小振りな佇まいの佳品=チャイコフスキー<交響曲第2番「小ロシア」>
交響曲第1番の初演の成功で、ロシアで最初の本格的なシンフォニストとして認知されることになったチャイコフスキーは、続く交響曲を1872年に作曲しました。3つのウクライナ民謡を作中に引用していることから、ウクライナを意味する「小ロシア」という呼称を初演当時のモスクワの音楽評論家から与えられたそうです。第1番よりも小振りで演奏時間約30分の規模ですが、なかなか魅力的な作品です。当時のロシア楽壇は、西欧派と民族派に二分されていました。チャイコフスキーは西欧派の代表格と目されていましたが、この作品の場合は、民族派を代表する「五人組」に高く評価された一方、西欧派の音楽家や評論家からは酷評されたようです。初演は1873年に行われ、第1番に続いて大成功となりました。後に第1楽章を大幅に書き変え、第2~4楽章にも多少手を入れた改訂版を完成させて、1881年に初演されています。私の仕事場のライブラリーに在るCDは、現在において通常に演奏される改訂版の演奏に加えて、初版の第1楽章も収録しているディスクです。チャイコフスキー/交響曲第2番「小ロシア」ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団PENTATONE / PTC 5186382###チャイコフスキー/ 交響曲第2番 ハ短調 作品17###第1楽章は、序奏に聴こえるホルンの旋律、ウクライナ民謡の「母なるヴォルガ」で印象的に始まります。やがてそれが力強い第一主題に変身してソナタ形式の主部に突入します。第二主題にしては勇壮な楽想を経て、両主題が発展される展開部の突入していきます。チャイコフスキーとしては珍しく、第一主題が明確に現れない再現部を経て、終結部に到達した後に、第一主題が回帰します。第2楽章は、淡々とした行進曲調でありまた間奏曲風でもある緩徐楽章といった趣の楽章です。未完に終わったオペラ「ウンディーナ」の楽想を転用しているということです。発展的な複合三部形式で、中間部の旋律としてウクライナ民謡「回れ私の糸車」が引用されています。第3楽章は、"小粒ながらピリリと辛い"といった感じの快速で刺激的なスケルツォ楽章です。トリオにはウクライナの舞曲のエッセンスが感じられます。第4楽章は、高らかな序奏の後に、ウクライナ民謡の輪舞曲「鶴(ジュラーベリ)」が変奏主題として活用され、趣向を凝らした変奏が紡がれます。最後は明るく肯定的なコーダによって幕を閉じます。YouTube / チャイコフスキー 交響曲 第2番 ハ短調 Op.17 《小ロシア》指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤンベルリンフィルハーモニー管弦楽団1979年1月25~26、29日・2月21日この第2番でも、滾々と湧き出てくる情緒豊かな旋律の数々の陰に隠れながら、動機の展開やソナタ形式の構成に細心の注意と創意が盛り込まれていて、チャイコフスキーが実は構造的な作曲家であることがお判りになるでしょう。