おはようございます!
今日もいい天気ですね!
ホイップクリーム
※趣味の人向けに書き始めましたが、途中から専門的な話に近づいていきます。
製菓学校の授業のような内容です。
つまりあまり面白くありません。
(^^;
しかも長~い。
そもそも
ホイップクリーム
とは?
もちろん生クリームを泡立てたクリームの事で
「だから何?」
となると思います。
ショートケーキに限らずムースのケーキを作るには
〈生クリームを泡立てる事〉
について理論的に抑えておくと失敗が少なくなります。
”家庭で楽しむためだけ”
ならば無理に勉強する必要はないかもしれませんがプロなら絶対に必要な知識です。
ですから家庭でも長くお菓子作りを楽しみたいと考えている人は知っておいて損はないと思います。
具体的な生クリームの泡立て方については生クリームのパッケージに説明されていますのでここで私が細かく説明する必要はないと思いますのでそちらを参照してください。
しかし
「なぜそうするの?」
という問いには本質的な事が含まれていますので後ほど説明します。👨🏻🍳
まずは…
どの生クリームを選ぶのか?
お菓子作りの経験が少ない人は
「どの生クリームを使ったら美味しいショートケーキが作れるの?」
と考えると思います。
スーパーへ行けばメーカーや脂肪分の違うクリームが何種類もあって迷うところだと思います。
しかも
「えっ生クリームってこんなにするんだ」
と価格に驚かれる人もいると思います。
しかし
「高い生クリームの方が美味しい」
「安い生クリームはイマイチ」
かと言えばそうではありません。
では生クリームの価格は何から決まるのか。
という事です。
スーパーなどで販売されているクリームを
ザックリ2つに分けると
お高めな
生乳から作られ脂肪分が乳脂肪のみのクリーム
「生クリーム」
と
植物性油脂の入った、もしくはだけで作られたリーズナブルな
「ホイップクリーム」
と表示されているもの。
これは例えるなら
バターは高くて
マーガリンはリーズナブル
と同じです。
乳脂肪は植物性油脂よりそもそも高額なので理解出来ると思います。
では
「生クリームで価格に違いがあるのは?」
となります。
だいたい想像は出来ると思いますが改めて文字にしてみます。
大きな理由は含まれる
『脂肪分の割合』
です。
※ココでは産地について詳しくお話しませんが、関東で話すなら北海道や九州など遠い地域の物は高くなります。
品質も良いとされますが、移動距離が長いとそれだけコストも上がります。
したがって内地のクリームの方が売価が抑えられす。
地方では地元の乳業メーカーさんの牛乳がよく並んでいますがそんなことも理由のひとつです。
🏡 🚚 🐮
乳・生クリームはもちろん冷蔵車で運ばれますが振動によって品質が徐々に変わってしまう(後で説明しますが脂肪球がくっつくなど)為、輸送が短ければ品質の劣化も少なくて済みます。
生クリームのパックの内側、特に上部にねっとり付いているアレ。
※生クリームの話は
👇でもしています。よろしかったら
お菓子の材料選びの楽しみ方④生クリーム・ショートケーキ編 | ~ 今日もいい天気 ~ (ameblo.jp)
お菓子の材料選びの楽しみ方⑤生クリーム・いろいろ編 | ~ 今日もいい天気 ~ (ameblo.jp)
このページは
「ホイップクリーム」
なのでその話を続けます。
🏡 🚚💨
「液体の生クリームをホイッパーでカシャカシャしているとナゼ?ホイップクリームになるの?」
生クリームのパックに説明書きされている
「良く冷えた生クリームを氷水にあててホイップしてください」
の意味。
液状の生クリームがホイップクリームになるメカニズム。
大切なので乳脂肪の事をお話します。
生クリームの中には乳脂肪が含まれています。
その割合はパーセンテージで表示されています。%㌫
この乳脂肪。
ちょっと製菓理論的に説明するときは
脂肪球という言葉が使われます。
文字通り脂肪が小さな粒状になっています。
具体的には(^^;(わかりにくいかもしれませんが)
「乳化作用のある被膜」
で
「乳脂肪を包んだ状態」
のものです。
液状のクリームの中ではバラバラの状態にあります。
これをホイッパーでかき混ぜると摩擦・圧力がかかります。
その摩擦により脂肪球どうしがぶつかり周囲の被膜が傷つきます。
すると被膜が切れた脂肪球どうしがその圧力でくっつきます。
脂肪球はくっつきながらまず鎖状。
そして網状につながっていきます。
その網目が作られながら同時にホイッパーで送り込まれる空気を抱き込みます。
この網目が多くなればなるほどクリームはしっかりした状態になり、多く空気を含めば含むほど軽くなります。
これでホイップクリームになります。
※このページでは機械的なホイップマシーンの話はしません。
この時液状のクリームの体積に対してどの位ボリュームが出たかの表現に日本では
「オーバーラン」
とう言葉が使われます。
例えば100mlの生クリームをホイップしてできたクリームが200mlあったらオーバーラン100です。
つまりオーバーランの数字が大きければ大きいほど軽いホイップクリームと言えます。
次に
生クリームが同じでも泡立て方でオーバーランは変わります。
手で泡立てる事を前提でお話すると✋
ゆっくり横運動だけすると脂肪球は少しずつくっつきますが、それほど多くの空気は抱かずに硬くなっていきます。
この時のオーバーランは低くなります。
ホイッパーをクリームにくぐらせるように上下の運動も交えながら手早くホイップすると脂肪球がくっつきながら多くの空気を抱き込みます。
この時のホイップクリームのオーバーランは高くなります。
脂肪分が多く(45%以上)含まれているいわゆる値段が高い方の生クリームはこの脂肪球がくっつく状態がより早く顕著に表れます。
ですから泡立て方によっては、多くの空気が含まれる前に硬くなり重いホイップクリームになります。
くちどけが悪いと感じるかもしれません。
脂肪分が少ない(35%前後以下)少し値段の安い生クリームでは、脂肪球がくっつき締まってくるまでのタイミングが遅いので多くの空気を含んだホイップクリームにしやすいです。
しかし脂肪球が少ない分「保形性」が弱くなります。
ショートケーキ用にナッペしたり絞ったりするのにはあまり向きません。
冷やしながら泡立てる
どのクリームにも共通するのは先にお話した
「良く冷やしながら泡立てる事」
です。
バターをイメージすると分かりやすいと思うのですが
「冷蔵庫のバターは硬く」
「室温におくと柔らかく」
なります。
つまり
「冷たい脂肪球は硬い状態」
「温度が高くなると柔らかい状態」
になります。
冷えた硬い脂肪球がつながって出来た網は強い状態です。
強い網はホイッパーで送り込まれた空気と元々含まれている水分をしっかりと抱きかかえたまま保形性の良いホイップクリームになります。
反対に
生クリームをしっかり冷やさずにホイップした場合。
また、ホイップしたあと常温に放置された場合。
ぬるい脂肪球の網は弱くなります。
弱い網はすぐに破れてしまい送り込まれた空気をとどめる事は出来ず、もともと含まれている水分は脂肪分と別れて離水します。
これは脂肪分の割合に関わらず起きる現象です。
冷蔵状態のままでも時間が経つと重力により徐々に離水します。
ムースに合わせるホイップクリームを前もって準備をする場合、あまり長い時間おいておくとそれが冷蔵庫内でも
「上はふかふか」
「下はしゃばしゃば」
となります。
これを混ぜるとボリュームが落ち重くなります。
※数年前にあるベテランパティシエさんが
「注文のコーヒーゼリーの数が多かったので、前日に仕上げのホイップクリームを絞って冷蔵庫に保管して置いたら、翌日全部すべって広がってしまった」
🦢
と生クリーム屋さんにちょっとクレーム口調で話していました。
・・・残念です。
どのようなホイップクリームを使ったかは分かりませんがゼリーのような水分を吸わないものの上に絞ればそうなります。
若いパティシエさん製菓学校の生徒さん製菓理論はちゃんと勉強しましょう。
ショートケーキ用のホイップクリームを作る時は砂糖を加えて泡立てますが砂糖の温度も影響します。
氷水を当てたまま生クリームと砂糖を軽くゴムベラなどで混ぜながら少し冷やす時間があった方が良いです。
全体が良く冷えてから泡立て始めましょう。
家庭ではあまり気にしなくても良いと思いますがキッチンの室温も影響します。
室温が高ければその分だけクリームの温度上昇が早くなります。
しっかり冷やして作るホイップクリームも
「泡立て過ぎる」
とつながっていた被膜が壊れ過ぎ、大きく粗い脂肪球の塊のような状態になって行きます。
これが良く言う
「ボソボソの状態」
です。
脂肪分が多い生クリームの方がボソボソになりやすく目立ちます。
これがさらに進むと抱きかかえていた水分と空気が分かれ始め最終的には脂肪分と水分は分離してしまいます。
これがバターです。
ホイップクリームを絞って使う
「まだ柔らかい?」
と思う頃合いで絞り始めても口金から出てくるときはボソボソになっていたりします。
これは絞り袋の形状が先に行くほど細くなるためです。
押し出されるクリームへの圧力は先になるほど強く加わり状態が変わっていきます。
更に手の温度が伝わる絞り袋の後半は特に気を付けましょう。
慣れないうちはホイップクリームを絞る時、一度にたくさんの量を絞り袋に入れ過ぎない様にしましょう。
量が多いとより強い圧力が長い時間加わります。
※ねっ物理でしょ!
プロがミキサーでホイップクリームを作る場合、うっかり回し過ぎ硬く締まってしまう事があります。
分離状態になっていなければ別の新しい生クリームを加えると一応応急処置にはなります。
少しでも分離状態に入ってしまった後に新しい生クリームを加えるのは一応これも応急処置にはなりますが本来の性質を考えるとあまり良いとは言えません。
硬さが少し緩まるだけでつながった脂肪球がばらけているわけではありません。
これらの事は家庭でも同じですので一応頭の中にあると良いかな?と思っています。
完全に分離したらそれはもうただの甘いバターです。
植物性油脂
このややこしいトコロを助けてくれるのが
植物性油脂
です。
植物性油脂はそのままだと乳化しないので
硬化※という作業がされます。
植物性油脂を適度な硬さにして
脱脂乳に加えます。
そこに
〈乳化剤・安定剤〉
などを添加して乳化させると
植物性油脂の脂肪球が出来ます。
あとは殺菌処理をすれば
植物性クリームの出来上がりです。
※硬化
植物油脂でマーガリンを作る時と一緒です。
※「マーガリンの話」👈をしたページです
最後の方でトランス脂肪酸の事も少し話しています。
よかったら
良いの?悪いの?お菓子作りで【マーガリン】 | ~ 今日もいい天気 ~ (ameblo.jp)
植物性クリームの特徴
「扱いが易しい」
「色が白くきれいで変色しにくい」
「ホイップしたときに泡立てすぎる心配が少ない(分離しない)」
「ホイップしたクリームが安定しやすい」
「オーバーランが出やすい」
つまり純生クリームに一定程度の
植物性クリームを混ぜたホイップクリームは作業性が良くなり失敗もしにくくなります。
ムースなどのお菓子向けには?
ムース菓子などに合わせるホイップクリームは
〈組合わせる素材〉
〈レシピ〉
〈季節〉
などを考え何パーセントの生クリームを使うか考えます。
これまでお話したように少し軽めですっきりした印象にしたいときは脂肪分はあまり高くない方が好まれます。
日本のショートケーキのように生クリームそのものの風味と保形性が必要な場合は高い脂肪分の生クリームが向いていると思います。
まとめ
ホイップクリームはナッペにしても絞るにしても触れば触るほどクリームの状態は変化します。
温度にも常に気を付ける必要があります。
したがって少ない手数で手早く作業する必要があります。
このページではシンプルなホイップクリームの話だけをしましたが
「チョコレートのホイップクリーム」
を作るのはもっとややこしいです。
”冷えると硬く固まってしまう”
「チョコレートのカカオ油脂」🍫
と
”冷温をキープしなければいけない”
「乳脂肪」🐮
これを合わせるのは文字だけ見ると無理な気がしませんか?笑
泡立ててからチョコを合わせる方法は難しいので
👇こちら
一度液状のチョコクリームを作ってからホイップするレシピです。
いかがでしょうか?
ホイップクリームは失敗すると後戻りが難しいので初めのうちはちょっと覚悟が必要かもしれませんね!
🐢
それでは皆さん
愛ある一日を!
~おまけ~
ちなみにフランスではホイップクリームをナッペしたり絞ったりする作業はほとんどありません。
少なくとも私は6年間の間に数件のお店で働きましたがナッペしたことは一度もありません。
フランスのパティスリーでよく使われる生クリームは
「クレームフローレット」
と呼ばれる脂肪分35%くらいのものです。
このクリームをムースやアパレイユを仕込むメインに使います。
他には脂肪分40%以上の
「クレームドゥーブル」
や
クリームを乳酸発酵させた
「クレームエペス」
など主に焼き菓子で使います。
どちらもホイップして使う事はありません。
「クレームエペス」の話も少ししていますのでよかったら
👇
タルト ノルマンド(ノルマンディー地方)の話 | ~ 今日もいい天気 ~ (ameblo.jp)
ちなみにフランス語では
泡立てた生クリームの呼び方が幾つかあります。
甘いと
「クレームシャンティー」
【Crème chantilly】
もしくは
「シャンティー」
だけでも甘いホイップクリームを指します。
ムースに合わせる用など
そのまま泡立てた甘くないクリームは
「クレームフェッテ」
【Crème fouettée】
※動詞fouetter:料理用語で泡立てるの意。
泡立てる道具をFouet
もしくは丁寧にFouet de cuisine
(Fouetだけだと鞭の意味もあります)
もしくは
「クレームモンテ」
【Crème montée】
※動詞monter:上げる。組み立てる。など
と言います。
ピエスモンテのモンテもこのモンテです。
~おまけ~その2
日本ではホイップクリームのおかげで
ケーキは広まり定着したと言ってもいいくらいだと思っています。
もともとカステラを焼く技術があった日本で
ホイップクリームと
🍓イチゴを組合わせたケーキ
「ショートケーキ」
が生まれ、このショートケーキを軸に数々のケーキ(洋生菓子)が日本中に広まっていったと思います。
これは各家庭に冷蔵庫が置かれるようになり、冷蔵車も普及するなど冷蔵環境が整った事によると思います。
それ以前はカステラなど焼き菓子がケーキの主流でいわゆる生菓子に分類される洋菓子はほとんどなかったと思います。
別ページでお話ししていますが
ホイップクリーム以前は
バタークリームをサンドしたケーキがありました。
バタークリームとは名ばかりの
ショートニングを使ったこのクリームは、当時の子供にとっては大変特別感のあるケーキでしたが食べ過ぎると胸やけしたり、後口がスッキリしなかったりと今でもこの記憶のまま苦手な人は多くいます。
もしこの状況が続いていたならば日本の洋菓子はどの様になっていたかは分かりませんが、少なくとも今のような定着の仕方はしていなかったと思います。
バタークリームの話をしたページ
👇よかったら