アフガニスタンで中村哲医師が亡くなられた報道に際して、医師が伝教大師最澄の「一隅を照らす」という言葉をよく口にしておられたということを、初めて知った。
私は自分で天台宗という宗派を選んで僧侶になったにも関わらず、当初、この一隅を照らすという言葉に一抹の違和感を感じていた。
宗祖のお言葉である「照于一隅」を疑う気持ちは微塵もないが、「一隅を照らす」という書き下し言葉を布教活動の中心に据えることに対して、修行中、この活動を実際にお始めになった長臈・ご老僧方の薫陶も受けておきながら、心中秘かにそんな失礼なことを感じていた。
けれど、この度、中村氏の座右の銘が「一隅を照らす」だったことを知り、ああ、一隅を照らすとは正にこういうことだったのかと、長年の違和感や疑問が氷解した。
慎んで中村医師のご冥福をお祈りいたします。
合掌