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リハビリの為のタイピングブログ

■2022年5月に観た映画

12本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・息子の面影 (原題:Sin Señas Particulares) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2022.5.31)
監督 脚本:フェルナンダ・バラデス。脚本:アストリッド・ロンデロ。2020年。日本公開2022年。劇映画としてはどうかと思うけどやりたい事は伝わりとても良かった。もうちょい予算のかかった作品が観てみたい。

 

・おいしい結婚 - 4.1/5.0 (Blu-ray/2022.5.30)

監督 脚本:森田芳光。1991年。最高。親の心 子知らず。

 

・マイスモールランド - 3.8/5.0 (中川コロナシネマワールド/2022.5.24)

監督 脚本:川和⽥恵真。2022年。脚本の隙間をもう少し映像的に埋められたら。かなり良かったとは思う。

 

・シン ウルトラマン - 3.7/5.0 (イオンシネマ岡崎/2022.5.22)

監督:樋口真嗣。脚本 総指揮:庵野秀明。2022年。非常に面白く楽しんで観られた。酔っ払ったらブルーシートで寝るんだなぁ。(映画画面に対する点数)

 

・ゼイリブ (原題:THEY LIVE) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2022.5.22)

監督 脚本:ジョン・カーペンター。1988年。絶望的にテンポが合わなかった(当社比)

 

・勝手にしやがれ 4Kレストア版 (原題:A bout de souffle) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2022.5.17)

監督 脚本:ジャン=リュック・ゴダール。オリジナル1960年。レストア公開2022年。鮮明になった画面のおかげで、ジャンプカットなどをより繊細に意図を感じられることが出来(るような気がし)た。ラストカットはキマる。間違いなく1番のジャン=ポール・ベルモンド。

 

・N号棟 1.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2022.5.16)

監督 脚本:後藤庸介。2022年。"新しいJホラー表現が〜"的なネット上の評判を鵜吞み(それでも半信半疑ではあったが)にし観てみたが、単純に話(というか脚本か?)がさすがにツマんなさ過ぎる。ツマんないというか何がしたいのかが分からない。SNSやネットにある"ミッドサマーを感じた"みたいな感想にも腹が立つほど。たしかに"異空間宗教モノ+心霊体験"みたいな事なんだろうけれど、登場こんな事してるから訳が分かんない話が出来上がるんだよと。一体どうしたかったのかが本当に分からないし、こういう事をされるとバカにされていると思うし、心底どうでも良くなってしまい途中で観る事自体に興味がなくなってしまう。あからさまなオマージュというか影響元を感じさせる(無駄な)シーンや、ショット、結局どうしたいのかフラフラし過ぎで付き合いきれない。今年ワースト出たか。

 

・死刑にいたる病 - 3.5/5.0 (中川コロナシネマワールド/2022.5.16)

監督:白石和彌。脚本:高田亮。原作:櫛木理宇。2022年。あまり観るつもりは無かったのですがTwitterにて評判も悪くない、前日のトークショーでの宇多丸氏の"39の影響がある"との発言を受け、鑑賞。評判良いっぽいので観てみましたが個人的にはあまりピンと来ず。というか端的に言って、長い。中盤までは割と楽しんで観たが、結局面会シーンが良くも悪くもという感じで。さすがに終盤の20分くらいは蛇足でしょう。オチにもいまいちノレ無かった。微妙。

 

・(ハル) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2022.5.15)

監督 脚本:森田芳光。1996年。ミッドランドスクエアシネマで行われている月1リバイバル上映?プログラムで。この回は、森田芳光夫人であり、プロデューサーである三沢和子さんと、宇多丸氏が登壇して上映後トークショー有りの回でした。文字だらけなのにテンポが良いという不思議な映画体験だった。終演後のトークでの宇多丸氏が言う、"(当時は新しいはずなのに)パソコンを新しいガジェットとして描いていない"という視点にめちゃくちゃ感心した。

 

・映画大好きポンポさん - 2.1/5.0 (WOWOW/2022.5.14)

監督 脚本:平尾隆之。2021年。Wikipediaとかに載ってそうな話の連なりで出来た自称映画好き映画。
 

・インフル病みのペトロフ家 (原題:Petrov's Flu) - 3.7/5.0 (シネマテーク/2022.5.11)

監督 脚本:キリル・セレブレンニコフ。2021年。とにかく画面が良いな〜というのが印象に残った。とっ散らかった作劇(わざとそう思わせてるのも凄い)も慣れると楽しくなってきて面白かった。終わってみると結局何だったんだと思わなくもないが映画はそういうもんだろうとも思う。

 

・THE DEPTHS - 3.5/5.0 (シネマスコーレ/2022.5.9)

監督 脚本:濱口竜介。脚本:大浦光太。2010年。らしいか らしくないかが大切かどうかはわかりませんが全体的にイマイチ乗れなかった。というか単純に話が面白くなかった。静止画と動画の対比で魅せていくショットの連なりだけが最後まで観る気を保持してくれた。

 

・RAW〜少女のめざめ〜 (原題:Grave) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2022.5.8)
監督 脚本:ジュリア・デュクルノー。2016年。日本公開2018年。期待し過ぎた。

 

・ニトラム NITRAM (原題:Nitram) - 4.1/5.0 (伏見ミリオン座/2022.5.5)

監督:ジャスティン・カーゼル。脚本:ショーン・グラント。2022年。どうにも解決のない話ではあるし、実際にこうなる紙一重で堪えている人はたくさん居ると思う。ほんの少しで狂ってしまう人生や人間の脆さ、それでも生きていかなくてはならない難しさに直面させられ何とも言葉が浮かばなかった。

 

・ポンヌフの恋人 (原題:Les amants du Pont-Neuf) - 3.8/5.0 (DVD/2022.5.2)
監督 脚本:レオス・カラックス。1991年。日本公開1992年。

 

・卒業 (原題:The Graduate) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2022.5.1)

監督:マイク・ニコルズ。脚本:バック・ヘンリー。カルダー・ウィリンガム。1967年。日本公開1968年。

 

 

■2022年4月に観た映画

22本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・カモン カモン (原題:C'mon C'mon) - 3.9/5.0 (109シネマズ名古屋/2022.4.27)

監督 脚本:マイク・ミルズ。2021年。日本公開2022年。誰にでもありうるコミュニケーションの話だがモノクロ画面と作劇の丁寧さで、話を大袈裟にせずでもしっかり優しく他者との関わりの面白さや不思議さを教えてくれる。自分にもあった子供の頃やこれから来るオッさん期を前にとても興味深く観た。面白かった。

 

・ハッチング―孵化― (原題:Pahanhautoj) - 3.0/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.26)

監督:ハンナ・ベルイホルム。 脚本:Ilja Rautsi。2022年。如何にもなジャンルものですが、それだけだったなぁという印象。全体の尺が短いのでテンポ良いのが救いですがこれと言ってフックになる様な画も作劇上の捻りも無く、とにかく鳥が気持ち悪いくらいしか感想が無かった。

 

・ベルイマン島にて (原題:Bergman Island) - 3.2/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.26)

監督 脚本:ミア・ハンセン=ラヴ。2021年。日本公開2022年。盤までは面白く観たが劇中劇のパートに入ってからの長さと本編との絡みの微妙さに徐々にテンションダウン。最終的に何が言いたいのかよく分からないし、劇中で悩んでいた結末も見せないままの終わりに何だかなという鑑賞後感しか残らなかった。

 

・ブンミおじさんの森 (原題:UNCLE BOONMEE WHO CAN RECALL HIS PAST LIVES) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.25)

監督 脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン。2010年。日本公開2016年。実在と虚像の境界線が曖昧になると共に現実と非現実が曖昧になっていく様は正に"映画を観ている"としか言えない体験で、それだけで作品全体を先導する原動力になっている。とても優しくてロマンティックなモノを観たと感じる。
 

 

・汚れた血 (原題:Mauvais sang) - 3.9/5.0 (DVD/2022.4.25)

監督 脚本:レオス・カラックス。1986年。日本公開1988年。

 

・川の底からこんにちは - 4.0/5.0 (U-NEXT/2022.4.23)

監督 脚本:石井裕也。2010年。

 

・椿三十郎 - 3.9/5.0 (U-NEXT/2022.4.23)

監督 脚本:黒澤明。脚本:菊島隆三。小国英雄。原作:山本周五郎。1962年。

 

・ボーイ ミーツ ガール (原題:BOY MEETS GIRL) - 3.5/5.0 (DVD/2022.4.20)

監督 脚本:レオス・カラックス。1983年。日本公開1988年。

 

・アネット (原題:Annette) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.19)

監督:レオス・カラックス。脚本:ロン・マエル。ラッセル・マエル。2022年。絵本の様にファンタジーかつ決まったショットの連続に思わず前のめりに。話の微妙さはまあ置いといて、表現として幅の広さや懐の深さに改めて感服。面白かった。

 

・キッチン - 3.3/5.0 (Blu-ray/2022.4.18)

監督 脚本:森田芳光。1989年。

 

・エル ELLE (原題:Elle) - 3.6/5.0 (WOWOW/2022.4.16)

監督 脚本:ポール・ヴァーホーヴェン。脚本:フィリップ・ディジャン。デヴィッド・バクスト。2017年。

 

・女子高生に殺されたい - 3.6/5.0 (109シネマズ名古屋/2022.4.13)

監督 脚本:城定秀夫。原作:古屋兎丸。2022年。思わず、城定監督も大変だっただろうなぁと思いながら観た。原作未読なのでどこまでそのままなのか分かりませんが(割とそのままそう)肝心な所がいかにも漫画な設定でそこに関してはノリ切れなかった。そういうモノだと割り切れればそれなりに楽しめるが。

 

・欲望のあいまいな対象 (原題:CET OBSCUR OBJET DU DESIR) - 3.9/5.0 (シネマテーク/2022.4.12)

監督 脚本:ルイス・ブニュエル。脚本:ジャン=クロード・カリエール。1977年。日本公開1984年。特集上映にて。二人一役はマチューの想い(や記憶)のあいまいさを表現すると同時にコンチータの二面性も表すという離れ業をやってのける。それだけで凄いのに貞操帯と格闘する10分エピソードや爆発ラストなどパンチありすぎな遺作。面白かった。

 

・シャドウ イン クラウド (原題:Shadow in the Cloud) - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2022.4.11)

監督 脚本:ロザンヌ・リァン。2020年。日本公開2022年。ジャンル映画と括ってしまえば潔すぎる83分。序盤のクロエのみ画面に映り続ける30分ほど?はどんな実験映画なんだと。最終的に無茶苦茶だし何を書いていいのかよく分かんないけどクロエは仕事を選んだ方が良いと思う。

 

・愛と平成の色男 - 2.7/5.0 (Blu-ray/2022.4.10)

監督 脚本:森田芳光。1989年。

 

・ファナティック ハリウッドの狂愛者 (原題:The Fanatic) - 3.0/5.0 (WOWOW/2022.4.9)

監督 脚本:フレッド・ダースト。2020年。

 

・ブルジョワジーの秘かな愉しみ (原題:LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE) - 未採点 (シネマテーク/2022.4.6)

監督 脚本:ルイス・ブニュエル。脚本:ジャン=クロード・カリエール。1972年。ついにルイス・ブニュエルに挑戦だ!と意気込んで観たが、見事に撃沈。寝ました。中盤までは記憶があったのですが最終的にわりと過去上位に入るくらいに寝た。エンドロールまるっと観てないくらい寝たのは、「ドントブリーズ2」以来か。前情報入れずに臨んだのが仇となり、これは完全に失敗。繰り返しというか、かなりシュールな作劇だったので全体の仕組みをわかって覚悟した上で観るべきだった。

 

・英雄の証明 (原題:A Hero) - 3.0/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.5)

監督 脚本:アスガー・ファルハディ。2021年。正直、物語が進めば進むほど話のしょうもなさに段々とどうでもよくなってしまった。主人公をはじめ登場人物が全員アホすぎる。ラストカットの他の囚人を眺めてからまた刑務所に戻っていく長回しは結末の寂しさとしては良かったと思う。

 

・TITANE/チタン (原題:Titane) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2022.4.5)

監督 脚本:ジュリア・デュクルノー。2021年。どこからツッコんでいいやらという感じですが痛そうで堪らない&これからどうなってしまうのかワクワクした前半に比べると正直、後半失速した感は多少否めないですがそれでもこんなトンでも話をドヤ顔で作り上げる熱量にそれだけで◎。面白かった。

 

・ポゼッサー (原題:Possessor) - 3.4/5.0 (シネマテーク/2022.4.4)

監督 脚本:ブランドン・クローネンバーグ。2020年。日本公開2022年。アトロクか何かで聴いたのか予告編を観たのかは忘れましたが気になっていたので滑り込み鑑賞。あのクローネンバーグのご子息だという事で。映像がかなり美しく整った画面、色調で驚いた。オヤジ譲りのパッション優先の話運びをしてくのかと思いきや、非常にインテリな、というか何となくクリストファーノーラン映画の様な"アタマでっかち感"も感じたり。ということは、私はあまり得意ではない。という事で。正直、映像や切り口は好みだったのですがいつまでもグダグダ似たような事を繰り返す作劇にちょっとついていけなかったなあというのが感想。テンポが合わなかった。もう一度観て観たい気もする(が多分観ないんだろうな)。

 

・仮面/ペルソナ (原題:PERSONA) - 未採点 (U-NEXT/2022.4.3)

監督 脚本:イングマール・ベルイマン。1967年。自宅にて時間があったので久しぶりにベルイマンをと思い鑑賞。正直、集中力が低かったのかマジでなんの話をしているのかさっぱり分からなかった。眠くはならなかったのですがちょっと理解する事が出来なかった。考察を読んでもイマイチ。。。我が映画リテラシーでは限界突破していたのでまたいつかリベンジをしたいと思う。

 

・ハッピーアワー - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2022.4.2)

監督 脚本:濱口竜介。脚本:野原位。高橋知由。2015年。シネマスコーレにて『濱口竜介特集上映 言葉と乗り物』が上映中ということで、「偶然と想像」「PASSION」「親密さ」に続き鑑賞。5時間17分にも及ぶ劇映画を作るその体力と執念にまず驚く。2部にあった小説朗読における登場人物とその作者の関係の話が濱口監督の作家性とも正にリンクしており重厚な説得力を生むなと感じたり、時折非常にハッとする様なシークエンスや話が出て来るのですが、いかんせん長すぎてあまり細部まで覚えていないという。3部からは腑に落ちない点が多かったのが個人的には失速に繋がり残念だった。それでもこんな作品を作ってしまうのだから恐れ入ります。超長編対決は「親密さ」が大きく引き離して勝った。

■2022年3月に観た映画

17本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ベルファスト (原題:Belfast) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2022.3.29)

監督 脚本:ケネス・ブラナー。2021年。日本公開2022年。公開週に行ったがアカデミーの効果か平日昼間にも関わらず80人以上の大入りで少し驚いた。ケネスブラナーの幼少期の自伝映画という事で、ケネスブラナー自体に思い入れが無いのでどうかなと思っていましたが、ケネスブラナー感は全く出す事なく(名前も違う)、あくまでそれを元に作られたお話という体を取っていたので見易かった。北アイルランドで宗派による内戦がある事も知らなかったので今観る作品としても重くのしかかるものがあり、良い経験だった。が、今作は内紛を描いた訳ではなくあくまで"コドモ・ブラナー"の視点で終始描かれているのでそんな中にも青春はあったし、子供ながらの葛藤もあった、そしてこういう人達が確かにそこには居たのだという事を知られて良かった。そして、それは今、ウクライナを、自分の住む場所を、誰かの身勝手な理由で追い出されてしまっている世界の人たちともリンクする。争いは何も生まない。子供の目線でという事で、パッと思いだされたのが「ジョジョラビット」だ。もちろん作品内容は全然違うが、子供の視点を使って何かを描こうとしている点は非常に似ているなと感じた。そして、「ジョジョラビット」にノレなかった様に、この「ベルファスト」にも個人的にはあまりノレなかった。何なんでしょうか、子供目線にされるとあまり入ってこなくなる。バディ君が可愛かったなあとしか思えない。

 

・SING/シング:ネクストステージ (原題:SING2) - 3.0/5.0 (イオンシネマワンダー/2022.3.28)

監督 脚本:ガース・ジェニングス。2021年。日本公開2022年。アトロクのアレで観る事になり、1作目に続いて連続で鑑賞。結論から言えば、"まあ1作目よりは幾分マシだけで、これって結局大人が観るものではないよね"という感じ。アニメだからどうこうとかではなく、単純にお話や作劇が大人を満足させるには全然足りていないと思う。前作とほとんど同じく登場動物たちが状況を乗り越えてステージに立つお話に理屈や描かなければならない描写が圧倒的に欠けている。敢えて描いていないのかもしれないがこれではやはりいつかだれかが勝ってに色々と解決してくれるとしか思えなかった。キャラクター全員が脚本やお話のためだけに行動している様にしか思えなかった。し、見せ場も取っ散らかって散文している様に感じた。ただ、主人公の行動に関しては前作よりもハッキリと成長を感じられるし、何としても公演を成功させるんだ!という自らの意思を感じることは出来た。きちんとB'zライオンの所にも行ったしね。

 

・SING/シング - 2.7/5.0 (U-NEXT/2022.3.27)

監督 脚本:ガース・ジェニングス。2017年。アトロクのアレで続編である「SING/シング:ネクストステージ」を観る事になったので一応前作を観ておこうと思い鑑賞。全体的に言えば超都合の良い主人公を甘やかせまくり且つ理由もなく勝手に周りが成長していつの間にか感動のクライマックスを迎えているという感じだった。中盤手前にある、ホタルイカ(?)のガラス張りのステージが映像美的なもののピークだったかなという感じで後はテンション下がってしまった。登場動物たちがそれぞれの葛藤や苦悩を乗り越えてステージに立つお話自体は素敵だなと思いますが、どうしてもそこに理屈や描かなければならない描写が欠けている気がして全くもってノレなかった。そして主人公はあたふたと自己中に振る舞うだけで何一つとして成長や何かのタメになっていないのはいかがなものかと思う。

 

・ハイヒール (原題:HIGH HEELS) - 3.2/5.0 (U-NEXT/2022.3.27)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。1991年。前日に「ジュリエッタ」を観て満足していたのでアルモドバル連続じゃ!と思い鑑賞。しかしながらこちらは結構な薄味。アルモドバル作品に辻褄や都合の良さなど気にしては居ないのですが、それとしてもさすがに都合が良過ぎて話にあまりノレなかった。ラストカットの半地下からのハイヒールがやりたかったんだろうなあというぼんやりとした感想だけが残ってしまった。視聴環境が悪かったかな。

 

・悲しい色やねん - 3.3/5.0 (Blu-ray/2022.3.26)

監督 脚本:森田芳光。1988年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。10本目。森田監督フィルモグラフィ上唯一のヤクザ映画。なのですが、もちろん所謂ヤクザ映画にはなっておらず、主人公のトオルは組長の息子だがカタギで居たいがゆえに四苦八苦するというお話。いつもの暴れっぷりに比べると少しソフトな気もしますが、銃弾によって飛び散るドス黒い大量の血や、ライバル組の組長はいつまで経っても立ち上がらないし(遂には死ぬときでさえも座ったまま!)、藤谷美和子のプッツン演技(佐藤優樹にしか見えませんでしたね)等、挙げだしたら出ては来るのですがそれでもいつもよりは大人しめかなと。観終わった後に教科書『森田芳光全映画』を読むと、森田監督自身この作品のシナリオを作る事に相当苦労したようで、そのせいかやはり中盤はダレたし正直眠くなったのも事実。お話として成功しているとは思えませんが、藤谷美和子の噴水からの即殴打シーンや、ラストの仲村トオルの顔面締めなど印象的なシーンは多く残っている。

 

・ジュリエッタ (原題:Julieta) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.3.26)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。2016年。久しぶりにアルモドバル作品を。好き認定の入っている作家の過去作品は見ていくといつか全て観終わってしまうという当たり前体操があるのでジワジワと観進めているのですが、U-NEXTでの配信が今月末までという事で鑑賞。アルモドバル作品にしては、ストレートなというか割と普通目なお話(ただゲイとかヤク中とか異母兄弟とかそういうのが出てこないだけかもしれないが)。母と娘、同性同士にしか感じる事が出来ないおかしなバランスがここにも観てとれる。娘を失ったのは自業自得かもしれないが、最後の最後に自らの過ちを自身の息子を失う事で気付く事が出来た娘にも、良かったねえ、という気持ち。変な話では無いのにどこをどう切り取ってもペドロ・アルモドバルな仕上がりがとても良かった。この人の映画を観る度、本当に優しい人だんだなと思う。

 

・猫は逃げた - 3.6/5.0 (センチュリーシネマ/2022.3.22)

監督:今泉力哉。脚本:城定秀夫。2022年。城定秀夫と今泉力哉という今人気の作家をなんとスワップして映画を2本作ってしまおうというそれだけでも面白いこちらの企画、先月鑑賞の「愛なのに」と2本セット。後攻は今泉監督。双方の作品にどういう違いがあるのか(というか製作費自体に結構差があるのか?)ちょっとよく分かりませんが「愛なのに」と比べると地味目なキャスティングな今作。主人公夫婦とその不倫相手X2と猫が織りなす気まずいコメディ。終わってみて思うのは前半が結構退屈だったなという事。城定監督のシナリオなのでどうしてもそうなるのかもしれませんが、やはり少し小粒な話になってしまったかなという感じ。ショットや雰囲気は今泉作品丸出しだったので変なバランスの映画だなあと思いますし、やっぱり今泉作品は本人脚本が良いんだろうなあと改めて。そして城定監督の職人っぷりがより露になったかなとも思います。個人的には城定監督の方が映画のつくり自体は好みだったりする。しかしながら、終盤の4人集合での修羅場からのネコが見つかって良かったねの流れはとても良かった。劇中、猫に"パパとママとどっちがいいの?"と聞くシーンがあるが、"どちらも必要なんだよ"と猫の代わりに返事をしたくなった。2作とも面白い企画だった。

 

・クリーピー 偽りの隣人 - 3.3/5.0 (U-NEXT/2022.3.20)
監督 脚本:黒沢清。脚本:池田千尋。原作:前川裕。2016年。これまた久しぶりに黒沢清映画を。評判の高い今作、自分自身も観ながら序盤とかは結構怖かったし、中盤も緊張感がダレずに怖かった、(全体的には怖かったし面白かった(ライティングや表情演出ややばい家感とか)し、さすがだなあと思いながら観たので良い部分は別に並べて書きませんんが)のにも関わらず、終盤の所謂"事件の主現場"である香川照之演じるサイコパスの住処かつ犯行現場があまりのチャチさと現実離れ感で一気に萎えてしまった。あんないかにも"ヤバイ部屋ですよ~"という感じにせずに普通の和室とかの方がより怖いのになあと思っていましたが、ネット上の評論などによればあの部屋は"表現主義"という事らしく、香川の内面のやばさを本当の意味で浮き彫りにさせているという観方もあるらしく、なるほどねえとは思った。だからこそああいう部屋でなければならなかったのかなと。それでも萎えた事には変わりがないわけで。あれさえなければ最後の最後まで笑えるし怖いしでかなり面白かったのになあと残念に思う。そう思うと森田芳光「黒い家」とかで鬼オバサンの暗い部屋の中でバイブが震えてるとかの方がマジで怖かったし、やっぱりそういうヤバさ演出の方が自分は好きだなあと思った。思わせぶりなショットや暗すぎる画面なども含め、いかにも黒沢清映画!という趣きでとても良かったのですが、あの部屋に納得がいかずこの点数に。

 

・ソニはご機嫌ななめ (原題:우리 선희) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2022.3.20)

監督 脚本:ホン・サンス。2013年。久しぶりにホンサンス作品を。邦題が「ソニはご機嫌ななめ」に対して、原題や洋題は「私たちのソニ」という様なタイトルがつけられており、鑑賞後に"これはあまり良くない邦題なのでは..."とちょっと考えた。確かに劇中のソニは自由奔放かつ分かっていながら男を誘惑する様なそんな部分があるのだがこの邦題ではソニがただただ一方的にワガママで嫌な女に感じる様にあくまで宣伝担当の"男"が付けた愛が無くズレたタイトルになってしまっている気がする。もちろん本作は邦題の様な部分を描いてもいるがソニに翻弄される3人のバカな男たちを描いてもいると思うからだ。モテない虚しい男3人の最後の背中のショットを観ればそれを雄弁にそして半笑いで語っている事は私の様な映画リテラシーの観客にも読み取る事は出来るのに。「街の上で」ばりに最後勢ぞろいする感じが異様に笑えて面白かった。男はいつだってバカだし、ソニの様な関わらない方が良いタイプの女も、間違いなく居る。

 

・親密さ - 4.4/5.0 (シネマスコーレ/2022.3.19)

監督 脚本:濱口竜介。2013年。全作品上映企画。劇映画だったはずの部分はドキュメンタリーになり、演劇だったはずの部分が劇映画になるという捻れた構成に驚く。そしてその全てを掬い上げるラストシーンはとても美しい。4時間半を完走した先にある満足感を含め長い映画は面白い。客入りも良かった。日にちも経ってしまったし、どこから書いていいのか全く見当もつかないのでこのままにしておく。4月には日本映画専門チャンネルで「親密さ」と「ハッピーアワー」の放送があるのでまたいつの日か見返すときのためにしっかりと録画しておこうと思う。

 

・PASSION - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2022.3.17)

監督 脚本:濱口竜介。2008年。シネマスコーレにて『濱口竜介特集上映 言葉と乗り物』が上映中ということで、「偶然と想像」「寝ても覚めても」に続き色々と観てみたいと思い鑑賞。3時間だったり、4時間半、5時間半と長尺の作品が多いイメージの濱口監督ですが今作は120分で収まる一般的(?)なサイズ。ですが勿論作風は変わらず約2時間の間圧倒的な言葉の応酬が続く。初期の作品なので(濱口さんこの時30歳!)わりと散らかってる感も否めないけれど、大学院の卒業制作でこれってちょっとやっぱりモノが違うなと感じざるを得ない。脚本もさすがの出来ではありましたが全体的に画面が弱いというのは否めないかなと。こういう作品を観て、自分が映画に何を求めているのかを改めて確認する事が出来た様な気がする。楽しんで観られたことには違いないのですが。

 

・子供はわかってあげない - 4.0/5.0 (U-NEXT/2022.3.13)

監督 脚本:沖田修一。脚本:ふじきみつ彦。原作:田島列島。2021年。「横道世之介」「南国料理人」の沖田監督の現状最新作。昨年公開で評判も高く楽しみにしていたのですが何故かタイミングが全く合わず、結局劇場で観る事は出来なかった今作。U-NEXTに上がっていたのでようやく鑑賞。今回も138分と長尺で、この監督の特徴ではあるのですがやっぱり若干長いなとは感じる。とは言え、こちとらファンですのであまり気にはならないのですがもう少しタイトにまとめ上げる事が出来れば大きなヒット作を生み出せる様な気がしなくもない。で今作。まず持った印象としては"かなり笑かしに来てんなあ"というのが第一。元々コメディ調が多かったですが今回はこれでもかとばかりに"ちょっとした"ギャグのオンパレード。正直スベっているものもありますがわりと好意的に楽しめた。何となく森田芳光作品の様な過剰さを感じた(沖田作品の方がお上品な笑いなのですが)。前作「おらおらでひとりいぐも」に引き続いてオープニングシークエンスはアニメ。どういう拘りなのか、これほんと一瞬違うの観ちゃったかなと思う。ただ、今回に関しては劇中でのアニメ作品『魔法左官少女バッファローKOTEKO』が本編のキーとしてしっかりと絡んでくるのが大きな違いか。より機能的になっていて良いなと思った。オネエ役で出て来る千葉雄大が結構好きかもなと思った(彼の出演作は初めて観ました)。作劇は非常に丁寧で沖田作品特有のムードがやはり安定感を持ってよかった。景色の良いロケーションで全編撮影されているが、画的なショットの凄みみたいなものがあまり感じられなかったのが少し残念ではあったがそれでもやっぱり面白く、観て良かったなと思える作品であった。

 

・ゴーストランドの惨劇 (原題:Incident in a Ghostland) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2022.3.13)

監督 脚本:パスカル・ロジェ。2019年。三宅隆太監督のおすすめか何かで知ったのか忘れましたがチェックしてあったこちら、U-NEXTでの配信期限が迫っていた事も手伝って鑑賞。91分の尺でしっかりとジャンル映画としての機能や楽しみの部分を爆発させており、久々に気楽に楽しめるコンパクトな作品を観たなと何だか得した気分になった。基本はスリラーというかホラーというかそんな感じで、物語は進行。勿論ツッコミどころはありますが、物語内リアリティが微妙に保たれているのであまり気にはならなかった(というか作り的にそんなの気にしてもしょうがないように作ってある)。面白かった。

 

・MEMORIA メモリア (原題:Memoria) - 3.0/5.0 (伏見ミリオン座/2022.3.9)

監督 脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン。2022年。初アピチャッポン作品。知人が観て面白そうだなと思い鑑賞。が、、、正直ちょっと睡眠不足な状態で観てしまったからか3分の1は寝てしまったように思う。し、マジで全然分からなかった(それはそうなのですが)。知人のコメントにも"眠かった"とは書いてあったので警戒はしていたのですが、案の定。超絶無音の長回しの多用ですごいアハ体験的な映像郡だった。自分の映画リテラシーで挑むのは無謀なアート作品でした。でも、もう一度でもいいからちゃんと観たいですね。

 

・寝ても覚めても- 3.6/5.0 (U-NEXT/2022.3.6/U-NEXT)

監督 脚本:濱口竜介。脚本:田中幸子。原作:柴崎友香。2018年。「偶然と想像」に続き濱口竜介作品を。これを見てからだと「偶然~」がいかにエンタメ作としても良く出来ているのか、そして単純に話として面白いかがよく分かった。今作に関しては、主演の唐田えりかの行動に全くもって共感や養護する部分が無くそういった部分ではノリ難かった。東出昌大のイカレっぷりは結構良かったし普通に面白かった。が全体的にやはり少し長いかなと思ってしまった。119分。中盤手前に3.11東日本大震災が描かれ、"あ、ここからはそういう話になるんだ"と思ったのも束の間全然違う方向へと話が向かっていくのがちょっとどうかなと思った。それなら描く必要があったのか?と。ただ、その瞬間の地震の描写には目を見張るものがあり、今作の様な地震描写は初めて観たしめちゃくちゃリアルに感じられてちょっと怖かった。これは凄いなと感じた。あとはラスト付近で、猫は捨ててないのが安心しましたね、と。

 

・そろばんずく - 3.3/5.0 (wowow/2022.3.5)

監督 脚本:森田芳光。1986年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。9本目。とんねるずと安田成美主演の広告代理店コメディ。これが本当に無茶苦茶だった。ファーストカットからビックリするし、基本的に109分全てふざけ続けており、ちょっとめまいがしそうな程。途中から面白いのか面白くないのかももはや分からなくなってくる程の圧倒的なビックリ体験だった。どうであれ、こんな映画観た事ないと思えることは非常に重要な事だよなあと思う。またいつか見返してみたいと思う。掟ポルシェそっくりな小林薫が印象的だった。

 

・ウエスト サイド ストーリー (原題:West Side Story) - 3.9/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2022.3.1/)

監督 :スティーヴン・スピルバーグ。脚本:トニー・クシュナー。原作:アーサー・ローレンツ。2022年。あまり観るつもりは無かったのですが、これは観てよかったなあと心底思った。し、古典的な作劇やお話が持つ構造の強さみたいなものを改めて感じる事が出来た。映画としてもずっと緊張感ある画面でかっこ良かったし(特にオープニングの一連のシークエンスは本当にかっこよかった)、きちんと練られたショットの連続にはシビれるものがあった。分断や争いは本当に悲劇しか生まないと思うし、それは繰り返してはならないと強く思った。時世ともリンクしてしまい、良いのか悪いのかだと思いますが、この2022年3月のタイミングで観る事が出来て良かった。

■2022年2月に観た映画

16本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・愛なのに - 3.7/5.0 (センチュリーシネマ/2022.2.28)

監督 脚本:城定秀夫。脚本:今泉力哉。2022年。城定秀夫と今泉力哉という今人気の作家をなんとスワップして映画を2本作ってしまおうというそれだけでも面白いこちらの企画、来月公開予定の「猫は逃げた」と2本セット。先行は城定監督の方から。主演に瀬戸康史と河合優実というこちらも今人気の若手を起用し、メインビジュアル、予告編ともにいかにも今泉作品っぽいオシャレ()風な感じかな、と思いきや。そこは城定監督、舐めて観に来たサブカル好きカップル()をぶち殺す様なセックス描写できちんとエロく全体的にきちんと城定作品に仕上がっておりました。古本屋でのシーンから始まる冒頭は画から面白く、今泉監督の前作「街の上で」を思わせる様なオープニングだった。序盤から中盤にかけて何とも今泉作品っぽい人間劇が繰り広げられていくのですが、終盤のセックス下手オチからのこれまでの話は一体何だったんだという程の元も子もなさというか、一気に脱力する感じが最高に面白かった。男にとってはある意味ホラーの様な事件だよなあと思った。結構面白かった。相棒である「猫は逃げた」もとても楽しみになった。

 

・こわれゆく女 (原題:A WOMAN UNDER THE INFLUENCE) - 3.8/5.0 (DVD/2022.2.27)

監督 脚本:ジョン・カサヴェテス。1974年。三宅監督のPodcastで紹介されておりレンタル鑑賞。どこから突っ込んでいいやらという感じですが、とにかく奇妙な演出、長回し、ショットの連続。そこには確実に狂った何かが宿っている。序盤のパスタを皆で食べるシーンなんかももう完全に意味不明だし、なんだこれは面食らった。ジョン・カサヴェテス監督の作品は初めて観たのですが思っていたよりも好きかもしれない感覚が残った。

 

・私たちのハァハァ - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.2.26)

監督 脚本:松居大悟。2015年。「ちょっと思い出しただけ」に続いて松居大悟xクリープハイプな今作を。昨年の「くれなずめ」で初めて松居大悟作品に触れ"これは好きな作家だぞ(おそらく)"と思い過去作品も観てみようと思っていたら先だって公開された「ちょっと~」も時間と共に自分内評価が上がっており、過去作品を鑑賞。メインビジュアル通り、女子高生が自転車でクリープハイプのライブを観に東京を目指すというお話。ツッコミどころはかなりあるのですが、松居監督は"嘘から出たマコト(大林宣彦Ⓒ)"を描き出すのが上手いなあというか観ていてさして気にならなくさせるどころか何だかちょっとリアルに思わせる事を出来ているのに驚く。物語的には自転車捨てるのが早すぎたり、さすがにキャバの体験バイトは無いわとか思ったり、大関なんとかちゃんがブス過ぎるとか、色々と徐々に言いたい事が増えていくのですが最終的には(というか鑑賞後感的には)なんとも言えない切なさとか、もう戻る事の出来ない過去の自分だったりとかをじんわりと思い出させて、何だか良い映画を観たよな~と呑気に思ってしまう、そんな気持ちにさせられる。

 

・少年の君 (原題:少年的你/Better Days) - 3.6/5.0 (DVD/2022.2.20)

監督:デレク・ツァン。脚本:ラム・ウィンサム。リー・ユアン。シュー・イーメン。2019年。日本公開2021年。雑誌、web等でも昨年の年間ランキングもので好評だったこちらをようやく鑑賞。アトロクの課題作品にも選ばれていたのですが当時は公開中盤で時間のタイミングがなかなか合わずで結局観られなかった作品。いじめに耐える受験少女とチンピラ兄ちゃんの純愛もの。とざっくり言えばそんな感じ。つい先日もいじめを苦に自殺、ではなく、いじめ被害者が加害者を刺し殺そうとしてしまった(しかも学校で)という事件が2件ほど日本でも続けて起こっていました。中国の虐め問題は相当酷いらしいのですが日本もこんな事件があるくらいなのでもちろん潜在的な部分では相当数もっと悲惨なことになっているだろうというのは想像が出来ます。本作でも最終的には主人公がいじめ加害者である女生徒を最終的には殺してしまい、その罪を償うという結末なのですが、やはり対岸の火事ではないなあと感じます。というか全然知らない所で知らない誰かがこんなにも苦しんでいるんだという事実を突きつけられたようでつらかった。クライマックスで2人が罪を白状する事を決心する面会のシーンではセリフなし、パーティションに映る相手の顔と重ね合わせるという美しくも破壊力のある演出が優れていた。個人的にはテンポが悪いし、全体的に長いし、であまり良い印象ではなかった。

 

・スラローム 少女の凍てつく心 (原題:Slalom) - 3.7/5.0 (WOWOW/2022.2.20)

監督 脚本:シャーリーン・ファビエ。2020年。アトロクにて三宅隆太監督の昨年の年間ベスト3に入っており、WOWOW初回放送時はスルーしていたのですがその話を聞いて慌ててリピート放送を録画、鑑賞。90分ほど。ある意味ジャンル映画的なコンパクトさと一つの題材でじっと進んでいくストーリーラインがフランス映画とはいえ見やすかった。15歳の女生徒とコーチの共依存の話なのですが、非常にリアルに感じられた。こうした声を上げられない被害者も多いのではないでしょうか。しかし既に共依存状態になってしまっているので当事者はそれ自体をマズい事だとは捉えられなくなっておりそこがややこしさを加速させているという事はよく描かれていたと思う。雪の演出というか、雪を画面に取り込んだり全体的に画作りがとても美しくて良かった。自体が最終的な結論に至ってしまうクライマックスではそれまで少しずつ出されていた不穏な"色"の描写も全開になり、メインビジュアルにもなっているオレンジの影に包まれた画面はとても厭な空気を演出していた。ラストカットからのエンドロールへ入っていく流れも良かった。話自体が特段面白い!という訳ではなかったので最終的な点数自体は伸びなかった。緊急避妊薬を無料でしかも簡単に入手できるというのが知れて良かった。

 

・南極料理人 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2022.2.19)

監督 脚本:沖田修一。2009年。「横道世之介」「海を見に行く」「おらおらでひとりいぐも」の沖田監督の未観のこちらを。新幹線移動で時間もあったためタブレットで鑑賞した。ポスタービジュアルからあまり食指が進まなかったのですが、結構面白かったです。し、やっぱ沖田監督のセンスは絶妙な所を突いてくるよなあと思う。今作に関して一言で言えば"ウエス・アンダーソンみたい"というのがしっくりくるかもしれない。南極探査に送られた職人8人の南極での出来事を淡々と描写していく今作。とにかく画がアシンメトリー調で、オフビートなコメディ描写、基本ずっとふざけている、というどう見てもウエス作品の様な今回の内容にはここまでやられるとニヤリとさせられた。最後にはホロリとさせられるのも良かった点だ。堺雅人の映画は初めて観たが意外と良かった様に思う。

 

・ある用務員 - 2.0/5.0 (DVD/2022.2.15)

監督:阪元裕吾。脚本:松平章全。2021年。「ベイビーわるきゅーれ」などで知名度爆上がりの阪元裕吾監督昨年の作品。タイトルは映画雑誌などで観ていたので知っていましたがようやく観る事が出来た。監督の作品はこれで一応ほぼ全て観た事になります(初期のどうしても観る事が出来ないものは除く)。阪元裕吾という監督に対しては正直、応援は勿論しているのだが特段大好きだとか、素晴らしい作品を作っているとかそういった事はあまり思っていない。全ての作品を観たし好きなものはあるがどう見ても映画的に豊かだとは思えないし、テンポや撮影、特に脚本はあまり褒められたものではないと思う。ではなぜ全部観るほど時間を使っているのかと言われれば応援(期待)をしているからだというのが正しい答えかもしれない。彼の作品で観られる役者陣はおそらく大学のサークル時代の連中でとても素人臭いし、上記した様なアラだらけの作品群なのだが、そこには確かな熱意や勢い、得体の知れない自信、を感じるからだ。私自身も学生の頃にしていた活動と気持ち的に被る部分もあり、こういう人をきちんとフックアップしていく事が映画の未来を支えていく事になるし、阪元監督はいつか特大ホームランを打ってくれると信じている。たとえそれが一発屋的なものになるかもしれないがそれでもいいのだ。SNSやインタビューを観るとそんなに映画を知らない様にも感じるし、こんな私でも首をかしげる映画に対する発言(漫画みたいな映画を撮りたいとかはもう飽きれる発言だ)もみられる。でもそんな人が面白い映画を作り出してしまう事もあると思う。だからそれに期待しているし、応援している。真面目にはやっているっぽいしね。という事だ。あ、「ある用務員」はもう死ぬほどツマんなかったです。阪元作品で圧倒的にワーストかも。まあこういう仕事もしていかないといけないんでしょうね。

 

・ちょっと思い出しただけ - 3.7/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2022.2.14)

監督 脚本:松居大悟。2022年。昨年「くれなずめ」が個人的ヒットだった松居大悟監督最新作。着実に仕事を増やしているオズワルド妹・伊藤沙莉と松居組・池松壮亮主演による[過去の恋愛]をテーマにしたドラマ作品。タイトルの通り、本当に"ちょっと思い出しただけ"なお話で、何か起こるわけでもなく失われた二人の恋愛を一緒に振り返るというだけの内容。主人公演じる池松の誕生日を起点に6年分を遡る作劇は基本的に1年1エピソードくらいの尺で体感としてもわりとサクサクと進んでいくので、どうしても二人の恋愛模様を実体験と結び付けて入り込んでいく事が出来ずだった。がそもそもそういう共感の類を持たせる事に重きを置いている作品なのかなと終わってから気付いた。今作においては、とにかく構図の決まり方が非常に豊かで良かった。水族館での長回しによる二人のじゃれ合いシーンは特に冴えわたっており、演出というかこれはただカメラ置いてはいどーぞでは撮れるものではないよなあと感心しっぱなしだった。6年分を遡って最終的にはどうなるのかなと思いましたが、時制が現在に戻り2人の"今"を見つめながらまさに"ちょっと思い出しただけ"なのは何だか切ない様な、懐かしい様な、もう戻る必要もないでも確かにあった時間を感じる事が出来た。2人は今を生きているんだなというのをじんわりと感じる良い鑑賞後感だった。観終わった直後は普通かなと思っていたが時間の経過と共に何だかとても貴重な時間を味わう事が出来た作品だったのかもなあと思っている。
 

・それから - 3.5/5.0 (Blu-ray/2022.2.13)

監督:森田芳光。脚本:筒井ともみ。原作:夏目漱石。1985年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。8本目。夏目漱石が原作で珍しく監督の脚本ではない作品。舞台は明治時代。何か劇的で大きな事があるわけではなく、主人公である松田優作が自身の拗らせによって好きな女を親友と結婚させてしまい、取り返しのつかない後悔と自責の念に駆られていくというそれだけのキモい話。これまでの作品で多く見られた森田描写の様な分かり易いものは極力排除されているが、今作の中では数少ないショットとして、且つひときわ印象的な森田描写がある。主人公の乗せた列車での心理描写がやはり図抜けており、これまでとは違い重要かつここぞ!というピンポイントでの森田表現になっているのでそれがより際立った印象。また、物語が終盤に進むにつれて長回しで緊張感のあるシーンが増えていくのも主人公の心情を表している様で面白かった。私の映画リテラシーの低さ故か若干乗り切れない部分もあり、鑑賞後に『森田芳光全映画』を読むとより合点がいき、ちょっとまた観ないとなあと思った。

 

・孤狼の血 LEVEL2 - 3.6/5.0 (Blu-ray/2022.2.12)

監督:白石和彌。脚本:池上純哉。原作:柚月裕子。2021年。今作を観るためだけに観た前作が予想外に良く俄然楽しみにして鑑賞。ですが、感想としてはう~ん。。という感じか。面白くなかったわけでは全然ないのですが、あれだけチャレンジングで面白かった1がある上で観ると今作はシリーズものとしては繋がりもちょっと希薄だし、前作までで積み上げてきた緊張感はどうでもいいのかなと少し残念だった。全く別ものに仕上がっていた。シリーズものを素直に続きっぽく作りたくなかったのかなあとも思うがどうなんでしょうか。軽く観る事が許されている(はず)この「孤狼の血」なので"2はアクション任侠ものだ!"と言われて素直に楽しめば良かったのかもしれませんが。お話自体もショットや描写の気合も前作の方がパワーを感じて好きだった。話題になっている鈴木亮平は別にそこまで、という感じ。もっと残虐に殺しまくる最強のキャラクターなのかと勝手に期待したのが間違いだった。ただひとつ、良かったところとしては、主演の松坂桃李。前作を観る限りではいつも通りの"松坂桃李力(まつざかとおりぢから)が強すぎて何をしてもどんな役でも松坂桃李にしか見えずあまり得意では無い"が出てしまっていたのですが、今作はあまり松坂桃李力(まつざかとおりぢから)を感じず、物語内の日岡にシッカリ見えていたのでその辺りは特に良かった。

 

・ふりむけば愛 - 3.4/5.0 (U-NEXT/2022.2.12)

監督:大林宣彦。脚本:ジェームス三木。1978年。自宅にて時間があったので久しぶりに大林作品を。昨年の5月にリメイク版の「転校生」を観て以来。大林監督の作品は円盤でわりと所持していたり、配信で観られるものでまだ未観のモノもあるのですが、全て観てしまったらもう見終わってしまう感が強すぎて嫌過ぎてなかなか観ない様にしていて今回約10か月ぶりに鑑賞。三浦友和と山口百恵のダブル主演の商業映画なのでもちろんそれなりの中身。鑑賞後に監督のインタビューなど資料を読み込んでみても今作における監督自身の"お話部分"への比重の少なさが良く分かる。(当時交際していた三浦友和と山口百恵の2人の姿をフィルム尻で撮りたいとの事)。なので全編に渡り所謂大林的な演出は抑えてあり、2人がより輝くように自然な方向性で撮られている。多少"らしい"演出は観られるが、森田監督とは違って大林監督の場合はより"遊び心"みたいなものが作家性(特に初期は)として立ち上がってきていると思う。森田監督はよりガチな危なさを感じるので。全体的にさっぱりとしているし、特に何も残らないけど見てよかったと思う(信者)。

 

・ザ ビートルズ Get Back:ルーフトップ コンサート - 採点なし (109シネマ名古屋/IMAX/2022.2.9)

監督:ピーター・ジャクソン。2022年。Disney+にて配信されているドキュメンタリー「ザ・ビートルズ:Get Back」のクライマックスであるアップル社の屋上にて行われたゲリラライブのパートをそのままIMAXシアターに持ち込み、爆音&高画質上映。映画としてどうかは正直あまり考えながら見てなかったのであまりコメントできません。映画としてどうだったかと聞かれれば、あんまり良くなかった様な気もします。配信のドキュメンタリーを全て観てから今作を観るのをお勧めします。ライブ映像としてはとても良かったです。IMAXの音響効果も相まってか、本当にすぐそこの屋上でライブをしているのかなと思う程だったし。4人がせーので音を鳴らす1音目の瞬間は泣きそうになった。ポールがめちゃくちゃかっこいい。

 

・ノイズ【noise】 - 3.1/5.0 (イオンシネマワンダー/2022.2.7)

監督:廣木隆一。脚本:片岡翔。原作:筒井哲也。2022年。日本テレビ製作、藤原竜也、松山ケンイチのW主演、神木隆之介助演とオールスターキャストで臨んだテレビ屋映画。全然観るつもりは無かったのですが何故かじんわりと悪くない評判を受けタイミングも合ったので劇場鑑賞。藤原竜也の映画ってほとんど観ないな。まず、ツッコミどころは満載なのですが、別にこれはこういうものだろうと思いながら観ているので特に気にならず。意外なほどにノワールなというかわりかしきちんとサスペンスを作ろうとしているのか結構集中して観る事が出来た。所々笑える演技も挟みながらも役者陣も良く多少なりとも楽しんで観られた。が、事件の顛末を描いた後。その後。何だか全てをぶち壊すかの様なしょうもない言い訳エピソードが15分ほど続いてからのエンドロール。なにそれ?そんなの必要だった?と。(先日観た「前科者」でも疲弊した描写が今作でも結局出てきて激萎え)またそのエピローグ的に付け足した全てのシーンが惰性にも蛇足にも程があるしこれまでギリギリのバランスで積み上げて来ながらも何とか立っていたそのツッコミどころ達を無神経にも全てぶち壊し何なら今までのシーンも全てバカらしく思える様な結論へとすり替えてしまっている。藤原竜也が逮捕されてからのエピソードは全て不誠実だし、全くもって必要なし。最低です。

 

・ときめきに死す - 3.8/5.0 (Blu-ray/2022.2.6)

監督 脚本:森田芳光。1984年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。7本目。「家族ゲーム」後「メインテーマ」前。沢田研二が謎めいた暗殺者の主人公・工藤を演じる。工藤が暗殺を企てる理由などは一切明かされないので強烈な森田演出も手伝い序盤はこれは一体どこへ向かっていく話なんだろうとかなり不穏さを感じる。「タクシードライバー」の様な冷たさだったり悲しさや、「ソナチネ(93年)」の様な(調べたら北野監督は今作をフェイバリットに挙げており影響はかなりあるだろうと思われる)全編に渡る緊張感のある音楽によりここにしかない唯一無二な画面が続いていく。ただでさえ聞き取りにくいセリフの中で、更に小声で沢田研二がぼそっと呟く"殺すぞ"や、腕が抜けないビン(そうなるだろうと思ったよw)、岸部一徳がダル絡みする海のシーンなどなど、挙げればキリが無いですがどれも作品に不思議な浮遊感を持たせている。色味の少ない画面で続く物語は工藤が自決する真っ赤な鮮血で終わりを告げる。とにかく全てがネトっと絡みつきそれでいて不思議と乾いている様な言語化が難しい作品だった。すごい。

 

・フレンチ ディスパッチ  ザ リバティ、カンザス イヴニング サン別冊 (原題:The French Dispatch/THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY, KANSAS EVENING SUN) - 3.6/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2022.2.6)

監督 脚本:ウエス・アンダーソン。2022年。待ちに待ったウエス・アンダーソン新作。期待し過ぎたか個人的にはイマイチ乗り切れなかった。全編とまでは言わないもの全編モノクロームな画面がメインで物語は進んでいく。まず真っ先に言いたいのは別にモノクロが嫌だという訳ではないのですが、ウエス・アンダーソンの映画は絶対にカラーで観たい!!と。もうわりとそれだけに尽きる気がする。ウエスのカラフルな世界に没入するからこそ得られていた感覚というのが確実にあるのだなと改めて感じた。お話自体は小編を4つ並べた構成になっており、それぞれが繋がっていたり、意味を含んでいたりする訳ではなかった。時折、一瞬カラーになったりとかするのだがそのタイミングに脈絡や理屈が無く、そのせいでモノクロである理由も今一歩飲み込みづらかった。漫画などが挿入されるのは雑誌を模しているのでと思えばそうかも知れないし、カラーページになったりモノクロぺージになったりするのもそれと言われればそうかも知れないが、、うーむといった感じだった。ちょっと期待外れだった。

 

・コーダ あいのうた (原題:CODA) - 3.8/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2022.2.1)

監督 脚本:シアン・ヘダー。2021年。日本公開2022年。劇場でかかっている予告編の限りでは観る予定はなかったがれいによってアトロクのガチャで当たったので鑑賞。両親が聾者である子供(この状況の事をCodaというらしい)が主人公。極私的な話を非常に普遍的な話へと着地させる見事な作劇。また、手話を使った演技というか実際の聾者の役者さんが第一言語として扱う手話を織り交ぜながら劇中すすんでいく家族の温度感や雰囲気はとてもリアルで演技自体から作品全体に引き込まれていく感じがあり良かった。もちろん都合の良い場面や、え、これどうすんの?みたいな放置された問題点みたいなものはあるが、別にそこはそことして放置で良い作品だと思うので、これでいいのだと思う。家族は唯一な物であり同時に逃れられない呪いでもある事を丁寧に描いた。親子間や兄妹間、関係性が変えられない事が強さでもあると今回は家族モノの良い面が特に印象的だった。いわゆる家族という呪いものではあるのだが、とても爽やかで観ている最中も見終わったあともかなり感じの良い作品だった。同じく家族という呪いものを描いた「ヘレディタリー継承」とは大違いだ("青春の光と影"が大事な場面で使われているという意外な共通点)。

 

 

■2022年1月に観た映画

25本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編1本

 

・孤狼の血 - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.31)

監督:白石和彌。脚本:池上純哉。原作:柚月裕子。2018年。2が評判いいのでそれを観る為にも1をと思い鑑賞。白石監督の作品は他のものも観たいな〜と思ってチェックしているものはあるものの何となく後回しにしてきたので初鑑賞。始まって即「仁義なき戦い」シリーズのオマージュとまでは言わないにしても敢えてなぞって作られているのがよく分かる。その時点で"あ、これは別に真剣に観てもしょうがないやつだ"と悟る事が出来たので非常に軽く観る事が出来て良かった。大真面目にこんなものは作らないだろと思うので、きちんとこういう導入で観客の鑑賞態度をある程度導いてあげるのは作り手としては正解だと思う。話も結構熱い話で、終盤役所広司が死んでからはラストまで緊張感高く見る事が出来た。ゴア描写も臆する事なく臨んでいたし、肝心の土左衛門死体や生首などもかなり頑張って作りこんであったのでとても好感が持てた。良い仕上がりだったと思う。うんこから始まるファーストショットも度肝を抜かれた。うんこ、ゲロなんでもございでかなり清々しかった。見終わってから振り返ると物語のフィクション性が非常に高かったなあと観ている時よりも更に感じたのでこれは作劇の上手さなのかショットや編集の上手さなのか演出の上手さなのかわからないが良く出来ているという事なんだと思う。主演の松坂桃李は出てくるといつも思うのだが松坂桃李力(まつざかとおりぢから)が強すぎて何をしてもどんな役でも松坂桃李にしか見えずあまり得意では無い。もちろん今作もそれはそうで、何とも言えないなあとも思う。

 

・ウォーターボーイズ - 2.8/5.0 (WOWOW/2022.1.31)

監督 脚本:矢口史靖。2001年。どういうわけか鑑賞。当時は結構ヒットしていた様に記憶している。矢口史靖監督作品は初鑑賞。始まってわりとすぐの段階でこれはしょうもないなというのが丸わかりでどうやって楽しもうかなという感じ。最後のシンクロのシーンがきっと評判であるはずなのでそこを期待してなんとか最後まで見たという感じでしょうか。肝心のクライマックスに関してですが、確かにシンクロのシーンはすごい。というか熱くなるものがあるなあとは思うし、実際に夏に劇場のスクリーンと音響で観たらそういう物として面白いのだと思う。が、それはそれとして別にいいとしてもそこに至るまでのロジックの積み重ねだったり、描くべきものの欠如というか基本的であり非常に大切な部分がごそっと抜け落ちてしまっており全くもって説得力のない映画になっている。何故のけ者にされたはずのシンクロ軍団に人が集まりしかもシンクロにきちんと取り組んだのか(テレビが来たというだけではさすがに弱いのでは?)、なぜ完全素人の連中があれほどまで上達したのか(練習シーンもさすがに少なすぎる)、竹中直人のキャラクターのリアリティと行動原理の理屈のなさ、などきちんと描くからクライマックスに説得力と感動が生まれるはずのプロセスを描いてなさ過ぎる。これではクライマックスを迎えても都合の良いお話にしか思えない。(様々事情があったのかもしれませんが)映画自体のランニングタイムが90分と結構タイトな作品なので、こればっかりはもっと時間を使って(30分たっぷりとそれらの構築に使って)120分くらいの映画にしても良かったのではないだろうか。"長いんだよ!短くしろ!"と思う映画はあっても長くしてちゃんと描写してくれと思う映画も珍しいなと思う。最後やりっぱなしで終わる感じはソリッドではあるしジャンル映画の潔さは感じるが、もっときちんとしたものにする必要はあったはずだと思う。

 

・赤い影 (原題:DON'T LOOK NOW) - 3.8/5.0 (DVD/2022.1.30)

監督:ニコラス・ローグ。脚本:アラン・スコット。クリス・ブライアント。1973年。イギリス映画のオールタイムベストの上位にランキングされているこちらを。配信系にはなかったのでレンタルDVDにて鑑賞。先日観た「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」でエドガー・ライトが影響を公言しているのも手伝って興味がわいた。人通りの少ないイギリスの街並みだったり路地裏での一連のシークエンスには「ラストナイト〜」に通ずるものを感じた。タイトルにもある通り、主人公は冒頭で失った娘(亡くなった日に赤いアウターを着ていた)への想いに取り憑かれ、時折現れる赤い影に翻弄されるが...という物語。徐々に狂って主人公の姿が印象的だった。中盤から"赤い(服を着た)影"が画面内にチラつくようになり、結末としては追い詰めたその赤い女は娘の亡霊ではなく異形の老女だったというオチなのですが、まあこれはそのもの自体が怖いというよりは主人公の無念や後悔でよって突き動かされ狂っていく様が怖いという感じだった。サブリミナル的に現れる数々のショットも当時的には怖かったのかもしれません。主人公は未来が見える能力を持っており、その力が物語を引っ張っていくのですが、結末がわかった上でこれまでの話を振り返るとぞっとする様な話だったなあとも思う。それらを知った上で2回目を見ても楽しめるかも。ラストの直前に見る葬列は実は自分の葬列だったという仕掛けは恐ろしかった。

 

・ミッチェル家とマシンの反乱 (原題:The Mitchells vs. the Machines) - 4.3/5.0 (Netflix/2022.1.29)

監督:マイケル・リアンダ。脚本:ジェフ・ロウ。2020年。以前より評判が高かったので観たいと思っていましたがNetflix作品の為なかなか見られずにいたこちら。課金期間がもうすぐ終わるって事で滑り込みで鑑賞。良いと聞いてはいるもののどちらかと言えば苦手ジャンルの"アニメ"なので正直不安ではありました(いざメインビジュアルを見てもあまり好みではなかった)が、見始めてみたらこれがもうすごいのなんのって。お話としてすごいわけでは決して無いのですが、まずは何よりもその画。背景にしてもメインの登場人物にしてもあくまで手書き風というか(なんと形容していいかアニメに対してのリテラシーが無いのでどういっていいのかわからないのですが)、完全なCGアニメとは違う、でも完全にデジタルっぽい不思議なこれまで見た事の無い質感のアニメーションで非常に冴え渡っていた。この画面を見るだけでも一観の価値はあるのではないでしょうか。めまぐるしいテンポで繰り出されるシークエンスはトランス映像っぽいというかはっきりとドラッグ描写の様な場面も。劇中のミッチェル家の活躍と呼応する様に超ハイテンションで繰り出されるギミックの連続にクラクラしっぱなしでした。話は平板なものですが、ものすごいテンションで積み上げてきた家族の物語が"再生"を迎えるクライマックスではやはりほろりと涙が。家族の活躍という部分ではどうしてもクレヨンしんちゃんの劇場版を思い浮かべました。作品について調べると、「LEGO ムービー」「21ジャンプストリート」のフィル・ロードとクリストファー・ミラーがプロデュースをしているのも納得の仕上がり。やっぱりすごいよこの人たち。

 

・前科者 - 2.2/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2022.1.28)

監督 脚本 編集:岸善幸。原作:香川まさひと。月島冬二。2022年。WOWOWのドラマシリーズとして放送されており、第1話は観ていましたがそれ以降は観ておらず、映画で初鑑賞(と思いましたがドラマ版の3年後という事らしいので話は被ってなさそう&ドラマの方が評判が良い)。始まって早々に演技演出のつけ方に"ん?"というザワザワしたものを感じ、嫌な予感はしましたがまあ見事に的中。これは酷い。早くも今年ワーストが出たという印象。何をどこから言っていいのか分かりませんが、こんなに雑な脚本は無いし、今時どうかと思うくらいに演出過多だし、けったいな音楽を仰々しく垂れ流すし、もう知ってる情報を何度もくどくどと回想(しかもセピア調(たしか))で見せてくるし。子供が虐待されている映像なんて言葉としての情報だけでももう十分にわかってるのに(説明台詞で〜というツッコミもありますがそこは百歩譲って許しますが)しょうもない映像で何度も見せてくるので本当に腹が立った。これ効果的だとか思ってんの?とマジで。作劇にしてもグダグダグダグダやってるし、こんなキャラクターいねえだろとツッコミたくなるキャラ造形しかないし、登場人物の着ている衣装や、部屋の美術、というか石橋なんとかと若葉竜也が被ってるカツラとかマジでなんなの?コントなの?とか。言い出したらマジでキリが無いですが、もう全てが低俗で安直で下品。こんなにはっきりと酷い新作映画をスクリーンで観る日がくるとは思わなかった。思い出しただけで腹が立ってくる。調べたら原作が漫画であるらしいので、別にこのお話自体は(どうでも)いいですけど、映画としてはどうなの。マジでなめんなよという感じ。どんな年寄りが作ってんだよと思って監督の年齢見たらお察し。しょうもないジジイに作らせるなよ。こんな映画に出た役者が可哀そう。だし、仕事は選んだ方がいいと思う。

 

・野いちご (原題:SMULTRON-STALLET) - 3.4/5.0 (DVD/2022.1.27)

監督 脚本:イングマール・ベルイマン。1957年。三大傑作選でデジタルリマスター再上映が過去にあったこちらの作品を鑑賞。ストーリーラインはシンプルなのですが、描写がなのか表現かなのかやはり少し難解な印象を受ける(同じく傑作選の「第七の封印」とかほどではないのですが)。モノクロ画面は非常に丁寧に構図され、見やすさも同居している。何度も夢に落ち、過去の自分の思念の様なものや(自分に対する)周りの人達と出会い、主人公自身が生きる意味や、生まれてきた意味、家族や周りとの関わり、死ぬことへの恐怖、などこれまでの人生を振り返るロードムービー。所々笑えるシーンがあるのも良かった。視聴環境が悪かったせいか、、いまいち没頭できなかった。「第七の封印」しかりまた見直さないとなと思う。

 

・そこにいた男 - 3.0/5.0 (U-NEXT/2022.1.25)

監督:片山慎三。脚本:岨手由貴子。2020年。「さがす」を観た流れでU-NEXTで"片山慎三"検索、脚本が「あの子は貴族」の岨手由貴子だったので即鑑賞。33分の短編作品。冒頭から血塗れ全裸局部モザイク男とそれを刺した女の超絶修羅場(というか殺人現場)から始まり、ただ事ではない感全開。その女と男の間に何があったかを事情聴取されながら振り返るというお話。まあアホな職業:自称俳優の男に貢がされた結果、本妻への嫉妬で刺し殺してしまうというただそれだけの話で岨手監督らしいかと言われればそういったものはあまり感じなかった。ラストに刑務所の面会で本妻がありがとうと言いに来たのはものすごく意地悪だし、これ以上ないくらいに堕ちるよなあと思うので短編のオチとしては有効なのかも知れない。結局夢オチでチャンチャンという感じなのですが、ラストカットが男が自販機のおつりを拾う惨めなケツで締められていて笑えるし、まあ唯一この30分の救いの様な気もした。ラストシークエンスは非常に片山監督らしいチャームがあって面白かった。

 

・さがす - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2022.1.25)

監督 脚本:片山慎三。2022年。「岬の兄妹」の片山監督商業映画デビュー作。123分。驚くほどの丁寧さと重厚さに商業作品1作目にかける気合いをビンビンに感じる。冒頭から結末まで練って練って挑んだんだだろうなあというのが画面からも分かる。丁寧が故に少し冗長に感じる箇所も正直無くはないが、それでもおつりが来る程の多層さで全然面白いし、すごいクオリティのものを作ったなあという印象(「岬の兄妹」が個人的倫理観からあまりノレなかったので余計に)。まさかの展開の連続で進んでいく物語は、作劇の仕方次第ではちょっと破綻しかねないなと思いますのが今作は見事なバランスでそれらを成立させていた。大きく3つのパートに分かれているのも転換点になって良い(とも思うし、2章目の途中とが若干長いなと感じたので悪い部分もあるのだろう)が鈍重に感じる部分も画面の緊張感で引っ張っていけるのが凄いなと思う。今後の活躍が更に楽しみになった作家の1人だ。今作はある程度の予算が付いた映画なのだなというのもキャスティングからして分かるのだが、アトロクに出演した際に"スタッフの人数を減らして経費を抑え、その分撮影期間を長くする事に充てたい"という発言がとても印象的だった。

 

・ピンクカット 太く愛して深く愛して - 2.9/5.0 (Blu-ray/2022.1.24)

監督 脚本:森田芳光。1983年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。ピンクゾーン2本目。今作もまたただのピンク映画では終わらない森田監督の矜持を感じる。なんなら1つ前の成人映画「(本)噂のストリッパー」よりも好き放題に無茶苦茶やっていると思う。言い出したらキリがない数々の森田的なシーンの連発にクラクラする。好き放題を優先した結果なのか、そもそものお話がそうだったからこうなったのかは分からないが話はもう全然面白くなくて作品全体としてどうにもならないものになってしまっているかなあと思う。"のの字かいてハッ"や"エッサッサ"など謎の名言もこの映画のチャームだ。低予算なのかなんなのか女性陣が全くもって可愛くないのが今作のダメな所だろう。この後に「家族ゲーム」に続いていくなんて信じられない(しかも同年製作)。

 

・エンター ザ ボイド (原題:ENTER THE VOID) - 3.3/5.0 (DVD/2022.1.23)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2010年。何だかんだ好きなんですよね、ギャスパー・ノエ。どれを見ても"もうやめて!"となるのですが何だかんだ見てしまうし、どっちかと言うと楽しめている。というか、何よりもこんな映画撮る人ギャスパー・ノエ以外にいないでしょって作品を毎回更新してくるのがすごい。良くも悪くも。今回観たこの作品は基本ずっと俯瞰ショットというか天井ショット。もうこれだけで狂っているし、またそれが開始10分ほどで死ぬ主人公の魂が昇って彷徨っている視点的なものから作られている画面なので仰天。過去も現在も時制までも軽々飛び越えて、両親や妹、家族への想いと後悔が行き場を失くして彷徨う。これは心霊映画でもある。最後の最後には性交からの射精からの受精からの出産と、"輪廻(転生)"をアイコンに締めくくられる今作にギャスパー・ノエの基本的な人間愛のようなものを感じずにはいられなかった。

 

・クライ マッチョ (原題:Cry Macho) - 3.0/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2022.1.21)

監督:クリント・イーストウッド。脚本:N・リチャード・ナッシュ。ニック・シェンク。2022年。イーストウッド御大91歳にして監督業50周年、監督主演作品。さすがにイーストウッドパワーか平日昼間でもっとガラガラかなと思いきや、32人の客入り(ほぼ全てが白髪の老人という!)。正直、イーストウッド作品はほんの少ししか観た事が無いのですが評判も良いし(?)劇場で見てみる事に。約100分の作品なのですが、何だかこう、、途中で眠たくなってくるくらいには興味の持続が難しく。。まずもって話自体が全然面白くないし、イーストウッドもよぼよぼで何の説得力もないし、脚本もあれ?って感じでこれは一体どう楽しめばいいのだろうかとわりとちゃんと分からなかった。画面のクオリティはある程度担保されているし、きちんと観られる作品には出来上がっているのですが、これは誰が喜ぶの?という感じ。作劇的にはものすごくスタンダードなドラマ作品の手順をきちんと一個ずつ踏んだ古くっさい映画を見せられて困惑(というか苦笑い)した。まあ劇場にいた年寄りは喜ぶのかも知れないのですが。ここ数日「偶然と想像」「こんにちは、私のお母さん」「エッシャー通り通りの赤いポスト」と情念の強い作家性が燃え滾る作品を立て続けに浴びていたので、かなりしょぼく、そしてイーストウッドのジジイくささというか衰えだったりもう現役では到底無理でしょ感を強く感じてしまった。むしろこの作品こそこんなんで許されるのはイーストウッドが撮って出ているからであってこれも強烈な作家性が無いと成立しないものだとは思いますが、うーむ。といった感じでしょうか。。御年84歳で同じく老境で輝くリドリー・スコットが「最後の決闘裁判」や「ハウスオブグッチ」で現役監督とも張り合える作品を連発しているのを考えると。。余計に。

 

・エッシャー通りの赤いポスト - 3.5/5.0 (シネマテーク/2022.1.20)

監督 脚本:園子温。2021年。平日昼間観客は15人ほど。前週公開初日に監督と役者3名が登壇する舞台挨拶もあったようです。前作「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」はあまりにも評判が悪くて結局スルーしてしまったし、「愛なき森で叫べ」はNetflix未課金で観てないし、というか人気者になってからの園作品にウンザリしていてそもそも当分観てないしで、かなり久しぶりに園子温の映画を観た。しかも劇場で。そんな体験でしたが、まず結論から言いたいのは"これが園子温だよ!"と。"『俺は園子温だ!!』ってこういう事だよね"と。正直良かったです。園子温の映画が好きだったんだなと改めて自覚する事が出来た。映画としての出来は全然良くないし、約2時間半の冗長にも冗長、無駄や破綻も多いかなり荒い脚本や作劇ではあるのですがラスト10分のカタルシスに向けてのテンションの上がって行き方やラストカットへの勇気には"この園監督が観たかったんだよ!!"とこちらも思わず熱くならずにはいられなかった。ひっそりと落涙。エキストラが主人公でありながらその後ろにいるエキストラや、そもそも自分の人生の主人公は自分自身であり、誰のエキストラでもないし、誰もが誰かのエキストラでもあるという円環構造みたいなものをお芝居的なカタルシスに持っていく力技はあっぱれだった。<俺>の旗を持つ奴がいたり、監督も、助監督も、役者になりたい何者でもない奴らも全員、"登場人物(プロデューサー的な奴らは抜いて)が全員園子温じゃん"と気付いた時には思わず笑みがこぼれた。と同時に園監督も苦労したんだなあとサブカル的な重荷を思いっきり彼に背負わせた我々ファンの責任も何だか感じてしまった。2019年の「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」の撮影中に心筋梗塞で倒れ生死の境目を彷徨った監督が原点回帰をしてこういう作品を撮ろうとしたのはすごく納得がいく。大林監督然り、最後には自分自身のための映画を撮りたくなるのかなあと感じた。

 

・こんにちは、私のお母さん (原題:你好,李焕英 Hi, Mom) - 3.9/5.0 (2022.1.18/伏見ミリオン座)

監督 脚本:ジア・リン。2021年。日本公開2022年。昨年約900億円の興行収入世界第2位になったこちら。普段ならばスルーなのですが、例によってアトロクのアレで渋々とポスタービジュアルを見てみると"若き日の母に会えたら、あなたは何をしますか?"という文言。これは危ない予感がするぞ...(好きなタイプだろ)(もう戻れない時間と対峙するシーンに弱すぎる)、と感じながらもまあそれなりにナーメテーターな態度で劇場へ。いつも通り予告編などは観ずに臨みました。平日昼間で25人くらいの客入り。普段よりも更に年寄りが多い場内。開始早々赤ちゃんが出て来るだけでもうちょっと涙腺がやばかったのですが(なんなんだ一体)、それも束の間、開始5分から1時間40分ほどまでの約95分は本当につらく、ひどく、なんだこれはと。主演のデブブスオバサン、安っぽい画面、男尊女卑、つまならいギャグ、マジで2021年に作られた映画なのか?と叫びたくなるシーンや演出、描写の連続が拷問の様な時間だった。"うわ~これはハズしたな~"と思ったし、本当に途中退室したいくらいには早くも今年度ワーストが決まったなというテンションでした。が、が、が、ラストの30分でこれまでのふざけた時間を巻き返して通り過ぎていってしまう位の監督の情念(鑑賞後に監督が主演脚本、実話ベースという事を知る)(納得)が力ずくで風呂敷を畳み大団円。最後は大号泣。自分史上映画館で一番泣いた作品になってしまった。嗚咽を殺すのがつらかった。と、まあこれだけ読んだらまったく意味が分からないのですが本当にこの通りで、前半部分はもう本当に出来が悪いしわりと全てがしょうもないのに最後の最後には文句を言えない仕上がりなこういうモノに出会ってしまう事が映画を観る面白さだと痛感しました。前半のクソみたいな展開や出来事も全部最後のためにあったのだと思うとまた滝の様に泣けてきた。言語化はし難いのですが、監督はそもそも映画人じゃないし(超有名なコメディアンだそうです)、そもそも優れた映画を作るつもりで多分やってないし、母親への想いだけが執念の様に1本の2時間以上の映画を作らせたという事実にもうそれで良いよと、もうそこまでされたら文句ないです、すごいっす。と言わざるを得なかった。

 

・偶然と想像 - 4.2/5.0 (シネマスコーレ/2022.1.17)

監督 脚本:濱口竜介。2021年。「ドライブマイカー」が話題の濱口監督作品。去年暮れより公開されてまだまだこちらもヒット中という感じでしょうか。平日昼間で22人くらいの客入り。「ドライブ~」は何だか第一印象であまり乗り気になれずにスルーを続けていますが今作は元々観ようと思っていたし、アトロクの課題作品にも選ばれていたのでようやく鑑賞。終わってまずは、恥ずかしながら"濱口監督作品を観た事が無かったのでこんなふざけた態度だったんです!"と自分を戒める。とんでもない作品。脚本の出来が評価の的となっている濱口監督ですが、勿論この映画もとても良く出来た脚本なのですがなによりも、演出やカメラワーク、この短編3編に仕組まれた仕組みなど、かなり細かい部分の積み重ねが総合的に作品の価値をグググっと押し上げているという事に感心せざるを得なかった。いくら脚本が素晴らしいからと言っても普通はこうはならないでしょう。棒読みな演技、ロングショット、引きの画、トータルで非常に映画的で豊か。第2話の教授と女生徒の会話はコントの様なのにすごく人を救う(勿論私自身も)セリフがサラッと入っていて、染みた。第1話のホン・サンス風ズームで笑った直後に現れる時空が歪む演出が起きて驚いたし、それが起きる作品なんだということ自体にも驚いた。その瞬間にこの作品に対しての態度だったり、観方が分かった気がして肩の力が抜け残りの時間を存分にを楽しむ事が出来た。これが出来る監督はすごい。というかすごすぎる。3つの短編が無関係な様で根底では連なっているラストには落涙なしには見られなかったし、こういうものを誰か(人間)が考えて作ったんだという圧倒的な事実に泣けた。映画は話の内容よりもやはり作家性だなと改めて思わされた。パンフレットは1200円と少し高かったが内容は充実しており、読むのが楽しみだ。「ドライブマイカー」を始め他の作品も観なければ。そしてシネマスコーレでは濱口監督全作品上映が来月あるらしいので観られる限り観ようと思う。

 

・(本)噂のストリッパー - 3.2/5.0 (Blu-ray/2022.1.16)

監督 脚本:森田芳光。1982年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。ピンクゾーン1本目。ストリッパーに片思いする童貞君(暫定)のお話。どこが森田監督らしいかと言われればそもそもこのストリップ小屋自体が森田監督らしいというか。こんなカラフルでふざけた小屋があるのかな?と。当時を知らないので何とも言えませんが。そして、片思いをする童貞君のストリッパー彼女への想いのアプローチの仕方(口調など)や、相手にしてもらえないフラストレーションをセフレ(こっちのが可愛くて巨乳!)で晴らそうとするノリなど、どうにも分かるというかなんというか。。若い、若すぎる男特有のダメさというか、(青春時代を過ぎた年齢の自分から見ると)可愛げというかそういったものを垣間見ている様な気がして彼の事は嫌いじゃないんです。それにしても"恋人が帰ってきたから"というセリフは怖すぎる。最高。

 

・仁義なき戦い 完結篇 - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.1.16)

監督:深作欣二。脚本:高田宏治。原作:飯干晃一。1974年。シリーズ5作ようやく完走。3作目までは劇場で35mmフィルム上映で間に合って観ていたが一度スルーしてしまうとなかなか食指が動かない。4作目に関しては主人公である広能が全然出てこなかったりして何ともという感じなのですが、それは完結編である今作も同じで、どうしても後日談的なオマケの様に感じてしまうのは無理は無いかなと思う。しかしながらバイオレンスシーンの頻度やタイミングはメリハリが効いていてとても良かった。何も起こってないところにもドラマがあり、このシリーズ自体の話の面白さや原作の力をより感じる結果となった。今更知ったのですが、これ初作から全部走り切るまでに3年かかってないというまさかのスピードで、すごいなと思う。

 

・ハウス オブ グッチ (原題:House of Gucci) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2022.1.14)

監督:リドリー・スコット。脚本:ベッキー・ジョンストン。ロベルト・ベンティヴェーニャ。原作:サラ・ゲイ・フォーデン。20221年。ようやく今年初の大作かなといった感じ。平日昼間で観客は30人ほど。お正月にTVCMをバンバンやっていた効果か、開演ギリギリに女子高生4人組が慌てて入ってきて着席。(自分は)普段あまり観ない光景だった。本編の方は、あくまで実話を元にした"フィクション"ということで実際はここまででは無かったようですが、有名ハイブランドの歴史あるお家騒動をエンタメに昇華したリドリースコットの手腕は安定そのもの。だが、良くも悪くも全編に渡りジトっとした雰囲気でまわりくどく人物描写をしていくのでどうしても冗長に感じてしまった。何よりも登場人物が全員(とまでは言わなくても主演のアダムドライバーとレディガガは)が馬鹿過ぎてあまりノレなかった。元々は一族経営していたが今はグッチ家の人間は誰もいないという様な内容のテロップが最後に出た辺りはノンフィクションの面白さを感じた。

 

・女優霊 - 3.3/5.0 (DVD/2021.1.11)

監督:中田秀夫。脚本:高橋洋。1996年。昔から名前は知っていたし、事あるごとに名前が挙がるこの作品。ようやく鑑賞。荒い画面や拙い演技が恐怖のイメージをじわじわと加算させる。"ぬぼ~っと幽霊が後ろに立っている(だけ)"という恐怖演出は結構新しかったようですが、2022年に観ればまあ、ね。リアルタイムで観られたらもっとハマれたのかも知れませんが。話自体も何だか集中力が保てず、70分くらいしかないのにやけに長く感じた。「リング」の2年前。ここから「リング」に突入していくのかと思うと、味わい深かった。し、「リング」の片鱗を魅せる様な場面は箇所箇所に存在した。

 

・ただ悪より救いたまえ (原題:다만 악에서 구하소서) - 3.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2022.1.10)

監督 脚本:ホン・ウォンチャン。2019年。日本公開2021年。観ようか迷っていましたがSNSでの評判高く、今年まだ映画館に行けてなかったので勇んで鑑賞。公開よりわりと経っている平日昼間で客入りは10人。「新しき世界」のイ・ジョンジェとファン・ジョンミンのコンビ。"韓国ノワールバイオレンスアクション"というと何となく温度感とか、雰囲気は分かるのですが、まあそんなイメージ通りの作品でした。前半が結構ちゃんとつまらなくて、"うわぁ、これマジかよ..."と思っていましたが主役の2人が出会って物語がようやく動き出す後半からはそれなりに楽しめた。ただ、アクションシーンでスローモーションからのドン!とか"今時そんなのやるか?"と思ったし、そもそもアクションシーンが小出し過ぎるし、残忍な殺し方をしているつもりなのですがそのシーンがどれも観た事あるやつだったり(吊るして腹を裂くのは「プッシャー3」で見てるよ)、肝心のところを映してなかったり、結構不満な部分は多かった。イ・ジョンジェが格子越しにキマった目をするシーンとか、クライマックスのオカマが子供を抱えて逃げる後ろで大爆発が起きるシーンとかは印象的だった。オカマのシーンは何なら泣きそうになった。多少良かったですが、まあ「新しき世界」が素晴らしいのでわりと普通な感じでしたね。

 

・シブがき隊 ボーイズ&ガールズ - 3.4/5.0 (Blu-ray/2022.1.9)

監督 脚本:森田芳光。1982年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕しています。「の・ようなもの」を先週再鑑賞したので、今回はこちら。2作目はアイドル映画、2,3作目はピンク映画、4作目が「家族ゲーム」なので、正直この2,3,4作目はいきなり飛ばしたくなるゾーンな気もしなくはないのですが、もちろんきっちりと順番に見ていきます。まずはシブがき隊の若さが光る。相手役の女の子たちも可愛すぎないところがgood。70分ほどで終わるジャンル映画(しかもジャニーズアイドルもの)なのでそもそも期待はしていないのですが、きちんとタイトだし、ティーンが夏休みに観る分には楽しめる作品にはしっかりとなっていたのではないでしょうか。色んな制約がある中撮ったであろう事は安易に想像できますが、このまとめあげ力は森田監督の手腕というかセンスなさるものか。また、冒頭から廊下に立たされるシーン、坂道を大量のトイレットペーパーが転がっていくシーン、何よりも"畳のアミダ"(なんなんだそれは)、クライマックスのカラフルな照明と共に想像の世界(が現実に見える世界かもしれない)など、きっかりと森田監督らしいシーンも連発されており、良かった。鑑賞後に森田芳光全映画本で読みましたが、まだまだポッとでの新人である監督には周りのスタッフの風当たりが強かったという苦労話が印象的だった。

 

・浅草キッド - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.9)

監督 脚本:劇団ひとり。2021年。せっかくNetflixに課金しているのだから今月はNetflix月間だという事で新作のこちらも鑑賞。今は映画会社よりもNetflixの方が潤沢に製作費をかけられるのは本当の話で。劇団ひとりは「晴天の霹靂」ぶりの監督作品。ひどくはなかった前作ですが、色々批評された事も踏まえて手を出してなかったのか(賢いと思います)、久しぶりのメガホンとなった。今作に関しては7,8年前から是非とも映画化をしたいと構想を練り、様々な映画会社に自ら企画を持ち込んだ様ですが、ようやく作品化になったらしい。柳楽優弥と大泉洋のダブル主演が物語をグイグイと引っ張っていく。劇団ひとりの作劇や演出はとても丁寧で(丁寧すぎるくらい)、観客誰一人として置いてけぼりにしない親切設計。それでも嫌じゃないくらいにはいろいろなバランスも上手く撮りながら構築している様に思う。が、映画を沢山観ている人間からすればどうしても冗長に感じたり、大げさに感じたりする部分というのは沢山あるのですが。今回もしっかりと泣かせに来ているある意味安定の"劇団ひとり節"の様なものが炸裂していた。というか、<ゴッドタン>などで彼がアドリブ演技している時の濃い味描写がそのまま映画になった様な感じなんですけどね。ラストの結末後もダラダラとしていたり、それぞれの描写が長かったりと、かなり言いたい事もありますが、個人的には結構好きなので応援しています。特に、前作にも今作にもあった"過去の自分(または仲間)"と今の自分が遭遇したり、もう戻れない時間を浴びるシーンなどは好きな表現方法なので、実際監督のやりたい事はよく分かる。

 

・パワー オブ ザ ドッグ (原題:The Power of the Dog) - 3.9/5.0 (Netflix/2022.1.8)

監督 脚本:ジェーン・カンピオン。2021年。こちらも話題の作品。まずファーストカットからとても配信作品とは思えないクオリティで驚く。少しずつサスペンスが紐解かれていく感覚が非常に気持ちよく、128分と短くはない尺が全く気にならなかった。主人公のフィルはどうしても無茶苦茶な男なのだが、最終的には少し可哀想にも思えてきた。主人公兄弟、嫁、子供とどのキャラクターに対しても深いキャラ描写が豊かさに繋がっており、一度見ただけでは見逃している繋がりが多くある様に感じた。ジェーン・カンピオンという監督の作品は初めて見たが他のも是非とも見てみたいと思う。フィルとピーターのエピソードで、犬の影きっかけなのが可愛いなと。ちょい役で出ていたトーマシンマケンジータソに萌えた。西部劇ではないが100年前のモンタナが舞台という事で広大な自然は大画面が生える。これはせっかく素晴らしい画面を作ってもスマホやタブレットでは伝わらないであろう。ホームシアターを作って本当に良かった。し、Netflixの潤沢な資本力に驚く。こういった作品を連発していくのであればうちの環境であれば全然映画館行かなくても幸せになれちゃうなとも思った。下の「ドントルックアップ」も今作も劇場公開短い期間でされてもいたのですが、何となくスルーしてしまっていた。今後も期待をしている。

 

・ドント ルック アップ (原題:Don't Look Up) - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.3)

監督 脚本:アダム・マッケイ。2021年。オールスターキャストで話題のこちらを。映画館で観ようと思っていたが上映時間の長さと、1500円使ったら(1100円の鑑賞料を抜いたら+400円)1か月間他のNetflix作品も観られるのならば配信で良いなと思い鑑賞。スマホやテレビ画面ではちょっと見るに堪えない(間が)シーンもわりとあったがこういう時に自宅である程度の鑑賞環境が整っていることは素晴らしいなと思う。アメリカでも日本でも同じ事が起こっているんだなあとボケっと見てしまった。が、基本的には面白かったのでしっかりと集中して完走した。なんだかかなりシュールに感じた。もっとわざとらしく笑いを取りに行ったりとかできるはずなのにしない脚本とか、待ち時間みたいな物がわりと多い作劇とは結構不思議な映画だった。特にラスト付近、最後の晩餐をしに、元家族の元に向かうディカプリオ一行のシーン。その選択自体もグッとくるものがあるが、何よりも最後の晩餐シーンの描き方がとても印象的だった。ラストのCGを使った崩壊をしていく様はもっと映像的に笑わせても欲しかったなあと欲張りな事を想ったが、このクライマックスはかなり好きなシーンだなと思う。(とか書いてたらもっと点数上げてもいいかなと思ってきた)

 

・E.T. (原題:E.T. the Extra-Terrestrial) - 3.6/5.0 (WOWOW/2022.1.2)

監督:スティーヴン・スピルバーグ。脚本:メリッサ・マシスン。1982年。お口直しにと言ったらアレだが、新年にまだ見るぞという事でなんと見たことの無かったこちらを。あの指のシーンはもっとクライマックスに出てくるもんだと思っていたらかなり序盤で出てきて驚いた。有名な自転車のシーンはしっかりとクライマックスで出てきてくれて安心した。というか、あのシーンのアメイジングさは40年後の今観てもしっかりと輝いていて、のめり込みながら観たら泣いてしまうかもなあと思った。人ならざる者と共に、人間の力では出来えない飛行を行う。しかも月をバックに。こんなにも映画的でロマンティックで豊かな映像があるだろうか。また今でこそ映像で何でもやれるようになってしまったが、当時このシーンには相当のパワーがあっただろうなあというのは今観ても非常に良く分かった。なんだかとても良かった。E.T.とあんなにコミュニケーション取れるのは驚いたし、コインを入れて除く双眼鏡みたいなルックスがキモくて良かった。

 

・カリスマ - 3.4/5.0 (WOWOW/2022.1.2)

監督 脚本:黒沢清。1999年。新年一発目は何にしようかなと迷いながらもWOWOWで録画した黒沢清の作品群が溜まっていたので未観のこちらを鑑賞。"森の中の1本の木が森全体を支配するカリスマだ"というとてもシュールな設定の物語。森で起こっていることと、実際の人間世界でのことを同じなんだよと並べていることは分かったが個人的にそのテのお話にあまり興味が持てないせいか結局のところイマイチのめり込めなかった。黒沢監督らしい嫌な緊張感と独特のタッチを味わう事は出来た。とにかく役所広司の奇怪なキャラクターや不穏な画面、そういったとことはいかにも黒沢映画!といった趣で面白かった。
 

 

 

■2021年に公開(または再上映)して劇場鑑賞(または配信鑑賞)した作品

108本 (再上映、特別上映作品を含む)

1本 (本年公開で公開期間に配信にて鑑賞したもの)

※(R)…リバイバル上映

 

(12月) 3本

・悪なき殺人 - 3.8 (伏見ミリオン座)

・ラストナイト イン ソーホー - 4.0 (センチュリーシネマ)

・リスペクト - 3.4 (ミッドランドスクエアシネマ2)

 

(11月) 10本

・グッドフェローズ (R) -  (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港)

・リトル ガール - 3.9 (伏見ミリオン座)

・アイス ロード - 3.6 (イオンシネマワンダー)

・MONOS 猿と呼ばれし者たち - 4.2 (今池シネマテーク)

・マリグナント 狂暴な悪夢 - 4.3 (ユナイテッドシネマ岡崎)

・ハロウィンKILLS - 4.1 (伏見ミリオン座)

・アンテベラム - 3.6 (小牧コロナシネマワールド)

・最強殺し屋伝説国岡 完全版 - 3.8 (シネマスコーレ)

・ベイビーわるきゅーれ - 3.7 (シネマスコーレ)

・ゴースト ドッグ (R) - 3.9 (センチュリーシネマ)

 

(10月) 11

・かそけきサンカヨウ - 3.8 (伏見ミリオン座)

・黄龍の村 - 3.8 (シネマスコーレ)

・CUBE 一度入ったら、最後 - 3.2 (イオンシネマワンダー)

・ダウン バイ ロー (R) - 4.0 (センチュリーシネマ)

・DUNE/デューン 砂の惑星 - 3.5 (109シネマ名古屋/IMAX)

・最後の決闘裁判 - 3.8 (ユナイテッドシネマ岡崎)

・PITY ある不幸な男 - 3.6/5.0 (センチュリーシネマ)

・007/ノー タイム トゥ ダイ - 3.6 (イオンシネマ岡崎)

・ディナー イン アメリカ - 3.6 (伏見ミリオン座)

・トムボーイ - 3.8 (センチュリーシネマ)

・殺人鬼から逃げる夜 - 3.7 (ミッドランドスクエアシネマ2)

 

(9月) 8

・先生、私の隣に座っていただけませんか? - 3.4 (MOVIX三好)

・仁義なき戦い 代理戦争 (R) - 3.7 (ミッドランドスクエアシネマ/35mmフィルム上映)

・空白 - 4.1 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・浜の朝日の嘘つきどもと - 3.7 (伏見ミリオン座)

・モンタナの目撃者 - 3.1 (イオンシネマワンダー)

・DAU.退行 - 3.9 (名演小劇場)

・アナザーラウンド - 3.8 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・シャン チー テン リングスの伝説 - 3.4 (イオンシネマワンダー)

 

(8月) 11本

・仁義なき戦い 広島死闘篇 (R) - 3.7 (ミッドランドスクエアシネマ/35mmフィルム上映)

・オールド - 3.5  (イオンシネマ名古屋茶屋)

・シュシュシュの娘 - 2.9 (シネマスコーレ)

・ドントブリーズ2 - 3.0 (イオンシネマワンダー)

・ザ スーサイド スクワッド "極"悪党、集結 - 4.0 (109シネマ名古屋/IMAX)

・フリー ガイ - 3.6 (ミッドランドスクエアシネマ/DolbyCinema)

・サマーフィルムにのって - 4.2 (伏見ミリオン座)

・デスプルーフ in グラインドハウス (R) - (大須シネマ)

・映画 太陽の子 - 3.3 (MOVIX三好)

・屋敷女 ノーカット 完全版 - 3.8 (センチュリーシネマ)
・いとみち - 3.8 (センチュリーシネマ)

 

(7月) 9本

・竜とそばかすの姫 - 3.2 (イオンシネマワンダー)

・プロミシング ヤング ウーマン - 3.8 (伏見ミリオン座)

・ライトハウス - 3.7 (伏見ミリオン座)

・2001年宇宙の旅 (R) - 4.2 (ミッドランドスクエアシネマ)

・ブラック ウィドウ - 3.8 (ミッドランドスクエアシネマ)

・オー!スジョン (R) - 3.8 (今池シネマテーク)

・シャイニング 北米公開版 (R)- 4.0 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港)

・仁義なき戦い[35mmフィルム上映] (R) - 3.8 (ミッドランドスクエアシネマ)

アジアの天使 - 3.4 (イオンシネマワンダー)

・ペトルーニャに祝福を - 3.6 (名演小劇場)

 

(6月) 9本

・逃げた女 - 3.7 (伏見ミリオン座)

・夏への扉 ―キミのいる未来へ― - 3.2 (イオンシネマワンダー)

・アメリカン ユートピア- 4.3 (伏見ミリオン座)

・Mr.ノーバディ - 4.0 (小牧コロナシネマワールド)

・クワイエット プレイス 破られた沈黙 - 2.7 (小牧コロナシネマワールド)

・RUN/ラン - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・茜色に焼かれる - 3.8 (伏見ミリオン座)

・アオラレ - 3.7 (中川コロナシネマワールド)

・ファーザー - 3.8 (伏見ミリオン座)

 

(5月) 8本

・くれなずめ - 4.1 (MOVIX三好)

・リオの男 - 3.6 (R) (名演小劇場)

・ジェントルメン - 3.7 (中川コロナシネマワールド)

・ムッシュとマドモアゼル - 3.6 (R) (名演小劇場)

・スキャナーズ <2K修復版> - 3.9 (R) (今池シネマテーク)

・ザ ブルード 怒りのメタファー <2K修復版> - 3.6 (R) (今池シネマテーク)

・愛のコリーダ 修復版 - 3.6 (R) (伏見ミリオン座)

・SNS-少女たちの10日間- - 3.2 (センチュリーシネマ)

 

(4月) 9本

(・ホムンクルス - 2.9 (Netflix配信) )

・戦場のメリークリスマス 4K修復版 - 4.2 (R) (伏見ミリオン座)

・ザ スイッチ - 3.7 (伏見ミリオン座)

・街の上で - 4.0 (伏見ミリオン座)

・21ブリッジ - 3.6 (イオンシネマワンダー)

・BLUE/ブルー - 3.8 (伏見ミリオン座)

・アンモナイトの目覚め - 3.6 (伏見ミリオン座)

・パーム スプリングス - 3.9 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・騙し絵の牙 - 3.7 (ミッドランドスクエアシネマ)

 

(3月) 15本

・シン エヴァンゲリオン劇場版 - 4.2 (109シネマ名古屋/IMAX)

・JUNK HEAD - 3.5 (センチュリーシネマ)

・あのこは貴族 - 3.9 (中川コロナシネマワールド)

・ノマドランド - 3.8 (伏見ミリオン座)

・ミナリ - 3.7 (伏見ミリオン座)

・夏時間 - 3.5 (シネマスコーレ)

・トムとジェリー - 3.2 (ミッドランドスクエアシネマ)

・14歳の栞 - 3.5 (センチュリーシネマ)

・ジャスト6.5 闘いの証 - 3.9 (センチュリーシネマ)

・ビバリウム - 3.6 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・DAU. ナターシャ - 3.0 (伏見ミリオン座)

・野球少女 - 3.5 (伏見ミリオン座)

・ミッドナイト ファミリー - 3.6 (シネマスコーレ)

・地獄の警備員 デジタルリマスター版 - 3.4 (R) (今池シネマテーク)

・ヤクザと家族 The Family - 3.7 (ミッドランドスクエアシネマ)

 

(2月) 10本

・春江水暖 - 4.0 (伏見ミリオン座)

・哀愁しんでれら - 3.3 (ミッドランドスクエアシネマ)

・あの頃。 - 2.3 (伏見ミリオン座)

・ウィッカーマン final cut - 3.8 (R) (今池シネマテーク)

・すばらしき世界 - 4.0 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来 - 未採点 (今池シネマテーク)

・ヒッチャー ニューマスター版 - 3.7 (R) (今池シネマテーク)

・花束みたいな恋をした - 4.3 (センチュリーシネマ)

・花と沼 - 3.8 (R) (シネマスコーレ)

・KCIA 南山の部長たち - 4.0 (ミッドランドスクエアシネマ2)

 

(1月) 5本

・ミセス ノイズィ - 3.5 (伏見ミリオン座)

・ルクス エテルナ 永遠の光 - 3.9 (センチュリーシネマ)

・新感染半島 ファイナルステージ - 3.8 (ミッドランドスクエアシネマ)

・Swallow/スワロウ - 3.4 (ミッドランドスクエアシネマ2)

・恋するけだもの - 3.8 (シネマスコーレ)

 

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◆総鑑賞数  (劇場での鑑賞数)

12月 13本 (3本)

11月 21本 (10本)

10月 21本 (11本)

9月 20本 (8本)

8月 26本 (11本)

7月 24本 (9本)

6月 21本 (9本)

5月 26本 (8本)

4月  31本 (9本)

3月  42本 (15本)

2月  36本 (10本)

1月  36本 (5本)

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計   317本 (108本)

 

◆劇場別鑑賞数

伏見ミリオン座 - 25

センチュリーシネマ - 14

シネマスコーレ - 8

今池シネマテーク - 8

ミッドランドスクエアシネマ - 11

ミッドランドスクエアシネマ2 - 9

ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港 - 2

中川コロナシネマワールド - 3

小牧コロナシネマワールド - 3

109シネマ名古屋 - 4

イオンシネマワンダー - 8

イオンシネマ名古屋茶屋 - 1

イオンシネマ岡崎 - 1

名演小劇場 - 4

MOVIX三好 - 3

ユナイテッドシネマ岡崎 - 2

 

◆劇場で複数回観た作品

マリグナント 狂暴な悪夢 2回

花束みたいな恋をした 2回

■2021年12月に観た映画

13本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・藁にもすがる獣たち (原題:지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들) - 3.5/5.0 (WOWOW/2021.12.30)

監督 脚本:キム・ヨンフン。原作:曽根圭介。2018年。日本公開201年。予告の段階では"へ~"、SNSでの評判を見て"見てみようかな"で、鑑賞した作品。なんだか"無駄に何かあり気なのにたいして何も起きない"というシーンの繰り返しで物語を展開させていくので興味の持続が若干難しかった。画面的につまらないとかそういう事ではないのでまだ見ていられるのですが、いかんせん話が平板(面白くないとは言わない)。時系列をバラして作劇するのであればもっと工夫が必要ではないか。

 

・ベター ウォッチ アウト: クリスマスの侵略者 (原題:Better Watch Out) - 3.6/5.0 (WOWOW/2021.12.29)

監督 脚本:クリス・ペッコーバー。脚本:ザック・カーン。2016年。日本公開2020年。たしか夏くらいにシネマスコーレで上映していたのを横目に見ていた、はず。レンタルするのもなーからと思っていたらWOWOWで放送していたので鑑賞。"ブラックなホームアローン"的な感じで紹介されていましたが、全く別モノ。"子供版ファニーゲームatクリスマス"と言った感じか。えっ?と思う様な画作りや、一筋縄ではいかない展開にせっかくジャンル映画作るならただでは終わらないぞ精神を感じられてとても好感を持った。そして何よりも主役の子供の嫌ァな感じが最高。主役が何故そんなにもシッターの女に執着するのかイマイチ分からなかったりもしますが、まあそんなもんかなと(てか、中坊の嫉妬心なんてそんな不明瞭なモノか)。もう少しスプラッター描写と向き合ってしっかりと描くところは描いてもらえるともっと良かったのになと思う。"なんだ猫か"が2度も出て来る珍しい一作。

 

・ハッピー デス デイ 2U (原題:Happy Death Day 2U) - 3.9/5.0 (Blu-ray/2021.12.19)
監督 脚本:クリストファー・ランドン。2019年。

・ハッピー デス デイ (原題:Happy Death Day) - 3.4/5.0 (Blu-ray/2021.12.19辺り)

監督 脚本:クリストファー・ランドン。脚本:スコット・ロブデル。2017年。

今年で言うと「ザ・スイッチ」がまあまあ面白かったリストファー・ランドンの出世作。ホラーのジャンルでオススメされているので正直面白くなさそうでしたが重い腰をあげようやく鑑賞。正直、1作目は話自体にあまりノレなかったし、演出もコミカルな面が多く(これは「ザ・スイッチ」でも見られるので監督のチャームというか作家性なのだろうが)、正直途中からかなりどうでも良くなってしまった。もう少し厳しくというか真剣に命のやり取りというかそういう部分を描いて欲しかった。だって、シリアルキラーが相手なんだよ?でもまあファミコン的というか、死んでもすぐに生き返る設定故の命の軽さなのだろうが。まあまあつまらなかったのでこりゃ2は観ずに返却するかと思っていましたがせっかくなので鑑賞。そしたらこちらは面白かった!主人公は今度はそっちなの?!と思わせておいてからの本題に入るのもか続きものにしてはフレッシュなフックだったし、新たに作られた多元宇宙論というテーマ。それにより"もし違った自分の人生が存在したら"という誰もが1度は考えた事があるであろう命題と、しかしながらそれは夢想に過ぎず現実は過去は取り戻せないという切実さ、そして過去の自分があるから今の自分があるんだからという自己肯定をしてくれる様なテーマを主題に、でもせっかくパラレル体験したのならばもう会えない人にしっかりと言葉で気持ちを伝えよう、という人間のあり方とか夢(に見るようなこと)とかを描いてくれていてとても映画的だと感じたし、もう会えない母親に言えなかった想いを伝えるシーンは泣きそうになってしまった。そしてしっかりとケジメを付けて元の次元に戻っていく主人公。ラストもしっかりと幕を閉じて良かったと思う。蛇足で3がある様な展開がありましたが、2がこれだけ巻き返したんだから3は絶対見るでしょ!と1の後とは大違いな感想を持った。まだ作られていないようなのでもし作られるなら劇場で観られるのが楽しみだ。

 

・FEAR X フィアー エックス (原題:FEAR X) - 3.3/5.0 (DVD/2021.12.17)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:ヒューバート・セルビー・Jr。2003年。日本公開2015年。ニコラス・ウィンディング・レフン作品で未観のものをレンタル。妻を殺された男が復讐のために立ち上がるが...という出だしはそれなりにある話の様ですが、ニコラス~監督でそんな素直に行くはずもなく、後半はかなりドラッギーな展開をむかえ静かに男は狂っていく。大体そういう話ばかりな様な気もしますが。後半の舞台であるホテルは、真っ赤な色が印象的で「シャイニング」のオーバールックホテルの様な雰囲気が印象に残っている。画面は相変わらず神経質なくらいに硬派で低温な怖さみたいなものが通底していてかっこよかったのですが、今作はいかんせんお話が面白くないのでどうしても星は伸びませんでしたがニコラス~らしいなと思いながら終始観た。劇伴というか音が良かった。

 

・悪なき殺人 (原題:Only the Animals) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.12.14)

監督 脚本:ドミニク・モル。脚本:ジル・マルシャン。原作:コラン・ニエル(題名:Seules les bêtes)。2019年。日本公開2021年。登場人物5人の各章に章立てて羅生門スタイルで作劇されていくスリラー。前半と後半で舞台がガラッと変わり、まるで違う作品を見せられている様な感覚に。5人という人数、場所や時制が若干入り組んでいるのにも関わらずこの整理されっぷりは偉いと思う。とても見やすいし分かり易く、伏線回収も順序立てて丁寧にきちんとされていく。非常に上手く物語が進行していくので(時制が行ったり来たりするのは上手いのかと言われるとそれはちょっと...)高度な事をサラッとやっている感があってすごいなあと思うのですが、良くも悪くもそれだけの様に感じてしまい少し物足りなかった様に思う。また、中盤チャットを通じてメールのやり取りをするシーンが異様に長く感じ正直ダレた。長いわりに先も読めるし、それ以上の事が起こらない。それはこの映画全編に渡って言える事でもあるが、結構お行儀の良い作品なので上手なんですが特に心に残る様な何かは無かったかなと思う。悪くはないけどそれだけ。

 

・ラストナイト イン ソーホー (原題:Last Night In Soho) - 4.0/5.0 (センチュリーシネマ/2021.12.13)

監督 脚本:エドガー・ライト。脚本:クリスティ・ウィルソン=ケアンズ。2021年。楽しみにしていたこちらを早速劇場鑑賞。月曜昼間、客入りは33人ほど。"エドガー・ライトがホラー?"と思ったのも束の間、オープニングからバキバキに決まった画と色味をもって時代感覚をバグらせる演出(ソーホーに向かう電車の中でエリーがつけるヘッドフォンで現代だと分かるのもニクい)、メインビジュアルにもなっている赤と青の印象的な色遣いが不気味さを加速させる。丁寧かつ熱のこもった描写が開始早々に連発され既に最高。所謂、心霊映画的なものとセクシズムをミックスした作劇はしっかり今っぽくもあり、斬新さもしっかりとある。(今でもセクシズム自体は遺るが様々な差別や偏見は60年前よりは減っているだろう)現在を生きるエロイーズが、同じ年齢くらいの女性を、同じ女性として、過去に閉じ込められたサンディを恐れる事なく必死に救おうとする時間を越えた姿(これこそ映画にしか出来ない表現だと思う)にとてもグッと来た。初めてサンディを見て、憧れ、ああなりたい!とエリーが彼女に近づこうとしてブロンドにし、同じ服を着るのは役割は違うがヒッチコックの「めまい」感を感じたり、サスペリアじゃん!と思う画面もあったり、そういうエドガーライトらしい部分も見どころか。素晴らしい出来だった。

 

・キャラクター - 3.6/5.0 (Blu-ray/2021.12.12)

監督 脚本:永井聡。脚本 原作:長崎尚志(リチャード・ウー)。脚本:川原杏奈。2021年。こちらも劇場でタイミングを逃してレンタルにて鑑賞。脚本、原作の長崎尚志氏は浦沢直樹とのタッグで有名な漫画プロデューサ。監督は正直あまり知らない。アバン後のオープニングや、警察が作戦を立てる会議のシーンのズラッと並んだビジュアルと音楽など、ジェームズ・ワンの一連の作品の雰囲気を感じた。(警官ズラッとは踊る大捜査線かも知れないが)。という部分からも、所謂自警や正義を振りかざした結果殺人に至ってしまう狂気な人物と対峙する映画なんだろうなという期待値は上がった。し、実際にタイトルが出て歪んだギターが鳴った瞬間はベタとも言えなくはないがかっこよかった。殺人描写もこの手の作品にしてはとても頑張っていたと思うし、話自体も結構素直に面白かったんですが、カチャカチャ変えるカットの多い編集のお粗末さや、主要人物にギャラの多くを割いたためにモブキャラたちが再現VTRレベルだったり、正直映画としての魅せ方の悪さが結構目立ってしまったなという印象。面白い映画になるはずが全然違う所に着地してしまった感は否めない。これはリテラシー不足の私でも分かるくらいには監督が下手。下手過ぎる。セカオワのfukaseが殺人鬼だという点も相当構えて観たのですが結構良かったと思うし、何ならわりと頑張っていた。こんなに頑張った(バンドのイメージとも懸け離れた役どころだろうし)にも関わらず本作自体があまり話題になっていないのは少し損をしている様な気がする。総じてもう一歩だったのになんかセンスの悪い人が重要な所に何人か入り込んでしまって駄作になってしまった作品、という感じ。

 

・イン ザ ハイツ (原題:In the Heights) - 3.3/5.0 (Blu-ray/2021.12.11)

監督:ジョン・チュウ。脚本:クイアラ・アレグリア・ヒューズ。2021年。当時劇場IMAXでの鑑賞タイミングを完全に逃してしまい、ようやくBlu-rayレンタルが開始されたので即鑑賞。アトロクでも絶賛されていたので楽しみにしていたが、結果から言うと"都合良過ぎエンタメ作"という感じ。まあ、エンタメ作ってそういうものかも知れないですけど。アバンや前半部分の切れ味はとても良く"これは結構面白いんじゃないか?"と期待して観進めたのだが、時間の経過と共に脚本の粗のせいか都合良過ぎな展開がどうしても乱発している様に感じてしまった。撮りたいシーンが多すぎてその部分に気を遣い過ぎた結果バランスが取れない作劇になっているのでは?と感じた。登場人物たちの動機の描写や掘り下げが浅いか。いつの間にか立ち上がっていつの間にかなんとなくうまくいって、このキャラクターは皆からの信頼が無条件にあって、勇敢で~みたいな展開が多すぎて、話を追う事自体が非常にどうでも良くなってしまった。映像美やミュージカルシーンの良さは確実にあるのであくまでメインはそれらであって、こういった規模のエンタメ作にはお話の深さを求めない姿勢で臨むのが正解だったのかも知れない。あまり深く考えずに画面に映されるものと、音楽と歌をシンプルに楽しむ体感型という部分に重きを置くのであればこれくらいのお話でもいいのかなとも思う。が、個人的には結構期待外れだったよなと感じる。

 

・LOVE [3D] (原題:Love) - 3.6/5.0 (DVD/2021.12.10)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2015年。市内にレンタル取り扱いが無く、地元にはあったのでいつか借りようと思っていたがようやくタイミングが合ったために鑑賞する事が出来た。"珍しくお話があるじゃん!"というのが率直な感想だ。タイトルに「LOVE」とつけるくらいなのでそういう話だろうなと思って観たが、意外にもカップル倦怠モノ(常に回想で)として機能しつつもキツイ性描写で真実()を浮き彫りにしていく。監督自身も言っているが確かに人間裸になってしまえばやる事は一つで、誰しもが行っている事や行いたいと思っている様な過激な欲望や妄想というのは存在する。それらを理性のタガを外した状態で繰り返した結果、ゴミの様な2人がゴミの様な別れを経験するという今作のストーリーラインになっていく。だが、そんなゴミの様な2人でもお互いを大切に思う気持ちは真っ当な人たちと等価である。二人の愛の行為は美しい(ように撮っている)。だからこそ、主人公が1人きりになるのは死ぬほどツラいし、過去の忘れられない恋人の幻影を追いかけながら今も彷徨ってしまう悲しさは実際にあると思う。ふたなり男とのプレイ寸前に逃げ出したり、大写しの男性器から精液が飛び散るシーンの衝撃は凄かった(残念ながらDVDでの鑑賞だったので当時劇場で3D鑑賞したのであればさぞ震えただろう。個人的映画史上最低最悪のシーンに認定)。全体としては若干薄めな印象の作品ではあるがこうした印象的なシーンがいくつかあるのはさすがと言えるし、そういうシーンがあるだけで十分に良い作品ともいえるのであろう。

 

・リング - 3.8/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.12.6)

監督:中田秀夫。脚本:高橋洋。原作:鈴木光司。1998年。ジャパニーズホラー、所謂Jホラー人気のきっかけとなった金字塔的1作。当時、たぶんテレビ放送か何かで観た以来。テレビから出てくる貞子、呪われたVHS、などかなり断片的な記憶しかない(当時は全然理解できずに怖くもつまらなくもないという印象)中、再鑑賞。三宅隆太監督のラジオの影響をはじめ、洋邦問わずにホラー作品に触れる機会と興味が増しているタイミングだったため観る事にした。めちゃくちゃに怖いかと言われたらそうでもなくて、お話的には怖さよりも悲しさみたいな物に重きを置いているお話だなと、"家族という呪い"モノだなと感じた。終始する寂しいというか不気味なというか不安になるような画作りや演出でかなり独特なタッチになっている。話自体は、貞子の呪いをどうやって解くのかあんなに必死になって挑んだのにアッサリと"ダビング"という行為でなかったことにしてしまうのはトンっと突き放された様に感じた。VHSやダビング、レンタルビデオの普及に伴って"この映画を観る事自体に禍々しい何かがある"という様な仕組みでリアリティを持たせる恐怖体験に持って行くアイデアはすごいなと思った。そして、あの呪いのビデオ自体の映像の気味悪さとかそういったものはちょっとやっぱ執念じみたものを感じる。松嶋菜々子がポラロイドで写真を確認するシーンと、ラスト付近のテレビ画面に反射した指差し男の画がけっこう怖かった。黒々しい海やトーンの落とした映像はひたすらに不気味だ。

 

・ラストサマー (原題:I KNOW WHAT YOU DID LAST SUMMER) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.12.2)

監督:ジム・ギレスピー。脚本:ケヴィン・ウィリアムソン。1997年。三宅隆太監督の『スクリプトドクターの脚本教室』の中でメインプロットとサブプロットの章で例題として取り上げられており、興味を惹かれたので鑑賞。フィッシャーマンというブギーマンの偽物みたいな奴が次々と恨みを晴らすべく主人公たちを襲っていく。この手のジャンル映画で大事だと思うのは、ショッキング描写の力強さというのは絶対にあると思うので、飛び散る血が妙にもっさりしているとそれだけで何となくテンションが下がってしまうのですが今作はまさにそれでわりと不満な点は多かった。終盤の物語を畳むための伏線回収がどれもこれもかなりご都合主義というか、"え、なんでそうなるの?(そういうものだと言われれそうだけど)"と割と強引に話を進めていたのが残念だった。わりとどうでも良くなってしまった。ただ(レビューなどどこ観ても書いてありますが)、ジェニファー・ラヴ・ヒューイットがめちゃくちゃに可愛くて乳がそれなりにデカいので最高。それだけでもうわりとどっちでもいいかなと思えるというか。肝心の『スクリプトドクターの脚本教室』の中で題材に挙げられていた部分の詳細を失念してしまっていたので、また本を読んでみようと思う。

 

・リスペクト (原題:Respect) - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.12.1)

監督:リエスル・トミー。脚本:カーリー・クーリ。2021年。映画の日だったためか平日昼にも関わらず観客は35人ほど(2回目鑑賞した「マリグナント」は55人ほど入っていて驚いた)。アトロクのアレで鑑賞。こういう音楽映画って正直、腰が重いのですが仕方なく。予告を見たら案外楽しめるかもなと思いましたが、まあ予想通りの作品かなという感じ。まず何よりも長い。146分は長すぎる。自伝モノなので長いのは仕方ないし、その人の人生を写していくものなのでエピソード的に多くなってしまうのは分かるのですが、どれもこれも中途半端というか一口かじっただけ様な状態の描き方でWikipedia観てんのと変わんないなとマジで思ってしまった。父親との事や、ダメ男との遍歴や、ミュージシャンシップの形だったり、死んだ母親との事、そして信仰とは。と語るべき部分はたくさんあるのに何かに的を絞った魅せ方をすればいいのになあと思った。演じている方の歌は上手いなと思ったので余計になんですが、こういう映画のお約束のエンドロールでの実際の映像を観るとそれまでの体たらくな本編も何だか良かった様な気がして劇場を後にしてしまうので良くないよな(本編はなんだったんだ)と思う。同じアメイジンググレイスならば、今年公開の「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(90分)」が絶対楽しめるやるなのでオススメです。

 

 

■2021年11月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・回転 (原題:THE INNOCENTS) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.30)

監督:ジャック・クレイトン。脚本:ウィリアム・アーチボルド。トルーマン・カポーティ。ジョン・モーティマー。1961年。ジャパニーズホラーを掘っていくとたどりつく所謂"Jホラー的表現"の源泉の様な1作(らしい)。黒服や髪の長い女が何をするわけでもなく画面の隅からジトーっと眺めているのが視界に入ってしまう。これはやっぱり怖い。ある意味心霊写真的とも言える様な表現で、無言無動が故の"何をされるか(何を考えているのか)分からない怖さ"がじっとりと表現されている様に感じる。実際に自分が観てしまったらと考えたらひとたまりもない。また、"ひゅ~ドロドロ~おばけだゾ"的に無意味に現れるのではなく、お話上の理屈がある登場(今作では非常に切ないお話でしたが)で、"あぁ、この人たちも悲しいんだな、ツラいんだな"と思えるのはリアルというか。人間と人間ならざるもの(元人間という言い方でも良いか)の境目というか、目に見えない"(感情の)揺れ"の様なものが表現されていて良いなと感じる。怖いというより、不気味だし、悲しいなと思う。

 

・グッドフェローズ (原題:Goodfellas) - 再鑑賞 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港/2021.11.29)

監督 脚本:マーティン・スコセッシ。脚本:ニコラス・ピレッジ。1990年。[午前十時の映画祭11]にてスクリーン鑑賞。以前観た時より1年2か月ほど経過しており、映画リテラシー()も上がったのかな?前よりもより理解度高く観られたと思う。結構駄話なイメージがあったのですが、わりと必要な会話しかしてないよなという印象に。画面のキレ味は良かったですね、やっぱりスクリーンだとじっくり観られるのが良い。

 

・ハロウィン (原題:HALLOWEEN) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.11.25)

監督 脚本:ロブ・ゾンビ。2007年。「ハロウィンKILLS」の流れから宇多丸氏もオススメしていたロブゾンビ版を鑑賞。ていうか、79年のオリジナル版が配信も無し、レンタルも無しでどうやって見たらいいのかと詰んでいる。このリメイク版は前評判通り、前半1時間にマイケルの幼少期をしっかりと描いていてブギーマンの哀しい狂気みたいな部分に話の推進力を持ってきていた。終盤、ローリーに昔の家族写真を見せる辺りなんかは(行い自体はもはや人間とは言えない)マイケルの人間なのか、怪物なのか分からなくなる怖さみたいなものが更に強調されていて良かった。終始、殺しのシーンは多い今作ですが、終盤にかけての悲鳴合戦というかキャーキャーがすごくって最初はちょっとうるさくね?という感じで観ていましたが最終的にはこれはこれでかなり良いなと思える迫真のパニック演技だったんじゃないかと思った。ラストカットもまあ悲鳴なのですが、たぶん人間窮地に立たされてああいう状況になったらあれくらい動転してしまうよなと。めちゃくちゃ良かった、なんか。ラストカットが好きな映画上位に食い込むなあと。

 

・青天の霹靂- 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.11.23)
監督 脚本 原作:劇団ひとり。脚本:橋部敦子。2014年。何かでオススメされているのを見聞きして鑑賞。初監督作という事でしたがとてもそうとは思えない出来栄えで驚いた。長回しを基調とした画作りがされていて、どのシーンも非常に丁寧に撮られている印象。どこまでプロの手が入っているかは分からないがきちんと自分で考えてやっているのだとしたら劇団ひとり、わりとちゃんと映画好きなのでは?と感じた。特にアバンまではとても良く出来ていた様に感じる。タイトル出る瞬間の落雷も"え!!"という様なビックリ感もあって良かった。様々なシーンが上記したように丁寧に作られ編集されていたのでとても好感を持ったのだが、肝心のお話や描写自体に段々とスタミナ切れが出てきてしまい、何だかノレない話になってしまったなあというのが最終的な感想タイムスリップした意味も得別に感じないし、お涙頂戴的な話運びにはゲンナリした。真摯に向き合っている姿勢は感じ取る事が出来た。劇団ひとりが映画撮っていることは驚かないが、これしか撮っていないのがどういう事なのかは若干気になる。まあ、そういう事なんだろうとは思いますが。ゴッドタンとかでたけしの服を着ていたりしていたのでたけし好きなんだろうなあと思っていましたが来年公開のNetflix映画「浅草キッド」の監督を満を持してメガホンをとるらしいのでこれまでやらなかった(という事はきちんと客観視して自分では力量不足だったのでやらなかった、でもこれはやる)(推測ですが)意味をしっかりとここで見せてくるんじゃないかなあとわりと期待しています。

 

・リトル ガール (原題:Petite fille) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2021.11.23)

監督:セバスチャン・リフシッツ。2020年。日本公開2021年。観客は25人ほど。9歳のトランスジェンダー少女の3ヶ月を85分のドキュメンタリーに収めた。カウンセラーとの最初の面談のシーンで、あんなに小さなサシャが見せる悲しみと怒り、そして親への気持ちがどう考えたってグサグサ刺さった。誰も不自由で良い訳がない。(大人はどうでもいいけど)自由を自ら選べない子供たちが不可抗力の不自由に晒されて良い訳がない。とても貴重なドキュメンタリーだと思う。ただ、劇中"見せ物じゃない"と言っていたのを観終わった後に思い出し、少し謎に感じたがきっとこうしたドキュメンタリーを公開する事に対してのリスクなんてものはしっかり分かった上での今作だし、誰もが"見せ物じゃない"と叫びたい部分をちゃんと見せたこの家族の勇気とパワーに感服するしかない。そういう事なんだと思う。劇中に何か所か抽象的な遊びの風景が出て来るが全てがルッキズムの事やセクシャリティーの事だったりと繋がる様な描き方をしていて唸った。

 

・アイス ロード (原題:The Ice Road) - 3.6/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.11.22)

監督 脚本:ジョナサン・ヘンズリー。2021年。観客は9人。まあ、観ないっすよね。アトロクの課題作品になり鑑賞。"「モンタナの目撃者」級の傑作"という風にリスナーメールで紹介されており宇多丸氏も思わず突っ込んでましたけどw、どうみてもそのメールしてきた人以外は半笑いだよねという。リーアム・ニーソン主演!という銘打たれ方ですがまああんま観たことない俳優ですよね。個人的には。フィルモグラフィー観てもピンと来ないし。というわけでかなり萎えな気持ちで見に行きましたが、案の定というか何というか。映画としての魅せ方としては、作劇の教科書に載ってそうなベタな作りで驚きも感動も落胆も何もないままお話だけがきちんと進行して終わった。なんの感想もないかなと。プログラムピクチャーとしてきちんとハラハラは一応出来るので気軽に楽しむのにはいいと思うのですが、ランキングタイム109分とこれまた微妙な数字でもう少しソリッドにする必要はあったんじゃないかなと思う。敵役との肉弾戦が盛り上がらない上に長いのもどうかと思う。今時こんな描き方?と思う部分もあるけどまぁ。ねという感じで。"モンタナの目撃者級の傑作"にワロたけどこっちの方が全然アリだとは思います。

 

・MONOS 猿と呼ばれし者たち (原題:Monos) - 4.2/5.0 (今池シネマテーク/2021.11.19)

監督 脚本:アレハンドロ・ランデス。脚本:アレクシス・ドス・サントス。2019年。日本公開2021年。評判が高く早く観たかったのですが、名古屋ではなかなか公開が遅くようやく観る事が出来た。集中して観ていたはずでしたが中盤眠気が。。かなり後悔。。。セリフも多い訳ではなく、随所に挟まれる壮大な自然の中に浮かび上がる登場人物たちの画、不穏な劇伴、と一見するととっつきにくく硬くなってしまう様なキーワードが並んでおり、結構アート映画のつもりで観ていたのですが(実際そういう部分も多分にあるが)、途中で"あ、これ気楽に観ていいやつだ"と。気付くのが遅すぎた。もっと早く気付くべきだった。ちょっと肩に力入れ過ぎて観てしまった代償はデカかった。。そこからはかなり楽しめて、画面の構築美の匠さや、映画ならではの自然を捉えた(使った)ショット、終盤の濁流にのまれるシーンなんかはマジでどうやって撮ったのかと思うレベル。最後に救出されるのは誰なのか誰が死ぬのかなど、倫理というか理屈というかそういったものがあまり重視されていないような気もしますが、何かの結末を魅せる類の作品ではないと思うので気にならなかった。もう一度しっかりと観てみたいなと思う。

 

・プッシャー3 (原題:PUSHER 3) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.11.18)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2005年。シリーズ3部作のラストを鑑賞。最後は過去2作にも登場した麻薬王ミロの晩年のとある1日を描いた。これまでにないミニマムなシチュエーション(娘の誕生日会場と経営するレストランのほぼ2か所のみ)で作劇も真っすぐに作られており、かなりシンプルな内容になっている。"いつ暴力が起きてしまうんだろう"というのがコラス・ウィンディング・レフン監督印だと思うのですが、今作ではクライマックスまでは我慢に我慢を重ねる造り。最後にビニール袋での拷問と、人間解体ショーの2つのショッキングシーンが出て来るのですがそれまで貯めた分、より強烈になって画面に表れた印象。まるで豚でも解体するかのように吊るされて臓物を掻き出されるシーンは何とも衝撃的。更に普段自分が調理をしているシンクで出した臓物をさばくなんてシーンも怖くて良かった(シンクでクルクル回る臓器に思わず噴き出してしまった)。全てを終えたミロが何事もなかったかの様に娘を会話をし、水の抜けたプールを見つめるラストカットは何とも空虚なこのシリーズを表現するかの様でとても良かった。2→3→1の順番で好き。

 

・ファニーゲーム (原題:Funny Games) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.17)

監督 脚本:ミヒャエル・ハネケ。1997年。「愛、アムール」に続き鑑賞。所謂"胸糞系"(僕は使いませんが)として有名ですが、まあ確かに胸糞。表面をなぞればそうなのですが。。劇中で何度かポイントで現れるメタ的な描写でこちらを思いっきり煽ってくる。クライマックスの巻き戻しシーンなんかも今でこそ"へ~"って感じですが、97年当時に観たらビックリもするし、こういうものに腹を立てる人もいるんだろうなあとは思う。ただ少し思ったのは、巻き戻しの手前のシーンで"劇場用映画の尺だと足りない"という超煽り且つ超メタなセリフが出てくるのですが、"劇場用映画"を作っているのに巻き戻しはしていいんだ、というのが少し気になったかなと。もちろんそれらを丸ごと飛び越えて煽っていると言われればそうなのかも知れないし、作っている過程で"あ、このシーン辞め、別のシーンにしよ"とかあるとは思うのでそれの再現と言えばそうかなともとれますが。やっている事自体は嫌いじゃない(むしろ好き)のでまあまあ楽しめました。アメリカ版があるっぽいので予告を見たらオチが違う?のかな観てみても良いかなと思った。ところで、観終わってから"なんか前に観たことあるよな~"と思いましたが記憶が定かではない。大学生の頃に観たような気も。。

 

・マリグナント 狂暴な悪夢 (原題:Malignant) 4.0/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2021.11.15)

監督 脚本:ジェームズ・ワン。脚本:アケラ・クーパー。イングリッド・ビス。2021年。平日レイトショー。さすが地元、客入りは2人。ジェームズ・ワンの新作だという事で評判も良く期待して鑑賞。結果から言えばとても楽しかった!所謂オカルトホラーな怖がらせ方から幕を開ける今作ですが、まずそのバケモノ描写がというか襲い掛かってくる様やそれを食らう登場人物たちの画があまり観たこと無いものになっていてまずはそこが非常に面白かった。そして、編集時点での話とは思いますがとても速いテンポでザクザクとハイテンションに画面を切り取りつなげていく様は転調をコロコロと繰り返し爆走するマスロックのバンドのようで刺激的だった。物語は徐々に"バケモノ"に対する謎が深まっていき、サスペンス要素が濃くなっていき最後はまさかのアクションへ。と、ジャンルをシームレスに爆走して横断していく感じを評価している人が多い印象ですが、個人的には最後アクションに着地したのでそのアクションシーンでどうしても眠たくなってしまった。これは自分のクセなので仕方ないのですが、アクションシーンになるとどうしてもそれまでの物語が停滞というか停まってしまう感じがして興味の持続が難しくなり眠くなってしまう。今回の作品に関しては"バケモノ"の正体が結局自分の"後半身"だったので(なんだそれ)(悪魔にしないのも面白い)、後退しながら(明らかに合成の)顔を後頭部にまとって警察官を殺しまくる様はむちゃくちゃで面白い画だった事は確か。クライマックス手前で若干間延びしたとは思いますが、全体的にとても面白かった。もう一回観たい。

 

・ミツバチのささやき (原題:El espíritu de la colmena) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.12)

監督 脚本:ビクトル・エリセ。脚本:アンヘル・フェルナンデス=サントス。1973年。日本公開1985年。非常に淡々と説明描写なく(そもそも要らないかも知れませんが)かなり静かに進んでいく。タイトルや冒頭のシーンにもある様に"ミツバチ"が作品全体に漂うテーマ。人体模型であるドン・ホセを使った授業が印象的だった。

 

・仁義なき戦い 頂上作戦 - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.11.10)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1974年。ミッドランドの35mmフィルム上映で観ていたシリーズなのですが今回見逃したのでU-NEXTにて鑑賞(ちなみに完結編も見逃した)。相変わらずのやんちゃっぷりでしたが、今作は主人公である広能が早々にお縄になってしまい後半は全然出てこなくて寂しかった。あくまで完結編がある上でのこの作品的な内容なのでそういった部分も成り立つのかなという感じだった。後半にやっとエンジンがかかって来た感じだったので全体的に物足りなくも感じた。

 

・ハロウィン KILLS (原題:Halloween Kills) - 4.0/5.0 (2021.11.9)

監督 脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン。脚本:ダニー・マクブライド。2021年。客入りは7人。前日に観た2018年版ハロウィンに多少がっかりしたので期待値を大きく下げての鑑賞になったのですがこれがそんなことどうでも良くなるくらいに素敵な出来で最高だった。2018年版で物足りなく感じていた描写や気合の様な部分を取り返すかの様なスピード感で暴れまくるブギーマンに歓喜。簡単に言ってしまえばスプラッタ!ゴア!スラッシャー!全部盛りでアガりましたと。ていうかこういうのが観たかったんだよ!と鼻息荒くなりますね。所謂ビジランテものな中盤の問題提起の部分は正直微妙というか、もっと良く出来たそういう作品はあるので何ともですが、そんなのまあご愛敬という事で。ね。宇多丸氏が評論で"精神病患者が危害を加える人ではない"ときちんと描いているのもちゃんとしていたという様な事を言っていた(超訳)が確かになと。ブギーマン自体が実は概念というかそういうものなのかな?とちょっとよく分からなかったの荒唐無稽が過ぎる結末も気にならなくはないが、話自体は矛盾していないのでオッケーです(Ⓒあいつ)。なんかめちゃくちゃ浅い感想になったな。
 

・ハロウィン (原題:Halloween) - 3.6/5.0 (2021.11.8)
監督 脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン。脚本:ダニー・マクブライド。2018年。「ハロウィンKILLS」を観るからみてみよう鑑賞。本当の1作目であるジョンカーペンターのハロウィン(1979年)も観たかったのですが配信も無し行ける所のレンタルにもなしという詰みゲーで見られず、リメイク版1作目の2018年版を鑑賞。全体的に薄味過ぎてあまり印象に残ってないのが正直な感想でしょうか。画面を観ても描写を観てもあまり気合を感じる様なバキッとした画面はなく、こういうジャンル映画でそういう部分が薄いのはかなり致命的なのではないでしょうか。。クライマックスの主人公の家にブギーマンを誘き寄せて3世代で撃破するという流れは熱気を感じたがまあそれまでという感じ。「セルフィッシュサマー」のデヴィッド・ゴードン・グリーンが作ったというのに驚き。どういう経緯で選ばれたんだろう。これはイマイチだなあと思っていたらこの後に観た「~KILLS」でばっちりバキバキでいろんなものをかっさらっていったので二重に驚き。

 

・アンテベラム (原題:Antebellum) - 3.5/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.11.8)

監督 脚本:ジェラルド・ブッシュクリストファー・レンツ。2020年。日本公開2021年。客入りは7人。「ゲットアウト」「アス」のプロデューサーであるショーン・マッキトリックが製作として話題。予告を観てなんとなく観たいな~と思っていた作品。良く出来ているが都合良くも出来ていたというのが感想だろうか。大きく3部に分かれた作り自体や各設定は面白かったがそれ以上が無く(都合良過ぎな部分に引っ張られ)正直あまりノリ切れなかった。いつ悲惨な事になるんだろうとワクワクしながら観たがそのまま何も起こらずに終わってしまった。まずやっぱり今っぽい感じの題材を狙ったのかも知れませんがどうしても薄っぺらさが気になってしまった。クライマックスの"(黒人)女性の逆襲"のスローモーションの画をはじめやりたい画面があったんだろうなあと思う様な部分はいくつかありましたがどうしてもそれら先行で走り出している感じが隠し切れず(というかそれしかないからかも知れませんが)、話の軽薄さ、ポーズだけでやっている感があまり好きになれなかった。それこそ3部構成のつなぎ目自体だったり、いろいろと本編通して言いたいことはありますが、特にラストの解決に至るというかオチの部分があまりにもずさん過ぎてどうかなあという感じだった。ああいうヤバイ施設があるにしてもあんな町中にあるのは何故?と思うし、最後の最後でギリギリ張られていたフィクションラインの糸がプツリと切れてしまった感じがした。

 

・タンポポ - 3.8/5.0 (DVD/2021.11.7)

監督 脚本:伊丹十三。1985年。"元祖・飯テロ映画"とのこと、DVDにて鑑賞。冒頭から役所広司演じる男が第四の壁を飛び越えて話しかけてくるオープニングにマジでギョッとさせられる。そういう仕掛けのある映画はまああるのですけど何がすごいって、ただ話しかけてくるだけではなくてあたかもツレかの様なテンションで話しかけてくるその様に本当にビビる。"ラーメン・ウエスタン"と銘打っているそうですが、まさにその通りのお話。どのショットも非常に計算されていつつも敷居を上げない作りは、劇中の"うまい人気のラーメンを作る"という部分と呼応するかの様な作劇で見事だった。評判だけを聞いている状態で観たので正直ちょっとだけ拍子抜け感(お話的にもっと突飛なものなのかなと思っていた)はありましたが、それ位で、あとはしっかりとエンタメ作かつ面白い仕掛けも魅せてやろうという狙いがばっちり決まっている作品だと思った。終始謎の男の役所広司がお話のカルトさに拍車をかけていた。

 

・最強殺し屋伝説国岡 完全版 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.11.6)

監督 脚本:阪元裕吾。2021年。オリジナル2018年。スコーレにて「ベイビーわるきゅーれ」に続いて鑑賞。こちらも更に多く55人ほどの観客。どちらも満席近く入っていて驚く。個人的にはやっぱりこちらの方が好み。モキュメンタリーのつもりで見ていたのですが途中からわりとその辺りどうでも良くなったのか、無理になったのか割と諦めて普通に撮ってしまっているのが面白かった。ホワイトベアーはじめ魅力的な敵がたくさん登場し、続編が作られるのもよく分かるし、阪元監督の本領はやはりこういう部分だよなあと思う。完成品としては「ベイビー~」とは正反対のものになってましたが、劇中貫かれる"殺し屋観(無い観)"はしっかりと強度を持って作家性として機能しており、心強かった。何度も書きますがこれからが非常に楽しみな監督です。満員の観客が爆笑する劇場体験も楽しかった。

 

・ベイビーわるきゅーれ - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2021.11.6)

監督 脚本:阪元裕吾。2021年。客入りは45人ほど。スコーレでこんなに入ってるのは個人的には初めて。長い「ベイビーわるきゅーれに備えて阪元裕吾作品を観ようキャンペーン」を乗り越えてようやく観られました、本作。まあちょっと寝かせすぎたというか、話題になっているのでどんなすごいものが飛び出すのかと楽しみにし過ぎましたね。ただ、きちんと"阪元裕吾"だし、"阪元裕吾らしくない"面もあって、ちゃんと"商業作品で撮るならば"という部分と闘った跡があって非常に良かったです。普段の監督のツイートとか見ててもそうだけどめちゃめちゃ"今"っぽい作品だなあと。そりゃ25歳なので当然なんですが。作劇上のもっさり感とか、これなんのためのアクションなの?みたいなこれまでの作品に蔓延していた部分は無くなっていたので、誰かの手が加わったのかなと思った(逆にすぐ後に観た「~国岡」の方はもっさりとダラダラしてましたね)。本編の内容には触れてないレビューになっちゃいましたけど感情の部分の感想はこんな感じ。映画的なルックで言えば断然ずば抜けて本作は映画らしく良い作品でした。(相変わらず脚本が弱い...早く誰か相棒を見つけてくれ....)これからに期待。

 

・ゴースト ドッグ (原題:GHOST DOG: THE WAY OF THE SAMURAI) - 3.9/5.0 (センチュリーシネマ/2021.11.4)

監督 脚本:ジム・ジャームッシュ。1999年。[JIM JARMUSCH RETROSPECTIVE2021]と題して全国の映画館で12作をリバイバル上映中。今回はこの作品と「ダウンバイロー」しか観られる事が出来ず、もう少し参加したかったのですがタイムテーブルとの折り合いがつかず、残念。客入りは13人。という事で、こちらの作品は、一言で言えば"変な映画!"いつものやつじゃねえかという感じですが、変なものは変。というか、段々とコントにしか見えなくなってくる。初期の北野武映画や松本人志のコントなどに通じる様な、静と動のメリハリから生まれる奇妙なリズム感と、緊張感、不思議さ、そのあたりの事柄がとても変なバランスで積み上げられていて、しかも大真面目な顔でそれをやっているもんだから笑えてくるという。えてして映画の中の笑いというものはそういうものだと思うのですが。[葉隠]に憧れる主人公が銃を使って侍の様に立ち振る舞ったり、ジジイのマフィア連中が役立たずで情けなかったり、きっかけであるボスの娘は恰好だけは一丁前だけど結局なんなのかよく分かんなかったし、登場人物全員が間の抜けたというか、チャームある連中でそれらを大真面目に描いていく様が何とも面白かった。ジムジャームッシュらしいといえばそうなのかも知れませんが、カット割りや編集テンポ、非常に面白いバランスの映画だった。こんな映画観たことないよ。音楽はアガる。

 

・愛、アムール (原題:Amour) -  4.0/5.0 (DVD/2021.11.1)

監督 脚本:ミヒャエル・ハネケ。2013年。何かでオススメを読み鑑賞。妻が脳梗塞を起こし、手術失敗からの右半身麻痺で介護状態となった老夫婦の終末期を描いた。冒頭の妻の死体発見現場からどうしてそうなったかを紐解いていく形での作劇。まず老人の介護の関しての描写は、私自身仕事柄でそういう現場に立ち会う事も多いのですが非常にリアルに描写されていると感じた。独特の画作りでひっぱっていく緊張感が物語の緊張感や寂しさといったものとリンクしてとてもクールな画面になっていた。鳩がとても印象的に2度登場。鑑賞後に考察レビューを観て鳩の解釈が凝ったものに感じ、すごいなあと素直に思った。結末としてはとても悲しい瞬間ではあるが、タイトルにもある通りそれは"愛"でもあるかも知れないし、長年連れ添った2人に分からない感情をきっちりと描いていた。染みた。今年公開の「ファーザー」と比べられる事が多い(「ファーザー」は認知症を発症した人側の主観視点でのアトラクション映画として傑作だと思う)とは思いますが個人的にはこちらの方が断然好き。数年後にまた観てみたい作品だった。

 

・血を吸うカメラ (原題:PEEPING TOM) - /5.0 (U-NEXT/2021.11.1)

監督:マイケル・パウエル。脚本:レオ・マークス。1961年。何のお勧めだったかは失念しましたがリストに入っていたので鑑賞(おそらく[奇想天外映画祭]のラインナップからかなと)。40年代よりも前から活躍するマイケル・パウエルの61年の作品(60年前!)。古さで言ったら自分が観てきた中でも古い方なのですが、全くそれを感じさせないカット割りや展開。"血を吸うカメラ"という仰々しいタイトルほどのパンチは無いのですが、きちんと異常者を描いており良かった。カラー作品でいて、きちんと色彩設計というか画面の色味がされており驚く。凶器がカメラではなく三脚なのが意外だった。

 

■2021年10月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編5本

 

 

・守護教師 (原題:동네사람들) - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.10.26)

監督 脚本:イム・ジンスン。2018年。マドンソクがガチで強そうに見える作品ランキング上位に入る作品だった。話はよくある感じで特に感想はない。

 

・かそけきサンカヨウ - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.10.26)

監督 脚本:今泉力哉。脚本:澤井香織。2021年。今泉力哉新作という事で劇場鑑賞。予告編を一度観たかな?という程度でこれと言った情報もないままの鑑賞だったので、子供たちがメインの話で少し驚いた。「愛がなんだ」の澤井香織が共同脚本としてクレジットされていたので期待をしたのですが、セリフが浮いている様に聴こえる瞬間が無くもないかなという感じだった。子供が演技しているので仕方ないのかな(演技経験が浅いという意味で)とも思う。キーパーソンである陸を演じた鈴鹿央士の柔らかな存在感が終始してこの映画の"子供観"(所謂テーマ)を保持している役割なんじゃないかなと思う。良かった。成田凌の演技っぽいなとも思ったのですが影響を受けているのかは分からない。陸くんはフェリーニのTシャツを着ていた。構造上仕方ないのかも知れないが113分の作品のわりには尺以上に長く感じてしまった。今30代で(勿論それなりに色々あるが)普通の家庭環境にて育った自分から見て共感し得る部分だったりは少なかったと思うが、自分が今まで通って来た道や今の令和の世に青春を生きる子供たち(他者)の視線を観るという意味では豊かな映画体験だった。画面に映るものは説明がないにしてもちゃんと画で最終的には全て案内をしてくれる。この映画は下手したら平板だと感じる人もいるかも知れないが、結構難しい事をやっているのに簡単に見えているのは作劇が上手いからに他ならないだろうと思う。今泉監督は不思議な引力の映画を撮るなあと思う。バランスが独特。

 

・黄龍の村 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.10.25)

監督 脚本 編集:阪元裕吾。2021年。「バイビーわるきゅーれ」に備えて阪元裕吾作品を観ようキャンペーン中(一体いつ観るんだ)という事でようやく阪元作品を劇場鑑賞。「ある用務員」からメジャー配給という事で今作は『東映』のロゴがデカデカと誇らしげに出て来るのが何だかすごい違和感あった。で本編始まると見事にいつもの阪元ワールド。陽キャ大学生軍団のスマホ録画の縦画面から始まり(まさかこのまま最後まで行くのか?と不安になったけど勿論そんなことはなかった)、舞台となる村に到着すると同時にアメリカンビスタへとサイズが広がっていく。序盤こそ自主制作時代の延長感が強く出ていましたが、後半になるにつれて(「すじぼり」などでも見られた)スピード感のあるアクションシーンが目立つ様に。というかほぼそればっかりに。このアクションは確かにすごかった。伊能昌幸のフィジカルでゴリ押し出来るのが相当に強み。ここが当然見せ場であるのですが(未観の「ベイビー~」や「最強殺し屋~」あたりもアクション推しっぽいのですが)、素人感の強く残るカメラアングルや編集テンポ、画の安さも相まってこのアクションシーンの連打は正直、飽きた。し、眠くなった。この山場を越えると急激な転調(まあこれもいつもの阪元印ですが)を迎え、クライマックスへとなだれ込む。ラストはジンガイと化した神(という名の捕虜)を「デス・プルーフ」ばりの高速タコ殴りで画面のテンションと共に上げていく。ゲーム<鉄拳>ばりのパンチの連打と噴き出す体液?には思わず笑ってしまった。"打ち上げっしょ~!!"からの"劇終"でスパッとラスト。面白かった。才気とチャームが同居する貴重な存在。カメラワークや、脚本、(編集もか)は相性の良い誰かが見つかるのを願っているという感じが正直なところですが。今後に期待は変わりません。良かった!

 

・CUBE 一度入ったら、最後 - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.10.25)

監督:清水康彦。脚本:徳尾浩司。2021年。オリジナル版があまりな自分には今回のリメイクがどう映るのかなという感じで楽しみにしていた一作。演者にはお金がある程度掛かっていますが、シチュエーションや実際の撮影自体にはお金がかからないので出来た座組であろうという感じ。内容の方は、オリジナルよりもかなりウエットな方向へと舵を切っており、設定こそCUBEではあるが最終的には"THEジャパニーズ商業映画リメイク"というのが丸出しな感じの着地。いちいち挟んでくる主人公の過去は、映像で見せられて"どう可哀想でしょ?"みたいなポーズを取られても知らんわとなってウザかったし、得意げなスローモーションや顔面どアップには辟易した。シャラメ以外耐えられない所業だろ。岡田将生の演技も正直どうかと思った。これ"まあまあ頑張った方かな"と観た後は思ったけど、なんかひでぇ映画見せられた様な気がしてきたな。Filmarksに溢れる"星野源の主題歌が合ってなかった"とドヤ顔で書いてる連中は的外れもいいとこだし、星野源なんて完全なサイコパスだろと思うし、曲も良かったし、バックトラックもCUBE感と合ってて相当に良かっただろと1人ずつ並べてケツを蹴り上げていきたい気持ちになった。

 

・ハーレイ クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY (原題:Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn) - 3.5/5.0 (WOWOW/2021.10.23)

監督:キャシー・ヤン。脚本:クリスティーナ・ホドソン。2020年。12月あたりにレンタル解禁される「スーサイドスクワッド」の再観に備えてハーレイクインを観ておこうという事で鑑賞。思ったよりも軽いテンポとノリで進んでいくのが意外だった。序盤こそ、ほうほうと感心しながら観ていたが折り返して後半のお話をたたんでいこうとしていく過程から(それまでの無理がたたったのか)設定に都合よい部分が噴出する様になり、最後の方はかなり都合の良いお話になっており、"うーんこれは..."という感じだった。しかし何度見てもハーレイの顔が好みじゃないのであまりノレない。

 

・北北西に進路を取れ (原題:NORTH BY NORTHWEST) - 3.7/5.0 (BSNHK/2021.10.23)

監督:アルフレッド・ヒッチコック。脚本:アーネスト・レーマン。1959年。DR画質で録画しているヒッチコック作品が溜まってきていてようやく鑑賞。これまで観てきたものがサスペンスものだったので有名作であるこれももちろんそうなんだろうなと思って観ていたら意外にアクション大作という様な雰囲気の作品だった。場面場面はやっぱり面白いし、集中して観ることは出来たけれどどうしても長いなあというのは否めなかった。最初から最後までしっかりとした作劇で非常に良く出来た一作でした。

 

・呪怨 白い老女 - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.10.21)

監督 脚本:三宅隆太。2009年。呪怨10周年を記念し(記念するな)「呪怨 黒い少女」と同時公開だった作品。「スクリプトドクターの脚本教室・中級編」を読んでいたらこの作品に関するエピソードがあり、敬愛する三宅監督の作品だという事と、本に書かれた事を確かめたく鑑賞。ある家族が悲惨な結末に向かう話なのですが、一家それぞれの人間とその周りの人達との小エピソードといくつも並べ(所謂"群像劇"風)クライマックスに向かい作劇していくという作り。冒頭からの"今行きますから、少し待ってください"のリフレインも否応なく怖いし(しかもきちんと結末で回収されるのもうまかった)、謎が少しずつ明かされていく作りもお見事でした。三宅監督の"バスケババア"が認知されたのでスピンオフ的に出て来るのですがこのビジュアルが何とも怖くないのだけが定期的に集中力を削ぎに来ている感じだった。映画としての豊かさがどうとかそういう事を話す様な作品では無いので画面に関しては特にいう事は無いのですが、とてもきちんと作られており、60分の作品としても無駄なく観られる事が出来て良かった。南明奈の演技はちょっとどうなんだろうという感じだった。(「黒い少女」の方はかなりダメっぽいのですが、出演者を見たら加護亜依の文字があり少し見たくなった)

 

・ダウン バイ ロー - 4.0/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.19)

監督 脚本:ジム・ジャームッシュ。1986年。何のタイミングなのかは分かりませんが[JIM JARMUSCH RETROSPECTIVE2021]と題して全国の映画館で12作をリバイバル上映中。友人にもファンがきちんと居る数少ない監督の1人なのでちゃんと観ないとなあとは思いつつも、個人的には「パーマネント・バケーション」(集中していないのもあったとは思うが正直全然分からなかった)、「パターソン」(こちらは結構楽しめた)の2作しか観ておらず、「パーマネント~」のせいで何なら若干の苦手意識も持っているので恐る恐るセンチュリーシネマへと足を運んだ。平日昼間に客入りは16人ほど。センチュリーは大小のスクリーンがあるのですがこの特集は(ほぼ)大きい方のスクリーンでやっているっぽくて気合を感じた。肝心の作品はというと、モノクロの映像で107分間、前半は2人の男が知人にダマされて逮捕されるまでを描き、後半でその2人がともう1人の外国人が同じ牢屋に入れられ脱獄を図るという、ただそれだけの話。内容だけ取ってみたら80分くらいで良さそうな気もしますが、監督特有の間の長いカットの連続でゆったりとした作劇をしていく。今作に関しては特に画面が整理されていたり、前半に画だけで見せていた場面が後半に生きてきたりと非常に練られた画面の美しさを観る事が出来る。また、終盤の沼?っぽい所のヌチャっとした感じだったりがモノクロ映像だととても映えていた。話は"なんだそれ!"と突っ込みたくなるような部分もまあまあありますが、何とも言えない3人のチャームなノリや空気がここだけにしかない特別なものを観ているという様な雰囲気になっていた。ラストカットも非常に印象的で、何か大きな事が起きるわけではないのですが、この3人は映画の中での時間の前と後では違う人間になっているんだろうなあとほっこりと感じて良い余韻を残す。良かった。

 

・DUNE/デューン 砂の惑星 (原題:Dune) - 3.5/5.0 (2021.10.18)

監督 脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ。脚本:エリック・ロス。ジョン・スペイツ。2021年。未レビュー。このままにしとくと思います。

 

・尾道 - 未採点 (U-NEXT/2021.10.17)
監督:大林宣彦。1963年。中断していた[大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION]を観てしまおうと思い鑑賞シリーズ。これは深夜のNHKで流れる旅行映像というか、なんというかインタビューで監督も語ってましたが"1950年代後半から1960年代前半の尾道の風景が収められています"というその言葉そのままの映像。それだけ。こないだ見返した今泉力哉「街の上で」で"文化は遺るけど街は変わっていってしまうからね"というセリフでも聴いた様に、もうこの世には無い風景、かつての尾道の姿が収められているという意味では大林監督の幼少期の育った街でもありますし、それこそ監督自身の記憶かの様なそういったノスタルジーとしても機能しているんだなと思う。

 

・最後の決闘裁判 (原題:The Last Duel) - 3.8/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2021.10.16)

監督:リドリー・スコット。脚本:ニコール・ホロフセナー。マット・デイモン。ベン・アフレック。原作:エリック・ジェイガ―。2021年。予告を観てまあこれはパスかなどうかなと迷っていましたがアトロクのアレで鑑賞。土曜日の昼の回でしたがお客は16人ほど。大手シネコンでかかっている作品でこれはちょっと寂しい気も。リドリー・スコット自体には好印象を持っているのですがなかなか作品を数観るには至っていない作家。中世が舞台で「決闘」で「裁判」と来ると個人的にはかなり苦手意識というか興味が沸かない言葉の並びなのでどうかなと思いましたが結構楽しめた。決闘の要素も裁判の要素も一応ありましたけど、こんな邦題にしなくても良いのではないかと。で、肝心の内容ですが、3章に章立てて群像劇システムで作劇される。主人公、その妻、主人公の親友の3人がそれぞれ同じ事を語っているのですが、微妙に解釈や表現が違い、人によっては嘘が混じってくるというまあよくあると言えばよくある感じ。最後の章である奥さんの章の時にだけ"the truth(真実)"と強調されていたのでそれが本当にあった事なんだろう(という素直に解釈をする)とクライマックスまで観客は身をゆだねる。何が正義で、何が悪なのか、決闘とは。結局のところ正義なんて個人のものなので、必要ないし意味がないものだよなあと強く感じた。最後の決闘はどちらも死ねばいいのにと思いながら観た。一応、主人公であるマット・デイモンが勝つのですが、最後のひと突きはアダムドライバーの喉奥に剣を突き刺すというとても痛そうな死に方がgood。お話自体は別に、という感じでしたがまあ楽しめた。

 

・木曜日 - 未採点 (U-NEXT/2021.10.15)

監督:大林宣彦。1960年。キネマ旬報が出版している「大林宣彦メモリーズ」を読み始めたので、中断していた[大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION]を観てしまおうと思い鑑賞。大林監督の20分以内の短編はいくつかあって、それまで観た「だんだんこ」「形見」とどれほど違うものかと思いまいしたがまあ違いましたね。無声映画なので解釈も難しいのですが。この「木曜日」は編集のテンポというか編集自体が攻めており、細かいかなり早いカット割りの応酬でクライマックスを構成していたり、結構前衛的で大林宣彦初期からやってんなあ感はかなりありました。採点はせず。

 

・PITY ある不幸な男 (原題:Oiktos) - 3.6/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.14)

監督 脚本:バビス・マクリディス。脚本:エフティミス・フィリップ。2018年。日本公開2021年。「聖なる鹿殺し」のエフティミス・フィリップ脚本作品。全く観る予定に入れていなかったのですが何かの拍子に予告を観て鑑賞。公開1週目平日昼間観客は10人。"すごい変な映画だった!!"という感想を言いたくて期待して観たのですが、実際に観終わって思ったのは"ずいぶん待たされたのに出てきた料理が美味いとも不味いとも違う何とも言えないものだった時の様な感情"だった。もちろん変は変なのですが。"妻が事故をして意識が戻らない不幸な男に酔い切ってしまった男の顛末(とは一体。男は狂ってしまったのか?)"というプロット自体は面白いなと思ったし、そう思ったからこそ見に行ったのですが...たしかにお話はそのままなのですが作劇上の3パート目(催涙ガスを発動し(アクション的に一番大きくブレーキが利かない状態になってしった時点))の配置位置がもう15分ほど早く来たらもう少し集中力高く観られたのになと。99分しかない作品なので15分削るとなるとかなり削る羽目になるのでもはやそれは...という感じなのですが、要するに中弛みしたと。要所要所に挟まれる大音量のクラシックは結局のところ、主人公が不憫エクスタシー(人から可哀想ねと思ってもらえると感じて)をビンビンに感じている表現で、アホみたいで面白かった。し、天丼的に繰り返されるのには思わず笑ってしまった。ラストはまさかそこまで行ってしまうとは...という怖さがしっかりと演出されており、良かった(ラストカットの犬も良かったね)。というか、結構全体的に良かったのでは?と思うのですが、やはりどうしても全体的なテンポ感が許せずこの点数に着地。観終わって時間が経つにつれて面白かったなと感じる。filmarksのレビューなどには、代理ミュンヒハウゼン症候群の映画だというコメントも多いですが、半分分かるような、そうでもないような。という感じ。

 

・プッシャー2 (原題:PUSHER II) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.10.13)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2004年。マッツ・ミケルセン演じるトニーが1に引き続いて登場。彼のアナザーストーリーとでも言いましょうか。基本的な質感や肌触りは前作と変わらない印象。ひたすらドライに冷たくそして突如として起こる暴力描写と、自らの選択が自らの人生を破壊していくという点はその後の作品群にも共通するニコラス・ウィンディング・レフン監督の作家性だと思う。ただ、今作は前作よりも暴力描写は控えめになっていて、どちらかというとトニーのキャラクターで引っ張っていく様な作劇に感じた。それだけマッツ・ミケルセンに可能性を感じていたのかも知れないが。特に印象的だったのは子供(赤ん坊)の存在。特に、全てが壊れもうどこにも希望が無いまさしく"どん底"に自ら落ち切ったトニーの視界に入った唯一の希望である赤ん坊を持ち去るラストシーンには少しだけ希望がある。し、どうしようもない登場人物だが子にとっては親だし、彼が必死に縋り付きたかった光なのかなとか考えると何とも言えない鑑賞後感がある。赤ん坊が目をつむって眠りにつくラストカットもじんわり良い。狂人監督が魅せる突然の人間味に驚く。「3」も楽しみだ。

 

・修羅ランド - 2.0/5.0 (U-NEXT/2021.10)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。いつものメンツによるいつもの感じのショートフィルム。12分。阪元監督の10分台の短編は「ぱん。」とコレしか存在していないと思うのですが、「ぱん。」のテンポの良さや、彼がこれまでチャレンジしていないような内容にチャレンジしたという部分で良かったのですが、この作品に関してはいつものメンツと特に内容も無くただただ手癖で作っただけの宿題?作品の様な感じで本当に響くものがなかった。インディ時代の自主映画にこういうものは別にあってもいいとは思うけれど、ここまで何もないものを作る必要があったのかな?というのも疑問。

 

・ソウルフル ワールド (原題:Soul) - 3.7/5.0 (Disney+/2021.10.10)

・夢追いウサギ (原題:Burrow/監督:マデリーン・シャラフィアン/2020年) 

・22番VS人間の世界 (原題:22 vs. Earth/監督:ケビン・ノルティング。脚本:ジョッシュ・クーリー/2021年)

監督 脚本:ピート・ドクター。2020年。Disney+が観られるようになったので気になっていたこちらを。ピクサーものは観てみようという気になりますね。まずはなんと言っても導入から観られる暗闇部分の画面の良さ(この表現でいいのだろうか)。これはテレビ画面ではいかんだろうなあと感じた。キャラクターの造形や、"魂"を具現化したビジュアルは過去作(インサイダーヘッドなど)にも観られるようなもので正直新鮮味はなかったけれど、こういうものだろうと納得は出来た。"死にたくなかった人"と"まだ産まれたくない人(魂)"が交流をし、互いが"死ぬこと"と"生きること"を理解し、受け入れていくという内容。特に観客は自分自身が今生きている以上、劇中で言うところの"きらめき(最後の1ピース)"を手に入れた側の存在としてどうしても見ていく事になるので、自分が固有に大切にすべきものや大切に捉えるものがあって、それは絶対に誰とも違うし君は君なんだよと背中を押してくれる様な力強いお話として機能しており、とても気持ちが良かった。大きな展開があるわけでは無いけれど非常に芯を食った骨太な作品に感じた。

 

・おらおらでひとりいぐも - 3.3/5.0 (WOWOW/2021.10.9)

監督 脚本:沖田修一。原作:若竹千佐子。2020年。なかなか食指が伸びず観ていなかった作品をようやく鑑賞。「横道世之介」「滝を見にいく」の沖田監督ですので、評判も良いし楽しみにして鑑賞。主人公の(イマジナリーフレンドとはまた違うかもしれないが)自分との会話を繰り広げていく魅せ方は、原作そのままらしいですが試みとしては非常に面白かった。特に、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎の3人が出て来る最初のカットは結構斜め上いく演出で面白かった。"過去の自分"が出てくる作品は無条件で弱い私ですが、それでもこれはちょっと距離のあるまま見切ってしまった感は否めない。作劇がどうも回りくどく、ダラダラやっている様な印象になってしまったのが原因の様に思う。最初の"地球誕生シーン"や終盤の"マンモスとの闘い"シーンなどちょっと理解が難しい部分も目立った(お話的にはもちろん分かりますよ、あくまで演出としてね。)。改めて「横道世之介」は奇跡の様な作品だったんだなあと思う。沖田監督は森田芳光監督に非常に影響を受けているそうですが、なんだか納得するような攻めっぷりだった。

 

・007/ノー タイム トゥ ダイ (原題:No Time to Die) - 3.6/5.0 (イオンシネマ岡崎/2021.10.8)

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ。脚本:ニール・パーヴィス。ロバート・ウェイド。2019年。日本公開2021年。長尺でしっかりとたっぷりとアクション&人間模様を魅せてくれる。アバンタイトルがとにかくカッコ良かった。むしろそれだけで良いくらい。シリーズに思い入れないのでその程度の感想だった。アトロクのアレで鑑賞。というのがTwitterに書いた感想。まあそれくらいの感想しかないのですが。とにかく最初の30分は初めて007シリーズを観たからか予想していた以上にアクションシーンの連続で結構テンションが上がった。その後は、作劇的にはすごく真っすぐに進んでいくストーリーでしたので特に難しい部分も無くただ流れに身を任せて観て行けばそれなりに楽しめるのはさすがの娯楽作という感じでした。だんだんとノレない部分が増えてきて、まあ最後はそれなりの着地をしたかな(個人的に)と思う。アクションシーンも最初のうちはスピード感や迫力が新鮮だったものの、ゲームズボンドにとって都合のよい殺陣にしかなっておらず、楽しめる余白が少なくなって行ったように思う。ライダーショー的というか、敵はあくまで死ぬためだけに存在しているので窮地を乗り越えながら敵を倒してもまあ感動が無い。ラストのボス?との闘いも"え、もっとこうしたらいいじゃん"と思う部分がいくつもあり、自爆オチもふ~んとしか思えなかった。最初こそ、"シリーズ今からでも追ってみてもいいかな"と感じましたがまあ別にいいかという結論に至った。

 

・メイン テーマ - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.10.7)

監督 脚本:森田芳光。原作:片岡義男。1984年。[森田芳光全映画]を購入した事もあり、先日再鑑賞した「家族ゲーム」に続いて森田作品を。お話があるような無いような、ロードムービーの様なそうでも無いような、非常にふわふわした薬師丸ひろ子とふわふわした野村宏伸の2人が繰り広げる(言ってしまえば)ふわふわした"青春映画"。劇的な事が起こらない事が青春なのではないだろうか、そう、そうだったはずだ。と思い起こさせてくれる。全編に渡り森田監督の何とも言えないギャグが散りばめられている。画面の作り込みやそこに隠された可笑しみのようなものに目が行きだすとどうしても愛着がわいてしまう作品であることは間違いない。冒頭の、園児にセクハラをされた瞬間に園児を殴り倒すシークエンスで"名作に違いない!"とテンションが上がってしまった(その後の車で追い掛け回すシーンとかも強烈だったけど)。他にも言い出せばキリが無いので列挙することはしませんが、とにかく最初から最後まで気のふれた変なシーンが連発される。個人的に大好きなのは、終盤のしずくちゃんをモーテルに誘いOKを貰って興奮する大東島君がめちゃくちゃにチャーミングで面白いシーンだった。当時の角川映画で薬師丸ひろ子が主演となればそれだけで商業映画として担保がされている様な状態だったと思うのですが、(それを利用してなのか)それでもアバンギャルドな姿勢を貫く森田芳光という監督の作家性や精神性にまた一つ興味を持った結果となった。(感想。加筆するかも)

 

・フォードvsフェラーリ (原題:Ford v. Ferrari) - 4.1/5.0 (WOWOW/2021.10.7)

監督:ジェームズ・マンゴールド。脚本:ジェズ・バターワース。ジョン=ヘンリー・バターワース。ジェイソン・ケラー。2019年。日本公開2020年。観よう観ようと思いながらようやく鑑賞。ホームシアターが本格的に完成したら観るぞと思いながらだったのでようやくでした。爆音鑑賞。しかしながらこれは映画館で観たかった...。アツい展開に燃え、シブい終わりにシビれた。というのが真っ先な感想なのですが、ベタでありながらもマット・デイモンとクリスチャン・ベイルの男のやり取りにはこみ上げてくるのがあり、レースシーンというのは基本的にこぶしを握って応援せざるを得なかった。クリスチャン・ベイルが奥さんに車の中で脅迫されるシーン、自宅前で取っ組み合いの素人ケンカするシーン、フェード社長を(またもや)車内で脅迫するシーン、などなど今ぱっと思い出しただけでもチャーミング且つ印象的で泣けたり心が動く様なシーンをいくつも思い出せる。実話なので仕方ないのかも知れないが一筋縄ではいかないビターな幕引きに少々の苦い感情を持ったが映画としてやはり優れていて、こみ上げて来るものがある。作り手の武骨な心意気みたいなものをしっかりと提示してもらったような気がして非常に気持ちの良い映画だった。またいつか見返すんだろうなと思う。

 

・ディナー イン アメリカ (原題:Dinner in America) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2021.10.5)

監督 脚本:アダム・レーマイヤー。2020年。予告を観てふ~んと思っていた程度でしたが知人の絶賛により鑑賞。客入りは23人(数えた)。感想を言えば、最終的になんだかノリ切らなかったなあというのが本音。プロット自体もどこかで観たような感じだし、実際に内容を観てもベタだなあという様な感想以外ない感じでした。何なら差別的な発言だったり、セクシャリティの部分とかが結構蔑ろに作られているよなあと感じた。"パンク、パンク"というのであればそういう部分って真摯であるべきではないだろうか。本気でパンクロックを愛している人はそういう部分には敏感なはずじゃないかなと思う。ただ、全体的にパンクのムーブメントである90年代のノリというか露悪的な趣味みたいなものを内包している表現なのでと言われてしまえば、"お、おん。。。"と言うしかないのですが。。そして同時にリアリティの部分の整合性の無さというか、あまりにも都合良過ぎな展開&登場人物の配置には疑問が浮かぶ。ベタだからリアリティ必要ないのかも知れないけれど、リアリティとのバランスが不思議な作品だった。クライマックスにあるライブシーンで発される曲は良かったかなと。作劇上も良く機能していて、タイトルとも絡み効果的だったと思う。パティと作ったオリジナル曲が意外と良かった。

 

・トムボーイ (原題:TOMBOY) - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.4)

監督 脚本:セリーヌ・シアマ。2011年。日本公開2021年。「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマの過去の短編が10年の時を経て日本公開。トランスジェンダーについての作品。10年前の作品という事で、10年前がトランスジェンダーに対してどういう空気だったのかを覚えていないのでそういった部分での今日との比較はちょっとし辛いのが個人的には感触としてあるのですが、"子供の"トランスジェンダーを描いた作品というのはフレッシュな切り口の様に思えますし、トランスジェンダーは何も大人だけの問題ではなく、それこそ自分と他人との境界線や、自分と社会との関わりなんてもっと分からないであろうティーンを主人公に据えて物語を描いていくというのがセリーヌ・シアマという作家のより鋭い先見性が感じられる。音楽(ほぼ無し)やセリフ(作劇上ヒントとして置かれている様な"セリフ")はかなり少なく、登場人物も子供がほとんどなので途中からドキュメンタリーを観ているかの様な錯覚に陥るほど、画面や物語に寄り添って作られているように感じた。本編の内容的には苦しい表現が続くのでツラい事にはツラく、結末は賛否両論ある様ですが前向きに捉えるとそれまでの流れが回収そして昇華されるような救いの物語に感じるようです。個人的にはもう少し答え(言葉のチョイスが難しいが)に近しいものを提示する事が(あくまで劇映画としては)"救い"だったり"理解"に繋がっていくのになあと感じた。主人公ロールの妹がひたすらに健気で可愛かった。

 

・殺人鬼から逃げる夜 (原題:미드나이트) - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.10.1)

監督:クォン・オスン。2020年。予告を観たのかな?か何かで気になったので鑑賞。公開すぐ且つ1日だったからか結構お客さんは入っていた。60人ほどは居たかなという感じ。比較的に若い観客が多く、普段あまり遭遇しない"本編始まってから入ってくる奴"が何人かいたのが意外だった。こういうの観に来るのね。本編の感想は、分かり易く韓国産スリラーと言えばそれまでですが、今作で何よりも目立ったのは"とにかく走る!"という事。主人公と殺人鬼がとにもかくにも鬼ごっこを繰り広げまくる。"言葉によるコミュニケーションが出来ない"というハンデを作劇の肝としながらリアリティも保ち、上手く展開していて良かった。緊張感のある画面の連打に若干の胸焼けをしましたが最後までしっかりとスリリングで満足。音楽は壮言過ぎたか。
(正直これを書いているのが時間空いちゃっているのでフレッシュな感想が忘れてしまってます)

 

・スリザー (原題:SLITHER) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.10.1)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2006年。ジェームズ・ガン作品をと思い、鑑賞。ベタと言えばベタなような"宇宙から堕ちた謎の生命体が人間を侵食し、パニックになる"映画。なのですが、容赦ない描写と、"異物感"を出すにしても癖が強すぎるだろと突っ込みたくなるような描写の連発で、基本アホらしい話なのですが、振り切っているものには乗らざるを得ないのが現状。しっかりと最後まで面白く観ました。何だか薄い感想になってしまった。

(正直これを書いているのが時間空いちゃっているのでフレッシュな感想が忘れてしまってます)

 

■2021年9月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編 3本

 

・鼓動 - (U-NEXT/2021.9.30)

監督 脚本:品田誠。2019年。藤原季節が出ているので鑑賞。短編なのですが、これは一体どうしたかったのかというのが最後まで分からなかった。長い予告編?ただ物語の導入部分を観せられただけにしか感じなかった。短編ってこういう事じゃなくない?感がすごい。点数もつけられなかった。

 

・死霊館 (原題:The Conjuring) - 2.2/5.0 (U-NEXT/2021.9.30)

監督:ジェームズ・ワン。脚本:チャド・ヘイズ。キャリー・ヘイズ。2013年。敬愛する三宅隆太監督のPodcast(スクリプトドクターのサクゲキRADIO)でこの「死霊館」シリーズの最新作のパンフレットに寄稿することになり、本シリーズを全くの未観だったので慌てて観たら作劇的に非常に面白いシリーズだった!という熱弁を聴き、一応観て観るかと思い鑑賞。う~ん、三宅監督の仰っていることはよく分かりますが、個人的な好き嫌いでいうとどうしても乗れないというかあまり好みではない部類の作品だったので、"ふ~ん、たしかにねえ"と思いながら観たがそれ以上の感想は持てなかった。そして、どう頑張っても画面が暗すぎる。タブレットの画面で観たのが悪いのですが、これはしっかりと暗い環境で観ないとだめだなとよく分かりました。

 

・バッド エデュケーション (原題:LA MALA EDUCACION) - 3.7/5.0 (WOWOW/2021.9.28)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。2004年。9月のWOWOWはペドロ・アルモドバル特集という事で全作品もちろん録画で楽しみにしていました。観たものもいくつかありましたが未観のこちらを鑑賞。ゲイ、オカマ、ヤク中、映画監督、劇中映画、役者、嘘のキョウダイを名乗る人物、実はあの人はその人だったなど、いかにもアルモドバルです!という様なプロットが満載の大喜び作品だった。やはりこういうテーマの時のアルモドバルが一番輝いているよなあと心底思う。"なんだか「ペインアンドグローリー」みたいな話だな"と思いながら観終わりネットでいろいろと情報を調べていると、"監督の半自伝的な作品"とあり、"「ペインアンドグローリー」じゃん"となった。向こうを先に観てしまっていたので、どうしてもちょっと落ちる感は否めないですがそれでもしっかり面白く、とても切ない話だった。やっぱり変な映画(本人にとっては変ではないと思いますが)を真面目に作っている人間の作品は面白い。録画したWOWOWがクライマックスで15分ほどブロックノイズ出まくりで観れたもんじゃなかったので翌日レンタルDVDにて補完して鑑賞した事を記録しておく。

 

・ディアスキン 鹿革の殺人鬼 (原題:Le daim) - 1.5/5.0 (WOWOW/2021.9.27)

監督 脚本:カンタン・デュピュー。2019年。番組表の紹介を読んで何となく録画したものを何となく鑑賞。最初こそ意外と画面のテイストがジャンルもの(そりゃタイトルに殺人鬼って入ってるくらいだからね)の感じとは違うフワッとした()雰囲気だなと思って意外に面白いかもと思いましたが、約77分ほぼ意味の無いというかつまらない画面とお話が展開されるだけで"何もない"とはまさにこのことかと思う様なちょっと分からない作品でした。もちろんお話の内容は分かるのですが、観終わっても"だから何だったんだろう"としか思えず、世界中のジャケットを奪い取り、自分だけがジャケットを着たい狂人が狂った果てに殺人を繰り返すというのは悲しい呪いの様なお話でしたが、だから何だろう。。。結局何も感じ取る事が出来ず、ただただ無意味な77分を人生の中から失った様だった。"燃ゆる女の~"のエロイーズが出てた。

 

・明日の食卓 - 2.7/5.0 (WOWOW/2021.9.25)

監督:瀬々敬久。脚本:小川智子。原作:椰月美智子。2021年。予告を観る限り面白そうで、サスペンス?だったりミステリー?だったりするのかなという感じでまあ観てみるかとWOWOWの録画鑑賞。菅野美穂、尾野真千子、高畑充希の3者がそれぞれ演じる母親とその子供"ユウ"。予告にある"誰が息子を殺したのか?"の展開が無かったことにまずは拍子抜け。これは予告詐欺というのではないでしょうか。百歩譲ってその部分が菅野美穂演じる親子のエピソードに集約されているとして、そこをこの作品の主題だと捉えるのであればはっきり言って他2組の家族のエピソードって必要ないですよねと。まず尾野家の子供にはリアリティが全くもって感じないし、そもそもあそこまでのレベル(庭に排泄する)の認知症のおばあさんってあんなまともに話せないと思うし、認知症に見えないし、父親のクソ親像や全てがステレオタイプで"ポーズ"にしか見えない。高畑家の親子のエピソードに関しては、本筋と関係がある様に思えない。こういうふざけた事をやっていると本当に舐めてんなとテンションが下がる。作品自体も137分と長尺でその2組のエピソードが無ければ100分くらいにまとまってたんじゃないの?と。何をもってこんなにも"ポーズ"だらけのシーンやプロットを盛り込み、無駄に作品を太らせて何がしたかったわけ?と結構ムカつきました。良かった事と言えば、終盤唐突に大島優子演じる"息子殺し"の親と菅野美穂が対面するシーンが出て来るのですが、その直前のシーンのミスリードは上手く(すぐ真相を観せるのも良かった)、面会の薄いアクリル板を隔てた紙一重感(息子を殺してしまう親と、そうでない親)や、半透明の菅野に重なる大島の顔の画面作りなどはやる気を感じられ良かった。故に"結局ここが撮りたかったんでしょ"感も強まってしまい、余計に他のシーンが超蛇足に感じた。結局この監督が何を言いたいのかよく分からないが、"問題提起げ"なポーズばかり並べる社会派風映画にとにかく腹が立った。

 

・先生、私の隣に座っていただけませんか? - 3.4/5.0 (MOVIX三好/2021.9.24)

監督 脚本:堀江貴大。2021年。アトロクのアレで超渋々鑑賞。うーん。。まあ、観ましたけど。。劇中の漫画はとにかく面白くなさそうでした。という事はこの話自体面白く無いよなとも思える。こういう話って、そういう部分がしっかりしてないと説得力にイマイチ欠けるのではないでしょうか。終盤、佐和子の書いたネームを観た編集者が"おもしろ~い!!"と言いますが、そこに全くノレず、何だか映画全体の説得力不足を露呈している様に感じてしまった。とは言え、プロット自体というかやろうとしていることは結構面白いと思うし、ラストの展開は三転四転して、一体どこからが漫画の中でどこまでが現実なのか観ている方でさえも混乱していく構造はクラクラする感覚を感じ、とても良かった。"漫画が現実を引っ張っていく"という様な構造を持っているので仕方ないのですが、やはり物語の転機だったり場面の流れがどうしても漫画を待たなくてはいけない作りに感じて全体的にもっさりした印象を受けた。120分の尺も正直長いよなと感じる。この程度のオチ(ここがぶっちゃけ詰まんなかったのも大きい)の話を魅せられるのであれば長くても100分ほどでゴールしてほしいのが本音。黒木華も柄本佑もあまり好きではない役者なのでより強くそう感じた。序盤は車の窓の外から車内の会話のカットバックを撮るシーンが多くどういう意図なんだろうと思っていたが最後までイマイチ分からなかった(のは自分のリテラシー不足か)。

 

・仁義なき戦い 代理戦争 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.9.23)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1973年。ミッドランドスクエアシネマが行っているフィルム上映企画で「仁義なき戦い」シリーズ完結まで全て上映が決まった様で、3作目を35mmフィルム鑑賞。フィルマークスの城定秀夫氏のコメントによれば日本映画もコンプライアンス的なものが影響しだした時代の作品らしく、そのせいなのかは分からないがこれまで2作とはっきりと色合いの違う作品でどことなくトゲが鋭くなくなったというか、今の言葉でいうなればエンタメ寄りになったというか(シリーズがヒットしたからでしょうけども)、沢山の人が見る事を前提にして作られている様な印象を受けた。この作品も次があるのが決まっている状態なのか、単品での決着を付ける気がない作品で、あくまで「代理戦争編」の様な体を保っていた。なのでかは分からないが少しドラマっぽくも感じた。映画として面白かったかと問われれば、はっきりと前2作の方が面白かったと言うだろう。(分かり易くなってて見易かったけどね)

 

・空白 - 4.1/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.9.23)

監督 脚本:吉田恵輔。2021年。公開初日、初演。市松模様でしたがほぼフルハウスで65人ほどの観客が居たかと。「BLUE」に続き今年2本目の劇場公開作品で、吉田監督の乗りっぷりがよく分かる作品でした。冒頭からアバンまでの一連の流れが息を飲む緊張感とはこのことか、とにかく素晴らしかった。更に、開始から例の事故のシーンまでの間に各キャラクターの状況などをしっかりと観客に伝えるように画面を並べていく周到さと、事故のシーンに至るまでを"我々観客は一部始終全て(青柳が実際にバックヤードで何をしたかという事以外)を観ている"、そして"もう事故前には戻る事が出来ない"という当事者性、映画としての時間間隔をも持たせてから、さあ本題という映画的としかいう事が出来ない体験性も含めて、今年1アバンだったかも知れない。本編に入ってからも脚本も非常にスムーズで良く出来ており、全てのシーンに仕掛けが必ずあり、次のシーンに繋がっていくのも見事だった。タイトルにもなっている「空白」、これをどういう風に捉えるかでこの作品への感想は違ってくるかも知れませんが、"余白"だったり"隙間"だったり、そういった言葉でも代替えとまでは言わなくてもそういう捉え方も出来るのかなと思えた。皆それぞれに余白があり、隙間があり、そこを埋めるも埋めないも、塗るも塗らないも、関わるも関わらないもそれぞれだし、完全は無く、分かり合う事も出来ないんだなと改めて身につまされた。だからこそ、自分以外の人とコミュニケートする際にはそういった部分への想像力を互いに持たないといけないなと感じた。勿論ツッコミどころはありますが、作劇上納得の出来るものでしっかりと集中力をそがれる事なく観る事が出来た。急ぎ足で書いたのでまた加筆するかもですが、とても良かった。

 

・スロータージャップ - 2.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.21)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」「ぱん。」「べー。」「ハングマンズ・ノット」に続き鑑賞。冒頭の吉井健吾演じるアホ兄弟の障害者のシーンからかなり嫌悪感というかこれっていいのかな?感がすごいのですが、観進めていくとその描写は一体何だったんだというくらい全く脈略の無い話に転じていく(もちろん一応の繋がりはあるのですが...)。これは作劇とか考えてないよなと思わず苦笑い。ただただ撮りたいシーンを撮りまくるという感じでしょうか。で無理やりひっつけたというか。若い作家の自主映画はそれでいいし、むしろそれは年を重ねると作れなくなってしまうものでもあるのでこういうもの自体が遺せたことに意味はあると思いますが。後半は、まさかのお料理対決。食材もまさかの人肉。カニバリズム。狂いすぎでしょ。道行く母親を殺して赤ちゃんを盗み食うシーンとか、最初の障害者のシーンもそうですが、さすがに倫理観がついていかない。シーン自体は面白いんですが"でもこれ人肉なんだよなあ、オエ"みたいな。ちょっとさすがに胃もたれした。監督自身の精神状態が心配ですね。面白いけど、苦手。「人肉饅頭」と同じ感想か。


・浜の朝日の嘘つきどもと - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.9.21)

監督 脚本:タナダユキ。2021年。予告編で観てどうかな~と思いながらも鑑賞。最近多い(様な気がする)メタ的な映画のお話。大体、映画を作るという部分にフォーカスを当てる事が多いと思うのですが、今作は"映画を観るという事(観る場所を守るという事)"に重点を置いて作劇されていく。福島放送の開局50周年記念製作。元々はテレビ版があったようでその劇場版と言った感じで新たに作られている。タナダユキ作品は初鑑賞。南相馬の創業100年の映画館"朝日座"の存続をかけ、高畑充希演じる主人公の浜野あさひが奮闘する。映画冒頭から、映画館を閉館する館長とのやり取りや、映画の仕組み、映画を支えに生きていく人たちがいるという事、そしてそういう人たちのとって映画館(または映画そのもの)の存在がどういう意義を持っているのかなどを描いていく一連のシーンで早くも落涙。のっけから"これはなかなかだぞ"と思いながらも鑑賞を始めましたが、時間の経過と共に少しずつ作劇上の矛盾点や、脚本の粗、(何よりもコレですが)編集テンポの悪さ、などが気になってきて少しずつ冷静になっていった。それでも終盤の大久保佳代子演じる恩師の死を挟み、映画館閉館を免れる流れはまたしても感動するのですが、うっすらとずーっと"でもこんな事ってさあ、無いよねえ"という想いがぬぐい切れず、この作品自体を好意的に捉え自らノッて行く姿勢があれば十分に楽しめる作品ではありましたが、わりと細かい所は気になった。全然嫌いじゃないし、むしろ好きなのですごーく何だか惜しいなあという様な感想を持った。大久保さんの演技ももしかしたら化けるのかなと思って観ていましたが、別にそこまで。そういう部分も惜しいなと。そして、何よりコロナ禍以降を描いているのにも関わらず街の人たちが誰一人マスクをしていないのはなぜ??という疑問も付きまとった。そういう部分に真摯に向き合った「茜色に焼かれて」などを観ているのでどうしてもね。と。(劇中で年号を出したりしていないので、コロナ終息後少し時間が経っていると言われればまあ納得も出来なくもないのですが。。それなら劇中で指定する必要がありますが)

 

・ラビッド ドッグス (原題:Cani arrabbiati) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.9.20)

監督:マリオ・バーヴァ。脚本:アレッサンドロ・パレンゾ。1974年。"[ホラー秘宝まつり2021]にもラインナップされているこちら。本当は劇場で観たかったのですが、名古屋エリアの会場であるシネマスコーレは、おじさんしか来ない映画を就業時間中にやるという空気の読めない劇場なので(だから客が入らないんだよ!)(リーマンおじさんではなく無職おじいさんを狙っているのかも知れないけど())、どうしても見に行く事が出来ず、U-NEXT(神)で観た。"と、何度でも書きます。というわけで、ホラーじゃないマリオ・バーヴァ作品は初めて観たのですが、まさかの"密室会話劇クライムサスペンスロードムービー"というジャンルの闇鍋も良い所な作品でした。が、基本的には移動する車内での会話劇が映像の7.5割なので飽きてくるかなと思いきや、全くもってそんな事はなく、グイグイと引き込まれて観る事が出来た。ロードムービーの要素も大きく、逃げ出してみたり、給油をしてみたり、ブドウ泥棒をしてみたりと何だかんだ様々な事が起き、その中で強盗3人組の実は人間味のあるキャラクター造形を少しづつ作っていく(完全な悪役にしない。悪役の中にも人間性を宿す)作劇が巧みだった。時間の進行と共に、悪い奴らだとはわかってはいるんだけどと...いう感じがラストのどんでん返しに対してより驚きというか、色んな意味で"ショックさ"みたいなものを増していると思います。時折挟まれる広角レンズで下から撮ったアングルの画が印象的だった。

 

・ぐらんぶる - 1.8/5.0 (wowow/2021.9.18)

監督 脚本:英勉。2020年。何んとなーく裸の男たちの画が面白くて超軽い気持ちで観たかったのですがWOWOWで放送されていたので鑑賞。えーっと、どこから言っていいやら...。良い所を挙げるとすれば、冒頭のまさかのタイムリープものと分かった部分や、その付近の結構ストレートでくだらないギャグ描写などは面白かった。それ以降も度々挟まれるギャグがまあ面白かったと言えば面白かったが...。高嶋政宏の狂いっぷりと「MAD MAX怒りのデスロード」のあいつばりの乳首いじりが記憶に残った。それくらいですかね。悪かった所を挙げればキリが無いのですが、一番ずっといやだったのは画面の安さ、かな。DQNきもいとかいろいろまだまだありますが、画面がドラマにしか見えないのがマジで舐めてんだろと怒りを覚えた。本当にまだまだ列挙すれば無限に出てきそうですが時間がもったいないので止める。マジでひどい一作。エンドロールが横スクロールなのが初めて観るなあと面白かった。「小さいおうち」もそうだったかな?忘れた。

 

ハングマンズ ノット - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.16)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」「ぱん。」「べー。」に続き鑑賞。これまで観た中だと一番長い時間の作品(87分)となる。一貫して強烈な、まさしく"容赦ない"暴力描写は坂元作品印か。これまでの3作品にはチャームの様な部分(というかコメディタッチ)がちょくちょく顔を出していたのですが、この作品に関しては極力そういった部分をそぎ落とし、よりシリアス且つ"怖い"ものへと昇華されていた。多くの部分を乾いたタッチで描き切るため、笑いの部分が真剣な画面の中にある滑稽さや面白さなので意図していない様にみせて実はより笑えてしまうという様な感触に繋がっているのも上手いなあと感じる。サイコパスVSヤンキーという構図や、基本的に"悪人s悪人"が多いなという印象。だからこそ救いの無い物語へと発展していってしまうなとも感じる。これまでで一番長い作品ということで、実際若干の中だるみ感はあるのですが、それでも光る才能には惹かれるものがある。この先どういった作家に化けていくかはかなり際どい所ですが、しっかりと成功をして欲しい期待の作家である事は間違いないなと思う。


・麻薬密売人 プッシャー (原題:PUSHER) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.9.16)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:イェンス・ダール。1997年。レフン監督作品を久しぶりに。デビュー作。この「プッシャー」シリーズは後に3まで続編を作られているようです。"月曜日"から始まり、主人公であるフランクが徐々に道を踏み外していき、最終的("日曜日")にはもう戻れない所まで来てしまうという地獄の一週間を105分で描いた。初作とは言え、コラス・ウィンディング・レフン丸出しの画面と脚本で最初っから狂っていたんだなあというのを実感させられる。ただ淡々と時間を描いていくのだが、何故だか引っかかる画面になっているのがレフン監督の魅力の一つであり、私が好きな理由だ。もちろんこの「プッシャー」もそうで、最初から最後までどこか観客と距離を置いた温度感が良いのかも知れない。突然起こるとてつもない暴力描写も怖さをより感じさせる様に機能している。

 

・べー。- 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.9.16) 2016年

・ぱん。- 3.6/5.0(U-NEXT/2021.9.15) 2017年

監督 脚本:阪元裕吾。(「ぱん。」は辻凪子と共作)「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」に続き阪元裕吾監督の初期短編を2本鑑賞。「べー。」は2016年"学生残酷映画祭"のグランプリ作品(どんなグランプリだよ)。15分と35分の短編という事で、特に「ぱん。」の方は15分でこれ以上ないくらいのリズム感での作劇で短編はこうあるべきだろうという見本の様な見事な手腕を発揮。インディとは言えこれがデビュー作とは思えないほどのセンス。話自体はまあって感じですが、坂元監督"らしい"味のある作品になっていると感じます。「べー。」はタイトル通り、舌だしのオチがやりたかったんだろうなあというワンアイデア感はありますが、それでもバイオレンスを主軸にきちんとヒリヒリしたイヤな作品(褒めてます)をしっかり作れるそもそもの手際の良さというのは表れてるよなあと感じた。

 

・ファミリー☆ウォーズ - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.9.14)
監督 脚本:阪元裕吾。2018年。「ベイビーわるきゅーれ」が話題になっている阪元裕吾監督の過去作品。ホラー秘宝まつり2018出品。あまり監督の事は存じ上げないのですが「ベイビー~」鑑賞のため(U-NEXTの配信期限が迫っている事もあり)鑑賞。全編通してこれ以上ないまでのインディ臭さ。まあ自主映画なので当然なのですが。若干"イヤなインディ感"というか、こういう画質とかクオリティでこういう類の話をやられると、倫理観とか描写のイヤさとかもどんどん積み重なってちょっと受け付けない様な質感には(個人的な好き嫌いの話で)なりかねないのですが...なんとか完走。でも基本的にはずっとめちゃくちゃやり放題で面白いんですけど。とにかく終始エロとか嫌なエピソードばかりを綴っていくので胸焼け感は否めず、ずっとピークを突かれいるというか、ダイナミクスが無いというか、せっかくの描写もそれが"普通"になってしまうのは少し勿体ない様な気もします。ただ、しっかりとラストの大展開で更にめちゃくちゃなことになるのでまあ大丈夫といえば大丈夫なのですが。。他の作品も観てみよう。

 

・モンタナの目撃者 (原題:Those Who Wish Me Dead) - 3.1/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.9.13)
監督 脚本:テイラー・シェリダン。脚本:マイクル・コリータ。チャールズ・リーヴィット。テイラー・シェリダン。2021年。アトロクのアレになり鑑賞。予告編の時点でこれは観なくていいやつ認定していたのでリスナー枠でガチャ引かれた時は思わずふざけんなよ!と言いたくなりました。本当に迷って、もうこれ別に企画に付き合う必要も無いよな~やめようかなとギリギリまで迷いましたが、宇多丸氏も"皆大好き、テイラー・シェリダン"とまで言っていたので渋々観る事にしましたが...という感じで。結果から言うと、寝た。ちょっとコンディション的にアレだったのもあるがやはり寝た。どうやら、"秘密をどうにかするために動いている殺し屋から逃げる主人公とこども、その親戚"という設定なのですが、主人公たちが追われている理由がはっきり分からないまま最後までいってしまってマジでノレないし、意味が分からなかった。ので、こちらとしてもどこに気持ちを持ったまま観ていいのかが最後までよく分からなかった。敵役2人もなんかしょぼいし、殺され方もタイミングも何から何まで全てが脚本のための動きでしかなく一切ハラハラすることも無く時間が過ぎていった。セリフや編集のテンポも悪い。眠くなるって。何でこれがこうなるんだろうとか、そんな事したらバレない?とか、山火事ってこんなスピードなの?とか、所々に挟まれるクソショボCG(こんなんならやらなきゃいいのに)とか、言いたいことが山ほどある感じでした。今年ワーストくらい来たかも。良かったところを挙げるとすれば、冒頭、家が大爆発するシーンは油断していたのでびっくりしたし、結構"これなら楽しみだ!"と最初はテンション上がりましたがそこがピークだった感(まあ爆発した直後にCGのしょぼさにがっくりしましたが)。

 

・浅田家! - 3.8/5.0 (wowow/2021.9.12)

監督 脚本:中野量太。脚本:菅野友恵。2020年。話題になっていたが見逃していたこちらをwowow録画にて鑑賞。めちゃくちゃストレートな作劇かつ脚本でウェルメイドと言えば聞こえはいいですが、なんだか道徳の教科書的な作品だった。個人的な趣味で言えば全然好きではないのですが、こういう作品があっても全然嫌じゃないくらいにはしっかりと丁寧に作られていてとても好感を持った。特に、ラストのお父さんの腕時計の件は、映像芸術でしか表せない表現になっていて、映画的でとても良かった。"写真"(と結びつく(死者との)思い出)がテーマになっている事自体が(もとは活動写真だった)映画と食い合わせが良く、というか映画そのものの様な仕組みになっていてその辺りも観ていて心地よかった。全体的に良く出来ているし、クライマックスでは少し泣いてしまい(これ映画館で見てたらめちゃくちゃ泣いていたと思う)、非常に良かったのですが、上記したストレート過ぎる脚本が若干やはり気になった。あまりにも真っすぐ進んでいく脚本は、村に入ってキャラクターに話しかけてヒントを教えてもらって次の場所へ行ったらまた次のキャラクターがヒントを教えてくれてというRPGゲームの様に思え、正直映画としてはどうかなという構成だったし、主人公と関わる登場人物が全員確実に善人なのがうすら寒いなという風にしか思えなかった。こういう骨組みの部分で根本的な欠陥があるとどうしても評価しにくく、もろ手を挙げて名作!と言えないなと思う。わりと良かっただけに少し残念だった。

 

・DAU. 退行 (原題:DAU. Degeneratsiya) - 3.9/5.0 (名演小劇場/2021.9.9)

監督 脚本:イリヤ・フルジャノフスキー。イリヤ・ペルミャコフ。2020年。日本公開2021年。369分。前作「DAU.ナターシャ」に続き2作目はなんと6時間9分の修行作品、という事で震えあがりながら、途中の寝落ちは覚悟しながらも体調万全でチャレンジ。結果から言うと、前作よりもはっきりと分かり易くはっきりと良くなっていて驚く。それは、単純に前作よりも"お話"があるからだとは思いますが、ずっと引き伸ばされる日常と共にある緊張感が続く6時間は一切集中力を切らす事なく進んでいく。前半は一瞬だけウトっとしましたが。。自体が悪化していく後半からは更にグイグイと引き込まれて行き、前半よりもあっという間の3時間に感じた。プログレとかと同じで、6時間引っ張ったからのカタルシスなのかラストの2-30分の畳みかけはとても良い映画体験になった様に思う。豚のシーンはどう見ても本物にしか観えずどうやって撮っているのだろうと不思議だった。豚の殺害シーンがあまりにもショッキングだったので、その後に登場人物を皆殺しにしろという展開が出てきた時に"これ一体今からどんな画を魅せられるんだろ..."と不安になりましたが、直接的な殺人シーンを描くのではなく、ラストの主題メッセージのナレーションと共にスパイたちが物を破壊する音が一種のトリップ的なノイズミュージックと一体となり繰り返されかなりこれも強烈なシーンとなっていてシビれた。特に、劇中印象的に使われていたグランドピアノを壊すときの"ガーーン!!!"という不協和音のリフレインをうまく使い、音像、音響効果としてもいかにも"残忍な事"が起こっている感じを作り上げていた。とても良かった。アジッポがケツで演奏するピアノとハープシコードの曲が名曲かつ印象に残った。と、どこから書いていいのか分からないのでかなりぼんやりした感想になりますが、思い返すと、印象的なシーンが多かったなあと思う。10年後くらいにまた観たい。

 

・アナザーラウンド (原題:DRUK) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.9.7)

監督 脚本:トマス・ヴィンターベア。脚本:トビアス・リンホルム。2020年。日本公開2021年。予告を観た時点から気になっていましたが丁度アトロクの課題映画になったので意気揚々と鑑賞。予告編に漂うムードとは相反して、本編は終始シリアスな飲酒シーン(どんなシーンなんだ)が続く、かなりシュールな空気の作品でした。主演のマッツ・ミケルセンの力もありますが、整った画面と気を遣った被写界深度のメリハリで飽きる事なくグイグイと画面に引き込まれた。終始コメディタッチで描かれるし、自分自身が飲酒に思い出深いという事もあり、かなり楽しんで観られた。わかるわかる、と頷く場面ばかりではなかったですが、それでも人には人なりの酒との思い出があるし、そこにすがらないとやっていけない時もあるよなあ(自分は無いけど)ととてもクルものがあった。また、もちろんただそれだけの作品ではなく、終盤の展開であり本作の主題でもある"自分の人生の現在地や境遇は酒のせいではないし、何かのために飲酒するではなく祝杯をあげるために酒を飲もうよ"というメッセージにそれだけで信じられるなと感じた。まあ、少し幼稚な話の様な気もしますが(大人の観客がそれでノレないのは分かる気もする)...。デンマークでは飲酒に対するハードルがかなり低い様でティーンも飲酒出来るのでそういった境遇の子供が観るのにはとても教育的価値があるのではないのかなあと思う。それは子供大人な日本の成人観客にとっても丁度いいのでは。。宇多丸氏がラストシーンに対する評で、"飛び立つ様にも捉える事が出来るし、堕ちていく様にも捉える事が出来るラストカットが素晴らしかった"という様な内容の事を言っていたが非常に素敵な着眼点で良かった。

 

・シャン チー/テン リングスの伝説 (原題:Shang-Chi And the Legend of the 10 Rings) - 3.4/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.9.6)

監督:デスティン・ダニエル・クレットン。脚本:デヴィッド・キャラハム。2021年。基本的にはアメコミものはかなり苦手意識を持っているのですが「スーサイドスクワッド」が楽しめたのでこれもいけるっしょ!アジアンヒーローだし!とか思いながらチャレンジ。何かで観たのですが色々時代は変わり"各人種にとってのヒーロー"というものをMCUやそういったエンタメが用意するのは必然なのでは無いかと言う様な話のもとこういう映画が登場したし、「フェアウェル」で大好きになったオークワフィナもまさかの出演という事で結構期待してました。序盤のバスでのアクションシーンはアクションの内容もさる事ながらスピード感や派手さで非常に感動した。闘うシム・リウとバスを運転するオークワフィナがスクリーンで奮闘する姿には先述した"俺たちのヒーローが居た!!!!"ととても高まり本当に感動したし、ちょっと泣きそうになりました。アジアンヒーローが日本人では無いのが残念ですが、カンフーアクションなどの映画の歴史ありきでたどり着いた事を考えると、まあ納得もします。ここまでは完璧で前のめりで観ていたのですが、時間と作劇、表現を重ねる毎にノレなくなっていき、終盤のファンタジーアクション+魔法?とかよく分かんない世界観になって完全に冷めてしまいました。まあそういうもんだよと言われればそうかも知れないし、"え?!MCUってこういう感じなの?!"とも思ったし、とにかく何だかなと感じた。実写版ドラゴンボールってこんな感じですか(知らんけど)?父親との確執の物語でもあり、明確な敵ボスが居ないのものめり込めなかった原因かも知らないですが、とにかくラストの決戦もカンフーアクションで魅せて欲しかったよなと心底思いました。とさ。

 

・ドロステのはてで僕ら - 3.9/5.0 (wowow/2021.9.5)

監督:山口淳太。脚本:上田誠。2020年。何かでオススメされて印象に残っていた一作、タイミング的に観られそうだったのでwowowの録画で鑑賞。70分の小作。"2分後の未来が観られるPC"と、"その2分前の今"とを合わせ鏡の様にしてまさに"ドロステ効果"で作られた作劇をワンカット風に綴っていく(なんて説明したらいいんだ!)。というワンアイデアで1作作ってしまおうという自主映画のフットワークとアイデアが詰め込まれた作品で、かなり面白しろかった。冒頭こそ、"2分後の未来"と"それに追いつく今"を合計2回ずつ見せられるのがダルいなと感じましたが、このプロットでこそ生まれる時制のウネリが面白く感じ気にならなくなっていった。この時点でアイデアとして勝ちだと思う。所々に"ヤクザ"や"怪しい二人組"など明らかに物語のフックになるであろう登場人物が出て来るのですが、まあその分かり易すぎさはご愛敬(コメディとしてのチャームもそこにあるのがすごいと思う)という感じで良いのではないでしょうか。観ながら、きっとホラー的になっていくか、もっとサスペンスフルになっていくかして盛り上げていくのだろうなあと思っていましたが、意外なホッコリ着地で何だか拍子抜けもしたけれどこれくらいのテンションで逆に良いのかもなあとも思った。なんとも素晴らしいアイデアとやる気で作られた作品だなあと気持ちが良かった。

 

・処刑男爵 (原題:BARON BLOOD) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.3)

監督:マリオ・バーヴァ。脚本:ヴィンセント・フォートル。1972年。[ホラー秘宝まつり2021]にもラインナップされているこちら。本当は劇場で観たかったのですが、名古屋エリアの会場であるシネマスコーレは、おじさんしか来ない映画を就業時間中にやるという空気の読めない劇場なので(だから客が入らないんだよ!)(リーマンおじさんではなく無職おじいさんを狙っているのかも知れないけど())、どうしても見に行く事が出来ず、U-NEXT(神)で観た。序盤こそ結構ダルいなと思いながら観ていましたが、街中での追いかけっこをする中盤あたりからテンポがあがり最終的には結構楽しめた。ズームしたり戻したりを繰り返す手法も面白かったし、男爵の正体を探るミステリー的な展開をしていくのは意外で、晩年ならではの円熟味か非常に飽きさせない作劇や描写はさすがの出来栄えだった。ただのホラーB級作家ではない!(当たり前だろ!)という事を思う存分に感じる事が出来た。そして、最後はまさかのゾンビオチで大団円。面白かったです。