このブログではNHK作品を多く取り上げていますが、民放も結構観ています^^;
その中で大好きなドラマについて書いてみたいと思います。
それは「先生のお気に入り」(TBS、1991年)。
1991年と書いて、もう30年も経っているのかと驚いてしまいます。
ジュリアード音楽院を卒業した腕のいいピアニスト(陣内孝則さん)は、ギャンブル好きが高じて借金を抱えたことにより、芸術高校で臨時教員をすることになる。
この芸術高校には音楽・演劇・ダンスそれぞれの科があり、芸術を志し大きな夢を開花させたいと思い努力する生徒たちがほとんど。しかし相手の才能に対して嫉妬を感じた音楽科の生徒や、やる気がなく演劇科に入ってきた生徒もおり様々な問題が出てくる…。
いわゆる学園青春ドラマです。教員役には、長塚京三さん、樹木希林さん、藤谷美和子さん、佐野史郎さん、安崎求さん、前田美波里さん、白石貴綱さん、生徒役には音楽科に小田茜さん、武田真治さん、ダンス科に一色紗英さん、L.L.ブラザーズ、坂本昌行さん(V6)、演劇科に萩原聖人さん、大沢健さん、大路恵美さんらが出演していました。
抜粋して生徒役の役者の名前を挙げましたが、それぞれの科では実演できる役者がほとんどで(例えば音楽科ならバイオリンが弾ける、ピアノが弾けるなど)吹き替えなどなかったので皆プロ中のプロでした。資料さえあれば全員の役者の名前を挙げたいぐらい。それは見事な実演ぶりでした。例えば坂本さんと一緒にダンス科の男子が駅のホームでいきなり踊り出すシーンとか。レベルが高くて凄いなあと思ったワンシーンです。
このドラマは学生が抱える様々な問題が一話完結として出てくるのですが、基本的には陣内さん演じる主人公の軽い雰囲気が主張しているので、暗く重いものではありません。どちらかというとかなりチャラい感じですw
しかし、それらの問題の原因は、芸術という不確かで、自分で探り当てていくしかない道を若くして選んでしまったが故の葛藤であったり、自己嫌悪だったり、行き違いであったりするわけです。
ではその解決はどうするかと言えばジュリアード音楽院にまで進んで、芸術の厳しさを体得している主人公だからこそ分かってやれる、助言してやれるんですね。この主人公の設定は凄く効いているなと思いました。普段の行いがチャラい分、芸術には真摯という主人公自身のギャップの描き方が良かったです。この設定のお陰で主人公は、普通の学園ドラマの教師像よりも遥かにかっこよく感じました。
音楽科の生徒が嫉妬のあまり、友達の楽譜を切り刻んで選考試験を妨害した話、演劇科に仕方なく入った生徒は好きなトランペットで唯一吹ける曲で転科しようとしたけれど落ちたので、ようやく諦めて演劇科で頑張ろうと決めた話(少しうろ覚えですが多分こんな話だったかと)が印象に残っています。
この時の演劇科の生徒が萩原聖人さんでした。実はこのドラマよりも前に3年B組金八先生の3の生徒役で観ている役者さんでしたが、先生のお気に入りの役で私的にかなりググッと来た感じです。演劇科に最初馴染めなかった演技がとても繊細で上手いなと思い、この作品から注目しました。今も活躍されているので嬉しいです。
このドラマが好きな理由はもう一つあります。
それは演出です。音楽・ダンス・演劇科のそれぞれの見せ場でもあるレッスンや実演シーンが観ていてとにかく楽しくて、ワクワクするものばかりでした。そのシーンだけで気がつくとあれ?こんなに時間が経ってたの?みたいな。何でこんなに見入るんだろう、と当時考えたのですが後に分かりました。
演者自身が楽しんでいたからではないかと。その姿を盛り上げながら撮影していたのではないでしょうか。
当時こんなに楽しくなる演出は誰なんだろう、と確認すると吉田秋生さんでした。TBSの方です。それからチェックする度に、あ、今回も吉田さんだ、みたいになりました。
でも、このドラマの前にも吉田さんの演出を実は観ていたんですねw wikipediaのページがあり、担当番組を見ると、「うちの子にかぎって…」「ママはアイドル」「ママハハ・ブギ」「卒業」などなどTBSの80年代〜90年代のドラマをほとんど手掛けられていたようです。道理でこれらの作品好きでした ^^
実はこのドラマをここに書こう!と思った時に、動画を探したら数話だけ挙がっているのを見つけまして(今後消されないことを祈りたい)。懐かしく観ていて、他の学園ドラマとの違いがちょっと分かったというか。
それは学校側が生徒を管理するというよくある内容ではないんですね。生徒に問題が生じるたびに主人公が型破りな言動をするのですが、同僚のほうが、いやそれは良くないと固定概念で反対すると、校長役の長塚さんや樹木さんはいつも大目に見ていました。まあいいじゃないかと見逃すわけです。
その見逃している理由が、長塚さんや樹木さんの授業シーンだと思います。
校長役の長塚さんは演劇科での授業(生徒のエチュードに飛び入り参加)で生徒に演じる気持ちを教えますし、樹木さん演じる教師も国語の授業で長岡輝子さんの朗読を使い、生徒に恋をすることを説いてやります。
他の普通校のように画一的に教えて管理しても、それはこの芸術高校では実らないものだよと実践している感じなんですね。考えたら才能に尽きるわけですものね。良くも悪くも。多少のことは見ないふりをするから、もっと羽ばたきなさい…なんでしょうか。他のドラマのように、分かりやすい大人(管理)対子ども(自由)にせず、あくまでも芸術を焦点にしたことは、画期的だったと思います。制作としての心意気を感じました。そして私もこのような授業を受けてみたかったです。
ドラマの最終回は、生徒をかばって喧嘩をした主人公が喧嘩の代償として学校を去ることになります。生徒たちは辞めさせたくないと頑張るものの、覆すことができない。と、自分たちの成長を観てもらおうと考え、自分たちの話を学内の舞台公演として披露することになりました。一人ひとりが自分自身を演じ、こんなふうになりたいと未来の自分像も語ります。その公演が終わった時、見届けた主人公は校門に駆けつけた見送る生徒たちと声を掛け合い、バイバイ!と去っていきます。
このシーンには凄く感動しました。悲しく不本意な別れではあるけれど、臨時とはいえ教師として教えたことが生徒の心には確実に届いていて、未来にはそれらがきっと生かされるだろうと思えたからです。そこには希望しかなくて、彼らが多感な時期に良い出会いをしたから得られたものなんですよね。記憶に残る名シーンでした。
主題歌は大塚純子さんのTEARS。それぞれが抱える葛藤や悩み、いろんな感情が入り交じる学生たちに向けた応援歌のような、切なさと希望に満ちた良いメロディーでした。このドラマにぴったりだったと思います。
役者陣は見事にクセ者感ある人ばかりですが(褒めてます)、主人公を演じた陣内さんがとても素敵でした。そして佐野史郎 さんのことに触れておきたいです。
「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さんで超有名になられる直前のドラマでした。このドラマでは演劇科の先生を演じていて、元役者の設定だったのか、毎回「昔○○(実名の役者)と一緒に仕事したんだけど」と見栄を張るのが口癖で、生徒からも「また始まった」と思われてビミョーな空気が流れる、そしてちょっとエキセントリックにもなったりする常識的で堅物な役でした。久しぶりに観た回では実名は小林薫さんでした。お二人は状況劇場だったので、あえてそれを入れているんでしょうw
私が佐野史郎さんを知ったのは、「先生のお気に入り」より2年前、テレビで放送した映画「TOMORROW 明日」(私の投稿記事があります)の長崎の原爆の前日に結婚式を挙げる新婚夫婦の夫役でした。私の大好きな映画の一つになった作品であり、この静かな佇まいの役がとても印象的で、かつ忘れがたく素敵な役者さんを知ることができたと当時は思いました。
映画のあとに、「世にも奇妙な物語」の第1シーズン(1990年)、大河ドラマ「翔ぶが如く」(1990年)での怖いあるいはキレた役で私は再会し、そしてこのドラマでまたまた再会!となったわけです。なので、冬彦さん役で佐野さん…って名前が出た時には、知ってるよー(^^)って感じで人に言っていたように思います。
怖い役、柔らかい役、三枚目、真面目な役いろんな役をされますね。どの役も佐野さんでしか表現できない役だと思います。これからも益々注目していきたい役者さんです。