疑問が生じた時や、新たな技術を習得する際、先に解答を得て満足してしまう人もいますが、それは試験前の一夜漬けのような、時間の経過とともに忘れてしまう類いのものだと思います。
作業手順について、何故その方法なのかを尋ねると、「◯◯さんがそうしろと言いました!」という、出来損ないの学生みたいな返答をする人に、時々遭遇します。「そうじゃなくて、理由は?」と聞いても、それ以上の答えは返ってきません。
もっと凄いのは、◯◯さんがそうしていると、⬜︎⬜︎さんが言ってた!というものもあり、さすがにこのレベルではプロとして失格です。
これは、は商品を提供する側によくある事例でしたが、受ける側にとっても、情報の取り方を間違えると、大変な損失を被ることにもなります。
昨夜、ピアピットの渡辺さんから、久しぶりにお電話を頂きました。日頃からSNSを利用し、何らかの形でピアノに携わる方なら、ご存知の方も多い方です。
最近お互いに忙しかったので、話す機会が無かったのですが、この日は過去のおもしろエピソードなどで話が弾み、久しぶりに腹の底から笑わせてもらいました。
ですが、そもそもの用件はそこでは無く、技術が未熟な調律師に、ピアノのハンマーを完全に破壊されてしまった方の相談を受けて、「その対応で散々な一日だったよ!」という話でした。
改めて今日になって、ピアノのオーナーがどういう心境で、この手の調律師に仕事を依頼してしまうのか、色々考えてみました。
考えましたが、残念ながら心境は理解できませんでした😅
ここからは僕個人の感想ですが、この事例は、冒頭で述べた簡単に解答だけを得ようとするような、根拠の薄い情報をもとに行動してしまった結果だろうと思います。
もちろん、悪いのはこの調律師であって、ピアノのオーナーは被害者です。しかし、商品を提供する職に就く立場で言わせて貰えば、大切なピアノのメンテナンスを任せる人は、もっと慎重に考えて探して欲しいと感じてしまいます。
まともに仕事が出来ない調律師は一定数存在しますが、特に酷い人物はある程度業界内で共有されていて、過去に僕もこのブログで、今回の人物は紹介?しているので、興味のある方はご覧ください。
https://ameblo.jp/pianogiken/entry-12768332798.html
https://ameblo.jp/pianogiken/entry-12767188574.html
話を戻します。
ネット上には、調律師や修理業者を評価するサイトが存在します。
そしてピアノの持ち主が、この人物に調律を依頼するきっかけは、ネットの“調律師ランキング” 的なサイトで、いつも上位を維持しているからだそうです。
では、ランキングの根拠とは何か?
いきなり規模が大きくなりますが、世界では“格付け会社” と言うものがあります。投資先の元本や利息の支払い能力の判断材料として、国や企業のランク付けをする会社です。
投資の対象となる国や企業は、その財務状況を公開しているので、評価する材料はあるし、ランキングにも根拠があります。そして、ランク付けの精度が低ければ、その格付け会社自体の評価が下がるので、いい加減な調査は普通しません。
つまり、公開されるランク付けは、一定程度信用に値する訳です。
では、ピアノ技術者のランキングはどうなのか?
まずは、技術レベルを数値化する項目が、ヤマハが開発した調律の測定器と、その測定値をグラフにしたもなど、可視化できる材料には限りがあります。そしてこれらは、自身の調律の傾向を把握して仕事に役立てる道具ですので、わざわざ公開するものでもないし、する義務もありません。
評価する材料が無ければ、調査に出向いていくしか方法がありません。商売柄、割と多くの業者さんと話す機会は多いのですが、そのような調査があったと言う話を聞いた事がありません。
もしも、本気でこんな調査をしようと思えば、どれ程の費用がかかるのか?そして調査の見返りは?
少し冷静に考えれば、絶対にムリなのは明らかです。
つまりは、信用できる根拠が見当たらないのです。
そもそも、弾き手と調律師の関係は、好みのタッチや音色を理解して、それを実現できるかがカギなので、ランク付けする種類のものではありません。
改めて、被害にあった方の件ですが、所有するピアノはとても高額ですが、とても良い買い物をしたと思います。メーカー直売品なので、会社が認定した調律師がメンテナンスに行っていた筈です。それを何故、ネットのランキングといった、正体不明の人物の評価を信じて、数百万円もするピアノを任せてしまったのか?
また、ピアノの体をなさないほど破壊されたのであれば、本来なら相談する相手は、購入したメーカーを考えるものだし、今回のように、素人でも異常が確信できるレベルなら、消費生活センターや弁護士が、適切な相談相手と言えます。ですが実際には、また別の調律師に相談した訳です。
たまたま相談した渡辺さんは、メーカーに掛け合うなど様々に手を尽くして、解決の為に尽力してくれているので、結果的に良かった訳ですが、普通はそこまではしてくれません。「手の施しようがありません!」で、出張費を取られて終わりです。運が悪ければ、直すためには修理が必要だと、さらにカネをむしり取られていたかもしれません。
僕は、この調律師の仕事を直接見たことはありません。想像というか可能性ですが、調律に関しては上手いのかもしれません。しかし、本人も得意げに動画投稿しているハンマーのファイリングなどは、とてもマトモとは言えず、修復不能の破壊になっているのが事実です。調律はとても上手いが修理はまるでダメ、と言う人はいますが、それ自体に問題があるとは思いません。出来なければ、その部分を上手い人に託して、本人は調律に専念すれば良いのです。それぞれの得意分野を持ち寄れば、よりレベルの高い仕事ができます。
問題なのは、出来ないものまで手を出して、最悪の結果になる事です。
この投稿をしたところで、この調律師の制御などできません。ですが、しっかりとした情報をもとに判断する事で、この手の技術者を避けることはできます。
使い捨ての日用品の購入なら、「失敗しちゃったけど、まぁいいか😅」で済みます。ですが、数百万から高いものでは一千万円を超える楽器です。面倒かもしれませんが、やはり高い労力を払ってでも、ピアノ技術者は慎重に探して損は無いと思います。














