観た映画 2020年7月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2020年7月に観た映画

40本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ダークナイト ライジング (原題:The Dark Knight Rises) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2020.7.31)

監督脚本:クリストファー・ノーラン。2012年。"ダンケルク"に続いて自宅で。せっかく"ダークナイト"まで見たのでラストもという事で鑑賞。途中までどうなる事やらと思って観ていたが最終的には何だかんだ楽しめた。そして、やっぱりヒース・レジャー演じるジョーカーがすごかったんだなと改めて思う。この作品は"ジョーカーの出てこないダークナイト"で、出汁を入れ忘れた味噌汁みたいな味だった。まあ何となくそれっぽい味はするが決定的に味(魅力的な悪役)が足りないなと。そして、ウエィンはつまんない奴だなとあたらめて思う。クリストファーノーランの作品って、脚本もおそらく結構自身で書いてると思うが、それが合わないのかもしれないなと思った。話が、会話が、なんかすごい入ってこない。

 

・ダンケルク (原題:Dunkirk) - 3.7/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2020.7.31)

督脚本:クリストファー・ノーラン。2017年。IMAXで再上映という事で109名古屋IMAXで鑑賞。基本的にいつも前情報を出来るだけ入れずに見てその後に予告編を見たり、評論を聴いたりするのだが、まずこの映画はダンケルクで起こった事件を知らないと(楽しめない訳では全くないが)導入部分がかなり不親切。いったいどういったことになっているのか何故主人公がこうなっているのかが分からないまま終始大迫力なエスケープシーンを見せられて最終的に助かって良かったね、ダンケルクスピリットを忘れるな!って感じで困惑。映像自体はすごく楽しめたし、あっという間の作品ではありましたが何も分からないまま終わってしまったのが若干残念だった。あとこのテーマ上仕方ないのかもしれないけど終始のっぺりとした内容でどうしても睡魔が襲った。

 

・海辺の映画館―キネマの玉手箱 - /5.0 (伏見ミリオン座/2020.7.31)

監督:大林宣彦。2020年。いよいよ大林監督の遺作であり最新作。点数はまだ付けられません。2度目を見に行かねばという気持ちでいまこれを書いています。正直に言って、前半は結構なとっ散らかりっぷりでまとまらないし、"これ一体どうなってしまうんだろう(ほんとに面白くなるのか?)"と思いながら見ていた。まあ段々といつもの形に落ち着いてくるのだが、いつもならばクライマックスに向けての異様なスピード感と過剰なセンチメンタリズム演出、すべてを丸く収める大団円感、そして監督ならではの映像演出で我々は訳も分からないうちに涙を流していたのですが(今作ももちろんその流れであるのだが)、どうしても過去作と比べると説得力が薄い。もちろん楽しめたのですが、それは大前提として"大林監督が好きだ""大林監督の最後の作品を受け止めたい"とかなりニッチなというか、常連さんが理解し得るものだったかなと、見終わった後は感じた。し、たぶんそれは間違ってないよなあとも思う。正直、人にはお勧めしないし、これが最後かと言われると何とも言えない気持ちにもなりますが、とにかく"監督、お疲れ様でした!ありがとうございました!"という事だけがずっと頭の中をめぐっていた。

 

・パンダコパンダ - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.7.31)

監督:高畑勲。脚本:宮崎駿。1972年。ジブリ見返すシリーズで勲編に移ったら、駿よりも勲の方が肌に合っているんじゃないか説が浮かび上がり、勲を中心にもう少し掘って観る事に。夜中に鑑賞したので短いやつがいいなと思いコレを。トトロ(モデル?)の様なでっかいパンダが出てきて、喜ぶと逆立ちしてパンツを丸出しにするイカレた女と遊んで結局のところ"竹藪が良い"って事が分かる作品。終始めちゃくちゃでトトロみたいなパンダの発言もギリギリ感あるし、何よりも目が怖い。そして最終的には"竹藪が良い""うわぁ~い!(逆立ちパンツぺろーん)"で、ある。狂気。そういう意味で面白い。

 

・その日のまえに - 3.8/5.0 (DVD/2020.7.29)

監督:大林宣彦。2008年。まさかの南原清隆主演。同じく主演の永作博美は心配ないのですが、ナンチャンはどうなのと思いながら鑑賞。見始めてすぐやはりナンチャンの演技は気になる...。が、大林作品の中の世界を想うとこれでもいいのではないか、むしろこれが正解なんじゃないかとすら思えて来るから不思議。ただやはりどうしても物語が進み重要な局面に来た時に"う、泣いてしまうかも"と思った瞬間ナンチャンの妙な演技を見せられるとそこでさすがに我に返ってしまうという事が起き、いまいち没入しきらず。さらにそこに輪をかけて子供たちの演技がひどい。大林映画の中に一般的な演技力なんてものは求めていないのだが、これまでの作品に出てきた子供とは明らかに違う、ヘタさ。素人さ。これはさすがに養護のしようがないよなと。もちろん監督は下手な方が好きだろうしわざとこういう演技になっているんでしょうが、これまでのオッケーラインを大きく踏み込んで越えてくる、この子供(特に弟)の演技とナンチャンの妙な演技の合わせ技ですごーく勿体ない感じに。もちろん簡単に"お涙頂戴"にしないのは大林監督だから当然だし全くそれとは別の芸術に仕上がっているので安心はしたのですが。今回はさすがに気になってしまった。それ以外の話だと、冒頭の主演の2人がむかしを懐かしみながら歩いていると昔の自分たちとぶつかるなんて演出はもう冒頭から"あ、やばい、これは大林監督のむちゃくちゃ泣くやつかも"と心構えたり、過剰な超過剰なセンチメンタリズムでクライマックスに向けて加速しまくってのラストの連打。もう素晴らしいの一言。もちろんクライマックスシーンは「この空の花~」と見た後だと、物足りなさは感じるのですが、大林監督のフィルモグラフィを知っているファンからすればこの経過さえも愛おしく、次の「この空の花~」に向かっていく歴史に震えたりもします。何度も途中で"う~ん"って思ったり"これは.."と驚いたりする大林映画ですが、やっぱり最後には大感動するし、得体のしれない映画を見たな、こんな映画ほかに無いよなと思わせてくれる監督の作品は唯一無二です。つらつらと書きましたが、個人的にはこの作品はむちゃくちゃ好きです!!

 

・平成狸合戦ぽんぽこ - 3.9/5.0 (DVD/2020.7.27)

監督脚本:高畑勲。1994年。ジブリのもう一つの顔、勲作品。駿作品をこれまで数点か見てきて個人的にはあまりしっくり来ていない現実を同じジブリ監督の高畑勲の作品ならばどうだろうと思い、「太陽の王子 ホルスの大冒険」の鑑賞予定もあったのでチャレンジしてみようという事で前日の「火垂るの墓」に続いて鑑賞。これまで見たジブリ作品の中だと一番しっくりきた。話の中身というか表現はあくまで超フィクションでありながら、超ノンフィクションな話にスッと意向していき且つファンタジーみもある終わり方をするという何とも総合点の非常に高い作品だった。ナレーションメインの我慢映画でもあるのでかなり地味にはなるのですが、監督自身も記録映画(ドキュメンタリー)だと言っているのがまさにその通りで、しかも興行収入的にも高いものになったという事が記録映画の中にもジブリの客層にも届くファンタジーさが溢れていたという証明ではないだろうか。それが出来たら最強でしょう。クライマックスのたぬき達が最後の力を振り絞って"気休め"の逆襲でニュータウンを森に戻すが...という描写も素晴らしかった。何がナウシカだ何かもののけだという感じだ。(駿アンチ)

 

・はるか、ノスタルジィ - 3.8/5.0 (DVD/2020.7.25)

監督脚本原案:大林宣彦。1992年。新尾道三部作の間に作られた作品。「青春デンデケデケデケ」よりも前に完成していたが出資の関係上、公開順が入れ替わってしまったという。珍しく大林宣彦原作。一応、原作小説がありますが映画のために書き下ろされたものになるのでこの世にも恐ろしい中年ロリコンおじさん話は監督自身が原案しているものとなります。映像としての所謂"印"みたいなものは少な目に抑えられていますが、ストーリーのウネリはこの辺りから晩年へかけて一気に捻じれこんでウネリまくる作風へと変貌していったんだなあという事が垣間見れる。映画はいつでも自問自答なんだな、作品つくりはいつでも自問自答なんだなと感じた。自身を投影して描かれた作品だからこそ、濃いものになっている。あと石田ひかりがめちゃくちゃかわいい。

 

・火垂るの墓 - 3.4/5.0 (DVD/2020.7.25)

監督脚本:高畑勲。1988年。2020年に「火垂るの墓」を初体験する大人は居ないだろうと思いながら貴重な体験。初回に観た時の年齢ってかなり大事だし、大人になって初めての体験に戻りたくてももう戻れないし。終始、兄妹の2人が可哀そうなお話だった。もっと反戦的なメッセージがガツンとクるのかなと思っていたがそれほどでもなく拍子抜け。節子が空襲で焼け死ぬくらいを想像していたので。ただ今思うと、そういう描写にせずに空腹と栄養失調、病気もあったでしょうがそういったもので衰弱していって静かに死んでいくというのがアニメ映画、ましてはジブリだと役割・責任的にはそういう着地点なのかなと思った。毎年恒例の金曜ロードショーでの放送が、近年は苦情?(お盆にこんなもの見たくない的な)が多く放送を辞めたと聞いており、"そういう目の背け方は違うだろ"と思っていたが、実際に観てみると"なるほどこれではただただ悲惨で可哀そうなだけで戦争に対するアンチテーゼというものは薄まっているな"と感じたので、わざわざそんなものを放送する必要はないよなとも思った。大衆もバカではないか。洞穴でホタルを灯りにするシーケンスや節子の死後、生前の節子が水辺で元気に動き回る描写はとても映画的だったし、美しく、胸に来るものもあった。

 

・サボタージュ (原題:SABOTAGE) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2020.7.24)

監督:アルフレッド・ヒッチコック。1936年。ヒッチコック2作目(個人的に)。時間が微妙でどれを見ようかなと思いビースティに「サボタージュ」ってあったなあと思いながらセレクト。36年の作品なので(84年前!)仕方ない部分もあるとは思うが、まあまあだった。いやでも84年前にこれってかなりすごいのでは?とも思う。いや、そうだろう。話の内容的にオチというか終盤の展開があまり好みでは無かったのでこの点数。嫌な女だよ、ほんと。面白く集中して観る事は出来た(スゲー)。

 

・あの、夏の日~とんでろじいちゃん~ - 3.6/.5.0 (DVD/2020.7.24)

監督脚本:大林宣彦。1999年。新尾道三部作の最後作。全体的に卒倒度低め(宇多丸Ⓒ)な一作。"男の子"が主役という大林作品にしては珍しい話。画面も全体的に終始明るく、まさに男子小学生の夏休みの一つの冒険譚といった感じでサクサクと見進めていく事ができる。冒頭から中盤にかけてというか、おじいちゃんの認知症が引き起こす症状の描写にファンタジーというかフィクション的な設定ががっつり噛まされており、正直都合よすぎて"うーん"となる部分もなくはない(監督にしては珍しい)。過去に飛んでいく描写などを始め、卒倒度低めとは書いたものの大林作品に慣れている自分には、かもしれない。晩年の作品にいくつか出てきたマーチング隊とすれ違う描写が今作にも。宮崎あおいのあのシーンや、ムチムチのお姉ちゃんが出てきたりとか健全なドキドキ体験も出来る事も含めて夏休みの子供に見せるには良さそう。とか言いながら今作も泣いたのですが(信者)夏の尾道は美しいな。一度は行ってみたい。

 

・ダークナイト (原題:The Dark Knight) - (109シネマズ名古屋IMAX/M18/2020.7.22)

監督脚本:クリストファー・ノーラン。2008年。IMAXにて鑑賞。ようやくたどり着いた本作でしたが、やはり...予想通りな感想となってしまった。これ言い出したら本末転倒ですが、やはりこういうキャラクターもの?アニメもの?SF?とか超フィクションストーリーが苦手なんだなあと。苦手というか、興味があまり沸かない...という。バキバキの映像と特攻、派手なスクリーン、高解像度のIMAXならではの暗闇での描写(ドルビーとかでもそうですが)、はやはり圧倒的で楽しむ事が出来た。IMAXのでかいスクリーンで見るだけでワクワクしますね。正義とか悪とか、そういうメッセージみたいなものはすごく単純な事をめちゃくちゃシリアスにこわ~く言ってるだけの様な気がしてあまり乗り切れず。もちろん誰が見ても前作「ビギニング」よりかは遥かに良いのは間違いないのですが。個人的にはゴードン警部とジョーカーが取り調べ室の暗闇で対峙するシーンが非常に冷ややかででも熱くて最高だった。あと、タイヤの太いバイクがかっこよかった。迫力満点。

 

・22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語 - 3.7/5.0 (DVD/2020.7.22)

監督脚本:大林宣彦。2006年。埋もれがちな作品ですが、まあ埋もれてもしょうがないよねという感想。大林作品には珍しく、お話の部分の面白さが先行した。主人公の中年男性と仲の良い女性、22歳の女(娘だと後に分かる)とその彼氏、27年前の主人公とその彼女(22歳女の母)との思い出や記憶が複雑に絡まり合いながら話が進んでいくが、それを美しくもめちゃくちゃ切なく優しく見事に紐解いていく監督の手腕(ここまで"映像は地味だが話が面白かった"と書こうと思いながらキーボードを打っていたが、いやこれって演出がすごいんじゃない?やっぱり大林宣彦すげー!となってしまい、点数を替えようかとも迷ったけどとりあえずこれで行きます。クライマックスの焼き鳥屋でのシーンは思わずホロリと来てしまった。大林宣彦は、やっぱりすごい。)。

 

・ファイナル・デスティネーション (原題:Final Destination) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.7.22)

監督:ジェームズ・ウォン。2001年。アトロク?か何かのYoutubeを聴いていて確か三宅監督がおすすめしていたのでチェックに入れており、90分台というサイズ感もあり時間があったタイミングで見る事が出来た。飛行機事故の寸前で予兆を見る事が出来てしまった青年が、たまたま一緒に助かった同級生数人と死に向かう運命を共にしながらサバイバルしていくという内容。死の順番が決められており、それを飛ばしてもまた順番が戻ってくるという仕掛けは多分「イットフォローズ」か何かでも見たな~と思いながら見た。こちらの方が先出。話の内容的には上記以外の事は無く進んでいく。思わず笑ってしまう死にっぷりが〇。ラストまで結局死んでいくのね、と思った。が、B級テイストだとこういうのはあるかとも思う。良いB級映画。

 

・エレファント マン 4K修復版 (原題:The Elephant Man) - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/6 E8/2020.7.21)

監督:デヴィッド・リンチ。監督自らによる4K修復版。オリジナルは1981年。名作リマスターシリーズというか修復シリーズでデヴィッド・リンチの昔の作品を劇場で見れることなんてないだろうという事で劇場にて鑑賞。設備的に2Kでの上映でしたがそれでも81年の映像とは思えないくらいの鮮明さでデジタル修復はすごいなと。未観の作品でした。リンチの事を調べた時に"代表作ではあるがデヴィッド・リンチらしさは薄い"というコメント(代表作あるある)を見ていたので覚悟はしていましたが、薄い。話も当時は良かったのかもしれないが今観ると"うーん、それもちょっとどうなの?"と倫理感の変動も感じる事が出来る。劇中の有名女優がエレファントマンを使い、自分の株を上げようとするのは今も昔も変わらないかなとは思う。10人程度の入りの劇場で6割が女性客で驚く。女性2人で来ている人も。隣の席の女性が終始泣いており"この人は24時間TVとかでも泣ける人なんだろうな~そういう人でもデヴィッド・リンチの映画を見に来るんだな~"とかなんとか思った。

 

・Batman Begins - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.7.21)

監督脚本:クリストファー・ノーラン。2005年。いよいよクリストファー・ノーラン版バットマン。率直な"バットマン"の感想で言うと、自分が過去見たティム・バートン版の作品とそんなに変わらない。好みの話。ほんとファンタジー・ヒーロー系?が苦手だなと感じる。DCでダメなんだからマーベルとかほんと無理だろうなと思う。内容的には、まず長い。忍者?みたいな謎の集団が出てきた辺りがピークできつかった。なぜ突然そうなった?という気持ちがまとわりついて集中力のそがれ方がすごかった。ああいうの出てくると一気に萎える。意味が分からない。映像的にはもちろん89年、92年と来てるので比べにくいのですが映像はすごい。派手。嫌な感じの主人公だなと思っていたが最終的には結構男前に見えてきて良かった。話はとても分かり易く、"こういう葛藤とか出来事があってバットマンになっていったんだね"と誰が見ても分かるのは良かった。次はいよいよ「ダークナイト」。きちんとIMAXで鑑賞してみる。どうなるか。

 

・Psycho - 3.9/5.0 (U-NEXT/2020.7.20)

監督:アルフレッド・ヒッチコック。1960年。ヒッチコック作品初鑑賞。まずは何よりも劇中に付けられた音楽での緊張感の演出が際立っている。所謂SE。曲だけではなく、不穏な音、などによって心理描写していく様が暴力的かつ芸術的に映る。映像自体の画作り一つ取っても丁寧に作られている。お話は2部構成的なノリになっており、1部で早々と主人公は死ぬ。後半若干のダレを感じつつもクライマックスに向けての盛り上がり、そしてまさに"サイコ"なオチ。ラストシーンに狂気の男、母、沼の車と3つが重なり合うシークエンスは悲しくもあり不器用な今作を象徴している。95分くらいで見てみたい。

 

・Batman Returns - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.7.20)

監督:ティム・バートン。1992年。前作より3年。第2作。前回よりも敵役へ使う時間が多く、敵メインでバットマンがどう闘っていくのか、敵にどういうストーリーがあるのかという事がメインに語られており、ヴィラン(覚えたての単語)に命を吹き込む事で面白みが加速していくバットマンシリーズの芽吹きを感じた。途中まで前作と同じく、うーむと思いながらの鑑賞となったがクライマックスのバットマンvsペンギン男、キャットウーマンvs市長vsバットマン、と3者(4者?)の人物描写や行動で一気に見どころのスピード感を上げてくる感じが面白かった。この辺りは前作には無かったドライブ感だなあと思う。うまい。もう少し点数を上げてもいいが個人指向的にこの辺りで。でも、改めて前作も今作もよく出来ていて、さすがファンに語り継がれていく作品だけあるなとは思う。両方面白かった。

 

・凱里ブルース (原題:路邊野餐) - 3.6/5.0 (シネマスコーレ/2020.7.20)

監督脚本:ビー・ガン。長編デビュー作。2015年。シネマスコーレにて予告を見て良い感じだったので鑑賞。時間をモチーフに、川を越える事や時間などを境目に生死の世界を曖昧に揺蕩う不思議な内容。明確なストーリーは特にある様には感じず、お話的な面白さからは結構遠くにいるなと。が、後半の異様に長い長回しはブレようが揺れようがお構いなしに実直に淡々と描写していく様に監督の意思を強く感じた。(スタビライザーの都合でグワングワン歪んでいるせいもあるらしい) 画作りも非常に整理整頓されており、びっくりするような面白さは無いが静かなで念の籠ったものを観たなという感想。「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」という作品が評価されての今作の上映みたいなので「ロング~」も機会があれば観てみようと思う。嫌いじゃない。

 

・ポセイドン アドベンチャー (原題:THE POSEIDON ADVENTURE) - 3.8/5.0 (2020.7.18)

監督:ロナルド・ニーム。1972年。言わずと知れた乗り物パニック映画の名作。どうしても「タワーリングインフェルノ」と比べてしまったので(オープニングとかほとんど同じじゃん)、好みで言えば圧倒的に「タワー~」なので少し点数的には劣ったか。もっとハラハラする様な場面の連続かと思ったら若干の肩透かしだった。よくよく考えたらひっくり返った船の上(底)をただ目指していく映画なんだからそんなに最後にハラハラや感動は無いよなとも思う。ロゴといういかついオッサンは楳図かずおの漫画のどこかに出てきた気がする。エンディングのあっさりさに驚く。

 

・青春デンデケデケデケ - 3.6/5.0 (DVD/2020.7.17)

監督:大林宣彦。人気の高い作品らしい。所謂"大林印"的なものは若干控えめに作られており、結構あっさりとした印象(それでも異常に速いカット割りだったり変なところはふんだんにあるんですが)。主人公たちのバンド演奏シーンが本当に楽しそうにやっておりリアルさを感じた。大林監督は大好きなのだがこういう丁寧な大林作品よりももっと冒険心溢れるものの方が好み。学園祭のライブのシーンで"この曲から始まったのです"的なMCの後に来るのが"ジョニービーグッド"なのかあまりしっくりこなかった。あそこは"パイプライン"だろうと思うのは自分だけだろうか?なぜ?

 

・地獄の黙示録 ファイナルカット (原題:Apocalypse Now Final Cut) - 3.8/5.0 (ミッドランドシネマスクエアドルビー/2020.7.17)

監督脚本:フランシス・フォード・コッポラ。監督自ら再編集とデジタル修復の手を加えた再上映。かつドルビー、4DX、IMAXでという事で劇場で見るしかないでしょうという事で鑑賞。まず、画面が鮮明。思っていた以上に鮮明で良かった。前半の爆撃シーンやヘリなどの爆音もドルビーならではの立体感と音量で大満足。ストーリー自体は後半から明らかに失速、どうしたいんだろう状態に迷走()していきますが、名作たる所以かそれさえもクールに哲学的に見えて(ラストの真っ黒い画面に浮かぶカーツ大佐の語り)やっぱり名作だと唸る。どう考えても名シーンの連続で撮影当時にどういった苦労があったかは計り知れないが後世に残るものはこういうものなんだろうなと感じる。切れ味鋭く入口を置いて実は底なし沼の様な作品。上映期間内にもう一回観たい。

 

・WAVES - 3.4/5.0 (伏見ミリオン座/2020.7.16)

監督:トレイ・エドワード・シュルツ。「イット・カムズ・アットナイト」も同監督。終わってこうしてコメントを書いていて思うが、どうやらこの監督があまり得意ではないらしい、多分。登場人物たちや物語の内容、よくよく考えたら"ただのDQNの話じゃん"となってしまいどうしても没入する事が難しかった。楽曲、音響と映像の組み込み方もすごく自然で美しい形になってはいたが、個人的にはただ綺麗なだけで特にひっかかりが無く"だから何?結局どうしたかったんだろう"状態になってしまい何とも。前半ラストに向けて画面が小さくなっていき彼女が殺される。画面の縦横が入れ替わり縦長の画面から後半スタート。この時点で"お、これは横たわった彼女の瞼越しの視点で、実は死んでいなくてこれから彼女目線でびっくりするような話が展開されるに違いない!"⇒勘違いでした。その切り替わりの辺りだけレンズフレアの演出とかもありました。微妙。

 

・パンチドランク ラブ (原題:PUNCH-DRUNK LOVE) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.7.16)

監督脚本:ポール・トーマス・アンダーソン。2002年。町山智浩氏による「WAVES」予習ツイートから。レンズフレアを多用した映像演出を見るために。実際にフレアによる演出が多く、色彩での表現が豊かに見られる。社会不適合の生涯童貞限界中年男が年上女に恋をし、暴力を振るう映画。映像、構図が綺麗だったのでわりかし楽しんで観る事ができたので終わった後は"あ~まあまあ良かったんじゃない?"くらいのテンションではあったが、よくよく考えてみれば結構気持ち悪い話だったなと。ああはなりたくない。(し、なる事も出来ない)

 

・アポカリプト (原題:APOCALYPTO) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2020.7.16)

監督脚本:メル・ギブソン。2006年。最高の鬼ごっこ映画。とにかくエネルギッシュだし、ストーリーなんて無い(からこそ興奮する)し、「マッドマックス怒りのデスロード」よろしく行って帰ってくるだけのシンプルisベストな1作。追われて逃げて反撃して最後本当にやばいやつに出会ってどうでも良くなって解散。簡潔!素晴らしい。劇中のゴア描写もなかなかに気合が入っており、マヤ文明人に捕まってこれからどうなってしまうんだろう感も何されるんだろうの恐怖感もどちらもきちんと怖く、ハラハラと表現されており満足。とにかく簡単に理解が出来、脳を通さずに楽しむことの出来るエンタメ映画なので最高。夫婦と子供3人でまた新たに旅立っていくラストシーンは少し不満が残るものの、それこそこんなもんで良いでしょ感があってそれはそれで良いのかもしれない。

 

・バリー リンドン (原題:BARRY LYNDON) 3.7/5.0 (U-NEXT/2020.7.13) 

監督脚本:スタンリー・キューブリック。1975年。キューブリック「時計じかけのオレンジ」後「シャイニング」前というタイミングでの185分に及ぶ長編。皆さん特筆していますが、自然光と蝋燭だけでの撮影に耐えうるレンズやカメラを用意して18世紀の明るさを徹底的に再現した一作。衣装や美術、映像構図など、どれを取っても非常にクール。どの感想を見ても"美しいから良かった、けど話は退屈だった"という事が書かれておりますが、まさにそんな感想になってしまうかなという感じ。別に退屈とまでは思わなかったけれど確かに長かった。話が1部と2部、前半と後半で同じ登場人物の上り坂と下り坂を描いた様な、盛者必衰、因果応報、などそんな言葉が当てはまる寓話の様な内容。上り坂下り坂構造はかなり見事に描かれていたんじゃないでしょうか。後の影響を考えても改めて意味のある深い一作だなあと感じる。

 

・廃市 - 3.5/5.0 (DVD/2020.7.12)

監督:大林宣彦。1984年。小林聡美主演。福岡県柳川市を舞台に日本版ベニス映画。とにかく16mmの味が良い。静かでザーッとなった画面からは「廃市」の気分を一層引き立たせる。何とも言えないインディ臭とその瞬間にしかパッケージ出来ないものが詰まっている気が。ゆっくりと流れる川の様な静かな映画。葬式の一連のシーンの表現や、楽屋での物語の確信へと迫っていく緊張感の増し方、外し方が非常にニクく上手い。船をこぐ尾美としのりは最後の最後にあのセリフだけを話す役の方が良かったんじゃないかなと思う。小林聡美が美人役。

 

・もののけ姫 - 3.4/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2020.7.11)

監督脚本原作:宮崎駿。1997年。<一生に一度は映画館でジブリを>というリバイバル上映で「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」に続き鑑賞。千と千尋~で若干持ち直した"ジブリだめかも病"をまたしてもぶり返す事に。ナウシカのアップデート版的な、より説得力を持ちつつ時代性も配慮して訴える部分をブラッシュアップしてストロングな表現になった印象。ですが、個人的には"で?"って感じにどうしてもなってしまう。デカい犬がしゃべり、犬と女がしゃべり、ついには半透明の黒いゴリラまでもがカタコトの日本語を話しだしたときには思わず笑ってしまった。そういう設定なんだからと言われればそうかも知れないですが、、動物と会話できるし、そもそも狼に育てられた子供って...って感じで終始没入できず。ジブリ作品はテーマとかは良いけどそれを表現するためにいつも微妙に不快なラインを越えてくるから無理なのかもしれない。まあそれもそういう表現方針だからと言われればそうなのかもしれないですが...。

 

・花筐/HANAGATAMI - 3.8/5.0 (DVD/2020.7.10)

監督脚本:大林宣彦。2017年。戦争三部作の最終作。別に続き物では無いのですが。監督自身も前2作はドキュメントで今作は映画になったと仰る通り、明らかに前2作とは異なる作風でめちゃくちゃ"反戦!"と言う事を隠す事にしつつも壮絶に色濃く反戦を訴えるメロドラマ風の作り。たぶん前作「野のなななのか」もそういう方向性だったけどああいう形になったはず。生きる事の出来るはずだった人達の無念、未来、そういったものを受け止めて私達は生きていくという事を忘れてはならないと感じる。全編を通してとにかく映像技工がすごい。技術の話ではなく、熱量の話。話の内容に引っ張られそうなっている部分と監督が最後の作品になるだろうと作っている両方が手伝って、168分間とんでもない画面になっている。主演の窪塚俊介が怪演。今月末後悔の「海辺の映画館」もかなりコレに近いものになるんだろうなと予感。

 

・トーク トゥ ハー (原題:HABLE CON ELLA) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2020.7.8)
監督脚本:ペドロ・アルモドバル。2002年。同監督作品鑑賞2作目。「ペイン・アンド・グローリー」を見て他作もと思い食指が伸びた一作。アルモドバル作品、非常に好きかもしれない。まず画の美しさ。色彩美(カラフルさで言うとウェスアンダーソンとかも一瞬連想される。方向性は全然違うけども)と、画面からいちいちにじみ出る説得力。描写の丁寧さに驚く。話もミニマムな問題をどっしりとスクリーンで客観的に描いていく事で重厚さが増していくという姿勢で、これも映画体験的に豊かなのではないか。劇中登場人物たちの行動の是非はあるが人間誰しも綺麗ばかりではないし、醜く渦巻く欲望だって人間だろうと個人的な物語をドラマにするのがこの監督を自分が好きなところかなと思った。表現が繊細、素晴らしい。あと映画内映画が面白かった。

 

・千と千尋の神隠し - 3.6/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2020.7.6)

監督脚本原案:宮崎駿。2001年。<一生に一度は映画館でジブリを>というリバイバル上映で「風の谷のナウシカ」に続き鑑賞。ジブリをあんまり見たことが無いという希少人類ですのでどの作品も劇場で、かつ初見。前回のナウシカ戦で惨敗を喫したので若干の不安を抱えながらの鑑賞となったのですが、あまり変わらず。2時間が耐えられず途中で何度か意識が。慌ててTSUTAYAのサブスクレンタルで補完(内容約5分)。ナウシカよりは全然納得がいくし、むちゃくちゃだなと感じる部分は無くなっていたので良かった。とにかく画が綺麗。舞台の湯屋というかあの街が夜になってライトアップされていく感じや、風景、内装、いろんなものが煌びやかに躍動的にアニメーションになっており結構感動した。これは劇場のスクリーンで見られて良かったなと思う。ただやはり人間が画面に居ないという事にリアルさを感じる事が出来ずに興味の持続が難しいのかなとも思った。内容は特段すごいとは感じなかったがまあ良かった。千尋の人間的な成長映画としても良かった。次回は「もののけ姫」にチャレンジする(懲りろ)。

 

・鉄男 TETSUO (洋題:TETSUO THE IRON MAN) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.7.6)

監督脚本:塚本晋也。1986年。カルト的な人気を誇る一作。映画ファンになる前からタイトルやビジュアルは知っているくらいには有名でしょう。自分が音楽に近しいからかもしれないが。"パンクmeetsジャンク・イレイザーヘッド(テクノ風味)"という感じか。「鉄男」というだけあって劇中の鋼鉄パンクサウンドはかっこよかった。gang of fourがテレビをぶっ壊すかの様に、金属バットを楽器にしてしまうような危険さとニューウェーブな音とスクリーモ(叫びセリフか)が延々ループされてテクノ的な高揚をもたらす。トリップムービー的なといえばそうなのかな。ただ65分は長い。これなら35分くらいで良い。映画としてはいまいちかな。イレイザーヘッドの様などこか物悲しい感じや本物のキチ〇イにはやはり勝てないので。どっちを取るんだと言われれば秒でリンチ。ねw

 

・ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー (原題:Guardians of the Galaxy) - 3.6/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2020.7.6)

監督:ジェームズ・ガン。2014年。マーベルシリーズは全く見たことないのにいきなりコレから見て良いんかいなと思いましたが、別にエンタメ映画にそんな気遣い要らないだろうという事とリバイバル上映中という事でせっかくなら劇場でという事で鑑賞。一言で言えば特段面白い事も無かった。もちろん映像は綺麗だったし音楽の使い方とかテンション上がる部分も多かったけれど、話がつまんないなーと思いながら見てしまった。これは完全に好みの話なんでしょうけれども。それでも最後まできちんと興味維持させてしっかりと見る事の出来るこの作品はすごいとは思う。

 

・野のなななのか - 3.7/5.0 (DVD/2020.7.5)

監督脚本:大林宣彦。2014年。「この空の花 長岡花火物語」に続く戦争三部作の第二弾でもありデジタル第二弾でもある今作。この空~の様な過剰な画面上の文字情報演出だったりCG交錯だったりは大幅に減り、大林さん風に言うならばだんだんと"映画"に近づきつつある一作だった。だがもちろんそう簡単にいかないのが大林作品。序盤(もしかしたらずっと?)の畳みかける様な会話間の過剰圧縮、異様なカット数、などなど何かを急き立てられるかの様な編集演出にはこれから起こりうる物語の異常さを物語るよう。キーパーソンである山中綾子(安達祐実)が出て来てからの切なさみたいなものが渦を巻いて物語と共に唸りあがっていく様は圧巻。クライマックスまで我慢して取っておいたかの様に最後は安達祐実が真っ青の空と同化。最高だった。死者も生者も一緒になって黄色い花の平原に座って話す様は"一度死んでいる身"と語る大林監督ならではの境地か。次はいよいよ「花筐」。

 

・風の谷のナウシカ - 3.1/5.0 (109シネマズ名古屋/2020.7.4)

監督脚本:宮崎駿。1984年。コロナ自粛明けの一環か<一生に一度は映画館でジブリを>というリバイバル上映。基本的に"アニメが苦手だ"という自負がありますのでこれもそれを乗り越える事が出来ず。どうしてかなーと腑に落ちず考えてみた結果、おそらく、"映画(作品、おはなし)は虚構で良いのだがリアルさを欠くのはいかがなものか"。たぶんコレに尽きる。どう見ても劇中のナウシカの言動は都合が良過ぎるし無茶と無謀を繰り返すし、本当に自分に関係する人の事を考えてるの?と言いたくなる様な行動のオンパレードだし、無根拠な自信も何か咬み心地悪いし、無茶する割には全部が都合よくうまくいくし。別にこれらの物語上の結果とかは別にそれで良いんですが、"何故そうなるか"がリアルじゃないのが気に食わないんだろうなあと思います。"作り話だから良いんだよ"と言われるかもしれませんが、フィクションの中にも(物語世界内での)リアルさは必要だろ!と本気で思う。だからアニメは好きになれないのかもしれない。ナウシカもはっきりとこのパターンでした。

 

・お嬢さん(原題:아가씨) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.7.3)

監督:パク・チャヌク。2017年。「オールドボーイ」などのパク・チャヌク作品という事で楽しみに鑑賞。"エロティックサスペンス"という謳い文句に嫌な予感がしましたが...う~ん、、という感じ。別にエロでもサスペンスでもないし何だか中途半端にダラダラと時間が過ぎていった。だが本当に問題というか言いたいことはそんな事ではなく、劇中日本語を話すシーンがかなり多く出てくるのだが韓国役者がカタコトの日本語で演じているため、どうしても細部が聞き取りづらくストレスに(これを一番声を大にしていいたい)。それも手伝ってか全く集中できず。ただ、映像的には終始美しい映像が続き、非常に満足感があった。いろんなポイントが微妙にズレ合って勿体なかった。

 

・県警対組織暴力 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港/2020.7.3)

監督:深作欣二。1975年。ミッドランドスクエアシネマが行う<東映傑作選・特別上映>という事で、任侠や渋いラインナップが並ぶ中、深作欣二監督作品のこちら。前週の「仁義なき戦い」も行こうと思いましたがタイミングが合わず。深作作品は「バトルロワイアル」以外見たことが無く今回初。タイトル通り、暴力団に癒着する警察官vs県警の皆さんという形で物語は進行。最終的には立場があろうが、結局は癒着警官は信条守り切れず何ともなオチで誰もが救われず、綺麗事にはならない内容。圧倒的な役者のパワーや今の邦画には絶対に無い迫力や気概が感じられる。ジャンル映画として任侠シリーズを突っ走った"仁義チーム"の作品をスクリーンで触れられる事ができて良かった。個人的趣味では△。

 

・北京的西瓜(ぺきんのすいか) - 3.9/5.0 (DVD/2020.7.3)

監督:大林宣彦。1989年。「異人たちとの夏(’88)」の後、新尾道「ふたり(’91)」前というタイミングで製作された日中親交劇。中盤までは"THE・大林監督の真面目なパターンのやつ"で進んでいくのですが、物語の終盤に舞台が北京に移るシーン以降の仕掛け(こうするしかなかったようですが)が大胆。解説などを読むと天安門事件(現実)に対する映画の敗北、精一杯の抵抗という事での37秒の空白。やりきれない想いはきちんと映画で返す、大林監督らしい一貫した姿勢に本当にほんとうに痺れる。もちろん中盤までの描写もすごく丁寧でいかに監督が人に対して優しくあろうとしているかがよく分かる。お父さんのした事は間違っているし、この物語はお母さんが真にすごい、んだという話。ベンガルももたいまさこも素晴らしい演技で没入して観る事が出来た。だがやはり終盤の仕掛けがこうするしかなかったにしてもやはりどうしようも無く、良い意味でも悪い意味でも印象的なシーンになってしまい作品の本質的な部分はやはり途中頓挫したと感じても仕方がないかなーとも思う。ファンなら養護しますが、なかなか難しい問題。

 

・ペイン アンド グローリー (原題:Dolor y gloria/Pain & Glory) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2020.7.1)

監督脚本:ペドロ・アルモドバル。2020年。主人公である作品内監督の自伝的な切り口で物語は進んでいく。非常に美しい色味とカメラワーク。描写ひとつ取ってもとても丁寧に作られており綺麗。映画館のスクリーンで見られるのは贅沢。(過去作を見られていないので憶測ですが)これはアルモドバル監督自身の話なんだなと途中から気が付くとグイグイと物語に引っ張られていき、劇中中盤のおっさん同士のキスシーンでは危うく泣きそうに。素晴らしい映画の特徴に"こんなシーンで泣けてしまうなんて"という場面でポロポロと泣けてくる、があると思うが今回の場合はそれは監督自身の人生だし、プライドだし、リアリティだし、悲しさだし、もう戻らない若いころの記憶だし、表現とは言え見るものに痛切に響き自身の映画監督としての矜持を強く感じた。切なくもかっこいい作品だった。予告編や広告にある"アルモドバル版ニューシネマパラダイス"という売り文句は誰が考えたんだ小一時間レベルで失礼。

 

・デッド ドント ダイ (原題:The Dead Don't Die) - 3.4/5.0 (伏見ミリオン座/2020.7.1)

監督脚本:ジム・ジャームッシュ。2020年。意外過ぎるゾンビ映画。監督の作品を数多くみているわけでは無いのでなんとも言えませんが(観ていたらもうちょっと違った感想かもしれない)、結論からいうと結構微妙。もちろん話口は丁寧だし分かり易いしどう見てほしいかもとてもよく分かる作品だったが、見終わっても、"ん~...で??"という感想しか出てこなかった。要所にクスっとする箇所も散りばめられているが(横の席で必要以上にクスッとを連発するオバサンを含め)段々とそれがより虚しくなってしまった。むちゃくちゃつまらない!訳では一切無いが、観なくてもいい。

 

・ねらわれた学園 - 3.6/5.0 (名古屋シネマスコーレ/2020.7.1)

監督脚本:大林宣彦。1981年。「HOUSE」後かつ「転校生」前という大林映画が完全開花する瞬間、その直前を捉えた一作。角川春樹から"薬師丸ひろ子でハウス的なものを"というオファーの元作られた。(言われてみればそう。)ジュブナイルSF小説の映画化なので基本的には子供も観られる様なキャッチーさと割と前後気にしない展開で作られている。冒頭から超印象的なシーンの連発で早くも大林監督の凶悪なポップさと作家性が炸裂。(原作と脚本のせいも大いにあるでだろうが)後半、物語自体がかなりトリッキーになり"SF"というにも無理な設定に突っ込んで展開されていったりなどは何とも言えないが、クライマックスの花火シーンをはじめ晩年の大林作品にも通じる様な表現姿勢がこの頃から見て取れたりと、黎明期丸出しな感じがファンとしてはグッとくるし信頼できる。大林作品を見たことない人にいきなり勧める事は出来ないがファンになってしまえば何度か見たい作品。薬師丸ひろ子がb