二階建て俳句も最終コーナー。イロハの最後「~せす」です。
歌留多では「京」が〆です。
せ——す
施行宿/かの棘紆余し/杖拝す (三春)
せぎやうやど かのいらうよし つゑはいす
酸葉恵つ/松籟のかど/夜雨山羊背 (仲春)
季語:施行宿・三春。酸葉・仲春。
施行宿(せぎょうやど):修行者・遍路を無料で泊める宿。善根宿。
紆余(うよ):曲がりくねっていること。
酸葉(すいば):タデ科。葉や茎に酸味がある。スカンポ。
善根宿はほんとうに有難い。難儀な行路もおかげさまでこうして休めるのです。共にしたこの杖を捧げて拝礼しました。
スカンポを摘んで口にしました。酸い味が懐かしい。松林を吹き抜ける風の音が止んだ。夜の雨が音もなく山羊の背を濡らしている。
拗音(音節「キャ」「しょ」のように一音を二字で書き表すもの)が句のなかにあるときは、対のもう一つの句にも拗音の字句が必要です。ここの例では、第一句の上五に「ギヤウ」とでてきたので、第二句で中七に「ショウ」を工夫しました。
しっくりしないので、作り替えます。
青帝や/夜目遠目佐保/床拝す (初春)
せいていや よめとほめさほ とこはいす
酸葉こと/ボサ目歩とめよ/夜出で伊勢 (仲春)
季語:青帝・初春。酸葉・仲春。
青帝(せいてい):五行説で春をつかさどる神。
夜目遠目(よめとおめ):「夜目遠目笠の内」女の容貌がいっそう美しく見えること。
佐保(さほ):佐保姫。春をつかさどる佐保山の女神。平城京の東に位置するので五行説で春霞の衣をまとう女神とされ西の龍田山と対比される。
ボサ:ボサノバ。サンバの新型。
春の神、青帝は佐保姫を遠くから目にとめて憎からず思いました。そして夜の褥に誘われました。
スカンポのすっぱいこと。ちょっと、ちょっと、ボサノバのCDとめてよ。伊勢参りは夜立ちだってよ。
左見右見(とみこうみ)。右顧左眄(うこさべん)。——結局これにします。
ことしは去年より3度暑いのだそうです。
昨日は医者を2軒ハシゴして95歳の夏をナントカ乗り切りました。さすがに疲れました。
待合室で呼ばれるのを待っている間、俳句をヒネルのは手頃な暇つぶし。
新しい句体を考案するのは、楽しい時間つぶしです。
このシリーズのあとご披露しますが、……
ブラジルは四季が日本と真逆で、今が一番寒い時です。2月が真夏。強いとうもろこし酒を飲んで大騒ぎするカーニバルの準備に官民を挙げて「今忙し」でしょう。
正詠み(読み下し)に加えて、逆読みすると別の句になるというウラオモテ二重構造の俳句を遊んでいます。
季節は連句のキマリを守って、季語もちゃんと入れて、イロハ順に、…と、自分で規則を作って作っています。「…ゑひもせすん」でおわりですから、もうちょっとのお付き合いです。
も――せ
餅雪や/ひかり赤裸々/日誌記せ (晩冬)
もちゆきや ひかりせきらら につしきせ
夕日に/裸々木芹交ひ/や消ゆ知母 (三春)
季語:餅雪・晩冬。芹・三春。
知母(ちも):①ハナスゲの漢名。リュウゼツラン亜科。②漢方薬解熱剤。
や:【副助詞】軽い疑問をあらわす。やも知れない。
綿雪が地上を覆っています。素裸のひかりが喜んで乱舞しています。そうだ。日記に書き留めておかなきゃ……仲たがいしたままの親友の死を。
夕日が疎林にわらわらと崩れ落ちています。セリを摘みに来たのですが、かなり生えそろってきているけど、ハナスゲはもうなくなったのかな?
「雪」という季語は、「三冬」と思っていたら「晩冬」なんですね。
切れ字に命令形を使うときは激しい悲しみの時、という不文律を守っていませんが……「解釈」はとりあえずそのような趣旨で。
歯医者がすんだと思ったら、ひどく咳きこんで息苦しい。
肺炎は年寄りには「死に至る病(キエルケゴール)」だ。こりゃ、いよいよ年貢の納め時かな?と思って、しおらしく医者に訴えた。いきなり鼻に紙縒(こより)を突っ込まれたときはオドロイタ。15分間待たされて、診察室へ。医者はムズカシイ顔をしている。歯ブラシと着替えを持ってすぐ…入院、かな、と覚悟を決めた。
医者のムズカシイ顔は「歯が痛いんだ」、そうだった。自分のことなら、少なくとも患者の前でムズカシイ顔をするものじゃない。金帯橋の歯医者を紹介した。
コロナ風邪がまたハヤッテいるのだそうだ。痰は白い。肺は影ナシ。どこにも病相ナシ。どうして咳きこむのかワカラナイ。処方箋には痰切飴。保険が利かないでしょううけど…と医者は申し訳なさそうに言った。
診察前は家人に支えられてやっと歩いたが、帰りは人を追い越して闊歩した。クーラーをつけて3時間昼寝した。冷やしたメロンを二切れ食った。うまかった。
季節は連句のキマリを守って、季語もちゃんと入れて、イロハ順に、…と、自分で規則を作って作っています。「…ゑひもせすん」でおわりですから、もうちょっとのお付き合いです。
も――せ
餅雪や/ひかり赤裸々/日誌記せ (晩冬)
もちゆきや ひかりせきらら につしきせ
夕日に/裸々木芹交ひ/や消ゆ知母 (三春)
季語:餅雪・晩冬。芹・三春。
知母(ちも):①ハナスゲの漢名。リュウゼツラン亜科。②漢方薬解熱剤。
や:【副助詞】軽い疑問をあらわす。やも知れない。
綿雪が地上を覆っています。素裸のひかりが喜んで乱舞しています。そうだ。日記に書き留めておかなきゃ……仲たがいしたままの親友の死を。
夕日が疎林にわらわらと崩れ落ちています。セリを摘みに来たのですが、かなり生えそろってきているけど、ハナスゲはもうなくなったのかな?
「雪」という季語は、「三冬」と思っていたら「晩冬」なんですね。
切れ字に命令形を使うときは激しい悲しみの時、という不文律を守っていませんが……「解釈」はとりあえずそのような趣旨で。
歯医者がすんだと思ったら、ひどく咳きこんで息苦しい。
肺炎は年寄りには「死に至る病(キエルケゴール)」だ。こりゃ、いよいよ年貢の納め時かな?と思って、しおらしく医者に訴えた。いきなり鼻に紙縒(こより)を突っ込まれたときはオドロイタ。15分間待たされて、診察室へ。医者はムズカシイ顔をしている。歯ブラシと着替えを持ってすぐ…入院、かな、と覚悟を決めた。
医者のムズカシイ顔は「歯が痛いんだ」、そうだった。自分のことなら、少なくとも患者の前でムズカシイ顔をするものじゃない。金帯橋の歯医者を紹介した。
コロナ風邪がまたハヤッテいるのだそうだ。痰は白い。肺は影ナシ。どこにも病相ナシ。どうして咳きこむのかワカラナイ。処方箋には痰切飴。保険が利かないでしょううけど…と医者は申し訳なさそうに言った。
診察前は家人に支えられてやっと歩いたが、帰りは人を追い越して闊歩した。クーラーをつけて3時間昼寝した。冷やしたメロンを二切れ食った。うまかった。
歌留多もラスト。「も」「せ」まできました。仮名尻の「京」がみえてきました。
も——せ
木星へ/赤裸々氷柱/汐あり石蜐 三冬
もくせいへ せきららつらら しほありせ
芹網干/ララつララ艤せ/蔽せ雲 三春
季語:氷柱(つらら)・三冬。芹・三春。
木星(もくせい):わが太陽系で最大の惑星。別名/歳星・太歳・夜中の明星・ジュピター。
赤裸々(せきらら):素裸。隠し事が全くない。全裸。
石蜐(せ):カメノテの異名。せい。甲殻類。岩礁の割れ目に棲み潮が満ちると亀の手のような触手をのばして捕食する。
芹(せり):春の七草の一。別名、根白草。
網干(あぼし):工芸などに用いる意匠。竹垣の編み方の一種。網干垣。
第五惑星ジュピターへ地球よりスッポンポンの氷柱でご挨拶します。潮岩在・龜の手 拝。
芹籠ララランラン艤装せよ! 覆いを掛けろ! 出航だ、雲!
「ら」という音は日本語には極めて少ない。にもかかわらず「ら」を重ねた語があるのを知り驚きました。
驚きついでに作り替えることにしました。
歯医者の話。
歯丈(はたけ)が短いので、固いものを歯と歯莖の両方で噛むことになる。ムカシは梅干しの種も自前の歯で嚙み割ったものだ。今は女房が手渡すぎんなん割り専用のヤットコの世話になる。便利なようで味気ない。
「常識は年齢で変わります」歯医者がヘンなことをいう。
「朝食はパンですか?」
こどものときはゴハンに味噌汁だったが、今の朝食は、都会風に、皿いっぱいのサラダとコーヒーとトーストだ。コーヒーはミルクと蜂蜜で苦みを消す。家人のようになにも入れないストレートな味を好む通(つう)を試したが苦いのはどうもダメだ。薩摩の血がこういうところでブレーキをかける。
「トーストにはジャムを塗る」医者は続ける。なにをいいたいのだろう。「ジャムを塗ったほうを上にして噛む」当たり前だ。常識だ。
「口の中でひっくり返して舌で味を見るのだったら……」常識は年齢で変わります、はこのことだった。
パンに塗ったジャムのほうを下側に(普通とは逆に)して食べるのが合理的だというのだ。確かにジャムが上あごのウラにくっつかないし、舌に直接接蝕させたほうが手っ取り早い。
舌は味をみるのが仕事だ。口の中でパンを裏返すためにあるのではない。
錦帯橋には少なからず違和感があったが、パンを裏返しに喰うことは納得した。その説や良し。
もともと俳句をひっくり返すことを業としていることでもある。
ウマが合うような、合わないような先生だが、治療が終わったら先生を焼き鳥に誘おうかな。その後、見掛けないが奥さんらしいでかい外人の看護師さんをふっと思う。ホルモン焼にするかな。どちらもウラオモテがないし土手で噛める。
暑い夏が涼しくて風邪を引いたみたいです。激しくせき込みますのでジンジャーを飲ませられています。
も——せ
木星へ/赤裸々氷柱/汐あり石蜐 三冬
もくせいへ せきららつらら しほありせ
芹網干/ララつララ艤せ/蔽せ雲 三春
季語:氷柱(つらら)・三冬。芹・三春。
木星(もくせい):わが太陽系で最大の惑星。別名/歳星・太歳・夜中の明星・ジュピター。
赤裸々(せきらら):素裸。隠し事が全くない。全裸。
石蜐(せ):カメノテの異名。せい。甲殻類。岩礁の割れ目に棲み潮が満ちると亀の手のような触手をのばして捕食する。
芹(せり):春の七草の一。別名、根白草。
網干(あぼし):工芸などに用いる意匠。竹垣の編み方の一種。網干垣。
第五惑星ジュピターへ地球よりスッポンポンの氷柱でご挨拶します。潮岩在・龜の手 拝。
芹籠ララランラン艤装せよ! 覆いを掛けろ! 出航だ、雲!
「ら」という音は日本語には極めて少ない。にもかかわらず「ら」を重ねた語があるのを知り驚きました。
驚きついでに作り替えることにしました。
歯医者の話。
歯丈(はたけ)が短いので、固いものを歯と歯莖の両方で噛むことになる。ムカシは梅干しの種も自前の歯で嚙み割ったものだ。今は女房が手渡すぎんなん割り専用のヤットコの世話になる。便利なようで味気ない。
「常識は年齢で変わります」歯医者がヘンなことをいう。
「朝食はパンですか?」
こどものときはゴハンに味噌汁だったが、今の朝食は、都会風に、皿いっぱいのサラダとコーヒーとトーストだ。コーヒーはミルクと蜂蜜で苦みを消す。家人のようになにも入れないストレートな味を好む通(つう)を試したが苦いのはどうもダメだ。薩摩の血がこういうところでブレーキをかける。
「トーストにはジャムを塗る」医者は続ける。なにをいいたいのだろう。「ジャムを塗ったほうを上にして噛む」当たり前だ。常識だ。
「口の中でひっくり返して舌で味を見るのだったら……」常識は年齢で変わります、はこのことだった。
パンに塗ったジャムのほうを下側に(普通とは逆に)して食べるのが合理的だというのだ。確かにジャムが上あごのウラにくっつかないし、舌に直接接蝕させたほうが手っ取り早い。
舌は味をみるのが仕事だ。口の中でパンを裏返すためにあるのではない。
錦帯橋には少なからず違和感があったが、パンを裏返しに喰うことは納得した。その説や良し。
もともと俳句をひっくり返すことを業としていることでもある。
ウマが合うような、合わないような先生だが、治療が終わったら先生を焼き鳥に誘おうかな。その後、見掛けないが奥さんらしいでかい外人の看護師さんをふっと思う。ホルモン焼にするかな。どちらもウラオモテがないし土手で噛める。
暑い夏が涼しくて風邪を引いたみたいです。激しくせき込みますのでジンジャーを飲ませられています。