昔SNSで自分に衝撃を与えた映画作品を10個挙げるというタグに乗っかってタイトルを挙げたことがあります(観た順に挙げてます)。

 

ローマの休日(日本公開1954年)

女王陛下の007(1969年)

野性の証明(1978年)

Wの悲劇(1984年)

Tomorrow明日(1988年)

スモーク(1995年)

セブン(1995年)

ユージュアル・サスペクツ(日本公開1996年)

コールド・フィーバー(1995年)

ペパーミント・キャンディー(日本公開2000年)

 

いろんな意味で衝撃を受けた映画です。忘れられない、深く感動した、考えさせられた、観た時の自分自身にとてもリンクする…などなど。

皆それぞれに10選があると思うのですが、色々と思い返してみるのも面白いものだなと感じました。

と、こんなことを書いていますが、私の映画館デビューは遅く、「皆が観ているだろう映画を知らない」という自覚があり、実は今も映画にはコンプレックスを持っていたりするのです。家が娯楽のために映画館へ行くという環境ではなかったので、例えば「スター・ウォーズ」(1977年)、あるいは「シャイニング」(1980年)など皆が怖い怖いという映画も観ておらず、今こんな作品が流行っているらしい、というテレビや新聞で見知った知識を持っている程度でした。

私の中高生の頃はシネコンやレンタルもまだなかった時代ですから、映画は映画館への時代だったんですよね。そうでなければテレビで放送される映画を観るしかなかったわけです。

 

ちなみに映画館デビューは高校生の時です。角川映画の「メインテーマ」「愛情物語」(1984年)でした。私の世代ならば皆が通った道ではないかと思う角川映画です。角川映画のキャッチーな番宣のCM砲がテレビで大量に流れているのを見てしまうと、映画館で観たいという気持ちになりました。映画館へ行かせる実に上手い作り。

特に当時は中学生でしたが「セーラー服と機関銃」(1981年)の評判が凄くて、友達と観に行きたいと親に言っても許可が出ず、ふてくされたことは今となっては笑える思い出です。高校生になってからやっと映画館へ観に行けたのですが、この「メインテーマ」「愛情物語」の内容よりも自分たちで観に行ったという達成感を得た気分の方を思い出します。しかし、そこまで中高生に思わせる角川映画、恐るべしですw

洋画の映画館デビューは「アンタッチャブル」(日本公開1987年)。

ロードショーを友達と観に行き、テレビでよく観ていた007出演のショーン・コネリーを観られたこと、痛快だけどシリアスな内容が見応えあったこと、そして劇中音楽が繊細で琴線に触れるような甘く哀しいメロディーに惹き付けられたことを覚えています。あと、ロバート・デ・ニーロの洗礼も受けましたw デ・ニーロが演じたアル・カポネが劇中、部下をいきなり歓談中にバットで殴り殺すシーンがあり、一緒に行った友達に私が強く印象に残ったことを話したところ、その友達は「タクシードライバー」(1976年)のデ・ニーロは凄いよと熱く語ってくれました。これで驚いていたらダメダメと言われた感じでした。

カポネ役のために髪の生え際を抜いた、太った、役のためには何のそのみたいな話を聞くとそんな凄い役者なのかと、興味を持ったのは言うまでもありません。

 

※以下、作品についてネタバレしているところがあります。

 

・「ローマの休日」「女王陛下の007

家で家族と一緒に観た映画です。「ローマの休日」は多分人生で初めて観た映画ですね。楽しく微笑ましい展開だったのに、ラストに永遠に別れる二人が悲しくて多分泣いたように記憶しています^^; 大人の今観たらあのラストになるのは分かります。「女王陛下の007」に出てくるジェームズ・ボンド役はショーン・コネリーではなく、この1作にしか出なかったジョージ・レーゼンビー。二代目のボンドです。痛快スリルアクションの007は観て面白かった的な感想で終わることが多いのにこの作品は別。ヒロインと結婚したボンドが新婚旅行中に、逃がしてしまっていた敵に襲撃されてヒロインが死ぬという、ハッピーエンドではなかった物哀しさが忘れられません。異色の007でした。

 

・「野性の証明

これも初見は家で家族と一緒に観た映画です。そして、今もCSで放送されていると観てしまう映画です。完全無欠のヒーロー高倉健さんだと分かっていても、決して荒唐無稽とは思えないハラハラしてしまう展開がリアルであり見事だなと。頼子(薬師丸ひろ子)を背負って、健さんが戦車に向かっていくラストのシーンがやるせないです。何度観てもこの気持ちが変わらないラストシーンだなと思います。

このラストの後、出演者やスタッフのエンドロールが流れるのですが、この映画の音楽を担当している大野雄二さんの曲「悪夢は頼子とともに」(「野性の証明オリジナルサウンドトラック」収載)がかかるんです。ラストの余韻をそのままに、かつ心に波紋を引き起こすようなメロディーになっていて凄く好きです。あと、この曲のタイトルは秀逸だなと思っています。

 

・「Wの悲劇」や「Tomorrow明日」は過去にこのブログで書いています。

 

・「スモーク

90年代に入るとミニシアターと呼ばれる単館上映の映画を知るようになったのですが、この映画や続編の「ブルー・イン・ザ・フェイス」(日本公開1996年)がその形態の映画になります。当時映画好きの同僚がいて、「スモーク」が面白いらしいよと話題になり、ぴあで情報を見てみたら、当時住んでいた関西ではたった2週間の上映でしかなく観られませんでした。

しかし、東京へ行く用事があり、上映館を探したらなんとすでに3か月間ロングラン上映中…(*_*)。びっくりしたのと同時に羨望を抱いたのも事実です。大都会だからこそ出来ることなんだろうなと思いました。

定点観測の話から発展する人との関わりや喪失と再生を描いたちょっと地味めな話ですが、観ているうちになんか寄り添ってもらって励まされているような気持ちになります。清濁併せ呑んだようなタバコ店のマスター役のハーヴェイ・カイテルが渋くて大人で素敵でした。映画館でかかると知ると観たくなる映画です。

 

・「セブン

ブラピ好きの同僚と一緒にロードショーで観た映画です。もう27年も経つんですね。CS放送で放送されると知るとつい観てしまう映画の一つです。

たった7日間という設定。盛大に盛っているわけでもなくシンプルで伏線も回収もお見事。初見時は、虚無感しか残らないラストの後味の悪さに唸ると同時に、犯人の造形に驚きました。凄惨なおぞましい殺人事件の現場を見せられてきて、どんな犯人かと思っていたらまるで修行僧かの如く、濁ったもの(欲望など)を全く感じさせない人間像に意表をつかれました。名前も名無しの権兵衛(ジョン・ドゥ)のままで終わり、何者かさえ分からない。そして、最近よく言われているような偏った正義感の論理だけど筋は通っているようにみえてしまう。狂っているのに現代に巣食う病理をある意味突いているようでなんとも言えない気持ちになりました。今の偏った正義感を先どっていた映画なのかもしれません。

Wikipediaに気になる表記を見つけました。 ミルズ刑事とサマセット刑事の上司を演じたロナルド・リー・アーメイが撮影前のオーディションでジョン・ドゥを演じてみせたらしいのですが、監督やブラッド・ピットモーガン・フリーマンたちに容赦が無さすぎると言われたそうです。容赦ないってどんな感じ?ってすごく気になるんですけどw

ちなみに映画好きの友達と以前セブンの話をしていた時に、こんな話をされました。映画館で観ていたら、ミルズ刑事が最後犯人に対して一生懸命自分を制御しているシーンで笑いが起きたそうです。人間の極限状態を描いているところで笑いが起こるのか、と聞いてちょっとショックでした。

 

・「ユージュアル・サスペクツ

映画館で観た映画ですが、これも「セブン」同様オチが分かっているのに何度も観てしまう映画です。

この映画の妙は見終わった時にどこまでが真実で何が嘘なんだろうと分からなくなってしまうところではないでしょうか。狐につままれた気分になり、また冒頭から観て確かめたくなる、永遠にループしてしまいそうになるwそんな映画です。

元々は、「若草物語」(日本公開1995年)に出演していたガブリエル・バーンを好きになって(詩人っぽい雰囲気が良いなと)観た映画でした。「セブン」の後にこの作品を観たので、またケヴィン・スペイシーが出てるんだと思っていたら、またまたヤラレてしまったというか^^; いかにもという風貌ではないところが彼の持ち味なのでしょうね。以前見返していた時、彼が一瞬薄く笑っていることに気づいたことがあり、演技と演出の上手さに脱帽しました。

 

・「コールド・フィーバー

主演は永瀬正敏さんですが、アイスランド・アメリカの合作映画です。これも単館の映画館で観た映画です。日本人のサラリーマンの青年が旅行中に客死した両親の供養のために冬のアイスランドへ渡り、両親が命を落とした現場へ向かう中で出会う人々に翻弄され、向き合っていくロードムービーです。

ロードムービーモノが好きということもあって、この映画が好きになったのですが、厳寒のアイスランドは風景が全て雪で真っ白で、見るからに寒々としているのです。観ているこちらの体も凍えていきそうな感じになります。でも、その真っ白な風景がこちらの気持ちを段々と浄化していくというか、清められていくように感じて、癒された気分になったのです。主人公は当初淡々とした性格で、両親の事故死にも向き合っているようにはみえませんでした。しかし、車強盗に遭い、途方にくれ、親切な人に出会い、ようやく両親の事故現場に立って弔いを始めた時、哀しみを表現するんですよね。主人公もきっとその時癒されたのだと思いました。

アイスランドは遠いどこかの国のように感じていましたが、この映画で親近感を持ちました。

 

・「ペパーミント・キャンディー

初見はレンタルで借り、観た後3日間ぐらい頭から離れなかった映画です。そういう意味ではとても衝撃的な作品でした。

事業に失敗し、妻に逃げられ、初恋の人も病気で亡くなりそうだと知らされた男が帰りたいと叫んで自死を選ぶ。そこからこの男が過去を回想していく逆再生の作品です。事業が上手くいき浮気もして嫌な人物だった場面、警察官として若い活動家を拷問をしていた場面、新米警官だった男の元を訪れた初恋の人に冷たく接する場面、そして戒厳令下に兵役に就いていた時にある出来事に遭遇してしまった場面、初恋の人と出会い、草花を愛でていた優しい性格だった場面…。男が帰りたかったのはこの一番最後の若かった時の自分なのですね。とんでもなく嫌な人物だと思っていた男は元々は優しくて穏やかな人物だった、一兵士だった男が極限状態の中で遭遇した出来事がその人生に澱のように残り続ける、その結果、選択を少しずつ見誤り(あえてそっちを選んでいるような気もしますが)、最後は抜き差しならない結末を迎えることになる…。人生ってこんなに重く、苦しいものかと思います。

見返すことが少ない映画ですが、数年前に映画館でかかると知ったので観に行きました。やはり胸が詰まりました。でも映画館で観るべき作品と思いますし、好きな映画です。

 

この10個の映画以外にも好きな映画、見返している映画があります。また、これらを挙げた後に観たこの映画をぜひ入れたいというものもあります。例えば「パラサイト」(2019年)とか。プラスして映画15選とか選んでみたいものです。これからも自分のペースで映画を観ていきたいと思います。