こだわりのつっこみ -10ページ目

こだわりのつっこみ

素人が音楽、小説、映画などを自己中心的に語ります。

レベル:中学2~3年生レベルなので数時間で読めると思います。


ジャンル:恋愛


あらすじ(背表紙から):

'You need to go out, Stella,' my best friend often told me.
'You need to meet new people.New men.'
But I didn't want to meet new men, and I didn't want a boyfriend.

Then Tony came to live in the house next door and everything changed.

面白さ:★★★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













Next Door to Love Level 1 (Cambridge English Re.../Margaret Johnson
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内容:
女遊びの激しかったジェームズと別れたばかりのステラ
友人のジャネットは早く新しいいい男を見つけるようにアドバイスしたりしますが、自分のことを幸せにしてくれる男などいないと半ば諦め気味。

そんな折、ステラの暮らすアパートにトニーという男性が越してきます。しかも隣人。
ジャネットの話を聞くうち、最初はトニーに興味なかったステラも、次第に意識し始めます。

トニーはいい男なのですが、トニーはかつてキャシーという女性と離婚をしており、2人の間にはデイジーというかわいい娘がいました。
母親と一緒に暮らしているデイジーとなかなか会えないトニー。
さらにキャシーは最近キャメロンという男性と結婚したらしく、さらに娘とは会いにくくなります。
妻への愛がなくとも、娘への愛はあふれんばかりにあるのでした。

さて、一方ステラとの仲も、だんだん深くなっていきます。
娘のデイジーも、ステラを気に入っている様子。
このままステラとの仲も順調で、さらに定期的ではあってもデイジーに会えるなら幸せだったはずのトニーですが、ここでそれを揺るがす出来事が。

キャメロンの仕事の都合で、キャシーとデイジーも共にスコットランドへ引っ越さねばならなくなったというのです。
そうなったら当然、デイジーとはもうほとんど会えなくなります。
そこで、ステラはトニーを説得し、親権確認の裁判をすることに。

しかし、離婚した場合母親側に親権がいくことが多い中で、トニーの場合も、親権は母親側にあると確認されてしまいます。
絶望的なトニー。
それを見るステラは、友人のジャネットが常々言っていた言葉を思い出します。
「何かをしたかったら、ただすればいい。立ち止まったり、考えたりしてはダメ。待ってもダメ。ただすればいい。」

そこでステラはトニーに提案するのです。
一緒に私たちもスコットランドに行きましょう」と。


感想:

 文章自体は短いけれど、なかなか面白いです。
結末、どう転ぶのかなぁ~、もしかしたらステラは職場の同僚クラウスと新たに恋仲になるんじゃないかと穿って読んでしまいましたがあせる、結果は個人的に好きな裏切られ方です。

なによりも「あ~」と唸ってしまったのは、

裁判の直前の週末に、デイジーがトニーを訪ねてきた際、
トニーに「引っ越した先のスコットランドで、新しいお父さん(キャメロン)が乗馬を教えてくれるというけど、私はお父さん(トニー)に教えてほしいの」といい、
トニーは乗馬未経験にもかかわらず、娘を悲しませないために「ああ、分かった」と返事をします。
そして、ステラと共にスコットランドに越したトニーですが、
最後にこう書かれています。
「私(ステラ)たちは毎週末、デイジーに会えている。彼女はトニーに乗馬を教えている」と。

あの時の約束とは反対に、デイジーに乗馬を教えてもらっているトニーですが、それもまた親子の愛情としては素敵なものですニコニコ
クムイウタ/Cocco

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概要:1998年発表の、Coccoの2枚目のアルバム。Coccoの言わば出世作である「強く儚い者たち」や「Raining」といったシングルを収録しており、Coccoの発表したアルバムの中では2010年現在最高の約88万枚の売り上げを記録している。


総論:
個人的に、初めて聴いたCoccoのアルバムです。ゆえに思いも深いのですが、前作「ブーゲンビリア」もなかなかの良作だったと思っていますが、この作品はいい意味での初期の強いアクと、その後のメロディアスな両方を併せ持つ稀有な作品だと思います。
Coccoというアーティストを語る上では、その歌詞に注目しがちですが、それは一旦置いておいて(笑)、今回は(というか今までどおり)、アレンジや曲に関しての感想を語りたいと思いますビックリマーク
もちろん、Coccoの書く歌詞は、それだけで共感を得たり、何かしら感じるものがあったりするくらい人々を惹きつけるものを持っていると思うのですが、少なくともこのアルバムを聴く限り、それプラス、アレンジの巧さが際立っているように感じます。
さらに、そのアレンジは、Coccoの歌の世界観や歌声を壊すことなく、むしろそれらをスケールアップさせている大きな要因だとも思うのです。
そう、このアルバムはオバケアルバムです。


抄説:★は5つが満点で☆は0.5点。さらに違う色のタイトルにクリックしていただくと偏狭な思い入れの記事に飛びます。
1.小さな雨の日のクワァームイ  ★★★
 いきなり度肝を抜くアカペラ。1分少々の短い歌です。

この頃のCoccoの歌は、歌詞からも分かるとおり、割と激情型雰囲気を醸す歌が多かったように思いますが、この歌は子守唄のような安らかな声で歌われます。
アルバムのタイトル「クムイウタ」は琉球方言で「子守唄」だそうなので、それにぴったりですニコニコ


2.濡れた揺籠  ★★☆ 
ほーら来た、ロックテイスト。1曲目の雰囲気をいい意味でぶち壊します。

Coccoのサウンドの特徴の一つとして、Aメロ(もしくはBメロまで)極力抑えられていて、サビで爆発って歌が良くあります。
特にこのロックCoccoではそれをよく感じます。たとえば「けもの道」や「星に願いを」など。

この歌も例外ではなく、ゆっくりめのテンポで、Aメロがドラム押しでつなぎでベースとエレキギターが加わる感じ。
決してロック向きの声だとは思わなかったのだけれど、久々に聴いてみると、なんかかっこいいんだよなぁ。
アレンジの上手さでしょうかね音譜

2番のサビ、ベースがウニウニと、これまでのラインとは違うように動きます。
アレンジとプロデューサーはベーシストとしても活躍されている根岸孝旨さん。やっぱりベーシストがプロデュースしていると、ベースとドラム隊が面白いです。
椎名林檎さんの亀田誠治さんしかり!!


3.強く儚い者たち  ★★★★★
「儚い」って「人の夢」って書くんですね・・・なんか物思う深さです。

それはさておき、この歌は放棄したくてもできない部分を指摘しておかねばなりません。
その歌詞得意げ!!

明るい曲調ながら、受け止めたくないかもしれないありがちな現実を、おとぎ話の人魚が語りかけるように歌われます。
最初にこの歌詞を見たとき、Mr.Childrenの「ゆりかごのある丘から」を想像してしまいました。
しかしあれはマイナーな曲調なのに、こちらは明るめ。
こういった人間の弱さと強さと儚さをある意味で賛美・認めているようで、なかなか熱いです。

なぜだかこの歌を聴くと、沖縄の青い海と島を感じさせます。
アレンジの妙でしょうか。ただ、この曲、Cocco作曲じゃないんですよね。。。うーん、でもCoccoだ。不思議だ汗

あぁ、語ることが多いので、これはこれだけに限ってのちのちぐちぐち語りたいと思います。


4.あなたへの月  ★★★☆

ピアノとともに、ギターのうなる音、声とともに太いベースと乾いたドラム。
しかし、壊れるようなロックではなく、割とメロディアスな感じが好きです。

こちらも先述したように、Aメロは控えめで、エレキギターの音がなかなか聴こえてきませんが、その代わりアコースティックギターがほぼ16分音符でこれでもかといわんばかりに、しかし冷静にかき鳴らされています。
サビをはさんで間奏でもこのアコースティックギター、ソロのような扱いで、聞きほれる音なんだこれが。

一方のエレキギターですが、サビに入る3小節前のド頭からジャーンとコードを鳴らし、サビではアコースティックと同様、かなりいい感じで鳴っています。
サビの前にはピアノの上昇していくメロディで、サビへの盛り上がりに一役買いますが、かなりの高音なので、悲痛感があります。

2番は一旦静かになって、ストリングスのなにやら妙な動き。
しかし、2:37辺りからは乾いたドラムと、同じコードでしばらく突き抜けるエレキギターが入ってくるとはビックリマーク
サビに入って、2回目の3:22からはピアノの踊るような音が加わってさらにかっこよさを増します。

アウトロのCoccoの声。なんて綺麗なんだろう。たゆたう雰囲気が曲のガチャガチャといい感じに調和して、最後まで聞き逃せません。


5.Rose letter  ★★★★
くせになるんです、この歌。
最初はたいして面白いとは思わなかったのに、音の盛り上げ方・使い方がよく分かるのです。

キーキー音の後、ドラムで始まり、歌が乗ってもそのままドラムのみでしばらく続きます。
2回目からはアコースティックギターが入り、さらに続けて1:32からは
「ヒコヒコ」というアコーディオンのような音が右耳に入ってきます。

間奏はくぐもったストリングス。
ラストからはアコースティックギターがより強めに感じられ、3:18からはアコーディオンにかぶさるかのごとくストリングスが「ヒコヒコヒコヒコ」と鳴り、ぐわーっと盛り上がると思いきや、しゅんと静まり返り、冒頭のキーキー音で終わるのです。

メロディ自体はサビがあるのかないのかよく分からない感じですが(失礼!)、
曲の盛り上げにより、かっこよさがあるのです。



6.My Dear Pig  ★★★★
保育園でCocco先生が歌っている感じです。「みんなのうた」ですね。

にしても、アレンジ面白いなぁ。
だって、豚っ鼻で4拍「フゴフゴ」いった後、ピアノに乗せて優しい歌声で物語が始まるんですよ合格

歌詞はなんとなく映画『ベイブ』のホゲット夫人の気持ちを歌っているみたいです(笑)

間奏はこれまたかわいいリコーダー。

多種多彩ですね。


7.うたかた  ★★★
 またまた面白いアレンジ。
ここまで聴いてきて、アカペラありロックありポップスあり童謡ありのアレンジの楽しさ。
そしてここへ来てストリングスのみの伴奏です。

このストリングスの生音感、すごく素敵なんだよなぁ。Coccoの歌声ともよく合ってるし。
特に、伸びやかで切なげなその歌声と、ヴァイオリンがよくマッチしているんです。

例えば、3:17のアウトロで、Coccoが「ん~♪」ってハミングでかぶせているんですが、よく合ってるんです。

そういえば、Coccoって、なんか素朴な歌声だなぁと思っていたんですが、実はこのアルバムを聴く限り、
ほとんどビブラートを使ってない気がします。
だから、技巧派の歌い手っていうよりも、胸にささる感情的な歌い手っていう感じがするのかなぁ。


8.裸体  ★★ 
実のところ、さほど重たいCoccoは好きじゃないんです。
この歌ではアルバム初めましての叫びが聴けます。

この曲がなんだか不気味だなぁと思っていたら、何よりもベースが「ボッボッボー」って全然感情ない感じで演奏されているんですね。

これもアレンジの巧さなんだろうけど、個人的には飛ばしてしまいがちの、箸休め的な歌になってます。


9.夢路  ★★☆
前奏やAメロはなんだかメロウな感じで好きなんですけどねぇ~。
サビがなんとなくパッとしないと思ってしまって、星は低めです。
同系統の歌に、のちにリリースされる「水鏡」などがあると思うのですが、これらの完成度が高いと思ってしまって、比較すると、この「夢路」は印象が薄いです。

しかし、こういったわりと奇をてらわないアレンジと、標準的な楽器編成は、このアルバムではなかったので逆に新鮮です。

ただ、間奏のソロ、ヴィオラかなはてなマーク
これ1本だけでラストのサビまで音が入ってくるので、面白いです。


10.SATIE  ★★★★
3拍子の歌って、このアルバムでは初でしょうか。
3拍子で有名なのは、ワルツですが、ワルツのような華やかな感じでは全然なく、むしろ静かで物憂げな歌です。
切ない3拍子もなかなかのものですニコニコ

ブラシを使ったドラム、アコースティックなギターとベースは、人間的で、非常に生きたものを感じます。

間奏はマリンバで、だんだん盛り上がるCoccoの歌声にかぶさるようにマリンバも、そしてアコースティックギターも盛り上がっていきます。

そして最後は余韻を残して終わる。


11.Raining  ★★★★☆
前曲の余韻を残しつつ、ふと目が覚めるようなアコースティックギターの一打ちから始まる、名曲です。
この歌の面白いところは、サビが2回あるといいましょうか。
サビで盛り上げた後、一旦テンション落として、再び盛り上がるっていうサビが印象的です。
さらに、これまでにも増してそのアレンジが(特に音の厚みが)これでもかっ
というくらいに発揮されています。

順を追っていくと、
1番
  Aメロ:アコギのみ
  Bメロ:+2小節3拍目のみタンバリン
  サビ前:+エレキピアノ
  サビ:+コーラスとやわらかいエレキギター(右耳)
  しずまったサビ:+フルート(ピロピロ)
間奏:+ベースとドラム
2番
  Aメロ・Bメロ:バンド+エレキピアノ
  サビ:+より大きなアルペジオのエレキギターと控えめなコードを奏でるエレキギター
  しずまったサビ:ハーモニクスを使ったギター
  もう1回サビ:コードを奏でるエレキギターが強めに演奏され、ストリングスも加入

何本ギター使ってるんだいはてなマーク

さらに楽器の厚みだけでなく、その使われ方にも凝りが。
特にアウトロなんですが、
ストリングスの「たーららららーららららー」と、Coccoの「トゥルールルルー」というハミングが追いかけっこしている風で、
さらにその上にかぶさるように4:21からはコーラスのベルトーン!!
ベルトーンとは、和音を一気に鳴らすのではなく、単音で音を鳴らしながら、次第に和音となる音が拍をずらして奏でられる演奏方法ですが、ここでは「アーアーアーーアー」とコーラスでベルトーンが使われているのです。
個人的にベルトーンは好きなので(Perfumeでも使われています)痺れます。
さらにそれだけではなくて、4:45あたりからはベースが高音でメロディアスな動きをはじめます。
もう、脳が揺れます。

この歌は、ぜひ大音量でヘッドフォンで、最後の最後まで聴いてほしいです。
最後のサビからの解放感ったらないですからにひひ


12.ウナイ  ★★★★
 大曲のあとは、若干エフェクトをかけたピアノで始まる、雄大でゆるやかなエンディングを飾る歌
6/8拍子でしょうか?

ゆるやかとは言っても、Rainingのような音の重厚感は十分感じられます。
前曲のようなコーラスに守られながら、歌われます。

1番が終わりその途中、間奏ではオーボエがソロを担当し、アウトロまで、その切なげな音色は奏でられます。

和製(沖縄製?)エンヤのような想像をしてしまいます。
サビらしいサビがないんだけれども、それでも一つの名曲を作り上げてしまうアレンジには脱帽です目
レベル:中学2~3年生レベルなので数時間で読めると思います。


ジャンル:恋愛


あらすじ(背表紙から):

Donna sees Mark on the boat to Spain.
She likes him and he likes her.
Then Mark sees Donna dancing with his brother, Dave...

Is Donna in love with Mark?
Why is Dave dancing with her?

面白さ:★★★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













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内容:
スペインに向かう船上で、ドナマークに恋をします。
物静かだが、自分を見てニコッと笑ったその感じに恋に落ちたのです。
その日の午後、ドナは友人を連れて船の中にあるディスコに訪れます。
ここに来たら、マークももしかしたらいるかもしれないという淡い期待を持って。

案の定、マークも友人たち数人とディスコにやってきました。
最初に会ったときは物静かだったのに、なぜか、ディスコではドナに積極的に話しかけるマーク。
ためらいながらも、ドナはマークの誘いを受け、ダンスを踊ります。

しかし、ダンスを踊っている最中、目に入ったのは、物陰からこっそり踊る2人を見る男性。
実は、その男こそマーク本人であり、ドナとダンスを踊っていたのは、マークの兄弟デーヴだったのです。

一方のマークも、実は一目会ったその瞬間から、ドナに恋をしていました。
しかし、シャイなマークはドナに話しかけるどころか、ディスコで弟のデーヴに彼女をとられる始末。
そのままドナとマークの2人は会話をすることなく、船から下りたのでした。

さて、彼らが降りたスペインのある町では、ある催し物があり、それにドナ一家は参加します。
そして、偶然にもマークたちもその場にいました。

マークは今度は違います。恥ずかしがりながらもドナに微笑み、ドナの手をとり、一緒に踊るのでした。

実は、これらは恥ずかしがり屋のマークを思ったデーヴの一博打でした。
つまり、船上でドナと踊ることで、マークの嫉妬心を煽りシャイ心を克服させ、ドナを射止めるために、マーク自ら行動させようという粋な計らいだったのでした。


感想:

デーヴいいやつだな、お前!!

読んでる途中は、デーヴが2人の恋路を邪魔しているようにしか思えなくて、すごくイライラしましたが、蓋を開ければ全部彼の計略。

こんな兄弟、欲しいです(笑)
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 「今日は変ねえ、お父さん」
 彼女は台所にいる母親に声をかけた。
 「でも、病気でなくて良かったわ」
 静江はガスの火を一寸、弱くすると、浴室にいる夫のためにタオルを持っていった。
 浴室のガラスに、しゃがんで体を洗っている夫の影がうつっていた。
 (カミソリ、あるかしら)
 夫婦のなかだから断らずに、ガラス戸をあけた。突然、
 「キャッいやッ」
 悲鳴にちかい叫びをあげ、塙氏はーー女のように、両腕で胸をかくしたのである。
(p256より)

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今回は、古い本です。といっても古典ではないのですが…。
古本屋で手に入れた、遠藤周作さんの大変だァという長編小説です。

なかなか面白いですねぇニコニコ
というのも、なぜ現在もっと読まれないのだろうというくらい、現在に照らし合わせてみても、とてもウィットに富んで、皮肉が効いている作品だからです。
まあ、差別的に思われる部分があるからかなぁ~汗


あらすじはと言いますと、

非常に封建的な亭主関白の夫塙氏
そんな夫に妻静江は夫に文句を言わずに付き従い、娘巴絵も一応父親の理想の子どもを演じています。

しかし、巴絵も遊びたい年頃で、父親や母親に嘘をついて、友人と隠れて異性交遊。
そして静江もある手紙をもらったことを境に、その手紙の主田辺に心をときめかせていきます。

さて、そんな中社会ではおかしな現象が水面下で着々と起こってきています。
というのも、男性が女性化し、女性が男性化しているのです。
その謎を解くべく、放射能の研究所所員、向坂部長氏が奔走し、ある結論に達します。
それは、原子爆弾や水素爆弾に含まれるプラターズ線が動物になんらかの影響を及ぼし、性をおかしくしているということ。

ただ、仮説の状態でこれを社会に知らせると大混乱を引き起こすことから、向坂氏はフランスが起したある核実験で性が変わってしまった鶏2羽を極秘に譲り受け、その原因と治療法を調査しようと試みます。
しかし、2羽の鶏を手に入れたのもつかの間、ちょっとしたアクシデントでそのうちの1羽が脱走してしまうのです。

一方、かつて塙氏の娘巴絵と遊んだ軟弱男たちは、再び巴絵を誘うために家に伺うと、運悪く父親である塙氏に見つかってしまい、男を鍛えるという意味で闇鍋をし、きちんと完食できた者は娘との交際を許すという話になります。

さて、闇鍋会の当日。
軟弱男たちは、ゲテモノを持ってこれる勇気はなく、家の庭で捕まえた、雄か雌かよくわからない鶏を闇鍋の中に入れます。

それが、泉が逃がしてしまったあの被爆して性が変わった鶏とは知らずに・・・





では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。










大変だァ (新潮文庫)/遠藤 周作








~1回目 2010.6.1~

鶏の肉が入った鍋を食べた、塙氏巴絵、軟弱男たちは性が変わってしまいます。
あんなに封建的な男だった塙氏は胸が出てきたり、家事を手伝おうとするなど、妻の静江がびっくりするほどの豹変。
巴絵も、毛が生えてきたり、絡んできた男たちに暴力を振るわんばかりの立ち居振る舞いをみせます。

ただ、向坂の研究により、治療法が分かったということで、塙氏や巴絵らはその治療を受け、次第にもとの性に戻っていきます。

さて、その静江と心をときめかせていた田辺ですが、話が進んでいくうちに田辺はどうやら詐欺師だったらしいことが分かります。
子どもの入院費ということで田辺の口車に乗ってしまい10万円を貸してしまった静江は当然のことながら後悔。
しかし、ここで遅ればせながら気づきます。
なんでもない日常でも、それが幸せだったのだと。
夫の小言、夫のおならであっても。

もとに戻った塙一家。しかし、そこには何らかの変化がありました。
相変わらず亭主関白の塙氏。若干静江に優しさを見せる様子。
妻の静江。痛い詐欺を経験し、なんでもない普段の生活に結婚以来の幸せを感じます。
そして娘の巴絵。あの騒動で知り合った泉とお付き合いを始めたようです。


さ~て、感想ですが、正直ストーリーはありがちな感じがしますが、
この作品のすごいところは、現代の皮肉り、女性という存在について、ちょっとしたお涙頂戴話、作者自身が作品に登場するというリアルじみた設定などが非常に上手いところです。

では、それぞれ部分的に抜き取ってみましょうか。


まず現代の皮肉りについて。
女性化してしまった、軟弱男たちの中の一人、中村
彼だけは、治療を拒み、女性でい続けようとします。その理由が、
女になれば就職の心配はなく、兵隊に行くこともなく、レストランや喫茶店でも男に代金を支払ってもらえ、重い荷物も持たなくて良い。
さらに、
「都合がいい時は男女同権を主張し、都合わるい時は、か弱い女をと訴えればいいんだから」(p283)
なのですあせる


次に女性という存在についてですが、
上にも通じるようにこの作品では「都合のいい存在」として描かれています。
例えば、闇鍋で参加させられていたはずの妻静江だったのに、どさくさに紛れて口にしなかった。
夫に文句を言わないしとやかな女を演じているとはいえ、いかに心の底では信頼していないのかなぁショック!
さらに、田辺に心を奪われている様子が、夫の塙を言い訳にしている感じがすごく、都合がいいです(笑)


さて、ちょっとしたお涙頂戴の話ですが、
私は静江と田辺の話をもっていきたいと思います。

静江と田辺は同郷であり、さらに青年の時から田辺は静江を想っていたという前提からスタートします。
夫と比べ、顔も良く紳士的な田辺にどんどん心惹かれていく静江。
田辺の子どもの医療費に10万円手渡してしまいます。
その直後、実はこの男は詐欺師で、しかも以前知り合った田辺から静江のことを聞いただけで、田辺でもなかったのです。

その事実を知った静江ですが、男に一瞬でも自分のことを少しでも想ってくれた瞬間があったか聞くのです。しかし、男の答えはNO。そして静江に対し、自分が言ったことはすべて嘘だということを告げて静江を追い返すのです。
しかし、静江が帰った後、男は涙を流しながら刑事に語ります。
「あの奥さんはいい人です。子供のように初心なんです。ぼくだってあの人が好きになりましたよ。しかし、そうは言えん。言ったらいかんのです」(p312)
静江のことを本当に好きになってしまったからこそ、もう騙されないように、そして夫のもとに戻るようにあえて突き放した詐欺師。
・・・はぐれ刑事ですかしょぼん


さて、最後に設定についてですが、
作中に登場した作者が、「性が変わってしまった人々の話」を書くことにするのです。
あたかも、実はこの作品はノン・フィクションなのだというような作り
それ以外にも、吉行淳之介や曽野綾子など実在する人々が登場したり、性が変わってしまった代表者として角山明宏(丸山明宏、つまり美輪明宏)が登場したりするという非常に面白いつくり。
それもそのはず、単なる小説ではなく、ある種現代社会への警句としてこの作品が書かれているんじゃないかなぁと疑ってしまうのですビックリマーク
作中の最後の部分で、作者が語ります。
「しかし、読者はそれをたんなるフィクションとして読むでしょうな。現実にこの日本で本当に起こったとは夢々、信じないでしょう」
「しかし十年後、この小説が与える警告は大きな意味を持つと思うな」(p329)

この小説が書かれたのはおそらく1970年前後。
遠藤先生!!
40年経ち、「鬼嫁」や「草食系男子」などがクローズアップされる昨今、この警告はより現実になってきていますよ。
本当に、プラターズ線のせいじゃないかしら(笑)







総合評価:★★★☆
読みやすさ:★★★
キャラ:★★★
読み返したい度:★★★
レベル:中学2~3年生レベルなので数時間で読めると思います。


ジャンル:ヒューマン


あらすじ(背表紙から):

The houses in Newton Road are small, but people are very happy there.
Then a civil engineer wants to knock down the houses and build a new road.

The people of Newton Road are very angry.

But can they win the battle?

面白さ:★☆


※以下、結末まで話します。嫌な方は見ないでください。













The Battle of Newton Road: Peng1:Battle Newton .../Leslie Dunkling
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内容:
イギリスのある小さい町を通るニュートン・ロード。
この道沿いに住むサリー・ロブソンは、小さい家ながらも、触れ合いに満ちた街の人々との生活にとても満足していました。

しかし、状況が変わったのは、ウッドという役所の都市開発の人間が現れてから。
サリーら町の人が集まるその場で、ウッドはニュートン・ロードに変わる新しい道を作るために、立ち退いて欲しいと訴えます。
しかし、当然サリーらは反発。ここにニュートン・ロードを巡る争いが勃発します。

ウッドは電力などのライフラインを止めてでも立ち退きをさせる構え。
サリーはこれを新聞に訴え、世論の盛り上がりをあおります。

もちろん、新聞はサリーに好意的で、行政側の強引な政策を批判しますが、もちろん、一方でニュートン・ロードは道がよくなく、新しい道を作るべきで、町の人々は新しい所に住めばよいのだという主張も聞かれるようになります。
と、同時に、サリーとウッドも冷静に考え始めるのです。

さて、結果的にはニュートン・ロードは新しい道に造り直し。
しかし、町の人々は新しい道沿いに作った家に住むことができるということに決定します。
町の人とのつながりが大切だったサリーにとっても、新しい道を造りたかったウッドにとっても最善の選択が生まれたのです。


感想:

はい、最終的にはサリーとウッドは友人となり、お茶をともにする仲になります。
争いはダメだよねって言葉を掛け合いながら。

まあ、それ自体は別にいいんですけど、

可能だったならば、なぜ最初からサリーたち町の人々を一緒に住まわせると言ってから新しい道をつくらなかったのかはてなマーク
できるんなら最初からしてくださいな。
こっちは、それができないから複雑な利害関係の交錯を考えてしまったじゃないですか。

あ、もしかして、この作品は、作者の平和的なメッセージが含まれてたりして。
サリー側がパレスチナでウッド側がイスラエルみたいな。
・・・んなわけないか(笑)