【第7話】 マスターのこだわり
絶体絶命カフェ<バリ・デ・ドゥ>へようこそ!
ロマンスグレーのマスターがボクたちを笑顔で迎え入れてくれました。

店内は狭いながらも自然の温もり溢れるナチュラルテイストで、
立地条件とは裏腹に心安らぐものがあります。


「マスター、コーヒー四つね!」
タコカリが早速コーヒーを頼んでくれました。
しかしどうしてこんな場所にカフェがあるんだろう?
不思議でしょうがないので、ボクはコーヒーが出来るまでの間、
マスターに聞いてみることにしました。
「コーヒーの豆というのはですね、標高3000メートルで発芽をするのです。
言い換えますと標高3000メートルを超えると発芽欲をこらえきれない豆でもあるのです。
私が何を言いたいのかと申しますと、コーヒー豆は芽が出るか出ないかぐらいの時が
一番美味しいんです。
今私たちがいるこの場所こそが、コーヒーを美味しく入れるベストの場所なのです!!」

「すいません、お客様。ちょっと熱く語ってしまいました。
コーヒーが出来ましたので、どうぞ熱いうちにお召し上がり下さいませ。」
マスターはそう言うと謙虚にボクたちの前にコーヒーを差し出してくれました。
そのコーヒーはとてもいい香りがします。
ボクたちはおもむろにコーヒーを口に含み、ゆっくりと飲み込みました。ゴクリ…
それは飲み込んだ瞬間の出来事です。口の中が一変して新緑のパーティーと化しました!!
今までに味わったことのない幸せで若々しい味。

ボクたちはコーヒー一杯というとてもささやかな時間を、永遠とも感じさせる
マスターのコーヒーに、このカフェの存在意義を見せつけられたような気がしました。
そしてコーヒーを飲み終えた後、マスターが豆の発芽を見せてくれるのでした。
「丁度私の肩の辺りが標高3000メートルなんですよ」と言って、手のひらに乗せたコーヒー豆を
顔の辺りまで挙げると豆はプチプチと音を立てて発芽しはじめました。
ボクたちは素直に豆の神秘に感動しました!
やがてマスターとも打ち解け合い長話をしていると、ミルカボちゃんがぐずり始めました。
どうやら会話に入れず、暇を持て余してしまったようです。

お店に迷惑もかけられないので、ボクたちは外へ出ました。
丁度その時です、一羽の鳥がやってきました。
マスターに聞くと、その鳥が地上からコーヒー豆を届けてくれるそうです。
ボクはマスターに相談しました。
もしよかったらこの鳥に地上まで運んでいってもらえないかと。
マスターは快く承諾してくれました。
ボクたちはお礼に楽園を残し、マスターとタコカリに別れを告げ、地上へと運ばれていきました。

【第6話】 絶体絶命カフェ
ボクたちは風に流されどこまでも飛んでゆく。
吹けば飛ぶような生活とはこのことだろう。

しかしここは四畳一間の楽園と化していた。
太陽に近づきすぎたせいか、この一角だけ花が満開になったのだ。
ボクは花に詳しくないので、どの花がなんという名前なのかは分からないけど、
毎日ミルカボちゃんからお湯を貰い、冷ましてから今日も花に水を上げていると、
どこからともなく声が聞こえてきました。

ボクは驚きました。まさかこんな上空で呼び止められるとは思いもしなかったので…
声のするほうを見ると、そこにはボクの楽園と同じような楽園がプカリと浮かんでいます。
「すいませ~ん、そちらに咲いているスイートピーを少し分けてもらえませんか~。」
「ええ、かまいませんけど~。」ボクは平静を装って返事をしましたが、
しかしよく見てみると喋っているのはタコみたいなヤドカリでした。
さすがにそれには平静を隠しきれず驚きました。

そしてタコカリ(勝手に命名)は自分の楽園をボクの楽園に横付けして飛び移ってきました。
ボクはタコカリに黄色とピンクのスイートピーを二株あげると、
とても喜んで自分の楽園へと帰って行きました。
ボクはタコカリが嬉しそうにスイートピーを植えているのをじっと見つめていると、
またボクに喋りかけてきました。
「この先にカフェがあるのでコーヒーでも飲みませんか、おごりますので。」
一瞬自分の耳を疑いました。「えっ、こんな雲の上にカフェがあるんですか?」
「ええ、名前が絶体絶命カフェというんですけど。」
絶体絶命カフェ…(なんだかお店の名前としては最悪のような気がしますが)
しばらく飛んでいるとコーヒーのいい匂いがしてきて、ホントにカフェらしき建物が見えてきました。
そのカフェは名前が示す通り、本当に絶体絶命的です…


しかしでもどうやってお店に入ればいいでしょう?
タコカリに聞いてみると、そのまま突っ込んでいけばいいと言います。
さすがは絶体絶命カフェ、ボクはもう勢いに任せて突っ込んでいきました、ドーン。
さらに後ろからタコも突っ込んできます、ドーン。


絶体絶命カフェがグラリと揺れます。しかし崩れ落ちないところがすばらしい。
タコカリはスキップをしながら絶体絶命カフェの中へと入っていきました。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」

ボクたちはおそるおそる絶体絶命カフェの中へと入っていきました。
【第5話】 トンジャ・ウンダ大地
ボクたちは常にいい匂いのする方へ向かってゆく。
旅とはきっとそんなものだ。
しばらく歩いていると何だか足元がフカフカしていることに気づく。
ボクたちはいつのまにかトンジャ・ウンダ大地に足を踏み入れたようだ。
「ミルカボちゃんちょっと見ててね。」
ボクはしゃがみ込んで、地面を両手でバンと叩きました。

すると地面には規則正しくヒビが入り、まるであんみつの中のカンテンみたいな形になって
空へとフワフワ飛んでいきました。


「うわ~、なんでなんで?」
ミルカボちゃんが目をキラキラと輝かせて問いてかけてきます。
「それはねボクが今、音を立てて驚かせたから地面がびっくりして空へ逃げていったんだよ。」
そう言うと、ミルカボちゃんはしきりにやってみたいといいだしました。
「いいけど、そっとだよ!」
「わーい。」
ミルカボちゃんの耳にボクの声が後半届いていなかったのでしょうか、ミルカボちゃんは飛び上がり
渾身の力で頭の栓を地面に発射しました!

その瞬間ボクたちの足元はグラグラと揺れ始め、ピシピシ音を立てながら均等に裂けてゆきます…
「ミ、ミルカボちゃんびっくりさせすぎだよ、うわあぁぁぁぁぁぁっ。」

ボクたちを乗せた地面は大空へと勢いよく舞い上がっていきました。
【第4話】 はぐれ風呂

あれ? お風呂の子供だ。
昨日の群れからはぐれちゃったのかな。
「ねーキミ、どうしたの?」
そう聞いた瞬間、お風呂の子供の頭から栓がポーンと飛び上がり、
お湯がすごい勢いで天までのぼっていきました。

この子のお風呂のセンスは抜群だ! そう思える瞬間でした。
きっと将来いいお風呂になると思います。
とりあえずお湯がもったいないので、ボクはすぐに栓をしてあげました。

しかしお風呂の子供はまた栓を飛ばしました。
ボクはもう一度素早く栓をしてあげましたが、またポーンと栓を飛ばします。

きっとこれを楽しい遊びかなにかだと思っているのかもしれません。
「ねえキミ、名前はなんていうの? もしよければお父さんとお母さんが見つかるまで
一緒に旅をしようよ」そう尋ねると、お風呂の子供はコサックダンスを踊り始めました。

そして大地にコサック文字で何やら書きはじめましたがボクにはさっぱり読めません。
でもきっと快く承諾してくれたんだと思います。だった嬉しそうなんだもん!
ところでこの子のことを何て呼べばいいんだろ? まだ小さいからしゃべれないみたいだけど…
「ボクにはキミがチーズに見えるから、モッツァレラって呼んでもいいかな?」
「やだよ!」
うわっ、しゃべった!! 「なんだ、しゃべれるんだ。」

「ミルカボっていうんだ、かわいい名前だね。」
ボクはそう言うと、ミルカボちゃんを抱き上げ、頭のくぼみに乗せてみました。

「ぴったりだ!」
なんだかボクはミルカボちゃんに親近感をおぼえ、
仲良くやっていけそうな気がするのでした。
【第3話】 草とお風呂
あのたくさんの白いたまふんたちはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?
ボクはふたこぶラクダ号と途方に暮れながら歩いていたところ、
偶然にもアメンボぴんぴん草に出くわしました。

小腹も空いてきたところだったので丁度助かりました。
「この先っちょの白いやつが美味しいのだ」
ボクは2・3粒白いやつを食べました。
ふたこぶラクダ号は5・6粒白いやつを食べました。
お腹もいっぱいになりしばらく休んでいると、
遠くの方から凄まじい地響きがしてきました!
大地は揺れ、白いやつが一斉にちゅうに舞い上がります。

お風呂だ!! お風呂の群れが突然やってきました。

ボクはここのところお風呂に入っていなかったので
このチャンスを逃すまいと、ふたこぶラクダ号を走らせお風呂に飛び移りました。
「あ~いい湯だ」 ボクは久しぶりにお風呂に入りました。
【第2話】 たまふんの森
ここはボクが生まれた場所。
この森には『白いたまふん』という、産毛に包まれたとても小さなたまふんが住んでいます。

ボクはもともとはただのさくらんぼで、以前は枝にぶら下がっているだけの毎日でした。

そんなただのさくらんぼでも、次第に赤く美味しそうに熟れてゆくとケーキ屋さんに
摘み取ってもらえ、その後はケーキの上で甘い人生を送ることが出来ます。
それなのにボクだけなぜか摘み取ってもらえず、いつまでも枝にぶら下がっているのでした。

しかしある日突然、ボクの退屈な日々を大きく変える出来事が起こりました。
それは森に住む白いたまふんの赤ちゃんが、何かの拍子に巣から落ちてきたのです!

ボクは今頑張らないでいつ頑張るんだと思い、無我夢中で赤ちゃんに飛びつきました。

顔中あちこち擦りむいたけど、赤ちゃんはボクがクッションになったおかげで無事でした。
すぐにお父さんとお母さんがやって来て、ボクは赤ちゃんといっしょに巣へとつれていかれ、
なぜか大切に育てられました。

その後ボクはすくすくと成長し、手足が生えてきました。
枝にぶら下がっている時には気づかなかったけど、歩けるようになって初めて
森の美しさを目の当たりにしました。
いつしかボクはもっと美しいものをこの目で見て触れてみたいと強く思うようになり、
お世話になった白いたまふんとも別れを告げ、森に住むラクダと旅に出ました。

3日後、ボクたちは忘れ物をした事に気づき森へ帰ってみると、
なぜか白いたまふんは一匹もいませんでした…
【第1話】 ふたこぶラクダ号に乗って出発!!
★これがふたこぶラクダ号!!
現実とファンタジーは隣り合わせだ。それはまるでふたこぶラクダのコブのように。
いやむしろふたこぶラクダのコブはファンタジーの象徴かもしれない。
ぶつかり合うことのない二つのこぶは、決して一つになろうとはしない。
そんな二つのこぶにまたがって、ボクは このこぶの橋渡し的お話を綴っていこうと思います。
★ファッションチェック!