最後のエピソードで主人公がミニシアターで映画を観るシーンがあるが一度立ち去ったその場へ戻り("事後"の状態で)もう一度スクリーンを見つめた姿からのスクリーンへパンしそのままエンドロールへ移っていくラストカットは、ギョッともするし何よりもハッとさせられる見事な映画館体験だった。ちょっと違うかも知れないが「街の上で」の様な"何を見せられているんだろう映画"の系譜を感じた。というか、今泉力哉がホン・サンスを好きなのでは?と思うくらいだった。77分でも若干のダルさを感じたのでとっつき易いかと言われると全然そうでもないと思うが好きになりそうな気もするので他の作品も見てみようと思う。

 

・夏への扉 ―キミのいる未来へ― - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.6.28)

監督:三木孝浩。脚本:菅野友恵。原作:ロバート・A・ハインライン。2021年。原作は1956年に書かれたSF作品。アトロクの課題作品になり鑑賞。タイトルを聞いて嫌な予感、メインビジュアルを見て嫌な予感、予告を見てさらに嫌な予感。かなりげんなりしながらも見て来ました。うーん、これどうしたらいいのでしょうか。まず大きく言いたいのは、一番のオチというか話の核となる部分の辻褄が合わないのはいかがなものか。最初に見せられた95年3月8日の事件で車が動いたり家が爆発したり、と結末が既に起こっていたのなら(清原果耶ちゃんが観た車から降りてきた人は?)未来はもう"(この映画の中でいう)良い結末"に勝手に向かっているはずなのに山﨑賢人演じる主人公が"そうなる様に"再び歴史改変をなぞっていくのをただ見せられるのがイマイチ意味が分からなかった。もう既に解決している件を"こういう風に解決しましたよ"と魅せるために観客をミスリードした(清原果耶ちゃんが死んでるとか)と捉えれば良いのでしょうけども、そうだとしてもわざわざ"まあそうなるでしょうね"みたいな事を復唱されてもあまりテンションはあがらないよなとは思う。し、あんなに一生懸命歴史を換えるために頑張った主人公の頑張りとは?となってしまった。救いは藤木直人演じるロボットとの良いバディもの風になったのは案外良かったと思うし、猫がかわいいのは最高。95年3月8日のシーンで車が動き出すシーンは最初猫が運転したのかと思った。あとは描写とか、作劇とか、表現とか、子供向けレベルでけっこう全体的に鼻につくうすら寒い感じだった。
 

・キック アス (原題:Kick-Ass) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.6.27)

監督 脚本:マシュー・ヴォーン。脚本:ジェーン・ゴールドマン。2010年。過去作鑑賞。クロエ・モレッツちゃんが可愛い!というのはまず言えると思うのですが、ちょっと期待し過ぎたかなという感じだった。序盤の見どころであるヒットガールとビッグダディの登場シーンは残虐描写含め見事な画とテンポ感でテンションが上がったのですが結構その先はずっと中だるみ感があってノリ切れなかった。キックアスである主人公は(ヒーローとしては)何も達成しないままトントン拍子でヒロインと付き合って自信もついてなんだか良い感じ的になっていきましたけど、これって実はそここそがメインテーマなの?とも思えてくる作り。根暗でさえない奴でも、ヒーローというスーパーな存在になんかならなくても内面をわかり合って理解をし合えばカワイこちゃんともくっつけちゃうよ!という肯定的な話なのかな。よくわかんないけど。主人公も勿論マジで何もしてない訳ではなく彼なりに努力はしているので自動的に良くなって行っているわけではないのでそういう解釈でもいいんだよなあとも思う。ただ映画内の活躍としてはキックアスが活躍するというよりもヒットガールが大活躍するお話だったので何だか肩透かしを食らった様な気分で見終わった。

 

・アメリカン ユートピア (原題:DAVID BYRNE`S AMERICAN UTOPIA) - 4.3/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.25)

監督:スパイク・リー。2021年。ようやく観られたアメリカンユートピア。複数日に及ぶライブショーを切り取り一つのライブ映像にしているのでライブ映画というよりは音楽を題材とした映画作品と捉える事も出来ると思う。トーキングヘッズ時代の曲たちも、勿論アメリカンユートピア収録の曲たちも、今回のフィジカル一つでの表現が見事にハマッていて、バンド表現ではない身体表現で行う今回の演目に為に作られたのかな?と思えるほどの完成度、シンクロ率でひたすらに気分よく見られる映像作品だった。楽器のマイキングや照明、演奏自体"これどうやってんの?"と思うような部分もたくさん観られ、全曲刺激的だった。クライマックスに近づくにつれてスパイク・リー味も濃くなって行きラストの2曲では、音楽の役割とか、生身の人間が人前で表現をする事とか、他者とのつながりとか、そもそもそういった事に対する希望というか(コロナ禍を通過中の我々なら特に)、に激しく揺り動かされてちょっと涙が出るほど良かった。エンドロールの気の利いた感じも鑑賞後さわやかにクールダウンさせてもらった。劇映画ではないので何とも言えませんが、エンタメやカルチャーを信じる僕らが2021年の今観る事を考えると圧倒的に素晴らしく今年ベスト級だなと思わざるを得なかった。素晴らしかった。

 

薄氷の殺人 (原題:白日烟火) - 3.9/5.0 (U-NEXT2021.6.25)

監督:ディアオ・イーナン。2014年。ディアオ・イーナン作品は初鑑賞。話は何だか煙に巻かれる様なフワッとした不思議なテンションでしたが、何よりもそれを支える描写が素晴らしかった。カメラワークの妙か非常にクールかつミステリアスな画面で終始貫かれる、所謂"映画的な"、言葉で説明せずに画で説得力を持って見せていくのがとにかくかっこよかった。どういうお話だったのかと問われるとちょっと難しいのですがこういう観方もこの監督の作品に関してはありなのかなとも思った。

 

・ホドロフスキーのDUNE (原題:JODOROWSKY'S DUNE) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.6.24)

監督:フランク・パヴィッチ。2014年。デヴィッドリンチ版('84)は鑑賞済み、今年の暮れにはドゥニ・ヴィルヌーヴ版の公開が控える「DUNE」。本来であれば最初に製作に取り掛かっていたのはホドロフスキーで、製作が中止になってしまった幻の1作を追ったドキュメンタリー。本人インタビューをメインに、その「DUNE」が未完にも関わらず後のSF作品や芸術に与えた影響の大きさや、各出演者や裏方の決まっていく過程の裏話、などを交えながら進んでいく。正直、役者が云々の所は微妙というかあまり興味が持てなかったのですが、やはり製作陣や、ホドロフスキー本人のこの作品にかける情熱などの部分には非常にクるものがあった。特にラストの、晩年を迎えたホドロフスキーがまだまだ表現者として枯れていない、滾っている、という事を刻々と話すシーンは今作で一番の見どころの様に感じた。デヴィッドリンチ版を沈んだ状態で見に行ったが見ながらクソ過ぎて段々元気が出てきたというエピソードは知ってはいたのに話している本人の姿がイキイキし過ぎていて面白過ぎた。

 

・おとなのけんか (原題:Carnage) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.6.24)

監督:ロマン・ポランスキー。脚本:ヤスミナ・レザ。ロマン・ポランスキー。2012年。ロマン・ポランスキー監督作品初鑑賞。80分というタイトな尺にまとめ上げられた"子供のケンカがきっかけの大人のケンカ"をワンシチュエーション密室(的)会話劇で魅せていく。話自体は別に特段何かあるかと言われれば何もないのですが、ひたすらに"あるある"と"他人事だから楽しめる地獄"を詰め込んだ様な会話劇にクスリとさせられる。基本的に(本人たちは至って真剣な)コメディタッチで描かれるのでその滑稽さがひたすらに面白い一作になっています。ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリーの4者4様の駄々を見せられつつも確かな演技力が素晴らしい。短い事もあるし、すごく気楽に楽しめるのが特に良かった。エンドロールの"親同士のゴタゴタをよそめに当の本人たちはとっくに仲直りしている"オチだと思うのですが、ちょっとそれが分かりにくいなあというのが気にはなったがそれ位で、非常に良い作品だった。ゲロを吐く映画に駄作無し!

 

・Mr.ノーバディ (原題:Nobody) - 4.0/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.6.21)

監督:イルヤ・ナイシュラー。脚本:デレック・コルスタッド。2021年。友人たちがこぞって絶賛しているので鑑賞。「John Wick」シリーズの脚本家デレック・コルスタッドが書き下ろした劇場用作品。主演のボブ・オデンカークは元々コメディ畑の人で、YouTubeにある宣伝用の動画でも日本での知名度の低さをネタにしている程。かもめんたるの岩崎氏の様などこにでもいるおっさん(もちろんマッチョではない)が超強くて大活躍する姿は非常にスカッとする。描写としても、主人公の冴えない日常をわざわざ説明していくのではなくルーティーンの細かいカットの連なり&リピートで一気に魅せていくスタイルは冒頭から分かり易くスピード感高く良かった。全体的にテンポがとても良く、グイグイと引き込まれていく編集も素晴らしかった。アクションシーンもしっかりとタフな感じに仕上がっていてきちんと痛そうだし、殴られてる、刺されている感もバッチリ。バス中での乱闘シーンはあくまで"敵の行動(武器)に応じてこちらも対応して倒す"というのがヒーロー然としていてかっこよかった。終盤、なんと施設入所していたオヤジ(クリストファー・ロイド!)も、兄弟も強かったという笑える展開を魅せますがそこはこの手の映画ならではの軽口タッチでOKという事で観られた(ホームアローンの様なピタゴラスイッチ殺し展開もおもろかった)。上映時間も92分でこういうのが観たかったんだよ!!と思わせる素晴らしい作品だった。少し思ったのは、クライマックスは銃撃戦も良かったけどもう少しフィジカルな闘いを観たかったかなと。そしてボスともう少しどうなるんだ的なギリギリの闘いが観たかった。

 

・クワイエット プレイス 破られた沈黙 (原題:A Quiet Place: Part II) - 2.7/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.6.21)

監督 脚本:ジョン・クラシンスキー。2021年。クワイエットプレイスシリーズの第二弾。アトロクの課題作品になったので渋々鑑賞。前作がそもそもノレ無かったので今回も全く期待せずに臨んだのですが案の定。どこを取っても"なんだそれ"と思う様なご都合主義展開、矛盾だらけな設定、微妙な見せ場の連続で今回も本当にノレなかった。前作もそうだった様ですが(1作目の評論音源聞き直して知った)耳の聴こえない少女の無音描写が全然活かせてないし、相変わらずうるさい劇判はずっと鳴ってるし、せっかく赤ちゃんがいるのに泣いてピンチに陥るというシーンもないし、この事件のきっかけの1日目の事も描いていますが怪物たちが音に反応して襲いかかるという理屈を何故かいきなり全員知っているのも腑に落ちないし、耳が聴こえないのに都合の良い所は聞こえてるし(まあ"文脈とか流れで分かるんだよ"という事かもしれませんが)、補聴器のハウリングで怪物の嫌がる音を出していたはずなのに最後の方は補聴器単体でハウってるし(理屈が破綻してる)、アンプのコード切ってどうやって電源取ってるの?とか、"子供の成長&活躍"が描きたいのかもしれないけど"サッサとやれよ!!"と何度も突っ込みたくなるし、クライマックスのスピード感がそんなんだから非常にイライラするし、世の中が1年もこんな状態なのに電気や水はきてるんだ、とか。とか。とか。もう言い出したらキリが無いと思うので。おそらく3もあるのでしょう。もう本当に見たく無いので二度と当てないでいただきたい。これがガチャで当たったという情報を得て、鑑賞しに行きその後にラジオのガチャタイムの部分を聴いたが宇多丸もイヤイヤ感が全開でそりゃそうだよとなった(1万円だしてガチャやり直すのもそんなに最近は多く無い様な気もするので)。二回も当てるなよ!!

 

・シックス センス (原題:The Sixth Sense) - 3.9/5.0 (DVD/2021.6.20)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。1999年。アトロクの過去音源を聴いてシャマラン作品を徐々に見ていこうと思い先日観た「サイン」に続き鑑賞。一番有名なコレが配信サイトには無いのが謎ですがそのおかげで優先順位が上がった。99年当時にヒットしていたことは勿論知っているし(中1だったので見てはいませんが)、"本当に(霊が)見える人にはこういう風に見えているんだよという描写がバツグンだ"という事で結構怖いことを期待して観た。が、実際は分かり易く怖い描写はあまり無く、ラストには"家族とのつながり"または"自分が失った家族との思い出"、なんなら"生"自体というかなりどんでん返しなズシンと来る展開をハートウォーミングなテイストで魅せる作劇に驚いた。「サイン」しか見ていないので何とも言えないのですが、シャマラン作品が一筋縄ではいかないというのはこういう事なんだろうなあと非常に感心した。"(霊が)見える"時にはああいうさりげなくそこにいる感じなんだろうし、シンプルにグロかったりとかはしないんだろうなあとも思った。幽霊譚というか死んで成仏できない男の寂しい(哀しい?)話だった。

 

・不思議惑星キン ザ ザ (原題:Kin-dza-dza!) - 3.9/5.0 (DVD/2021.6.20)

監督:ゲオルギー・ダネリア。脚本:レヴァス・カブリア。ゼゲオルギー・ダネリア。1986年。カルト映画で有名なこちら、今回アニメ化されたタイミングという事でシネマスコーレにて上映があったのですが行けなかったのでレンタルDVD鑑賞。とんでもなく荒唐無稽なお話で、冒頭3分で何故か地球外にワープしてしまった主人公とたまたま一緒にいた学生が地球帰還を目指すというドタバタSF。"クー!"や"キュー!"などの特殊言語、及び特殊用語が飛び交い慣れるまでなかなか大変ですが中盤以降は何だか癖になってくる。自分も頬を叩いてクーとやりたい。という気持ちになってくる不思議なチャーム。話もぶっ飛んだ内容に思わせながらも作品内リアリティや辻褄はしっかりと担保されていて謎の説得力があって良かった。クライマックス(?)の、主人公2人が地球に帰還するチャンスをフイにしながらもいつしか仲間になっていた彼らを見捨てる事はしないというグッとくる展開も○。最後の最後にタイムリープまで飛び出すサービスが面白かった。

 

・RUN/ラン - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.6.18)

監督 脚本:アニーシュ・チャガンティ。脚本:セブ・オハニアン。2021年。公開初日の初回上映。客入りは30人ほど。「search/サーチ」(未観です)のアニーシュ・チャガンティ監督第二作。劇場で予告編を見て面白そうだったので鑑賞。サスペンスやパニックアクション的な映画だと思っていたのですが割とサイコスリラーっぽい内容で、"思っていたのと違う"(映画を見に行ってそれを言うな)というのが正直な感想。もっと分かり易くかつハラハラするジャンル映画が観たかった。自分を誘拐した母親に不必要な薬で身体を破壊され続けた女の子の逃亡&復讐譚。なのですが、ネタ一発で作った様な感じで、全体的に登場人物の動機やテーマ自体が曖昧だし、90分の作品なのですが中身的には45分くらいで出来ることない?という様なちょっと残念な内容だった。テンポも悪く前半なんてほとんど物語が進んでいない様に感じた。主人公が飲まされている薬をウェブ検索するのだがPCがオフラインで絶望するその後ろに母親がいるというシーンが冒頭にあり、そこは結構ワクワクしたがそれまで。襲撃に向かってテンションが上がらないまま終わってしまった。少し期待した分、残念に思う幅が大きかったようにも思う。一応前作である「search/サーチ」もいつか見てみようと思う。

 

・カラー ミー ブラッド レッド (原題:COLOR ME BLOOD RED) - 3.1/5.0 (U-NEXT/2021.6.17)

監督 脚本:ハーシェル・ゴードン・ルイス。19656年。「血の祝祭日」「2000人の狂人」に続き、ゴアスプラッターの元祖・ハーシェル・ゴードン・ルイス作品を。U-NEXTの視聴期限も迫っていたので鑑賞。結局観た2作もやはり古さ故かそれほどまで面白いとは思えずに観たので今作もまあそんな感じでした。テンポがトロい。というのは2020年代の映画ファンの感覚からしたら当たり前なのかも知れないのでそれを評価軸にしてもいいのかというのは正直微妙なのですが、トロいものはトロい。作劇自体もそんな感じではあるんですが、お話としては面白かったなあと思う。どうしても血やスプラッター描写のツメの緩さが気になった。これより古い「2000人の狂人」があれだけ出来ていたんだから何故出来ない?とは思う。

 

・茜色に焼かれる - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.15)

監督 脚本 編集:石井裕也。2021年。ポスターのメインビジュアル、タイトル、出演者からして見に行くつもりはなかったのですがアトロクの課題作品になったので鑑賞。平日昼間にも関わらず老人たちでほぼ市松フルハウス状態。30人ほどはいたでしょうか。ハッキリと"コロナ以降"を全面に押し出した演出がかなり斬新だった。こうして全国の劇場でかかる商業映画でコロナ以降の世界を描いた作品を見るのは初めての様な気がした。お話自体には明確な答えや何かすっきりするものが残る様な作品ではなく、今の日本が抱える問題点(まあその描き方がどうなんだという部分はありますが)や、まさにコロナで困っている人がいるということ、そしてその現実を通過した今があるから映画はそこから逃げずに作品を作らなければならないという事をズシンと描いてくれていて良かった。冒頭5分の事故表現にいきなり先制パンチを喰らい最後までクラックラする様な石井監督の自由な作劇にしびれた(石井作品初鑑賞でした。きちんと他のも見ます)。字幕テロップやラストの夕陽の合成表現には大林宣彦の影がチラつき好意的に見るほかなかった。中盤、主人公が居酒屋で7年ぶりに酒を飲み心情吐露をするシーンにはこちらも涙が止まらなかった。ただ時計を見るとそのタイミングで残り1時間、折り返しくらいなので若干の肩透かしをくらった。144分という全体の尺の長さには、いらない表現や削れる所もありだと感じるし少しタイトにできる余地があるのでは無いかと思った。また、息子の中1設定、同級生の演技、いじめの際のセリフ運び、などなど気になる点もわりと多く残った。尾野真千子の熱演が◎。(非常に好きな顔だと気がついた)

 

・佐々木、イン、マイマイン - 3.5/5.0 (DVD/2021.6.13)

監督 脚本:内山拓也。脚本:細川岳。2020年。評判は聞きつつも見逃していた本作をレンタル解禁と共に鑑賞。つい最近「くれなずめ」で何とも言えない顔での演技が見事だった藤原季節が主人公の悠仁を演じた。「佐々木、イン、マイマイン」というタイトルからして藤原が佐々木なのかと思いきや全然違う"佐々木"が出てきて驚く。「あの頃。」や「横道世之介」それこそ「くれなずめ」などにも共通する、"亡くなってしまった友人を取り巻くその当時の環境と自分や仲間たちとの思い出"。そしてそこから見えてくる現実や自分の気持ちなどを描いたある意味での"青春(の終わり)映画"。こういう題材は最近多いし、わりと良作が多いので楽しみにしていましたが今作は個人的には刺さり切らなかったなあというのがまずは感想。とにかく佐々木があんまり好意的なキャラクターに映らなかったのが大きい。中盤のとある展開から、"高校まではフザけた面白い奴だったのに卒業したら人としての道を踏み外し..."的なシリアスな流れを期待したのですがそうはならずお話的なピークがどこにあるのかイマイチ乗り切れなかった。ラストの赤ちゃんを抱えて泣くシーンからクライマックスに行く流れは良かったのですが、その着地が"彼女との別れ"と言うだからなに?案件過ぎてトドメ。手持ちのカメラも何だかずっとグラグラグラグラしていて気になった。結構期待はずれでした。

 

・グーニーズ (原題:The Goonies) - 3.4/5.0 (TV地上波/2021.6.11)

監督:リチャード・ドナー。脚本:クリス・コロンバス。原案、製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ。1985年。面白いとは聞いていたが思っていた以上に子供向けで驚いた。そりゃそうなんですが。お話云々よりも(話自体は別に面白いし良いんじゃないとは思う)何よりもノイズになってしまって気になったのは、どのカットを取っても"セット"にしか観えずどうしても"冒険モノ"と捉える事が出来なかったということ。洞窟とか、ラストのカリブの海賊的な海のシーンとかも実景を使うのは難しいのはもちろん分かるのですがもう少し照明を工夫するなり(さすがに明るすぎるだろと)なんなりでとにかくもう少しだけでもいいから本物っぽく見えるように努力をして欲しかったなあというのが感想。そこが引っかかり楽しめるものも楽しめなかった。「悪魔のいけにえ」で「エレファントマン」で「フリークス」だった。SLOTH LOVE CHUNKS!!

 

・アオラレ (原題:Unhinged) - 3.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2021.6.7)

監督:デリック・ボルテ。脚本:カール・エルスワース。2020年。日本公開2021年。告知の時点で出オチ感がすごいですが、SNSなど意外と好評の様だったので劇場鑑賞。観客は5人。ラッセル・クロウが煽り運転&異状殺人者を演じた。所謂シリアルキラーもののパニック映画且つカーアクションジャンル映画だろうなと思ってましたが、大筋はそんな感じでしたが全体的にスリラーっぽい仕上がりに。「ヒッチャー」や「デスプループinグラインドハウス」的な路上で関わった異常者に死ぬまで追いかけられる系の作品。結構よく出来ていて、車のデカさが怖さに繋がっていたり、運転していてイヤな瞬間を的確に捉えてあるあるモノとしても昇華しているなあと思った。ツッコミどころはまあありますがご愛敬の範囲という事で。尺も90分とタイトで最高。ラッセル・クロウのデカさがマジで怖い。普通に楽しめた。スピルバーグの「激突!」が近いとの様な事も何かで観たので未観なので近いうちに観てみようと思う。しかしながら、皆まで言うなかも知れませんがこの邦題はどうなのよ。と一応書いておきます。

 

・死霊のはらわた II (原題:EVIL DEAD 2-DEAD BY DAWN) - (U-NEXT/2021.6.6)

監督:サム・ライミ。脚本:サム・ライミ。スコット・スピーゲル。1987年。見直し鑑賞。というか、観てないつもりで見始めていつまで経っても"なんか観たことあるなあ~"と思いながら最後まで観て、チェックをつけようと思いFilmarks開いたらもう見てた事に気付くという。初めて観た時よりも描写や表現に対して好感を持って見る事が出来たが、改めて観てもけっこう人形劇感がすごいなと。

 

・ブルーバレンタイン (原題:Blue Valentine) - 3.7/5.0 (DVD/2021.6.3)

監督:デレク・シアンフランス。脚本:デレク・シアンフランス。ジョーイ・カーティス。カミ・デラヴィン。2011年。"夫婦倦怠モノ"の名作として有名なこちらを鑑賞。結婚後、出会い、別れ、結婚直前、などの主人公2人にとっての重要なシーンを時系列が入り組んで編集され且つ同時並行的にも魅せていくというトリッキーな作劇。色味や画面のエフェクト、画面サイズなども次々と変わり、画としても意味を持たせて構築していく画面が非常に映画的で良かった。ただ、ストーリー的には主人公2人の夫婦の仲が既にかなり冷え切っている状態から始まり、何故そうなったのかというのがあまり明示されないまま作品が進んでいくので(既にもうあったものとして描くのではなく)もう少しだけでいいのでその辺りを語ってくれた方が感情移入出来るのになあと思いながら観た。もちろん理由はきちんとあるんだろうし、それなりの描写がされてない訳ではないのですが、控えめな薄味指向で魅せていくのでかなりアダルトな味わいだった。そして何よりもラストシーンの切なさ。花火と混じるエンドロールと二人の思い出。これ以上ないくらいにえぐってくるので食らう人は死ぬんじゃないかなと。特にラストカットの構図と切なさは屈指の名シーンと言ってもいいと思います。

 

・ファーザー (原題:The Father) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.6.1)

監督 原作:フローリアン・ゼレール。脚本:フローリアン・ゼレール。クリストファー・ハンプトン。2020年。今作にて主演のアンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞。脚色賞。認知症になった父の、その本人の目線で魅せる体験型サスペンススリラー。個人的に認知症や介護職に係る事が多い日頃を過ごしているので、劇中に描かれる認知症描写などは説得力がありグッと引き込まれて観る事が出来た。が、ポスタービジュアルに騙されて"さあ感動の実話ドラマを観るぞ"くらいのテンションで臨んでしまったので、最初の方はどうしても"知っている"話感が否めなく、これはちょっと違う観方をしないといけないやつだと、修正するのに時間がかかってしまった。認知症ライドものとしての傑作なのは間違いないと思うので再度改めてきちんと描写について考えながら観たいと思う。終盤手前の一気にグッとサスペンス色を帯びていくシークエンスが良かった。あのくらいのテンションで終始しても良かったんじゃないかなあと今は思う。

■2021年5月に観た映画

26本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・エイス グレード 世界でいちばんクールな私へ (原題:Eighth Grade) - 3.7/5.0 (WOWOW録画/2021.5.30)

監督 脚本:ボー・バーナム。2019年。A24製作作品。ケイラのモラトリアムを(いやもっとそれよりも前の時点の話かも知れないが)描く。誰しもが何者かになりたい葛藤を描く青春映画としては王道の作りになっているかと思う。何と言っても主役のエルシー・フィッシャーの"それっぽさ"が最高。画面内の登場人物たちの実在感はそれだけで映画に説得力を持たせるなと感じる。鑑賞した時の状態が悪く、正直後半がうつらうつらしながら観てしまったので本作の本当の良さが分かっていないような気もする。またいつか観てみようと思う。

 

・レック3 ジェネシス (原題:[REC]3 GENESIS) - 3.7/5.0 (DVD/2021.5.28)

監督:パコ・プラサ。脚本:ルイス・A・ベルデホ。2012年。観進めてきた[REC]シリーズも第3弾。一部ではこれが一番面白いとの声もあり期待して鑑賞。1と2がしっかりとPOV映像で魅せるホラー・スリラーだったのに比べて今作は一旦POV視点縛りを放棄する事を冒頭すぐにしっかりと提示し、それ以降は全て普通に劇映画の画面で進行していく。監督はこれまでと同じパコ・プラサではあるが、POVという武器を捨てる事を選択し所謂パンデミックもののスプラッターパニック映画に仕上がっていた。序盤から中盤にかけての結婚式シーンがグダグダと全く面白みもなく続く感じにかなり萎え、ようやく参事が始まる頃には若干の集中力切れが。冒頭20分、何もないにしてもつまらなさ過ぎる。その後は順当に面白く超バッドエンドも含めて最後の最後までジャンル映画としての面白みみたいなものは担保されていてとても良かった。冒頭ばっさりカットで65分くらいにしてくれたら最高だったのに。

 

・クロニクル (原題:Chronicle) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.5.27)

監督:ジョシュ・トランク。脚本:マックス・ランディス。2013年。POV作品の傑作だとのうわさを聞きつけ鑑賞。POV視点とは言っても超能力で浮かしたカメラで撮っているという設定なので限りなく他者撮りに近いような気もしますが、あくまでそういったプロットの上での作品内リアリティとしてはバランスが保てていると思うので新しい描写だとも言えるのではと思います。絵の面白さや、構図の上手さ、話しの簡潔さ(84分という尺は素晴らしい)、わかりやすさどれを取っても非常に高品質でかなり安心なジャンル映画として楽しむことができた(ジャンル映画ってそういうのが1番大事な気がします)。お話としては主人公がとにかくクズ過ぎてヤな奴過ぎてどうにもその部分がノレずで結構点数を下げたような気がします。面白かったんですけどね。ラストはあれくらい因果応報でやってくれないとそれこそ作品内のモラルとか秩序、みたいなものが担保されないと思うのでラストはよかったなと思います。

 

・くれなずめ - 4.1/5.0 (MOVIX三好/2021.5.27)

監督 脚本:松居大悟。2021年。何とも合わなさそうなポスタービジュアルからして避けていた一作なのですが、アトロクの課題作品になったということで劇場鑑賞。公開ギリギリ、緊急事態宣言も加わり客入りは5、6人といった感じ。予告や前情報を一切入れずに見に行ったので開始早々に"主人公・吉尾(成田凌)は実は5年前に死んでいた"というプロットにまずはびっくり。そして一気にその先の展開が楽しみに。今作は、吉尾を取り巻く友人5人が吉尾との思い出や記憶を辿りながら描かれる群像劇。序盤はいわゆるホモソなつまんねーギャグとかノリになんだか冷めた目で見ていましたが、中盤以降の振り返った時系列でも吉尾が死んでいる所まで来ると一気にエモさの波が押し寄せてきて、"死者と生者がシームレスに存在している"状態をあくまで双方が知った上で会話されている状態を描くという何とも大林宣彦的といえば良いのか(大林作品では死んだことはなかったことになって話が進んでいくことが多いが)な世界観へ。そしてさらに終盤のトンデモ展開でまたも「異人たちとの夏」的なヤラかし感に苦笑いしながらも歓喜。見終わった後にすぐさま松居大悟監督のフィルモグラフィを検索したのは言うまでもありません。藤原季節が中盤に魅せた吉尾の葬式帰りに"俺、お菓子もらうために来たみたいになっちゃったじゃんかあ"の所で見せた表情、吉尾が前田敦子演じるミキエとの生涯の(本当の)別れをするシーンで完全に打ちのめされ、かなり泣いてしまいました。ウルフルズの楽曲が主題歌だし劇中でも重要な要素として取り上げられているのも1億点プラスだし(「それが答えだ!」は名曲)、さらには劇中で「それが答えだ!」の歌詞を引用し、"肝心の答えは言わないんだよなあ、そういうことなんだよ"という吉尾のセリフが印象に残った。そもそも主演の成田凌があまり...という感じだったし、上記した理由も相まってかなり足取り重く向かいましたがこれが完全にナーメテーター案件で最終的にはかなり満足して劇場をあとにしました。もちろん言いたいことはありますが、それでも最高だった。いやー映画って本当に良いものですね。

 

・28日後... (原題:28 Days Later...) - 4.1/5.0 (Blu-ray/2021.5.25)

監督:ダニー・ボイル。脚本:アレックス・ガーランド。2002年。ゾンビもの(感染モノ)なのでそもそもそんなに評判良い訳ではないのですが、ジャンル映画ファンにはウケているとの事と、続編である「28週後...」のレコメンドを読んだのでまずは初作を鑑賞。"全力疾走ゾンビの元祖"という触れ込みもありますが、何よりも単純に面白かった!時は2002年、デジタル撮影が本格的に導入された頃、[Canon XL1]というデジタルカメラにて撮影されている。黎明期なのでもちろん画質はガビガビモヤモヤ。ラストのシークエンスで急に美麗な画面になる(こちらはフィルム撮影されたそうです)事でワザとだったんだなと分かります。そういった点で観てもまずはチャレンジングな姿勢、作品の内容的にも、画質を落としてでも先駆的なデジタル撮影をした事で功を奏していると捉える事が出来ます。この作品はこの下品な画質で終始する点が作品の世界観を作り評価に値すると考えます。ダニー・ボイル印というのか"変な"編集(良し悪しの話ではない)も手伝い、話のハッタリ度を上げてカルト作品としての強度が上がっているとも思う。尺が114分と若干長いので正直、ここはいらないんじゃないかなと思う様なシーンもあるにはあるのでもう少しタイトにしても良かったのになあ(女に赤いドレスを着せて~とか要りますか?)と思いつつもかなり楽しめたと思います。宇多丸氏は続編の「28週後...」は最高で今作は駄作だと言っている様なので、更に続編の方も楽しみになりました。

 

・リオの男 (原題:L'HOMME DE RIO) - 3.7/5.0 (名演小劇場/2021.5.25)

監督:フィリップ・ド・ブロカ。主演:ジャン=ポール・ベルモンド。1964年。先日観た「ムッシュとマドモアゼル」に続きジャン=ポール・ベルモンド傑作選2にて劇場鑑賞。人気投票をしたらこの作品が1位だったようで、さすがにこれは観ておこうかと。アクションアドベンチャーの先駆けと言われているそうで確かにそれはそうなんだろうなあと思うのですが、ただただそれだけ。ジャン=ポール・ベルモンドが出ているので画面は持つのですが(「ムッシュ~」のジジイのベルモンドじゃなくて若いベルモンドでそれはとても良かった!)、さすがにお話部分や、編集のテンポの悪さ、作劇の適当さが絡まりあって正直、むちゃくちゃ退屈でした。アクション部分以外だったらマジで1点台でもいいくらい。でも「ムッシュ~」よりも全然キレてるベルモンドが確かに迫力のあるアクションスタントシーンを繰り返すのでそれだけで上乗せされてこの点数といった所でしょうか。ただでさえボソボソ喋ってるのにそれこそ普通のシーンやアクションシーンに劇伴も無く(あれば良い訳ではないが必要な時は必要だろう)、地味というか何だかぼんやりしていて正直かなり眠かった。ド派手アクションしてるのに"シーーン"ってしてるってちょっと理解出来なかった。緊張感はあったけどね。そして、コメディ的なサービスがことごとくツマらなく(まあ57年前なので仕方ないのですが)トドメ。劇場後方で1人だけ外れた所で声出して笑ってる陰キャおっさんが居てかなりキツかった。クライマックスのスカイダイブシーンはさすがにスタントを使っているらしく、そこは自分でやらんのかよとなった。(木からズリ落ちるシーンとか手に木が刺さりまくってないのかなと心配だった)

 

・ジェントルメン (原題:The Gentlemen) - 3.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2021.5.24)

監督 脚本:ガイ・リッチー。2019年。日本公開2021年。知人がSNSで絶賛していたり、お勧めしていたので鑑賞。予告編やポスタービジュアルを見る限りでは好みではないだろうなあと思っていたがわりと見終わってもそんな感じの感想になってしまった。作劇は、過去から時系列順に振り返っていくシステムを取っており一見するとちょっと分かりにくい所もあるだろうなと思っていたが、これが非常に親切な作りでとても分かり易かった。冒頭の登場人物を羅列するシーンの連続では名前を覚えるのに精一杯だったがそこを乗り切ってしまえば後は難しいこともなく画面を見続ければいいだけ。というか、これ"親切設計"といえば聞こえは良いですが、脚本は基本的に全部説明してくれるしナレーションなのか独り言なのかわからない(分かるけどさ)セリフが多数。"お行儀良いだけでつまんない"とも取れると思いませんか?優秀な人たちが狂った芸術家に憧れて"ほら、かっこいいでしょ?ざらっとしてるでしょ??"とドヤ顔で聞いてきそうな臭いが画面からプンプンとしており、"いや別に普通だよ。変わったフリとかもできるんだねーへーすごいねー()"と終始突っ込んでいた。別に普通に楽しめたし良かったけど、全然ほんとにこれ毒にも薬にもならないとはまさにこのことだと思います。悪くないやつが悪ぶってもねえ...と何だか気恥ずかしさすら覚える内容でした。画にも工夫は特にないし。ぐっと画面に引き込まれるシーンがほぼなく、脚本もつまらないときたらどうしたらいいんだということで集中力も途切れ途切れでしたとさ。良い人バッグぶら下げてる奴らが好きそうな映画だなと思いました。

 

・サウンド オブ メタル 聞こえるということ (原題:Sound of Metal) - 3.9/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.5.23)

監督:ダリウス・マーダー。2019年。お勧めされていて放置していたがいつの間にかアカデミー音響賞と編集賞を受賞していて驚く&鑑賞。もう少し前に観ようと思っていたがアマゾンプライムはダウンローどすると何故か吹き替えになってしまいなかなかタイミングが回ってこずでようやく観られました。序盤、主人公が聴力を失っていくシーンでは"おお、これか"とようなくヘッドホンにて体験することができて満足(実際こんな風に聞こえるんですか?というのは疑問だが)。手術をし、聴力を少し取り戻したシーンでも音響効果はしっかりと機能。体験的に非常に面白い作品になっているのでそれだけで一見の価値があるのだなあと感じる。が、これ最初の聴力失う経緯があまりにも唐突だし理由が無さすぎて(そういうものなのかもしれませんが)ちょっとノレないなと思う部分でもあったし、お話的な面白さでいうと結構どこも予想や想像の範疇だし、劇映画として面白いかと言われると大きな?が浮かぶよなあとも正直思ってしまった。根は良い奴なんだろうけどDQNな主人公にあまり感じる部分がなかった。

 

・バッド・ジーニアス 危険な天才たち (原題:Chalard Games Goeng) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.5.21)

監督:ナタウット・プーンピリヤ。脚本:ナタウット・プーンピリヤ。タニーダ・ハンタウィーワッタナー。ワスドーン・ピヤロンナ。2018年。タイの秀才高校生が大学受験のカンニングを金銭授受を条件に引き受けるバレるかバレないかサスペンス。色んな予感に満ちたファーストショットから気が利いており期待度はかなり上がる。画も良いし、キャッチー且つハードル低く作られている印象。アメリカ映画の様な画面に驚く。ただ、秀才2人が危険と自らのキャリアの尊厳をかけてまであんな賭けに乗るかな?と最後まで疑問に思いながら観ることになった。腑に落ちるような描写は最後まで無く(もちろんそれなりに家庭環境とか理由はあるのですが...)全体的にノレない仕上がりになった様に感じる。"若さゆえの過ち"として捉えても良いのかもしれませんが、そんな事で自分の未来を危険に晒す様な判断をする人物には2人とも見えないんだけどなあと、どうしてもなってしまい微妙だった。ハラハラドキドキものとしては普通に楽しめたし、そもそもエンタメ作品として振り切った所を目指していると思うのでつべこべ言わず楽しめばいいんですけどね。きっと。

 

・しあわせへのまわり道 (原題:Learning to Drive) - 3.4/5.0 (DVD/2021.5.20)

監督:イザベル・コイシェ。脚本:サラ・ケルノチャン。2014年。昨年のアトロク年末映画特集にて北村紗衣さんがお勧めしており鑑賞。インド人の自動車教習所教官とアメリカ人の裕福層の主人公が教習を通じて人間性を見つめなおし、人として成長をしていくというお話。インド人教官の方は身内に対するコミュニケーションに問題があるし、主人公の方はまずアンガーコントロール出来ない更年期女性だし、となかなかに二人とも問題アリな感じ。最終的には何となく上手い事いって何となく"(ハッピーエンドとは言わないが)良い感じ"に終わったのですが、結局これも"そもそも(二人に)多少の他者理解や思いやりがある"のでなんとかなった様なものの、もっとコミュニケーション不全の人間は実際いるしもっと悲惨なお話になる可能性だって絶対にあるわけで、この映画自体があまり緊迫感の無いなんとなくたるんだ映画に見えてしまった。作劇とかは上手だったのでとても見やすいし分かり易いのですがけどね。こんな事書くとアレかも知れないが、勧めていた人のプロフィールを後から調べてアッ...(察し)となったのは言うまでも無い。

 

・キャリー (原題:Carrie) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.5.19)

監督:キンバリー・ピアース。脚本:ローレンス・D・コーエン。ロベルト・アギーレ=サカサ。原作:スティーヴン・キング。76年ブライアン・デ・パルマ監督作のオリジナル「Carrie」のリメイク。主演はクロエ・グレース・モレッツ。一種のカルト作品にチャレンジするとはと思いながら観ましたが、意外と素直で忠実なリメイクになっていた。というかそうするしかないという感じか。にしても「シャイニング」が「ドクタースリープ」になった様にVFXを駆使したファンタジーっぽい魅せ方(本作はそこまでいってないが)に結局なるのかなあと。先述した作品ほどではないが、クロエ版の今作もオリジナルと大きく違う部分はそういったVFX部分の派手さとか、アクセントになるシーンでVFXを使ったりしている印象でした。ちゃんとショッキングなシーンは力強く描写されているので意外と良かった。しかしいかんせんクロエが可愛いので、シシー・スペイセク演じるオリジナル版の陰惨な可哀想さには敵わないなと。作劇部分はあまり変わっていないが分かり易くなっている様に感じた。

 

・レック2 (原題:[REC]2) - 3.7/5.0 (DVD/2021.5.18)

監督:ジャウマ・バラゲロ。パコ・プラサ。脚本:ジャウマ・バラゲロ。2009年。1作目に続きジャウマ・バラゲロ監督による続編。話としては、完全に前作の続き。POV映像にも幅を持たせ、前作同様の暗視カメラトリックや、カメラ自体(撮っている状態)にも違う3つのパターンで魅せていく手法は努力の跡が伺えた。前作で徹底したワンシチュエーションによって気になった作劇のダレは今回は少なく、2つの地点から作っていく話が飽きさせなかった。中盤からまさかの主人公アンヘラ(マヌエラ・ベラスコ)の登場でアガる。ラストは悪霊の類の話になっていき"何じゃそりゃ感"はありましたが、ラストにアンヘラが前作の後に遭っていた状況などを明かすオチは楽しめた。画面的なキモさもあったし結構良かったと思います。レビューなどを見ていると「3」は全然違う話になっているがシリーズ最高傑作とも言われているっぽいので「2」で見終わりにする予定だったのに続きを見てしまいそう。そして「4」で終わりなので最後まで観るでしょう。おそらく。悪くない。

 

・ムッシュとマドモアゼル (原題:L' ANIMAL) - 3.6/5.0 (名演小劇場/2021.5.18)

監督:クロード・ジディ。脚本:ミシェル・オーディアール。ドミニク・ファーブル。クロード・ジディ。主演:ジャン=ポール・ベルモンド。1978年。アトロクにて江戸木純氏による<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>という催しがやっている事を知り興味を持った。調べたら名古屋でも上映予定があり、今まさに<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選1>もリバイバル上映しているという事で初めて名演小劇場へ。ジャン=ポール・ベルモンドという役者がどの監督とどの役者とどんな話をとかそういう話なので、フラッと興味を持った自分にはどうこうというのはまだ何も言えない状態ではあるのですが、とりあえずこの「ムッシュとマドモアゼル」を見て思ったのは"ジジイじゃん。"と。結構よぼよぼしていて"こ、これが稀代のアクションスター??"とはてなマークがどうしても渦巻いてしまった。なんかキモかったし。若い頃のを見てみたい。コメディ要素が強いのか、スラップスティック的にバンバンと笑えるシーンを盛り込んでくるが別に面白くなかった。そしてもっとアクションしてるのかなと思ったのですがそこも別にさほどという感じで何ともならなかった。クライマックスであるヘリの空中シーンはさすがにすごかった。<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2>の方は1に比べてもっと所謂名作と言われる人気のあるものをやるそうなので、何本か見てみたいと思う。色々書いたが43年前の作品だし、まあね。でも全然ツマんなく無かったので他のも見るつもりです。

 

・美しい星 - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.5.17)

監督 脚本:吉田大八。原作:三島由紀夫。2017年。吉田大八作品を順々にという事で鑑賞。SF?コメディ?ちょっとどうジャンル分けしていいのか分からない展開。三島由紀夫作品の中でもそういう立ち位置の作品な様で、原作を読んだ時から監督は映画化したいと思っていたそうです。吉田監督作品の傾向ではあるが下品さが無いのでこの手の作品には少し物足りないよなあと感じる。作劇ひとつとってももっと雑でいいのにとも思うし、ちゃんとしている分より普通に見えてしまうというか(だからこその狂気なのかも知れませんが)。結構集中して観れたんですが結局最後までイマイチ乗り切れず。今思えば、登場するメインの役者4人(大杉家の面々)が全員苦手な役者さんだったのもデカいかも知れない。面白いシーンは多くさすが感はあった。

 

・スキャナーズ <2K修復版> (原題:SCANNERS) - 3.9/5.0 (名古屋シネマテーク/2021.5.14)

監督 脚本:デヴィッド・クローネンバーグ。1981年。前日の「ザ・ブルード」に続き今池のシネマテークにて劇場鑑賞。前日が微妙だったのでどうかなと思いましたが、こちらは怪作。面白かった。もっとタイトにすればいいのに。冒頭の試験運用?をして被験者の頭がぼーーん!する場面とか最高中の最高で最高だった。そのテンションでずっといってくれればいいものの、やはり中盤がどうしてもダレてしまうのが気になった。作劇が好みではないなーと改めて。中盤から終盤にかけてもまたおもしろの連続で結果的には結構楽しめたものの、冒頭のそのシーンしか覚えていないのはいかがなものかと自分自身思う。ラストのスキャナーズ同士の闘い(なんなんだその設定は)は血管ブニョーンからの血ブシャー!で刺激的だった。

 

・ウィズアウト リモース (原題:Without Remorse) - 3.6/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.5.14)

監督ステファノ・ソッリマ。脚本テイラー・シェリダン。ウィル・ステープルズ。2021年。マイケル・B・ジョーダン主演。アトロクの課題作品になり鑑賞。ジャックライアンシリーズの前日譚という事も何も知らないままに鑑賞。特に驚く事もなく、落胆する事もなく、すごく普通に観た。宇多丸氏も評論中に言っていたが"午後ローとかでたまたまやってて見たら儲けものだよね"というのが言い得て妙で本当にそのくらいの丁度良さだった。先月観た「21ブリッジ」と同じようなちょうど良さだなーと思いながら観た。燃やした車にまさかの同乗し脅迫するシーンや、冒頭の車に轢かれるシーン、例の懐中電灯シーン、序盤と終盤に出て来る水中シーンなど、面白いシーンも結構あってジャンル映画として全然楽しめる内容になっていると思う。90分くらいになったならなお最高だった(時間にうるさい人)。

 

・ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒 (原題:Missing Link) - 3.9/5.0 (DVD/2021.5.14)

監督 脚本:クリス・バトラー。2019年。日本公開2020年。公開当時に劇場で見逃し、レンタルを待ち望んでいた一作。スタジオLAIKA作品は初鑑賞。まずは何よりもとにかく画が素晴らしい。何気ないワンシーンをとっても痺れる、端から端まで気の行き届いた作画が美しかった。ストップモーションアニメとはとても思えなくてびっくりした。これに関しては映画館で観たかったなというのが本当にある。物語自体はまあ特段オリジナルなものでも無いような気もしますが、きちんと各ブロック毎にテーマというか"今(2019年)だからこそ伝えるべき部分"などがちゃんと織り込まれており丁寧だなあと思った。クライマックスの氷のぶら下がりシーンは、あれ?重くないの?wと普通に思ったがそこはご愛敬という事で。そういう部分も神経質になる必要もなく、あくまでしっかりと子供向けにこのレベルのものが作れるのはすごいなあと感心した。大きな会社がしっかりそういう作品を作れる事は非常に大切だと思う。ライカ作品ほかのも絶対に観ないといけないなと思う。素晴らしかった。

 

・ザ ブルード 怒りのメタファー <2K修復版>(原題:THE BROOD)- 3.6/5.0 (名古屋シネマテーク/2021.5.13)

監督 脚本:デヴィッド・クローネンバーグ。1979年。2K修復版で劇場公開という事でシネマテークにて鑑賞。クローネンバーグ作品はなんだかんだ初だった。正直そこまでだなと。テンポが悪くとても鈍重に感じた。時間を使っている割には何も起きないし、画面は地味だし、あまりにもなにも起こらない、起きそうにない時間が多すぎた。それでもやっぱり終盤の話を締めにかかる手際の良さ(プラス狂気)はさすがの味わいだった。それにしてもほんとに91分?と何度も時計を見たくなるくらいにはイマイチだった。

 

・葛城事件 - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.5.13)

監督 脚本:赤堀雅秋。2016年。劇作家、俳優、劇団THE SHAMPOO HATの旗揚げメンバーでもある赤堀雅秋氏の監督2作目。評判良いのと、最近ハマっている若葉竜也が出ているという事で鑑賞。結論からいうと非常にズドン来る作品で、元々"家族という呪いモノ"や"キョウダイ不仲もの"に弱い自分ではありますが、今作に関しては"呪い"とかそんなレベルの話ではなくもう"地獄だな"というふうに感じた(鑑賞後に予告編を見て観たらまさにそのままの文言で出て来てましたが)。全編に渡るイヤなシーン、それを繋げる嫌な長回し、なのに不謹慎にも笑えるシーンもあったり、などなど、不穏な状態が120分ずっと続いていく。登場人物全員がダメで、でも全員が人間らしく、コレって実際かなり自分たちの生活と薄皮1枚の話なんじゃないかなと(それこそ劇中出て来る"薄い壁"1枚隔てた隣で起きている話)、下手したら自分事になってしまう様な話なんじゃないかなと感じた。画面的な話をすれば、狭い空間の魅せ方や、登場人物たちの心情や状況を見事に表すショットも多くとても良かった。終盤の無差別殺人を起こすシーンにも果敢にチャレンジしていた。ラストの三浦友和の立ち回りも◎。ただ、若葉と獄中結婚をする田中麗奈演じる星野の役柄だけが現実感なく、?となりましたがこういうものだろうという事で飲み込んだ。何故結婚したいのかも分からなかったし、台詞も微妙だし、せめて犯罪心理系の研究の人みたいな立ち位置ならもう少し良かったのかも知れないが、あれくらい意味不明で頭がイカレた奴もいるという現実の話だとしたらそれはそれでゾッとするよなと思う。それでもそんな部分は全然見逃せるレベルに面白い作品だった。「その夜の侍」という作品が初作品としてある(「葛城事件」に通じる作風が最初からあるらしい)のでまた見てみようと思う。

 

・食われる家族 (原題:침입자) - 2.0/5.0 (DVD/2021.5.12)

監督:ソン・ウォンピョン。2019年。日本公開2021年。アトロクだったのか未体験ゾーンの映画たちだったのかもう覚えていないがお勧めされていたので新作レンタルにて鑑賞。観た内容がもうちょっと思い出せないレベルで失笑モノだった気がする。宗教が理由になっていたがそういう映画もまあありますが、結構興ざめしてしまうので使わない方がいいのにな~と毎回思う。人気の作家の原作らしく、話自体はまあ実際ちゃんと骨組みまでしっかり丁寧だったように思ったがいかんせん作劇が破綻しておりもうどうにもこうにも。毎回唐突に登場人物たちに(物語上)都合の良い事が起きて話が進んでいく事もそうだし、シーン自体の繋がりやカットの切れの悪さ、編集テンポ、シークエンスの無責任さ。本当に映画知ってるの?と聞きたくなるような出来だった。監督初作品らしいが。Filmarksなどでは"パラサイトっぽい"的なコメントも数多く見られますが書いてる奴らはマジで映画を観るのに向いてないから辞めた方がいいと思う。アホらしい失笑シーンはいくつかあったのでそこを目当てに観てもいいかも知れませんね。

 

・台風クラブ - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.5.11)

監督:相米慎二。脚本:加藤裕司。1985年。ATG配給。相米作品は初鑑賞。台風が近づくある日に教師の手違いから学校へ閉じ込められた中学生の一夜、モラトリアムを台風の激しさと並べ描いた。お話部分はあるような無いようなという感じで、中学生のモヤモヤやザワザワなどの、書いてそのまま"言葉に出来ないぐるぐるした気持ち"を映画的な画面と共に抽出する事を目指した作品。クライマックスで主人公・三上は「死は生に先行する。厳粛に生きるための死が与えられていない」「これが死だ」という言葉と共に投身する。台風でぬかるんだ地面に突き刺さる三上(足はピクついている)。私は鑑賞時、"あ、死んだ。"と素直に思って観たが、他の人の感想をネットで見ていると、死んでいないと捉えている人もいるようで"んなバカな"と思ったが、これ(先のセリフ)は厨二的な発露で、映画の背景でもある台風で"ぬかるんだ地面のおかげでもちろん三上は死ねていない"と考えると、わりときちんと腑に落ちる様な気もする。し、死んでいないという方向性もありだなと思える。今では当然通らないであろう男子、女子ともに裸になるシーンがある。今となっては映像的に貴重か。

 

・カラフル - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.5.11)

監督:原恵一。脚本:丸尾みほ。原作:森絵都。2010年。原恵一作品で評判良いので鑑賞。原作がそこそこ売れたものなんですね、知らなかった。まず、画とか、声優の演技に関してはかなり微妙だなというのが正直な感想。好きじゃないかと言われれば別にそうでもないのだがわりと絵がもったいないなと思うシーンが多かった。演技に関してはかなり棒読み風の演技になっているので賛否はあると思うが、個人的には映画自体がそうな様に、さらにアニメというハコもの(声を吹き込むという意味では)なのでやはり観客の感情を入れ込む隙間は必要だと思うのでこれくらいの棒読み演技の方が合っているのではないかと思う。一般的なTVアニメのつもりで観ると微妙に感じる観客も多いのでないかとは思いますが。冒頭で登場する、主人公の中身(の死んだ誰か)が実は主人公自身だったというプロットは、シンプルながらもそれだけで勝っている様な気もするほど、非常に気が利いているなという印象。不倫をした母、空気の様な父、すれ違ったままの兄、との散り散りになった家族の心の回復を心の傷を自ら治癒していく主人公の成長と同時に描いていく。"そもそもこの家族自体がそこまで崩壊していなくない?""こんな事で立ち直っていく人物ならば自殺はしなかったのでは?"または"死んだ奴の心はこんなに簡単には治らないのでは?"という穿った観かたも出来ますが、今作においては、クライマックスの鍋を囲んだ食卓のシーンに全てが集約されていると言っても過言ではなく、"家族団欒"の象徴でもある暖かな湯気の立ち上る鍋を前に、時折声が大きくなりながらも涙を流しながら家族が言葉を発し、お互いに心を再び通わせていく行為自体に家族の回復を観るわけです。なので細かい事はあのシーンのための準備なのでどちらでも良くて、あそこで家族が絆を取り戻し、その食卓でホクホクと口を動かし食事をする絵面にこそ意味があり、私は涙が止まらなかった。破壊の程度は一旦置いておいて、家族の心の離散は悲劇なのだ。

 

・ホテル ムンバイ (原題:Hotel Mumbai) - 3.8/5.0 (DVD/2021.5.10)

監督:アンソニー・マラス。脚本:アンソニー・マラス。ジョン・コリー。2019年。評判良く、旧作落ちするのを待ちながらのレンタル鑑賞。2008年にインドで起きた同時多発テロを題材にした劇映画。テロによる殺戮の無常さ、残忍さを真っ向から描いた。年端もいかぬ少年たちによる銃の乱射での殺戮シーンは映画だと分かっていてもかなり胸糞悪く仕上がっており、ホテルを守るデブ・パテル演じる主人公(そこまで主人公感無かったけど)(主人公が受動的すぎて実際には何も行動を起こして解決に向かっていないのは映画としての"面白さ"から離れていくのでは?)に感情移入をせざるを得ない。基本的に"面白いらしいよ"以外の情報を入れずに映画を観る事が多いので、メインビジュアルからもっと感動的なドラマなのかなと思っていたが、実際は「タワーリング・インフェルノ」等のパニック映画を思わせる様なジャンル映画で結構そこは嬉しい誤算だった。主人公を含めたホテル従業員視点、その家族視点、客の複数視点、悪役視点、などが交錯しながらの作劇になるのでどうしても123分という尺になってしまうのは仕方がないのかなとも思うが、必要か?これと思えるシーンも多く、もう少しタイトにしても良かったんじゃないかなあという気持ちは無くはない。正直、123分を持たせる緊張感には達していない様な気がする。エピソードや登場人物の描写はすごく丁寧に最短で行っているのでかなりしっかりと楽しめた。ズシンと来るものがある良い作品だった。

 

・転校生 -さよなら あなた- - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.5.4)

監督:大林宣彦。2007年。大林作品は有限なので未観のものはなるべくしっかりと集中して時間の取れる時にゆっくりと見ていこうと思っていたのですが、メルカリにてこの作品のパンフレットが出品されており(買おうにも値段的に作品の好き・普通を見てから)購入を検討したいなと思い、鑑賞。特に今作は「転校生」のリメイクともあれば心して臨まないといけないと思っていた。後期大林作品の大暴れっぷりはこの作品から始まっているというのはよく目にしていたので構えて見ていたのですが冒頭から極端に傾いたアングル、速すぎるカット割り、休む間を与えないセリフの応酬編集。しょっぱなから暴れっぷりは全開でクラックラしながらスタート。前半部分だけ見てみれば、基本的にはオリジナルの「転校生」と同じ様な展開(時代や転校してくる方などを除いて)なので割とサクサクと見られた。が、後半から一気に雲行きが怪しくなり、オリジナルでは"性"の話だったこの作品がこのリメイク版ではいつの間にか"生"の話へと変化していった。晩年の大林作品の死生観を想えば納得の出来だ。なので、人間愛というか、人としてという部分では物語のラストのカタルシスは(もう十分すぎるほどに)あるのですが、恋人や自分の分身の様な友人との関係を愛する様なオリジナルにあったイノセントかつモラトリアムの真っ只中の2人にしか描けなかった部分は無くなってしまっているのが現状であることも踏まえ劇中の2人が最後の方で思いを伝え合ってもイマイチ響いてこないなと思う他なかった。オリジナルでは一番泣けてしまうシーンのはずでしたが。ネットのレビューなどを見ていると蓮佛美沙子を見出したことが唯一の良いところ的な感じで書かれているが蓮佛美沙子に対して本当に特になんの感想も無い人とってはつらいなあと思った。また、本編最後に出てくる"人は誰も-生きてその物語を残す。人の命には限りがあるが、物語の命は永遠だろう。"という字幕に対して"映画は、自分の作品は、永遠だという自己満足を見せられた"とクソ程にもしょうもない勘違いをしているバカな感想もあるが全くもって勘違いだし、ここで言う"物語"はどう考えてもその人が生きた"人生"の事だろう。死んでも尚、残された人たちがその人自体やその思い出を思い出す事でその人の命は生きていることと同じだろうという晩年の大きなメッセージだろと、リテラシーの低いバカに貶されて腹が立った(信者)。斜め構図の意図などはイマイチわからなかったので作品解説などを読んで参考にしたいと思う。主題歌の曲が非常に良かった。

 

・愛のコリーダ 修復版 (仏題:L'Empire des sens) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2021.5.4)

監督 脚本:大島渚。1976年。先日鑑賞した「戦場のメリークリスマス 4K修復版」に続きこちらの作品も最後の大規模ロードショー。大島作品は前回初めてで非常に満足がいっていたので楽しみにして鑑賞。祝日という事もあってか結構な客入り。50人ほどは居た様に思う。久しぶりに両隣や後ろ全て間隔空けずに埋まっている状態での鑑賞となった(唐松着席に慣れると苦痛でしょうがない)。開始から早々に(モザイクは入っているが)性器のドアップ、実際にそれらをまさぐっている姿が画面にしっかりと映し出されており、映画館の画面で初めて見る描写が多々見られた事にまずは驚いた。その後も基本的にはずっとセックスをしているシーンの連続。露骨に挿入部が映るシーンも多く、結構始めのうちは新しい映画体験にドキドキしましたが次第に慣れていくのはすごいなと感じた。というか正直言って飽きてきたというのが正確な気もする。中盤くらいまでは集中して観ていたのですがいつまで経ってもセックス、セックス、セックスでもういいよと。気が付けば、展開も無くストーリーも無くひたすらに角刈りの男と微妙なブス(ガンバレルーヤのまひるに)のセックスを見続ける拷問映画と化していた。一応のオチは知っているので"早く首をしめてチンコを切り落としてくれ"と願いながら観てしまった。最後の2,30分が相当に長く感じた。ただ、だからと言ってじゃあダメかと言われればそうでは無かったので帰りにパンフレット(「戦場~」と合同の)を購入。どういった経緯でこの作品が作られ、当時どういった反応があったのか、大島渚とはどういう作家なのかというのが分かるといいなと思う(樋口尚文氏が寄稿しているし)。大林宣彦監督「SADA 戯作・阿部定の生涯」がいかに良かったかが身に染みた。やっぱり自分は大林チルドレンだと(そういう話?)。しかし、前日に鑑賞した「SNS~」に続き、映画館でチンコのアップばかり見ている気がする。。。オエ...

 

・SNS-少女たちの10日間- (原題:V síti) - 3.2/5.0 (センチュリーシネマ/2021.5.3)

監督:バーラ・ハルポヴァー。ヴィート・クルサーク。脚本 原案:バーラ・ハルポヴァー。2020年。劇場で予告を見て"これはなかなかだな...(悪い意味で)"と思っていたらアトロクの課題作品になり憤慨。ちょうど番組中にM資金の話してたんだからもう一回ガチャ回せよ!!!!とマジでムカつきました(今年は課題作品すべてに付き合うというルールを己に課しているのです)。という訳で観たくもないのに劇場鑑賞。感想はもちろん、本当に別にこんなラジオ番組の何かに付き合う必要もないんだけどな!!!!!と。虚しさ。ドキュメンタリーとして一応きちんとした展開もあるし、登場人物に善悪もちゃんとつけているし、いろんな方面に気を遣っている感じもしっかりと分かり(色々要点はありますが面倒なので割愛)かなり丁寧に作っているなあという感想は持ちましたが、別にこれをわざわざ映画館で観る必要も無かったなと心底思った。WOWOWで深夜にやっていたら観るドキュメンタリー番組レベル。大きな感想としては、中盤に登場する良い人げな登場人物のモザイクが外れた瞬間に萎えて終わったというのが評価の分かれ目だったかと思います。ルッキズムがどうとかそういう話では無いはずなのに、ルッキズムの話になりかねないし(結局キモい奴はキモくイケメンは中身もイケメンって、現実だったのかも知れないけどさ)、わざわざモザイクを外す必要は無かったのではないのかなと。何故彼だけモザイクが外れるの?やらせ?と普通に萎えますよね。結局最後の方もどうまとめるのかなと思って観たけれど地味だし、いや知ってるしwって感じで何とも。タイトなスケジュールの中、貴重なトーキングヘッズのライブ映像を捨ててまで観たのに。。。劇場には50人ほどお客さんが入っており(若い女の子も結構いた)、コレみんな普通に観たいんだ...とちょっと驚きましたね。Filmarksにあった、<ウトウトしている最中に「ドゥーン!」と大きな音がして慌てて目を開けたら、スクリーンいっぱいにチンコが映っていて「嗚呼、これぞ映画体験…」といったゾーンに一瞬入った。>というレビューに笑った。辛辣に酷評するのではなくこうでありたい。

■2021年4月に観た映画

30本、短編1本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・レック (原題:[rec]) - 3.7/5.0 (DVD/2021.4.30)

監督 脚本:ジャウマ・バラゲロ。2008年。三宅隆太監督のレコメンドで(多分)鑑賞。POVモノのスペイン映画。77分のショート丈。ホラー作品というよりはゾンビ映画という感じだった。序盤の"明るい画面&明るい主人公アンヘラ"からの変貌っぷりを楽しむという事に気付くと趣としては良かった。全然怖くないしビックリ演出で驚かせてくるわけでもなく、あくまで淡々とその場で起きているパニック現象を捉えていくスタイルはわりと好感が持てた。ただ非常に狭いシチュエーションでの設定ということもあり、囚われているアパートの住人たち(これも理由とはイマイチ謎だった)が一人ずつ噛まれては感染して→噛まれては感染してのワンパターンな流れしか作劇がなく、画面自体の緊張感はあるのだがお話としての緊張感にイマイチ欠いており77分という尺にも関わらず正直、中盤はダレた。クライマックスあたりのいよいよ生き残っている人数が減ってきて元凶と思われる部屋へと入ってしまう前後あたりの決定的なシーンからは、低予算を逆に生かした撮影やここまで我慢を続けてきてようやく放たれる暗所撮影シークエンスなどを使いこの作品ならではの良さが際立ってきていた。オチもシンプルだが画面も含め面白かった。

 

・もう終わりにしよう。 (原題:I'm Thinking of Ending Things) - 3.9/5.0 (Netflix/2021.4.29)

監督:ベニー・サフディ。ジョシュア・サフディ。脚本:ロナルド・ブロンスタイン。アトロクにて村山章さんのおすすめで鑑賞。鑑賞前にパッと目に入ったネットの評判を見ると"理解不能。意味不明。"などが並んでおり、それなにの覚悟で臨んだが普通に結構わかって楽しめた。し、個人的には夢と現実の境界線が曖昧になって一種トリップ描写の様になっていく表現は好きなので非常に集中して楽しめたと思う。話自体もクライマックスの"高校の用務員のおじさんが実は主人公の本当の姿だった"という最大のミスリードの結果があるのですが、それの答え合わせがとても曖昧だったために難解さが増している様な評価に繋がっている様に感じる。そんなことは普通に見ていたら分かるのだがもう少しはっきりと描いても良かったのではないかなと思った。そして、母親役はトニ・コレットに限るし、彼女が出てくるだけでむちゃくちゃ嫌な雰囲気になるのはすごいなあと思う。お話自体は決して面白くは無いが、画面構成や妄想夢表現のバリエーションの多さが鋭く、最後まで飽きずに見ることができた。アイスクリーム屋のシーンとかとても嫌な感じで良かった。車でのムダ話シーンはさすがに一回で良いかな。

 

・アンカット ダイヤモンド (原題:Uncut Gems) - 3.7/5.0 (Netflix/2021.4.29)

監督:ベニー・サフディ。ジョシュア・サフディ。脚本:ロナルド・ブロンスタイン。ずっとチェックしていたがようやく見ることができた。渋い雰囲気なので一見するととっつきにくい様に見えるが結構しっかりと練られた脚本でそんなに色々考えこまずに見てもしっかりと理解できる様になっている様に感じる。腑に落ちない設定や展開も多かった様に思えるのでそこまでテンション上がって見られたわけではないが、悪くもなかった。冒頭の内視鏡シーンは結構面白かった様に思う。Netflix作品全般に言えることだが、作品が長すぎませんか?これとかも全然110分とかにまとまったでしょ?と突っ込みを入れたくもなる。

 

・何者 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.29)

監督 脚本:三浦大輔。原作:朝井リョウ。2016年。原作小説を読んで面白いなと思っていたが映画化の話を見た時にはメンツだけで絶対に行かないことに決めていたのに、今となっては普通に見られるので不思議だ。まあ蓋を開けてみても邦画界でもわりと一流の俳優が揃っていてさすがに"朝井リョウ"のネームバリューを感じた。原作を読んだ時の様な"裏切られた〜うわ〜こええ〜"みたいな気持ちはあまり湧き出てこず、感情移入の導入が甘かった様に感じる。クライマックス付近の独白の様なシーンが、実は舞台の上で書き割り前でやっている所の画で使っていくあたりは好きだった。が、とにかく佐藤健演じる主人公への感情移入が非常にしづらい構造になっている(というか受け身キャラすぎる)ので、こればっかりは何とも言えないが結局あんまりだなあという印象になってしまう。今作の有村架純を見て相変わらず良い女優だなあと感じた。

 

・アイリッシュマン (原題:The Irishman)- 3.8/5.0 (Netflix/2021.4.28)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:ウティーヴン・ザイリアン。2019年。基本、Netflixへは加入をしていないので(今は期間限定)なかなか見る機会がないですがようやく鑑賞。スコセッシ作品を見るのは久しぶりな気がします。楽しみは取っておきたい派なのでこうしてゆっくり見ていくのです。アカデミー賞ノミネートなどで話題の配信作品、内容としては...全米トラック運転組合のジミー・ホッファの失踪、とそれにまつわる2人の男の出来事を3つの時系列で追っていくマフィア映画。という感じでしょうか。ただこれ、209分(3時間30分)あり、ひたすらに長くまずはそれが一つのハードルになっている。実際に初日では見切ることができず、2日かかってようやく完走。も良いもののまず口を出たのが"長い..."だったのでこれはやはりいかがなものか。オープニングから序盤にかけてはスコセッシ味がバリバリに効いた数々の描写で楽しく見られたのですが(特に車の後部座席から首を絞めて殺すシーンのBGMのくだりとかも最高だった)、時間の経過からかどうしてもやはりテンポの鈍重さが気になり始め(まあもちろんそれでもとても3時間半ある作品とは思えない体感なので十分にすごいのですが)、興味の持続こそはあるものの余計なことを考える隙間がある様な気がして個人的にはダメでした。今の時代、もちろんこの尺ではなかなか映画館での上映は難しいので配信でってことにもなっているだろうし、配信だからこその長さ、表現の自由度、時間の掛け方の豊かさにも繋がっていき、結果として芸術としては余裕のあるというか、常にピークをついている状態で血管浮き立たせながら進むこれまでのスコセッシ映画とは少し距離のある雰囲気になっていた。時代性は大いに感じることができる。面白かったんですけどね。映画館で見たいし単純にもう少し短くしてほしい。

 

・CUBE - 3.6/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.4.27)

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ。1998年。謎の四面体の中に閉じ込められた6人の脱出劇を描いた。とは言え、何で閉じ込められているのかもわからないし、描写も中途半端だし、90分という尺なのに途中の中だるみがすごいしで結構アレな作品だった。冒頭の1人目が見事に殺されてタイトル登場するアバンはかなり良く、期待値が一気に上がっただけにそこから90分かけての下り坂っぷりが残念だった。ダウンロードで観たので何故か吹替になってしまったので観たのも良くなかったかも知れないが、とにかく画に緊張感が無いし、数学で謎が解けていく件も分かりにくい(というか見ていて映画的なカタルシスとか瞬間的な興奮が無い)しで、うーんという感じだった。結局、クライマックスで一気にいろんな物語が進むのですが、そこまでがどうしてもダルい。もうちょっと順番にキャラクターが無残に死んでいく様な作劇が無いとこういうジャンル映画としてはバランスが保てないのではないかと思う。一番ラストのヒールが動くキューブに見事に真っ二つにされる時の描写はオープニングに匹敵する切迫感と緊張感があり良かった(真っ二つになる事は2秒で予想できるんだけど)。とにかく、薄味すぎた。今年公開で菅田将暉が主演のオフィシャルなリメイクがあるらしいが予告を観る限りでは期待できないなと思いつつも観るだろうなあと思う。

 

・ホムンクルス - 2.5/5.0 (Netflix/2021.4.26)

監督:清水崇。2021年。映画館でかかっていた期間がたしか1週間しかなく、見に行く事が出来なかった作品。原作漫画も高校生当時は読んでいたのはおぼろげに覚えている。上映館が(いつも株主優待券で観ている)ミッドランドしかなく、尚且つ優待券が使えない興行、レイトショーも無い、となると優先順位的にはグーッっと下がるので見れていなかった作品。早々にNetflixで配信されており鑑賞。のですが、まあハッキリ言って映画館で金払って観なくて良かったなあと心底思う内容だった。「あの頃」が今年のワーストかなとか思っていましたがこれもものすごいいい線行きそう。まあとにかく描写がつまらない、脚本がうすら寒い、作劇も曖昧、長い、役者も出る作品は選んだ方が良いよねと本当に声を大にしていいたい代物だった。全てが適当でお仕事映画かなとしか思えない。原作の時も印象に残っていた砂のホムンクルスが良く見たら砂ではなく大量の文字だったというシーンのCGのすごさは良かったがそれ以外はもう、気持ち悪りい話だなとしか思えなかった。今年ワースト出たかも。(ロボットの小指の話とかも思い出したら腹立ってきたな)

 

・愛してるって言っておくね (原題:If Anything Happens I Love You) - 未採点 (Netflix/2021.4.26)

監督 脚本:ウィル・マコーマック。マイケル・ゴヴィエ。2020年。12分の短編アニメーション作品。第93回アカデミー賞短編アニメ部門受賞という事で鑑賞。セリフも色も無くソリッドな1つの設定だけで突き進んでいく短編アニメ。実際にあった事件を下敷きに描いたそうだが、別にこれってこんなにインスタントにしてまで感動したいの?と聞きたくなった。泣いてストレス解消するOLの思考かよと。心理描写とかそういうものでヒーリング的な雰囲気というか順番に全てを許していくものというかそういうものなんだろうけども、整体とかマッサージに行ってBGMで流れるオルゴールになったジブリみたいなものを感じてしまい評価する気にはなれなかった。

 

・最後まで行く (原題:끝까지 간다) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.25)

監督 脚本: キム・ソンフン。2014年。イ・ソンギュン主演のクライムサスペンス。111分間ひたすらイ・ソンギュン映画。ワンシチュエーションと言えばそうかも知れないがこの1つのネタだけで約2時間しっかりと面白いものが作れるのが韓国ノワールとかサスペンスだなと思う。今作も基本的には"轢き逃げをしてしまった殺人家の警官が何とか隠蔽を図ろうともがくが..."というそれだけのお話。この設定自体も冒頭5分くらい(確か)で早々に風呂敷を広げてあとはそれに向かっていろんなで出来事を積み重ねていくだけというシンプルな作劇。そこが明朗でわかり易い。隠蔽のために悪戦苦闘するイ・ソンギュンも素晴らしかったし、何だかやけに強そうな悪役も良かったし、1つを解決すると次の1つが起こりとエンタメ的にもバッチリ。敵の仲間を追いかけるシーンの遠い遠い上空からの長回しや、冒頭の事故シーン、終盤の車爆破シーンなどしっかりと丁寧に練り上げられた構図も決まってかなり安心して見られる作品だった。単純だけどスカッと面白い韓国映画の良い部分がギュっと詰まった1作だったと思う。オチの個人金庫シーンはどうかなとも少し思うが、大満足な出来だった。

 

・八仙飯店之人肉饅頭 (原題:八仙飯店之人肉焼) - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.4.24)

監督:ハーマン・ヤオ。脚本:ラオ・カムファイ。1993年。シネマスコーレにて行われていた【アンソニー・ウォン×ハーマン・ヤオ 極悪香港映画祭】にて鑑賞。特に何の前知識も入れず、タイトルからして食人中華料理スプラッターコメディ的な悪趣味映画を期待して見に行ったのですが、スプラッターやゴアはそうとしても観客的な目線は警察チームだし、意外にもクライムスリラー的な質感で驚いた。人肉饅頭描写は序盤のとあるシーンでしか登場せず、あとはひたすらに警官が犯人のアンソニー・ウォンを追い詰めて自白に持って行くかを描いた作品だった。が、が、ですよ。ところが、それは別にまあ良かったのですが、回想シーンとか現行シーンとか関係なくこの映画に出てくる倫理感がひたっすらにひどい。もう結構見てられないくらいに露悪的で、悪趣味で。ちょっと凄すぎた。90年代の"何でもやってしまえ感"、"むしろこれくらい振り切ってる方が面白いっしょ感(それは裏返せばジョークが通じていた時代とも言えるかも知れませんが。)"、"表現は自由だ感"を妙に感じたし、あの時代の良くも悪くもダメな空気みたいなものをビンビンに感じながら観ており終わってから調べると案の定、93年の作品でビンゴ。まあ嫌いじゃないし、これくらいやってくれる方がやっぱり芸術としては面白みがあるのですが、さすがに観ている側の倫理観とか道徳観をもう画面から生えた腕で直接グワングワンと揺さぶってくるかの様なシーンの連続で、良かったんだけど浦東に最低だったなあという感じ。女・子供も平気で殺すのもそうだし、アンソニー・ウォンが何とか自殺をしようと様々な試みを繰り返すあたりも相当にキツかった。どういう意図で、どういう神経でこんなものを作ったんだと監督に小一時間問いかけたい。今まで見た映画の中で本当にまっとうに1番ひどい、嫌な映画だったと言い切れるなと思った。評価してますけどね。すごいけどさ。見れて良かったけどさ。ね。

 

・ファブリック (原題:In Fabric) - 3.2/5.0 (DVD/2021.4.24)

監督 脚本:ピーター・ストリックランド。2018年。日本公開2021年。"A24も認めたゴシックホラー"的な謳い文句を目にして鑑賞。うーん、何とも言えない微妙な感じでしたが、今作の評価としては正直、あんまりかなと言わざるを得ないと思う。まず"呪われた赤いドレスを巡って様々な受難が降りかかる"という設定は良いのですが、本当にそれだけ過ぎて、中身と画面が全く伴わず何の面白みもない作品に仕上がったなという感想。一見面白そうだがどのエピソードも弱く、そういった場面をケレン味の強い画面作りで何とか騙し騙しクリアしていってはいると思う。監督のセンスやアイデアは非常に良いと感じるのだが、これでは何ともならないというかそんな印象だった。とにかくひたすらにつまらない。山なしオチなし意味なし、とはこのことか。序盤の赤いドレスを入れた洗濯機が暴走しだして止められなシーンは思わず笑ってしまったが今思えばそこがこの作品のピークだったなと思う。そして、何よりも118分という尺はこの手のジャンル映画(且つこの程度の内容)にしては致命的に冗長だった様に感じる。「サスペリア」の様な作品は画面の美しさが圧倒的に違うし、この作劇というかプロット1本勝負的な構築では通用しないでしょう。

 

・戦場のメリークリスマス 4K修復版 - 4.2/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.24)

監督:大島渚。脚本:大島渚。ポール・メイヤーズバーグ。1983年。「愛のコリーダ」とともに4Kに美しく修復されたバージョンとして最後の大規模ロードショー公開。公開2日目にミリオン座にて鑑賞。ずっと見たかった作品ではありましたがなかなか順番的には後回しにされていた一昨。それが今回劇場で見られたのがまずは真っ先に素敵な出来事だった様に思う。大島渚監督作品は初めて見たがこの「戦場〜」における構図の作り方が、(シンメトリーだったり、小津監督ばりのカメラを床に置いた長回しや)印象的なシーンが多かったと思う。お話的には、今であれ過去であれ、戦争中であろうとなかろうと、どんな人のどんな人生にも必ずそこに居て呪いの様に離れることが出来ないのが圧倒的な"他者"という存在との事柄を美しくも冷徹に描いた作品を戦闘シーンの無いこの戦争映画に託している。原とローレンス、ヨノイとデビットボウイ(役名失念)だったりなどの、どういう状況であれ他者からの施しを受けたりあげたりする事からは逃れられないし、ある意味がそこが美しかったりもするし、ということを素晴らしく美しいカメラワークと作劇で見せてくれる。俳優陣の演技は冒頭はかなりのノイズになったが、中盤以降は気にならなくなった。ラストシーンであるデビッドボウイの顔に蝿がたかるシーンは忘れられない。こんなことでは魅力を書き切ることは出来ないが再び見て良さをもっと味わっていきたい、そんな作品だった。

 

・mid90s ミッドナインティーズ (原題:mid90s) - 4.1/5.0 (DVD/2021.4.23)

監督 脚本:ジョナ・ヒル。2020年。名優ジョナ・ヒル初の監督作品。スケボーや90sヒップホップカルチャーなどとの親和性が高い作品になっていることは真っ先の知識として知っていたので正直そこまで食指が動く感じではなかったのですが、タイミングがあったため新作DVDレンタルで鑑賞。まず言えるのは"すんませんでした!!"と。ぶっちゃけナーメーテーター案件でした。優れているかと問われれば決してそうでは無いのですが、デビュー作のマジックか、やはりジョナヒル自身が描きたいんだろうなあということが明確に且つしっかりと練られた画面と作劇、映像編集にてビルドアップされており、非常に高感度の高い良い作品だった。16mmフィルムでの撮影を選んでいることや、そのざらつきが見せるイノセント感ティーンのあぶなっかしい青春ときちんとリンクして、意味をもってそこに置かれていることだけでもう勝っているよなあという印象。冒頭の早回しシーンや、ぶつっと途切れる編集など、おそらくキャリアを積めば積むほどやりにくくなるであろう表現は一見の価値があると思う。最後まで緊張感を保ちながら優しい物語を紡いだ監督に拍手。

 

・ハーフ オブ イット: 面白いのはこれから (原題:The Half of It) - 3.6/5.0 (Netflix/2021.4.22)

監督 脚本:アリス・ウー。2020年。Netflixは未加入なので話題になっていても観るチャンスがあまりないのですが何とか観られた。結論から言うと、期待したほどでもなく案外普通。というところか。主人公の中国系のエリーとアメフト男子のポール、美人のアスターの3人の微妙な関係性を切り取ったLGBTQをメインテーマとしたドラマ作品。微妙な関係性を~という所まではよくありすぎるプロットで、それにLGBTQが絡んでくるのが今っぽいのですがそれでもまあ普通。特に刺さるシーン、台詞、展開、作劇もなく、いやでもなく良くもなくという感じでぬる~く観たという感じでした。"過剰(過度)にしない"ということがLGBTQの様な事柄を描くには上手い部分なのかも知れませんが何だかそれだけで終わってしまった。温泉でエリーとアスターの距離が縮まっていくシーンは良い。良い話でしたけどね。

 

・サイン (原題:Signs) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.4.22)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2002年。「アフターアース」評を聴き、シャマラン監督作品に興味が沸き、おすすめ通りまずはこちらの作品から鑑賞。一見すると相当地味な作品でしたが、わりと好きだった。映画的なというかエンタメ的な"画面の分かり易さ"のパワーはイマイチかなという感じですが、そういう大きな部分ではなく、メル・ギブソン演じる主人公家族と主人公自身のミニマムな話を本質として描いている作品且つ丁寧に作られている事がしっかりと分かる画面作りにとても好感を持った。伏線と呼ぶ様なシーンは若干ベタすぎて"それは後出しジャンケン的なものなのでは..."と感じる部分もなくは無いが、監督がとても真面目なんだろうなあというのは伝わってきて嫌な感じはしなかった。ちょっと敷居を下げ過ぎている気はするが。ホアキン・フェニックスとメル・ギブソンの演技でもって引っ張っていっているのでどうであろうとある程度は画面の緊張感は担保されておりこういった作劇も展開出来るのだろうなあと思う。丁寧親切設計なのに実は結構渋いというなんとも不思議な作品だった。とりあえず次は「シックスセンス」を見てみようと思う。

 

・嘆きのピエタ (原題:피에타) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.20)

監督 脚本:キム・ギドク。2013年。初チャレンジのキム・ギドク作品。クセ強を期待して鑑賞したが見事にクセ強映画監督だった。まずツッコミたいのは画の安さ。どういう訳なのかデジカメで撮ったとしか思えない安い画と、明らかにデジタルズームする画面、ホームビデオでも見せられてるのか?と思わずにはいられなかった。のだが次第にその味わいがいいのかなとも思えてくるから不思議。お話的には、どうして主人公が女の事を母親と思ったのかという部分が腑に落ちなかった。最後まで見てもそれが嘘だったのか本当だったのかよく分からない(がそれはどちらでもいいのだろう)。ネットにある感想を読むと、とにかく痛そう、強烈とか描写に対しての感想が並んでいるがそこが鮮烈なのは当然と言えば当然で別にそれはどちらでもよくて、本作はその話の結論(から終盤あたり)に全てがあるのではないかと感じる。特に衝撃的なのはラストシーンだろう。ラストに夜明けの静寂と共に主人公を引きづっていく鮮血轍シーン(しかも上空からのショットがニクい)の美しさと共に観る者を襲う、ヘヴィさと余韻。救いのない終わりといえばそれまでだが、これまでの人生が救いようの無い主人公にとってはこれが救いだったのかとも考えられる。他の作品も見てみようと思う。

 

・ザ スイッチ (原題:Freaky) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.20)

監督 脚本:クリストファー・ランドン。2020年。日本公開2021年。「ハッピー・デス・デイ」(未観です、観ます)のクリストファー・ランドン監督新作。女子高生と無差別連続殺人犯が入れ替わってしまう君の名は映画。ブラムハウス製作。もうそのプロットだけでジャンル映画として勝っているようなものなの後は楽しむだけという感じで安心して観られた。結構コメディ的な見せ方も多く、アバンタイトルや序盤だけなぜか出てきた[11日水曜][12日木曜][13日金曜]のバカデカテロップもなかなかソリッドで笑えた。殺人犯なのでやはり体の差、力の差での戸惑いを描く事で面白みを魅せていく事で生まれる様々な描写が面白かった。何と言ってもヴィンス・ヴォーンのオカマ走りが最高。何度も映るのですが何度見ても何だか面白くてつい笑ってしまった。ラストの元に戻った殺人犯を主人公家族3人でついに逆襲して殺すシーンは必要があったのか分からずそれだけが微妙っちゃ微妙だった。全体的にはまあまあな感じ。

 

・街の上で - 4.0/5.0 (センチュリーシネマ/2021.4.19)

監督 脚本:今泉力哉。脚本:大橋裕之。2021年。今泉監督最新作を鑑賞。主演は若葉竜也。下北沢で起こる20代男女の日常を俯瞰の固定カメラ長回しで捉えた群像劇。脚本はこれまでも共同で手がける事も多かったが、今回はギャグ漫画家・大橋裕之とのタッグ。これが最大級に功を奏している。基本的に"今これは一体何を見せられているんだろう"と思ってしまう様な日常の一コマを丹念に丹念に長い尺で抜き出していく方法論。監督なのか大橋氏なのかどちらの作劇なのかはわからないが、一見長く無駄の様に感じるエピソードでもその先に待っている全ての出来事とリンクしており、後から"お〜"と繋がる気持ちよさが一定数以上に用意されているのが今作の旨味でもある。また、セリフ一つを取っても自然体で口語でしか出てこない様な表現のみに整理され、なおかつ俯瞰の固定カメラでロングショットなので、あたかも自分もその場にいてその瞬間を登場人物たちと共に目撃してきたかの様な同時体験性を持つ錯覚に陥る。しつこいくらいに丁寧にその辺りをすくい上げているのが今作の勝因の一つでもある。し、123分という若干長尺に感じる長さになってしまっている敗因でもある。しかし、こうしないと成立しない作品だとも思うのでこれはこれで良かったのだと思う。またこれは個人的な見解というか好みの範疇だが、今泉作品通じて言える事だが、とことん監督の女の趣味と自分の女の趣味が合わないなと感じる。女優が全員可愛く無い。のだが...「愛がなんだ」の時も書いたが顔は(タイプじゃなくて)かわいくないのに、むちゃくちゃ可愛いという、そういう風に撮れている時点で私は今泉監督に完敗しているのだとも思う。今作でいうと主人公・青の彼女である穂志もえか演じる雪が終始可愛く無いし、こいつは絶対にクズだなと思いながら見ていたのだが、物語が積み上がっていくクライマックス、青の元へ戻るという決断を自らし、物語が結実を迎えるあの自室でのシーン。これまで無いくらいに雪の顔が可愛く映っており、"そういう決断をした女の顔(きちんと自分の思いに素直になった=それが女の子として一番可愛い)"と物語の流れの全てが繋がった瞬間にそういったショットをブチ込んでくる事が本作の全てでは無いのかと観ていて鳥肌が止まらなかった。見事過ぎた。当然、ここで映画自体もスパッと終わるのかと思いきや、そのあとに15分ほど?のいくつかのエピソードがまだ連なっており、そこが完全に蛇足に感じてしまい、非常に惜しい気持ちにもなった。あそこで終わってくれれば相当な表現として最高の評価をしたかった。が、まあその後の幾つかのエピソードは(いらないと思うけど)それはそれでって感じでいいんじゃないでしょうか。今泉作品、なんだかんだすげえよなあと思う。

 

・21ブリッジ (原題:21 Bridges) - 3.6/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.4.19)

監督:ブライアン・カーク。脚本:アダム・マービス。2019年。日本公開2021年。予告を観てもメインビジュアルを観ても全くもってそそられず"アトロクのガチャでこれだけは当たって欲しくないな~"と思っていたら見事に課題作品に当たり、渋々鑑賞。結果は、まあ、ね。という感じで。"それ見た事か!!!!!"と言いたい。いや、別に悪いわけでは無かったのですが、特に面白い!と言える様なものでもなく、どこかで見たことあるような話が観たことあるような映像で99分続く感じだった。時間の短さと冒頭のカーアクションからのドンパチ、ラストのおっかけっこは良かったかなと思う。あと、メインビジュアルのデザイン(日本版)が絶望的。何でこんな事をしたと問い詰めたい(テネット風というかね)。マンハッタンを封鎖したり、すごくスケールの大きい話に見せかけて実は結構ちっさな話だった。監督のブライアン・カークはこれが長編2作目らしくこれを作って一体どうしたかったんだろうと疑問に思う。チャドウィック・ボーズマン遺作。

 

・新しき世界 (原題:신세계) - 3.9/5.0 (DVD/2021.4.18)

監督 脚本:パク・フンジョン。2013年。韓国ノワールもの名作の一つという事で勇み眼で鑑賞。潜入刑事がヤクザの兄弟分と本当に心を通わせてしまい、葛藤しながらもヤクザの会長へと結局なってしまう話。の心情部分をグラングランと過激に残酷描写と共に血生臭く描いた。非常に面白かった。とにかく容赦ない殺し描写や、殺してコンクリ詰めにして海に沈めるにしてもその前にセメントを飲ますっていうのはむちゃくちゃだなと思いながら観ていた(後で宇多丸の評論聞いたら同じ事を言っていた)。あとは、クライマックスのエレベーター内での刃物での挌闘もかなり見応えあって良かった。基本的にドンパチよりも刃物でやっていく感じも内容とあっており良かった。終盤のチョンチョンにスパイの身分がバレるのではないかの件はとても見応えがあった。画面的には本当に2013年なのかな?と思う様な若干の古臭さを感じましたが、まあ。全体的に非常にまとまっていて楽しめる快作だったのでは。チェ・ミンシクが出て来ると嬉しいですね。主演のイ・ジョンジェは東野幸治にしか見えなかった。

 

・BLUE/ブルー - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.18)

監督 脚本:吉田恵輔。2021年。正直、ボクシング映画ってかなり抵抗があってあまりノレる気がしないというか、そういう"男の闘い・友情"みたいなものに興奮するようなタイプでは無いし、興味が無いので割とこれまで名作と呼ばれるものもボクシング映画はハッキリと避けてきてワケですが、今回「ヒメアノール」「愛しのアイリーン」「犬猿」などの吉田監督最新作という事で劇場鑑賞。ボクシング映画を初めて見たのでどこをどう評価していいのかはうまく分からないのですが、キャラクター描写と練習描写、(ボクシングをする)理由描写などがきっちりと描かれ、且つ丁寧に順序だてて作られた作劇によってかなりスムーズに感情移入する事が出来た。完全に監督の腕だと思う。ずっと何だかいやぁな緊張感に包まれたままドラマもボクシング自体も進行していくので非常に求心力高い画面になっていた様に思う。主人公の最後の試合も思わず"頑張れ..!"と念じずにはいられず、何だかんだ落涙一歩手前までのめり込みながら観ていた。中盤すぎくらいまでは非常に良く"これは話の運び方次第では泣くかもなー"と思いながら観ていましたが、クライマックス、柄本時生演じる楢崎の試合で急に"漫画的な"と言われても仕方のない様なフラッシュバック演出を始めそれを持って力を得て試合を運んでいく描写で、自分の中でピタっと何かが止まってしまい、冷めてしまった。その直前まで徹底的にリアリスティックに作劇していたのに急にそれらを台無しにする様な表現が出て来て、困惑した。からのクライマックス、東出昌大演じる瓜田の行方、主人公の末路なども含め着地がぼんやりした内容で尻すぼみ的に着地。オチがはっきり無い、とか、試合に負けるばっかりとか、は本当にどっちでも良くてただただあの漫画的心理描写で萎えた心を救う様なラストでは無かった事が全体のこの点数になってしまった。

 

・ロボコップ - 4.0/5.0 (WOWOW/2021.4.17)

監督:ポール・ヴァーホーヴェン。脚本:エドワード・ニューマイヤー。1987年。ロボコップシリーズ一挙放送していたので録画して鑑賞。1はポール・ヴァーホーヴェン監督作品だったのでラッキーと思いながら鑑賞。相変わらずの"節"全開だった。ロボコップって話は全く知らなかったのですが主人公が早々に殺されて(しかもすげー殺され方)死体をロボットにしてしまったんだと知り、驚愕。けっこうめちゃくちゃな話で、荒唐無稽っぷりがまたこの作品のカルトエンタメ(無いジャンル)っぷりに拍車をかけていてとてもいいなと思った。お話し的にはほぼ無く、その殺された恨みを晴らすべくロボコップが悪人を一網打尽にしていく(悪ものより悪かった系)作品。最近でいえば「JUNKHEAD」の様なストップモーションシーンを思い出す様な大型ロボットと実写が同居する様な画面もこうしてみるとその混在っぷりが結構面白く、見えた。クライマックスはものすごい殺し方の連発で爽快感すらあった。ラストシーンまで画的な刺激満載でかなり楽しむことができた。最高。

 

・EXIT - 4.0/5.0 (WOWOW/2020.4.16)

監督 脚本:イ・サングン。2019年。エンタメ映画としてまずはしっかり面白かった。まったく前情報入れずに見たので冒頭数分で"パニック映画だ!"と気付いた時にはテンション上がった。簡単にいえば、"逆タワーリングインフェルノで、SASUKEで、魔女の宅急便"という感じ。SASUKE部分もまあリアリティとか無いのですが、それはちゃんと冒頭でクライマー出身の二人だという事をしっかりと描いたりで別に気にならなかったかなと。パニック映画的なお約束も散りばめられていて非常に楽しく見られた。アクションとしては全編を通して有り得ない感じではあるのですが、毎シーンハラハラさせられて普通に楽しかった。主人公二人を男女じゃなくて男同士のバディものにしてもアツかったのにと途中までは思いましたがラストの別れ際のシーンも色恋的にベタベタせずに結構カラッとしているので男女でも全然成立しているなあと思った。ただ、劇判は非常にいただけなく、いわゆるそういう場面でこれでもかとウェットな音楽がかなり鬱陶しかったなあと。スローになったりも。極め付けはエンディング曲?的なもののよくわからない子供向けのバンド曲でげんなり。今年の始めに見た「新幹線半島〜」でもそうだったので韓国エンタメ映画はそうなのかも知れないが、日本で普段文句言いまくっているものと近いものがこうして出てくるとやっぱり結構テンション下がる。でもジャンル映画としてはとても楽しめた。

 

・ウルフウォーカー (原題:Wolfwalkers) - 3.5/5.0 (AppleTV+/2021.4.16)

監督:トム・ムーア。ロス・スチュワート。脚本:ウィリアム・コリンズ。2020年。劇場で見逃しているのでAppleTVのみという事でなかなか食指が動かなかったのですが、ようやく鑑賞。中世アイルランドの町キルケニーにて、イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンと“ウルフウォーカー”のメーヴが心通わせながら自らの解放、父の解放などを描いたアニメーション。シスターフッド的に二人の成長を描くだけでも見どころはあるが、もっと心に寄り添う様な内容の作品だった。が、お話的には結構退屈に感じてしまい終始ノレず。なんならウトウトスヤスヤしてしまった。絵コンテの貼り付けの様なものだったり、セル画チックだったり、ディズニーとジブリと日本の漫画文化をバキバキにハイブリッドさせて且つ2020年っぽくもあり、画的にはすごくチャレンジングに感じた。音楽も秀逸だった。のだが結局、自分はアニメーションが苦手なんだなと改めて思わされた作品にも感じた。いや、アニメがというよりもアニメでよく表現される、動物や森、そういったものとの共存や理解、などに興味がないのかも知れない。110分ほどが拷問に感じた。人間が居ない画面がどうしても苦手なのかもしれない。苦手だ。

 

・ザ ハント (原題:The Hunt) - 3.6/5.0 (DVD/2021.4.15)

監督:クレイグ・ゾベル。脚本:デイモン・リンデロフ。2020年。わりと評判が良かったので楽しみにして鑑賞。新作DVDレンタル。結論から言うと、どうにも中途半端な作品だったなーという印象。ブラムハウス印の社会風刺っぷりももちろん見られましたが、登場人物の動機がどれも浅く、キーワードである"決めつけ"や"誤解"も何だか咀嚼不足な感じ。それに合わさるスプラッターなので、どうしてもそっちも中途半端に映ってしまった。ジャンル映画として好みなものではあるのでもう少し違った方向で突き抜けて欲しかった。序盤の豪快なスプラッターシーンでかなりコメディタッチな所も見られたので"おや?"と思いましたがそのまま行ってしまった感じ。まあ面白かったんですけどね。何だかめちゃくちゃ中途半端だった。

 

・クロユリ団地 - 2.3/5.0 (U-NEXT/2021.4.15)

監督:中田秀夫。脚本:加藤淳也。三宅隆太。2013年。YouTubeで宇多丸の評論を聴き、脚本が三宅隆太監督だという事で鑑賞。主演は前田敦子と成宮寛貴。とある団地に引っ越した事をきっかけに起こる、主人公の過去のトラウマと団地に住み着く霊との心理的な戦いを描いた。過去に囚われる主人公を描く作品は嫌いじゃないので、それをジャパニーズホラー味にしたらどういう調理がされるのだろうという部分でわりと興味深く見た。中盤の家族が悲惨な事件に巻き込まれ今がある(主人公のトラウマが明らかになる)という事が分かるシーンではアイデア自体に新しさは感じなかったがきちんとノル事が出来ていた。が...終盤、霊媒師が色々と活躍をしだして以降がどうしてもコントにしか見えず、急激に失速をしていってしまった印象。それまでが何とかバランスを取ってギリギリ評価できるラインで来ていたのでその崩壊が起こってしまうとあとは低得点まっしぐらという感じで一気に冷めてしまった。「来る」や「哭声」などもそうですが、どうしても霊媒シーンが出て来るともうその時点でダメになってしまう。まあお決まりなのでしょうが残念。ラスト付近、霊に連れ去られる成宮寛貴が引きずり込まれた床を一心不乱にかきむしるシーンは素晴らしかったと思うが、そのフックを使ってラストの展開がゾッとする様な話になっていれば良かったのになと感じた。なに鼻歌で終わってんだよ!!と。

 

・アンモナイトの目覚め (原題:Ammonite) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/20214.11)

監督 脚本:フランシス・リー。予告見た時点では"まあパスでいいかな"と思っていた1本だったが何かで割と高評価なのを目にして日曜日かつ招待券を持っていたのでミリオン座にて鑑賞。客は7人。予想通り「燃ゆる女の肖像」とかなり近い設定、かなり近い風景、かなり近いお話、でこれってどういう気持ちで作ってるの?と結構素直に疑問に思ってしまった。どちらの作品にも共通して言える事だが、劇中の恋仲になる2人の心が通い合う瞬間の描写の堀り下げが甘いと単純に思う。"いつそんなに好きになったの?"と。ただこの作品に関しては最後まで見ると"性欲求が溜まっている二人(旦那に性交渉を拒まれる、未婚の晩年女)が好きとかそんなんじゃなくてただヤリたかっただけだからこそラストもくっつかない持って行き方したのでは?"とか思えてくる。なのでそういう面で見れば辻褄は合っているのかも知れない。が、それは穿った見方なのでたぶん普通に掘り下げ不足。また、セックスシーンは何度か出てくるが肝心のシアーシャ・ローナンのヌードが圧倒的に少ない事に文句を言いたい。そういう場面を作るなら乳を放り出せと。とかそんな事思っていたらクライマックスでまさかの顔面騎乗映画に。乳首は出さないけどそれはいいんだ。「燃ゆる〜」という名作がある以上、どうにもぼんやりとした作品に感じてしまった。ぼんやりといえば、一貫して被写界深度が浅い画面作りはチャレンジングで良かった。

 

・イコライザー (原題:The Equalizer) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.10)

監督:アントワーン・フークァ。脚本:リチャード・ウェンク。2014年。昔の宇多丸映画評を聞いていて気になったこちらを鑑賞。まさしく「必殺仕事人」よろしく主人公であるデンゼル・ワシントンが次々に悪党を悪党よりも残忍に殺していく。まず言いたいのは、クロエ・グレース・モレッツの無駄使いはやめろ!と。こんなにも可愛く無く撮影できる事があるのかよと言いたいし、シーン少なすぎるだろと。ジャンルものと言ってしまえばそれまでだがあまりにもどうだって良すぎる話でどうにもこうにも真剣に見られなかった(こういうのが最高!と思う日もあるんですけどね)。クライマックスのホームセンターでの殺戮シーンは「ファイナルディスティネーション」シリーズの様な、殺し方見本市の様なそんな感じだった。爽快なんですけどね。ラストシーンのダイナーで次なる依頼者を見るけるオチもそれまで"なんでこの人はこんなにもお人好しに他人を助けるという大義名分で人を殺しまくるんだろう"と思っていた部分が一気に噴出してしまった余計にノレなかった。あと、画面が暗い。そして尺が長い。134分はさすがにいただけないでしょう。せめて100分にしてくれ。嫌いじゃなかったですけどね。

 

・パーム スプリングス (原題:Palm Springs) - 3.9/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.4.9)

監督:マックス・バーバコウ。脚本:アンディ・シアラ。2021年。filmarks案件の広告で目にして鑑賞。客は30人ほどか。タイムリープものという前情報だけで見に行ったが、予想を2段階ほど裏切られる展開で面白かった。監督のマックス・バーバコウはこれが長編デビュー作という事で前半から中盤にかけてのサービスシーン(ダンスしたりね、楽し気なやつ)などは正直センスとしてはかなりどうかなという感じでしたが、最終的に非常に満足のいく作劇で"ジャンル映画でしょ"と簡単には終わらせない気概を感じた。基本タイムリープしているのは、主人公と道連れになっている老人二人。そこにクリスティン・ミリオティ演じるヒロインが合流して物語が動き出すという仕組みが、物語のタイムリープ装置自体としてもそうだし、主人公の心情が動きだすきっかけ(老人と2人しかいなかった世界からの変化)にもなっているのが上手いなと感じた。正直、"じゃあこれまで他の人を巻き込もうと思わなかったわけ?"とイジワルにも思ってしまったがその辺りはご愛敬かなと。永遠の命(タイムリープ)の中にいる幸せと不幸せを描きつつも結局は人は1人では生きられないし、他者が欲しい、永遠の命は無い、などの実はシリアスなテーマもミックスされている事で作品の重さになっていたのが良かった。ヒロインも妹の結婚式の前日に新郎と寝るという史上最悪の手癖を心底後悔し、単純ながらも根の良さ、実は劣等感を抱えて生きるが、人に必要とされたい欲など、実に人間らしい良いキャラクター像になっていた。脚本も丁寧できちんと全部種明かししていくのも真面目だなあと思いながら観た。結構良かった。90分という尺もgood。

 

・パピチャ 未来へのランウェイ (原題:Papicha) - 4.0/5.0 (DVD/2021.4.7)

監督 脚本:ムニア・メドゥール。2020年。DVD新作レンタルにて鑑賞。前情報を全く入れていない状態だったので話の筋も知らずに見ましたが、とても意味のある時間だった。冒頭"実話に基づく話です"とテロップ。90年代アルジェリア、“暗黒の10年”と呼ばれる内戦下にて性差による抑圧に対する解放を訴えた女性たちを描いた。劇中何度も理不尽な目に遭う女性たちの各シーンはどれも本当にこんな事があったのか(しかもたった30年前に)と驚かざるを得なかったし、最終的には惨劇が起こり...という。ずっと信じられない画面が続くそれだけでも目を離させない力が本作あった。作劇も非常にスマートで見やすく主題も伝わる素晴らしいものだった。クライマックスの展開も安易に安心はさせず最後まで映画としても楽しむ事が出来たし、ラストシーンは新しい生命に向かい希望を問う主人公の姿にグッときた(劇中"きっと女の子よ"のセリフがあり、勝手に女の子に向けて言っていると考えられ更にグッとくる)。本国では上映禁止になったとの事でしたが、製作国の"知られたくない暗部を描く"事が映画を作り意味でもある(アトロクなどでの受け売りではありますが)と思うし、とても気概を感じる良い作品だった。主演のリナ・クードリはウエス・アンダーソンの新作「The French Dispatch」にてティモシー・シャラメの相手役にも抜擢されており、注目度の高さが伺える。そちらも楽しみだ。本編を見終わり、こんなにも抑圧弾圧された90年代があったのかと畏怖したが公式ホームページの解説によれば"世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数(世界153カ国)では、日本が121位、アルジェリアは132位"との事。日本はジェンダーの部分に関してかなり遅れていると思っていたが劇中の舞台となるアルジェリアと大差が無いランキングで二度畏怖した。

 

・ブルージャスミン (原題:Blue Jasmine) - 3.8/5.0 (WOWOW/2021.4.6)

監督 脚本:ウディ・アレン。2014年。「アニーホール」以来のウディ・アレン作品、今回はわりと近作を。時系列をバラバラに配置させながら主人公のこれまでと、周りそして主人公自身のこれからを対比させつつも切なく描いた。良く出来ていて単純に"面白いな~"と終始観てしまった。最後のどこにも決着させない(どうにも出来ずに投げだした=この人はこのままずっとこう生きていくのですよ)オチは、唐突に終わる漫才の"もうええわ、ありがとうございました~"の様な投げやり感を感じ、個人的にそこがいつももやっとするのでもう少しちゃんと決着付けて欲しいな(こういうオチと言われればそれまでですが)と思ってしまった。が、非常に見やすく簡単すぎずいい塩梅で、さすがという感じでしょうか。主演のケイト・ブランシェットの演技が素晴らしい。

 

・ブリグズビー ベア (原題:Brigsby Bear) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.5)

監督:デイヴ・マッカリー。脚本:ケビン・コステロ。カイル・ムーニー。2018年。面白いと聞いていたが配信にも近場のレンタルにもなくずっと見られていなかった作品。いつの間にかU-NEXT様で配信開始されており即視聴。"自分を誘拐した偽両親が製作し見せていたOV[ブリグズビー ベア]の続編を自らの手で製作し、過去の自分を乗り越え受け入れていく"というまさかのプロット。設定自体にびっくりするし、なかなか面白そうな話。だったのですが、割と映画的にワクワクするような作劇にはあまり感じられず、あくまでお話ありきと言う感じにどうしても受け取ってしまった。終盤の展開も何だかかなり都合が良く結果としてノレた!最高!という感じではなかった。面白くはあったし、ラストの上映後に消えていくブリグズビー ベアが"自立"を表している表現にもグッときましたが、いろいろ投げっぱなしの部分も多すぎて最終的には何だか普通だった。

 

・騙し絵の牙 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.4.1)

監督:吉田大八。脚本:楠野一郎。原作:塩田武士。2021年。客は40人ほど。みんな大好き「桐島~」の吉田大八監督最新作。予告観て、う~んどうかな~くらいの期待度だったので若干躊躇しましたが1日という事で劇場鑑賞。客入りは20時台で30人くらい。結論から言うと、全体的にとてもしっかりと作り込まれておりめちゃくちゃ見やすかったし分かり易い親切設計。とても文句をつける様な所も無いし面白かったんですが、特に何も残らないというか、自分にとっては"ただ映画を観た"だけの体験になってしまった感は拭えなかった。良かったんだけど。ラストの方が若干冗長で間延びしてしまった感は否めないが(110分台とは思えない!150分くらいあるかと思った)、まあ、ね。という感じ。LITEが担当した劇伴もけっこう攻めていて良かった。曲もいいし、ブレイクと映像を混ぜてくる手法はうまくはまった瞬間は良かった。難しいとは思うけど。あと、音量が単純にデカ過ぎてセリフが聞こえないとこもあった。

 

・キャリー (原題:Carrie) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.1)

監督:ブライアン・デ・パルマ。脚本:ローレンス・D・コーエン。原作:スティーヴン・キング。1976年。伊「サスペリア」と時を同じくしてアメリカにて作られたホラー古典作品「キャリー」、ブライアン・デ・パルマ作品念願の初鑑賞。熱狂的なキリシタンの母の元、箱庭的に育てられた主人公キャリーの学校という名の外世界での呪われた出来事を描いた。全編的にテンポが遅く、それが気になって正直あまり入ってこない部分が多かった。「サスペリア」は大好きなのだがこれは大きく違いがある様に感じる。ただ、表現・描写に関してはとても面白く、サイケデリックな追い詰められシーンなど面白かった。比べてばかりになるが「サスペリア」よりももっと大味でオルタナティブなノリを感じた。フリやタメも良く効いていて全体的に良く出来ていたが本当にテンポだけがノレ無かった。キャリーが可愛くないのもノレなかった。2013年クロエ・グレース・モレッツ版でリメイクされている様なのでそちらも観てみたい。絶対可愛いし。

■2021年3月に観た映画

42本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ザ ギフト (原題:The Gift) - 3.7/5.0 (DVD/2021.3.31)

監督 脚本:ジョエル・エドガートン。2016年。何かでお勧めされていたのかどうかすら思い出せないですが鑑賞。ホラー?スリラー?とにかくジャンルもの。100分ほど。夜中に観たが、ジャンルものは短いのでちょっと見たい時に良いなといつも思う。だから好き。というわけでタイトル通り、子供の頃に虐めていた奴がサイコサパス的に不吉な"ギフト"がお届けして反撃してくるというお話。最終的には、念願の妊娠・出産を果たした主人公夫婦の子が実は...?というオチ(+嫁には離婚を迫られる)で、実際、子供が誰の子なのかというのは物語上ハッキリとはされないので、事実はまあどちらでもいいんだろうなという感じなのですがなんとも言えない絶望感(教えてもらえない方がより嫌な感じが続くという意味)で復讐達成した感じが良かった。突然の大音量の驚かし演出なども少々あり、イラっとしますが許容範囲。クライマックス、"最後のギフト"としてベビーカーに入っていた3つのプレゼントのうちのCD-Rを再生すると盗聴された音声の後「地獄の黙示録」のワーグナーが大音量で流れるのも気が利いており良く印象に残っている。画も整っていて結構普通に楽しめた。

 

・映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ - 未採点 (Wowow/2021.3.31)

監督:まんきゅう。脚本:角田貴志。2019年。職場の人間から猛烈に勧められ(本人は見ていない様子(なんなんだそれは))鑑賞。すみっコが居心地の良い動物たちが絵本の中に入ってしまい、その中で色々な生き物に出会い、一緒に元の世界に戻ろうとするが...というお話。ページをめくる様な仕組みで(そういう描写があるわけではない)、各おとぎ話、昔ばなしの中に入っていくというプロットは良かったんじゃないでしょうか。登場する鬼とのエピソードも"一見怖い人に見えても実優しいんだよ"という見た目で決めつけちゃだめだよ話も入っており、そういう部分は子供が観る作品としては良いのではないか。"大人も感動する"らしいですが、、、自分の子供がこれを観て感動していたらその姿に感動をするかも知れないが、これを観て普通に感動する大人がいたとしたらイカレてるなと思う。観る必要はないなと素直に思った。

 

・シン エヴァンゲリオン劇場版 - 4.2/5.0 (109シネマ名古屋/IMAX/2021.3.30)

総監督 脚本:庵野秀明。監督:鶴巻和哉。中山勝一。前田真宏。2021年。いよいよエヴァンゲリオン完結編。25年の歴史に決着という事でまさにリアルタイムで追ってきた知人たちは興奮しておりました。自分自身、これまで<「序」「破」は劇場で見たくらいの程度の身>なので"なぜエヴァンゲリオンが人気なのか、こんなにも伝説的になったか"という部分にはあまり興味を持っていませんでしたが、TV版・旧劇場版・新劇場版・考察動画などなど短い期間でたどり、その価値がすごさが十分に分かり"いやエヴァンゲリオンってやっぱりそりゃこれはすごいよ"という気持ちには幸運なことに成れました。この2,3週間で一気見した立場なのでシリーズが終わる事への感慨はありませんが、準備は万端で臨みました。シリーズ最長の155分。結論から言うと、全てのエヴァンゲリオンに、自分自身の歴史に決着をつけにかかった庵野監督の熱量が込めに込められた一作だった様に感じた。まず、真っ先に思ったのは"画面が違う!"オープニングショットからどのシーンを見ても非常に映画的なショットのつるべ打ちでとにかくワクワクするし、かっこいい。構図が作り込まれているのは当然の事、各キャラクターたちの動きの自然さ(後で密着番組みたらモーションキャプチャーを使用しているそうです)、音楽、びっくりショット(リアル綾波顔面)、庵野監督自身の歴史をたどる様なメタ構造描写、シンジとレイ越しのTVシリーズを映写するシーンなど、挙げれば本当にキリがなく、とにかくハッキリとこれまでの新劇場版とは画の強さが違いました(旧作品を家のプロジェクターで見たせいかもですが)。全てが映画的なショットで、その時点で大満足なのですが、それに付け加えて庵野監督のラストへの持って行き方"そらコレしかないだろうよ"という感じではありますが、それでもこうして全てに決着をつけ、ラストの実写とアニメーションが混在する未来へと走り出した終劇には感動した。本当に素晴らしい作品だった。面白かった。

 

・JUNK HEAD - 3.5/5.0 (センチュリーシネマ/2021.3.29)

監督 脚本:堀貴秀。2021年。製作7年、エンドロール観ても分かる通りズラッと並ぶ「堀貴秀」の文字。数人でこの作品を作り上げたことに(時間はかかってますが)まずは感服。細部まで拘り抜いた美術で見事に"サイバーパンクmeetsストップモーションアニメ"という新画面を確立。SEも相まってオープニングの不穏さはバツグン、かなりワクワクしました。が、ここがピークになってしまったのも事実。。。「鉄男」的な[不穏xJUNKxパンク]みたいな雰囲気で行くのかと思いきや(そりゃだってポスタービジュアルにしても予告編にしてもそういう煽り方してるじゃんかよと言いたくなる)、意外にもファニーというかチャームというか、"JUNK HEAD"通称・ポン太くんのかわいいおふざけ&下ネタギャグなども頻発されて"ああ結構しっかりアニメのていで行くのね"と思わざるを得なくテンションも上がり切らず。また脚本というか、お話自体もとくに大したことない話過ぎて"ジャンルもの"として捉えるのならば冗長過ぎる中盤から終盤手前もどうかと思うし、そういった部分で評価を下げてしまった。101分がかなり長く感じた。80分台に収めて欲しかった。もっと過激な方向性でもよかったのでは...となったが、3体のあいつらとかも可愛かったし、全体的にキャラクターは良かったなあと思ったので今回は自分の思い込みも含めてちょっと期待したものとは逸れていった感じだった。致し方なし。

 

・ヱヴァンゲリオン新劇場版:Q (Evangelion:3.0 YOU CAN (NOT) REDO) - 3.5/5.0 (BS録画/2021.3.27)

監督:摩砂雪。鶴巻和哉。前田真宏。庵野秀明。脚本:庵野秀明。2012年

・ヱヴァンゲリオン新劇場版:破 (Evangelion:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE) - 3.7/5.0 (BS録画/2021.3.27)

監督:摩砂雪。鶴巻和哉。脚本:庵野秀明。2009年。

・ヱヴァンゲリオン新劇場版:序 (Evangelion:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE) - 3.6/5.0 (BS録画/2021.3.26)

監督:摩砂雪。鶴巻和哉。脚本:庵野秀明。2007年。

いよいよ新劇場版を鑑賞。公開当時「序」と「破」は映画館で見たのですが内容に関しては全く覚えていなかった。基本的な作りは「序」がテレビ版をわりと忠実になぞり、「破」で文字通り物語の型を崩しながらTV版のストーリーを大筋なぞって行く。「Q」では"サードインパクトから14年後の別世界"というTVシリーズとは懸け離れた内容となった。3本見た感想は"ずっとただのロボットアニメだな"という様な割とあっさりとしたものだった。結構これじゃない感があった様に思う。あまり印象的なシーンも思い出せないし。TV版をみて各エピソードの詳細を知っているのでなんと無く脳内で補完しながら物語を追えているが、これが純粋に劇場用オリジナル作品だったとすればやはり各キャラクター、エピソードに対する掘り下げが不十分に思う。26話(約13時間)の尺がなければあれだけの世界は描けないと思うと、TVのアニメやドラマの様に連続してある程度の尺がある作品も表現としては必要なのかなとも思った。映画としてはやはりそこがかなり弱い様に感じた。「破」で死んだかと思われたアスカが「Q」にもちゃんと出てきてくれて良かった。これでついに「シン」へ挑めるという事で楽しみだ。(やはりTV版が好きなようだ。) (Blu-rayBOXをポチった。)

 

・あのこは貴族 - 3.9/5.0 (中川コロナシネマワールド/2020.3.27)

監督 脚本:岨手由貴子。2021年。アトロク課題作品且つ非常に評判が良いので楽しみにして鑑賞。中川コロナ12番スクリーンには15人ほどの観客。一言で言えば、貴族階級女性の(精神的)自立の物語。門脇麦演じる主人公・ハナコがヒエラルキーの一番上で進んでいく物語かと思いきや、高良健吾演じる幸一郎が階級的にはトップ、(劇中に心を通わせる水原希子演じる美紀が一般市民)実はハナコと幸一郎の夫婦間にも階級の違いがあるという構造。全体的にかなり丁寧に作られており、冷静なトーンでの画作りが目立った。作劇的にも物語を全5章に分け、基本的には時系列が入ったり来たりする事はほぼ無く素直に進行していくので見易いのでは。クスッとできるシーンも多くおしとやかな作りだった。作品のテーマ的には最近多い"女性主人公が自我や地位、自分として、女性としての生き方を見つけていく(+シスターフッドもの)"で、私が最近見た中で言えば「Swallow/スワロウ」や「透明人間」などにも通ずるテーマの様にも感じた。アバンタイトルでハナコのお見合い写真を撮るシーン(そう説明されている訳では無いが)と同じ構図がラストショットにもなっているところが何ともニクかった。また、ラストショットで言えば、幸一郎を一番上、中間にハナコ、下段に友達と、物語全体を表す様なショットを作り出しているのも良かった。カルテットの演奏の流れる中、幸一郎のアップからのハナコのアップという締め括りは「燃ゆる女の肖像」のラストショットと全く同じ終わり方。とてもよく作りこまれていて、丁寧な作品だった。ただ個人的な見解ですが、貴族階級の人間がああいう結論にいたれる確率ってどれくらいなんだろう?と結末への納得度は少し低めだった。

 

・ノマドランド (原題:Nomadland) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.3.26)

監督 脚本:クロエ・ジャオ。2020年。日本公開2021年。「ミナリ」に続き、こちらも今年度のアカデミー賞の作品賞有力候補という事で鑑賞。アメリカ西部に位置するネバダ州を舞台にキャンピングカーで生活する1人の女性を描いた。ロードムービーとはまた少し違いますが、車中生活をしていく中で出会う人、ぶつかる葛藤などを描きながら彼女の心の揺れ動きを荘厳な大地の映像と共に美しく魅せていく一作。観ていて真っ先に思ったのは、脚本がとてもまとまっていて綺麗で親切だという事。セリフの数自体は少ないがしっかりと引くところは引く、語らせる部分は語らせると情報量は多くないものの内容がしっかりと伝わるメリハリある脚本は見事だった。物語性みたいなもので言えばもちろんこういうジャンルのものなので若干弱くは感じるので個人の趣向を考えると好き/普通は別れるかとは思いますが全編安心して観られる豊かな作品だった。こういうのがアカデミーでは受けるんだなと。

 

・新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に (The End of Evangelion) - 4.0/5.0 (DVD/2021.3.25)

総監督:庵野秀明(26話)。監督:鶴巻和哉(25話)。脚本:庵野秀明。1997年。

・新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生 (Neon Genesis Evangelion) - 3.8/5.0 (DVD/2021.3.24)

総監督脚本:庵野秀明。監督:摩砂雪。1997年。

「シンエヴァンゲリオン」を見るためにTVシリーズから一気見をし、いよいよたどり着いた一旦の最終回である旧劇場版。2夜連続で鑑賞。結局、見終わった後に話自体を理解できたのかと問われると甚だ疑問が残る。これ"エヴァの話は24話で終わってるよね?"という感じ(なのか?)。感想もどこから書いたらいいのかも分からないし、到底何か文章を書けるとも思えないのでここには話の内容がどうとかは書かないが感じた事をいくつか書いてみる。「シト新生」、とにかくアバンタイトルがかっこいい。久々にアバンで"お〜"と声が出た。マイベストアバンタイトルTOP10に入るだろう。バッハでの幕開けというのも庵野監督の厨二っぷりが出ていて最高。DEATH編に関しては、TV視聴者以外は完全に置いていくスタイルで驚いた。テンポもリズムも良く、にも関わらずそこに色濃い作家性まで載せてくるのだから嫌いなはずがないじゃないという感じ。とにかく"かっこいい"という言葉が似合う作品だった。REBIRTH編に関しては次作と同じだしそもそも途中で終わるので特に書く事は無し。ワクワクさせられる終わり方だったのは間違いない。当時劇場で見たかった。そして、完結の「Air/まごころを、君に」。こちらも終盤までは話も理解しながら見てこれたが、ラストの30分くらいは結局TV版の25,26話の様な話になっていった。実写を挟んだり、当時のファンレターとネットでの中傷、GINAX事務所への悪意ある落書きを入れたりと相当参ってたんだなと良くわかる。というか、最後まで見ても結局は当時の庵野監督の精神状態ではこれが精一杯という感じだろうか。物語の締めとしては結構破綻している気がする。ただやはり特に「Air/まごころを、君に」の方は圧倒的なオリジナリティと、内向的な表現・脚本、その全てが庵野ワールドで相当強烈に観客に訴えかけてくるエネルギーがあった。素晴らしかった。というか、こんな映画見た事がない。"なんなのか分からないが何だかとんでもなく凄いものを見た"という最上級の賛辞がぴったり合う、エヴァンゲリオン旧劇場版。相当に楽しめた。何故こんなにもエヴァンゲリオンが長く愛されているのか、ものすごい数の人生を変え、支えてきたんだろうなというのが身にしみて分かった。当然、次は「新劇場版・序/破/Q」を見ていくのだが当時リアルタイムで劇場で見たはずが全く覚えていないのでこれはこれでまた楽しみだ。

 

・ダーク スター (原題:DARK STAR) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.3.24)

監督 脚本:ジョン・カーペンター。1974年。監督初の長編デビュー作で久々に鑑賞。約50年前の一応これはSFコメディという事らしいのですが。。チープすぎて逆に面白くはあったが、話自体はまあという感じで。それよりも今作で大切なのはその後の作品に与えた影響という部分ではあるのでしょうが、私のリテラシーでは分かったり分からなかったり。「エイリアン」とかそういう宇宙遭遇ものとか、遭難もののきっかけにもなっているのは明らかに感じ取れました。ジョンカーペンター作品自体はまだまだあるので楽しみに観ていこうと思う。

 

・THE POOL ザ・プール - 2.1/5.0 (U-NEXT/2021.3.23)

監督 脚本:ピング・ランプラプレング。2018年。信頼する三宅隆太監督がアトロクにて"おすすめのワニワニパニック映画3選"というスーパーニッチな枠で挙げていたタイ映画。簡単に言えば、水浸6mのプールで浮いていたら水が抜かれてしまって、頭を打って意識の無い妊娠中の恋人と取り残され6m上に上がれずに困っている所に獰猛なワニが現れてさあどうするという作品(90分)。それだけの作品。主人公の行動全てが容赦なく失敗してドツボにハマっていく。パッとすぐ思いついたのは「ファイナルデスティネーション」シリーズの様に不運が重なって重なって、あ~ぁ的なノリで終始行くので嫌いじゃなかったのですが、ワンシチュエーションの宿命か途中でネタ切れ感が否めなく、ワニから逃げる(そもそもそんなに襲ってこない)→排水路に隠れる→外に出る→またワニに...というループに入り、わりと早めに飽きる。終盤ようやくクライマックスにたどり着くのですが、その脱出方法がなんとリードに繋がれた飼い犬がプールにダイブ→首吊りプラーン→それを手繰って這い上がる→無事生還!という地獄の様なオチで、別に犬とかわりと好きじゃない方ですが、さすがにこれは可哀想だなと。もっと無駄なシーンをそぎ落として60分台くらいで終わってくれたら話同じでも割と好きだったのになあと思いました。さすがに「ファイナル~」の様にいろんな展開を持ってこられないのはキツかったかなと。

 

・ミナリ (原題:미나리) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.3.23)

監督 脚本:リー・アイザック・チョン。2020年。日本公開2021年。"アカデミー最有力"と話題のこちら。下記してますが「フェアウェル」「夏時間」とも通ずる"家族もの"。こちらも祖母がキーパーソンで登場。韓国から移民の農業を始めたい夫と反対する妻。とその子供。母方の祖母とは久しぶりの再会をしてそのまま同居。慣れない生活に戸惑う子供。認知症になる祖母。というこれだけのキーワードが並べられていますがこれだけでもう話のほとんどが完結してしまう、それだけの映画。どうしてこんなにも前評判が高いのかあまり良く分からなかった。下と同様にこの作品も"家族"がドラマ風に描かれているが特にこれと言って何か心が動く様なものは描かれていない。弟デヴィッド役のアラン・キムくんがただただ可愛かった。それだけで結構加点。

 

・夏時間 (原題:남매의 여름밤/洋題:Moving On) - 3.5/5.0 (シネマスコーレ/2021.3.22)

監督 脚本:ユン・ダンビ。2019年。日本公開2021年。各所で(何なら宣伝ポスターで)「はちどり」と並べられて語られていて期待して鑑賞。つまんなくはなかったし普通に観られたけど、特にこれと言って得るものない様な作品だった。画は綺麗だし、良かったようには思うけれど心に響く様なものではなかった。(上記している「ミナリ」もそうだけど)家族ものって多いですけど、実はそれを誰かの心に何か残る作品にするのって相当大変なんじゃないかなと感じた。昨年の「フェアウェル」から祖母や祖父との関係を描くアジア映画が多いような気もしますが、正直今作に関しては祖父の死を物語のクライマックスに持ってきてますが、それがあまりうまく機能していない様にも感じた。主人公の女の子の恋愛(に伴う感情)や、父の仕事のこと、家族のこと、様々な事象を絡ませてそのテーマと昇華していく作りなのですが、いまいち上手く絡まっていない様に観えた。主人公女の子の思春期の感情のウネリともっとリンクさせられたら良かったのになと。3月下旬で別にあたたかくもないタイミングでの鑑賞でしたが「アルプススタンドの~」でも思ったけれど、この作品も夏休みやお盆休み、なんかそういったタイミングでぼけ~っと見られたらすごく良かったのになと思う。

 

・インビジブル スパイ (原題:使徒行者2:諜影行動) - 3.1/5.0 (DVD/2021.3.21)

監督:ジャズ・ブーン。脚本:キャサリン・クワン。2019年。日本公開2021年。「未体験ゾーンの映画たち2021」で知り鑑賞。潜入捜査官の中にスパイがいるぞ映画。ミステリー的だったり、サスペンス的だったり、バディものだったり、なんだか見所盛り盛り状態。画もアクションもドンパチも派手で画面を引っ張る推進力みたいなものは十分にあるのですが...いかんせんお話しが平板すぎて。どのシーンにも、工夫がされており”おーすごい!やれやれー!“とテンション上がるような仕掛けもあるし、結構しっかり作られているのですがどうにも何処かで見たことあるような展開、ストーリーの連発で正直途中からこの話自体にかなりどうでも良くなってしまった。惹きつけられる部分が驚くほどに無い。きっと作った人はすごく器用でやる気もあって一生懸命に作ったんでしょうけど、一言はっきりと言えるの"センスが無いのでは...?"という。この作品に関してはそれに終始してしまった。ただ、ラストまさかの闘牛オチ()であんな殺され方、そして誰もいなくなった展開が待っているとは思わずに終わり方は意外にも良かったし"こんな映画観たことない"とは思ったのである意味良い映画なのかもしれませんが。

 

・トムとジェリー (原題:Tom and Jerry) - 3.2/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.3.21)

監督:ティム・ストーリー。2021年。まあまず観ない一作ではあるのですが、アトロクの課題作品になったので鑑賞。見始めて真っ先に思ったのは意外と実写とアニメーションの食い合わせが良く、無理なくスピード感のある良い画面になっているという事。結構よくてびっくりした。そして、主演のクロエ・グレース・モレッツのあまりうまく無い且つこってりな演技に胃もたれ。お顔はかわいいのですけどね。。。作品としての「トムとジェリー」自体、初めて鑑賞でした。もっとスラップスティック全開な可愛く面白いおっかけっこコメディでヘラヘラ観てられるのかなと思っていたのですが、意外にもトムとジェリーの2人が追いかけっこした結果周りに甚大すぎる迷惑をかけまくるという展開でこちらにも驚き。まあ百歩譲って迷惑かける事は作品内のあくまでノリとして別にいいのですが、結局その後のトムとジェリーになんにもお咎めなしというのがどうにも腑に落ちなかった。同時に今作のクライマックスの事態を引き起こすきっかけを作った元ホテル従業員の男、彼の行動には“明らかな悪意”があるにも関わらずトムとジェリー同様に何だかなあなあに無かった事みたいになって元の鞘に収まってるしで、なにこれ?状態。別に“作品のリアリティガー”とかそんな程度の事なら別にいいのですが、それでも子供向けに作っている作品で、この善悪の分別の甘さというか"冗談でもやっちゃダメな事"の最低限の線引き、"悪い事をしたら何かしらで自分に帰ってくるよ"的なものも描いていないのはメインの客層に対してあまりにも不誠実じゃないのかなと感じた。とは言うものの、時間の都合で字幕版しか見られてないからかも知れないですが、シアター内は結構大人ばっかりでビックリだったし、観終わった後に大学生くらいの男子が物販をしっかりと買っていたのにもビックリ。エンドロール後のおまけのシーンも完全なる被害者の新郎の彼にも"結婚式の請求を二重にする"という全く面白くもなんともないおまけギャグが付き、あきれ果てた。これはひどい。画の良さとクロエの可愛さが点数の全て。

 

・ブラック クランズマン (原題:BlacKkKlansman) - 3.9/5.0 (Wowow/2021.3.20)

監督 脚本:スパイク・リー。2018年。軽く、観たいな~くらいな感じでいたらWowowで放送されていたので視聴。呪いの様に根強く残り続ける人種差別を徹底的に情念的に描き続けているというイメージだったスパイク・リー作品は初鑑賞。まさに今作もその通りの内容。アバンタイトルから軽快な雰囲気で終始進んでいきますが、ラストにはズドンと重たい余韻で終わる。劇映画の最後にノンフィクションの映像を混ぜるのが興ざめという指摘もある様ですが、今作をきちんと見てくればスパイク・リーが黒白とかそういう事ではなくもっと"人間として"という部分を描いていることは明らかだし、実際に今こうして未だに起こっている差別による悲惨な出来事を、画面の中でしっかりと警鐘していく行為は素直に受け止められるように私は感じた(確かに"映画的か"と問われれば微妙かもしれないが)。ラスト、主人公2人が銃を構えながら廊下を移動していくシークエンス(動く歩道に乗っている様な)がそこだけこれまでとは違うタッチの画面になり驚いたが個人的には非常に好きな質感だったのでこれで1本通してみたいなと思った。あとで調べたらそのシーンはどうやら"スパイク・リーと言えば"という様なシーンだったらしいのでいつか観るであろう他の作品も楽しみになった。

 

・14歳の栞 - 3.5/5.0 (センチュリーシネマ/2021.3.19)

監督:竹林亮。2021年。予告編を見て気になっていた作品。とある中学校、2年生の3学期の期間クラス35人を対象に密着したドキュメンタリー作品。各人約3~5分ほどの映像で生徒をナンバリングしてリレーしていく。35人を並べる順番によって全然違う内容にもなるだろうし映画作劇として試行錯誤しながら魅せていく試みには非常に熱意を感じた。これ、ドキュメントとしてすべての生徒の親が許諾したこともそうだし、映像素材を並べてちゃんと観られるものにした努力もすごいし、120分の中に語られる様なドラマは全く無いもののそれでも観客が何かをじんわりと感じて、あの頃の自分、あの頃の友達、あの頃の親、あの頃の先生、そういった自分と周りの事を思い出させる装置としてそこに佇んでいるのは凄いなと感じる。映画として面白かったかと問われれば微妙だが作品としてはとても面白かった。自分も中学生のころの自分を思い出した。苦く濃い日々だった様に感じるし、もう二度と戻りたくないなと深く思った。

 

・希望のかなた (原題:Toivon tuolla puolen) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.3.18)

監督 脚本:アキ・カウリスマキ。2017年。正直あまりよく分からなかった。シネフィル()的には人気の監督なのでしょうが、今作は結局どこを(映画的に)楽しめば良かったのだろうという感想になってしまった。きっちりと整理された画作りで非常に丁寧に作られているのは見ただけで分かったし、話自体も自分からは距離が分からないくらいの距離で起きている難民問題が実際には起こっているという現実を知る事が出来たので良かったが、それだけというか。まあ、それだけを見せたかったんだろうなという感じだとは思うのですが、かなりさっぱりめな作品で印象が薄かった。ちょっと自分自身のリテラシーの低さがこうしていると思うので、またいつか観てみたい。

 

・女ざかり - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.3.17)
監督:大林宣彦。脚本:野上龍雄・渡辺善則・大林宣彦。1994年。またしても大林作品を消化してしまった。U-NEXTの配信期限が迫っていたためだ。案外、視聴可能期限を過ぎてもまた新しい期限で復活している事もあったりなかったりするので一概に慌てる必要も無い様な気もしますが観れなくなると困るので急いで鑑賞。主演:吉永小百合、そしてメインビジュアルからして"あーこれはつまんなさそうだな"という(何であんなビジュアルにしたんだ)先入観が先行していたが、蓋を開けてみればこれまたチャレンジングな大林作品で素晴らしかった。本当にこの人の作家性を好める感覚があって良かったなと感じる。お話は、社内で紅一点の中年女性新聞ライターの奮闘とジェンダー、そしてその人に惚れる初老おっさんの悲哀と性愛を描いたドラマ作品(どんなだよ)なのですが、まずハッキリと目につくのはアクション映画でもないのにその尋常じゃないほどのカット数。見ていて本当にクラクラする画面に心底痺れる(大林作品には毎回違う形でクラクラさせられるのだ)。セリフも被ってきたり、そもそも次の場面になっていてセリフがついてくる様な感じになっていたり、到底普通ではない画面が118分間終始続く。作劇的にも最初こそよそ行きっぽいが、徐々にいつもの大林テイストになっていき、誰がどうあがいても好転しなかった事態がクライマックスに設定されている"若かりし頃の少女(一体何歳なのかも分からないビジュアルだったけど)を愛でる事で一転していく"やり方がいかにも力技で監督らしくて思わず笑ってしまった。万人に良いと言えるわけでは決してないが大林監督の作家性を好む人ならば是非とも見てもらいたい作品だった。中盤に出てくる特殊メイク片岡鶴太郎含め、オールスターキャストもなんとも素晴らしかった。三國連太郎の切ない好演っぷりが光る。

 

・秋刀魚の味 - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.3.16)
監督:小津安二郎。脚本:小津安二郎・野田高梧。1962年。「東京家族」に続きこちらも有名作かつ小津監督の遺作。カラー作品。遺作とかはもうちょっと理解が深まってから見たかったのですが、これはきっとどこから見ても他のやつも楽しめるから大丈夫だろうと鑑賞。今まで私が観てきた小津作品の中では一番軽いというか、軽快というか、肩ひじ張らずに観られる(いわゆる"娯楽作"というやつですか)様な気がした。印象的だったのは、カラー作品にも関わらずこれまでのモノクロ小津作品の色調感覚のまま表現されているなという部分。これにより、切ないシーンはより切なく怖いほどに表現されていた。セリフを無くし、顔や人物を含めた家の中のショットでわびしさを描いていく画面が特に味わい深かった。"人はひとり"というテーマは個人的にも人生のテーマとも考えている事柄でもあるので、こうしてきちんと描いていることにすごく信頼感がある。台所で1人になる父のラストショットは本当に素晴らしかった。
今作の主題を通年して小津監督が描いている様な気もするので今後も他の作品がまた非常に楽しみになった一作だった。

 

・愛がなんだ - 3.8/5.0 (DVD/2021.3.15)

監督:今泉力哉。脚本:澤井香織。原作:角田光代。2019年。「あの頃。」が(個人的)今年ワーストに食い込むであろう今泉監督の代表作?を鑑賞。かなり印象が悪いまま観たので、どうかなと思いましたが意外にも作劇的に良かった。岸井ゆきの演じる主人公のテルコが魅力的に可愛く映っており(顔の話ではない)、今泉監督が本当に得意としているのはこういう描き方なのかなとも感じた。何度か挟まれる長回しシーンでもきっちりと印象に残るセリフやシーンを盛り込む事で話にメリハリもついていたし、単純に"思い出せるシーン"になっているのが非常に上手かったなと感じた。特に、テルコと中原の2人がこたつで"ストーカー同名の反省会"(パンチライン!)をする場面は名シーンと言ってもいいのではないでしょうか。中盤にも、田中と別れたテルコが燃える嫉妬心をフリースタイルラップ風に1人で吐露しながら歩くシーン(しかも段々と声が大きくなっていくのがいい)もかなり印象的だった。そして、終盤のコンビニ前でまたしてもテルコと中原のシーン。長い話からの最終的には決裂→バカ!(ここの表情最高でした)→つば吐きの流れが非常にリアルでもありお話的でもあり良かった。全体的に上手く登場人物の心情を捉える描写がされており本当に「あの頃。」と同じ人なの?と思うくらいだった。が、ここからは微妙なポイント。まずは、前半はそんなこと無かったのに後半からなぜか突然群像劇映画によくある"名前→エピソード→名前→エピソード"のスタイルになる。これが本当に謎だった。いるか?効果的でもないし、唐突だし、何がしたいのかが最後までよく分からなかった。そしてもう1点、昔の自分が現れるシーンが劇中に何度か挟まれますが、作品の全体的なタッチと乖離し過ぎており、こちらも取って付けた感がすごくて何がしたいのかどうしたいのかがよく分からなかった。ノイズをわざわざ入れる理由が分からない。こういう事で全体の尺が伸びており123分は長すぎでしょ。と思う。せめて100分くらいの作品だろと思う。ですが全体的には良く出来ているなと思ったことはまた書いておきます。今泉監督が普段からどういう作品を撮っているのかはよく知りませんが原作ものはよくやっているんでしょうか?こういう消化の仕方が出来るなら今後も観てみたいなと思う。

 

・ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.3.15)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。1980年。ペドロ・アルモドバル監督初作品。全体の尺は90分台と短く、冒頭の大麻栽培が見つかり警官にレイプされる→犯人である警官の嫁(クソマゾ変態女)と友達になる→パンクロッカーの女と仲良くなる、という基本設定シーンが順番に提示されそれ以降は特に内容が無くラストまで進んでいく。最後の最後にルシのお見舞いに行くが、3人は仲良くなったつもりでも本当に自分の事はさらけ出してないし、ルシに"自分が大切なのは暴力旦那だ"と告白され、残された2人は新しい生活へと踏み出していく。というお話。それ以上でも以下でもなく、特に映画的な感想も無い。独特のオープニング映像やねじれた設定、映画内映画(今作の場合はCM映像だったけど)はペドロ・アルモドバル初作から全開だという事がよくわかった。中盤?終盤?に、ペピが新しい夢を語る時に"ルシとボンが結婚し、私は警察官の子供を産んであなたたちにあげるわ"というさらに狂ったお話が一瞬だけ顔を覗かせるがむしろこっちの話が見たいし、ペドロ・アルモドバル監督はその後、こういうのをそのまま映画にしていくんだなあと感じた。

 

・ジャスト6.5 闘いの証 (原題:Metri Shesh Va Nim) - 3.9/5.0 (センチュリーシネマ/2021.3.15)

監督 脚本:サイード・ルスタイ。2019年。日本公開2021年。予告編を劇場で見て絶対観る予定をしていた一昨。アトロクの課題映画にもなっていましたが、中部エリアではようやく公開されたので勇んで見に行きました。センチュリーシネマには平日昼に30人くらい入っていた。イラン映画は初めてでした。アバンタイトルの時点でもうこの映画がただ事にはならないなという予感がビンビンくる痺れるオープニング。アガる。まさかトラック生き埋めとは。見始めて、麻薬捜査官と売人のおっかけバトル映画かなとも思っていましたが全然そんな事はなく、実際に麻薬使用問題が頻発しているイランで起きている実情にも沿った内容な様で、序盤終わりくらいに売人のトップが捕まってからの世界を描いていくやり方がなかなかに良かった。2時間20分あるので(特に前半が)若干冗長には感じましたが、中盤から後半にかけて緊張感ある疑いあい、罪人とは言え家族がいる事や、それぞれの愛情の行き場だったりと、人間ドラマを軸に展開していき、一気に集中して見られた。とても無骨で良かった。個人的は"そりゃ犯罪者なんだから裁かれるべきだろ"とは思いますが、犯罪者にも人権はあるし(ダンサーインザダーク以来の絞首刑シーンなどなど)、家族もいるし、動機も実はああで...とかいろいろ複雑な心境になった。単にクライムサスペンス!みたいな感じではない面白い作品だった。監督2作目らしいので今後もチェックしていきたい。

 

・弥生、三月-君を愛した30年- 3.8/5.0 (WOWOW/2021.3.14)

監督 脚本:遊川和彦。2020年。アトロクでおすすめされており、3月の1日ずつを毎回違う年で描いていくというプロットが非常に興味深くずっと見たかった作品。レンタルが新作だったので待っていたのですが、3月11日が近かった為かWOWOWで放送されていて鑑賞。もうのっけから波留演じる主人公の女がめちゃくちゃ嫌な奴に見えてかなりキツイな〜と萎えながらのスタートだったのですが(まあそのイメージは最後まであまり変わりませんが)、作劇の面白さからか普通に最後まで楽しく見られた。ネットの感想を見ていると"こんな程度の事で震災をネタにしたのが腹立つ"という書き込みを見つけ、まあ確かにそうなんだよねとも思ったが、基本的にはすごく良くできた話だった様に思う。ただ脚本がひどいのか演者がひどいのか(はっきり言って両方です!!)、"これはちょっと..."と思う部分も定期的に出てきて、常に画面との距離感がある感じで見てしまった。波留も成田リョウも結構ひどい演技するなーと思った。苦手な俳優になってしまった。とか結構言いたい事はあるのですが、お話自体が面白く、ラストのテープに吹き込まれたメッセージのシーンは不覚にもウルっと来てしまった。"死んだ人が生きられるはずだった時間"設定に弱い。"ほ〜まあまあ良かったなあ"と油断していたらエンドロールで『上を向いて歩こう』を歌い出す二人でまたしてもの"あ〜あ"感。なんでそんな事するんだろう(劇中のこの曲が何度も出てくる感じも非常に嫌だったし、これ普通にダサくない?監督はジジイなの?)と思っていたらエンドロール後のラストエピソードで、3月31日が主人公2人の生まれたシーンと共に登場して思わず拍手。不意を突かれ、めちゃくちゃ良かった。最後の最後でオールオッケー出た。それで3.6→3.8にしました。3.9でもいいくらい。あ、でも高校生役の波留はさすがに無理があった。キツイ。

 

・クワイエット プレイス - 2.2/5.0 (Blu-ray/2021.3.14)

監督:ジョン・クラシンスキー。脚本:。2018年。「ドントブリーズ」と何だか似た様な感じ且つ二番煎じ感を強烈に感じますが、鑑賞。これはひどい。まったく良いところがなかった。まず設定自体はいいとしても、もっと無音の怖さを見せていくのかと思ったら微妙で大層な劇伴がまあまあ鳴っていて戸惑う。そして登場人物のアホさ。父親、"子供を守って"と言われているのに当然そうしないのは何故?中盤に子供を産みますが、普通に考えたらなんでこんな緊急事態のなか子供を作るのか疑問に感じずにはいられなかった。冒頭で死んだ子供へのという部分を考慮してもこんな中で産むとどうなるか位わからないのか?と思ったし、都合のいいタイミングで赤ん坊も泣かないし。そして何よりも襲いかかってくるものの正体。こういうモンスター系にされると本当に萎える。ビジュアルも全然良く無いし。音に反応する定義というかラインもかなり曖昧だし、とか、コーンに埋もれてだからなんだよと思ったし、もう本当に言いたい事だらけで久しぶりにこんなにひどい作品を見たなという感じ。とにかくひどかった。唯一良かったのは階段を降りる女が釘を踏んで痛そうだったところくらい(ていうかこれもその前のシーンで袋が引っかかった時に何で引っかかったのか普通は確認するだろと思ったけど)。まあとにかく全シーンがひどい。これはひどい。

 

・ビバリウム (原題:Vivarium) - 3.6/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.3.14)

監督:ロルカン・フィネガン。脚本:ギャレット・シャンリー。2021年。とあるカップルが新居を探すために建売住宅の内見に行くが...というお話。劇場で見た予告は、始まった瞬間そのプロットからして"面白そう!見たい!"と思ったのですが予告編を見進めると画の安っぽさが若干不安になり、予告終わる頃には"これはちょっとどうかな?"という感じなったのですが、尺の短いジャンル映画なのでまあ何か奇跡的にオモシロ映画になってるかなと思い鑑賞。感想はと言うと、予告を見た予感通り"面白くはあるがまあ別に"と言った感じ(だいたいこういうのは当たりますね)。内見の家から出られなくなったカップルの元に子供が届けられ、ものすごい速さで成長していく様や、ソイツが不穏にも落ち着きがなく"人間"としてのコミュニケーションが難しいぞと決定的に観客に気づかせるシーンは非常に印象的で、久しぶりに映画を見てて"うわ...怖いなこれ..."とかなり嫌ァな感じでその先の展開をとても期待しましたがそこからの中盤が、女が子供に怯えて、男が穴を掘っての繰り返しが結構長い時間続き正直かなりダレたのが残念。結構冗長に感じた。終盤、男が掘り進めた先に埋まっていたものは...からの遂に子供を殺そうとした女が子供を追いかけて入った地面の先は...とかなり面白い展開が続き"これトンデモないオチがついたら傑作じゃないか?"と再度期待をしたが凡庸なオチでTHE END。うーん、なんだか終始ワクワク感はあったのですが、肝心のオチと謎が謎のままな事で普通に微妙な作品になってしまったのが残念だった。やっぱりせめて女だけでも脱出して終わりが良かった様な気もするがどうでなんでしょうか。

 

・東京物語 - 4.1/5.0 (U-NEXT/2021.3.12)

監督:小津安二郎。脚本:小津安二郎。野田高梧。1953年。尾道に住む夫婦がもう独り立ちしている4人の子供の元へ訪ねて行くが...というお話。まず見終わった思ったのは"ぞっとするほど素晴らしいショット"が多数あったなという事だった。お話自体ももちろん考えさせられたし、これはきっと今の年齢で見るのと、10年後、10年前、20年前、独身、結婚、親になり、孫ができ、と自身の経験とともにまた感想も変わってくる作品なんだろうなあと感じた。"そりゃ70年経っても色あせずに鎮座するよ"と。また、2021年だろうが1953年だろうが、人間は結局同じ様な事で悩み、妬み、怒り、喜ぶんだなとも感じた。自らの子供の元をたらい回しにされたり、熱海の夜が寝付けなかったり、久しぶりの友人と爺になって飲んだらどうなったかとか、全然関係無い他人が結局一番親切だったり(それはそれでそういう距離感なのかもしれないが)とか、どのエピソードもじんわりとしかし確実に胸を打つ。そこにどの瞬間を切り取っても硬派な画が迎え撃つのだから最強だろう。ここで私がこんな事を書いていても小津作品なんて山ほど語られているだろうからそっちを読んだ方が楽しいだろうな、と思う。パーソナルな感想で言えば、親との同居を選択した自分にとっては登場人物たちとはまた少し違った状況だなと思うが、絶対に定期的に見返したい。(大好物の)家族不和ものとは少し違うけれども家族のリアルな様を冷静にしかし重厚に描いていた。そして、このブログでもそうだがこまめに観たものを記録しているSNS・Filmarksの鑑賞数が500本目を記録。節目の一本はどうしようかな、大林作品かな、とか思っていましたがこれまであまりチャレンジしてこなかった(自分の映画リテラシー的に不安だったため)小津安二郎監督作品をチョイス。しかも「東京物語」だ。結論から言えば大林作品じゃなくこう自分的にも一歩進んだ形になった気もするので非常に良い選択だったなと思う。やっぱり映画は素晴らしい。

 

・DAU. ナターシャ (原題:DAU. Natasha) - 3.0/5.0 (伏見ミリオン座/2021.3.12)

監督:イリヤ・フルジャノフスキー。エカテリーナ・エルテリ。脚本:イリヤ・フルジャノフスキー。2020年。『“ソ連全体主義”の社会を前代未聞のスケールで完全再現し、独裁政権による圧政の実態と、その圧倒的な力に翻弄されながらも逞しく生きる人々を描いた作品。オーディション人数約40万人、衣装4万着、1万2000平方メートルのセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月、そして莫大な費用と15年の歳月をかけ、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市を徹底的に再現。』との事(映画.com)。予告を劇場で見て、観に行く事は決めていたのですが、アトロク課題作品にもなりより勇み足で鑑賞。壮大な"DAU.プロジェクト"というもののあくまで第一弾という事らしく(現在は[DAU.com]というサイトにて7弾まで公開されている)、上記されている様な莫大な人間やセットなどは見られる事は無い。この大きな大きなプロジェクトの発端としてこの作品が公開されたのであろう。とはいうものの、そう言った条件や計画はこの作品をただ見ている状態からすると関係がなく、そういった仕掛けを知っていないと楽しめないものになってしまうのであれば作品単体としての価値はいかがなものだろうか、とも思う。ほぼAVの様な中年男女の非常に濃厚なセックスシーンや、地獄先輩に捕まってしまいゲロまみれになるまで酒を飲まされる実世界で既視感たっぷりな限界職場飲み会シーン(それも結局いつも床掃除で殴り合いの喧嘩になる)、はだしのゲンも逃げ出すコニャックぶち込みシーンなどは否が応でもとても印象的。続き(第二弾は6時間?)が見たいかと聞かれると無言になってしまう。

 

・SADA 戯作 阿部定の生涯 - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.3.11)

監督:大林宣彦。脚本:西澤裕子。1998年。大林作品はしっかりゆっくりと観たいので温めていた一作ですが、配信期限が近づいており鑑賞。大林作品に関しては全くもってリアルタイムで追いかける事が出来なかったので、限られた作品を大事に観てる感がどうしても出てしまい"ああ、また1つ(未観の作品が)減ってしまった、あと〇つか"の様に寂しくなってしまいます。作品自体は非常に評価が低く期待はしていなかったのですが、始まって早々にモノクロとカラーの混在、倍速と等倍、スローの混在、役者が扉を蹴ったら傾く画角など、冒頭からクラクラしてしまう大林節が全開で、久しぶりに観たけれど"これこれ!!"とテンションが上がった。話は、昭和11年(1936年)に起こる阿部定事件を元に映像化したもの。「愛のコリーダ」など映像化はされているがこちらは大林流の阿部定の生涯を描いた。128分と微妙に長く、それがこの作品をダレさせている原因かなとも思う。阿部定の人生を描くにはこれくらい膨らんでしまうのかなとも思いますが、どうなんでしょうか。

 

・小さいおうち - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.3.11)

監督:山田洋次。脚本:山田洋次。平松恵美子。原作:中島京子。音楽:久石譲。2014年。 山田洋次作品初鑑賞。所謂「寅さん」とか「学校」とかのイメージしかなく、自分には縁が無いだろうなと思っていたのですが、映画の本数を観るにつれてこれは触れておかねばならない作家の1人だという認識になり評判の良いこの作品を。結論から言うと個人的には大林宣彦監督の後期の作品、特に「花筐HANAGATAMI」を連想させる内容に感じた。鑑賞後に調べてみると奇しくも製作年は同年。近しい年齢の人間同士(大林監督の方が7つ下)、2014年日本という時代から感じ取るものに近いしいモノがあったのかなと思わされる。2人は交遊もあり、お互いの作品はチェックしている事が想像される。大林監督が「この花の花~」を作ったのが2012年なので刺激は確実にあったのだろうなと思う。今作は上記した「花筐~」を対をなす作品に感じた。山田監督が陽なら大林監督が陰だ。山田監督がクリーンでポピュラリティのある作家だとすれば大林監督がロマンティックでより内相的な作家なのは間違いない。話が逸れたが、こんな事を思いながらこの「小さいおうち」を観た。普通に楽しめた。むしろとても良かった。説明セリフが多かったり、ラストの妻夫木カップルのエピソードがかなりの蛇足に感じたりと正直ツッコミたくなる箇所はわりとあった方だけれど、それも全て許容範囲と思えるほどの全体の出来だった。画も良いし、何もりも黒木華や松たか子のあれだけ良い演技を引き出せるのはさすがの手腕かと思う。話のオチ自体も練られていて、それを映画的に映像的に、いくつかにも解釈し得る表現になっており良かった。

 

・滝を見にいく - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.3.11)

監督 脚本:沖田修一。2014年。「横道世之介」の沖田監督作。メインビジュアルや"7人のおばちゃんが遭難する話"というメインテーマだけでかなりシュールそうな予感を期待しつつ鑑賞。終始"何を見せられているんだこれは"状態ではありましたが結構楽しめた。不人気滝見学バスツアーに乗り合わせた7人のおばちゃんがポンコツガイドのせいで遭難し一夜を共に乗り越え救出される、だけ。それだけの話。おばちゃんあるある的な風景の連続の会話劇で、そこに時折挟まれ続けるそれぞれのプチドラマ。7人の実在感をジワジワとうまくあぶりだしていくのは監督の手腕か。「横道世之介」でもそうでしたが沖田監督は脚本がうまいなあという印象。すごくシュールなテーマなのにまったく飽きさせることなく完走させるのはすごい。おばちゃん達の遭難キャンプの各シーンにはきちんと画的にも気が利いていて、どれもしっかりとその世界観に耐えうる画面だった。中でも夜に7人が木の葉に埋まり並んで歌を歌うシーンがとても良かった。クライマックス、結局山を1周してスタート地点に戻ってきた7人、これでめでたしかと思いきや"滝を見に行こう。この7人で私は滝が観たい"と言い出す展開からの7人で滝を見る表情になぜか非常にグッと来た。とてもシュールな内容ですが、とても良かった。90分台なのもgood。

 

・レディ・マクベス (原題:Lady Macbeth) - 3.7/5.0 (DVD/2021.3.10)

監督 脚本:ウィリアム・オールドロイド。2016年。日本公開2020年。フローレンス・ピューが主演の過去作品、日本ではほんのわずかな間の上映だった様でレンタルで鑑賞。お話的には割とよくある感じで、面白い!とは思えなかったのですが画面も丁寧に作られているし、音も極力無くす事でより濃い密室感が得られていた様に感じる。作劇も普通ではあるがしっかりと順序だてて行われており理解しやすく見やすかった。そして何よりもお目当てフローレンス・ピュー(当時20歳!)の演技、そしてボディ!に福眼!!クライマックスの、使用人を裏切ってまで手に入れた"過去の環境との決別、自らの選択で得る人生"で分かり易く主題を魅せ、最後はフローレンス・ピューの顔面力で締める!という硬派なスタイル。後年の「ミッドサマー」もピューの顔面締めだなーと思いつつ、それが出来るって結構な事だよなと思いながら鑑了。

 

・野球少女 (原題:야구소녀 Baseball Girl) - 3.5/5.0 (伏見ミリオン座/2021.3.8)

監督 脚本:チェ・ユンテ。2019年。日本公開2021年。前からチェックしていた→改めて予告観る→これってただのアイドル映画では...?つまんなさそうだから辞める→アトロクのガチャで当たる→予告観る→やっぱりつまんなさそうだから辞めたい→Wポイントディだし、一応見に行って観るか...→やっぱりな!!!!!!!!!!!!!という事で、非常に微妙でした。お話自体にはグッと来るポイントや良いセリフもたくさんあって良かったのですが、全体的に薄ら寒い野球描写(プロ目指すのに素人集団すぎだろ)、感情移入が難しい下手な作劇、感動しようにも登場人物が全員バカで身勝手で後から気付いてもそりゃ自業自得でしょとしか思えない、なんだかんだコトが上手く運びすぎ、主演が可愛くない(主題と真向にぶつかるクソ感想)、などで終始冷めた感じで見てしまった。クライマックスでプロ球団理事?に長所短所の話をする所はとても良かったし、非常に今っぽい作品だなと思った。これこそ今観ないと価値(というかせめてもの意味)が無いよなと感じる。全体的には微妙でした。
 

・お早よう - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.3.9)

監督:小津安二郎。脚本:小津安二郎。野田高梧。1959年。お恥ずかしながら小津作品初鑑賞。晩年のカラー作品。どのタイミングで見ようかなと思っていてずっと温めて来てましたが、「お早よう」の配信期限が迫っているという事で慌てて鑑賞。もっと小難しい感じなのかなと思っていたが、非常に見やすく整理されていて分かり易く、チャーミングな画面だった。もちろん62年も前の作品なので、台詞や設定にピクッとなる部分は無くは無いのですが、全然気にならないくらいに現在と通じるものが描かれていた。サザエさん的というか、家族劇としてユーモアを交えながらも当時の社会観とかもよく分かって良かった。何といっても子役のいさむちゃんが可愛かった。

 

・ミッドナイト ファミリー (原題:Midnight Family) - 3.6/5.0 (シネマスコーレ/2021.3.8)

監督 脚本:ルーク・ローレンツェン。2019年。日本公開2021年。シネマスコーレのツイートを観て鑑賞。メキシコシティの人口900万人に対して公営の救急車が45台以下しかないという事実を元に、民間救急車で生計を立てる家族を描いたドキュメンタリーの様なドラマ作品。淡々と日夜のレスキューっぷりを映し出す作りにも関わらず毎秒がドラマチック。救急車待機の時間の途方もない長さ、乗り込んだは良いが受け入れ先病院が少なさ、搬送料を渋られたり、それでも目の前の命に対して必死に戦う一家。16歳の主人公の少年は正義感が強く、若さを武器に危険を顧みず救急活動に尽くす。民間の救急車同士でカーチェイスになりスレスレの運転をみせる。(家庭環境によって?)年齢の割には大人びた主人公が弟にかける言葉にもいちいちズインと来るものがあったり、仕事の合間に彼女へかける電話で年齢なりの笑顔を見せたり、彼の心情と共に彼の友人としてこの作品を観ているかの様な気分にさせられた。良かったが、お話としては地味すぎて、観た日の気分的にはこの点数で。

 

・イントゥ ザ ワイルド (原題:Into the Wild) - 3.5/5.0 (DVD/2021.3.5)

監督 脚本:ショーン・ペン。2007年。評判良いので鑑賞。家族の不穏さから家出した主人公が所持金ゼロかつヒッチハイクでアラスカを目指す回想シーンとアラスカに放置されたバスに暮らす今のシーンとを交互に配置させながらその彼の結末を魅せるロードムービー的作品。文明や金に飽き飽きしたと言い放ち放浪する主人公だが、基本的に何をするにも文明とは関わっており、何なら"お前がヒッチハイクしたその車には乗っていいんかい"とか"人の(文明や金を使った生活の)世話になるのはいいんかい"と納得いかない点が多い。そして何よりも主人公の行動した結果が(結末以外は)全てが上手くいき過ぎていく展開にも全然ノレなかった。もちろん上記したような部分に観客からツッコミが入るのは前提で製作しているだろうし、本作が言いたい事はそんな事ではないと思うのですが、その定期的に出て来る引っかかりポイントがノイズになり、あまり素直に楽しむ事はできなかった。オーマイゴッド温泉だけ面白かった。

 

・いつかギラギラする日 - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.3.4)

監督:深作欣二。脚本:丸山昇一。1992年。向井秀徳レコメンドで鑑賞。見始めた冒頭は"あ~向井好きそう"と思う程度で見ていたが、画面から湧き出る明らかに高いテンション、爆音、(画面的な編集)リズムと音、"ロックンローール!"のセリフ、で、本当にロック的なテンションの高さと画面のリズムの良さが絶妙なバランスで混在しており、一気に引き込まれる。正直言って中盤はどうしても結構ダレましたが、後半の爆裂カーチェイスに向けて徐々にまたギアを上げていき、クライマックスでの萩原健一と木村一八のナイフでの一騎打ちや、その後のパトカーの上を爆走するシーンなどは相当にキマりまくっていた。興奮した。思わず、"すごい!"と感想を書きたくなる一作だった。良かった。

 

・アイム・ソー・エキサイテッド! (原題:LOS AMANTES PASAJEROS) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.3.3)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。2014年。お楽しみはゆっくりとね、という事で敬愛するペドロ・アルモドバル作品も少しずつ楽しみにしながら鑑賞してます。今作は、飛行機が不具合を起こし着陸するまでの機内の様子をオカマのCAを中心にスラップスティックコメディ(ほぼドタバタしてないけど)で描いた。簡単に言えば、下品!かつ、オカマ!という感じ。ですが、お話的に特に盛り上がる事もなく、ペドロ・アルモドバル的なこう、捻じれた設定の面白さみたいなものは何だか影を潜めた印象。飛行機が無事に着陸した時に飛び出した?敷かれていた?であろう泡の床が最終的には雲の上を揺蕩う飛行機の視界となって画的にも非常にすっきりとオチて(たのか?)良かった。冒頭からペドロ・アルモドバル作品のミューズであるペネロペ・クルスが出て来るシーンなどはやはりワクワクするが、本作のワクワクポイントはそれくらい。飛行機以外が舞台の、自殺しようとした元カノが自身ではなく携帯を落としたら今カノの自転車に落ちちゃう感じとかすごく面白かったし、全員に聴こえる電話のプロットとかも何か起こるのか!と良かったのに、それ以上膨らまずで何ともならなかった印象。

 

・地獄の警備員 デジタルリマスター版 - 3.4/5.0 (名古屋シネマテーク/2021.3.1)

監督:黒沢清。脚本:富岡邦彦、黒沢清。1992年。「スパイの妻」「CURE」の黒沢監督フィルモグラフィ初期の一作。重松清扮する元力士の殺人犯が商社ビルの警備員として入社、同じく新入社の主人公・成島秋子(久野真紀子)をターゲットにするが...というお話。商社のビルの中というミニマムな世界(尚且つ警備員室という狭い密室)を舞台に殺人犯がすぐそこにいるという恐怖をスリラーとして描いた。元力士の殺人犯という謎設定は、クソバカデカ警備員と言うまず"形"としての恐怖そのもの、そして力があるであろう(ロッカーに人を入れて潰すシーンが最高だった)という説得力にも繋がり観ているこちらにも、これから何をされてしまうんだろうという恐怖を植え付ける。ただ、基本的にはそれだけしかお話が無く、最初は結構楽しく見れていたが終盤さすがに飽きてきて眠気に襲われてしま(うくらいに正直つまらなか)った。97分の尺とは思えない長さに感じ、ツラかった。もう一人の警備員が何故か殺害教唆をし出した辺りから一気にノレなくなってしまった。南無三。

 

ヤクザと家族 The Family - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.3.1)

監督 脚本:藤井道人。2021年。「すばらしき世界」と一緒にみるといいよ~なんて声も聞こえており、地元では今週までの公開らしいのでファーストデーを利用して鑑賞。「新聞記者」の藤井監督最新作、初めてでした。冒頭からバイオレンス描写も容赦なくバキッと気合が入っており、タイトル出るところから昔の任侠ものっぽいオープニングクレジットまでむちゃむちゃかっこよかったんじゃないでしょうか。前半は緊張感とテンポ良く進んでいき単純に楽しめた。中盤、尾野真千子演じる彼女とのメロドラマ風セクションで若干テンション下がりつつ(任侠ものをあまり観ないので分からないけどこういうのもお決まりなのでしょうか?どちらにせよ後の展開を考えると必要なシーンなので仕方ないのですが。)も、しっかりとお話の肝の部分と結び付けて着地させる作劇は良かった。全体的にカチっと硬質な画作りでかなりかっこ良い作品で満足。ですが、それこそ「すばらしき世界」と比べてどうかという事でもないのですが、基本的に話自体が自業自得すぎて何とも言えないというか。DQNはDQNだし、終盤警察が"今までやってきたことの報いだろ"と言っていたのが全てで、人に迷惑かけて生きてきて何言ってんだと全くの同意だった。元犯罪者にも人生はあるし、生きる権利がある、そういった部分をきちんと描いた「すばらしき世界」の方が観る価値があると思う。クズにはなるなよという反面教師には良いのかも知れないが。

■2021年2月に観た映画

36本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

のぼる小寺さん - 3.5/5.0 (DVD/2021.2.28)

監督:古厩智之。脚本:吉田玲子。2020年。主演に元モーニング娘。の工藤遥。アフタヌーン(講談社)にて連載していた珈琲の漫画原作。公開当時から知っていましたが、メインビジュアルと主演が工藤遥という事で完全に回避していた作品。昨年末の年間ベストとかの企画でちょいちょい名前が挙がっており一応観てみるかと鑑賞。ボルダリングに青春をかける女子高生とその周りの群像劇、100分に短く纏まっており公開も夏だったと思いますが夏休みにボケーっと劇場で見て、外でてあっちいな~とボソっと呟いてテクテク1人帰る、のが正しい観後感、みたいな感じの作品。特に何か起こるわけでもないが所謂「桐島~」だったり、「アルプススタンド~」だったりあの辺りのエッセンスを淡~く混ぜたような小粒な印象だった。終盤の文化祭のシーンで、サルの恰好をして校舎をよじ登る主人公・小寺さんが撮影された写真を見て、部長が"でもなんか良い写真だよな"と言ったり、その後もあるシーンの何気ない一言が響いたり(何気なさ過ぎてセリフを覚えていない)、良い余韻が残った。割と嫌いじゃなかったけど面白くも無かった。脚本はひどいな~と思いながら観た。

 

・春江水暖 (洋題:Dwelling In The Fuchun Mountains) - 4.0/5.0 (伏見ミリオン座/2021.2.28)

監督 脚本:グー・シャオガン。2019年。日本公開2021年。予告の段階から面白そうだなと思っていた一作。見終わった後に思ったのは中国おっさん版「ストーリーオブマイライフ」。ホームページや予告、いろんな所で言及されていますが見どころは何と言っても長回しシーン。平泳ぎでただただ泳ぐシーンをこんなにも長く見られるのはこの作品だけ!と言いたくなるくらいに延々と平泳ぎ(のシーンがあまりにも印象的)。こんな事をやっているから150分になるんだよと言いたくはなりますが、全然嫌じゃないロングショット。その地に河が流れている事だったり、中国の山水絵巻に模している事だったり、時間の経過や、人生の経過、そういったものが描かれている事がそもそもこういう事なんだよなと思える必然性のある長回しだった。もちろん泳ぎのシーン以外にも長回しは多用されており、そのどれもが完璧とまでは言わないし、逆にそのくらいが何か愛おしくなるような不思議な魅力の映画だった。登場人物たちも自然な魅力に溢れていて150分見終わる頃にはキャラクターたちの実在感にこの先が気になってしょうがなかった。また、最後に『巻ノ一、完』という字幕が出て事もあり"え、2があるの?"と、是非とも観てみたく思う。監督自身も若く、今作が長編デビュー作という事でこれからが非常に楽しみな作家だなと思った。

 

・シークレット サンシャイン (原題:밀양) - 3.7/5.0 (DVD/2021.2.26)

監督 脚本:イ・チャンドン。2007年。「ペパーミント・キャンディー」「オアシス」「バーニング 劇場版」と観た3作ともずっしりと響く内容で自分も好きなイ・チャンドン監督作品。もちろん評価は高いので楽しみにして鑑賞。今作のテーマとしては"宗教"と"救い"。上記した3作よりももう少し違った方向性でのテーマになりますので、どうかなと思いましたが個人的には他作品に比べると若干の感情移入のし難さがあった。もちろんお話が入ってこないというわけでは決してなく、テーマとしてはなかなかに難しい問題ではある内容をしっかりとエンターテイメントとしても十分に通用するポピュラリティーを持って作り上げていくのはさすが。クライマックスである、許しにいった犯人が先に勝手に許されていて...からの展開はさすがの出来栄え。"そりゃそうなるよなあ..."と思いながら観ました。形のないものにすがるのは良かったりも悪かったりも一言ではどちらも言えない。かなり渋い作品だった。また時間が経ってから見てみたいなと思う。

 

・ボーダー 二つの世界 (原題:Gräns) - 2.7/5.0 (DVD/2021.2.25)

監督:アリ・アッバシ。原作 脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。2019年。「ぼくのエリ 200歳の少女」と同じ原作者。「ぼくの~」もそうだが一部に熱狂的なファンが居そうなこの作品。ルッキズム、ジェンダー、人間、動物、無機物、有機物、善人、悪人...。文字通り様々な"ボーダー"が描かれていく今作。作家性なのかやっぱりどうしてもこの作家さんの寓話にはどうもノレない自分がいる。ワクワクしない。面白い話にはなっているとは思うのですが、それがどうしたんだろう以外の感想があまりない。題材があまりにもファンタジー設定だからかも知れない。自分の中では魔法使いが魔法で戦う映画やヒーローが街を飛び回って誰かを助ける映画と大差ないというかほぼ同じに感じてしまう。関心が抱けない。まあ、映像としてギョッとする様なシーンはいくつかあったのでそういう部分は面白いような気もするし、デビットリンチとかそういうカルトっぽいじゃんと言われればそうな様な気もしますが...なんとも。

 

・屋根裏の殺人鬼フリッツ ホンカ (原題:Der goldene Handschuh/The Golden Glove) - 3.9/5.0 (DVD/2021.2.24)

監督 脚本:ファティ・アキン。2020年。映画秘宝のベスト10に載っており知った作品。ようやく鑑賞。1970年代に起きた実話ベースの殺人鬼映画。シリアルキラーもののモキュメンタリーとかドラマって洋邦問わずにたくさんあって、まあそういう感じなんだろうなと思いながら鑑賞を始めたのですがわりと早いタイミングで"あれ?そうじゃないのかも?"と感じながらも完走。結果、かなりキャッチーかつ残忍なでもちょっと切ない殺人鬼映画になっておりました。最高。巨漢の娼婦を殺すシーンや掃除係の女をレイプしようとするシーンなども長回しで緊張感や(ドラマの中にある)リアルさを追求していく姿勢は非常に良く、実は直接的なゴア描写は無いもののしっかりと残忍なシーンに見えたり、ホンカが自分で溜め込んだ腐敗した死体部屋の臭いに思わずゲロを吐くシーンがあったり、中盤のバスかなんかに撥ねられるシーンとか噴き出すくらい面白かったし、など、映画の画面としてのルックも、(怖さの中に見える)ファニーさも、上手に抽出して映像に出来ているなあと非常に感じた。ラストシーンの火事になっている自分の部屋か、目の前にいる獲物かでホンカの内情が右往左往する所なんて最高だった。からの、逮捕。というきっちりとお話としてもオチまでついていて素晴らしかった。欲を言えば、110分ではなく90分台で見たかった。

 

・フリークス(怪物團/神の子ら) (原題:Freaks/NATURE'S MISTAKES/THE MONSTER SHOW) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.2.23)

監督:トッド・ブラウニング。1932年。約90年前(!)のアメリカ映画。シネマテークにて『奇想天外映画祭』の1本として上映されていたが配信であったので鑑賞。U-NEXTの説明文に"本物の奇形者や障碍者などが大挙して登場するホラー映画の古典作品"ともうめちゃくちゃな紹介がされていましたがw、全くホラーでもないし、奇形や障害者が出て来るのは確かにそうだけどすごいなこの説明と笑った。お話としてもすごく丁寧で見やすくちゃんと伝わってくるので良かった。映像や作劇自体もとても90年前のものとは思えないなとは感じるのですが、人間の動機とか思考とかって変わってないんだなあとも思った。DQNカップルをきちんと成敗、しかもかなり皮肉に処刑されておりスカッとアメリカな感じで良かった。(勿論2021年的に観ればかなりびっくりする様なお話でかなり無しよりの無しだよなとは思う)

 

・ストレンジ フィーリング アリスのエッチな青春白書 (原題:Yes, God, Yes) - 3.2/5.0 (DVD/2021.2.23)

監督 脚本:カレン・メーン。2020年。町山智浩氏が2020年のベスト10に入れてお勧めしていたので鑑賞。真っ先に思うのは主演のナタリア・ダイアーが元AISの朝熊萌ちゃんにそっくりだという事。ジャケットだけかなと思いきや動画でも似ていてびっくり。まあそんなことはどうでもいいのですが、これは邦題はどうにもならなかったのか。と。間違っちゃいないけれど、こんなタイトルにする必要もないしメインビジュアルもピンクくする必要ありますか?と問いたい。厳しいキリシタン学校で育ち、誰もが宗教を信じて疑わない(生まれてからずっと当たり前にそこにあるものなのでそりゃ疑う余地もないよね)高校生の、性への目覚めを通して自分自身と宗教へ対する気持ちを、きちんと己の中で位置づけて行くという物語。もちろん考えさせられる部分もありますが基本ほのぼのした作品だなと思う。性を題材にしてやんなきゃいけないのかもよく分かんないし、どうなんでしょうね。これ。78分と短尺なのが救い。

 

・哀愁しんでれら - 3.3/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.2.22)

監督 脚本:渡部亮平。2021年。2016年のTSUTAYAなんとかアワード受賞作品の映画化とのこと。アトロク鑑賞作品となり鑑賞。簡単に言えば、タイトル通りシンデレラのストーリーをオマージュしながら、貧富の差婚を中心に据えたモンスターペアレント誕生譚の様な感じ、でしょうか。前半部の軽めのタッチで描かれる部分が後半になり徐々と...という展開を見せたかったのでしょうけれど、その前半パートのいけ好かない度がすごすぎてかなりノレない気持ちで見守っていたのですが、後半のホラー調になってからの緊張感はなかなかなもので見応えあり。お話のオチはあまりにも現実問題から乖離し過ぎていてどうなんでしょうという感じですが、見始めた最初の不安を思えばだいぶ巻き返したなあという印象。ツッコミどころは結構あった。平日昼間にしては若い男女を中心にかなり人も入っており、驚いた。田中圭も土屋太鳳も演技がきっついなと思いながら見た。

 

・悪の法則 (原題:The Counselor) - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.2.21)

監督:リドリー・スコット。脚本:コーマック・マッカーシー。2013年。評判が良く見なければと思っていながらもようやく鑑賞。映像としてもセリフとしても非常に説明描写が少なく、後の展開から読み取って下さいねという結構ハードルが高く集中力もいる作品だった。基本的には"悪い事をしたら駄目、するなら覚悟を持ちなさい"(超意訳)。という内容。非常に不思議な質感で何度か見てもいいかなと思える感じだった。正直、一度見ただけでは良さがそこまでわからなかったのですが。。いつかまた2回目を。

 

・ニューヨーク1997 (原題:ESCAPE FROM NEW YORK) - 3.5/5.0 (Blu-ray/2021.2.21)

監督 脚本:ジョン・カーペンター。1981年。犯罪が渋滞しているニューヨーク、重犯罪者を隔離していたエリアに大統領が拉致されてしまい、救助の為に主人公は24時間以内に解除しないとならない体内爆弾を抱え救出に向かうが...というお話。まあ何とかなるんですが、面白くなかったっす。81年の作品で未来の97年を描いたのは良いがもっと未来感あってもいいんじゃないの?と思うし、ベタに諸々が進行していって大体こうなるよねという感じで裏切りもなくしっかりと完走したのでこれと言って特に感想も無い。ゲーム『メタルギアソリッド』へ影響を与えたという設定やビジュアルは排他的な空気で確かにかっこよかった。

 

・アングスト/不安 (原題:Angst/FEAR) - 3.7/5.0 (DVD/2021.2.21)

監督:ジェラルド・カーゲル。1983年。日本公開2020年。去年、"超問題作ついに解禁"的な感じで公開されており興味はあったのですがタイミング悪く見に行けずにいた作品がレンタル解禁されていたのでDVDにて鑑賞。残忍なシーンが連続するのかなと思っていましたがそんな事はあまりなく、基本的には罪を繰りかえす事を恐れる?様な心理描写やそれに伴う行動描写が多く、それこそタイトル通りずっと"不安"な画面が続く様な表現で出来上がっていた。とある一家を標的にし、自身の過去の悲惨な記憶と闘いながら殺人を侵そうとする主人公。クライマックスにわりと豪快なスプラッタ殺害シーンが出て来るのですが、まるでそれまでが前フリというか(所謂テクノ的な)"タメ"のセクションであったかのようなラストのブチ上がり感。それでもラストはまたしても不安に慄き、ちゃんと警察に捕まってしまうあたりも作品内リアリティを逆に有効利用してグッと怖さやノンフィクション感を強めており良かった。
 

・あの頃。 - 2.3/5.0 (伏見ミリオン座/2021.2.20)

監督:今泉力哉。脚本:冨永昌敬。2021年。バンドマンとしてのイメージしかありませんがハロオタ原作者・劔樹人氏による「あの頃。男子かしまし物語」の映画化作品。元々、原作は発売時から読んでいて好きな作品だったのでかなり楽しみにして鑑賞。公開2日目、伏見ミリオン座にて舞台挨拶LV付。期待をし過ぎたのか正直いって全くもってノレなかった。というか、今泉力哉監督作品を初めて見たんですが、下手過ぎませんか?それとも"お仕事映画"でやる気が無かったの?としか思えない出来栄えにびっくり。まず冒頭から主人公の松坂桃李がハロオタになるまでの描写が唐突で適当過ぎる。時間の都合(や原作もそうだったっけ?)もあるかも知れないけれど、オタクになる理由がいまいち伝わってこず、いつの間にかオタになり、いつの間にかハロプロにのめり込んで、いつの間にか仲間が出来て、と観客を置いていき急ぎ足かつ薄味で進んでいくのが解せなかった。それ以降もひたすらにホモソ的な(しかも前時代的な)イジりやギャグが続き、全く笑えないしノレない。昔の話とは言え今映像にするならもう少し丁寧に描写する必要があったのでは。音楽の面でも、長谷川白紙(好きですけど)の効果もない音程感も無い謎の劇伴と、無音の交互が続き、どう見せたいのかが全く分からない。そしてこれが一番の弊害だと思うのですが、コズミンがアール君の彼女と関係を持とうとするNTR展開からの公開処刑の部分とかがただの虐めというか誰もが嫌な奴に見えてしまい、笑いポイントであるあのシーンが非常に微妙な空気になっていた。音楽をまったく有効に使えていないのが残念だった。最後の方のコズミンの生前葬イベの『恋ING』、本作の一番の泣きのポイントも非常に中途半端に映っていたし(原作はもっと泣けるんだよ!)、フィギュアだらけの棺を覗いて皆が笑うシーンもこんな薄い積み重ねでは、(死んでもふざける)ただ嫌な奴らに映ってしまう。ひたすらに原作の良さをブチ壊すやる気のない仕上がりにしか見えなかった。中盤から劇場中に大きなイビキが響いていましたが、映画としても面白くないしハロオタとしても面白くないこんなもんを見せられたらそりゃ文字通りハローにしか興味のないオッサンは寝るって。(原作はもっとハロプロに関しての描写がある。"一般層も"と考えるとこうなるのかも知れないが)本当にがっかりでした。そして、これは映画とは全く関係ないですが、舞台挨拶が終わって"これから本編です"という字幕後に約15分に及ぶ予告編→地元企業CM→予告編2を流す伏見ミリオン座、観客はかなりげんなりしてましたよ。空気が冷えていくのを感じた。作品とは関係ないが、コロナ禍の中劇場に足を運んで楽しみにしてくれているほぼフルハウスの客に対してCMを流したい(流さないといけない)気持ちも勿論わかるが、あの挨拶&字幕の直後にコレはちょっと無いんじゃないか?と不満に感じた。こういう時に臨機応変に対応して劇場での体験が"良かった!"と思ってもらえる方が、オタク共が興味のない洋画の予告編を長々流すよりもよっぽど意味があるのではないかと思った。自分が一見さんなら伏見ミリオン座はもう行かないなと思うと思う。何だかひたすらに残念な劇場体験だった。

 

・アイアムアヒーロー - 2.5/5.0 (U-NEXT/2021.2.19)

監督:佐藤信介。脚本:野木亜紀子。2016年。花沢健吾の漫画実写化作品。連載当時、原作は読んでいたので大体どういう話か知っている状態での鑑賞(細かい事はほとんど覚えてはいないのですが)。冒頭30分から1時間くらいまでにかけては気合の入ったゴア描写やアクション描写で結構引き込まれてあっという間に過ぎていったのでかなり期待をして観ていたのですが、物語のメインとなるショッピングモールらしきところに到着してから一気にスピード感が落ち、(目当ての)有村架純も置物状態で意味無いし(そもそもなんだあのルックは)、クライマックスであろう"無数に襲い掛かるゾンビたちを倒し続ける盛り上がりシーン"も画の迫力はあるが、物語的な説得力も物語上の最低限のリアリティも感じられず、大泉洋がゾンビを撃ち殺しまくるのと同時にこちらのテンションも盛り下がっていった。ゾンビものなのでああいう逃亡ラストになるのは仕方ないかなとは思うが何の達成感も無く久々に"最後まで観て損した!"としっかり思わせてくれる作品だった。有村架純が出ていなかったら1点(ゴア描写頑張った加点)。

 

・アニー ホール (原題:Annie Hall) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.2.18)

監督 脚本 主演:ウディ・アレン。1978年。こちらも同じく「花束~」からの流れでウディ・アレンの代表作かつ当時のアカデミー受賞作品を。ほぼ「花束~」だった。でもかなり面白かった。お話の大筋はほぼ同じだが、劇中の表現は非常に挑戦的で様々なチャレンジがされている。笑えるシーンも多く、尺も90分台とかなりサクっと観られる点も良かった。最後は決定的にウディ・アレンが一人になってしまうところも最高。前述作品よりももっと救いがなく、後悔に満ちた仕上がりになっているのが良い。
 

・ビリギャル - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.2.18)

監督:土井裕泰。脚本:橋本裕志。2015年。「花束~」からの流れで有村架純作品を鑑賞(評判も良いので...)。観ながら"これいつの作品?"とマジで普通に疑問に思ってしまうくらいに時代錯誤な表現や台詞にちょっと気分悪いなコレと思う程で、調べてみると2015年で困惑。"劇中の設定はもう少し前なのでは?"と思い見進めると入試は2013年。絶句。伊藤なんとかの演技はひどいし、陳腐な描写ばかりで心底萎えるし、愛知県のイメージ悪くなるがや!()という感じで、もう。家族不仲ものは好きなのですが、まず嫌われ父親は簡単には変わらないし、周りも簡単には許せないはず。そのあたり世の家族不仲ものの作品はもっと真剣に向き合って欲しい。お話自体は子供でも分かるストレートな"良いお話"になっているのでまあ別にそこまでむちゃくちゃ嫌ではないしまあ感動するんですが(するな)、有村架純ファクターかかってるので違う人が主演だったら正直クソ。有村架純(のみ)が、3.2点です!

 

・ランボー 怒りの脱出 (原題:Rambo: First Blood Part II) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.2.17)

監督:ジョルジ・パン・コスマトス。脚本:ジェームズ・キャメロン。1985年。「ランボー」シリーズようやく2作目を鑑賞。"捕虜の写真を撮ってこい"とだけ言われたのにも関わらず戦地到着5秒で指令も我も忘れて暴れまわるランボーが最高にランボー。お話も簡素で分かり易く派手で良かった。助けに来たはずのヘリが目の前でランボーを無常に見捨てて去るシーンの哀しい目が切なかった。そりゃ殺戮マシーンになってしまうて。最後は基地大荒らしで爽快なEND。果てなくジャッキーチェン映画(拳銃版)だった。2021年にこんな感想持てるの幸せだろう?

 

・エル トポ (原題:El Topo) - 未採点 (DVD/2021.2.17)

監督 脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー。1971年。日本公開1987年。リテラシーが低いのか、集中力が足りなかったのか、正直ちょっとどう見ていいのか分からなかった。カルト描写をしたいお伽話映画は沢山あるが、描写もお話もカルトというか突拍子も無さ過ぎてよくわからなかった。たぶんちゃんと見られてなかったんだなと今思う。コメンタリー付きの動画があるらしいのでそれだと多少わかるらしいのですが、もう一度見る気にはなれない尺(123分)でどうしよう状態。ネットには、"ホドルフスキー入門"と書かれているのも見かけたがこれが入門ってどういう事なんだ。

 

・ウィッカーマン final cut (原題:THE WICKER MAN) - 3.8/5.0 (名古屋シネマテーク/2021.2.16)

監督:ロビン・ハーディ。脚本:アンソニー・シェイファー。オリジナル1973年。ファイナルカット2013年。脚本のアンソニーはヒッチコック「フレンジー」でも脚本を担当している。「ミッドサマー」でアリアスターが影響としてあげている今作、もちろん私もそこで知りチェックをしていた。配信もないし、レンタルも近場には在庫が無いという事でどうしたもんかと思っていたが、今池シネマテークにてアンコール上映があると知り、鑑賞。ほぼほぼミッドサマーなのは間違いなく、それよりもくだらない性描写&下ネタが続き...のにも関わらず謎の説得力と不気味さがあるのは何故だろうか。どうしても比較にはなってしまうが、ミッドサマーがエンタメ寄りに振っている分、ウィッカーマンの宗教観の描き方はより映画的というか"面白く"描かれているなという印象を持った。巨大なウィッカーマンが燃える様子は圧巻だった。

 

・すばらしき世界 - 4.0/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.2.15)

監督 脚本:西川美和。原作:佐木隆三「身分帳」2021年。前科者の元組員が13年の刑期を終え社会復帰の為にもがくが...というお話。何といっても主演の役所広司、仲野太賀の存在感。特に主役の三上だけではどうしても観客としてノリ切れない部分もあるだろう所に、若手テレビマンの津乃田を置く事で"三上の更生ドキュメンタリーを見ている"ような効果を生み、観る者を置いてけぼりにさせない。元殺人犯という事を判りながらも観ている我々ですが"更生を目指す三上"の時点からを画面上で見ているのでどうしても極悪人には見えないのですが、時折見せる三上の本質的な部分の描写にゾッとする(実際は28年も獄中にいる人物なので極悪人なのだが)。優しい部分やチャーミングな部分も挟みつつも反社とは言え、犯罪者とは言え、人の子なんだという描き方には考えさせられる。中でも地元を尋ね、母に聞きたい事は何だと話し、そこで子供たちとサッカーをするシーンには劇中の津乃田と共に胸を打たれた。ただ、主人公・三上に甘い設定や展開も多く見受けられ、脚本的にどうかなと思う部分はあった。原作を読んでみたい。原案は90年に発表されたもので現代と合わない部分もあるのではという事でしたが、監督インタビューに依れば、原作にほれ込んでいるので基本的には大きな改変はせずに臨み、唯一主人公が福岡に帰った際に元の組の道へと戻りそうになるがというシーンは時代背景を考慮し変わっているそうです。あと、タイトルの出方(一番最後に出す)には非常に納得がいかない(何が"すばらしき世界"だよ、すばらしくないじゃんとなった)。でもとても面白かった。

 

・カセットテープ ダイアリーズ (原題:Blinded by the Light) - 3.9/5.0 (DVD/2021.2.14)

監督:グリンダ・チャーダ。2020年。何かでお勧めされており鑑賞。ブルーススプリングスティーンの歌がかなりの頻度で挟まれながら進行。ミュージカル演出とはまた違う、普通に歌って歌詞が画面上に出てくるという形での演出。こういうのたまにありますけど、どうせやるならミュージカル風にはっきりと演出してくれた方が分かりやすいのになといつも思う。中盤くらいまではなかなかノレずに見ていましたが、内容が人種差別の問題から、それをきっかけとした家族の物語、そして主人公のモラトリアムものとして昇華されていく流れが非常に上手く、自然で良かった。家族との問題やそれに伴うモラトリアムの爆発なんかは誰しも実体験としてわかる部分でもあるし感情移入もしやすいのでウェルメイドな作品として非常に良く出来ていると思う。超個人的な感想を言えば、実体験としての父親はあんなに物分かりが良くなく、私と父との関係はもっとゴツゴツして歪な形なんだよなあと少し我に帰ってしまった。それさえも超越して納得できる展開だったら4.0以上ついたのになという感じ。

 

・犬鳴村 - 3.1/5.0 (DVD/2021.2.13)

監督:清水崇。脚本:保坂大輔。2020年。某レビュアーさんの"Jホラーからのヘレディタリーへの回答"という言葉を信じ鑑賞。結果は"いやまあ確かにそうだけどwそれは好意的に取り過ぎでしょ"という感じ。てかヘレディタリー要素もそんなに無いし、呪われた家系的な部分だけじゃん。そして何よりもまずもって怖いシーンがない。うえに多少なりとも出て来るホラー(ゴースト?)的描写が謎のエフェクト満載の"ゾンビ風村人"でもうどうにもこうにも萎える要素しかなく全くもってノレなかった。都合のいいシーンの連続で微妙すぎ。子供が作った犬鳴村ミニチュアにある電話ボックスをカラカラと振ると、その中からメモリーカードが出て来て真相に近づいていくというシーンだけは唯一、結構良かった。

 

・Mank マンク - 3.5/5.0 (伏見ミリオン座/2021.2.12)

監督:デヴィッド・フィンチャー。脚本:ジャック・フィンチャー。2020年。Netflix配信作品の劇場公開版。変わりがあるのか分かりませんが。まず知識として「市民ケーン」を観ているだけでは足りないかな?と思う部分もあったが、この作品のお話自体はちゃんと観てれば何となくは分かるはず。ただ、登場人物がなんの説明も無く次々と登場するので完全な理解はできなかった。「市民ケーン」の脚本制作の事実をフィクションと混ぜながら劇映画として届ける目的なのだろう、映像のオマージュっぷりや、ゲイリーオールドマンの役者としての佇まいの豊かさはあった。が、やはり上記した部分がひっぱり全体的にもやっとした印象で観終わってしまった。デヴィッドフィンチャーの父親なのジャックフィンチャーが脚本らしいのですが、『観客は映画館という暗闇で見たことを事実として信じてしまう』や、『2時間で男の一生を描くことは出来ないが、見たかのように思わせることは出来る』などの"映画とは"的な真のメタ構造を考えさせられる脚本はキレ味良く楽しめた。作品としては別に面白くなかった。Netflixで観れば良かったと思ったけど配信じゃ絶対後回しにして見ないだろうからまあ見られて良かった。

 

・震える舌 - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.2.11)

監督:野村芳太郎。脚本:井手雅人。1980年。「黒い家」に続き(続くか?)鑑賞。破傷風になってしまった女児と入院に付き添う両親のドラマ。ドキュメント風でもあるがモキュメンタリーではない。ホラーでもない。破傷風も怖いし、そうなってしまってからの両親が壊れていく様も怖い。でもそれってこうなってしまうのは仕方ないのでは?とも思うので、話自体がすごく怖いかと聞かれるとそうでもなく、ただただ可哀想なお話で、どういう感想を持っていいのかよく分からなかった。夫婦2人のヤツれていく様がリアルで良かった。クライマックスでの父親役の渡瀬恒彦がジュースを3本(しかも違う種類)買って戻る時にコケてしまい、缶を拾いながら泣くシーンには胸が苦しくなった。中野良子の役どころである担当医師の才女かつ優しい笑顔が印象的だった。"良い先生だったなあ"と思ったら「良い先生だったね」とセリフで出て来て、"そうだね"となった(当たり前体操)。今の医療ではこういう治療にはならないのだろうけれど、40年前の医療ドラマ、暗い画面が非常に印象的な作品。

 

・黒い家 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.2.10)

監督:森田芳光。脚本:大森寿美男。1999年。少年期からこの作品の事は当然知っていたし、レンタルビデオ店の店員だった学生時代には"やばそうなジャケだな.."と敬遠し続けてきた「黒い家」を鑑賞。2000年直前の邦画界では様々なホラー映画がまさに乱発されていた。作品中、終始展開される"不安な"画面、カット割り、音。人を不安且つ不快に人間を不気味に撮らせたら森田監督で間違いなし。中盤以降の適当とも思える超絶展開に悶絶しながらもしっかりと楽しんでしまった。ホラーというよりはスリラー。「家族ゲーム」の森田監督だと知りながらの鑑賞だったが、もちろん昔の自分にはそんなリテラシーもないし、何も知らずに当時見なくて良かったなあとこの作品を見た今、猛烈にそう思う。けっこう限られた人しか楽しめない作品でしょう。

 

・ホット ファズ 俺たちスーパーポリスメン! (原題:Hot Fuzz) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.2.9)

監督:エドガー・ライト。脚本:エドガー・ライト、サイモン・ペッグ。2008年。「ショーンオブザデッド」のニック・フロストとサイモン・ペッグのコンビが再演。お話的には、終盤ベタなんだけどまさかのどんでん返しもありかなり普通に楽しめた。ワクワク感とはまたちょっと違うけれど、非常にうまいストーリーテリングで終始集中して画面に捉えられていた。洋コメディでギャグが笑えないというのはまあある方だとは思うし、これも例外ではないのですが所々噴き出す様な面白もあり満足。音楽のセンスも使い方も抜群で、この後に「BABY DRIVER」に繋がっていくかと思うとアツいものがある。しかし邦題のダサさはどうにもならなかったのか。普通に「HOT FUZZ」で良かったろうに。

 

・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来 (原題:罗小黑战记) - 未採点 (名古屋シネマテーク/2021.2.9)

監督 脚本:MTJJ。2019年。日本公開2020年。この中華アニメがすごい!という事で昨年末見逃していましたがシネマテークにてアンコール上映していたので鑑賞。のはずでしたが、ヒッチャーと連続で見たためか、やっぱりアニメがダメなのか、中盤から気が付いたら記憶が飛び飛びになっており...。という。映画館で金払って寝るのだけは一番辞めたいと心に誓っているのに、無理でした。不思議な、というか見たことない映像なのは間違いなく、すごく面白い画面になっていたのは確か。円盤または配信になり次第、観ます。。

 

・ヒッチャー ニューマスター版 (原題:The Hitcher) - 3.7/5.0 (名古屋シネマテーク/2021.2.9)

監督:ロバート・ハーモン。脚本:エリック・レッド。1986年。何かでお勧めされておりニューマスター版(2021年)が劇場公開という事で鑑賞した。冒頭の、ヒッチャーと出会い"追い掛け回している!"と気づいた所がピークだったかなというのが正直な感想。中盤の女の子と逃げるくだりが長く展開されるところはかなり冗長に感じてしまった。もっと派手に分かり易くギャー!とやってほしかった。97分の作品だが、80分台に出来たでしょという気持ちしかないあ。終盤の展開は割と硬質な雰囲気で、どうしてもヒッチャーを殺さなければと突き動かされる主人公、殺してフゥとやってそのまま夕陽をバックにエンドロールの感じも良かった。2021年に初めて見た自分にとってはこういう感想になってしまったかなという感じは否めない。あと、86年の演技なのか、主演のC・トーマス・ハウエルの演技がマイケルJフォックス風だった。

 

・世にも怪奇な物語 (原題:TRE PASSI NEL DELIRIO) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.2.8)

監督:ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニ。1967年。エドガー・アラン・ポーの小説を原作に短編3本を各監督が製作したオムニバス作品。フェリーニくらいしか監督としては知らずに鑑賞したが、フェリーニが圧倒的な存在感を放っていた。何と言っても自由奔放なサイケ表現。前2作がわりときちんと素直にホラーテイストで作り上げているのを見たあとだと余計に自由度が伝わってくる。お話は、馬にとりつかれる話、ドッペルゲンガーに翻弄される話、アル中の俳優が女児の霊に振り回される話と、どれも似たようなレベルの話だった。フェリーニのが怪奇かと言わるとそうでもないが、あれを作った監督自身は怪奇だと思う。イメージが変わった。素直に言ったら2話目のルイ・マル監督の作品が一番怪奇っぽくて良かった。

 

・花束みたいな恋をした - 4.3/5.0 (センチュリーシネマ/2021.2.8)

監督:土井裕泰。脚本:坂元裕二。2021年。噂のコレ。正直言ってタイトル、予告編、キャスト、どれを取っても間違っても観ないタイプの映画なのですが、どうやら良いらしいと...。アトロクの課題作品にもなり、いよいよ観るか..重い腰を上げて鑑賞。序盤の展開は"え~これが評判いいの?"みたいな状態で見てましたが、中盤から終盤にかけて物語が、というか二人の関係性がグググっと動きだした辺りから急速に画面の濃度が濃くなり、序盤から元々出て来る単語やアイテムが完全に"自分のものなソレ"だった事も手伝って一気に"自分の物語"になっていきました。ラストのファミレスのシーンでは"あの席"に若い二人が座り、"あの頃の自分たち"とまるっきり同じ会話を始め...これだけでもう涙腺が、、という感じでしたがその後さらに実際に過去の2人がそこに座っている描写になった途端に落涙。大林宣彦映画にも通ずる"もう取り戻せない失われたイノセンス、そして確かにそこに居た自分"という描写にめっぽう弱い僕は泣かずには見られませんでした。自分の過去の歴史とも勿論重ねて見える瞬間もあるし、どう考えても"自分の"映画になってしまい、最高!と言わざるを得ない出来でした。劇場には若い女性のお客さんがたくさんみえましたが、これはどう考えてももう少し人生経験した大人な人たちの方が刺さる映画ではないでしょうか。良かった。(追記:2.13に2回目鑑賞)

 

・横道世之介 - 3.9/5.0 (DVD/2021.2.7)

監督 脚本:沖田修一。原作:吉田修一。2013年。アトロク「佐々木インマイマイン」評をはじめ度々名前が挙がる今作、「佐々木~」鑑賞前に観ておかないとなと思いタイミングがあったので鑑賞。てか、160分は長い。全体的にワンカットのシーンも多く、お話がまずゆったりとしているし、台詞や演出にもエンタメ的な分かり易く大きな展開が無いため人によってはかなり冗長に感じるのではないかなと思った。この描き方だし時間は絶対に掛かるのですが全然好きな方だった。終盤手前で明かされる"世之介の末路"に大仕掛けがあるのですが、これに向かってもっとウェットにしていってもいいのかなと個人的には感じたし、ラストの母からの手紙も情緒過多くらいの方が、もっとグッとくるものになったのにな~と思った(あくまで個人的な希望としては)。登場人物みんな良い味を出しており、飽きる事なく最後まで観る事が出来た。中でも、雪が積もった自宅前での世之介とショウコさんのキスシーンは、最後真上からのアングルになり画面全体が真っ白になっていく様が非常に美しかった。先述したロングショットも人によってはダメかもしれないけれど、この映画のそれはどれも構図や狙いがはっきりとされていて、とても良かった様に思う。誰もが世之介を思い出した(体験としてそんなものはないのに)。7~80年代の日本映画の様なテイストで良かった。

 

・クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険 - 3.5/5.0 (DVD/2021.2.7)

監督:本郷みつる。脚本:本郷みつる、原恵一。1996年。前回見た「ヤキニクロード」がお話無しの超微妙な作品だったので、ネットでいろいろと調べてこれなら大丈夫だろうと思い鑑賞。結果から言ったらこれまた微妙でした。まず、圧倒的にスケールが小さい。これ劇場版でやる意味ある?そして、画がテレビサイズのアニメ過ぎる。劇場の大きなスクリーンで見られる想定での工夫が無さ過ぎる。強いて言えば、バスで山道を行く海から道路へとフォーカスが変わるショットくらいでしょうか、映画的と呼べるのは。90分台の作品なのに長く感じたし、長々見てもお話が無く面白みに欠けまくった。つまらなさで言えば「ヤキニク~」の方が酷かったけれど、スラップスティック路線だった事を思えばそっちの方が良かったのかなとさえ思えてくる。もっと点数低くても良かったか?

 

・シュリ (原題:쉬리/SWIRI) - 3.8/5.0 (DVD/2021.2.6)

監督 脚本:カン・ジェギュ。1999年。現在、独自の表現で第一線をひた走る韓国映画はこの作品から始まった(らしい)。派手なアクションシーンの連発(手持ちカメラなのは良いがあまりにもブレまくりで若干何が何だか感があるのが少し気になるが)、リアルかつバカでかい銃声で、大エンタメ作品としての見ごたえをまずは確保。ドラマとしても、中盤のスパイの正体が恋人だと分かってしまう切ない切ないシーン中心に据え全編通して良かった。ラストの銃殺シーンの顔で魅せる演技はお見事!クライム、アクション、ラブストーリー、全てがからまって濃い味になった単純に楽しめる作品!今でこそそこまで"すげえ!"とはなりませんが、99年当時に劇場でコレを見たらさぞかしシビれ、韓国映画に勝てないなと思わされたでしょう。俳優陣を見てみても、今活躍する人たちばかりで、韓国エンタメ映画の始まりを見た、という感じ。良かった。

 

・市民ケーン (原題:Citizen Kane) - 3.8/5.0 (Amazon Prime Video/2021.2.5)

監督 脚本:オーソン・ウェルズ。1941年。日本公開1966年。「Mank」鑑賞に備え、鑑賞。80年前の作品とは思えないほどに今に繋がる映像表現が多くまずは真っ先にそれに驚いた。特にカットからカットへのつなげ方に様々な工夫を凝らしてある様に感じた。重なっている部分を作ってみたり、写真を大写しにしたと思ったら実写に繋がっていったりなど、クロスフェードの仕方にも多方面からチャレンジが観られる。豊かな表現だと思う。話自体もとっつきにくそうなイメージで勝手にいたが普通にドキュメンタリードラマとして見やすく面白かった。ケーンという個性あふれる男の盛者必衰を描いた。

 

・花と沼 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.2.4)

監督 脚本:城定秀夫。2020年。[OP PICTURES+FES]にてようやく鑑賞。時期的に賞レースものタイミングで「アルプススタンド~」が高評価されているなか、本職?の最新作。他の作品は「悦楽交差点」「舐める女」「性の劇薬」くらいしか見ていないのですが、どの作品にもかなりクセのあるフックが仕掛けられており(しかもユーモラス且つ"ちょっとした仕掛け"という何ともスマートなわきまえ方!)、勿論中身はピンク映画なのですが、それだけに終わらないドラマが展開されていく所が非常に魅力的だなと3作+1作観て感じてます。この作品も全体に漂う薄ら面白い感じ(褒めてます)、それでもやっぱり終盤に待ち構える"何かを抱えるもの同士の地獄の屈折ディスカッション"、でもでもやっぱり最後はすれ違う二人。それだけでも十分にドラマとして素晴らしい出来だったと思いますし、2人が最後に"気持ち悪いですよ""あなたも""いや、自分の方が!"と言い合うと、心の陰キャがザワザワして急にむちゃくちゃ自分事の様な距離感に入ってくる感じが最高に上手い。素晴らしい。ピンク映画となるとどうしても見る環境もハードル上がりますし、ぜひとも城定監督にはこれからも「アルプススタンド~」の様なドラマものも定期的に撮り続けて欲しいです。ピンクも公開されたらなるべくチャレンジします!失敬牧場w

 

・そこのみにて光輝く - 3.5/5.0 (Amazon Prime Video/2021.2.3)

監督:呉美保。脚本:高田亮。2014年。結論からいうと自分の映画リテラシーが低いのかあまり響かなかった。主人公綾野剛がなぜそこまでヒロイン池脇千鶴に惹かれるのかもイマイチ腑に落ちなかったし、菅田将暉の役にもノレなかった。もちろん、池脇・菅田の家庭が悲惨で大変な目にあっているのはよく分かるし、そこから抜け出すためにもがく姿、うまくいかない姿、それでも光を求めてあがく美しさ、そこに手を差し伸べる綾野剛が表現する人間愛、家族愛、的なものに感動するという理屈はよく分かるのですが、どう頑張っても登場人物たちに感情移入が出来ずでどうにもならなかった。映像自体は美しくも、暗く、何ともならない現実を醜さ、それでもそこにある美しさの両面を映し出す非常に優秀な画面だったとは思いますがお話が。ね。

 

・舐める女 - (TUTAYA TV/2021.2.2)

監督 脚本:城定秀夫。2016年。ピンクフェスに備えて「悦楽交差点」「性の劇薬」に続き鑑賞。「悦楽~」よりも全然面白かった。IQの低い設定や脚本も笑えて、逆に良かった。プロット自体は結構凡庸だったのでラスト10分に差し掛かり"どうやってオチつけるんだろう"と思って観てましたが、さすが城定作品。あっさりとは終わらず。まさかの"水道屋とSM嬢が恋人だった"設定にはしてやられた。ベッド上の夫婦が背中合わせだった中盤を通過し、最後には向かい合って寝る事が出来た二人のハッピーエンドに安堵。牛乳をメタファーアイテムとして使うのも何とも安易で良かった(良いのか?)。

 

・マウス オブ マッドネス (原題:IN THE MOUTH OF MADNESS) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.2.2)

監督:ジョン・カーペンター。脚本:マイケル・デ・ルカ。1994年。90年代カーペンター作品。ホラーの様なミステリーの様な不思議なテイストの今作は、とにかくラストの切れ味が鋭すぎて全部持っていかれた感じ。これを、"自分は小説の中の人物だった"と捉えるのか"映画にされていた"と捉えるのか、"自身の存在自体が無かった"と捉えるのか、で結構印象は変わってくるんですが、衝撃度はどれを選んでもすごい、という感じで(しかもラストカットの大笑いで終わりというのもメタ的表現でもあり、皮肉でもあり...)ラストで一気に好きになった作品でした。正直、描写や作りもののクオリティとか、道路で自転車とすれ違うシークエンスなどもまあ"ふーん、「変な」感じにしたいのね"くらいのモノで退屈にも感じてましたが映画って最後まで観るといい事あるなと思いました。(日記)

 

・KCIA 南山の部長たち (原題:남산의 부장들) - 4.0/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.2.1)

監督:ウ・ミンホ。:2018年。日本公開2021年。ウ・ミンホ作品初鑑賞。史実に基づいた創作という事でしたが、アトロクでの評論を聴いていると結構実際に起こったままの部分もあるようで非常に興味深くまずその評論を聴いた。特にラストの車に乗り込んでからのシーンは実際に起こったことで、大統領部屋を盗聴しに潜入する所はフィクションというバランスが何とも映画としてきちんとエンタメしていて良かった。あの少し前くらいからイビョンホン演じる主人公の心の最後の砦みたいな部分がグラングランし始めて、作品としてもクライマックスに向けてドライブしていく感じと相まって観ていて前のめりになった。良かった。これは映画の内容とは関係ないですが、約120分の作品、40分x3で分けたとしたら2ブロック目(41-80分)をいかに興味の持続と物語のコシを出していく事が出来るのかが良い作品とそうでない作品の分かれ道なのかなーとも何となく見ながら感じた(あくまで自分にとっては)。この作品は若干だけ中盤が冗長に感じてしまいそこはなんか勿体ないなと思った。全体的に硬質な雰囲気で良かった。

■2021年1月に観た映画

36本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ホステル (原題:Hostel) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.1.31)

監督 脚本:イーライ・ロス。監督総指揮:クエンティン・タランティーノ。2005年。日本公開2006年。タランティーノがどこまで関わっているのかはわかりませんが、少なくとも前半のおっぱい盛りだくさんシーンや、意味のない会話シーンなどは明らかでしょう。お話的にも単純明快で、"異国の国に行ったらヤバイ事態に巻き込まれてしまう"ジャンル映画プラス、スプラッター映画といった趣。ゴア描写もしっかりと演出されており、怖くない、きちんとカラっとゴアゴアしていく感じは良かった。主人公?の男がきちんと謎を解明するために戦ったり、脱出したり、ラストは復讐を果たして、起承転結しっかりとある非常に敷居の低い良く出来たスプラッタースリラーでした。最高!

 

・性の劇薬 - 2.6/5.0 (DVD/2021.1.31)

監督 脚本:城定秀夫。2020年。BLの人気作品の映画化?らしい。BLという時点でかなりハードルが上がってますが、とりあえず感想だけで言うと、"お、おん。。。"という感じ。でもこれってただただゲイの変態医師が拉致監禁して強姦してるだけの内容だし、終盤のなぜか恋仲(ノンケが掘られたらその人もホモになってしまう説はやはりその通りなのかという解釈)になる展開もはっきり言って意味不明だし、かなりクソな代物を少なくとも90分間何とか見続ける事が出来るものにしているのは城定監督の手腕と言えるのでないでしょうか。まあめちゃくちゃギリギリだけど。伏線たりえるショットや、元恋人が死んでいて花びらの舞うショット、終盤海での一件など気の利いたシーンが散見された。ピンク映画もまだ慣れないのにBLは、キツい。65分にして欲しい。

 

・クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード - 2.5/5.0 (DVD/2021.1.29)

監督:水島努。脚本:水島努/原恵一。2003年。「オトナ帝国~」「戦国大合戦~」「ロボとーちゃん」など、所謂"名作"と言われるクレヨンしんちゃん劇場版は見てしまったので他に評判が多少なりとも良さそうなものも見てみたいなと思い、こちらを。一言で言えば、何故か追われている野原一家が何故か90分間逃げているだけでストーリーも何もあったもんじゃないという。時系列で言うと「オトナ~」「戦国~」の次の作品にあたり、スラップスティック路線にグイっと進路を戻した形に。ですが、小出しに繰り返されるギャグがひたすら面白くない&何が面白いと思ってるのか画が突然劇画タッチになったりと、とにかくつまらない(劇画調の所は、シロで終わっとけばすごく面白かったのに)。話もない、盛り上がりもない、ギャグが詰まらない、ふざけてんのか?と率直になってしまい、マジでいい所が見つけられなかった。非常に駄作。

 

・続·ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 (原題:Borat Subsequent Moviefilm: Delivery of Prodigious Bribe to American Regime for Make Benefit Once Glorious Nation of Kazakhstan) - 3.8/5.0 (Amazon Prime Video/2021.1.29)

監督:ジェイソン・ウリナー。2020年。コロナウイルス蔓延以降の映画作品としては結構スピード感ありつつ、アメリカ大統領選挙にもタイミング合いつつ、かなり風刺の効いたソリッドな作品でした。もっとハチャメチャに下品なのかなと思ってましたが意外と控えめで安心感もあり(?)、良く言えばフェリーニの「道」の様な味わいのロードムービーでもあった(ない)。中盤までは"くだらね~"くらいで見ていましたが、ラストの"コロナは実は自分が騙されてバラまいていた"という何ともショッキングな展開が非常に面白かった。娘と父親のバディもの、そしてジェンダーを乗り越えていく作品としてドライブしていくのも頼もしくて良かった。前作が観てみたくなった。

 

・ミセス ノイズィ - 3.5/5.0 (伏見ミリオン座/2021.1.29)

監督 脚本:天野千尋。2020年。昔なつかしい"騒音おばさん"(2005)を元にしたフィクションドラマ作品。評判が良かったので期待していたのですが...イマイチ。極序盤こそ楽しく見ていたのですが早い段階から色んな部分が気になって来て割とげんなりしてしまった。画の質感がまず苦手。各役者の演技が苦手。自主映画なので仕方ないとも思いますが。。そして各キャラクターがクズ過ぎて観れば見るほど残念になっていく。展開も脚本もご都合主義的で"ふ~ん"としか思わないし、終盤のなぜかいい話気になるのも腑に落ちないし、ツッコミどころ多すぎるし、でなんだこれ状態。別に見なくてもいいし、暇なら見てもいいしという感じ。騒音おばさん役の人の声がぼる塾の田辺さんだった。アフレコしてんのか。

 

・犬猿 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.1.28)

監督 脚本:吉田恵輔。2018年。直近で「愛しのアイリーン」が非常に良かったので勢いで他作品も鑑賞。前半笑いつつも後半段々と笑えなくなってくる展開は吉田監督十八番か。ニッチェってどうなんだろと思ったがこれまた絶妙なバランスの好演。クライマックスに向けて二つの"キョウダイ"の物語が交錯して盛り上がっていく、のですが、そこの魅せ方がどうしても安易に感じてしまって興ざめ、且つ登場人物たちの幼少期の微妙過ぎる振り返り演出、まさかのリストカットで致命傷()!、何よりも陳腐なエンディング(まあ重苦しすぎないと言えば良いのかな)、と、終盤に行けば行くほどにテンションが下がってしまってこの点数。途中まではほんと面白かったんだけどなあ。新井浩文演じる兄ちゃんが一番実はいい奴なんじゃないかなと思えた。

 

・コリアタウン殺人事件 (原題:Murder Death Koreatown) - 3.1/5.0 (Amazon Prime Video/2021.1.28)

監督脚本:不明(という設定?)。2020年。近隣で起きた殺人事件を追う無職の男のモキュメンタリーフィルム。"本物では?"と評判らしいですが、そういう風に思えるのは幸せ者だな~と思った(日記)。調査()と共に徐々に自分勝手に変貌していく主人公、辛抱強く付き合っていた恋人もいなくなり、何かに取り憑かれた様な男の行動は怖いと言えば怖い、か。実際の映像も挟み込んでいるそうです。

 

・SKIN/スキン - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.1.27)

監督 脚本:ガイ・ナティブ。2020年。短編を先に観たためかイマイチ響き切らなかった。基本的に主人公に都合の良い脚本すぎて何だかなという感じですし、レイシスト男が何故突然改心したのかもあまりよく描かれないまま話がコロコロと転がっていき、思い入れる隙も無く勝手に着地して勝手に終わってたという印象。"実話を元にしたフィクションです"と断りがあってからの本編開始だったので映画的なドライブ感が希薄になっても仕方ないかなとは思う。"こういう事実があるし、今も起こっている話なんだよ"という部分では勉強になった。映画的な盛り上がり、面白さ、ドライブ感は無かった。

 

・愛しのアイリーン - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.1.27)

監督 脚本:吉田恵輔。2018年。「ザワールドイズマイン」の新井英樹原作漫画の実写化。新井作品での映画化は今作が初。「ヒメアノール」でジャニーズ・森田剛をぶっちぎりのイカれ俳優に仕立てあげた吉田恵輔作品。田舎に渦巻く時代から取り残されたしきたりや、毒親、子供部屋おじさん、国際結婚という名の外国人の人身売買等、人間の暗部を露悪に見せ続けた。前半は少しヌルっとしたテンポや演技、表現に感じたが後半にかけて一気にドライブしていく画面にくぎ付けになった。冷静に観れば醜悪な犯罪者である主人公への感情移入が後半突き放された様に感じるのは原作への深い理解の様な気がする。アイリーンとババア(は息子のみに向けられた視線だが)のラストシーン、二人の交わらない視点の絡まり合いに、荘厳な自然描写に、落涙。最初は137分が長尺に感じられたが、これだけじっくりと展開させていく演出が物語の重厚さを生んでいるのでこの尺でも納得の出来。もちろんもう少し短く出来た箇所もあるとは思うが、これはこれで良いのではないかと感じる。原作製作時に作者が""フェリーニの「道」を参考にした"という発言がある様でそれを知り非常に腑に落ちた。

 

・ディパーテッド (原題:The Departed) - 4.0/5.0 (Blu-ray/2021.1.24)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:ウィリアム・モナハン。2007年。スコセッシ作品、こちらも結構好きでした。緊張感あるんだか無いんだか、めちゃくちゃ見やすくて面白かった。演者の演技もさることながら、パンパンとテンポと歯切れの良い編集でスピード感が良かった。ヒッチコック風な音楽や影を使ったサスペンス演出などもベタで思わずクスっと笑ってしまう感じ。ラスト5分でのバタバタとみんな死んでいく感じも全部台無しにする感じで最高。交換探り合いクライムサスペンス。ヴェラ・ファーミガが非常に美しかった。

 

・悪人伝 (原題:악인전/The Gangster, The Cop, The Devil) - 4.1/5.0 (DVD/2021.1.23)

監督:イ・ウォンテ。2018年。日本公開2020年。みんな大好きマ・ドンソク主演作品、何よりもマブリーの画力。まずは登場するや否やサンドバックパンパン、実はこの中身は...という最高な登場シーン。まあまあDQNな暴力刑事とのバディムービー。アクションだけでなくカーチェイスも満載で盛り盛り仕様には笑ってしまったが相当無邪気に楽しめました。ラストバトルはまさかの法廷でシュールに締まった。ラストシーンの獄中での再会シーンからのマドンソクの激ヤバ笑顔が最高で5億点。中盤、激しくやられて思わず"まけぼの"スタイルになるのが面白過ぎた。

 

・SKIN 短編 - 4.0/5.0 (DVD/2021.1.23)

監督:ガイ・ナティブ。2018年。「SKIN」本編の前にこちらを。20分の超短編ですが、非常にタイトにきちんと構成されており体感としては12.3分?に思えるくらいに鋭くQ&Aしてズバッと終わる作品。一番最悪な"スカッとアメリカ"。まだ「SKIN」本編の方を見ていないので何とも言えませんが、より楽しみになる内容だった。DQN家族過ぎるだろ。

 

・エクストリーム ジョブ (原題:극한직업) - 3.9/5.0 (DVD/2021.1.22)

監督:イ・ビョンホン。2018年。日本公開2020年。自分が観ている韓国映画では珍しくコメディアクション的な一作。基本的に韓国の映画ってどのジャンルでもコメディみたいなタッチになる瞬間って多いなといつも思っているのですが、こういう"ジャンルもの"としては初でした。普通に面白いし笑えるしってのがまずは凄いなと。飽きさせない展開も含めサービス精神旺盛な韓国映画ならではだなと感心しっ放し。ラストの各キャラクターたちの正体披露からのスラップスティックなアクションシークエンスが最高(ラリったあいつとかね)!欲を言えば95分とかそれくらいにまとめてくれた方が個人的にはより好みでした。でもめっちゃ面白かった。

 

・ルクス エテルナ 永遠の光 (原題:Lux Æterna) - 3.9/5.0 (センチュリーシネマ/2021.1.22)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2019年。日本公開2020年。ギャスパーノエ新作は限界映画地獄撮影現場メタフィクション物語。限りなくワンシチュエーション作品に近い構造で50分尺の中編?作品。ですが...そう簡単に言葉で表せる映画になるハズがもちろん無く、画面は常に2分割、セリフも被りまくり、特につながりもなく同時刻別場所で起こっている様子を並べているのでかなり見づらさもあり(それでも何となくセリフのタイミングはずれてたり見やすい様にはしてくれています優しいギャスパー)。様々な事情でカオス化した映画撮影現場はカオスのまま撮影に突入。機材トラブルが更なるカオスを引き起こし、神になるシャルロット・ゲンズブール。中盤までは結構面白く見ていたのですが、ラストの混沌へと向かっていくさまが何だか何となくグチャグチャして来ていつの間にかラストという程度だったので、もっと地獄を見たかったなという感じでした。ラストのシャルロット・ゲンズブールも劇中では相当キマって神々しい姿になっている感じのていでしたが割と普通に見えてしまい、何だか。もうちょっと尺とってもいいからラストに向けての盛り上がりを激しくして欲しかったかなという感じ。過激なチカチカ演出はかなり面白かった。こんな映画見たことない!その時点で勝ちですが。

 

・セルフィッシュ サマー ホントの自分に向き合う旅 (原題:Prince Avalanche) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.1.20)

監督 脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン。2013年。何かの雑誌で推されていたがずっと何んとなーく食指が伸びずにいた一作(ジャケットが悪いですよね)。基本的には男2人が道路に線を引くだけのロードムービー。他の登場人物はほぼ無し。週末に街に行ったエピソードや主人公の姉のエピソード、すれ違うトラック運転手などで人は出て来るがごくわずかな非常にミニマルな世界観が、内相的な本作の本質とマッチしており心地よかった。「スイスアーミーマン」的な野外男旅もの(全く違うけどな!!)。所々で、台詞無く音楽とスローな映像だけで繋いでいくブリッジの様なセクションがあるのですがそこも地味に構図なども練られており、良かった。90分台と短い作品なのですが、もう少しこの2人の旅を見ていたいなと思わせるような味わいだった。

 

・アメリカン サイコ (原題:American Psycho) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.1.19)

監督 脚本:メアリー・ハロン。2000年。クリスチャン・ペイル演じる主人公のサイコパスシリアルキラー話。印象的だったのは、全編にわたり登場人物たちの"名前"が不明確な所。間違えたり、間違えられたり、そしてそれを誰も気にしてなかったり。いろいろな掛け違い、勘違い、思い過ごし、無駄な自尊心などが重なって主人公がシリアルキラーになってしまうわけですが、なってからは殺人シーンの連続と名サスペンス、スリラー映画のオマージュなどで進んでいき結構楽しく見る事が出来た。ラスト付近、自分の行いを全て弁護士に打ち明けるがそれすらも取り合ってもらえずにラストシーンの独白部へと向かっていく。監督曰く、オープンエンドで観るものに委ねたそうですが、もう少し分かり易くしても良かったのでは。と。オープンエンドオチは個人的にはあまり好きではなく、表現から逃げるのは良くないとも思う。

 

・ファイト クラブ (原題:Fight Club) - 3.7/5.0 (Amazon PrimeVideo/2021.1.18)

監督:デヴィッド・フィンチャー。1999年。超有名作を今更ながら。フィンチャー作品は「ゴーンガール」「ソーシャルネットワーク(寝落ち、ちゃんと見たい)」「セブン」と観てきましたが相性が微妙かもと思っていましたが今作も同じく。微妙でした。勿論、つまらなくないし、2時間20分長いなと思いながらもちゃんと見れましたけども、まあ。1999年という時代や背景を想えばそれなりの衝撃があったのかも知れませんんが2021年に観てもあまり響かないかもなあと言うのも正直な所で。サブリミナル演出も仰々しくて何だかしっくり来ないし、所々メタギャグというかそういう脚本の部分で笑える所はありましたが最後まで観てもあまり感動は得られなかったかなという印象でした。以上。

 

・リトル ミス サンシャイン (原題:Little Miss Sunshine) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.1.17)

監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス(夫婦)。2006年。評判高いファミリーコメディロードムービーを。第79回アカデミー賞にて作品賞を含む4部門でノミネート。トニ・コレットが出てきただけでもう不穏な事が起こってしまうんじゃないかと不安になるのですが今回はもちろんそんな事は無く安心してドラマが進んでいく。キッズ・ミスコンを受けに1200kmの珍道中。スっと見られて良かったのですが、107分と短めな尺で登場人物6人全てのエピソードを含みつつ壮大なロードムービーにしているので正直、各個人のキャラクターの掘り下げ不足を感じて感情移入しきらなかった。スティーヴ・カレルの様な俳優がコミカルに活躍したり同性愛者として描かれたり、爺さんがドラッグをキメて翌日死んじゃってる感じ(しかも旅先で!)とか、ウェスアンダーソン作品の様な味わいを感じた。長い尺の映画はあまり好きではないですがこれに関しては150分くらいにしてもっとみっちりとキャラクターの歴史を掘り下げてからラストへ向かって着地するともっと感動的だったのになあと思った。また、Blu-rayの特典映像にある4バージョンのエンディングが良かった。オリーヴ役のアビゲイル・ブレスリン考案のミスコンのトロフィーを盗んで帰るラストが可愛かった。

 

・クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん - 3.8/5.0 (DVD/2021.1.16)

監督:高橋渉。脚本:中島かずき。2014年。YouTubeでアトロク過去音源聴いていたら辿り着いた一作。もちろんそれらの影響で「~オトナ帝国」「~戦国大合戦」は鑑賞していましたがそれ以来のクレヨンしんちゃん作品。挙げた2作は共に原恵一監督作なのですが今回は高橋渉氏。アニメ版、映画版ともにずっとしんちゃん作品と関わってきた人物であるだけに、原作譲りのナンセンスギャグの連打でキマりまくる。アトロク情報ですが、湯浅政明が絵コンテまで担当をし、終盤のスペクタクルドラッグ描写などを作り上げた。と、スタッフ陣もこれまでのしんちゃん作品とゆかりの深い人間でこれまでをブチ壊そうと試行錯誤が伺えつつもしっかりと結果を出し切った作品の様に思う。ちゃんとギャグも面白いし、お涙頂戴になってないし、でもガッツある物語に仕上がっているのは結構すごいのではないでしょうか。トトロからトイストーリー、ドラゴンボールとBTTF、かぐや姫の物語を通過してラストの超絶ドラッギー描写でキマって大ラス、転校生譲りの"頑張れ俺!!!"で大号泣。良かった。

 

・A GHOST STORY ア ゴースト ストーリー ‐4.0/5.0 (Amazon PrimeVideo/2021.1.15)

監督 脚本:デヴィッド・ロウリー。2018年。A24製作なんとも独特な作品。セリフはほぼ無いのにも関わらずしっかりと登場人物の気持ちや物語の進行が観てとれる秀逸な画面(まあそんなにお話自体は無いのかも知れませんが)。"死者がその場から離れられずにいる"のは正に地縛霊そのもので、プラスアルファ、過去の自分や恋人への念が籠りより一層その場から動けなくなってしまう。今作が面白いのは、そこに居続けた結果、未来都市(?)のシーンになった時に主人公が投身自殺を図ると、はるか昔へとタイムリープをしてまたその土地に返り、再びやってくる自分と更にそれを観ている幽霊の自分と遭遇するという何とも壮絶なラストプロット。そして主人公の恋人が壁の中に残したメッセージを読んだ瞬間に実態が無くなってしまう主人公。これがまさに成仏なのでしょうか。一体彼が最後に何のメッセージを読んだのかはわかりませんが、より解釈の幅が深まるラストカット。非常にA24らしい攻めた面白い作品だった。死者が繰り返しその場に居続けてしまう、死者を想う残された人たちの気持ちに触れる、みたいなプロットは、大林宣彦作品をも連想させた。嫌いなはずがないじゃない。

 

・弁護人 (原題:변호인) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.1.15)

監督 脚本:ヤン・ウソク。2013年。日本公開2016年。ソン・ガンホ演じる高卒弁護士が淀んだ国家権力と弁護士生命(または自分自身)を掛けて戦う。やはり何と言ってもソン・ガンホの演技。素晴らしかった。終盤の裁判シーンでの迫力なんかは、誰もが緊張感と共に切迫した想いに頑張れと思わず応援したくなるのではないでしょうか。お話は実話テイストというか、モデルが居るようですがあくまで寓話テイストでわりと都合よく進んでいくのですがそこは映画的嘘という事で許せる感じかなと。

 

・CURE キュア - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.1.14)

監督 脚本:黒沢清。1997年。先日「スパイの妻」を劇場鑑賞し、アトロクのインタビューや秘宝での記事を読み聴きし俄然興味が沸いていたのでここらで代表作をと思い鑑賞。うーん何からどうしてコメントしていいのか分からないw。もちろん面白かったし「スパイの妻」とかより好きだったんですがどうやってこの"お話"部分を言葉で感想にしたらいいかが分からない。映像的には、緊張感のある長回しのシーンや謎のカットバックが入ったり、暗闇からボワァッと浮き上がる恐怖感だったり、かなり独特で鋭さのあるもので刺激的だった。調べてみると「リング」が登場するのが翌98年なので所謂「Jホラー」的な表現がこの辺りから一気に噴出したという感じなのでしょうか。「cure」以前のOV作品などでもその片鱗を見せていたとの事なのでそちらも見ていきたいなと思う。最近発売された4Kリマスター版Blu-rayにはエンディングの更に続きがあるらしく、購入を迷うところ。

 

・スポットライト 世紀のスクープ (原題:Spotlight) - 3.7/5.0(U-NEXT/2021.1.13)

監督 脚本:トーマス・マッカーシー。2015年。日本公開2016年。アカデミー作品賞。ボストングローブ紙の取材チーム"スポットライト"が暴く神父による児童虐待の実話ニュースを元に作品化。すごく丁寧に作られており、説明少な目でもしっかりと内容の把握ができ、事件を理解し物語を追っていく事が出来る脚本がまずは見事。実話が元なので当然なのですが、9.11の影響で取材が後回しにされたあたりなど観ている側が"頑張れ!"とつい思ってしまう仕組みもニクい。実際にあのタイミングでそうなったのかはわかりませんが、映画的には非常に良いタイミングで置かれており良かった。地味な作品なので点数は伸び切らなかったけれど、満足度は高い。マイケル・キートンがかっこよかった。

 

・狩人の夜 (原題:THE NIGHT OF THE HUNTER) - 3.8/5.0 (DVD/2021.1.13)

監督:チャールズ・ロートン。脚本:ジェームズ・アギー。1955年。チャールズ・ロートン作品初鑑賞。右手に"LOVE"左手に"HATE"のタトゥー男のサイコキラーサスペンス。ヒッチコックが「裏窓」と同時期くらいの作品で同時代性ももちろんあり、似ている部分もあるがこちらはもう少し信仰の匂いがしたりと当時のアメリカの様子を想像する様な隙間がある(今観ると)。有名な(らしい)川での馬に乗った犯人のシークエンスを挟み、前半、後半と違った作品かと感じる程ぱっきりと描き方が変わっており、面白かった。ラストの展開があまりだったけれど。

 

・悦楽交差点 - (TSUTAYA TV/2021.1.12)

監督 脚本:城定秀夫。2016年。「アルプススタンドのはしの方」の城定作品、ピンク映画初鑑賞。アトロクの過去放送を聴いていたら高橋洋二氏の16年年間ベスト4位として紹介しており("そろそろピンク映画以外も撮って欲しい才能"的な)、気になっていた作品。監督の名前だけを先行して知った所で昨年夏の「アルプススタンドの~」が公開、鑑賞し一気にファンに。監督の本領域であるピンク映画の代表作でもある今作をセレクトしてみました。途中までは"へ~きっとこのストーカーの子供を妊娠して~バッドエンドかなあ"とか思って観てましたが、あれよあれよという間に違う方向へ物語が進んでいき、後半からまた違ったドライブ感を見せて普通に楽しめた。特にラストシーンの読唇できてしまうストーカー男への無常さが何とも言えない悲劇なオチで感心した。性愛描写の尺だったり、画の感じなど勿論慣れない部分はありますが、結構楽しめた。来月からスコーレにてピンク映画フェス2020で上映もあるとの事ですがスケジュールの都合で全部は見られないと思うのでこうして見られる分は観ておく作戦。次は「舐める女」、イキます。

 

・夏の遊び (原題:SOMMARLEK) - 3.7/5.0 (DVD/2021.1.12)

監督 脚本:イングマール・ベルイマン。1951年。ベルイマン監督作極初期の一作。将来に悩むバレリーナのひと夏の回想物語。と、自己解放。モノクロが正に物語とシンクロしている様で非常に美しい。51年の作品(70年前!の技術など)と思うと、約96分間キリっとした画面が続く事がまずすごいなと。話自体はまあそこまでなのですが、白い画面の希望や楽しさみたいなものと対で黒い画面の不安や悲しみみたいな二面性を描いていく表現が見事。点数に関しては、基本的にお話の面白さを基準に点数の占める割合が高いのでこの点数にしましたけど、描写やセリフ、表現の鋭さは素晴らしかった。

 

・新感染半島 ファイナル ステージ (原題:반도/Peninsula) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.1.10)

監督:ヨン・サンホ。2021年。コロナ一色だった2020年が明け21年元旦公開の大エンタメ映画。前作「新感染」の4年後の世界という事で続き物っぽくもあるが実際観てみると全然続き物じゃないという感じで。まあそんな事は割とどうでもよくて、前作よりも大幅に路線変更して超エンタメ作品に。今作はゾンビは出て来るがあくまで物語上の"装置"としてとしか存在しておらず、メインは超絶CGによるカーチェイスポストアポカリプス作。最終的にはマッドマックスになり、パニック脱出ものになり、大団円という感じでもう山盛り過ぎて元の味が分かんないくらいですがお正月に気軽に観る作品としては満点じゃないでしょうか。中盤なんだか邦画だったらEXILEとかが出てきそうなよく分かんない「サンダードーム」オマージュ(これじゃない感も含め)あたりで眠気が襲いましたが後半にかけて一気にドライブしていったので何だかんだ面白かった。感動シーン()でスローモーションからのジャーン!と大音量でそれっぽい劇伴が流れてくるのには相変わらずウンザリでしたが、まあ、ね。ラストも過剰な"泣かせ演出"がありましたが、まあ良しとしましょう。劇場は200人近いキャパがほぼ埋まっていて、左右を高校生のグループに挟まれながら観たのも年始のエンタメ大作を見に来た感があり良かった。

 

・アメリカン グラフィティ (原題:American Graffiti) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.1.9)

監督 脚本:ジョージ・ルーカス。1974年。いろんな評や普通に映画トークの中で出てくるクラシック・タイトルですので見ておかない訳にはいかないので鑑賞。60年代のアメリカを描いた作品。結論から言えばかなり楽しめた。話自体は何てことないとある一晩の話を群像劇的に見せていっているだけなのですが、その群像っぷりが個人的には割と響いて良かったなあと感じている。流れもラストに登場人物たちの物語が集約していく作劇もうまいし。それぞれの青春の一夜がそれぞれの仲間たちとの一夜に自然になっていく様が良かった。キュンとしたり、胸を打つとか、そんな部分はなかったけれども青春時代に起こるうる話を疑似体験的に回顧させてくれる力がある作品(それってすごくない!?)に感じる。ラストのカーアクションもサービスたっぷりでこの時代ならではの画面になっていて非常に安心があり良かった。ハイティーン版「スタンドバイミー」。個人的にはこっちのが好き。

 

・岬の兄妹 - 3.1/5.0 (U-NEXT/2021.1.7)

監督 脚本:片山慎三。2019年。ようやく旧作になったので鑑賞。自閉症の妹と脚に障碍を持つ兄の売春映画。片山監督(山下敦弘やポンジュノの元で助監督をしていた)初監督作。脚本や撮り方を含め全体的にかなり丁寧に作られた作品だった。良い所もたくさんあった。が、話に全く乗ることが出来ずにこの点数に。ちょっとしたセリフやショットの伏線などもきちんと作り込まれて、低予算ならではのアイデアや工夫がたくさん凝らされておりお話の起承転結的にも非常に良かった。が、色んな事情があるにしてもダメなものはダメだよな、と思う。兄の妹を想う気持ちを家族への愛、人間への愛と書かれても何とも思わないし、とにかく兄の頭の悪さが最後まで気になってしまった。そして、どうしても気になる社会福祉への無頓着さ。友人キャラクターである警察官の人の存在意義は?(そしてその人の演技は?)と気になる点もチラホラと。ラストの解釈を完全にこちらに委ねた形にはなりますが、また同じ日々の繰り返しになりかけたその瞬間兄がきちんと正しい道へと導いてくれるような、その後の話になってくれると良いなと思いながら見た。

 

・パターソン (原題:Paterson) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.1.6)

監督 脚本:ジム・ジャームッシュ。2016年。意外とジャンル映画を多く撮っているジャームッシュの初期作よりのナチュラルな1作かつ代表作。とあるカップルの1週間をひたすらに映し出していくだけなのに毎日微妙に違って同じ日は二度と来ないし毎日が新しい日なんだよというメッセージが非常に巧妙に練られた構成と脚本で構築されていく。この映画を観るという行為は、まさに自己投影でもあるし、暗闇で画面を1人で見つめる映画を鑑賞するという行為そのものに寄り添い"これはあなたの作品だよ"と言ってくれる様な優しさ溢れるそんな作品だった。ここまで丁寧に丁寧に作り上げてもらって(敷居を下げて)じゃないとジャームッシュ作品の薄味が理解できないあたり、自分はまだまだ濃い味が好きなんだなと思った。

 

・トマホーク ガンマンvs食人族 (原題:Bone Tomahawk) - 3.7/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.1.5)

監督 脚本:S・クレイグ・ザラー。2015年。「ブルータルジャスティス」に続きザラー作品の初作を鑑賞。最新作と比べるのもどうかなと思いますがやはり完成度というかリズムやテンポ、構成の深みなどは「ブルータル~」の方が好みではありました。ですがこちらも約140分飽きる事なく画面を引っ張っていく画や脚本、独特の緊張感の先にある超バイオレンス民族。プロットの面白さも"穴居人"のルックの不気味さも最高。捕まってからラストの救出劇までをもっとぐちゃぐちゃに盛り上げてくれるのかなと思いましたがそこはザラー作品の"品"か、無駄なゴア描写を描く事はせず、必要最低限でドカンといき、あとはきちんと冷静に物語を収束させてました。飛ぶ鳥跡を濁さずと言わんばかりの綺麗な着地で終わる所もかっこいいなあと。ある意味エンタメ作品としてもわかりやすく締めるスタイルが良かった。

 

・Swallow - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.1.5)

監督 脚本:カーロ・ミラベラ=デイビス。2019年。日本公開2021年。新年2本目の劇場鑑賞。平日昼間にも関わらず約50人ほどは入っていた様に思う。率直な感想で言うと、段々と尻すぼみ的につまらなくなってしまったという感じか。異食症をモチーフに家庭や自分自身に対するストレスや不安を解消していくプロット自体はかなり面白かったと思うがそれを映画的な起承転結に乗せて、もっとも"スリラー"ならスリラーらしい物語のドライブ感が欲しかった。異物を飲み込んでいく様やそれだけに留まらず、不安解消のために夫以外の男性へ安らぎを求めてしまうのかと一瞬思わせるシーンなど、かなり観ている側に不安や不快感や緊張感を抱かせるシーンが連続するので画面にくぎ付けになっている事に変わりはないのだが、終盤の展開が凡庸というか薄味過ぎて、"お、おん。。。"としかならなかったのでかなり残念だった。そもそも登場人物全員が頭が悪すぎて(これが一番萎えた)それに段々とノレなくなったといった方が正解かも知れない。お話として壮大につまらなかった。脚本が稚拙。

 

・シャッター アイランド (原題:Shutter Island) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.1.4)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:レータ・カログリディス。2010年。徐々に味が分かってきたスコセッシ作品。ディカプリオとのコンビ作。最後まで観て最後の一言で"えええ何それどっちなの"となりかなりモヤっとした気持ちにさせられた。139分と長尺ではありますが相変わらずキレキレな画面で全く飽きる事なく完走。ファンタジー・ミステリー的な感じで個人的には若干苦手なライン入っているので満足度で言うともう少しクールでニヒルなスコセッシ作品を見たかった様な気も。次いってみよう。

 

・恋するけだもの - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.1.4)

監督 脚本:白石晃士。2020年。去年の11月からスコーレにて上映(&配給)されている今作。「ある優しき殺人者の記録」の白石晃士最新作かつ「恋のクレイジーロード」(未観)の続編。元ボイメン田中俊介主演。予告編を見る限り宇野祥平の女装からして"うわ~微妙そう..."と思って優先順位が下がっていましたが長くやっていた為タイミング的に鑑賞出来た。結果、観て良かった。最初あまりノレなかった女装ルックも、関西弁で捲し立てる江野祥平のキャラクターが段々と面白くなってきて最終的に"頑張れ!"的な気持ちで観てしまった。結果的にはかなり満足度高く、面白かった。何も考えずにヘラヘラ見られたのも非常に良かった。ラストもっと派手にやってもらって爆笑したかった感はありますが全然十分納得の出来だったのではないでしょうか。白石監督さすがでした。

 

・天気の子 - 2.9/5.0 (TV地上波/2021.1.3)

監督 脚本 原作:新海誠。2019年。当時劇場で見ようかなと思いつつもスルーしましたが今回地上波初放送という事で鑑賞。好みじゃなかった。CGと絵が融合する画面自体には抵抗が無いし、背景は美しいしその辺りは凄く良かったのですが基本的に人間の絵が好きじゃない。デザインの話。そして、話がつまらない。それに尽きる。全てがご都合主義的に当たり前に進んでいくし"それで?"と言いたくなるようなお話しか描けておらずかなり微妙だった。小学校低学年向けの"おはなし"の様な感じ。見ながら、ああでもないこうでもないと感想はありましたが年末年始に他の作品もたくさん見ているしどう思ったかはもう忘れてしまった感じなのでここに書ききれないのがアレですが。あ、新海誠作品の画とRADWIMPSの音楽との食い合わせはめちゃくちゃ良いなと思う。中身の程度の問題かも知れないけれど。ラスト、逆さまになりながら主人公の2人が思いを伝え合うシーンは非常に印象的で良かった。あとコロナ禍かつ地上波での放送という事に今回は特に意味があったかなと思う。そういう意味で"映画はやっている時に意味があるのだからやっている時に観に行く事に意味がある"という事を改めて思い知らされたのは良かった。テレ朝ありがとう。

 

・西瓜  (原題:天邊一朵雲/The Wayward Cloud) - 3.8/5.0 (DVD/2021.1.3)

監督:ツァイ・ミンリャン。2005年。アトロクか何か(確か)でお勧めされていたツァイ・ミンリャン監督作品を初鑑賞。AV男優と一人の女の純愛もの(らしい)。本編は約2時間弱。基本的にセリフも音楽も無く、二人の日常生活のシークエンスが並んでいく。都度、本編のそれまでとは割と違う角度から描かれているミュージカル風?シーンが謎に挟まれ、各章を繋いでいく様な構成。セリフが極端に無いし動きもあまり無いので、観たのが夜中だった事もあり"こりゃ寝るかもな"と思ったがしっかりと最後まで観る事が出来た。動きや音の無い画面にあるのは、計算された構図でどのシーンも練られた画面が綺麗。整頓されていて意味もしっかりと分かるというか画だけで魅せていく力強さみたいなものを非常に強く感じた。結構好きだった。

 

・シェフ 三ツ星フードトラック始めました (原題:Chef) - 3.5/5.0 (DVD/2021.1.2)

監督 脚本:ジョン・ファブロー。2019年。評判が高くあらすじを見ても楽しめそうだなと思って鑑賞を始めたが個人的はあまり来るものが無くそのまま終わってしまった。全てが上手くいきすぎているし(そういうものかも知れないけど)別にそこが嫌な感じは全くしなかったけれど、毒にも薬にもならないとはまさにこのことか、非常にあま~いゆる~い子供向けの様な話を観ているようだった。"うん、良い話だね(チャンチャン)"で終わってしまった。

 

・ミッドサマー ディレクターズカット版 (原題:Midsommar: The Director's Cut) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.1.2)

監督 脚本:アリ・アスター。2019年。全年鑑賞「ミッドサマー」のディレクターズカット版。観るつもりはあったのですが、セル用のBlu-rayに収録されており買うタイミングが来るまではお預けかと思っていたら年末のU-NEXTの課金新作にラインナップされていて即鑑賞。改めて観るとカットされても問題ない様なシーンが多く、ただでさえ長い今作の緊張感を保つためには公開版に入らなかったのは仕方ないよなと感じた。川辺で主人公カップルが口論を始めるシーン(本編カット)の嫌さはアリアスター印ではあったのですが、「ヘレディタリー」の地獄家族団らんシーンの洗礼を浴びている僕らには正直物足りなかった。(だからカットになったのかな)。それでも約3時間があっという間に感じるのはさすがとしか言いようがない。名作。