アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

平山雄一氏監修の集英社文庫版「明智小五郎事件簿」では、平山氏自身が以前から提唱されている「明智小五郎年代学」に応じて、事件発生を「D坂の殺人事件」「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」「一寸法師」「何者」という順序に断定しているのだが、私は納得できない。

 

ちなみに私は初期の明智登場作品は以下のような順序で発生したと思っている。ごく普通に作品を読むと、自然にこうなるのではないかと思う。

 

「D坂の殺人事件」

「黒手組」

「幽霊」

「屋根裏の散歩者」

「心理試験」

「何者」

「一寸法師」

 

シャーロック・ホームズ作品の作品内に記載された手がかりから実際に事件が発生した順序を特定する「シャーロキアン的考察」を、平山氏のように明智の登場する僅かな作品を基に行えば、当然ながらその結果には、かなりな無理が生じると思う。

 

私が思うに、「D坂」でデビューした素人探偵の明智は、その次に発表された「心理試験」では、既に各界に顔の効く立派な社会人になっている。

 

しかしその次に発表された「黒手組」は「D坂」の1年後の事件であり、明智はまだ素人のままだ。

 

さらにその次の「幽霊」事件の時も明智はまだ素人探偵で、その次の「屋根裏」では明智の名前を知る人も多少はいるが、まだまだ素人の探偵。

 

「心理試験」はその後に起った事件であり、その頃には明智は上記の如く有名人になっている。その後に起こった「何者」ではその探偵談が出版されるまでにはなっているが、まだ万人が明智の顔を知ってはいない。

 

そしてその後、明智は上海へ渡り、「一寸法師」事件の頃に帰国。これが乱歩がざっくりと想定していた明智登場作品世界内での時間軸ではないかと私は思う。

 

 

 

※拙ブログ 「明智小五郎はなぜ上海やインドに出かけたのか?」 もご覧ください。

 

 

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。

 

海外邦人関係事件の一覧を更新します。

 

 

   ※ ※ ※

      

 

●97年7月 ネパールの仏跡ルンビニの日本山妙法寺の僧侶が射殺される。

●98年6月 チベットで日本人男子大学生が行方不明。
●98年12月 インドのデリーで日本人男子大学生が殺される。
●99年3月 トルコで日本人女子学生が不明。

●99年4月 ネパール・カトマンズのホテルで24歳の日本人男性が墜落死。
●2001年2月 バリ島で日本人女性が殺される。

●01年4月 トルコで卒業旅行の日本人女子学生4人が交通事故に遭い、死傷。

●01年11月 タイのチェンマイのダムで65歳の在留邦人男性の死体が発見。
●02年4月 銃撃戦の直後にエルサレムの聖誕教会を訪れた日本人男女2人が厳重注意を受ける。
●02年5月 ニューカレドニアのイルデパン島で日本人女性が殺害。07年と09年に容疑者2人に、それぞれ無罪判決。

●02年6月 バンコクの運河で二人の邦人男性が溺死。のちにタイ人とミャンマー人の二人が逮捕。

●02年7月 日本人女性ジャーナリストのY氏が、アフガンで兵士に鞭で殴打される。

●02年11月 アユタヤからバンコクに向かうバスが事故。日本人11人が重傷を含む被害。
●02年12月 フィリピン・セブ島を旅行中の日本人女性2人が強盗を撃退。
●03年1月 イースター島のモアイ像に落書きを彫った日本人男性が逮捕。
●03年1月 バンコクのチャオプラヤー河ラーマ8世橋下の運河で24歳の日本人男性の遺体が発見。
●03年6月 パキスタンのラホールの空港近くに日本人男性の遺体。

●03年6月 インドネシア・ジャカルタ近郊で48歳の日本人男性が22歳のインドネシア人女性を殺害。

●03年7月 タイ・パタヤのマンションで日系企業に勤める37歳の邦人男性が変死。

●03年11月 JALに務める日本人客室乗務員女性がバンコクのタクシーの運転手に腹部を撃たれる。
●04年3月 イラクのサマワで日本人男子学生2人、タクシーとのトラブルで逮捕される。
●04年4月 イラクでボランティアの日本人3人が拘束され、後に日本国内でバッシングされる。
●04年10月 香田証生さん、イラクで殺害される。
⇒参考文献:「香田証生さんはなぜ殺されたのか」下川裕治(新潮社)は、香田さん事件 をバックパッカーの観点から考察した著作。
●04年12月、シドニーのバックパッカー向けゲストハウスで、日本人旅行者の男性が、同宿のオーストラリア人旅行者の男性を刺殺。
●05年8月 パキスタンで自分のカメラを現地人の短銃と交換した日本人男性旅行者が逮捕。

●05年9月 ケニアのマサイマラ国立保護区で外国人観光客が斧を持った男に襲われ、日本人男性一人が負傷。
●05年9月 教員の日本人男女2人がアフガニスタンで殺害。
●05年11月 インドのジャム・カシミール州で日本人ジャーナリスト男性のS氏が武装グループに襲われて負傷。

●05年12月 22歳の日本人男子大学生がトルコで行方不明。
●06年4月 タイのパトゥムタニで50代の日本人男性2人が殺害される。

●07年2月 ギニアで民俗太鼓「ジャンベ」を習う日本人旅行者たち数名が、日本大使館の退避勧告に従わず、大使館で保護。

●07年9月 ミャンマーのヤンゴンで、デモ取材中の日本人ジャーナリストが狙撃され死亡。
●07年10月 イランで日本人男子学生が誘拐される(08年6月に解放)。
●07年11月 タイのスコタイで、ブログなどで旅の足取りを発信していた日本人女性の遺体が発見。

●07年12月 タイのチョンブリで67歳の在住日本人が惨殺。
●08年5月8日 イエメンで日本人女性2人が誘拐。
●08年8月4日 パレスチナ自治区で日本人フリーライターが拘束。
●08年8月12日 バンコクで長期滞在者の日本人男性が行方不明。その後、日本で貯金が引き出され、死体で発見。犯人は日本人男性2人。
●08年8月28日 アフガンでタリバンに拉致されていたNGO職員の男性、遺体で発見。
●08年9月 エチオピアで活動中の「世界の医療団」の日本人女性医師が誘拐。10月にソマリアで解放。
●09年8月 モンゴルのウランバトルで日本人女性教師がモンゴル人男性によって殺害。
●09年9月 バリ島で日本人観光客の女性が殺害。
●09年11月 イエメンでJICA関係の邦人が誘拐。
●09年11月 タイのプーケットで75歳の在留邦人の男性が殺害。
●09年12月 バリ島で在留邦人の女性が殺害。
●10年4月 アフガニスタンで日本人ジャーナリスト・T氏が誘拐。ちなみにこの方は、それまでに海外で何度もトラブルに巻き込まれていたお方。
●10年4月 チリのパタゴニア近郊のパイネ国立公園で、アフリカ、欧米を1年近く旅行中だった20代の日本人男性バックパッカーが遺体で発見。遭難の可能性も。
●10年4月 日本人カメラマン、バンコクのデモに際し、死亡。
●10年12月 インド・ヴァラナシのガートでテロ、邦人一人を含む多数が死傷。
●11年2月 ベトナム・ハロン湾の観光船事故で日本人男子大学生を含む乗客が、複数死亡。

●11年6月 ネパールで日本人女性が遭難。タケノコを食べて後に生還。
●11年9月 ミャンマーで一人旅の日本人女性が、バイクタクシーの運転手によって殺害。

●11年10月 インドネシア・ジャワ島でツアーバスが事故に遭い、日本人女性が被害に。

●12年5月 ドバイで日本人女性客室乗務員がチュニジア人の男に絞殺される。
●12年5月 ロシアのウラジオストクから東シベリアまでバイクで横断旅行中の日本人男性が刺殺される。

●12年8月 ルーマニアで日本人女子大生が、ブカレストの空港で声を掛けてきた男の車に乗せられ、近くの森で殺害される。

●12年8月 シリアで日本人女性ジャーナリストが銃撃に巻き込まれて死亡。

●12年11月 台湾のタロコ渓谷で62歳の日本人男性が転落死。

●13年3月 カンボジア・シアムリアプの遊園地でジェットコースターが脱線し、邦人女性が死亡。

●13年9月 トルコのカッパドキア付近で、日本人女子大生2人が襲われ、一人が殺害、一人が重体。

●13年9月 バングラデシュのコックスバザールからダッカに向かうバスがチッタゴンでデモに遭い、一人旅の日本人女性が重傷。

●13年10月 カンボジアのプノンペンで日本人女性が、9月の末に強盗に足を撃たれ負傷。10月に入って、カンボジア人の男二人が逮捕。 

●13年11月 コンゴの日本大使館で務めていた元3等書記官の20代の日本人男性が、大使館に放火。

●13年12月 エクアドルで新婚旅行中の日本人夫婦が殺害される。

●14年1月 ローマの地下鉄でスリを繰り返し、「地下鉄の忍者」と謳われた日本人男性が逮捕。

●14年8月 カナダでバス事故があり、日本人学生2人を含む観光客56人が重軽傷。

●14年10月 バンコク在住の日本語教師(79歳男性)が行方不明の後、殺害され、バンコク郊外の運河で発見。

●14年10月 日本人女性が iPhone(アイフォン)を密輸し、上海の税関に摘発される。

●14年10月 ネパールのヒマラヤ・アンナプルナで日本人男性が雪崩で死亡。

●14年10~11月 日本人ジャーナリスト2人がシリアで相次いで拘束され、翌年1月公開処刑される。

●15年1月 インドのブッダガヤ近郊の村で日本人女性旅行者が監禁暴行される。

●15年3月 イラク北部クルド人自治区にトルコから入国した日本人男性が不審者と疑われて拘束される。

●15年9月 ジャカルタのマンションで、日本人女性がマンション警備員に金品目的で殺害される。

●15年10月 バングラデシュで農業開発に携わっていた日本人男性が射殺される。

●15年11月 バングラデシュに10年滞在していた日本人女性がダッカの民家で死体で発見。

●16年2月 グアムで70歳の日本人男性がホテルに所持品を残したまま行方不明。

●16年3月 タイのリゾート地ホアヒンのビーチで、社員旅行の日本人男性約30人が泥酔の上、全裸に。タイ中で大問題に。

●16年9月 カナダに語学留学中の日本人女性がバンクーバーで殺害される。

●16年11月 インドのゴヴァラム・ビーチで日本人女性旅行者が暴行される。

●16年11月 バックパッカーとして世界各地を旅して、旅ブログの発信もしていた一橋大学の日本人学生がコロンビアで殺害される。

●16年12月 フランス留学中の日本人留学生女子がブザンソン市で行方不明に。

●17年4月 マルチ商法詐欺の日本人女性62歳が、38歳と年を偽り、タイ人男性と交際、タイ当局に逮捕される。

●17年9月 釜山の海雲台で40代日本人女性の旅券が入った持ち物が見つかり、女性は行方不明。

●17年9月 バリ島で70代の邦人夫婦が殺害される。

●17年11月 アユタヤで日本旅行のツアーに参加した日本人男女4人が移動中の自動車で事故に合う。

●18年2月 東シベリアのオイミャコン村を自転車旅行していた日本人大学生グループがキャンプ中に動けなくなり、地元の人に助けられる。オイミャコン村は世界最冷寒の地として有名だった。

●18年11月 タイのバンコクの両替所で、旅行資金が底を突いた33歳の日本人旅行者男性が強盗に及んだものの、そのまま両替所に閉じ込められて未遂のまま逮捕され、日本でもそのニュースが報じられた。

⇒旅行資金のなくなったバックパッカーが罪を犯すというケースはままあるが、現地の悪徳旅行業者などと結託して同国人を騙すようなパターンはよく聞くものの、こういった、普通の旅行者が直接、犯行に及ぶような事件は意外と珍しいので、興味深く思った。

●19年4月 十数人の日本人男性がタイのパタヤで共同生活を送り、日本国内の日本人に向けて、振り込み詐欺を働き、逮捕。

●19年11月 バリ島のマンションで日本人女性が襲撃され、防犯カメラの映像が日本のテレビでも放映される。

●19年月アメリカ・ユタ州のアーチーズ国立公園において日本人家族が転落事故に遭う。

●19年11月 2007年にタイのスコタイで日本人女性バックパッカーの方が殺害された事件について、10年以上たって、犯人がほぼ特定される。

●19年12月 タイで日本人4人の乗る車が事故に遭う。

●19年12月 アフガニスタンでNPO法人「ペシャワール会」代表の中村哲氏が銃撃されて死亡。

●19年12月 タイのバンコク在住の日本人男性が刃物で刺される。タイ人容疑者2名は外国人ばかりを狙って強盗に及んでいたとのこと。

●20年3月 インドネシア・バリ島沖の離島・ヌサ・ペニダ島で、22歳の日本人男性が海岸で高波にさらわれて転落し、溺死。

●20年8月 フィリピンで80代の日本人女性が殺害(2021年2月に犯人逮捕)。

●20年 11月 ブラジルで現地少年による強盗殺人。被害者は在住の40代日本人女性。

●21年 4月 バンコクで駐タイ日本大使のN氏が所謂「ナイトクラブ」でコロナに感染。大批判を浴びる。

●21年 4月 ミャンマーで日本人ジャーナリストのK氏が拘束。K氏は2月末にもミャンマーで一度拘束されていた。

●21年 4月 タイ・チョンブリ県の飲食店で午後9時半以降に飲酒を含む宴会をしていた日本人9人が、コロナ対策の禁止令違反で逮捕。

●21年5月 メキシコ北西部ティフアナでラーメン店を経営する日本人男性が、知人と見られる複数の男に殺害される

●23年7月 タイ北部チェンマイのホテルで31日午前、日本人女性が首に携帯電話の充電用のケーブルが巻かれた状態で死亡しているのを一緒に宿泊していた日本人の夫が見つけた。

●23年9月 ハワイの税関で、いかがわしい目的かと疑われて入国を拒否される日本人女性が増えているとの報道。

●23年9月 「持続化給付金」詐取の疑いで日本で逮捕状が出ていたものの、カンボジアからタイへ逃げていた日本人男性。不法滞在の疑いで当局に身柄を拘束されて、日本に強制送還される予定だったが、入管から車両で逃走。その後、パタヤで身柄を確保される。

●2024年10月 マレーシアのキャメロンハイランドに向かっていたツアーバスが事故に遭い、日本人旅行者が複数死傷。ちなみにキャメロンハイランドはタイのシルク王、ジム・トンプソンが謎の失踪を遂げた場所でもある。

●2024年12月 バンコクの(バックパッカーが多いことで知られる)カオサン通り付近にあるエンバーホテルで火災があり、日本人2人も被害に遭う(1月に一人の死亡が確認される)。

●2025年1月 タイ北部・チェンマイのターペー門広場で、カウントダウンイベント後に禁止区域でランタンを飛ばそうとした日本人男性が制止した警察官に挑みかかり、罰金刑に処される。

男性はその後あらためて警察に謝罪。冷静かつ温厚なタイ警察に称賛の声ならびに当該の警察官にチェンマイ警察から報奨金。

●2025年2月 タイ国境近くのミャンマー・ミヤワディを拠点にっした特殊詐欺事件において、日本人も多数加害者集団に加えられていた。ちなみにミヤワデイはタイから日帰り入国できることでバックパッカーに知られており、2013年にはその他のタイ・ミャンマー国境地域と共に、入国条件が緩和されている。今回の事件におけるアジトは、この時期以降に規模が拡大して行った模様。

●2025年3月 中国の万里の長城で日本人男女2人が尻を出した動画を撮影・配信し、拘束された上、国外に強制退去。

●2025年6月 ペルー最高峰のワスカラン山で、30代と40代の日本人女性2人が遭難。二人とも登山経験が豊富だったが、その内の野外救急法団体に所属する医療アドバイザーの女性が死亡。

●2025年7月 地中海の島国・マルタ共和国のマルタ島北東部スリーマで7月、猫を虐待して殺した日本人男性が、職務質問した警官に暴行して逮捕される。

●2026年5月 パキスタン北部スカルドゥの山岳地帯でトレッキングをしていた日本人男性が「マスルールロック」付近の岩の割れ目で登山中に滑落死。現地は標高3700メートルで日本人にも人気の景勝地。

 

 

 

 

 

              おしまい。

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。

 

今は亡きミステリ評論家の瀬戸川猛資氏がアルセーヌ・ルパン物はルブランの原作よりも南洋一郎訳の児童向けリライトで読む方が面白いと書いておられたが、小学校の図書室で読んだ児童書シリーズで初めて古典的な名作ミステリに触れた方も少なくなかろうと思う。

 

私自身も初めて読んだクリスティー作品は児童書の各務三郎訳「名探偵マープルおばさん」(岩崎書店)なのだが、これはミス・マープル初登場の短編集「火曜クラブ」13篇の内から4話を抄録したものだ。

 

最近では「火曜クラブ」の「全話を完訳」と銘打った児童書もあるそうだが、この度、図書館で1974年発行の「名探偵マープルおばさん」を借りて久々に読んでみたら、案外しっかりと訳してあって満足できる内容だった。

 

ちなみに余談ながら、登場人物のイギリス人たちがやたらと缶詰の食事を摂ることに小学生の自分が驚いたことをよく覚えているのだが、今回読み直してみたら、この児童版の全4話中の内の2つの話に缶詰が出て来るシーンがあった。

 

ところで、同じ岩崎書店のシリーズでチェスタトン著「ブラウン神父の童心」の抄録である「青い十字架のひみつ」も当時読んでおり、ブラウン神父の推理の決め手である「理性」という言葉が理解できなかった思い出もあるので、今度はそちらも借りて読んでみたいと思っているところです。

 

 

※以下のサイトに昔の児童向けミステリシリーズの各社作品一覧が載っています。

「ジュニア版SF&ミステリー全集刊行リスト」

 

 

                おしまい。

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。

布施という言葉には「布」という字が含まれているが、この場合の「布」は「広く」という意味であって、「布施」とは「広く施す」という意味合いを表している。

 

ただ、インド以来、僧侶に対して法衣を施すことはごく一般的な供養なので、「布施」という言葉が「布を施す(=法衣を布施する)」ことに由来すると思っている人も多い。

 

同様に、袈裟のことを捨てられたボロギレから作られた衣という意味で「糞掃衣(ふんぞうえ)」と言うのは、「糞尿を拭ったような粗末な布切れ」という意味だと書かれていることが多いのだが、中村元博士によると、「糞掃(ふんぞう)」とは「pansu」という言葉の音写に過ぎないのだが、とは言え、この当て字はなかなか上手く意味合いを表現しているといったようなことが、「佛教語大辞典」に書いてある。

 

ー 「この観念を伝えるには適切な音訳語であると言える」

           「佛教語大辞典」 糞掃衣の項より

 

いずれにしても糞掃衣行は仏教の乞食修行である「頭陀行」の第一であり、粗末な衣をまとうことは修行の証しである訳なのだが、それと同時に現代のテーラワーダ寺院では、古くなった黄衣をモップに取り付けたり、雑巾として使用するのはごく普通のことであり、初めてその光景を見た時には、袈裟本来の意味に適っているなあと感心したものだ。

 

 

 

 

                おしまい。

 

「ホームページ アジアの頭陀袋」もご覧ください。

お坊さんになろうとあがいていた十代の終り頃、神話伝説昔話なども含めて日本宗教全般に興味があり、その基層にある神道を大学で学んでから仏門で出家得度しようと思った頃に高橋和己の「邪宗門」を読んだ。

 

「宗教とは何か」をテーマにしたすごい作品だ、みたいな論評を何かで読んでこの作品のことを知ったのだと思うが、読んでみると自分が予想したような、神や宗教や宇宙といったことを解き明かした小説ではなく、「宗教団体」とは何かということを描いた内容だと当時は感じたので拍子抜けしたが、物語としてはそれなりに面白く、神道学を専攻している頃には何度も読み返したものだ(当時、この小説のモデルになった大本教やその基盤にある神道霊学について随分研究したのだが、今回読んでみて、著者の高橋が「鎮魂帰神」のことを「鎮魂帰心」と表記している誤りに気がついた)。

 

それなのにお坊さんになってからは一度も読み返したことがなく、やはりそれは自分が曲がりなりにも修行をさせて頂いた後は、この作品が「宗教」を知識人が頭の中で理解しようとした結果として生み出されたものに過ぎないと感じるようになったからだと思うのだが、この程ふと思い立って、久々に「邪宗門」を読み直してみることにした。

 

読んでみると思いの外に面白く、文庫本で1200ページ程の作品を一気に読んだ。昔よりも知識が増えてよく理解できたこともあるけれど、小説として、物語として大変に良く出来ていて楽しめたということが何よりも大きい。主人公よりも若い頃に初めて読んだこの本を、主人公より遥かに年上になった今、読み返してみたら感慨深いものがあった。

 

作中に出て来る、当時は縁のなかった土地の描写も、お坊さんになってから日本各地で修行させて頂いたので今回は楽しめたし、主人公が行う「坐禅」に当時は興味があったのだけれど、今回読み直して、天台坐禅止観とテーラワーダ仏教のアーナパーナ・サティ瞑想を日々、行じるようになった今の自分の変遷を思い、とても有難く感じた。

 

 

 

 

 

                                                                  おしまい。

 

※神道霊学者・大石凝真素美についても触れた

「ブログ インドの鶏足山」もご覧ください。

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」

アーナパーナ・サティの解説である「観息正念」を添付しています。

是非ご覧ください。