■2020年11月に観た映画
16本 (劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)
・ペパーミント キャンディー (原題:박하사탕) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2020.11.30)
監督脚本:イ・チャンドン。1999年。02年の「オアシス」に続き鑑賞。作品の順番としてはこちらの方が古く、日本と韓国の共同制作で韓国の日本文化開放後初の作品。イ・チャンドン節盛り沢山で重厚な仕上がり。シンクロするオープニングとエンディングは、結末を先に見せて時系列的には戻っていく(時系を"辿っていく"という方が正しいか)構成は見ごたえ充分、インターバル的に主人公がオープニングで轢かれたであろう列車が戻っていく映像が挟まれるのだが、その映像を見ていると周りの風景(というか映像自体)が逆行して巻き戻しの映像だと気づいた瞬間の"シャレてんねえ~!!"はさすが。だが最後まで観て冷静になると話自体の面白さというか好み度は低いかなという気持ちに。素晴らしい構成、脚本、編集、演技にこの点数を。
・ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 (現題:The Post) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2020.11.29)
監督:スティーヴン・スピルバーグ。2018年。「レディプレイヤー1」と同年公開の真逆の1作。どうしたのと言うくらい正反対な作品を同時製作した事に驚きますが(しかも6か月で製作したらしい!)、完璧にスタイリッシュかつ、怒り狂った作品を叩きつけられて痺れた。【スピルバーグの作品で「最も短期間で完成」した作品となり、「この映画は私たちにとっての『ツイート』のようなものです」とも発言をしている。(Wikipediaより)】とあるように、本当にもうそのツイートそのままと言うかスピード感重視で、この超超巨匠クラスになってもなお、18年のアメリカで伝えないとならない事を、という熱を持って作ってきちんと公開出来るのがやはり凄まじいなと感じた。個人撮影の映画監督ではないし勿論そういう作品の質感でもないのが非常に見る側にとっても贅沢だよなあと思う。良い作品を観た。
・22ジャンプストリート (原題:22 Jump Street) - 3.6/5.0 (DVD/2020.11.28)
監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー。脚本:マイケル・バコール。2014年。「レゴムービー」「くもりときどきミートボール」「21ジャンプストリート」と全て字幕で鑑賞してきたので今回は吹替にて鑑賞。ギャグがあまり笑えないのは変わらず。意味は分かるし笑える場面なんだろうなというのは理解できるのですが根本的にズレてるのかあまり笑う事は無かった。ストーリー的には「21~」とほぼ同じ流れで、今年公開だった「ブックスマート」などアメリカ青春映画の新たな轍を作った事に間違いないよなあとは思う。しかしながら構成や脚本自体はしっかりと作り込まれており、基本的にはちゃんとしっかりと楽しめる作品。伏線や面白みみたいな部分もきちんと計算されて作ってあるので安心して観る事が出来る。中盤のドラッグ描写(もはや恒例?)は若干弱かったか。
・オアシス (原題:오아시스) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2020.11.25)
監督脚本:イ・チャンドン。2002年。「バーニング劇場版」に続き同監督作を。脳性麻痺の車椅子の女性と軽度の知的障害者の男性の純愛物語的な。一応。話とか映像とか映画としてすごく良く出来ていたし、普通に感心しながら見れたし、単純に良かったのでもう少し点数高めにしてもいいのかなとは思ったがどうしても物語の展開に対して都合のいい所が多すぎで本格的にはノリ切れずこの点数に。まず基本的な馴れ初め?のアレでいいの?感もぬぐえず。障害の妹の恋人になったのが自分たちが事故をされた犯人だったり、とめちゃくちゃ歪んだプロットが面白くはあったが主人公のしてきたことのむちゃくちゃさに己の倫理観が勝ってしまった。ただ、どうしても乗り越えられない事に対してもがく様や、きっかけはどうであろうと人を愛するという事の超越できるパワーだったりとかは本当によく描かれていて、ある意味美しさを含む映画だとは思うので好きか嫌いかは置いておいてお話として、映画として、一度は見ても全然良いんじゃないかと思う。
・カジノ (原題:CASINO) - 3./75.0 (Blu-ray/2020.11.22)
監督脚本:マーティン・スコセッシ。1995年。先日の「ウルフ オブ ウォールストリート」に続きスコセッシ作品を。「グッドフェローズ」もそうですが、大筋はかなり似ており、ギャングとか今回で言うとカジノで儲けている悪い奴らに自分語りをさせつつも色々な事象をそのナレーション込みで魅せていく、というやり方。(それがいつ観ても結局面白いのですが。)短編的なエピソードの積み重ねで全体の物語を推進していくやり方は、各短編それぞれに違った魅力が無いと画面が持たないと思うのですが、それを何作もサラっとやり続けるスコセッシに脱帽。普通に面白いっす。上の「ウルフ~」や「グッドフェローズ」の様に爆発的に面白いシーンが個人的には無かったのでこの点数になってますが、やっぱり安心して楽しんで観られる作品。すごいぜ。
運び屋 (原題:The Mule) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2020.11.21)
監督:クリント・イーストウッド。脚本:ニック・シェンク。2019年日本公開。イーストウッド主演監督作品。長い作品では無いがスーッと集中して観る事が出来た。実在の事件を元にしてはいるがおとぎ話的な"面白作り話(コメディとまでは言わないが)"な内容。ジョークや小さなセリフ一つ取っても全体的に非常に気が利いていてさすが。夫として、父親としてはまるでダメなベテラン花ディーラーであった主人公が余生と共に家族の信頼を取り戻そうと奮闘するが...という感じですが、基本的には能天気なのでいろんなものに巻き込まれ流され最後はやはりな展開。塀の中でデイリリーを育てるイーストウッドのラストカットには"またやるぞコイツは"と突っ込みを入れたくなるような味わい。最後までダメな男の物語でした。中盤あたりの、主人公を捜査する警官と朝のダイナーで会って会話するシーンがとても良かった。
・ファイナル デッドサーキット 3D (原題:The Final Destination4) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2020.11.20)
監督:デヴィッド・R・エリス。脚本:エリック・ブレス。2009年。「ファイナルデスティネーション」の第4作。今回の監督は2のデヴィッド・R・エリス。基本的にはどれも面白いですが、123と段々と面白さが減っていった様に感じている身としてはこの4は、3で微妙に感じていた部分が工夫によって改善されて良かったと感じた。公開当時は3Dでの上映だったようで(その部分で表現の足かせというかもちろん劇場で見ればよい効果なんでしょうが)、そこに表現の縛りが出てくる様な気がしてどうなんだろうと思いながら2Dでの鑑賞でしたが、オープニングからかなり楽しく見らる事ができた。過去最高に都合よく死んでいったり、"えーこここんな簡単に済ませちゃうんだ"とか残念な部分はありましたがそれでも十分に面白かった。何より80分台と尺が短いのが最高。
・抱擁のかけら (原題:LOS ABRAZOS ROTOS) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.11.18)
監督脚本:ペドロ・アルモドバル。2009年。相変わらずのアルモドバル節全開で楽しんで見る事が出来た。今回ももちろん画面の美しさは健在。それに付随して、様々な不道徳やダメなシーンが連発されていきます。不倫の監視ビデオを撮らせて読唇術で内容を読み解いていくくだりとか、よく有る事なのかも知れませんがそれをオヤジ(自分より3周りくらい若い女が本気なワケないだろ気持ち悪い)が嫉妬にまみれながら追及していくくだりとか、相変わらずの捻じれっぷりで安心。アルモドバル作品は、登場人物がだいたいダメで変やつばかりで最高。いつも楽しいのは個性的な変や奴らと、その捻じれて煮詰めて濃い口になりすぎた各行動。やっぱり映画は不道徳でなくちゃと改めて思う。それでもなんか最後は胸を打(ったり打たなかったり)つ。そして映画の中で映画を観る映画は最高。
・オペラ座 血の喝采 (原題:TERROR AT THE OPERA) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2020.11.17)
監督脚本:ダリオ・アルジェント。1988年。「サスペリア」のダリオ・アルジェント作品。サスペリア以外の作品を観るのは初。奇妙かつも美しい映像美のホラーを期待していたが、まあ大筋はその通りですが期待とは僅かに違ったかなという感想。拷問の一種なのか、目の下に針を並べて目の前で猟奇殺人を見せつけ苦しめるという追い詰め方は監督の狂いっぷりが存分に楽しめる。スプラッター描写もばっちりでしっかりと破壊&出血を描いた。その他にも全編に渡り基本的にはきちんと丁寧に撮られており、美しい画面は興味を持って見進める事が出来る。がどうしてもお話的な求心力に欠けるのでイマイチな点数を付けざるを得なかった。ラストは妙なハッピーエンド感に包まれ終わるなんとも不思議な一作。ファンならば観ても良いのでは。
・ウルフ オブ ウォールストリート (原題:The Wolf of Wall Street) - 4.2/5.0 (Blu-ray/2020.11.15)
監督:マーティン・スコセッシ。脚本:テレンス・ウィンター。2014年。3時間弱の長尺作品でしたがダレずに完走。かなり面白かったと思います。主演のディカプリオもだらしないカラダが最高にハマってて、彼の軽率な雰囲気が物語をドライブさせていく様は非常に良かった。中盤のLEMONというドラッグをキメてどうにもならないくらいラリってしまうシーンがオチまで秀逸。作品全編に覆うダウナーな空気がディーラードラッグセックス映画とは反対の位置にありながらも加速していく構図も面白かった。オチのブラックさ、メッセージ性も含めて着地も素晴らしい見事な1作。
・アタック オブ ザ キラートマト (原題:ATTACK OF THE KILLER TOMATOES!) - 2.6/5.0 (U-NEXT/2020.11.14)
監督:ジョン・デ・ベロ。1978年。シネマスコーレのプログラムにて上映されており見に行くつもりがタイミングを見誤り見られなかったのでU-NEXTで鑑賞。カルト映画なのでそもそも...という部分もあるが、基本的には面白く、ない。というか面白いとか面白くないというそういう次元の楽しみ方ではないとも思う。トマトがもっと出てくるのかなーと思ったら出てこず。トマトに殺させる設定なら肝心のその部分くらいはきちんと描いてくれ!となった。謎に通販の様なクレジットが流れる箇所(しかも2回も)もどうリアクションしていいのか分からず。つまんない奴らが固まってふざけて盛り上がってる様な空気を感じてしまった。
・劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 - 3.6/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2020.11.13)
原作:吾峠呼世晴。監督:外崎春雄。2020年。これだけ動員している作品をリアルタイムで観ておかない手はないだろうという事で一応、鑑賞。劇場版鑑賞に先立ってアニメ版(26話!)も完走。修行だった。言いたいことは山ほどありますが、とりあえずはアニメーションとしてしっかりと面白い画が展開されている事が非常に良かった。作画はufotable。アナログ的な線と生命力に滾る太い線にCGアニメーション的なものが混ざり合うオルタナティブな画面。そこにキャラクターたちの暑苦しいまでの熱演が乗っかって"意味はわからんがとにかくすごい自信だ!"ばりの説得力。ヒーロー。リーダー不在の今の時代に大多数の人間のよりどころになったのかなとは思う。ただ、ひとつ。死を美化する作風は子供も見る作品としてはいかがななものかなと。レイティングを上げるなり必要だったのではないかと思います。その辺りが、良かったとはいえ言っても"深夜アニメ"的な大枠からははみ出しきれなかった様に感じるしアンチ深夜アニメ的な思想のある自分にはちょっとなあと思う部分でもある。現状のレイティングで公開した事で大ヒットにつながり日本中のシネコンを救ったことは事実だし、またこの鬼滅ブームで初めて映画館を訪れたであろう人間を増やした功績は、デカい。泣けると言われている煉獄さんのシーンも、この150分?くらいで掘り下げ描写の甘いキャラクターにそこまで感情移入出来るのが、謎。
・ROMA - 3.6/5.0 (Netflix/2020.11.10)
監督脚本:アルフォンソ・キュアロン。2018年。話題の作品でしたがネットフリックス未加入のため見られずで"いつか見られたらな"くらいで思っていたらたまたま機会があったので鑑賞。全編モノクロで綴られる映像は美しく、画面を眺めているだけでも十分なほどしっかりと作り込まれた画面構成。物語自体に大きな山というか盛り上がりが欠ける内容であるためお話的なカタルシスはあまり感じられることが無く、(こちらの勝手な)イメージとは違いそこは何となく残念だった。
・ファイナル・デッドコースター (原題:Final Destination 3) - 3.3/5.0 (U-NEXT/2020.11.4)
監督脚本:ジェームズ・ウォン。2006年。ファイナルデスティネーションシリーズで唯一1の監督、ジェームズ・ウォンが監督をした作品。基本的には舞台装置が変わるだけで、"死亡予知→乗り物降車→死亡回避→死からは逃れられない→回避した人たちが次々死んでいく"という流れは同じ。というか同じ話。ですが、ここまで3作観てきましたが"死に方見本市"である「ファイナルデスティネーション」の死にっぷりシリーズを見進める毎に脆弱化しているなという印象。アイデアの枯渇と言えばそうなのかも知れませんが、傑作(?)だった1を作り上げたジェームズ・ウォンでもこうなってしまうのかと感じた。ただもちろん良かった所も。無人のトラックと事故して後頭部~脳天をグリングリンに切り刻まれるシーンや、日焼けマシーンで死ぬ2人の展開や、死体入りで燃え盛る2台並んだ日焼けマシーンが次の瞬間には葬儀での棺になったり。棺シーンは非常に映画的でそういうのをスッと盛り込んでくるあたりが素晴らしかった。(が、それが続けばね....というお話)まだ2の方が楽しめたかな。
・朝が来る - 3.7/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2020.11.2)
監督脚本:河瀨直美。原作:辻村深月。2020年。予告編を見て少し気になってはいたものの劇場鑑賞を迷っていたら"2020年米アカデミー賞国際長編映画賞日本代表作品に選ばれた"という記事を見て劇場鑑賞してみる事に。不妊治療に悩み養子縁組を選択する夫婦とその養子の親である中学生の女の子、2つの視点で"子供を産む"という事をテーマに劇中人生を紡んでいく。双方に理由があり、双方に想いがあり、という事なのですが2つの視点をしっかりと丁寧に掘り下げているせいか何だか冗長に感じてしまった。話自体も別にそこまで悪くもないし、かと言って良くもないしという感じのどっちつかず感を感じずにはいられなかった。夫婦のシーンではきちんと遠近でのレンズボケの描写で非常に劇映画的な佇まいを見せる一方、中学生母の養子縁組施設などのモキュメンタリータッチなシーンでは主にパンフォーカスの画面でリアル感を追求する様に表現をした点は好感が持てた。いかんせん大風呂敷を広げたわりには話自体(のオチというか明快なラストも無く)微妙だった。まあ実話風の結局のところモキュメンタリードラマ作品なので仕方ない部分ではあるのですが。集中して最後まで観られたことに間違いはないが段々と尻すぼみな感じも否定はできない。あ、あと主題歌が悲惨でだいぶテンション下がった(ただの主題歌ならまだしも劇中の様々なシーンで登場人物に口ずさませて何とも。)。エンドロール最後の演出なんてちょっと不快感を覚えたレベル。
・天国にいちばん近い島- 2.8/5.0 (CS衛星劇場録画/2020.11.1)
監督:大林宣彦。脚本:剣持亘。1984年。ずっと後回しにしてきた作品を。タイミングがあったので(ジャケットとかタイトルからしてつまらなさそうじゃん...?)。えーっと、予想通り何とも言えない作品。原田知世・高柳良一という所謂「時かけ」コンビかつ、「時かけ」で原田知世がブレイクした後の作品なので当時これを見てがっかりした人も多かったのではないでしょうか。(84年の時世を2020年に語る人) ニューカレドニアの美しい海や森などが堪能できると言えばそうなのですが、それ以外に見どころは特になく...原田知世が良い感じくらいしか取り立てて語れる様な部分もなく。この作品の後にニューカレドニアに観光ブームが起こったらしいので何だかんだ言っても映画に力があった時代なのかなーとは思う。そもそもそういうスポンサー映画なのかなとも。大林宣彦信者の私ですが、これは大林作品で一番つまんなかったかも。
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