お坊さんになろうとあがいていた十代の頃、自分一人で宗教法人を設立するというアイデアを思い付いたのだが、調べてみたらいかんせん、「法人」というだけあって、複数の人間がいないと設立はできないことが分かって断念した。
ただ、その時に宗教法人について調べたおかげで、お坊さんになってから、宗教法人法悪用のニュースを見たり、実際にお寺で宗教法人について聞いたりした時に、詳しく理解できるようになったのは幸いだ。
その後は紆余曲折を経て、「宗教法人」とも「非法人」とも「お寺」とも関係なく、身体ひとつの修行僧として浮き草稼業で生涯を全うすることが出来たらどんなに楽かということを考えながら、ここ数年ずっと暮らしている。
「誰もみな 生るも知らず 住み家なし 帰らば元の 土になるべし
(一休和尚:「一休骸骨」より)
おしまい。
※「ホームページ アジアのお坊さん 僧院と僧坊」もご覧ください。
※何度か「非法人」について以前に書いたことを、下に箇条書きで纏めてみます。
・天台宗では宗教法人格を持たない非法人寺院というものの設立が認められていて、単に実務上の理由からだったり、もしくはある程度自由な活動をするために敢えて宗教法人格を取らないお寺もあったり、お寺を建てる前段階としてまず非法人のお寺を設立し、その後に法人格を取得する場合もあったりする。
・天台宗務庁が出している「天台宗 Q&A」という古い冊子の中に、以下のような項目がある。
「法人設立:法人寺院設立は、宗教法人法に規定する宗団としての要件を具備するか否かの審査が難しいので、まず非法人寺院設立の承認手続(宗務庁承認)を行なって下さい。宗教活動の実績を挙げ、約3年ほど経過した後、法人寺院設立認証(都道府県知事承認)の手続を行うのが望ましい。」
・「天台宗報」を見ていると、意外とたくさんの非法人寺院が設立されたり解散したりを繰り返していて、例えば女性落語家で天台宗の広報活動にも貢献している尼僧さんや、NHKの番組でも特集された、ストーカー問題で悩んだ末に得度した別の尼僧さんなども、最近に非法人寺院を設立しておられる。
・また例えば、発心して得度した若いお坊さんが、本山で長く修行をした後にご自分の思いを成就すべく、非法人寺院を設立されたりもする。
・その他、天台宗の中の修験道法流という流派の中にも非法人寺院が多く、設立や解散などの記載が天台宗報にしばしば載っているので、こういった流派の方たちの中には、独自の修行をされる方が多いのかも知れないと想像する。
・さらにもう一点、天台宗の寺籍簿には総本山(比叡山)を筆頭に各地域の教区ごとに法人・非法人の順でお寺の名前が載っているのだが、非法人に関しては本山の非法人寺院の数が最も多く、これはある一定の条件を満たした方に「坊号」のような形で授与される資格を本山の非法人の寺名に限っては、表している場合が多いからであり、その中には弁慶ゆかりの「武蔵坊」といった寺名も残っていたりする。
・引きよせて むすべば草の庵にて とくればもとの 野ばらなりけり (慈鎮和尚:「一休和尚法語」より)
おしまい。