アジアのお坊さん 番外編 -4ページ目

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

「一休も 破れ衣で 出る時は 乞食坊主と 人は言ふらん」

                 一休和尚

 

「袈裟ころも 有難そふに見ゆれども これも俗家の 他力本願」

                 蜷川新右衛門

 

          ー 「一休蜷川狂歌問答」より

 

 

先日、とある禅寺を参詣したら、門前に一休道歌が貼ってあったので嬉しくなった。

 

そこで久々に一休さんのことをインターネットで検索してみたら、アニメの一休さんのことや蜷川新右衛門さんのことを書いておられるブログなどがたくさんあることに気付いて一層嬉しくなったので、アニメの一休さん関連表を更新させて頂くことにした。

 

アジアにおけるアニメの一休さんに関しては「ホームページ アジアの一休さん」に詳しく書かせて頂いているので、それ以後の情報などに関しては以下の表をご覧ください。

 

・2012年5月7日放送のフジテレビ「世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?」という番組。

タイのチェンマイのお寺で、お坊さん達の学校の食堂のカードにアニメ「一休さん」が描かれているとのこと。

 

・2013年7月27日放送のNHK「海外ネットワーク」。

ラオスの子どもたちの内の一人が、好きな番組は「一休さん」だと答えた。

私が以前に東映アニメーションに問い合わせた時には、過去にアニメの「一休さん」が放映された国にラオスは入っていなかったので、インターネットで調べてみたら、現在、ラオスではタイのチャンネルがたくさん放映されているとのこと。

 

・2014年に中国でアニメ「一休さん」の劇場版映画が公開された。

2012年頃から頻繁に公開予定のニュースが流れていた頃に東映アニメーションに問い合わせた時点では、まだ公開が未定だったが、2014年にようやく公開の運びとなった。

 

・2016年 NHKで「オトナの一休さん」が放映され、話題になるが、明らかにアニメの「一休さん」へのオマージュやパロディが含まれていた。

 

・2017年に「水曜日のカンパネルラ」というバンドが「一休さん」という曲をリリース。

 

・2017年にアニメ「一休さん」に関する詳しい記述を含む「テレビ番組海外展開60年史」(大場吾郎著・人文書院)という本が出版された。

東映アニメ「一休さん」が1980年代にタイや香港で放映後、中国で「聡明的一休」というタイトルで放送されて人気を博し、2014年に中国で劇場アニメ化されたことも述べられている。

 

・「BRUTUS」の2017年2月1日号「みんなのZEN。」という特集に「最初に触れた禅は、アニメ『一休さん』でした」という章があり、アニメ版の一休さんの絵が大きく使われていた。

 

 

・2018年 携帯電話ドコモの宣伝で、アニメ一休さんの音楽と共に着ぐるみの一休さんを使った内容のテレビCMが放映された。

 

・2021年5月、伊藤園のCMにアニメ一休さんの画像と曲が使われた。

 

 

・2023年7月のNHKの国際ニュースで、タイのスパンブリーにあるワット・カオディン寺院の特集で、ワット・カオディンの境内各所には鳥居を始めとした日本的な文物や趣向が満ち溢れているという報道の中に下のような映像があった。

 

・2024年3月 アニメ「一休さん」の主題歌の替え歌が「サントリー天然水FRUIT-SPARK」という商品のCMに使われた。

 

 

                                                     おしまい。

 

 

日本人バックパッカーや海外邦人関係の事件一覧を更新させて頂きます。

 

 

   ※ ※ ※

      

 

●97年7月 ネパールの仏跡ルンビニの日本山妙法寺の僧侶が射殺される。

●98年6月 チベットで日本人男子大学生が行方不明。
●98年12月 インドのデリーで日本人男子大学生が殺される。
●99年3月 トルコで日本人女子学生が不明。

●99年4月 ネパール・カトマンズのホテルで24歳の日本人男性が墜落死。
●2001年2月 バリ島で日本人女性が殺される。

●01年4月 トルコで卒業旅行の日本人女子学生4人が交通事故に遭い、死傷。

●01年11月 タイのチェンマイのダムで65歳の在留邦人男性の死体が発見。
●02年4月 銃撃戦の直後にエルサレムの聖誕教会を訪れた日本人男女2人が厳重注意を受ける。
●02年5月 ニューカレドニアのイルデパン島で日本人女性が殺害。07年と09年に容疑者2人に、それぞれ無罪判決。

●02年6月 バンコクの運河で二人の邦人男性が溺死。のちにタイ人とミャンマー人の二人が逮捕。

●02年7月 日本人女性ジャーナリストのY氏が、アフガンで兵士に鞭で殴打される。

●02年11月 アユタヤからバンコクに向かうバスが事故。日本人11人が重傷を含む被害。
●02年12月 フィリピン・セブ島を旅行中の日本人女性2人が強盗を撃退。
●03年1月 イースター島のモアイ像に落書きを彫った日本人男性が逮捕。
●03年1月 バンコクのチャオプラヤー河ラーマ8世橋下の運河で24歳の日本人男性の遺体が発見。
●03年6月 パキスタンのラホールの空港近くに日本人男性の遺体。

●03年6月 インドネシア・ジャカルタ近郊で48歳の日本人男性が22歳のインドネシア人女性を殺害。

●03年7月 タイ・パタヤのマンションで日系企業に勤める37歳の邦人男性が変死。

●03年11月 JALに務める日本人客室乗務員女性がバンコクのタクシーの運転手に腹部を撃たれる。
●04年3月 イラクのサマワで日本人男子学生2人、タクシーとのトラブルで逮捕される。
●04年4月 イラクでボランティアの日本人3人が拘束され、後に日本国内でバッシングされる。
●04年10月 香田証生さん、イラクで殺害される。
⇒参考文献:「香田証生さんはなぜ殺されたのか」下川裕治(新潮社)は、香田さん事件 をバックパッカーの観点から考察した著作。
●04年12月、シドニーのバックパッカー向けゲストハウスで、日本人旅行者の男性が、同宿のオーストラリア人旅行者の男性を刺殺。
●05年8月 パキスタンで自分のカメラを現地人の短銃と交換した日本人男性旅行者が逮捕。

●05年9月 ケニアのマサイマラ国立保護区で外国人観光客が斧を持った男に襲われ、日本人男性一人が負傷。
●05年9月 教員の日本人男女2人がアフガニスタンで殺害。
●05年11月 インドのジャム・カシミール州で日本人ジャーナリスト男性のS氏が武装グループに襲われて負傷。

●05年12月 22歳の日本人男子大学生がトルコで行方不明。
●06年4月 タイのパトゥムタニで50代の日本人男性2人が殺害される。

●07年2月 ギニアで民俗太鼓「ジャンベ」を習う日本人旅行者たち数名が、日本大使館の退避勧告に従わず、大使館で保護。

●07年9月 ミャンマーのヤンゴンで、デモ取材中の日本人ジャーナリストが狙撃され死亡。
●07年10月 イランで日本人男子学生が誘拐される(08年6月に解放)。
●07年11月 タイのスコタイで、ブログなどで旅の足取りを発信していた日本人女性の遺体が発見。

●07年12月 タイのチョンブリで67歳の在住日本人が惨殺。
●08年5月8日 イエメンで日本人女性2人が誘拐。
●08年8月4日 パレスチナ自治区で日本人フリーライターが拘束。
●08年8月12日 バンコクで長期滞在者の日本人男性が行方不明。その後、日本で貯金が引き出され、死体で発見。犯人は日本人男性2人。
●08年8月28日 アフガンでタリバンに拉致されていたNGO職員の男性、遺体で発見。
●08年9月 エチオピアで活動中の「世界の医療団」の日本人女性医師が誘拐。10月にソマリアで解放。
●09年8月 モンゴルのウランバトルで日本人女性教師がモンゴル人男性によって殺害。
●09年9月 バリ島で日本人観光客の女性が殺害。
●09年11月 イエメンでJICA関係の邦人が誘拐。
●09年11月 タイのプーケットで75歳の在留邦人の男性が殺害。
●09年12月 バリ島で在留邦人の女性が殺害。
●10年4月 アフガニスタンで日本人ジャーナリスト・T氏が誘拐。ちなみにこの方は、それまでに海外で何度もトラブルに巻き込まれていたお方。
●10年4月 チリのパタゴニア近郊のパイネ国立公園で、アフリカ、欧米を1年近く旅行中だった20代の日本人男性バックパッカーが遺体で発見。遭難の可能性も。
●10年4月 日本人カメラマン、バンコクのデモに際し、死亡。
●10年12月 インド・ヴァラナシのガートでテロ、邦人一人を含む多数が死傷。
●11年2月 ベトナム・ハロン湾の観光船事故で日本人男子大学生を含む乗客が、複数死亡。

●11年6月 ネパールで日本人女性が遭難。タケノコを食べて後に生還。
●11年9月 ミャンマーで一人旅の日本人女性が、バイクタクシーの運転手によって殺害。

●11年10月 インドネシア・ジャワ島でツアーバスが事故に遭い、日本人女性が被害に。

●12年5月 ドバイで日本人女性客室乗務員がチュニジア人の男に絞殺される。
●12年5月 ロシアのウラジオストクから東シベリアまでバイクで横断旅行中の日本人男性が刺殺される。

●12年8月 ルーマニアで日本人女子大生が、ブカレストの空港で声を掛けてきた男の車に乗せられ、近くの森で殺害される。

●12年8月 シリアで日本人女性ジャーナリストが銃撃に巻き込まれて死亡。

●12年11月 台湾のタロコ渓谷で62歳の日本人男性が転落死。

●13年3月 カンボジア・シアムリアプの遊園地でジェットコースターが脱線し、邦人女性が死亡。

●13年9月 トルコのカッパドキア付近で、日本人女子大生2人が襲われ、一人が殺害、一人が重体。

●13年9月 バングラデシュのコックスバザールからダッカに向かうバスがチッタゴンでデモに遭い、一人旅の日本人女性が重傷。

●13年10月 カンボジアのプノンペンで日本人女性が、9月の末に強盗に足を撃たれ負傷。10月に入って、カンボジア人の男二人が逮捕。 

●13年11月 コンゴの日本大使館で務めていた元3等書記官の20代の日本人男性が、大使館に放火。

●13年12月 エクアドルで新婚旅行中の日本人夫婦が殺害される。

●14年1月 ローマの地下鉄でスリを繰り返し、「地下鉄の忍者」と謳われた日本人男性が逮捕。

●14年8月 カナダでバス事故があり、日本人学生2人を含む観光客56人が重軽傷。

●14年10月 バンコク在住の日本語教師(79歳男性)が行方不明の後、殺害され、バンコク郊外の運河で発見。

●14年10月 日本人女性が iPhone(アイフォン)を密輸し、上海の税関に摘発される。

●14年10月 ネパールのヒマラヤ・アンナプルナで日本人男性が雪崩で死亡。

●14年10~11月 日本人ジャーナリスト2人がシリアで相次いで拘束され、翌年1月公開処刑される。

●15年1月 インドのブッダガヤ近郊の村で日本人女性旅行者が監禁暴行される。

●15年3月 イラク北部クルド人自治区にトルコから入国した日本人男性が不審者と疑われて拘束される。

●15年9月 ジャカルタのマンションで、日本人女性がマンション警備員に金品目的で殺害される。

●15年10月 バングラデシュで農業開発に携わっていた日本人男性が射殺される。

●15年11月 バングラデシュに10年滞在していた日本人女性がダッカの民家で死体で発見。

●16年2月 グアムで70歳の日本人男性がホテルに所持品を残したまま行方不明。

●16年3月 タイのリゾート地ホアヒンのビーチで、社員旅行の日本人男性約30人が泥酔の上、全裸に。タイ中で大問題に。

●16年9月 カナダに語学留学中の日本人女性がバンクーバーで殺害される。

●16年11月 インドのゴヴァラム・ビーチで日本人女性旅行者が暴行される。

●16年11月 バックパッカーとして世界各地を旅して、旅ブログの発信もしていた一橋大学の日本人学生がコロンビアで殺害される。

●16年12月 フランス留学中の日本人留学生女子がブザンソン市で行方不明に。

●17年4月 マルチ商法詐欺の日本人女性62歳が、38歳と年を偽り、タイ人男性と交際、タイ当局に逮捕される。

●17年9月 釜山の海雲台で40代日本人女性の旅券が入った持ち物が見つかり、女性は行方不明。

●17年9月 バリ島で70代の邦人夫婦が殺害される。

●17年11月 アユタヤで日本旅行のツアーに参加した日本人男女4人が移動中の自動車で事故に合う。

●18年2月 東シベリアのオイミャコン村を自転車旅行していた日本人大学生グループがキャンプ中に動けなくなり、地元の人に助けられる。オイミャコン村は世界最冷寒の地として有名だった。

●18年11月 タイのバンコクの両替所で、旅行資金が底を突いた33歳の日本人旅行者男性が強盗に及んだものの、そのまま両替所に閉じ込められて未遂のまま逮捕され、日本でもそのニュースが報じられた。

⇒旅行資金のなくなったバックパッカーが罪を犯すというケースはままあるが、現地の悪徳旅行業者などと結託して同国人を騙すようなパターンはよく聞くものの、こういった、普通の旅行者が直接、犯行に及ぶような事件は意外と珍しいので、興味深く思った。

●19年4月 十数人の日本人男性がタイのパタヤで共同生活を送り、日本国内の日本人に向けて、振り込み詐欺を働き、逮捕。

●19年11月 バリ島のマンションで日本人女性が襲撃され、防犯カメラの映像が日本のテレビでも放映される。

●19年月アメリカ・ユタ州のアーチーズ国立公園において日本人家族が転落事故に遭う。

●19年11月 2007年にタイのスコタイで日本人女性バックパッカーの方が殺害された事件について、10年以上たって、犯人がほぼ特定される。

●19年12月 タイで日本人4人の乗る車が事故に遭う。

●19年12月 アフガニスタンでNPO法人「ペシャワール会」代表の中村哲氏が銃撃されて死亡。

●19年12月 タイのバンコク在住の日本人男性が刃物で刺される。タイ人容疑者2名は外国人ばかりを狙って強盗に及んでいたとのこと。

●20年3月 インドネシア・バリ島沖の離島・ヌサ・ペニダ島で、22歳の日本人男性が海岸で高波にさらわれて転落し、溺死。

●20年8月 フィリピンで80代の日本人女性が殺害(2021年2月に犯人逮捕)。

●20年 11月 ブラジルで現地少年による強盗殺人。被害者は在住の40代日本人女性。

●21年 4月 バンコクで駐タイ日本大使のN氏が所謂「ナイトクラブ」でコロナに感染。大批判を浴びる。

●21年 4月 ミャンマーで日本人ジャーナリストのK氏が拘束。K氏は2月末にもミャンマーで一度拘束されていた。

●21年 4月 タイ・チョンブリ県の飲食店で午後9時半以降に飲酒を含む宴会をしていた日本人9人が、コロナ対策の禁止令違反で逮捕。

●21年5月 メキシコ北西部ティフアナでラーメン店を経営する日本人男性が、知人と見られる複数の男に殺害される

●23年7月 タイ北部チェンマイのホテルで31日午前、日本人女性が首に携帯電話の充電用のケーブルが巻かれた状態で死亡しているのを一緒に宿泊していた日本人の夫が見つけた。

●23年9月 ハワイの税関で、いかがわしい目的かと疑われて入国を拒否される日本人女性が増えているとの報道。

●23年9月 「持続化給付金」詐取の疑いで日本で逮捕状が出ていたものの、カンボジアからタイへ逃げていた日本人男性。不法滞在の疑いで当局に身柄を拘束されて、日本に強制送還される予定だったが、入管から車両で逃走。その後、パタヤで身柄を確保される。

●2024年10月 マレーシアのキャメロンハイランドに向かっていたツアーバスが事故に遭い、日本人旅行者が複数死傷。ちなみにキャメロンハイランドはタイのシルク王、ジム・トンプソンが謎の失踪を遂げた場所でもある。

●2024年12月 バンコクの(バックパッカーが多いことで知られる)カオサン通り付近にあるエンバーホテルで火災があり、日本人2人も被害に遭う(1月に一人の死亡が確認される)。

●2025年1月 タイ北部・チェンマイのターペー門広場で、カウントダウンイベント後に禁止区域でランタンを飛ばそうとした日本人男性が制止した警察官に挑みかかり、罰金刑に処される。

男性はその後あらためて警察に謝罪。冷静かつ温厚なタイ警察に称賛の声ならびに当該の警察官にチェンマイ警察から報奨金。

●2025年2月 タイ国境近くのミャンマー・ミヤワディを拠点にっした特殊詐欺事件において、日本人も多数加害者集団に加えられていた。ちなみにミヤワデイはタイから日帰り入国できることでバックパッカーに知られており、2013年にはその他のタイ・ミャンマー国境地域と共に、入国条件が緩和されている。今回の事件におけるアジトは、この時期以降に規模が拡大して行った模様。

●2025年3月 中国の万里の長城で日本人男女2人が尻を出した動画を撮影・配信し、拘束された上、国外に強制退去。

●2025年6月 ペルー最高峰のワスカラン山で、30代と40代の日本人女性2人が遭難。二人とも登山経験が豊富だったが、その内の野外救急法団体に所属する医療アドバイザーの女性が死亡。

 

  

                   

 

「旅行人」2006年春号に掲載して頂いた

「バックパッカーのためのアジアお坊さん入門」を大幅加筆し、

2019年に全面的にリニューアルした

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」も是非ご覧ください。

「売れない芸人」という表現があるように、芸人の仕事が少なくて食べるためにアルバイトをしていたりすると、どちらが本業だか分からないなどと揶揄される訳だけれど、たとえ芸人としての仕事をしない日であっても、一所懸命、芸のことを考えたり、稽古したりしているのであれば、その人は掛け値なしに芸人さんなのだと思う。

 

お坊さんも同じことで、「お寺で働く」という形のお仕事が少なくても、しっかりと精進して日々修行していれば、その人は立派にお坊さんだと言えるだろう。

 

昔、まだ小僧だった時分に、大長老格の老僧に趣味を尋ねられて、恐れ多くも「仏教です」などと答えてしまい、人に聞かれたら笑われるぞと叱られたことがあったのだが、私の気持ちに嘘はなかった。

 

今もその気持ちに変わりはない。趣味は仏教で、仏教に付随したあれこれを考えるのが好きで、趣味が高じて本職になった。本当のお坊さんになった今も、他のお坊さんの話を聞いたり、いろんなお寺をお参りするのが好きだ。そして他のお寺を参りしたならば、必ずそこから何かしら学ぶことがあるという意味で、すべては芸の肥やしだと思う。

 

さて、小僧修行と本山での修行を終えた後、あるお寺でお参りに来た小さな子供と出会ったことがある。子供でも「お坊さん」という言葉が分かるのだろうかと思った私が、試しに「一休さんって知っていますか?」と聞いたら、「知っています」と言うので、重ねて「一休さんのお仕事は何だと思いますか?」と聞いてみたら、その子供がしばらく考えて、「落ち葉掃除」と答えてくれた。

 

確かに確かに、それもこれも、みんな大事なお坊さんのお仕事なのだと思う。

 

 

                        おしまい。

 

 

ホームページ「アジアのお坊さん」本編もご覧ください.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」という「諸行無常偈」について、私には一つの疑問がある。
 

岩波文庫の中村元博士によるパーリ仏典シリーズの中で、上記の「無常偈」は、以下の5箇所に出て来る。

 

「ブッダの真理のことば・感興のことば」161頁

「ブッダ 神々との対話」22頁

「ブッダ 悪魔との対話」122頁、213頁

「ブッダ 最後の旅」160頁

 

「ブッダ 最後の旅」というのは「マハパリニッパーナ経」すなわちパーリ語版の「大般涅槃経」のことであり、ブッダの入涅槃すなわち臨終の様子を描いた経典なのだが、その中にブッダの死に際して帝釈天インドラ神が無常偈を唱えるシーンがある。

 

だがしかし、最古の仏典とされる「ダンマパダ(真理のことば)」と「スッタニパータ(ブッダのことば)」に、この無常偈は出て来ない。それはなぜなのか?

 

上記の「ブッダの真理のことば・感興のことば」161頁というのは「ウダーナヴァルガ(感興のことば)」の冒頭のことなのだが、「ウダーナヴァルガ(感興のことば)」は「ダンマパダ」とよく似たテキストではあるけれど、実は説一切有部によるサンスクリット語の経典であり、「ダンマパダ」よりもずっと後になって成立した経典だ。

 

こうしたことだけを見れば、無常偈はブッダの生涯の最後近くに出来たか、もしくはブッダの死後に成立したのかも知れないと想像してみたくなるのだが、「ブッダ 神々との対話」22頁 「ブッダ 悪魔との対話」122頁、213頁の中には、ブッダ自身がこの句を説いたとされる記述がある。

 

まず「ブッダ 神々との対話」22頁では「三十三天に住む神が無常偈を説いた」とブッダ自身が語っているが、三十三天とは帝釈天インドラ神が住む天の世界のことだ。

 

次に「ブッダ 悪魔との対話」122頁の記述は「ブッダ 最後の旅」と全く同じで、ブッダの臨終に際して帝釈天インドラ神が無常偈を唱えるシーンだ。

 

さらに「ブッダ 悪魔との対話」213頁は、仏弟子のアヌルッダ尊者の前世の妻が三十三天におけるジャーリニーという女神であり、この女神に対して尊者が無常偈を説く、という話になっている。

 

ついでに言うと、「仏弟子の告白(テーラガーター)」の中のアヌルッダ尊者の言葉の中に、ブッダの臨終の様子や、尊者が前世において三十三天に住む帝釈天インドラであったこと、そしてジャーリニー女神に法を説いたことなどが記されている。だがしかし、その一連の言葉の中にはなぜか無常偈が出て来ない。

 

以上のようなことから考えて、無常偈は三十三天の神話やアヌルッダ尊者の伝説と何らかの関係があって成立したのでないかと思う。最古の経典である「スッタニパータ」と「ダンマパダ」にこの有名な偈文が出て来ないことにも、何かそれと関連する事情があるに違いないと、怪しく思って想像を巡らせている次第です。

 

         おしまい。

 

無常偈については何度も書かせて頂いているのだが、私はこの偈文が大好きで、何かにつけて常に唱えるようにさせて頂いている。

 

仏法の要を尽くしたこの偈文、「平家物語」の冒頭にも引用され、「いろは歌」の基にもなったということで、一般の日本人にもよく知られている。

 

「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」

(しょぎょうむじょう ぜしょうめっぽう しょうめつめっち じゃくめついらく)

 

=「すべてのものは移り変わる、これが生滅の教えであり、生滅すらも滅した時に、きっと安らぎが得られるだろう」

 

パーリ語原文は以下の通り。

 

anicca vata sankhara

upadavayadhammino

uppajjitva nirujihanti

tesam vupasamo sukoho

 

中村元の翻訳では、

 

「つくられたものは実に無常であり、生じては滅びるきまりのものである。生じては滅びる。これら(つくられたもの)のやすらいが安楽である」

 

となっているが、これは「ブッダ 最後の旅」からの引用であり、ちなみに上記の岩波文庫の該当5箇所は、全ての訳文が微妙に違っている。

 

 

さて、この無常偈はテーラワーダ仏教でも死者の回向に日常よく使われているが、それは日本仏教でも同じ状況であり、パーリ文、漢文ともに、現在では無常偈は死者の回向・追善供養に際して唱えられることが多いと言えるだろう。

 

ただ、この偈文は誠に仏教の要を尽くしていると思うので、私は常日頃から、葬儀や追善供養に限らずに、利他の読経や自利の修行に際しても、始終唱えることにさせて頂いている。

 

 

 

 

先日からビル・S・バリンジャーという作家のことを何度書かせて頂いている。

 

奇術師が主人公である「歯と爪」(創元推理文庫)という作品が好きで、子供の頃から何度も読み返していること。

 

ハヤカワ文庫から出ていた「消された時間」(現在は絶版)を当時、「歯と爪」の次に読んだこと。

 

先日、創元推理文庫から出ている「煙で描いた肖像画」を初めて読んでみたところ、とても面白かったということ。

 

そして、北村薫氏の「ミステリ十二か月」という随筆集も最近に読み、

技巧派だと見なされるバリンジャー作品は、決して意外性を重視した作風なのではなく、物語の仕掛け、緻密な構成によって人間の哀しさを描くストーリーテリングにこそ本領があるという北村氏の説に納得したこと、などなど。

 

ちなみにその後、バリンジャーの日本語のwikipediaを読んでみて、上記の北村氏の説がそのまま引用されていることも初めて知った。

 

さて、そこでバリンジャー作品の中でも評価が高く、北村氏も採り上げておられる「赤毛の男の妻」を、自分が一度も読んだことがないことに、改めて気が付いた。

 

言い訳をするようだけど、子供の頃、絶版になる前の「赤毛の男の妻」を書店で何度も目にしていたのだが、その頃にこの本を読まなかった理由は、当時よく出ていたいろんなミステリ解説書にこの本の結末が載っていて、読もうとする意欲を削がれたからだ。

 

だがしかし、こうしてバリンジャー作品を大変に楽しんで読んでいる今現在の自分ならば、結末を知っていてもその物語を十分に楽しめるだろうと思って調べたら、1994年に第5版が出ていたことが分かり、迷わずインターネットで注文して読んでみた。

 

結果は予想通り、ものすごく面白い。子供の頃に何度も現物や解説やあらすじを目にしたこの作品を、死ぬまでに読んでおいて良かったとつくづく感動した次第です。

 

 

 

                おしまい。

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください