逆読みすると別の俳句になる二重俳句は、今回は「ゑ」「ひ」と「ひ」「ゑ」です。
あと、「も」「せ」「す」で、このシリーズはおわかれです。
ゑ——ひ
絵合子に/帆駆る日厳し/暮秋の灯 (晩秋)
ゑがふしに ほかるひきぶし ぼしうのひ
美の潮/しぶき昼顔/二十が会 (仲夏)
季語: 暮秋・晩秋。昼顔・仲夏。
絵合子(えごうし):金泥などで絵付けしてある蓋つきの椀。
厳し(きぶし):中世語。「きびし」の転。①激しい。強烈な。②食べ物の味の刺激が強い。③厳格である。④険しい。
格式ある料亭で出された料理の器に帆を駆る舟が描かれている。晩秋の夕陽を弾いて、さすが、それは美しいものだ。
汐のしぶきが昼顔にかかって、その風情は実に美の極致といっても過言ではない。回を重ねてもう二十を数える例会のことだった。
ウラの句はすべて体言留になり、気になりますが…
歯医者のはなし。
「犬歯はムシにきれいに喰われています」
「犬死、ですね」
「のんきですね。お客さんは。鬼歯はムシも喰わない」
「ムシしましたかね」
「またまた…。―—ハタケがほとんど無いですね」おいおい。歩道橋の次は野菜畑、かよ。
「いやその畑じゃないですよ」まさかという顔をして医者は顎をすくめた。プラント・ハウスは考えてないですよ。
「歯丈(はたけ)です。歯がすり減って短い」確かに噛むとき食べ物が歯茎に当たって痛むことが多くなった。
「嵩上げしますかね。32本全部いじることになりますが…親知らずを抜くとすると大工事になります」
治療費の領収書に市販のコクヨに三文判を押してくれるのは税金対策かも知らんが、気を付けたほうがいい、と思ったが特段、闇値でボルわけでもなさそうだ。治療費が50円というときもある。不思議な医者だ。
梅雨明けだそうです。暑い。