■2020年9月に観た映画
27本、短編2本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)
・悪魔の毒々モンスター (原題:THE TOXIC AVENGER) - 3.6/5.0 (U-NEXT/20209.29)
監督:ロイド・カウフマン。1984年。突如、U-NEXTに未公開作品を含む27本のトロマ製作映画が解禁された。アトロクでトロマ映画特集をやっていたのでそこから興味を持ち、ロイド・カウフマン作品を初鑑賞。B級スプラッターお色気コメディという触れ込みそのままに、プラスしてヒーロー要素をぶち込んだとんでもない代物。全部盛りで好き放題やっていた。スプラッター描写はなかなかのモノでかなり楽しめた。ストーリーもあるような無いような感じで終始特に何も考えずにスッと観られるのはものすごく魅力。モンスターヒーローが最終的に市長までブチ殺し大団円を迎えるが勧善懲悪が過ぎるというか"そもそもそれはもう善ではなくてお前も悪だろう"とつっこみを入れたくなってしまってもご愛嬌(そうなのか)。全然楽しめますけどね。様々なホラーやスプラッターなどのオマージュ描写も散見されて楽しかった。ラストシーンは「悪魔のいけにえ」か?
・砂の惑星 (原題:DUNE) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.9.28)
監督脚本:デヴィッド・リンチ。1984年。"リメイクが年末に公開される"という情報を先に得ていて、調べて観ると"リンチなの?!"と知るという逆輸入パターンで鑑賞。"2時間越えのSF"という時間みただけで個人的にはお腹いっぱいなのですが、リンチならば...と歯を食いしばり再生ボタンを。うーん、よく分かりません笑。所々のシークエンスや描写、狂った設定、悪趣味行動など、リンチ節が出ていて思わず笑ってしまう部分が多々あったのですが、肝心のお話部分が分かるには分かるがスパッと分かり切らず、自分の読解力の無さに泣く。が、調べて観るとどうやらそもそも超長尺の予定のモノを2時間にした上に、ファイナルカットの権利をリンチが持っておらず第三者が編集をしたという事でそりゃわけわかんないわと。それでも最後まで飽きずに見れるのは監督のパワーでしょう。わりと好きではある。(エレファントマンとかよりも好き)
・メメント (原題:Memento) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2020.9.26)
監督脚本:クリストファー・ノーラン。2000年。ノーラン監督長編デビュー作。"数分前の記憶が無くなってしまう妻を殺された男の復讐の話"、そして結末からさかのぼっていく様に進行していくストーリー、カラー部が逆行、モノクロ部が順行、というプロットは非常に面白くデビュー作からノーランカラーというのは出まくっていたんだなと再確認させられる。が、やはりいかんせんどうしても肝心の話が面白くない。種明かし部分や、どうやって勘違いしたのか、とか、なぜ妄想だったのか、あたりのネタがいざ明かされても"へ~そうなんだ"とか"え、普通にそれっておかしくない?何で?"みたいな感想しか出てこない。珍妙なプロットを思いつき映画にしていくだけで勿論価値があるのだろうとは思いますが、"こんな面白いの思いついたぞ!!"だけではやはりどうにもならないのだなという感じ。すごい純粋なんだろうけど、何だか逆に厨二というか子供じみて感じてしまった。モノクロがカラーになり物語が繋がっていく瞬間のカタルシスはとてもあった。テネット楽しみ。
・第七の封印 (原題:DET SJUNDE INSEGLET) - 3.6/5.0 (DVD/2020.9.22)
監督脚本:イングマール・ベルイマン。1956年。「叫びとささやき」ぶりのベルイマン作品鑑賞。視聴環境のせいなのかイマイチ集中出来なかったせいなのか、主だったいくつかのテーマである"死"、"信仰"、"疫病"、"夫婦"、"赤ん坊"、などの"モノ"はシッカリと分かったのだがそれ自体しか入って来ず、それを使ってどういう事を伝えたかったのかがよく汲み取れなかった。死が平等だったり、中世ヨーロッパの十字軍の信仰に纏わる事柄だったり、赤ちゃんは希望だったり、楽天的な夫婦が最後は助かったり。画の強さもイマイチ分からず。前に観たのはカラー作品だったのでその色彩感覚に撃ち抜かれたものですが、今回はモノクロの陰影を生かした色味はクールでかっこよかったが、画的な良さみたいなものは身を潜めている様にも感じた。やはり映画にはある程度の非現実性を求めているのかも知れない("死"を擬人化してる時点で十分に非現実的なのだが...)
・ようこそ映画音響の世界へ (原題:Making Waves: The Art of Cinematic Sound) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2020.9.18)
監督:ミッジ・コスティン。2019年。日本公開2020年。関東では2週ほど前から上映されておりましたがようやく名古屋へも上陸したので初日に鑑賞。映画の起源から、無声映画、トーキー、ドルビーサウンド、CGアニメーションでの音響と、映画の歴史を名作の実際のシーンを切り取り作った人たちのインタビューを共にたどっていく。締めの章として、"サウンド構築の目視化"とも取れる"画面の中にどれだけの情報の音が入っているか"を細かく説明。時系列順に映画音響がどういう道筋をたどってここまで来たのかがよく分かる良い内容だった。ただかなりサラっと表面的に各セクション扱っていくので、見易い事には変わりはないのですが、もっと掘り下げて欲しいなあと思う部分が無くはなかった。タイトル通り、映画音響の世界へ案内する作品という意味では楽しめる非常によく出来たドキュメンタリーだった。(ドキュメンタリーは最高で4.0くらいかなと思うのでかなり満足しています)
・漂流教室 - 3.5/5.0 (YouTube/2020.9.18)
監督:大林宣彦。1987年。楳図かずおの同名名作漫画を映画化。マジで一言、"どうしてこうなった!!"原作漫画のファンなので大林監督がどの様にこの怪作を表現するのかなと思いながら観てみましたが、全く違う解釈の話になっていて驚く。サラっと観ると結構つまんなくて"これは..."という感じだがきちんとしっかりと見てみると監督の遊び心やユーモアが炸裂しまくっておりやっぱりどうあがいても溢れ出す作家性を隠し切れないよなと思う。ただ、話自体は自分の好きな「漂流教室」から大きく逸れており、"子供を扱う事"をしっかりと希望ある作品に仕上げたかったのかなと擁護するしかない感じにはなっている。もちろん監督の大ファンなので言いたいことは理解できるし監督の茶目っ気でこうなったのは非常に良く分かるのでこの点数にした。楳図かずお先生は大激怒だった様ですが...(そりゃそうだ)。
・アンストッパブル (原題:Unstoppable) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.9.17)
監督:トニー・スコット。2010年。「乗り物パニック映画」特集で三宅隆太監督が推薦しており鑑賞。うっかりミスで発車してしまった無人列車(自動ブレーキ無し)が暴走列車と化す。線路の先には大きな街がありこのままだと大被害が...という内容。列車暴走→停めようとする→ミスる→脱線危機を乗り越える→街の直前で停める。という非常にシンプルな内容。主に活躍する男2人は最初は少し仲悪く、列車の中で話していくうちに理解し合い最終的には危機を乗り越えるバディとなるのですが、なかなかそこの描き方がどうにも不十分な様な気がしてちょっと。映像的にもピンチを乗り越えていく所にもハラハラはあり、そういう部分はわりと楽しめたので良かったが人の距離の詰まり方が若干残念でした。気楽に見れて90分台ですごく良いとは思う。
・来る - 3.4/5.0 (Amazon Primvideo/2020.9.17)
監督:中島哲也。脚本:澤村伊智。2018年。中島哲也監督作品は「告白」「渇き。」に続いて鑑賞。「告白」は非常に良く出来ていて作家性も高く、結構好きな1作だっただけにその直後の「渇き。」をちょっと残念に思い期待値若干下がりながら今作。まあ雑に言えば"日本版()哭声"と言った感じでしょうか。おそらく中島監督のフィルモグラフィーは2010年の「告白」から違った方向性に舵を切って作家性を爆裂させていったとは思うのですが、良くも悪くもそれの延長線上にある表現が多く、どのシーンを見ても"あ、告白で見たことある!"的な画面。嫌いではないのですが、こうやって他の作品であの表現を観るとあの作品が如何にバランス良く奇跡的に仕上がっていたかがよく分かる。ラストのお祓いバトルシップ展開などがもう「哭声」丸出しで苦笑いという感じなんですが、壁から大量の血が流れてくるシーンが「死霊のはらわた」だったり、その他にも名作ホラーのエッセンスちょい足しみたいなシーンが多く微笑ましく見れた。ラストのむちゃくちゃなファンタジーになっていく流れはそこまで嫌じゃない。前半の妻夫木君が真っ二つになるところがピークか。
・ボルベール<帰郷> (原題:VOLVER) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.9.16)
監督脚本:ペドロ・アルモドバル。2006年。ペネロペ・クルス主演。アルモドバル作品はこれで何作品か見ていてどれも全部味濃い目スーパー独特な世界観で大好きな作家だが、これは若干弱かったか。ラストの種明かし自体は相変わらずのキモ話でしたが、ポピュラリティを意識したのか全編に渡りわりと普通な画面とお話展開が続いた。ペネロペクルスは早くも母親役で、これまた微妙であまり綺麗に映っておらず残念だった。いまいちノリ切れず。ちょくちょく出てくる"歌唱"シーンは、この作品でも情感たっぷりで結構良かった。スペインの熱風を感じる。"母と娘の秘密と愛憎"的なテーマできちんとアルモドバル的な解釈で描かれており勿論さすがではあるが、個人的にはやっぱりホモとかオカマとかが出て来てもっとラリってむちゃくちゃに気持ち悪い話にして欲しいなとも少し思った。
・(500)日のサマー (原題:(500) DAYS OF SUMMER) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2020.9.15)
監督:マーク・ウェブ。2009年。各所で良いと書かれていたので見るつもりではいたがジャケットからして"あっ...(察"という感じなので敬遠していましたがようやく。とても分かり易く丁寧に作られていて画面もキレイだしシークエンスにも気を遣っていて、わりと観る人を選ばずに楽しませてくれる作品ではないでしょうか。それってかなりすごい事だと思いますが。終始完全に主人公の男目線で語られるストーリーはそりゃ男ですから、共感や実体験と重なって切なく思ったりする場面が数多く用意されていて良かった。最終的にはやっぱり"運命"。もちろん簡単にというか当たり前に使える言葉ではないのですが"何であの時伝わらなかったんだろう"とか"何でああしちゃったんだろう"とか。そしてそれはお互い様でもあるし"あの時うまくいかなかった二人はそういう運命なのかもしれない"。確かにそうだ。そういう経験や自覚がある人も多いでしょう。それだけでもう十二分なポピュラリティを得ている強力な作品だと言える。観る人を選ぶようで全く選ばない無差別に突き刺さるセンチメンタリズム。96分という尺も〇。ジャケットで若干の損をしているか。
・青春群像 (原題:I VITELLONI) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.9.15)
監督脚本:フェデリコ・フェリーニ。1959年。「道」に続き鑑賞。基本クズの男が主人公なのは何なんでしょうか。今作も全くもって良い所のないカス男が出てきて好き勝手やって女が居なくなる状況になってようやく困り果てて自分のクズさを自覚するという流れが全く同じでラストまでなんじゃこりゃ状態でしたが、「道」とは違いまだ真剣に嫁さんを探している所に救いがあった。「青春群像」というくらいだから10代からせめて20代前半の男たちの話かと思ったらがっつりまあまあオッサンが出て来て物語が始まったのでそこも結構面食らった。己の不道徳を指摘され、"俺はもう30だ!子供じゃない!!"とか言って食事をひっくり返すシーンとか、マジで引いた。ノレなさ過ぎる。これ一体どういう人が良いって言ってんだ?5人の男の群像劇のはずが、あまり他のキャラクターにスポットライトが当たらずでイマイチ。フェリーニ作品に続けてこういう感想を持つのは自分の感性がおかしいんじゃないか?と若干心配にはなりますが、どうにもならんもんはならん。という感じでこんな感想です。まだまだ他のを観てみようと思う。
・サスペリア (原題:SUSPIRIA) - 4.0/5.0 (シネマスコーレ/2020.9.14)
監督脚本:ダリオ・アルジェント。1977年。4K修復版。スコーレでは2Kでの上映ですがそれでもかなり綺麗でクリアかつシャープ。そして何よりも色味が素晴らしい。ホラーが美しい画で構築されていくのがもしかしたら一番美しいんじゃないかとすら感じる仕上がりで驚いた。冒頭の首吊りになるシーンだったり、素晴らしいシーンの連続。またゴブリン(というバンド?)の<サスペリアのテーマ>?的な音楽がこれでもかと鳴りまくり、最初はどうかなと感じたけどあまりにもしつこすぎるので最終的にはキタキタ...!という感じで楽しめた。コレがなったら何か悲惨な事が起こりますよ~ってのも70年代、昔ならではのお約束的に盛り上がれて楽しかった。これがカルト的な人気を博していたり、各方面に影響を与えているというのはとても分かる内容だった。"魔女3部作"というのがあるらしいので見てみたくなった。鑑賞後は「許されたこどもたち」でスコーレとズブズブの内藤瑛亮監督のリモートトークもあり、そこでの"ドラマや映画はもちろん製作費や諸々の都合があって作られる画が違う。こうした昔の名作もやはり配信やDVDなどで見た気になっているのではなく、劇場のスクリーンの大きさで見て、作品が本来表している表現を味わってこそ鑑賞したという事になる。映画はスクリーンで見る事を前提に画を作っている"という発言に大変共感をした。昨今では配信でタブレットやPCの画面サイズで見る前提で作られているものも沢山あるだろうが、そうではなかった時代のものはやはりスクリーンサイズで見るのが本当には正解だろう。
・血みどろの入江 (原題:A BAY OF BLOOD) - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2020.9.14)
監督脚本:マリオ・バーヴァ。1970年。『夏のホラー秘宝まつり2020』で3日連続シネマスコーレにて鑑賞。前日の「呪いの館」からは4年。期待して臨んだが、この作品は内容が前2作とは少し指向を替えており、サスペンス色というかどちらかというと"本当に怖いのは人間"的な見せ方に終始している印象。もっと入江を舞台に無残なスプラッター物語が繰り広げられるのかと思いきや(いや実際そうなんだが)、入江の相続をめぐって殺し合いを始めるという地味な内容。マリオ・バーヴァ監督自身の唯一のお気に入りらしく、監督のメッセージとしてはコレがキッパリと描きたかった事なんだろうなあと思うと若干のズレを感じずにはいられない。もちろん、画も良いしオチも意外で面白かった事に変わりはないのだが前2作の様な得体の知れないパワーみたいな物をもっと見たかったなあと少し残念ではあった。
・野火 (洋題:Fires on the plain) - 3.8/5.0 (CS/2020.9.14)
監督脚本主演:塚本晋也。2015年。8月にシネマスコーレで上映やってましたが同日にCSで放送していたのでスルーしてしまったこちらを鑑賞。録画は最高画質で。言われていますが、インディ映画だしデジタルカメラ撮影だし、確かに画は軽い。安っぽいとまでは言わないが軽い。評論とか読むと"そういう部分もあるがそこを含めて今つくるものとして生々しいのでは"という様な汲み取り方もあるっぽいですが、自分も割と軽さにいまいち乗り切れなくはありました。ただそれを上回ってくるメッセージや画面の強さ(と思うと本当に撮影が...とは言いたくなってしまう)とかあって、作品自体としては結構重くズシンとくる内容でした。戦争がどのタイミングであろうともどういう立場であろうとも、終わってその後に生活があろうとも、戦時中を生きるという事は一生拭いさる事の出来ない事実として、人にのし掛かってくるものなんだと改めて感じた。とても一言では表せないテーマ、メッセージを孕んでいる。来年の夏はスクリーンで見てみよう。
・ブレックファスト クラブ (原題:The Breakfast Club) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.9.13)
監督脚本:ジョン・ヒューズ。1986年。先日見た「ブックスマート」の流れでアメリカ青春映画の金字塔のこちらを。古さも手伝ってか、個人的にはあまりノレなかった。まああるあるというかよく分かるんですけどね。大人になってから楽しめるものでは無いのかもしれません。自分の子供とかに見せるには良いのかもしれないけれど。"あれ?さっきまで拒否ってたじゃん"とか"そんなに都合よく仲良くなるか?"とか"そんなんでいいの?!"とか思えてきてしまったので大人になってしまったなあとは感じた。子供の頃って、何だかよくわかんないような事で喧嘩して、仲直りしたり、救われたり、絶望的になったりとかしたもんか。という様な気もする。
・呪いの館 (原題:KILL BABY KILL) - 3.9/5.0 (シネマスコーレ/2020.9.13)
監督脚本:マリオ・バーヴァ。1966年。『夏のホラー秘宝まつり2020』で前日に引き続いてシネマスコーレにて鑑賞。「血ぬられた墓標」からは6年。こちらはカラー作品。これがまた面白かった。マリオ・バーヴァ最高傑作と名高いとの事でしたがまさにその通り、非常に完成度も高く無駄がなく、名シークエンスの連続。後世への影響を存分に感じられる事が出来た。螺旋階段のシークエンスや追いかけても追いかけても同じ部屋に出てしまいついには前を走っている自分に追いついてしまうシーンとか、とても良かった。全てのシーンに繋がりや必然性を感じる事の出来るかなりのクオリティのものを見たと思う。89分が本当にあっという間で全くダレる事なく最後まで楽しめた。全画面美しかった。たぶん書ききれないほどに色々な工夫の施されたシーンがあったとは思いますが、ここではこれくらいにしておく。個人的に一番グッときたのは、廊下や外に立ち込める煙。まさに「時をかける少女」であの怪しい夜の尾道の小道には煙が立ち込めて月明かりに揺れていたなあと思った。
・ある優しき殺人者の記録 (韓題:원 컷 - 어느 친절한 살인자의 기록) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2020.9.12)
監督脚本:白石晃士。2014年。アトロクで三宅隆太さんがおすすめしていたので見てみたシリーズ。これは珍品。結構、いやかなり好きでした。ラストの思いっきり"えー!今までの何だったの!?"という神のやっすいCG描写だったり、中盤のエロ展開描写でダレたりとかまあ突っ込みどころは多々ありますが確かにラストは予想つかない感じだったり、"結局全員死ぬんかい!"という部分だったり、トンデモ映画としてかなり楽しむことが出来ました。鑑賞後に調べると、白石監督作品はももクロ主演の「シロメ」を見た事はあったのですが(全く覚えていない)、さすがホラーを数多く手がけているだけあり何となーくいや〜な感じというか、Jホラー特有のジトッと何かが起こってしまいそうな雰囲気というか。今作はホラーではないですが(序盤の日本人カップルが部屋に入ってくるシーンとか特に)サスペンスな部分とも食い合わせもよく、白石監督にしか撮れないものになっているんじゃないかなと思いました。ラストの展開も好きで、今思い返しても結構楽しめたなと思う。点数もっと高くてもいいけど中盤のエロ展開で結構冷めてしまったので、あれがあるのかと思うとこの点数になってしまう。フィルモグラフィーを見ると本業であるホラー作品もいくつか見てみたくはあるんですが普通に結構怖そうで嫌だなと思っている。
・血ぬられた墓標 (原題:BLACK SUNDAY) - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2020.9.12)
監督脚本:マリオ・バーヴァ。1960年。デビュー作。私自身もマリオ・バーヴァ作品は初。イタリアンホラーの父、そして敬愛する大林宣彦監督のエッセンスの一つでもあるマリオ・バーヴァ。触れないわけにはいかないでしょうと思っていたら『夏のホラー秘宝まつり2020』で上映ということでシネマスコーレにて鑑賞。モノクロ作品。特段モノクロに抵抗がないので普通に見ることは出来たのだが、やはりさすがに1960年の作品(60年前)ということでさすがに響ききらない部分も多く。いまいち本題の理由だったり色々とつっこみたくなる部分も多く。ただ、モノクロならではの陰影がクールだったり、何よりの見せ場であろう人が老けていったり若返っていったりをすごく自然に描写していることに驚く。話も結構入り組んでいてこれから先に生まれたホラーへの影響は想像に易い。
・グッドフェローズ (原題:Goodfellas) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2020.9.10)
監督脚本:マーティン・スコセッシ。1990年。久しぶりにスコセッシ作品。代表作。「タクシードライバー」ぶりに観たので違いが明白だったのですが、やはり76年から90年というとだいぶ印象も変わるもので、どのシーンもかなり映画的でクールでユーモアがあって非常に質高く驚いた(当たり前だろ!)。お話のオチ的には特にな感じでしたが、全編に渡るクールなシークエンス、仕掛けの連続がかなりかっこよかった。演者の演技や配役も完全にキマっており、これ以上無い組み合わせなのではないかと感じた。
・パンダコパンダ 雨ふりサーカス - 3.4/5.0 (U-NEXT/2020.9.10)
監督:高畑勲。脚本:宮崎駿。1973年。「パンダコパンダ」に続いて鑑賞。基本的には前作と同じ設定なので、TVアニメの次週を見ているような感じだった。話は1の方が衝撃的で面白かったかな。水の中をみんなを乗せたサーカス列車が進んでいくシークエンスは子供はワクワクするかも知れないけれど、2011年東北大震災を通過した日本人の我々には別に見なくてもいい作品になっている気がする。1だけで十分。(むしろ1は見た方がいい)
・道 (原題:La strada) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2020.9.10)
監督脚本:フェデリコ・フェリーニ。1957年。某ミニシアターで今月末よりフェリーニ特集(生誕100年)が行われるのでラストの作品だけ見に行きたいなと思い、そのためにはまずフェリーニ作品に触れなければという事でようやく1作目。予定よりはちょっと遅れている。大道芸人の超絶クズ男と障害アリ?な女性とのサーカスロードムービー。ひたすらに主人公の男がクズでクズでもうどうしようもなかった。いつのまにか"女房"になっている感じもすごーく嫌だった。プロット的に障害があるという表現は無かったように思うが、本編を見ているとどうしても「聖者の行進」的なそんな空気を感じられずにはいられなかった。総じて、男のクズさが極々に極まっていてどうにも嫌な気分のままだった。ラストはあの精神状態のヒロインを放置し、死んだことを知ると項垂れる。どこまで自己主義なんだこいつはと腹が立ったし、それを美化している?幕引きも相当どうかと思う。映画としては最後までちゃんと見られたし良かったけど話が絶望的に嫌な感じだった。
・LEGO(R) ムービー (原題:The LEGO Movie) - 3.3/5.0 (Blu-ray/2020.9.7)
監督脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー。2014年。「くもりときどきミートボール」のフィル・ロード、クリストファー・ミラーコンビによるレゴの映画版。全編レゴなので、ストップモーションアニメ的なそれになるんだろうなあと思いながら鑑賞しましたが実際は全然(思っていたよりは)ヌルヌル動くアニメーションで、それがレゴらしさとアニメーションらしさが嘘くさくないラインで描かれたことにまずは感動。その時点でかなりハードルが下がっていると思う。策士。細部にまで"レゴらしさ"を感じられて没入感は高い。とっさに頭をタイヤにするシーンとかも笑ったし、結構面白くはあったのですが、時間が経つにつれ画面に食傷っぷりが...。正直やはりレゴのモーションの限界か、同じようなアクションが繰り返されてかなりの勢いで飽きが来てしまったのも事実。追い打ちをかけるように"普通なことがすごい"とするストーリーの内容に結構しんどくなってきてしまい、最終的には無になった。という感じでしょうか。オチも全然面白くなかったし。う~んとなりながら特典映像とかも見てみたら(こういうのには吹き替えが当てられていないので字幕)、圧倒的に字幕の方が良さそうでショック。見直す気力も起きずにFin.「21~」が好みじゃなかったらこのコンビの作品は違うのかも。個人的に。
・インターステラー (原題:Interstellar) - (109シネマズ名古屋/IMAX/2020.9.7)
監督脚本:クリストファー・ノーラン。2014年。IMAXレーザー版で再上映されていたので鑑賞。これぞ「クリストファーノーランが作った"2001年宇宙の旅"もとい、"2014年宇宙の旅"」だぁ~!と言いたくなった。ノーラン作品って私はそこまで熱中するような感じではないし、大体いつも何かしら文句はあるんですが見たくなってしまうし見たら見たで何だかんだ楽しんでしまうという感じなのですが。この作品は"「2001年宇宙の旅」っぽくて楽しかった。"という感想を書いておきたい。自分が座った席が若干画面に近すぎたせいもありちょっと序盤の説明幕で猛烈にダレて睡魔が襲ってきたのですが、宇宙に出てからの「2001~」っぽさにテンションがあがりそこからラストまではあっという間だった。他のノーラン作品よりも全然楽しめた。はっきりと"「インセプション」後"感もあって監督自身の色がプンプン臭いたっていて良かった。宇多丸さんは「ぼくのかんがえた~」とノーラン作品の事を称しますがまさにその通りで無邪気に作品作りをするノーラン監督のかわいさが堪能できる一作でした。楽しかった。
・形見 - 3.6/5.0 (DVD/2020.9.6)
監督脚本:大林宣彦。1963年。大林監督8mm個人映画、ここから個人映画らしい(本人談)。17分。父親を亡くした親子が墓参りに行き、母は血を吐き墓標を血塗り、子は自然浮遊する飛行機模型にくぎ付けになり追いかけていってしまう映画。2人の視点が交錯し重なり合っていく。かなり"大林宣彦感"のある一作。ここから個人映画というくらいだから自身も分岐点的なものとして捉えているのでしょう。こちらも「大林宣彦青春回顧録」というDVDに収録されており、この為に大林監督が自らピアノ演奏したものが劇伴として当てられている。無声映画。
・だんだんこ - 3.2/5.0 (DVD/2020.9.6)
監督脚本:大林宣彦。1960年。大林監督8mm実験映画(本人談)。11分。女性と女の子が階段でだんだんことマリつきや階段飛ばしで遊んだりしていてマリがポーンと跳ねていき、マリ主観の映像になる。という映画。「大林宣彦青春回顧録」というDVDに収録されており、この為に大林監督が自らピアノ演奏したものが劇伴として当てられている。無声映画。
・グエムル -漢江の怪物- (原題:괴물/The Host) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.9.5)
監督脚本:ポン・ジュノ。久しく手を付けてなかったポンジュノ作品。夜中に気楽に見たいなと思いこちらをチョイス。同監督作品で言うと「スノーピアサー」の様な商業映画立ち位置。もちろん中身や表現は全然違いますが。かなりむちゃくちゃな話だったし、えー!っていう所もありましたけど、よく出来ててとても気軽に楽しめた。映画的な、ポンジュノ的なシークエンスもふんだんに散りばめられておりさすがの一作。怪獣に捕まる女の子役のコ・アソンがオカリナにしか見えなかった。ペ・ドゥナがあまり好きではない。
・WAR ウォー!! (原題:WAR) - 3.6/5.0 (中川コロナシネマワールド/2020.9.4)
監督脚本:シッダールタ・アーナンド。2020年。話題のインド映画を。結構楽しみにいていたし、実際観てもほんとにハリウッド映画ばりの実景映像と役者の肉体美、ボディアクション、ふいに見せるコミカルな表現など結構楽しみながら観ていましたが...途中ウトウトしてきて、最終的には寝た。睡魔と闘いながら鑑賞する事はこれまでにももちろんありますが、何とか自分を律して最後まで見届けるのがいつもなのですが諦めてもう寝てしまった(10分とか?)のは初。うーん、長い。無駄にスローの映像とか勿体付けた映像が多すぎる。濃い味がインド風味なのでしょうが、段々と"遅いなあ"という気持ちになってきて、寝た。つらかった。いつの間にか雪山をカーチェイスしていていつの間にかドカーンと爆発が起きてました。中盤のメロドラマ?展開で一気に心が折れました。まあそのシーンの意味がその後にあったからまだ良かったけど。明るい部屋でDVDでヘラヘラ観るのがちょうど良さそう。
・私が、生きる肌 (原題:La piel que habito) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2020.9.3)
監督脚本:ペドロ・アルモドバル。2012年。相変わらずの入り組み狂ったお話に安心。これまで見てきたアルモドバル作品と比べると若干シンプルめになっている気もしますが、この作品もなかなかに倫理観に訴えかけてくる作品。美しい画面作りやシークエンスも変わらずで一目見ただけで"アルモドバル作品だ!"と分かるのはやはりすごい。アート寄りで一見とっつきにくいのに実はかなり分かり易く作られているのが何作も見てみるとよく分かります。作品つくりをする上でかなり大切なことだし、実はすごい難しい事を毎度高い次元でやってのけるその才能に脱帽。話の面白さは一旦置いておいて、ここにしかないものを見せてくれるアルモドバル監督。すっかりファンです。この作品は個人の好みで言えば他作品よりは落ちるかな。同性愛者が出てこない。(いや、出て来てるのか?w
・の・ようなもの - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.9.2)
監督脚本:森田芳光。1981年。「家族ゲーム」の森田芳光長編映画デビュー作。駆け出し落語家・志ん魚とソープ嬢と落語研究会の女子高校生たちのお話。話に大きく分かり易いオチや所謂感動もの的なものはなく、ダメ落語家志ん魚の恋、挫折、成長を描いている。でもヤマ無しオチ無しという不思議な作品。今まさに観ている事や話されている事柄の少し先の話がすぐ直後のシーンで表されたり、時間間隔がふわっとしている。登場人物たちの演技も不自然だし、数々のシーンも繋がっている様で繋がっていない、でも繋がっているという意味があるんだか無いんだか重要なのかどうなのかもよく分からせる気が無いように感じる。それでも何となーく今後も見たくなりそうで不思議。
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