観た映画 2021年4月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年4月に観た映画

30本、短編1本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・レック (原題:[rec]) - 3.7/5.0 (DVD/2021.4.30)

監督 脚本:ジャウマ・バラゲロ。2008年。三宅隆太監督のレコメンドで(多分)鑑賞。POVモノのスペイン映画。77分のショート丈。ホラー作品というよりはゾンビ映画という感じだった。序盤の"明るい画面&明るい主人公アンヘラ"からの変貌っぷりを楽しむという事に気付くと趣としては良かった。全然怖くないしビックリ演出で驚かせてくるわけでもなく、あくまで淡々とその場で起きているパニック現象を捉えていくスタイルはわりと好感が持てた。ただ非常に狭いシチュエーションでの設定ということもあり、囚われているアパートの住人たち(これも理由とはイマイチ謎だった)が一人ずつ噛まれては感染して→噛まれては感染してのワンパターンな流れしか作劇がなく、画面自体の緊張感はあるのだがお話としての緊張感にイマイチ欠いており77分という尺にも関わらず正直、中盤はダレた。クライマックスあたりのいよいよ生き残っている人数が減ってきて元凶と思われる部屋へと入ってしまう前後あたりの決定的なシーンからは、低予算を逆に生かした撮影やここまで我慢を続けてきてようやく放たれる暗所撮影シークエンスなどを使いこの作品ならではの良さが際立ってきていた。オチもシンプルだが画面も含め面白かった。

 

・もう終わりにしよう。 (原題:I'm Thinking of Ending Things) - 3.9/5.0 (Netflix/2021.4.29)

監督:ベニー・サフディ。ジョシュア・サフディ。脚本:ロナルド・ブロンスタイン。アトロクにて村山章さんのおすすめで鑑賞。鑑賞前にパッと目に入ったネットの評判を見ると"理解不能。意味不明。"などが並んでおり、それなにの覚悟で臨んだが普通に結構わかって楽しめた。し、個人的には夢と現実の境界線が曖昧になって一種トリップ描写の様になっていく表現は好きなので非常に集中して楽しめたと思う。話自体もクライマックスの"高校の用務員のおじさんが実は主人公の本当の姿だった"という最大のミスリードの結果があるのですが、それの答え合わせがとても曖昧だったために難解さが増している様な評価に繋がっている様に感じる。そんなことは普通に見ていたら分かるのだがもう少しはっきりと描いても良かったのではないかなと思った。そして、母親役はトニ・コレットに限るし、彼女が出てくるだけでむちゃくちゃ嫌な雰囲気になるのはすごいなあと思う。お話自体は決して面白くは無いが、画面構成や妄想夢表現のバリエーションの多さが鋭く、最後まで飽きずに見ることができた。アイスクリーム屋のシーンとかとても嫌な感じで良かった。車でのムダ話シーンはさすがに一回で良いかな。

 

・アンカット ダイヤモンド (原題:Uncut Gems) - 3.7/5.0 (Netflix/2021.4.29)

監督:ベニー・サフディ。ジョシュア・サフディ。脚本:ロナルド・ブロンスタイン。ずっとチェックしていたがようやく見ることができた。渋い雰囲気なので一見するととっつきにくい様に見えるが結構しっかりと練られた脚本でそんなに色々考えこまずに見てもしっかりと理解できる様になっている様に感じる。腑に落ちない設定や展開も多かった様に思えるのでそこまでテンション上がって見られたわけではないが、悪くもなかった。冒頭の内視鏡シーンは結構面白かった様に思う。Netflix作品全般に言えることだが、作品が長すぎませんか?これとかも全然110分とかにまとまったでしょ?と突っ込みを入れたくもなる。

 

・何者 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.29)

監督 脚本:三浦大輔。原作:朝井リョウ。2016年。原作小説を読んで面白いなと思っていたが映画化の話を見た時にはメンツだけで絶対に行かないことに決めていたのに、今となっては普通に見られるので不思議だ。まあ蓋を開けてみても邦画界でもわりと一流の俳優が揃っていてさすがに"朝井リョウ"のネームバリューを感じた。原作を読んだ時の様な"裏切られた〜うわ〜こええ〜"みたいな気持ちはあまり湧き出てこず、感情移入の導入が甘かった様に感じる。クライマックス付近の独白の様なシーンが、実は舞台の上で書き割り前でやっている所の画で使っていくあたりは好きだった。が、とにかく佐藤健演じる主人公への感情移入が非常にしづらい構造になっている(というか受け身キャラすぎる)ので、こればっかりは何とも言えないが結局あんまりだなあという印象になってしまう。今作の有村架純を見て相変わらず良い女優だなあと感じた。

 

・アイリッシュマン (原題:The Irishman)- 3.8/5.0 (Netflix/2021.4.28)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:ウティーヴン・ザイリアン。2019年。基本、Netflixへは加入をしていないので(今は期間限定)なかなか見る機会がないですがようやく鑑賞。スコセッシ作品を見るのは久しぶりな気がします。楽しみは取っておきたい派なのでこうしてゆっくり見ていくのです。アカデミー賞ノミネートなどで話題の配信作品、内容としては...全米トラック運転組合のジミー・ホッファの失踪、とそれにまつわる2人の男の出来事を3つの時系列で追っていくマフィア映画。という感じでしょうか。ただこれ、209分(3時間30分)あり、ひたすらに長くまずはそれが一つのハードルになっている。実際に初日では見切ることができず、2日かかってようやく完走。も良いもののまず口を出たのが"長い..."だったのでこれはやはりいかがなものか。オープニングから序盤にかけてはスコセッシ味がバリバリに効いた数々の描写で楽しく見られたのですが(特に車の後部座席から首を絞めて殺すシーンのBGMのくだりとかも最高だった)、時間の経過からかどうしてもやはりテンポの鈍重さが気になり始め(まあもちろんそれでもとても3時間半ある作品とは思えない体感なので十分にすごいのですが)、興味の持続こそはあるものの余計なことを考える隙間がある様な気がして個人的にはダメでした。今の時代、もちろんこの尺ではなかなか映画館での上映は難しいので配信でってことにもなっているだろうし、配信だからこその長さ、表現の自由度、時間の掛け方の豊かさにも繋がっていき、結果として芸術としては余裕のあるというか、常にピークをついている状態で血管浮き立たせながら進むこれまでのスコセッシ映画とは少し距離のある雰囲気になっていた。時代性は大いに感じることができる。面白かったんですけどね。映画館で見たいし単純にもう少し短くしてほしい。

 

・CUBE - 3.6/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.4.27)

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ。1998年。謎の四面体の中に閉じ込められた6人の脱出劇を描いた。とは言え、何で閉じ込められているのかもわからないし、描写も中途半端だし、90分という尺なのに途中の中だるみがすごいしで結構アレな作品だった。冒頭の1人目が見事に殺されてタイトル登場するアバンはかなり良く、期待値が一気に上がっただけにそこから90分かけての下り坂っぷりが残念だった。ダウンロードで観たので何故か吹替になってしまったので観たのも良くなかったかも知れないが、とにかく画に緊張感が無いし、数学で謎が解けていく件も分かりにくい(というか見ていて映画的なカタルシスとか瞬間的な興奮が無い)しで、うーんという感じだった。結局、クライマックスで一気にいろんな物語が進むのですが、そこまでがどうしてもダルい。もうちょっと順番にキャラクターが無残に死んでいく様な作劇が無いとこういうジャンル映画としてはバランスが保てないのではないかと思う。一番ラストのヒールが動くキューブに見事に真っ二つにされる時の描写はオープニングに匹敵する切迫感と緊張感があり良かった(真っ二つになる事は2秒で予想できるんだけど)。とにかく、薄味すぎた。今年公開で菅田将暉が主演のオフィシャルなリメイクがあるらしいが予告を観る限りでは期待できないなと思いつつも観るだろうなあと思う。

 

・ホムンクルス - 2.5/5.0 (Netflix/2021.4.26)

監督:清水崇。2021年。映画館でかかっていた期間がたしか1週間しかなく、見に行く事が出来なかった作品。原作漫画も高校生当時は読んでいたのはおぼろげに覚えている。上映館が(いつも株主優待券で観ている)ミッドランドしかなく、尚且つ優待券が使えない興行、レイトショーも無い、となると優先順位的にはグーッっと下がるので見れていなかった作品。早々にNetflixで配信されており鑑賞。のですが、まあハッキリ言って映画館で金払って観なくて良かったなあと心底思う内容だった。「あの頃」が今年のワーストかなとか思っていましたがこれもものすごいいい線行きそう。まあとにかく描写がつまらない、脚本がうすら寒い、作劇も曖昧、長い、役者も出る作品は選んだ方が良いよねと本当に声を大にしていいたい代物だった。全てが適当でお仕事映画かなとしか思えない。原作の時も印象に残っていた砂のホムンクルスが良く見たら砂ではなく大量の文字だったというシーンのCGのすごさは良かったがそれ以外はもう、気持ち悪りい話だなとしか思えなかった。今年ワースト出たかも。(ロボットの小指の話とかも思い出したら腹立ってきたな)

 

・愛してるって言っておくね (原題:If Anything Happens I Love You) - 未採点 (Netflix/2021.4.26)

監督 脚本:ウィル・マコーマック。マイケル・ゴヴィエ。2020年。12分の短編アニメーション作品。第93回アカデミー賞短編アニメ部門受賞という事で鑑賞。セリフも色も無くソリッドな1つの設定だけで突き進んでいく短編アニメ。実際にあった事件を下敷きに描いたそうだが、別にこれってこんなにインスタントにしてまで感動したいの?と聞きたくなった。泣いてストレス解消するOLの思考かよと。心理描写とかそういうものでヒーリング的な雰囲気というか順番に全てを許していくものというかそういうものなんだろうけども、整体とかマッサージに行ってBGMで流れるオルゴールになったジブリみたいなものを感じてしまい評価する気にはなれなかった。

 

・最後まで行く (原題:끝까지 간다) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.25)

監督 脚本: キム・ソンフン。2014年。イ・ソンギュン主演のクライムサスペンス。111分間ひたすらイ・ソンギュン映画。ワンシチュエーションと言えばそうかも知れないがこの1つのネタだけで約2時間しっかりと面白いものが作れるのが韓国ノワールとかサスペンスだなと思う。今作も基本的には"轢き逃げをしてしまった殺人家の警官が何とか隠蔽を図ろうともがくが..."というそれだけのお話。この設定自体も冒頭5分くらい(確か)で早々に風呂敷を広げてあとはそれに向かっていろんなで出来事を積み重ねていくだけというシンプルな作劇。そこが明朗でわかり易い。隠蔽のために悪戦苦闘するイ・ソンギュンも素晴らしかったし、何だかやけに強そうな悪役も良かったし、1つを解決すると次の1つが起こりとエンタメ的にもバッチリ。敵の仲間を追いかけるシーンの遠い遠い上空からの長回しや、冒頭の事故シーン、終盤の車爆破シーンなどしっかりと丁寧に練り上げられた構図も決まってかなり安心して見られる作品だった。単純だけどスカッと面白い韓国映画の良い部分がギュっと詰まった1作だったと思う。オチの個人金庫シーンはどうかなとも少し思うが、大満足な出来だった。

 

・八仙飯店之人肉饅頭 (原題:八仙飯店之人肉焼) - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.4.24)

監督:ハーマン・ヤオ。脚本:ラオ・カムファイ。1993年。シネマスコーレにて行われていた【アンソニー・ウォン×ハーマン・ヤオ 極悪香港映画祭】にて鑑賞。特に何の前知識も入れず、タイトルからして食人中華料理スプラッターコメディ的な悪趣味映画を期待して見に行ったのですが、スプラッターやゴアはそうとしても観客的な目線は警察チームだし、意外にもクライムスリラー的な質感で驚いた。人肉饅頭描写は序盤のとあるシーンでしか登場せず、あとはひたすらに警官が犯人のアンソニー・ウォンを追い詰めて自白に持って行くかを描いた作品だった。が、が、ですよ。ところが、それは別にまあ良かったのですが、回想シーンとか現行シーンとか関係なくこの映画に出てくる倫理感がひたっすらにひどい。もう結構見てられないくらいに露悪的で、悪趣味で。ちょっと凄すぎた。90年代の"何でもやってしまえ感"、"むしろこれくらい振り切ってる方が面白いっしょ感(それは裏返せばジョークが通じていた時代とも言えるかも知れませんが。)"、"表現は自由だ感"を妙に感じたし、あの時代の良くも悪くもダメな空気みたいなものをビンビンに感じながら観ており終わってから調べると案の定、93年の作品でビンゴ。まあ嫌いじゃないし、これくらいやってくれる方がやっぱり芸術としては面白みがあるのですが、さすがに観ている側の倫理観とか道徳観をもう画面から生えた腕で直接グワングワンと揺さぶってくるかの様なシーンの連続で、良かったんだけど浦東に最低だったなあという感じ。女・子供も平気で殺すのもそうだし、アンソニー・ウォンが何とか自殺をしようと様々な試みを繰り返すあたりも相当にキツかった。どういう意図で、どういう神経でこんなものを作ったんだと監督に小一時間問いかけたい。今まで見た映画の中で本当にまっとうに1番ひどい、嫌な映画だったと言い切れるなと思った。評価してますけどね。すごいけどさ。見れて良かったけどさ。ね。

 

・ファブリック (原題:In Fabric) - 3.2/5.0 (DVD/2021.4.24)

監督 脚本:ピーター・ストリックランド。2018年。日本公開2021年。"A24も認めたゴシックホラー"的な謳い文句を目にして鑑賞。うーん、何とも言えない微妙な感じでしたが、今作の評価としては正直、あんまりかなと言わざるを得ないと思う。まず"呪われた赤いドレスを巡って様々な受難が降りかかる"という設定は良いのですが、本当にそれだけ過ぎて、中身と画面が全く伴わず何の面白みもない作品に仕上がったなという感想。一見面白そうだがどのエピソードも弱く、そういった場面をケレン味の強い画面作りで何とか騙し騙しクリアしていってはいると思う。監督のセンスやアイデアは非常に良いと感じるのだが、これでは何ともならないというかそんな印象だった。とにかくひたすらにつまらない。山なしオチなし意味なし、とはこのことか。序盤の赤いドレスを入れた洗濯機が暴走しだして止められなシーンは思わず笑ってしまったが今思えばそこがこの作品のピークだったなと思う。そして、何よりも118分という尺はこの手のジャンル映画(且つこの程度の内容)にしては致命的に冗長だった様に感じる。「サスペリア」の様な作品は画面の美しさが圧倒的に違うし、この作劇というかプロット1本勝負的な構築では通用しないでしょう。

 

・戦場のメリークリスマス 4K修復版 - 4.2/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.24)

監督:大島渚。脚本:大島渚。ポール・メイヤーズバーグ。1983年。「愛のコリーダ」とともに4Kに美しく修復されたバージョンとして最後の大規模ロードショー公開。公開2日目にミリオン座にて鑑賞。ずっと見たかった作品ではありましたがなかなか順番的には後回しにされていた一昨。それが今回劇場で見られたのがまずは真っ先に素敵な出来事だった様に思う。大島渚監督作品は初めて見たがこの「戦場〜」における構図の作り方が、(シンメトリーだったり、小津監督ばりのカメラを床に置いた長回しや)印象的なシーンが多かったと思う。お話的には、今であれ過去であれ、戦争中であろうとなかろうと、どんな人のどんな人生にも必ずそこに居て呪いの様に離れることが出来ないのが圧倒的な"他者"という存在との事柄を美しくも冷徹に描いた作品を戦闘シーンの無いこの戦争映画に託している。原とローレンス、ヨノイとデビットボウイ(役名失念)だったりなどの、どういう状況であれ他者からの施しを受けたりあげたりする事からは逃れられないし、ある意味がそこが美しかったりもするし、ということを素晴らしく美しいカメラワークと作劇で見せてくれる。俳優陣の演技は冒頭はかなりのノイズになったが、中盤以降は気にならなくなった。ラストシーンであるデビッドボウイの顔に蝿がたかるシーンは忘れられない。こんなことでは魅力を書き切ることは出来ないが再び見て良さをもっと味わっていきたい、そんな作品だった。

 

・mid90s ミッドナインティーズ (原題:mid90s) - 4.1/5.0 (DVD/2021.4.23)

監督 脚本:ジョナ・ヒル。2020年。名優ジョナ・ヒル初の監督作品。スケボーや90sヒップホップカルチャーなどとの親和性が高い作品になっていることは真っ先の知識として知っていたので正直そこまで食指が動く感じではなかったのですが、タイミングがあったため新作DVDレンタルで鑑賞。まず言えるのは"すんませんでした!!"と。ぶっちゃけナーメーテーター案件でした。優れているかと問われれば決してそうでは無いのですが、デビュー作のマジックか、やはりジョナヒル自身が描きたいんだろうなあということが明確に且つしっかりと練られた画面と作劇、映像編集にてビルドアップされており、非常に高感度の高い良い作品だった。16mmフィルムでの撮影を選んでいることや、そのざらつきが見せるイノセント感ティーンのあぶなっかしい青春ときちんとリンクして、意味をもってそこに置かれていることだけでもう勝っているよなあという印象。冒頭の早回しシーンや、ぶつっと途切れる編集など、おそらくキャリアを積めば積むほどやりにくくなるであろう表現は一見の価値があると思う。最後まで緊張感を保ちながら優しい物語を紡いだ監督に拍手。

 

・ハーフ オブ イット: 面白いのはこれから (原題:The Half of It) - 3.6/5.0 (Netflix/2021.4.22)

監督 脚本:アリス・ウー。2020年。Netflixは未加入なので話題になっていても観るチャンスがあまりないのですが何とか観られた。結論から言うと、期待したほどでもなく案外普通。というところか。主人公の中国系のエリーとアメフト男子のポール、美人のアスターの3人の微妙な関係性を切り取ったLGBTQをメインテーマとしたドラマ作品。微妙な関係性を~という所まではよくありすぎるプロットで、それにLGBTQが絡んでくるのが今っぽいのですがそれでもまあ普通。特に刺さるシーン、台詞、展開、作劇もなく、いやでもなく良くもなくという感じでぬる~く観たという感じでした。"過剰(過度)にしない"ということがLGBTQの様な事柄を描くには上手い部分なのかも知れませんが何だかそれだけで終わってしまった。温泉でエリーとアスターの距離が縮まっていくシーンは良い。良い話でしたけどね。

 

・サイン (原題:Signs) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.4.22)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2002年。「アフターアース」評を聴き、シャマラン監督作品に興味が沸き、おすすめ通りまずはこちらの作品から鑑賞。一見すると相当地味な作品でしたが、わりと好きだった。映画的なというかエンタメ的な"画面の分かり易さ"のパワーはイマイチかなという感じですが、そういう大きな部分ではなく、メル・ギブソン演じる主人公家族と主人公自身のミニマムな話を本質として描いている作品且つ丁寧に作られている事がしっかりと分かる画面作りにとても好感を持った。伏線と呼ぶ様なシーンは若干ベタすぎて"それは後出しジャンケン的なものなのでは..."と感じる部分もなくは無いが、監督がとても真面目なんだろうなあというのは伝わってきて嫌な感じはしなかった。ちょっと敷居を下げ過ぎている気はするが。ホアキン・フェニックスとメル・ギブソンの演技でもって引っ張っていっているのでどうであろうとある程度は画面の緊張感は担保されておりこういった作劇も展開出来るのだろうなあと思う。丁寧親切設計なのに実は結構渋いというなんとも不思議な作品だった。とりあえず次は「シックスセンス」を見てみようと思う。

 

・嘆きのピエタ (原題:피에타) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.4.20)

監督 脚本:キム・ギドク。2013年。初チャレンジのキム・ギドク作品。クセ強を期待して鑑賞したが見事にクセ強映画監督だった。まずツッコミたいのは画の安さ。どういう訳なのかデジカメで撮ったとしか思えない安い画と、明らかにデジタルズームする画面、ホームビデオでも見せられてるのか?と思わずにはいられなかった。のだが次第にその味わいがいいのかなとも思えてくるから不思議。お話的には、どうして主人公が女の事を母親と思ったのかという部分が腑に落ちなかった。最後まで見てもそれが嘘だったのか本当だったのかよく分からない(がそれはどちらでもいいのだろう)。ネットにある感想を読むと、とにかく痛そう、強烈とか描写に対しての感想が並んでいるがそこが鮮烈なのは当然と言えば当然で別にそれはどちらでもよくて、本作はその話の結論(から終盤あたり)に全てがあるのではないかと感じる。特に衝撃的なのはラストシーンだろう。ラストに夜明けの静寂と共に主人公を引きづっていく鮮血轍シーン(しかも上空からのショットがニクい)の美しさと共に観る者を襲う、ヘヴィさと余韻。救いのない終わりといえばそれまでだが、これまでの人生が救いようの無い主人公にとってはこれが救いだったのかとも考えられる。他の作品も見てみようと思う。

 

・ザ スイッチ (原題:Freaky) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.20)

監督 脚本:クリストファー・ランドン。2020年。日本公開2021年。「ハッピー・デス・デイ」(未観です、観ます)のクリストファー・ランドン監督新作。女子高生と無差別連続殺人犯が入れ替わってしまう君の名は映画。ブラムハウス製作。もうそのプロットだけでジャンル映画として勝っているようなものなの後は楽しむだけという感じで安心して観られた。結構コメディ的な見せ方も多く、アバンタイトルや序盤だけなぜか出てきた[11日水曜][12日木曜][13日金曜]のバカデカテロップもなかなかソリッドで笑えた。殺人犯なのでやはり体の差、力の差での戸惑いを描く事で面白みを魅せていく事で生まれる様々な描写が面白かった。何と言ってもヴィンス・ヴォーンのオカマ走りが最高。何度も映るのですが何度見ても何だか面白くてつい笑ってしまった。ラストの元に戻った殺人犯を主人公家族3人でついに逆襲して殺すシーンは必要があったのか分からずそれだけが微妙っちゃ微妙だった。全体的にはまあまあな感じ。

 

・街の上で - 4.0/5.0 (センチュリーシネマ/2021.4.19)

監督 脚本:今泉力哉。脚本:大橋裕之。2021年。今泉監督最新作を鑑賞。主演は若葉竜也。下北沢で起こる20代男女の日常を俯瞰の固定カメラ長回しで捉えた群像劇。脚本はこれまでも共同で手がける事も多かったが、今回はギャグ漫画家・大橋裕之とのタッグ。これが最大級に功を奏している。基本的に"今これは一体何を見せられているんだろう"と思ってしまう様な日常の一コマを丹念に丹念に長い尺で抜き出していく方法論。監督なのか大橋氏なのかどちらの作劇なのかはわからないが、一見長く無駄の様に感じるエピソードでもその先に待っている全ての出来事とリンクしており、後から"お〜"と繋がる気持ちよさが一定数以上に用意されているのが今作の旨味でもある。また、セリフ一つを取っても自然体で口語でしか出てこない様な表現のみに整理され、なおかつ俯瞰の固定カメラでロングショットなので、あたかも自分もその場にいてその瞬間を登場人物たちと共に目撃してきたかの様な同時体験性を持つ錯覚に陥る。しつこいくらいに丁寧にその辺りをすくい上げているのが今作の勝因の一つでもある。し、123分という若干長尺に感じる長さになってしまっている敗因でもある。しかし、こうしないと成立しない作品だとも思うのでこれはこれで良かったのだと思う。またこれは個人的な見解というか好みの範疇だが、今泉作品通じて言える事だが、とことん監督の女の趣味と自分の女の趣味が合わないなと感じる。女優が全員可愛く無い。のだが...「愛がなんだ」の時も書いたが顔は(タイプじゃなくて)かわいくないのに、むちゃくちゃ可愛いという、そういう風に撮れている時点で私は今泉監督に完敗しているのだとも思う。今作でいうと主人公・青の彼女である穂志もえか演じる雪が終始可愛く無いし、こいつは絶対にクズだなと思いながら見ていたのだが、物語が積み上がっていくクライマックス、青の元へ戻るという決断を自らし、物語が結実を迎えるあの自室でのシーン。これまで無いくらいに雪の顔が可愛く映っており、"そういう決断をした女の顔(きちんと自分の思いに素直になった=それが女の子として一番可愛い)"と物語の流れの全てが繋がった瞬間にそういったショットをブチ込んでくる事が本作の全てでは無いのかと観ていて鳥肌が止まらなかった。見事過ぎた。当然、ここで映画自体もスパッと終わるのかと思いきや、そのあとに15分ほど?のいくつかのエピソードがまだ連なっており、そこが完全に蛇足に感じてしまい、非常に惜しい気持ちにもなった。あそこで終わってくれれば相当な表現として最高の評価をしたかった。が、まあその後の幾つかのエピソードは(いらないと思うけど)それはそれでって感じでいいんじゃないでしょうか。今泉作品、なんだかんだすげえよなあと思う。

 

・21ブリッジ (原題:21 Bridges) - 3.6/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.4.19)

監督:ブライアン・カーク。脚本:アダム・マービス。2019年。日本公開2021年。予告を観てもメインビジュアルを観ても全くもってそそられず"アトロクのガチャでこれだけは当たって欲しくないな~"と思っていたら見事に課題作品に当たり、渋々鑑賞。結果は、まあ、ね。という感じで。"それ見た事か!!!!!"と言いたい。いや、別に悪いわけでは無かったのですが、特に面白い!と言える様なものでもなく、どこかで見たことあるような話が観たことあるような映像で99分続く感じだった。時間の短さと冒頭のカーアクションからのドンパチ、ラストのおっかけっこは良かったかなと思う。あと、メインビジュアルのデザイン(日本版)が絶望的。何でこんな事をしたと問い詰めたい(テネット風というかね)。マンハッタンを封鎖したり、すごくスケールの大きい話に見せかけて実は結構ちっさな話だった。監督のブライアン・カークはこれが長編2作目らしくこれを作って一体どうしたかったんだろうと疑問に思う。チャドウィック・ボーズマン遺作。

 

・新しき世界 (原題:신세계) - 3.9/5.0 (DVD/2021.4.18)

監督 脚本:パク・フンジョン。2013年。韓国ノワールもの名作の一つという事で勇み眼で鑑賞。潜入刑事がヤクザの兄弟分と本当に心を通わせてしまい、葛藤しながらもヤクザの会長へと結局なってしまう話。の心情部分をグラングランと過激に残酷描写と共に血生臭く描いた。非常に面白かった。とにかく容赦ない殺し描写や、殺してコンクリ詰めにして海に沈めるにしてもその前にセメントを飲ますっていうのはむちゃくちゃだなと思いながら観ていた(後で宇多丸の評論聞いたら同じ事を言っていた)。あとは、クライマックスのエレベーター内での刃物での挌闘もかなり見応えあって良かった。基本的にドンパチよりも刃物でやっていく感じも内容とあっており良かった。終盤のチョンチョンにスパイの身分がバレるのではないかの件はとても見応えがあった。画面的には本当に2013年なのかな?と思う様な若干の古臭さを感じましたが、まあ。全体的に非常にまとまっていて楽しめる快作だったのでは。チェ・ミンシクが出て来ると嬉しいですね。主演のイ・ジョンジェは東野幸治にしか見えなかった。

 

・BLUE/ブルー - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.4.18)

監督 脚本:吉田恵輔。2021年。正直、ボクシング映画ってかなり抵抗があってあまりノレる気がしないというか、そういう"男の闘い・友情"みたいなものに興奮するようなタイプでは無いし、興味が無いので割とこれまで名作と呼ばれるものもボクシング映画はハッキリと避けてきてワケですが、今回「ヒメアノール」「愛しのアイリーン」「犬猿」などの吉田監督最新作という事で劇場鑑賞。ボクシング映画を初めて見たのでどこをどう評価していいのかはうまく分からないのですが、キャラクター描写と練習描写、(ボクシングをする)理由描写などがきっちりと描かれ、且つ丁寧に順序だてて作られた作劇によってかなりスムーズに感情移入する事が出来た。完全に監督の腕だと思う。ずっと何だかいやぁな緊張感に包まれたままドラマもボクシング自体も進行していくので非常に求心力高い画面になっていた様に思う。主人公の最後の試合も思わず"頑張れ..!"と念じずにはいられず、何だかんだ落涙一歩手前までのめり込みながら観ていた。中盤すぎくらいまでは非常に良く"これは話の運び方次第では泣くかもなー"と思いながら観ていましたが、クライマックス、柄本時生演じる楢崎の試合で急に"漫画的な"と言われても仕方のない様なフラッシュバック演出を始めそれを持って力を得て試合を運んでいく描写で、自分の中でピタっと何かが止まってしまい、冷めてしまった。その直前まで徹底的にリアリスティックに作劇していたのに急にそれらを台無しにする様な表現が出て来て、困惑した。からのクライマックス、東出昌大演じる瓜田の行方、主人公の末路なども含め着地がぼんやりした内容で尻すぼみ的に着地。オチがはっきり無い、とか、試合に負けるばっかりとか、は本当にどっちでも良くてただただあの漫画的心理描写で萎えた心を救う様なラストでは無かった事が全体のこの点数になってしまった。

 

・ロボコップ - 4.0/5.0 (WOWOW/2021.4.17)

監督:ポール・ヴァーホーヴェン。脚本:エドワード・ニューマイヤー。1987年。ロボコップシリーズ一挙放送していたので録画して鑑賞。1はポール・ヴァーホーヴェン監督作品だったのでラッキーと思いながら鑑賞。相変わらずの"節"全開だった。ロボコップって話は全く知らなかったのですが主人公が早々に殺されて(しかもすげー殺され方)死体をロボットにしてしまったんだと知り、驚愕。けっこうめちゃくちゃな話で、荒唐無稽っぷりがまたこの作品のカルトエンタメ(無いジャンル)っぷりに拍車をかけていてとてもいいなと思った。お話し的にはほぼ無く、その殺された恨みを晴らすべくロボコップが悪人を一網打尽にしていく(悪ものより悪かった系)作品。最近でいえば「JUNKHEAD」の様なストップモーションシーンを思い出す様な大型ロボットと実写が同居する様な画面もこうしてみるとその混在っぷりが結構面白く、見えた。クライマックスはものすごい殺し方の連発で爽快感すらあった。ラストシーンまで画的な刺激満載でかなり楽しむことができた。最高。

 

・EXIT - 4.0/5.0 (WOWOW/2020.4.16)

監督 脚本:イ・サングン。2019年。エンタメ映画としてまずはしっかり面白かった。まったく前情報入れずに見たので冒頭数分で"パニック映画だ!"と気付いた時にはテンション上がった。簡単にいえば、"逆タワーリングインフェルノで、SASUKEで、魔女の宅急便"という感じ。SASUKE部分もまあリアリティとか無いのですが、それはちゃんと冒頭でクライマー出身の二人だという事をしっかりと描いたりで別に気にならなかったかなと。パニック映画的なお約束も散りばめられていて非常に楽しく見られた。アクションとしては全編を通して有り得ない感じではあるのですが、毎シーンハラハラさせられて普通に楽しかった。主人公二人を男女じゃなくて男同士のバディものにしてもアツかったのにと途中までは思いましたがラストの別れ際のシーンも色恋的にベタベタせずに結構カラッとしているので男女でも全然成立しているなあと思った。ただ、劇判は非常にいただけなく、いわゆるそういう場面でこれでもかとウェットな音楽がかなり鬱陶しかったなあと。スローになったりも。極め付けはエンディング曲?的なもののよくわからない子供向けのバンド曲でげんなり。今年の始めに見た「新幹線半島〜」でもそうだったので韓国エンタメ映画はそうなのかも知れないが、日本で普段文句言いまくっているものと近いものがこうして出てくるとやっぱり結構テンション下がる。でもジャンル映画としてはとても楽しめた。

 

・ウルフウォーカー (原題:Wolfwalkers) - 3.5/5.0 (AppleTV+/2021.4.16)

監督:トム・ムーア。ロス・スチュワート。脚本:ウィリアム・コリンズ。2020年。劇場で見逃しているのでAppleTVのみという事でなかなか食指が動かなかったのですが、ようやく鑑賞。中世アイルランドの町キルケニーにて、イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンと“ウルフウォーカー”のメーヴが心通わせながら自らの解放、父の解放などを描いたアニメーション。シスターフッド的に二人の成長を描くだけでも見どころはあるが、もっと心に寄り添う様な内容の作品だった。が、お話的には結構退屈に感じてしまい終始ノレず。なんならウトウトスヤスヤしてしまった。絵コンテの貼り付けの様なものだったり、セル画チックだったり、ディズニーとジブリと日本の漫画文化をバキバキにハイブリッドさせて且つ2020年っぽくもあり、画的にはすごくチャレンジングに感じた。音楽も秀逸だった。のだが結局、自分はアニメーションが苦手なんだなと改めて思わされた作品にも感じた。いや、アニメがというよりもアニメでよく表現される、動物や森、そういったものとの共存や理解、などに興味がないのかも知れない。110分ほどが拷問に感じた。人間が居ない画面がどうしても苦手なのかもしれない。苦手だ。

 

・ザ ハント (原題:The Hunt) - 3.6/5.0 (DVD/2021.4.15)

監督:クレイグ・ゾベル。脚本:デイモン・リンデロフ。2020年。わりと評判が良かったので楽しみにして鑑賞。新作DVDレンタル。結論から言うと、どうにも中途半端な作品だったなーという印象。ブラムハウス印の社会風刺っぷりももちろん見られましたが、登場人物の動機がどれも浅く、キーワードである"決めつけ"や"誤解"も何だか咀嚼不足な感じ。それに合わさるスプラッターなので、どうしてもそっちも中途半端に映ってしまった。ジャンル映画として好みなものではあるのでもう少し違った方向で突き抜けて欲しかった。序盤の豪快なスプラッターシーンでかなりコメディタッチな所も見られたので"おや?"と思いましたがそのまま行ってしまった感じ。まあ面白かったんですけどね。何だかめちゃくちゃ中途半端だった。

 

・クロユリ団地 - 2.3/5.0 (U-NEXT/2021.4.15)

監督:中田秀夫。脚本:加藤淳也。三宅隆太。2013年。YouTubeで宇多丸の評論を聴き、脚本が三宅隆太監督だという事で鑑賞。主演は前田敦子と成宮寛貴。とある団地に引っ越した事をきっかけに起こる、主人公の過去のトラウマと団地に住み着く霊との心理的な戦いを描いた。過去に囚われる主人公を描く作品は嫌いじゃないので、それをジャパニーズホラー味にしたらどういう調理がされるのだろうという部分でわりと興味深く見た。中盤の家族が悲惨な事件に巻き込まれ今がある(主人公のトラウマが明らかになる)という事が分かるシーンではアイデア自体に新しさは感じなかったがきちんとノル事が出来ていた。が...終盤、霊媒師が色々と活躍をしだして以降がどうしてもコントにしか見えず、急激に失速をしていってしまった印象。それまでが何とかバランスを取ってギリギリ評価できるラインで来ていたのでその崩壊が起こってしまうとあとは低得点まっしぐらという感じで一気に冷めてしまった。「来る」や「哭声」などもそうですが、どうしても霊媒シーンが出て来るともうその時点でダメになってしまう。まあお決まりなのでしょうが残念。ラスト付近、霊に連れ去られる成宮寛貴が引きずり込まれた床を一心不乱にかきむしるシーンは素晴らしかったと思うが、そのフックを使ってラストの展開がゾッとする様な話になっていれば良かったのになと感じた。なに鼻歌で終わってんだよ!!と。

 

・アンモナイトの目覚め (原題:Ammonite) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/20214.11)

監督 脚本:フランシス・リー。予告見た時点では"まあパスでいいかな"と思っていた1本だったが何かで割と高評価なのを目にして日曜日かつ招待券を持っていたのでミリオン座にて鑑賞。客は7人。予想通り「燃ゆる女の肖像」とかなり近い設定、かなり近い風景、かなり近いお話、でこれってどういう気持ちで作ってるの?と結構素直に疑問に思ってしまった。どちらの作品にも共通して言える事だが、劇中の恋仲になる2人の心が通い合う瞬間の描写の堀り下げが甘いと単純に思う。"いつそんなに好きになったの?"と。ただこの作品に関しては最後まで見ると"性欲求が溜まっている二人(旦那に性交渉を拒まれる、未婚の晩年女)が好きとかそんなんじゃなくてただヤリたかっただけだからこそラストもくっつかない持って行き方したのでは?"とか思えてくる。なのでそういう面で見れば辻褄は合っているのかも知れない。が、それは穿った見方なのでたぶん普通に掘り下げ不足。また、セックスシーンは何度か出てくるが肝心のシアーシャ・ローナンのヌードが圧倒的に少ない事に文句を言いたい。そういう場面を作るなら乳を放り出せと。とかそんな事思っていたらクライマックスでまさかの顔面騎乗映画に。乳首は出さないけどそれはいいんだ。「燃ゆる〜」という名作がある以上、どうにもぼんやりとした作品に感じてしまった。ぼんやりといえば、一貫して被写界深度が浅い画面作りはチャレンジングで良かった。

 

・イコライザー (原題:The Equalizer) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.10)

監督:アントワーン・フークァ。脚本:リチャード・ウェンク。2014年。昔の宇多丸映画評を聞いていて気になったこちらを鑑賞。まさしく「必殺仕事人」よろしく主人公であるデンゼル・ワシントンが次々に悪党を悪党よりも残忍に殺していく。まず言いたいのは、クロエ・グレース・モレッツの無駄使いはやめろ!と。こんなにも可愛く無く撮影できる事があるのかよと言いたいし、シーン少なすぎるだろと。ジャンルものと言ってしまえばそれまでだがあまりにもどうだって良すぎる話でどうにもこうにも真剣に見られなかった(こういうのが最高!と思う日もあるんですけどね)。クライマックスのホームセンターでの殺戮シーンは「ファイナルディスティネーション」シリーズの様な、殺し方見本市の様なそんな感じだった。爽快なんですけどね。ラストシーンのダイナーで次なる依頼者を見るけるオチもそれまで"なんでこの人はこんなにもお人好しに他人を助けるという大義名分で人を殺しまくるんだろう"と思っていた部分が一気に噴出してしまった余計にノレなかった。あと、画面が暗い。そして尺が長い。134分はさすがにいただけないでしょう。せめて100分にしてくれ。嫌いじゃなかったですけどね。

 

・パーム スプリングス (原題:Palm Springs) - 3.9/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.4.9)

監督:マックス・バーバコウ。脚本:アンディ・シアラ。2021年。filmarks案件の広告で目にして鑑賞。客は30人ほどか。タイムリープものという前情報だけで見に行ったが、予想を2段階ほど裏切られる展開で面白かった。監督のマックス・バーバコウはこれが長編デビュー作という事で前半から中盤にかけてのサービスシーン(ダンスしたりね、楽し気なやつ)などは正直センスとしてはかなりどうかなという感じでしたが、最終的に非常に満足のいく作劇で"ジャンル映画でしょ"と簡単には終わらせない気概を感じた。基本タイムリープしているのは、主人公と道連れになっている老人二人。そこにクリスティン・ミリオティ演じるヒロインが合流して物語が動き出すという仕組みが、物語のタイムリープ装置自体としてもそうだし、主人公の心情が動きだすきっかけ(老人と2人しかいなかった世界からの変化)にもなっているのが上手いなと感じた。正直、"じゃあこれまで他の人を巻き込もうと思わなかったわけ?"とイジワルにも思ってしまったがその辺りはご愛敬かなと。永遠の命(タイムリープ)の中にいる幸せと不幸せを描きつつも結局は人は1人では生きられないし、他者が欲しい、永遠の命は無い、などの実はシリアスなテーマもミックスされている事で作品の重さになっていたのが良かった。ヒロインも妹の結婚式の前日に新郎と寝るという史上最悪の手癖を心底後悔し、単純ながらも根の良さ、実は劣等感を抱えて生きるが、人に必要とされたい欲など、実に人間らしい良いキャラクター像になっていた。脚本も丁寧できちんと全部種明かししていくのも真面目だなあと思いながら観た。結構良かった。90分という尺もgood。

 

・パピチャ 未来へのランウェイ (原題:Papicha) - 4.0/5.0 (DVD/2021.4.7)

監督 脚本:ムニア・メドゥール。2020年。DVD新作レンタルにて鑑賞。前情報を全く入れていない状態だったので話の筋も知らずに見ましたが、とても意味のある時間だった。冒頭"実話に基づく話です"とテロップ。90年代アルジェリア、“暗黒の10年”と呼ばれる内戦下にて性差による抑圧に対する解放を訴えた女性たちを描いた。劇中何度も理不尽な目に遭う女性たちの各シーンはどれも本当にこんな事があったのか(しかもたった30年前に)と驚かざるを得なかったし、最終的には惨劇が起こり...という。ずっと信じられない画面が続くそれだけでも目を離させない力が本作あった。作劇も非常にスマートで見やすく主題も伝わる素晴らしいものだった。クライマックスの展開も安易に安心はさせず最後まで映画としても楽しむ事が出来たし、ラストシーンは新しい生命に向かい希望を問う主人公の姿にグッときた(劇中"きっと女の子よ"のセリフがあり、勝手に女の子に向けて言っていると考えられ更にグッとくる)。本国では上映禁止になったとの事でしたが、製作国の"知られたくない暗部を描く"事が映画を作り意味でもある(アトロクなどでの受け売りではありますが)と思うし、とても気概を感じる良い作品だった。主演のリナ・クードリはウエス・アンダーソンの新作「The French Dispatch」にてティモシー・シャラメの相手役にも抜擢されており、注目度の高さが伺える。そちらも楽しみだ。本編を見終わり、こんなにも抑圧弾圧された90年代があったのかと畏怖したが公式ホームページの解説によれば"世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数(世界153カ国)では、日本が121位、アルジェリアは132位"との事。日本はジェンダーの部分に関してかなり遅れていると思っていたが劇中の舞台となるアルジェリアと大差が無いランキングで二度畏怖した。

 

・ブルージャスミン (原題:Blue Jasmine) - 3.8/5.0 (WOWOW/2021.4.6)

監督 脚本:ウディ・アレン。2014年。「アニーホール」以来のウディ・アレン作品、今回はわりと近作を。時系列をバラバラに配置させながら主人公のこれまでと、周りそして主人公自身のこれからを対比させつつも切なく描いた。良く出来ていて単純に"面白いな~"と終始観てしまった。最後のどこにも決着させない(どうにも出来ずに投げだした=この人はこのままずっとこう生きていくのですよ)オチは、唐突に終わる漫才の"もうええわ、ありがとうございました~"の様な投げやり感を感じ、個人的にそこがいつももやっとするのでもう少しちゃんと決着付けて欲しいな(こういうオチと言われればそれまでですが)と思ってしまった。が、非常に見やすく簡単すぎずいい塩梅で、さすがという感じでしょうか。主演のケイト・ブランシェットの演技が素晴らしい。

 

・ブリグズビー ベア (原題:Brigsby Bear) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.5)

監督:デイヴ・マッカリー。脚本:ケビン・コステロ。カイル・ムーニー。2018年。面白いと聞いていたが配信にも近場のレンタルにもなくずっと見られていなかった作品。いつの間にかU-NEXT様で配信開始されており即視聴。"自分を誘拐した偽両親が製作し見せていたOV[ブリグズビー ベア]の続編を自らの手で製作し、過去の自分を乗り越え受け入れていく"というまさかのプロット。設定自体にびっくりするし、なかなか面白そうな話。だったのですが、割と映画的にワクワクするような作劇にはあまり感じられず、あくまでお話ありきと言う感じにどうしても受け取ってしまった。終盤の展開も何だかかなり都合が良く結果としてノレた!最高!という感じではなかった。面白くはあったし、ラストの上映後に消えていくブリグズビー ベアが"自立"を表している表現にもグッときましたが、いろいろ投げっぱなしの部分も多すぎて最終的には何だか普通だった。

 

・騙し絵の牙 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.4.1)

監督:吉田大八。脚本:楠野一郎。原作:塩田武士。2021年。客は40人ほど。みんな大好き「桐島~」の吉田大八監督最新作。予告観て、う~んどうかな~くらいの期待度だったので若干躊躇しましたが1日という事で劇場鑑賞。客入りは20時台で30人くらい。結論から言うと、全体的にとてもしっかりと作り込まれておりめちゃくちゃ見やすかったし分かり易い親切設計。とても文句をつける様な所も無いし面白かったんですが、特に何も残らないというか、自分にとっては"ただ映画を観た"だけの体験になってしまった感は拭えなかった。良かったんだけど。ラストの方が若干冗長で間延びしてしまった感は否めないが(110分台とは思えない!150分くらいあるかと思った)、まあ、ね。という感じ。LITEが担当した劇伴もけっこう攻めていて良かった。曲もいいし、ブレイクと映像を混ぜてくる手法はうまくはまった瞬間は良かった。難しいとは思うけど。あと、音量が単純にデカ過ぎてセリフが聞こえないとこもあった。

 

・キャリー (原題:Carrie) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.4.1)

監督:ブライアン・デ・パルマ。脚本:ローレンス・D・コーエン。原作:スティーヴン・キング。1976年。伊「サスペリア」と時を同じくしてアメリカにて作られたホラー古典作品「キャリー」、ブライアン・デ・パルマ作品念願の初鑑賞。熱狂的なキリシタンの母の元、箱庭的に育てられた主人公キャリーの学校という名の外世界での呪われた出来事を描いた。全編的にテンポが遅く、それが気になって正直あまり入ってこない部分が多かった。「サスペリア」は大好きなのだがこれは大きく違いがある様に感じる。ただ、表現・描写に関してはとても面白く、サイケデリックな追い詰められシーンなど面白かった。比べてばかりになるが「サスペリア」よりももっと大味でオルタナティブなノリを感じた。フリやタメも良く効いていて全体的に良く出来ていたが本当にテンポだけがノレ無かった。キャリーが可愛くないのもノレなかった。2013年クロエ・グレース・モレッツ版でリメイクされている様なのでそちらも観てみたい。絶対可愛いし。