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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

観たこともないのですが、うわさに聞く「花火」。物見高い江戸っ子の象徴であるようです。題材として不足はない。さあ、どう料理するか…

 両国      

おもて裏 前しんがり
花火を観る舟とや 
——(え混む)——  
くちに乾せぬ酒揺れ
月夜の——水位……
…わあ、揃た…笑め 


おもてうらまへしんがり
はなびをみるふねとや
……え こむ
くちにほせぬさけゆれ
つきよの…すいゐ
わあ そろた ゑめ

前後左右。隅田川は花火を観る舟でびっしりだ。
(橋も人でいっぱいだ)
見惚れていると、花火を映して盃の酒が揺れる。
今宵は月も影身だな。運河の水位、潮を湛えて…打ち上げに仕掛けが出そろった。凄い光…凄い音… わっ!

9文字律とするために平仮名を随所、使っていますが、これが、いい詩的配色になっているようです。浮かれて興奮した様子が出ている、と思うのですが……
イロハ48字を1回遣う詩も6週目になりました。今回は「毬藻」をテーマに。
と言っても名前だけお借りしただけ、というセコイものですけど…    

阿寒湖——————
毬藻フェスティバル
トラ嬉しく狭路 
ポチを追ひ消ぬよ
見つむ吾の威に召せ
餌食べ閨な行きそ 


あかんこ
まりも ふぇすてぃばる
とら うれしくさろ
ぽちをおひけぬよ
みつむ わ のゐにめせ
ゑ たべ ねや なゆきそ

なゆきそ:「な~そ」係り結び。副詞「な」が動詞の連用形(カ変・サ変は未然形)の上についてその動詞を禁止する意を示す。行かないで。

北海道・阿寒湖のマリモ祭典。
飼い犬のトラがはしゃいで臆病なポチを隅っこに追いつめ見えなくなった。ちゃんとしていないと迷子になるよ。ほら、オヤツあげるよ。勝手に単独行動をとっちゃダメ‼

「ま」「り」「も」はニホンゴには…とここまで書いたら、「あるはずがない…」と文字変換候補に出ました。AIに先回りをされたんでは二の句が告げられない。まあ図星なのですけど……
使用例が少ない文字なのでこういう時は固有名詞に逃げる(「トラ」や「ポチ」のように)ことにしているのですが、幸い辞書に「マリモ」がありましたので遣うことにしました。難題が一挙に片付きました。こういう天啓もあるのですねえ。
イロハ48字を1回ずつ用いて現代詩を作る試みも5回になりました。文字を1字ずつ拾っていって詩にするのですが、「ゑ」「ゐ」「ん」の最もムズカシい三つが残ってしまいこれはニホンゴにはあるはずがないと、ほとんど確信しながら(諦めながら)念のためにいつものように辞書に当たったのです。すると奇跡が…… 


ガンジスの岸辺 

(なぞ誦めぬ⁈)
あれら沙弥にて仏を
お世話す……
静まり返る仏塔(パゴダ)
夕陽憂き諸屋根
円位生く 無依の地


(なぞよめぬ)
あれらさみにてほとけを
おせわす……
しづまりかへるパゴダ
ゆふひうきもろやね
ゑんゐいくむえのち

沙弥(さみ):僧になるため具足戒の修行している僧見習いの男の子。しゃみ。
円位(えんい):西行の法名。
無依(むえ):【仏】自由自在な悟りの境地にあって、何物にも頼ることなく何物にも執着しないこと。

沙弥の修行、もうそろそろ限界の歳を迎えることになるのに、まだ満足に勤行も朗誦もできていない。とにかく仏様の世話がお勤めだ。
真っ赤な夕陽が物憂げにあちらこちらの屋根をただ照らしている。——聖地。西行にとっての聖地。静まるパゴダ。ゆったりと流れるガンジス。 

辞典は日本語の倉庫ではなくて、日本語の宝石箱です。知らない言葉がたくさんあります。この一回だけではなくてほとんど毎回「未知との遭遇」があるを知るに及んでわれわれネイティブが如何に日本語を知らないかを思い知らされたのでした。
へえこんな言葉があったんだ、という追体験を、回を重ねるごとに皆さんも味わられることでしょう。