ouroboros-34のブログ -10ページ目

ouroboros-34のブログ

こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

有為の奥山までたどりつきました。逆読みでべつのハイクがあらわれる曲馬団サーカス俳諧。ピエロがご機嫌を伺います。

の——お  

野暮れ露/この日のものか/そこはポー      (三秋)
 のくれつゆ このひのものか そこはぽお
車前草ぞ/かの者火の子/譲れくノ       (初夏)

季語:露・三秋。車前草の花・初夏。
野暮れ(のくれ):「野暮れ山暮れ」という長旅をいう慣用句のこと。
ポー:Edgar Allan Poe アメリカの詩人・小説家。「黄金虫」など。
車前草(おおばこ):群がる葉のあいだに花莖を立て穂状に密集した小白花を房状に咲かす。葉は食用、葉・種は生薬。
くノ(くの):「くノ一(女)」の略。

 長い旅路の果てここに結ぶのは露の命か。コガネムシならばもうポーの世界だ。
 そこのけ!そこのけ!車が通る。女忍者よ道ゆずれ!火の車のお通りじゃ。

私事ながら昨日は、珍しく私の誕生日でした。
ゆかりの数の蠟燭を立てて妻がいわってくれました。95歳。よくもいきながらえたものです。ゆかりの数は端折って5本の蝋燭です。
火の点いたローソクの立ったケーキを吹き消す儀式を滞りなく終えました。百匁蝋燭ではなく直径3ミリほどのものでしたがちゃんと火が付きました。そしてちゃんと火が消えました。芯がチャントあったのですよ。誕生祝なんて生まれて初めてのことです。

すっかり建付けの悪くなった入歯に容赦なく吹き付ける北風に抵抗して蝋燭を1本でもわが息で吹き消そうとする健気さを想像あれ。
必死に余生にしがみついている今生は矍鑠として、老衰をしばらくは寄せ付けなないようです。

現代詩詩人の小笠原鳥類先生が新著『おお、限りなく懐かしい動物たち』(ライトバース出版・刊)をくださいました。たまたま誕生日と合い因縁を感じました。



ゐ——の 

堰越え/白露のうねり/滔々の         (仲秋)
 ゐせきこえ はくろのうねり たうたうの
農淘汰/利尿の緑葉/え濃き所為        (仲夏)

季語:白露・仲秋。緑濃き・仲夏。
堰(いせき):用水をせき止める装置。せき。
淘汰(とうた):水で洗って選り分けること。①自然環境の中で見られる適者生存の現象。②無駄なものを取り除くこと。
え:①不可能。②可能。動詞「う(得)」の連用形からできた副詞で、後に来る言葉で意味が正反対に定まる不思議なニホンゴ。ここでは②。去就不分明の言葉がニホンゴにはたくさんあります。「やばい」もその系列。

 堰止めを超えて秋の白露を集めた水が溢れ、滔々と早い。
 農は自然淘汰を手伝ってやることだと思う。漢方利尿効果のあ
る緑茶も手入れが良いとちゃんと緑濃く応えてくれるのだ。

いろは歌は、本居宣長も『鈴屋集』(巻五)に残していて、漢字交じりにすると、
雨降れば 井堰を超ゆる
水わけて やすく諸びと
下り立ち 植えしむら苗
その稲よ まほに栄えぬ

を換骨奪胎(かんこつだったい)しました。第一句がその本歌取りです。
ごらんのように本居歌は、いろは歌とおなじように「ん」がありません。仮名文字に「ん」が加えられたのは、後のことで当時は無かったのです。現代で是正され48字になりました。いろは歌が抵抗の武器になったとは何とも皮肉なものです。
「露」は魅力的な題材なので次回も「露」でやりたいのです。秋の句は3~5句の決まりなので、せっかくの仲秋も素秋(すあき)となりそうです。すあきはマズイ…

うんうんうなりながら工夫していると、「ぶりかえしましたか?」と家人が言いました。なにがなんでも明後日には風呂に入るぞ、と決心しました。
怪盗二十面相アクロバチック俳諧、有為の奥山道にさしかかりました。ではゴラン高原…あ、いや、ごらんください。

う——ゐ 

盂蘭盆会/構ふ僧と錫/帙この維   (初秋)
うらぼんゑ くふそうとすず ちつこのゐ
ゐのこづち/鈴と嘯く/園圃老    (晩夏)

季語:盂蘭盆・初秋。いのこづち・晩夏から初秋。
盂蘭盆(うらぼん):七月十三日~十五日に行われる仏事。初秋の霊祭り。
帙の維(ちつのゐ):書物を保護するための箱型のカバー。転じて、本。
ゐのこづち:雑草。実が花軸から離れやすく、すぐ衣服にくっつく。漢方の解毒剤。
園圃(えんぽ):菜園や苗圃。

 盂蘭盆会。長い年月に底光りのする錫杖と仏典を手にして僧が居並ぶ。
 農園の老人は裾についたいのこづちを、無音の鈴、これすなわち、百姓の勲章だと自慢している。

「コロナがなにほどのものぞ。おととい来やがれ」とうそぶいていたら、ホントに一昨日風邪をひきました。昨夜は15分おきに咳が出てほとんど寝ていないのです。ウチのとなりがコロナにやられて、やめておけ、と言ったのに見舞に行ってうつったようです。もう後の祭り。皆さん、命を大事にしましょう。こころを鬼にして病気見舞いに行かないようにしましょう。(鼻水タラタラ落としながらこれを書く私はウロボロス)