※この記事は、当ブログ「東京の中高生と地方との差とは?」 の続編にあたる内容です。

東京の中高一貫校、難関高校入試ではすでに高度な「記述式」問題を出題
前回記事 で、2020年度からのセンター試験に代わる新テストでの「長文記述式」の動向について、ご紹介しました。
まだ「検討中」ですが、
 高難度の長文を読んで、200~300字の記述をする
ことで、思考力・判断力・表現力を評価する試験にしたいという狙いがあるようです。
ここで「高難度の長文」というのが、どの程度のレベルなのか? 気になりますね。
一橋大学の国語過去問(2016年前期)ですと ↓ このくらい。
新テストは、「1年間に複数回実施」も検討されていますので、はたして毎回「高難度の長文」を出題して、さらに採点もできるんでしょうか? 
前回お伝えした別案の「各国立大学2次試験で国語中心の“高度な”記述式」を出題する方が、より現実的かと思います。
現に東京では、都立高校のうち「グループ作成問題高校」※1 で、かなり高度な記述式問題が出題されています。
例 都立西高校 平成28年度 国語 ↓
http://www.nishi-h.metro.tokyo.jp/09nyushi/mondai/28/28kokugo_mon.pdf
そして、前々回記事「人工知能に代替されない仕事につくには?」でご紹介したイベント「読売グローバル教育フォーラム 人工知能が仕事を奪う?」(以下、教育フォーラム)
で講演をされた柳沢幸雄さんが校長の、私立開成中学・高校ですと、中学入試で ↓(国語は著作権の関係で、問題がみられないため、社会の問題をご覧ください)
http://www.inter-edu.com/nyushi/2016/kaisei/
東京の中学入試では、私立か公立かで対策の中身は違いますが、いずれにせよ「記述式に向けたトレーニング」は必須のようです。
このように、東京の一定レベル以上の中高一貫、難関校を受験すると、万が一合格できなくても、トレーニングの意味は十分あります。現時点でも2020年の新テスト対策(記述式)になっているからです。
※だからといって、塾に行けと言ってるわけではありませんよ(後述)。
 
実はスゴイ! 東京の中高一貫・難関高校の「リベラルアーツ」
都立武蔵の「地球学」
前前前回記事で「東工大のリベラルアーツ教育」http://ameblo.jp/pernas/entry-12145931018.html についてご紹介しました。目玉は、学部3年で「教養卒論」を書くことです。
『教養教育で何を学んだのか、またそれは自分の志の実現にどう活きてくるのか、をレポートにまとめます。執筆は、小グループ単位。』
 
http://www.titech.ac.jp/education/stories/liberal_arts_2015.html
一方で、都立武蔵中学・高校 では「地球学」といって、中3で、地球規模の環境問題や、社会問題について、各自テーマを決め1年間調査・研究を行い論文を作成、3月に発表会を実施する授業が行われています。
高校生になると「社会貢献」の授業で、実際にボランティア活動をするようです※2。
私立開成中学・高校の「運動会」 
この話題は、教育フォーラムで、ご自身も開成の卒業生である柳澤校長からお聞きしましたが、開成中高の運動会は「常軌を逸している? 」---下記 ↓の熱血レポート(2014年運動会)の筆者・吉田さんの賛辞です。
http://www.mikito.biz/archives/38048344.html
上記レポートに書いているように、
『特徴は、生徒による運営される「運動会準備委員会」、「運動会審判団」、「運動会審議会」のもと、高3が中心となって、つくり上げていること』。先生は、ほぼノータッチだそうです。
とくに「運動会審判団」はユニークで、柳澤校長も、うれしそうにご紹介されて「倫理・判断を学ぶ大事な機会だ」という趣旨の話をされていました。
日本一? 都立国立(くにたち)高校の「文化祭・国高祭(くにこうさい)」
こちらは、東京・多摩地区に住んでますと、行ったことはなくても噂には聞く、超有名な文化祭です。
1万人を集客するという、イベントの内容は、下記 木村さんの記事で↓ 。http://style.nikkei.com/article/DGXMZO06880000V00C16A9000000?channel=DF280120166618
 
 
●「感染動機」=スゴイ が、学ぶ意欲のもとになる
運動会や文化祭に時間とエネルギーをそそぎこんで、勉強時間は? と思うかもしれませんが、そこは当ブログの以前の記事で工学部Zくん(都立グループ問題作成高校出身 ※3)がとった「周囲の様子見戦術」―――この場合は、「運動会であれだけがんばったP先輩がY大学で、Q先輩がU大学に現役合格なら、僕もV大学いけるかも? 」という、身近な目標とワークライフバランス(受験生ですと勉強―行事バランス)が、自然と身につくんでしょうね。
さらに、教育フォーラムのコーディネータ・高宮さんが「感染動機」という指摘をされていました。※4
元は、社会学者の宮台真司先生の提唱で、新潟・燕市の小学校の学校だより記事 ↓
http://www.tsubame-city.ed.jp/tsubamehiga-e2/wp-content/uploads/2014/03/260305.pdf
の説明がとても分かりやすいので引用させていただくと。
『社会学者の宮台真司氏は、著書「14歳からの社会学」の中で、私たちがものを学ぼうとするときには、3つの動機があると述べています。
1つ目は「競争動機」です。周りの子とテストの点数を競い合うとか、人よりも高い偏差値の学校に合格したいと思うことです。
2つ目は「理解動機」です。自分の力で問題が解けたとか、自分の考えをうまく説明できたと感じる喜びです。
3つ目は「感染動機」です。自分もこういうスゴイ人になってみたいと思う気持ちです。この「感染動機」=「あこがれ」をもって学ぶことが一番身になる』
1,2が「その瞬間に感じる喜び」なのに対して、3は自分の心の中から湧いた感情に支えられて、長~く継続します。オリンピックの選手が「昔TVでみた、○○選手の姿に感動して」というのも同じですね。
 
地方名門高校で感動体験を共有する
東京の伝統校だけでなく、地方名門高校にも、それぞれいろいろな名物行事があります。筆者が以前、テレビで見たのが、山梨県立甲府第一高校の「強行遠足」
  http://www.first.kai.ed.jp/sgyouji_rekishi/
毎年、男子は約百キロを24時間で歩き、女子は約42キロ強を9時間で歩くという内容。
【参考】
  https://matome.naver.jp/odai/2144495006531697801
同じく強行遠足を実施している北海道立北見北斗高校との相互交流もしているようです。http://www.kitamihokuto.hokkaido-c.ed.jp/kyouko/kyoukoutop.html
大学の小中高生向けイベントに行ってみよう
これまでご紹介した限りで、「東京の環境が恵まれているのはわかるけど、じゃあ、田舎に住んでいる僕・私はどうすれば? 」と思うでしょう。
が、どの県にも、国公立大学はありまして、夏が多いですが、小中高生向けのイベントや施設公開などをしてくれます。たいてい、大学当局は、とても優しいお兄さん、お姉さんを配備してくれているはずですから、親御さんは、できれば小学生のうちに連れて行ってあげてください。
そうすると、「大学」が具体的な目標としてロックオンされるかもしれません。
参考:当ブログ イベント紹介記事 
 
TVでもネットでも読書でも、スゴイと出会える
そうして、幸い今はTVに加えてネットもあり、そこから何を、どうやって見つけるか、出会いは、みなさん次第です。
さらに、どこの学校にも図書館がありますね。
筆者は、西垣通先生の「デジタル・ナルシス」(岩波現代文庫)を読んで、書かれてる人も書いた人(西垣先生)もスゴイ!! と思いました。この本のご紹介も、いつかはしたいところですが、それにはリベラルアーツの素養がぜんぜん足りないと、つくづく思います。
ちなみに当ブログ校閲担当Sさんの1冊は、森有正「思索と経験をめぐって」(講談社学術文庫)だそうです。Sさんの寸評は「深い!」。
小中高生のみなさんは、それぞれの段階で“少し背伸びした内容の本”を読んで、いつかそれを、文章にしようとがんばってみてください。
アウトプットは大事です。
一方で、そもそものインプット(リーディング・スキル)については、次回記事で。

※1 自校での問題作成が復活のニュースも
 http://www.zkai.co.jp/home/jareainfo/tokyo_b/20160805.html
※2 小金井公園のゴミ拾いも参加メニューにあるようで、ありがとうございます。
※3 国立(くにたち)高校に限らず、都立上位校なら多分どこも三大行事(運動会、文化祭、音楽祭ほか)にかけるエネルギーと資金(イベントTシャツや仮装衣装代、工作道具は自腹などですね)は半端ないそうです。
※4 「さぴあ」 2016年11月号 65ページ
BGM OK Go ‘The One Moment’ MV必見
無料写真素材提供:東京デート
http://www.tokyo-date.net/machi_geihinkan/
冒頭写真:ここは日本? はい、東京・赤坂離宮 迎賓館です
中間写真提供: 札幌市観光協会 http://www.welcome.city.sapporo.jp/
 
 
 
●新テスト関連の、当ブログ追加記事・インデックスページ

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※以下は、2016年末~2017年1月ころの動向について書かれた記事です

●2017年1月29日 読売新聞 社説に「大学入試改革 考える力を育む記述式問題に」
以下の、当ブログ記事の内容と、大きな違いはありませんが、新テストの記述式の採点は、「教育関連企業への委託に一本化される見込み」ということです。
この社説がもとにしたデータ
・文部科学省によると、国立大では理系を中心に、約6割の学生が国語、小論文などの記述式問題を課されずに入学している
・「新入生の半数以上が、文章を書く基本的技能を身に付けていない」と感じる大学教員が4割に上るという調査結果もある
については、来年度(2017年4月以降)の早い段階で、「新テストの実施方針と問題」が示されるそうなので、その段階で、コメントさせていただく予定です。
それまでの間に、もし気になる方は、下記をご覧ください。
・参考:大学生の日本語の文章について ↓ うーん、当ブログ文章もこの基準で採点をされると、かなり悲惨な結果になりそうです…。
・国語教育についての論点整理 ↓  (4)が「書くこと」
 
●2016年12月8日 国立大学協会の声明
以下の記事でお伝えした、国立大学協会の「現時点での見解」が公表されました。
 
当ブログが、下記で指摘したポイント、つまり、文科省は「新テスト(1次)で難度が高くて回答の記述量も多い問題も、出題し、採点は”学生が受験する大学で”」と言っていたのに対して、今回の「国立大学協会としての考え方」では、基本的に長文形式は”個別試験(2次試験)で出題し、採点” ↓
『個別試験として課すべき記述式試験の選択肢の一つに 位置付ける方向で検討』
と、ほぼ当ブログの、下記予測の範囲内の回答でした。
今後、はっきりした進展があれば、随時記事にする予定です。
 
●2016年12月3日までの経緯
本日(2016年12月3日)読売新聞朝刊1面に、「全国立大で長文記述式…2次試験 20年度から検討」の見出しで、記事が掲載されました。
見出しにも「検討」とあるように、あくまで国立大学協会(以下、国大協)※1 が、「文科省案」を検討の途中です。
ただし、前日の12月2日に、国大協が、少し異例の下記声明↓
「大学入学希望者学力評価テスト(新テスト)の記述式問題についての 国立大学協会の検討状況に関する報道について」(PDF)
http://www.janu.jp/news/files/20161202-wnew-exam_comment.pdf
をわざわざ出して、
11月4日に文部科学省から示された案 について協会としての考え方をまとめるべく検討していることは事実であるが、 まだ検討中の段階であり、現時点でその内容を申し上げる段階にはない」
そして、
12月8日の理事会 の審議を経て結論をとりまとめた上で、速やかに公表し説明したい」としています。
もう少しで、国大協が結論を公表すると言っているのに、声明の翌日にわざわざ読売新聞が一面記事にしたのは、たぶん「11月の文科省案」(以下、単に文科省案)の中身が、一般には知らされていないためと思われます。
そこで、あくまで『“国大協が検討中の文科省案”として読売新聞が紙面で報道した内容※2』 になりますが、あらましをお伝えします。
 
●報道された「文科省の大学入試変更案」
以前から、これまでの大学入試センター試験(1次試験)に代わる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(以下、新テスト)の国語で、短文記述式(80字程度 以下、区別のためA)を取り入れることは検討されていました。
さらに、文科省案では、中難度の短文記述式(A)に加えて、高難度の長文記述式(以下、区別のためB)を出題し、受験生は、志望大学の条件(たとえば、A,Bとも必須とか)に沿って、Aのみか、A,Bの両方を解答する としています。
問題は、
   Aの採点は大学入試センターで行い、
   Bの採点は「大学」が行う
とある点です。
そもそも受験生は、「センター試験(1次)の結果」が分かった後で、志望国公立大学を最終決定するのに、いったい「どこの大学で1次の長文(B)の採点作業をするの? 」と思いますよね?
報道された「国大協の検討段階案」
これに対して、国大協では、上記のAは国立大の全受験生必須としたうえで、
「2次試験で高度な(B程度?) 記述式試験」(200~300字 以下、C)を課す。国語中心で、総合問題や、小論文もあり」
という案を検討しているようです。
Cを課さない大学、学部などはBを必須とするそうですが、そうなると「どこの大学で採点するの? 問題」は残りますから、「“国大協”の総力をあげてBの採点をする」という連携体制をとるのでしょうか?
まあ、「採点作業にかかる人件費」※3を、受験料の値上げか、国の補助で“十分に支払ってもらえる”のでしたら、全国の国立大文系学生・院生の春バイト※4 として、歓迎されるかもしれません。
なお、下記 毎日新聞報道(11/21時点の報道)、ベネッセ記事(11/28)も参考となります。
http://mainichi.jp/articles/20161121/ddm/013/100/055000c
理工系への影響は?
国公立大学理系に関していえば、たとえば、下記の電通大情報理工学域の試験問題(平成28年度後期 数学、理科、英語)
  https://www.uec.ac.jp/admission/ie/pdf/28kou-a.pdf
を実際にご覧いただければ、あらためて200~300文字の記述式問題(C)を課す必要があるの? と、筆者などは思います。
そして地方国立大学でも、下のリスト(例) ↓のように、
http://www.keinet.ne.jp/taisaku/shoron/17k_houshin.pdf
理系でも、小論文や総合問題を、前期・後期のいずれかで課している大学はけっこうあります。
ですから、小・中学生とその親御さんは、「2020年度の新テスト以降は、特別な対策が必要になる」と過剰に心配することはないと思いますが、以前の当ブログ記事でお伝えした「東京の中高生と地方の差とは?」「差」は、ますます拡大してゆく可能性があります。
こちらを、次回記事で。

※1 国立大学協会 http://www.janu.jp/
※2 読売オンラインの記事 ↓ ですと、内容を簡略化しすぎていて、誤解をまねく感じがしました。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20161202-567-OYT1T50130.html
※3 記述式の採点に「人工知能」技術を使う案も出たようですが、この点は、年内予定の「そもそもAIとは」記事で言及の予定です。
※4 理工系の春バイトは「確定申告補助」がおすすめです。
当ブログ記事:http://ameblo.jp/pernas/entry-12145931018.html
BGM 「未来予想図II」(カバー) Acid Black Cherry
写真提供:札幌市観光協会 http://www.welcome.city.sapporo.jp/
冒頭写真:赤レンガ(北海道庁旧本庁舎)
 
11月23日、「読売グローバル教育フォーラム 人工知能が仕事を奪う?」に行ってきました。
国立情報学研究所の新井紀子先生と、開成中学・高校の柳沢幸雄校長がそれぞれ講演されたあと、代ゼミ・SAPIXグループ共同代表の高宮敏郎さんと、「AIに代替されない能力を育む~中学高校に求められるこれからの教育~」というテーマでディスカッションされまして、まさに当ブログのためにあるような? 企画でした。※2016年12月11日 読売新聞36面に「概要」が掲載されました。上記のリンクページからも「概要」が読めます。なお、本ブログでは、当日メモに基づいて、「概要」に載っていないことも掲載します。

これから数回(少なくとも、新井先生編と柳沢校長編)にわたり記事にする予定ですが、中高生のみなさまの将来にも関わる「仕事」の話から。
時間がない高3の方は、最後の「●理工系の学部選びは? 」だけ読んでください。
 
●20年後にホワイトカラーの仕事の半分はなくなる?
野村総研が、昨年12月に発表した推計データ(以下、本推計)
http://www.nri.com/Home/jp/news/2015/151202_1.aspx
によれば、
「国内601種類の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。この結果、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能」。
ただし、この「49%」には、「技術的には」という前置きがついていまして、企業が実際に、人間の代わりにAI(AI搭載ロボット)等に仕事をさせるかどうか? は考慮していません。※1
 
●代替されそうな100の職業
それでも、本推計の上記ページ末の「ご参考」情報に、「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」があって、受付係や警備員などと並んで、
・事務員(一般事務、医療事務、行政事務)
・電子計算機保守員(IT保守員)
・電気通信技術者(筆者注:どのレベルを指しているかは不明)
・測量士
・CADオペレーター
・非破壊検査員
などもありますので、単純に字面だけみると、「電気電子、機械、情報系はヤバい?」と思われるかもしれません。
しかし、そもそも野村総研がベースにした「国内601種類の職業」については、ベースにしたのが労働政策研究・研修機構の研究(以下、職業研究)
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2012/0146.html
で、「WEBで集めた2万名以上の就業者中、30名以上のデータが集まった601職業」という限定がついています。
 
●代替されにくい100の職業
そこで、先に、逆の「代替されにくい」業種も見ておきますと、
   社会学研究者、心理学研究者、人類学者
などは含まれていますが、
  物理学者、経済学者、経営学者、数学者、情報工学研究者
などは見当たりません(後述)。ただし、大くくりの「大学・短期大学教員」は入っています。
 
おおざっぱに言って代替されにくい職種、されやすい職種
上記のように、ベースになった「職業名」自体が一様ではないため、細かい職業で「代替されやすい/されにくい」を詮索してもあまり意味はないと言えます。
本推計では、おおざっぱにいえば、
  マニュアルに従ってできる「定型的」な仕事(A) 
はAIに代替されやすく、
  創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務(B)
は、将来においても人が担うとしています。
なお、例示としては、
「芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション(交渉)、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい」
としてまして、もともとの研究の関心が人文系に偏りがある感じなのを、理工系に拡張すると、「抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業」つまり、エンジニア系(研究・開発職)と、高度な判断が伴う管理・運用系(たとえば、3.11 の時の福島第一原発・吉田所長) は、当然、人工知能等での代替は難しいでしょう。
 
データサイエンティストをめざす中高生へのアドバイス(それ以外の方は、飛ばして読んでいただいてけっこうです)
さらに、本推計では、
「一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業(注:上記A)に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い」
とありました。この点については、新井先生が講演の中で、
「データサイエンティストと言っても、単にR(アール:統計計算ソフト)が使えるだけの人材は不要。欲しいのは、“アンケートやテストの適切な設問を考えられる”人」という趣旨の発言をされていました。
たとえば、十数年前くらいだとWEBページを作るためのHTML+CSSの知識を持った人が「WEBデザイナー」と名乗れましたが、当ブログ(アメブロ)でも、文章と画像さえあればできてしまう現在、プロのWEBデザイナーは、文字通り「WEBサイト全体の設計・デザイン」を、クライアントに提供できる人でないと、つとまりません。
今後も、国公立大学でデータサイエンスに関わる名前を、学部・学科・コース名にする改編※1 は、増えると思いますが、たとえば本推計のようなデータを扱うとして。
本推計の「職業」の元になったデータは、下記の
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2012/documents/0146_01fuhyou.pdf
『「付表 職業別収集人数(Web 職務分析システム)」=得られた全データ 24,041 名に関して、各職業 20 名以上収集できたものに関して、職業別に男女別人数を集計し、職業別人数が多い順に示した』
からとられたものです。
付表の659職種のうち、「回答数が30以上」が601職種。回答数29で惜しくももれた中には、「マンガ編集者」「畜産学研究者」「ガラス技術者」「義肢装具士」「船員」「船長」(各29人ずつ)などなど。
ちなみにこの659職種の上位601職種内では、
  物理学者〇、経済学者×、経営学者×、数学者〇、情報工学研究者〇
  (表中に あり=〇、ない=×)
でしたが、物理学者、数学者、情報工学研究者は「代替されやすい100」にも「代替されにくい100」にも含まれていません。
今後、データサイエンティストを志すみなさんは、ぜひ上記の「職業」の収集方法や、「試算や分析の方法」(下記↓)の改良について考えてみてください。
『本研究における分析は、労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究」から得られた職業を構成する各種次元の定量データをもとに、米国および英国における先行研究と同様の分析アルゴリズムを用いて実施しました。その結果、従事する一人の業務全てを、高い確率(66%以上)でコンピューターが代わりに遂行できる(技術的に人工知能やロボット等で代替できる)職種に就業している人数を推計し、それが就業者数全体に占める割合を算出しています。』
 
おしまいに 理工系の学部選びは? 
筆者の私見ですが、国公立大学理工系で、とくに修士まで学修した場合は、学部・学科にかかわらず「AIに仕事を奪われる心配はない」です。仮に、今までの仕事がAIに代替された場合でも、別の仕事を短期間で「学修する」能力が身についているはずだからです。あと、たいていの人は、AIに仕事を奪われそうになる前に、自分の仕事をシフトさせることを考えるはずだからです。
この点は、「リーディングスキル」や「表現力」にも関係しますが。
To Be Continued
 
※1 当ブログのデータサイエンス関連記事
・山形大学、滋賀大学
http://ameblo.jp/pernas/entry-12178880317.html
・速報 国立10大学にビッグデータに関わる研究拠点設置予定
http://ameblo.jp/pernas/entrylist.html
なお、国立・九州工業大学 http://www.kyutech.ac.jp/archives/025/201608/kaisoPR160810.pdf
も、平成30年度から学科の改変があり、情報工学部知能情報工学科に「データ科学コース」が新設される予定。
なお、九工大は、平成29年度入試(平成28年度実施)からインターネット出願実施ですね。
 
BGM:「リライトのリライト」 ASIAN KUNG-FU GENERATION
http://www.asiankung-fu.com/special/rewritenorewrite/
写真提供:金沢市観光協会 兼六園(雪吊り、ライトアップ)
http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/index.php
そもそもリベラルアーツとは?
「リベラルアーツ」という言葉については、以前の記事でもご紹介した新書「弱肉強食の大学論」※1 193ページに、
『古代ギリシャの教育原理である“自由な人間になるための全人的な技芸の修得”に由来しているのですが、自分自身を自由にする“リベラル”と、その上で新しい自分を創っていくための技芸「アーツ」を合わせて「リベラルアーツ」と呼んでいる』(鈴木)
とありまして、続いて
『(日本の大学は)長い間、高度な教養をベースにした「大きな人間」を作る教育よりも、専門学部で専門知識を蓄えた「すぐに役に立つ人間」を作ることに傾注していました』(諸星)
との指摘がされています。
続いて195~197ページでは、上記「専門学部」形態を「人工植林型」、それに対してリベラルアーツを「雑木林型」と表現しています。21世紀の「vs全世界」に立ち向かえる人材をつくるのが「リベラルアーツ」であるということで、現に鈴木先生が学長をされている「公立国際教養大学」(秋田県)は、「国際教養-インタナショナル・リベラルアーツ」を教育する、ユニークな大学として、全国的に注目されています。※2
 
理工系でリベラルアーツ
上記、「人工植林」というご指摘もごもっともなんですが、理工系の場合、学部の4年間では「専門知識」を「なんとか分かった」レベルにもっていくのが精いっぱいです※3 。
それでも、「雑木林型」人材を育てるにはどうすればよいか? そこで注目するのが、東京工業大学に今年度から設置された「リベラルアーツ研究教育院」。
理工系の「専門性」という縦糸に、「教養」という横糸を提供することを目的として、下記ページにもありますが、
http://educ.titech.ac.jp/ila/about_us/
『これまで教養科目は「できるだけ楽をして単位が取れる科目を選ぶ」といった扱いを受けがちでした。しかしそんな教養しか身についていない人間が世界の真のリーダーとなり、より良き社会を創造していくことができるでしょうか?』
ということで、東工大では、今年度新入生から、学士課程入学直後の「東工大立志プロジェクト」授業(2単位)
http://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=T0300&JWC=201600794
を皮切りに、大学・院の6年間・8年間を通じて少人数制の問題発見型授業が展開される予定です(3年生には「教養卒論」あり)。※4
参考:http://www.titech.ac.jp/education/stories/liberal_arts_2015.html
 
上田紀行教授の原点は「スリランカ」体験
リベラルアーツ研究教育院トップの上田紀行教授については、ちょうど2016年10月16日の「読売新聞」(11面)で、文化人類学専攻の大学院生(28歳)の上田青年の、スリランカでの体験※5 について紹介されていました。
そして、スリランカでは、下記ページ
http://filt.jp/lite/issue77/f02.html
のように、
『野球に例えるなら自分が今までバッターだったことに気がついたんです。日本では、投げられた球を器用に打ってきた。でも、スリランカでは、バッターボックスに立っていても誰も投げてくれない。自分で球を投げ込まないと試合が始まらない、ということに気づいたのです』
 
相手に球を投げる
上記は、「受験勉強」と、大学での勉強(とくに卒論、修論ではいやでも直面します)の差でもあります。
そして、現状の「学生プロジェクト」の活動例 (下記)。そもそも誰に向かって球を投げるのか? から、考えることになります。※6
「なぜ、東工大を選ぶのか?」 その理由に「リベラルアーツ」を挙げるのは、十分にありだと思います。
 

※1 朝日選書「弱肉強食の大学論」 諸星裕、鈴木典比古
※2 「国際教養大があれこれけなされている件」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ishiwatarireiji/20150322-00044091/
※3 たとえば千葉大学工学部電気電子工学科の場合
・2年生の生の声 ↓
http://www.te.chiba-u.jp/ADM2.html#voice
※4 上に、受験生の利便性のために、参考図(部分)を掲載。「400番」とか書いている、「ナンバリング」については、下の記事で簡単に触れています。
実は、池上彰特命教授やパトリック・ハーラン(パックン)非常勤講師などの授業もあります。
※5 この時の体験を書いた著書「覚醒のネットワーク」が2016年12月6日、河出文庫で再刊予定  http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309414959/
※6 当ブログは「中高生とその親御さん」に対して、『戦略的(すぐには役立たないけれど、人生の長いスパンでみれば役立つ)理工系大学情報』という「球」を投げているわけですね。
 
BGM1:m-flo LOVER
BGM2:RADWIMPS 光
●無料写真(スリランカの神殿)提供:Pixabay https://pixabay.com/
すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる
当ブログ記事「工学部zくん すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる」 で、「数学は役に立つのか? 」、「そもそも役立つとは?(短期的、長期的)」ということを話題にしましたが、これらの疑問についても、明快に書かれた文庫本(以下、本書)※1 がありましたので、ご紹介します。
東大の西成先生が、都立高の生徒に特別授業
著者の西成先生は、東大大学院で航空宇宙工学※2 を専攻。現在は、東京大学先端科学技術研究センター※3 教授で、ご専門は「渋滞学」。この「渋滞学」についても、本書151ページ以降で書かれていますが※4、メインは、2010年に、都立三田高校  の1年生に向けて行った、特別授業がベースになっています。
『私が15歳、16歳のみなさんに伝えたかったことは、高校の教科書で勉強する数学についてではありません、現実社会に飛び出して、様々な場面で活躍している数学』本書10ページ)。
―――このあたりは、大学の工学部で一般的に習う範囲ですが、
『そして厳密さといい加減さが入り混じった「血の通った数学」の姿です』(同上)。
 
●「血の通った”微分”」についての説明
ここで、「高校の教科書で勉強する数学」というのは、テスト問題に出てくる、もろもろを思い浮かべていただくとして、それに対して先生の説明は、「具体的な例」を出して「数式のイメージトレーニング」をするもので、たとえば「微分」については、コップに入った水の表面張力(本書67ページ)を例に、ゆらゆらの式(三角関数)からニュートンの運動方程式、ベッセル関数 
などまで紹介されています。
ちなみに、ソリトン波理論(本書126ページ)も、「形の崩れない波」について、運動会の綱引のイメージで説明されています(先生も、元になる理論は難しいと書かれてますが、大学で講義すると、「数理科学」の大学院レベルで、 ↓ な感じの内容になります)。
 
微分は大学数学とどうつながるのか?
数IIIまでで習う(そして、入試に出題されます)、
  微分・積分、ベクトル、図形、三角関数、二次方程式
が、大学数学の三本柱
  代数、解析、幾何
と、どうつながるかは、本書41ページに図示されています。このあたりは、ちょうど現・工学部2年のZくんがようやくおぼろげに見えてきた「数学の地図」の紹介なんで、理数系志望の高校生のみなさんは、高校数学を武器に、大学数学の3つの塔に挑むんだな~程度のイメージでいいと思いますが。※5
 
●「すぐに役立ないこと」を研究する学問(無駄学)
西成先生は、「渋滞学」と同時に、「無駄学」の研究もされています(本書221ページ~)。「無駄」を数学的に扱うとはどういうことか? それにはまず、「無駄」を数学的に「定義」することが必要で、西成先生は、
  「目的」と「期間」を決めることで、無駄かどうかを判定する
とされました。
 
人生長い目で見れば 無駄な勉強なんて何もない
身近な受験勉強でいいますと、受験科目でない教科は、目先の受験生のみなさんには無駄と感じるでしょうが、長期的には役に立つ例が、先生ご自身の体験として本書223ページに紹介されています。
そして、当ブログ記事「教養がじゃまする? 京都大学式留年対処法」 で書きました、大学の「教養科目」についても、筆者自身、心理学をとらなかった(とれなかった)のは失敗だったと、クリスマスが近づくこの季節になると、思います。 
 
無駄を生み出している社会システムを変えるには
先生は、さらに進んで「無駄」を生み出している「社会システム」についても本書223ページ以降で書かれています。
先生の指摘されている視点を頭の片隅において「政治・経済」を勉強されると、大人になっても役に立ちますし、「都市基盤系」や「地域系」の学部・学科では、大学に入って「すぐに役立つ」と思います。
 
戦略を語る講演(おまけ)
IOT(モノのインターネット)についての「戦略」を語る、先生の講演「IOTと未来」は↓
理工系志望のみなさんは、↑ のような社会の変化を視野に入れて、「志望学部・学科」を決めてください。
⇒とはいっても、下記※2 のように、「システムデザイン工学科創造生産工学コース」という名称ですと、高校生のみなさんが??? と思うのは無理ないでうよね。当ブログでは、「金沢大学理工学域の中身」ほか、さまざまな形で、今後も理工系の学部・学科の中身を、ご紹介の予定です。
 
※1 「とんでもなく役に立つ数学」 西成活裕著 角川ソフィア文庫
※2 航空宇宙工学については、当ブログ記事「工学部くん 航空と宇宙に関わる工学系国立大学を探すには」。この記事でもご紹介した、秋田大学理工学部システムデザイン工学科創造生産工学コースでは、中学生向けのロケット講習会、中学生モデルロケット秋田県大会を実施しています。
http://www1.sozo.akita-u.ac.jp/course_introduction
あと、「すぐ役にはたたない」けれど
レオナルド・ダ・ヴィンチ その1 鳥の飛翔に関する手稿
※3 東京大学先端科学技術研究センター http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/home/access/index_ja.html
は、目黒区駒場にあります。
※4 渋滞学のエッセンスは下記記事に ↓
 http://www.cinra.net/interview/2014/01/17/000000
※5 なお、Zくんの高校の同級生が、「数学科」に入学して、学科の先生に真っ先に言われたのは「高校までの数学は全部忘れてください」だそうですーーー。 農工大には「数学科」はありませんが、大学院数理科学部門には、たとえば有機材料化学科に「3,4次元多様体と結び目・絡み目」がご専門の先生がおられたりします。トポロジー応用がらみと思いますが、ご興味のある高校生は、「科学何でも相談室」にメールをしてみてください。
純粋数学から実社会までの4つのカベについては、本書123ページから。

BGM:YMO「TECHNOPOLIS」Dance Perfume ⇒Youtube でみられます(黙認版?)
写真提供:冒頭写真は「足成」