当ブログで、単位取得状況を定期的にリサーチしているおかげで※1 、現・国公立大学工学部2年のZくんは、「落とした単位0」をキープ。こうなると、早稲田大・女子の七大陸最高峰制覇 からは、かなりスケールダウンしますが、
  8期連続 全単位制覇(つまり、1年前期から4年後期まで、単位を落とさずに学士を卒業)
が目標になりますので、Zくんには引き続きがんばっていただくとして、今回は、Zくんの夏バイト仲間、Jくんのケース。
 
● 留年とは?
 Jくんは、千葉県※2 の自宅から、都内某大学(理工系)に通学していますが、2年前期までで、取得単位が50台。順調ですと、すでに 半期24単位×3=72 単位くらい取れてるはずなので、そろそろ黄色信号レベルです。
 ここで、何が問題かと言いますと、まず「留年する」というのは、大学・学部により、制度はさまざまですが、少なくとも卒業所要単位(124単位くらい)より、取得単位が少ないと、4年間では卒業できない=5年生になります。
さらに、単位数は124単位以上でも、細分化した「教養科目 12単位以上」「語学8単位以上」の単位数に満たなかったり、必修科目を一つでも落としたままだと、これも卒業できません。
4年間で卒業できる割合は、熊本大学工学部のデータ(平成27年度実績)で 82.4%(つまり5人に1人が留年)です。
国立大学工学部にけっこう多い、別キャンパスは要注意
 大学によっては、教養科目と専門科目のキャンパスが別の場合があります。多いのは、1or2年が全学キャンパス、2or3年から工学部キャンパスに移るケース.
信州大工学部は、1年が松本キャンパス(松本市)で、2年から長野市。こういう場合(以下 下記より引用)
http://www.mech.shinshu-u.ac.jp/education/credit.html#graduation
「1年次の授業科目は長野地区では受講できず,長野地区の授業科目を受講しながら松本キャンパスへも通学することとなり,2年次以降の専門科目の履修計画に大きな支障となります.このようなことを避けるため,1年次の授業科目は入学年度において必ず履修してください.」
 
そして信州大工学部・平成26年度新入生で、とるべき単位をみると 
http://www.mech.shinshu-u.ac.jp/education/h26_rishuuyouken.pdf
3年から4年に進級する要件が
(1) 共通教育科目に関する卒業要件単位数36単位(教養科目,基礎科目)を全て修得  
(2) 必修専門科目12単位を全て修得  
(3) 選択専門科目58単位(うち選択必修2単位以上)を修得
単純に106単位以上が必要となります。ちなみに、信州大学工学部の卒業要件単位は126単位。
 つまり、信州大学工学部の場合は、
1⇒2 36単位 (通学のカベ 2年以降の単位取得の足をひっぱる)
3⇒4 106単位
4⇒卒業 126単位
のハードルがあり、それぞれにひっかかると、4年間での卒業ができないわけです。
●キャップ(CAP)制の壁
さらに、最近は、CAP制といって、1学期(1学年)に取れる単位数に上限を設定している大学・学部がけっこうあるはずです。農工大もこの制度を採用していますが、茨城大学の説明 ↓ が分かりやすいのでご紹介します。
 https://www.ibaraki.ac.jp/generalinfo/activity/educating/gpacap/index.html
茨城大学工学部※4 の場合は、年間で54単位(半期で28または26単位)が上限になります。
 つまり、1、2年で単位をけっこう落としたから、3年生で挽回しようとしても、54単位のカベがあるわけです。

●成績優秀者はますます単位をたくさんとれる
一方で、農工大などの場合、学業成績が一定レベルを超えた学生については、
http://web.tuat.ac.jp/~kitei/act/frame/frame110000430.htm
上限を32単位(工学部 通常は半期26単位)に定めています。
単位を順調に取れた学生は、さらにたくさんの単位が取りまくれ、逆に単位が足りない学生には上限があるというのは、何だかおかしいように思えるかもしれませんが、成績優秀=余力のある学生は、たくさん授業を受けても、課題などを要領よくこなしますし、逆に、単位をこれまで落としてきた学生が、あせって履修登録しすぎると、テスト期間中などに過負荷で、かえって共倒れになる危険があります。
CAP制がない大学でも、工学部の場合は、2年後半から実験・実習が加わって、見た目以上の「負荷」が増えます。上記、信州大学の最低値を参考にすると、
2年⇒3年 は70単位
がギリギリですかね。ちなみに、Jくんの大学・学部の学生の平均値は2年⇒3年 80単位だそうです。
 
●GPAを参考にしよう
今回の記事でご紹介したHPに、GPAという単語があちこちで出てきました。
このGPAは、昔の「優良可」などの成績表に代わる、成績評価のしくみです。これも、各大学で方式が少し違いますが、小樽商科大学下記ページでは、
http://www.otaru-uc.ac.jp/hkyomu1/gpa/GPA2.html
具体的な参考例を挙げて、算出方法が掲載されているため、分かりやすいです。
ちなみに、先ほどの農工大で、CAP制の上限が32単位になる「成績優秀者」の目安が、GPA3.0です。
 
●今の大学を知る参考書「弱肉強食の大学論」
このGPAとか、シラバスとか、たぶん今の大学生の親御さん世代が学生のころとは、全然違う用語が大学のHPに出てきたり、大学からのお知らせに書いてあったりで、けっこう大変だと思います。
これらの用語が、いまどきの大学(改革)の中で、どういう意味をもつかについて、新書で分かりやす紹介されているのが、「弱肉強食の大学論 生き残る大学、消える大学」(2014年)です。
GPAについては、154ページ~。そして、GPAを指標に、学生の成績が一定水準以下になったら、親をまじえての面談(同書168ページ・桜美林大学)がおこなわれます。
 
親は出資者
冒頭でご紹介した、Jくんのケースでは、自宅通学ではありますが、大学の時間割が不規則のため、
親御さんがJくんの朝寝坊にもけっこうノーチェックだった⇒1時限目の出席率が悪い⇒単位を落とす
というパターンがあったようです。
大学生になったJくんの自主性を尊重するのは、それも大事なことですが、そろそろ非常事態宣言を出しても良いかも? というのは、留年の余分の出費(1年分の学費、交通費)を払うのも、親御さんですからね。
ただし、Zくんの場合は、所定修業年限(つまり、学士+修士の6年間)を超えた場合の学費等は「親からの借金」(家庭内の貸与型奨学金)になるーーーと言い渡されているそうです。
 
●1年生の親御さんは前期の取得単位を確認してますか?
なお、茨城大学のデータ
http://www.eng.ibaraki.ac.jp/common/pdf/collegelife/education/fd/FD2012_2.pdf
によれば、
1 年 前期の修得単位数が20以下の学生の約60%は留年・退学する傾向にあり※4 、また 1 年前期の GPA と累計 GPA に相関』(PDF 7ページ)があるそうなので、現1年の親御さんは、お子さんの前期の成績を今のうちに確認してみてください。
つまり、1年前期の成績が悪いと、低空飛行のまま、4年間推移するパターンが多く、最悪墜落ーーーということです。
 
●続編ページ 「京都大学式留年対処法
●学部4年間の全単位制覇(いわゆるフル単)を達成した、Zくんの感想は、下記記事(2019年3月)で。
●学部3年間(順調なら、1~3年生の3年間で卒論をのぞく、卒業に必要単位数が取れる)のペース配分については、下記記事の●2
に書いています。。
あくまで、某国公立大/学部/学科のケースですが、理工系の場合は、卒論に向けて、だんだんレポート量が増え (自宅学習の負荷がアップし) ますよ!
 
※1 量子力学ではなく、社会・心理系でいう「観察者効果」ですね  
※2 ピコ太郎の設定が「千葉県出身」に不満だそうで。そんなJくん推奨は、成田市発のさわやか系バンド「Boys END SWING Girl」。「花に風」はMVもいいですね。
※3 出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1456687339
※4 茨城大学工学部も2年生から日立キャンパスなので、やはり1⇒2 の実質的カベがあります
※5 桜美林大学の例
●今回のBGMは 米津玄師の「LOSER」。ちなみに、留年生は英語で「Repeater」だそうです。
●冒頭写真の彫刻は金沢・香林坊にあった「走れ!」