すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる
当ブログ記事「工学部zくん すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる」 で、「数学は役に立つのか? 」、「そもそも役立つとは?(短期的、長期的)」ということを話題にしましたが、これらの疑問についても、明快に書かれた文庫本(以下、本書)※1 がありましたので、ご紹介します。
東大の西成先生が、都立高の生徒に特別授業
著者の西成先生は、東大大学院で航空宇宙工学※2 を専攻。現在は、東京大学先端科学技術研究センター※3 教授で、ご専門は「渋滞学」。この「渋滞学」についても、本書151ページ以降で書かれていますが※4、メインは、2010年に、都立三田高校  の1年生に向けて行った、特別授業がベースになっています。
『私が15歳、16歳のみなさんに伝えたかったことは、高校の教科書で勉強する数学についてではありません、現実社会に飛び出して、様々な場面で活躍している数学』本書10ページ)。
―――このあたりは、大学の工学部で一般的に習う範囲ですが、
『そして厳密さといい加減さが入り混じった「血の通った数学」の姿です』(同上)。
 
●「血の通った”微分”」についての説明
ここで、「高校の教科書で勉強する数学」というのは、テスト問題に出てくる、もろもろを思い浮かべていただくとして、それに対して先生の説明は、「具体的な例」を出して「数式のイメージトレーニング」をするもので、たとえば「微分」については、コップに入った水の表面張力(本書67ページ)を例に、ゆらゆらの式(三角関数)からニュートンの運動方程式、ベッセル関数 
などまで紹介されています。
ちなみに、ソリトン波理論(本書126ページ)も、「形の崩れない波」について、運動会の綱引のイメージで説明されています(先生も、元になる理論は難しいと書かれてますが、大学で講義すると、「数理科学」の大学院レベルで、 ↓ な感じの内容になります)。
 
微分は大学数学とどうつながるのか?
数IIIまでで習う(そして、入試に出題されます)、
  微分・積分、ベクトル、図形、三角関数、二次方程式
が、大学数学の三本柱
  代数、解析、幾何
と、どうつながるかは、本書41ページに図示されています。このあたりは、ちょうど現・工学部2年のZくんがようやくおぼろげに見えてきた「数学の地図」の紹介なんで、理数系志望の高校生のみなさんは、高校数学を武器に、大学数学の3つの塔に挑むんだな~程度のイメージでいいと思いますが。※5
 
●「すぐに役立ないこと」を研究する学問(無駄学)
西成先生は、「渋滞学」と同時に、「無駄学」の研究もされています(本書221ページ~)。「無駄」を数学的に扱うとはどういうことか? それにはまず、「無駄」を数学的に「定義」することが必要で、西成先生は、
  「目的」と「期間」を決めることで、無駄かどうかを判定する
とされました。
 
人生長い目で見れば 無駄な勉強なんて何もない
身近な受験勉強でいいますと、受験科目でない教科は、目先の受験生のみなさんには無駄と感じるでしょうが、長期的には役に立つ例が、先生ご自身の体験として本書223ページに紹介されています。
そして、当ブログ記事「教養がじゃまする? 京都大学式留年対処法」 で書きました、大学の「教養科目」についても、筆者自身、心理学をとらなかった(とれなかった)のは失敗だったと、クリスマスが近づくこの季節になると、思います。 
 
無駄を生み出している社会システムを変えるには
先生は、さらに進んで「無駄」を生み出している「社会システム」についても本書223ページ以降で書かれています。
先生の指摘されている視点を頭の片隅において「政治・経済」を勉強されると、大人になっても役に立ちますし、「都市基盤系」や「地域系」の学部・学科では、大学に入って「すぐに役立つ」と思います。
 
戦略を語る講演(おまけ)
IOT(モノのインターネット)についての「戦略」を語る、先生の講演「IOTと未来」は↓
理工系志望のみなさんは、↑ のような社会の変化を視野に入れて、「志望学部・学科」を決めてください。
⇒とはいっても、下記※2 のように、「システムデザイン工学科創造生産工学コース」という名称ですと、高校生のみなさんが??? と思うのは無理ないでうよね。当ブログでは、「金沢大学理工学域の中身」ほか、さまざまな形で、今後も理工系の学部・学科の中身を、ご紹介の予定です。
 
※1 「とんでもなく役に立つ数学」 西成活裕著 角川ソフィア文庫
※2 航空宇宙工学については、当ブログ記事「工学部くん 航空と宇宙に関わる工学系国立大学を探すには」。この記事でもご紹介した、秋田大学理工学部システムデザイン工学科創造生産工学コースでは、中学生向けのロケット講習会、中学生モデルロケット秋田県大会を実施しています。
http://www1.sozo.akita-u.ac.jp/course_introduction
あと、「すぐ役にはたたない」けれど
レオナルド・ダ・ヴィンチ その1 鳥の飛翔に関する手稿
※3 東京大学先端科学技術研究センター http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/home/access/index_ja.html
は、目黒区駒場にあります。
※4 渋滞学のエッセンスは下記記事に ↓
 http://www.cinra.net/interview/2014/01/17/000000
※5 なお、Zくんの高校の同級生が、「数学科」に入学して、学科の先生に真っ先に言われたのは「高校までの数学は全部忘れてください」だそうですーーー。 農工大には「数学科」はありませんが、大学院数理科学部門には、たとえば有機材料化学科に「3,4次元多様体と結び目・絡み目」がご専門の先生がおられたりします。トポロジー応用がらみと思いますが、ご興味のある高校生は、「科学何でも相談室」にメールをしてみてください。
純粋数学から実社会までの4つのカベについては、本書123ページから。

BGM:YMO「TECHNOPOLIS」Dance Perfume ⇒Youtube でみられます(黙認版?)
写真提供:冒頭写真は「足成」
理工系の大学・院卒業までのリアルな学費
当ブログでは、この「理工系Vくん」シリーズの「とても大事なお金の話」※1 の記事で、理工系の大学7年間・5年間の学費の試算を掲載しました。
  国公立大学の理工系では、70~80%が大学院に進学しますので、院・修士までの6年+留年リスク(2~3割)※1 で、7年間の「学費だけ」でおよそ、 54×7=378
 私立大学理工系 学部4年+留年1年=5年間の[学費と施設費] (104+19)×5=615
 
大学生活で1年間にかかるお金
上記以外の記事でも、「一人暮らしのケース」ほか、ぽつぽつ試算していまして、いずれまとめる必要があるとは思っていますが、以下、日本学生支援機構(JASSO)の2014年度データによれば、
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2016/03/14/data-14_all.pdf
  国立大学・自宅通学生 の学費+生活費合計 は年額約110万円
  国立大学・自宅外生 の学費+生活費合計 は年額約171万円
  私立大学・自宅外生(アパートなど) の学費+生活費合計 は年額約240万円※2
 
理工系の場合、アルバイト代は期待できない
国公立大学理工系の場合(たぶん有力私立も)は、アルバイトの時間と勉強時間との「天秤ばかり」になりまして、1年留年するよりは、「平日の長時間バイトはまず無理」と覚悟してください。早起き&朝ごはん目的の、短時間朝バイトについては、過去の記事で紹介しています
 
収入を増やすか? 経費を減らすか?
国立大学・自宅外生の場合でも年間約171万円 かかりますので、家計から月14万円くらい支出できるか? が、目安になります。足りないときは。
 
・収入を増やす
まずは、現在の日本学生支援機構(JASSO)の「貸与型奨学金」、つまり卒業後、分割で返済する「借金」なんですが、返済額が月2万円を超えることはないので(下記 シミュレーション ↓ 15年ローンとかですね)
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/sample/sample_daigaku.html
理工系とくに工学部の場合は、卒業して企業に就職した場合、初任給は20万円以上になりますから、下手にアルバイトを多くして「留年」するよりは、奨学金を借りる方をおすすめします。
なお、今、国が検討している「給付型奨学金」については、別記事にする予定です(熊本大は文末)。
 
学費を減らす(マイナス54万)
奨学金だけでは、足りない場合、ご家庭の事情と学業成績次第で、「授業料免除」の制度があります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20010328001/t20010328001.html
各国立大学で、運用が違いますので、HP でチェックしてみてください。例 ↓ 徳島大学http://www.tokushima-u.ac.jp/campus/scholarship/
 
・寮に入って家賃を減らす(マイナス40万)
先にご紹介した、JASSOの生活費データで、国立大学・学寮に住む、自宅外学生ですと、学費+生活費合計が年間約132万円 になり、一般の自宅外生より年40万円ほどお得になります。
「学寮(学生寄宿舎)」については、映画「鴨川ホルモー」に出てくる、京大の寮(吉田寮は大正2年築 寮費月400円!!)をイメージすると、つい敬遠するかもしれませんが、※3
農工大・工学部(東小金井)の旧欅(けやき)寮生活
http://www.babuwagon.com/photo/keyaki.html
新欅寮(個室)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11103205456
と、新しい寮はだいたい、個室です。
各大学・キャンパスで、物件の中身はまったく違いますので、できるだけオープンキャンパスの際には、寮も自分の眼でみておきましょう。あと、応募基準もですね。
とくに、東京近辺は、家賃が高いので、上記平均値ではなく、実際の家賃(大学徒歩15分、1Kとかですね)を調べて、試算すると、差が実感できます。
下記 ↓によると、首都大の寮は、家賃4700円に、水光熱費別途月額6千円くらい。倍率3~4倍の人気のようです。
【参考】首都大学東京HP 学生寮に関するFAQ
 
●電通大に大型の新寮計画
東京・調布の電通大は、過去の記事で留年に関するデータを紹介しましたが、4年間で学部を卒業できるのは、72%(数字を出さない/出せない他大学工学部も、おおむね似た数値だと思います。)
理工系オンリーの電通大の場合、学生に勉強に専念してもらおうという親心? からか、、来年度(平成27年4月)完成予定の、総数400戸(個室220、ユニット180)の学生寮が、目下工事中です。
http://www.uec.ac.jp/100th-campus/news/pdf/20160210.pdf
留学生混住型で、同じ敷地内に「職員宿舎」もあるようで。※4、
新宿に出るのに便利な、調布駅から徒歩7分くらいの好立地なので、土日の短時間バイトにも便利だと思います。
http://www.uec.ac.jp/campus/welfare/
電通大では、11月27日(日)に第2回オープンキャンパス
https://www.uec.ac.jp/admission/open-department/opencampus/
がありますので、まだ工事中ですが、この寮についても説明会のときなどに聞いてみてはどうでしょうか?
 
●WEBで、物件の中身が確認できる
さらに、パソコンなどから、マウス操作で、物件(新寮)の居室などが360度見られる映像ページが、電通大HPの↓ に掲載されました。映像で分かるように、居室はちょっと狭いワンルーム風です。
 
パンフレットが追加されました(11月中旬)
月額家賃は、ユニットタイプ(安い方)で、4万円強、インターネット利用料は1Gbpsで1070円ーーー少し高い気もしますが、「調布」は、都心に近い分、周辺家賃も、農工大、首都大あたりとは、民間賃貸の家賃も違います。
例:調布駅徒歩20分、築10年 ワンルーム 4.5万
 
●立地と家賃相場
ニュースで、東大が、「駒場」の女子学生100人(新入生対象)に月3万円の家賃補助 とありましたが、駒場のワンルームで、月8万円強 ↓ が相場のようです。。
 
当ブログで、東京近郊6大学の夏のオープンキャンパス情報をお伝えし、下見をおすすめしたのは、上記のように、これも土地勘がないとわかりにくい、東京近郊の住宅事情を、できるだけ事前にみていただきたいからです。都心との相対位置関係は、下図(再掲)の、上のマスに、丸い山手線が、すっぽり入るイメージで、都心から離れるほど家賃は下がりますし、最寄駅から遠いほど、当然家賃も下がります。
たとえば、埼玉大学ですと、最寄りの南与野駅バス13分の代わり、大学まで徒歩2分のワンルームで3.2万円。
工学部は、平日は大学(授業)と家(レポート)の往復ですので、駅までの利便性は、あまり重要ではないと、個人的には思います。ただし、一人暮らしの場合、近くにお惣菜の充実した大型食料品店があるかどうかは、けっこう重要です。
※なお、横浜国大の寮も、特徴がありましたので、年内に、東京近郊6大学の学生寮(と家賃相場)のまとめ記事を書くかもしれません。
※1 当ブログの「工学部Zくんシリーズ」で、現在、首都圏の国公立大学工学部2年のZくんの、留年との闘いをレポート中です。
※2 私立大学では、文系と理系で学費差があるので、理系の場合は、国立大学・自宅外生の学費+生活費合計の年額約171万円に、国立と私立理系の学費差69万円をたしてみましたが、240万円と、偶然? ほぼ同じ金額になりました。私立は学費差が大きいので、できるだけ、併願校の学費+周辺家賃を調べて、比べてみましょう。
※3 親御さん世代の学生時代には、まだ寮に「学生活動家」が生息していたかもしれません。当ブログ顧問? のSさんの証言では、80年代の某国立大女子寮で「若干名」だったそうですが、その猛者たちを蹴散らして、Sさんは寮長にもなったそうでーーー。
一方、電通大の新寮は、管理が、今どきの「民間委託方式」です。
※4 留年黄信号の学生には、あえて「寮監」がいるユニットに「強制入寮」はどうでしょうか? あらたに「脳科学ライフサポートセンター」も設置されたようなので、恰好(かっこう)の研究テーマかも。
写真:11月3日の電通大 (C)ペルナス 冒頭写真中央(正門前)の学生さんは、青い褞袍(どてら)を着用してました。
・BGM くるり 「東京」
安全・安心な社会をめざす学問
当ブログでは、以前から都市環境学部や都市科学部など、都市基盤を支える工学系の紹介を予定していました。
が、鳥取地震(2016年10月21日 ※1)が起きましたので、まだ熊本地震からも半年たらずですし、熊本大学のHPをチェックしてみると、
熊本復興支援プロジェクト始動~平成28年(2016年)熊本地震からの復興のために熊大ができること~」が、スタートしていました。
具体的なプロジェクトは、10月時点で8つ(下記)。
http://www.kumamoto-u.ac.jp/syakairenkei/sangakukan/fukkoproject/fukkoproject-file/fukko-project1.pdf
うち、6プロジェクト等が、理工学系にも関わりますので、今回は、理工系のどのジャンルが、具体的にどのように社会に役にたつのか? の好例としてご紹介します。

(1)震災復興デザインプロジェクト⇒被害の大きかった益城町に「サテライトラボ(まちづくり拠点)」を設置など
(2)熊本水循環保全プロジェクト⇒水循環システムと水質に対し、熊本地震が与えた影響を明らかにする
(3)阿蘇自然災害ミチゲーションプロジェクト⇒火山性地質という特異性による、地すべり、土石流ほかの山体崩壊の自然災害発生メカニズムの解明など
(4)熊本城等被災文化財の復旧・活用支援プロジェクト⇒熊本城をはじめとする被災文化財や歴史的建造物の復旧・活用を支援
(5)プロジェクト技術支援ユニット⇒:各種センサー、レーダ技術、ドローン技術ほかのセンシング・モニタリング技術や画像処理、ビックデータ処理ほかのデータ解析法で、他プロジェクトを支援
(6)産業復興プロジェクト⇒被災した1次2次3次産業の復旧・復興支援や、ベンチャー等新産業の創出
さらに、これらのプロジェクトの実行にあたり、熊本大には特徴的な組織がありました。
 
減災型自然・社会基盤システム実践研究教育センター
減災型自然・社会基盤システム実践研究教育センター(IRESC)は、2012年に大学院・自然科学研究科の関連機関として設置されました。きっかけは、2011年の東日本大震災や、2012年7月の九州豪雨。近年激しくなった、これら計画規模を超える地震・津波・豪雨に対しては、「防災」というよりは、センターの名前どおりの「減災」(被害の最小化)をめざすという取り組みです。※2
それには、
  ・ 地域の福祉・介護・公共政策等の人文・社会科学的知識技術
  ・ 災害メカニズム・情報システム・シミュレーション等の理工学的知識技術
  ・ 防災教育・リスクコミュニケーション等の社会教育実践の知識技術
3要素を統合して運用することが必要で、センターの教員・スタッフにも、この3分野の専門家が参画しています。
たとえば(1)のプロジェクトのリーダーである、同センターの柿本教授(減災型自然・社会基盤システム研究推進分野研究部門長)は、工学部社会環境工学科との併任。
 
熊本大学工学部社会環境工学科/社会環境工学専攻 http://www.civil.kumamoto-u.ac.jp/index.html
熊本大学工学部の社会環境工学科は、『自然環境との調和を図りつつ社会基盤システムを創造できるような幅広い視野と高い専門技術力を備え、地域のまちづくりや防災などの課題に対して技術的提案や政策立案などで貢献できる技術者・研究者を養成』をねらいとする学科ですので、上記柿本先生はじめ、山尾教授(構造力学)が(4)のプロジェクトのリーダー、川越教授(水質環境学)が、(2)のプロジェクトのリーダーをつとめられているなど、同科の学部生、院生のみなさんも、復興プロジェクトにさまざまな形で参加すると思われます。
 
鳥取大 http://www.tottori-u.ac.jp/
鳥取大には、以前当ブログの「地域系学部」記事でご紹介した「地域学部」と、工学部に「社会システム土木系学科/社会基盤工学専攻」がありますので、これからプロジェクトを立ち上げると思います。
●社会をつくる技術
とくに、鳥取大工学部社会システム土木系学科内には、「社会技術者」の育成をめざした、「社会経営工学プログラム」(大学院工学研究科社会基盤工学専攻社会経営工学コース)があります。
この「社会技術者」とは、
『工学部のほとんどの学科では,「ものづくり」のための技術を学びます.これに対して社会経営工学プログラムおよび社会開発システム工学科では,「もの」ではなく, 安全で豊かな社会をつくるための技術を学びます.具体的には,社会の 「仕組みをつくる」 「進め方をつくる」 「決まりをつくる」』
たとえば、「仕組み」では、行財政改革、危機管理など、「進め方」で地域防災計画などを学びます。
このほか、今回の鳥取地震は、”未知の断層のズレ”が原因の可能性もあるそうなので、土木工学科などでの研究もまたれます。※3
 
追加:鳥取大学による支援の取り組み状況
 
●多くの工学系にある環境・社会関連学科等
他県の中高生のみなさんも、近隣の国立大学等には、地域社会に密接に関わるさまざまな学部、学科がありますので、探してみてください。ちなみに、国立大学54工学系学部ホームページの「学校検索」で、「社会」をキーワードにすると、51件ヒットしました(「環境」でも51件)。
学部、学科名でよくわからない場合でも、「コース」などにまぎれているケースもありますよ。

※1 鳥取大トップページより:「10月21日14時8分頃 鳥取県中部を震源地とする大きな地震がありました。この地震による鳥取大学での被害はございません。(10月21日17時現在)」
※2 東北大には、東日本大震災後に設置された、耐災害ICT研究センターがあります。
※3:国土地理院・活断層について http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/explanation.html
●BGM 「君の街まで」 ASIAN KUNG-FU GENERATION
●冒頭写真(熊本城)提供:熊本市観光協会

 

写真提供:京都フリー写真素材

●教養がじゃまする
福岡伸一先生の『生物と無生物のあいだ』を読んでいたら、ちょうど、1970年代終わりの京大について、
『この頃の京都大学はきわめてのんびりしていて、学年の進級に関して何の制約もなかった。単位はすべて卒業までに取得すればよく、各人の専攻も入学時に決まっており※1 (中略)結局、自由気まま、自堕落な学生生活を散々送った挙句に、四年生になってからあわてて単位をそろえるような学生も多数いた。それを彼らは「教養がじゃまする」などと称していた(教養課程の単位不足という意味である)。』
1年生にまじって、語学のクラスを受講する4年生が少なからず混じりこんでいた光景を、「今から思えばこのようなモザイク性こそ大学の面白さだといえるのだが」
 
1959年生まれの福岡先生は、ボブ・ディランを学生時代に聴いた世代ですかね? 本日(2016年10月15日)の読売新聞コラムには、「さかしまに 歳月ゆかる ボブ・デイラン 聴き呆けてた 俺とは何だ」(島田修三)
の歌が紹介されていて、今どき学生の場合は
「歳月ゆかる [ ] 聴き呆けてた」※2 
になりますか?
が、今の学生は、CAP制(前記事)があったり、就活や院試対策に時間をとられたりで、4年生で一挙にとりかえすことはできません。ただし、「教養がじゃまする」傾向は、少なくとも工学部では今もかわらないようです。
みなさん、自分が選んだ「専門科目」は、もともと興味があるので、勉強するんですが、「まっさきに手を抜く」のが、教養科目なんですね。国公立大学の工学部ですと、2年後期からは、実験・実習レポートの嵐がまちかまえていますので、1年前期で教養科目をけっこう落とした人が、挽回できるのは、実質、1年後期、2年前期と思った方がよいです。
 
●京大式留年対処法
現在の京都大学では、さすがに2割(下記ページのデータ)の留年生等を、放牧? しておくわけにもいかないと見えて、学生総合支援センター・カウンセリングルームが、「留年について」のとても丁寧なメッセージを、下記に掲載していました。
※リンク切れになったため、2024年 リンク先のみ下記に変更しました。

 

 


京都大学生に限らず、現在の日本の大学生の中で、「不本意留年」した本人または、留年予備軍の学生の親御さんは、ぜひご一読ください。そして、どの国公立大学にもある、「相談窓口」まで行けるように、まずは文中の「缶コーヒーを買う」ことから、はじめてみるといいかもしれません。
 
●京都大の講義を無料で聴ける 
逆に、京大生ではないけれど、ぜひ京都大の先生の講義を聴いてみたいという方むけに、京都大OCW(京都大学オープンコースウェア)という、ネット講座が、なんと、2005年から開講していたんですね。
高校生向けOCW のページもあり。http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/high-school/01
さらに、高校生向けおすすめ科目ページ http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/high-school/04 もあるんですが、残念ながら、リンク切れの箇所があったり、(~2010年)の科目が多いようですので、ぜひ最新版にしていただきたいものです。
 
■当ブログ内・関連ページ 「親と子のための留年予防の基礎知識
※1 高3受験生のみなさんは、いわゆる「進振り」で、入学後に進路(学科)が決まる東大や、類別募集の東工大などとの入学後の違いも知ったうえで、志望校をしぼりこんでください。
※2 [ ]記号といえばイコール[Alexandros]。MV「Feel like」を観呆けてます。
I know what’s waiting, outside the door, oh yeah
●冒頭写真 京都・直指庵の紅葉
当ブログで、単位取得状況を定期的にリサーチしているおかげで※1 、現・国公立大学工学部2年のZくんは、「落とした単位0」をキープ。こうなると、早稲田大・女子の七大陸最高峰制覇 からは、かなりスケールダウンしますが、
  8期連続 全単位制覇(つまり、1年前期から4年後期まで、単位を落とさずに学士を卒業)
が目標になりますので、Zくんには引き続きがんばっていただくとして、今回は、Zくんの夏バイト仲間、Jくんのケース。
 
● 留年とは?
 Jくんは、千葉県※2 の自宅から、都内某大学(理工系)に通学していますが、2年前期までで、取得単位が50台。順調ですと、すでに 半期24単位×3=72 単位くらい取れてるはずなので、そろそろ黄色信号レベルです。
 ここで、何が問題かと言いますと、まず「留年する」というのは、大学・学部により、制度はさまざまですが、少なくとも卒業所要単位(124単位くらい)より、取得単位が少ないと、4年間では卒業できない=5年生になります。
さらに、単位数は124単位以上でも、細分化した「教養科目 12単位以上」「語学8単位以上」の単位数に満たなかったり、必修科目を一つでも落としたままだと、これも卒業できません。
4年間で卒業できる割合は、熊本大学工学部のデータ(平成27年度実績)で 82.4%(つまり5人に1人が留年)です。
国立大学工学部にけっこう多い、別キャンパスは要注意
 大学によっては、教養科目と専門科目のキャンパスが別の場合があります。多いのは、1or2年が全学キャンパス、2or3年から工学部キャンパスに移るケース.
信州大工学部は、1年が松本キャンパス(松本市)で、2年から長野市。こういう場合(以下 下記より引用)
http://www.mech.shinshu-u.ac.jp/education/credit.html#graduation
「1年次の授業科目は長野地区では受講できず,長野地区の授業科目を受講しながら松本キャンパスへも通学することとなり,2年次以降の専門科目の履修計画に大きな支障となります.このようなことを避けるため,1年次の授業科目は入学年度において必ず履修してください.」
 
そして信州大工学部・平成26年度新入生で、とるべき単位をみると 
http://www.mech.shinshu-u.ac.jp/education/h26_rishuuyouken.pdf
3年から4年に進級する要件が
(1) 共通教育科目に関する卒業要件単位数36単位(教養科目,基礎科目)を全て修得  
(2) 必修専門科目12単位を全て修得  
(3) 選択専門科目58単位(うち選択必修2単位以上)を修得
単純に106単位以上が必要となります。ちなみに、信州大学工学部の卒業要件単位は126単位。
 つまり、信州大学工学部の場合は、
1⇒2 36単位 (通学のカベ 2年以降の単位取得の足をひっぱる)
3⇒4 106単位
4⇒卒業 126単位
のハードルがあり、それぞれにひっかかると、4年間での卒業ができないわけです。
●キャップ(CAP)制の壁
さらに、最近は、CAP制といって、1学期(1学年)に取れる単位数に上限を設定している大学・学部がけっこうあるはずです。農工大もこの制度を採用していますが、茨城大学の説明 ↓ が分かりやすいのでご紹介します。
 https://www.ibaraki.ac.jp/generalinfo/activity/educating/gpacap/index.html
茨城大学工学部※4 の場合は、年間で54単位(半期で28または26単位)が上限になります。
 つまり、1、2年で単位をけっこう落としたから、3年生で挽回しようとしても、54単位のカベがあるわけです。

●成績優秀者はますます単位をたくさんとれる
一方で、農工大などの場合、学業成績が一定レベルを超えた学生については、
http://web.tuat.ac.jp/~kitei/act/frame/frame110000430.htm
上限を32単位(工学部 通常は半期26単位)に定めています。
単位を順調に取れた学生は、さらにたくさんの単位が取りまくれ、逆に単位が足りない学生には上限があるというのは、何だかおかしいように思えるかもしれませんが、成績優秀=余力のある学生は、たくさん授業を受けても、課題などを要領よくこなしますし、逆に、単位をこれまで落としてきた学生が、あせって履修登録しすぎると、テスト期間中などに過負荷で、かえって共倒れになる危険があります。
CAP制がない大学でも、工学部の場合は、2年後半から実験・実習が加わって、見た目以上の「負荷」が増えます。上記、信州大学の最低値を参考にすると、
2年⇒3年 は70単位
がギリギリですかね。ちなみに、Jくんの大学・学部の学生の平均値は2年⇒3年 80単位だそうです。
 
●GPAを参考にしよう
今回の記事でご紹介したHPに、GPAという単語があちこちで出てきました。
このGPAは、昔の「優良可」などの成績表に代わる、成績評価のしくみです。これも、各大学で方式が少し違いますが、小樽商科大学下記ページでは、
http://www.otaru-uc.ac.jp/hkyomu1/gpa/GPA2.html
具体的な参考例を挙げて、算出方法が掲載されているため、分かりやすいです。
ちなみに、先ほどの農工大で、CAP制の上限が32単位になる「成績優秀者」の目安が、GPA3.0です。
 
●今の大学を知る参考書「弱肉強食の大学論」
このGPAとか、シラバスとか、たぶん今の大学生の親御さん世代が学生のころとは、全然違う用語が大学のHPに出てきたり、大学からのお知らせに書いてあったりで、けっこう大変だと思います。
これらの用語が、いまどきの大学(改革)の中で、どういう意味をもつかについて、新書で分かりやす紹介されているのが、「弱肉強食の大学論 生き残る大学、消える大学」(2014年)です。
GPAについては、154ページ~。そして、GPAを指標に、学生の成績が一定水準以下になったら、親をまじえての面談(同書168ページ・桜美林大学)がおこなわれます。
 
親は出資者
冒頭でご紹介した、Jくんのケースでは、自宅通学ではありますが、大学の時間割が不規則のため、
親御さんがJくんの朝寝坊にもけっこうノーチェックだった⇒1時限目の出席率が悪い⇒単位を落とす
というパターンがあったようです。
大学生になったJくんの自主性を尊重するのは、それも大事なことですが、そろそろ非常事態宣言を出しても良いかも? というのは、留年の余分の出費(1年分の学費、交通費)を払うのも、親御さんですからね。
ただし、Zくんの場合は、所定修業年限(つまり、学士+修士の6年間)を超えた場合の学費等は「親からの借金」(家庭内の貸与型奨学金)になるーーーと言い渡されているそうです。
 
●1年生の親御さんは前期の取得単位を確認してますか?
なお、茨城大学のデータ
http://www.eng.ibaraki.ac.jp/common/pdf/collegelife/education/fd/FD2012_2.pdf
によれば、
1 年 前期の修得単位数が20以下の学生の約60%は留年・退学する傾向にあり※4 、また 1 年前期の GPA と累計 GPA に相関』(PDF 7ページ)があるそうなので、現1年の親御さんは、お子さんの前期の成績を今のうちに確認してみてください。
つまり、1年前期の成績が悪いと、低空飛行のまま、4年間推移するパターンが多く、最悪墜落ーーーということです。
 
●続編ページ 「京都大学式留年対処法
●学部4年間の全単位制覇(いわゆるフル単)を達成した、Zくんの感想は、下記記事(2019年3月)で。
●学部3年間(順調なら、1~3年生の3年間で卒論をのぞく、卒業に必要単位数が取れる)のペース配分については、下記記事の●2
に書いています。。
あくまで、某国公立大/学部/学科のケースですが、理工系の場合は、卒論に向けて、だんだんレポート量が増え (自宅学習の負荷がアップし) ますよ!
 
※1 量子力学ではなく、社会・心理系でいう「観察者効果」ですね  
※2 ピコ太郎の設定が「千葉県出身」に不満だそうで。そんなJくん推奨は、成田市発のさわやか系バンド「Boys END SWING Girl」。「花に風」はMVもいいですね。
※3 出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1456687339
※4 茨城大学工学部も2年生から日立キャンパスなので、やはり1⇒2 の実質的カベがあります
※5 桜美林大学の例
●今回のBGMは 米津玄師の「LOSER」。ちなみに、留年生は英語で「Repeater」だそうです。
●冒頭写真の彫刻は金沢・香林坊にあった「走れ!」