※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。
A)民法の物権は10種
P:「物権」と「債権」の違いについては、宅建06に、生成AIに尋ねた回答を載せまして、物権の代表例が、
所有権・地上権・質権・抵当権 [担保物権]
でした。
そういえば、所有権以外は、これまであまり縁がありませんでしたね。
S:民法の物権の種類を、生成AI(Google gemini)に「民法 物権 種類」できいたら、
『民法で定められている物権には、次の10種があります。
※筆者Pが付加した丸数字や★などのマークについては後述
①占有権
★所有権
★地上権
・永小作権
②地役権
・入会権
③留置権
④先取特権
⑤質権
★抵当権(根抵当権を含む)
物権は、法的に物の支配を根拠づける権利で、民法第2編で定められています。
本権と占有権の2種類に分類され、本権は所有権と制限物権に分類されます。
制限物権は、物の利用・収益・処分のどれかに対し何かしらの制限・制約を受ける物権で、用益物権と担保物権に構成されています。
用益物権は、他人所有の土地を一定の目的のために使用収益する権利で、地上権、永小作権、地役権、入会権などが該当します。
担保物権は、物の交換価値を支配する権利で、民法上法律の定めがある典型担保物権と、慣習等で認められる非典型担保物権に分類されます。
典型担保物権には、抵当権、質権、先取特権、留置権などが該当します。』(2024年10月14日)
分類は、文章だけだと分かりにくいので、図にしました。
宅建試験で重要な★の権利のうち、所有権は独立した記事で説明済み、抵当権は今後説明予定です。また、地上権は、今回は簡単に触れて、抵当権や賃貸借と関連したときに、また説明します。
なお・印の永小作権と入会権は、大学の授業でも「教科書を読め」レベルだったと記憶してますので触れません。
B)それぞれの物権について
B-1 占有権
P: 占有権だけが「本権以外」で、別格という感じですね。
S:「物権」は文字通り、「物の支配の権利」なんですが、その支配のありようが、占有権と他の物権とで違うんですよ。
ここも、生成AIに「本権 占有権」できいたら、
『有権と本権は、物権を区別する概念で、次のような違いがあります。
◎本権
物の支配を根拠づける法的な権利で、所有権や賃借権、質権、地上権などが該当します。
◎占有権
物を現実に支配しているという事実状態を尊重して、法律上認められている物権です。自己のためにする意思を持って物を所持することによって取得します。
占有権は事実上の支配関係を保護するための権利として認められており(後略)』(2024年10月19日)
P: 占有権は、現実世界でモノを占有している状態を保護する権利で、他の権利はバーチャルな法的世界で、物を支配できている権利…というイメージですね。
宅建10(取得時効)で、所有権といっしょに触れていますのでごらんください。
B2 本権>制限物権>用益物権
B2-1 地上権
S:占有権以外の権利(本権)は、「物の支配を根拠づける法的な権利」ありましたが、「地上権」は文字通り、他人が所有する土地の上に、建物や草木を所有できる権利です。
民法265条
『地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。』
条文はシンプルなんですが、土地所有者はいったん地上権設定の契約をすると、自分の所有地であっても、自分はその土地を使用できなくなります。
P: では、地主さんにとって地上権を設定するメリットは?
S: 契約時の取り決め次第なんですが、一定の地代を支払ってもらえることでしょうね。
土地を持っていると、固定資産税がかかりますから、今後も使う見込みのない土地からお金が入るなら…と。太陽光発電設備などでは、よく地上権が設定されたようです。
あと、法定地上権といって、たとえば、建物と土地の持ち主が、別々になったら、自動的に建物に設定される地上権もありますが、こちらは、抵当権について触れた後の説明になります。
また、地上権は賃借権(債権)との相違が、たとえば2022年の宅建試験でも、下記のように出題されていますので、賃借権と併せてくわし触れます。
※不動産適正取引推進機構HPより
B2-2 地役権
P: 地役権は、文字通り「土地を役だてるための権利」ですか?
S: ここも条文をみましょう。
280条
『地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。(後略)』
「他人の土地を自己の土地の便益に供する」の部分は、Pくんのイメージに近いですね。
ただ、この地役権では、下の281条のように、他人の土地を「承役地」、自分(地役権者)の土地を「要役地」と呼んでいまして、ここの記憶は、時間がたつとけっこうあいまいになるんですよね…。
民法281条
『1: 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2: 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。』
P: では、筆者Pが地役権者になりたくて、Sさんに地役権の設定をお願いする立場だとして、条文に補足すると
『280条 地役権者Pは、設定行為で定めた目的に従い、他人Sの土地を自己Pの土地の便益に供する権利を有する。(後略)』
『281条
1: 地役権は、要役地(地役権者Pの土地であって、他人Sの土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地(※地役権者Pの土地)について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2: 地役権は、要役地(※地役権者Pの土地)から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。』
S: Pくんは、要役地が自分の土地で、地役権者という設定で覚えておくと、下記のような出題(2020年12月問9)でも迷わないと思います。
地役権は、ひんぱんに出題されることがないようなので、詳しくは下のリンク先などをご覧ください。
C:相隣関係(民法改正2023)
S: 地役権は当事者同士の話し合いで契約により設定されますが、事情によっては、下の210条のように、他人の土地を通行する通行権を、民法で認めています。
民法210条
『1:他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2: 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。』
民法211条
『1: 前条(210条)の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2: 前条(210条)の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。』
条文の中身は紹介しませんが、212条で、通行料(償金)について規定しています。
P: 通行料を払わないとどうなるんですか?
S: 判例によれば、通行権自体はなくなりませんが、償金は債務不履行の扱いになるようです。
ちなみに、この通行権と同じような考え方を、ライフライン(水道・電気・ガスなど)に拡張した、
「第213条の2」が、2023年4月施行の民法改正で加わりました。
本文では、第1項だけ紹介しますが、
『土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。』
この権利を、基本的テキスト(24年版)208ページでは、「隣地使用権」と呼んでいまして、23年改正で追加変更された、「竹木の枝と根」の規定や、前述の「通行権」、「目隠し」とともに、「相隣関係」の括りで、紹介しています。
P: Sさんこだわりの、「竹木の枝と根」の規定は、いちはやく宅建02(補足1)で話題にしていました。
S: 23年宅建の問2については、下記リンク先などをご覧ください。
「相隣関係」は民法改正がらみで、今後も形を変えて出題されるかもしれませんので、もしも24年試験で出題されたら、補足します。
なお、23年改正の資料(法務省作成)は、
https://www.moj.go.jp/content/001396638.pdf
P:担保物権については、まず抵当権から。
留置権・質権などの「その他」の担保物権は、その後になるそうです。
【BGM】
S選曲:Aimer 「茜さす」
P選曲:I Don't Like Mondays.「重ね色」
写真提供:Pixabay




