【以下ニュースソース引用】
「デイケアに来ていた99歳女性」が「いま心配なことはありませんか」と聞かれて答えた「意外な言葉」
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老いればさまざまな面で、肉体的および機能的な劣化が進みます。
目が見えにくくなり、耳が遠くなり、もの忘れがひどくなり、人の名前が出てこなくなり、指示代名詞ばかり口にするようになり、動きがノロくなって、鈍くさくなり、力がなくなり、ヨタヨタするようになります。
【写真】「うつによる仮性認知症」と「本来の認知症」の見分け方
世の中にはそれを肯定する言説や情報があふれていますが、果たしてそのような絵空事で安心していてよいのでしょうか。
医師として多くの高齢者に接してきた著者が、上手に楽に老いている人、下手に苦しく老いている人を見てきた経験から、初体験の「老い」を失敗しない方法について語ります。
*本記事は、久坂部羊『人はどう老いるのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。
99歳の心配事
そのデイケアに来ていた中で、最高齢だったのが九十九歳の女性・Tさんでした。
Tさんはいたって健康で、歩行も杖なしで歩けるくらいかくしゃくとして、頭もしっかりしていました。
もちろん年齢的な変化はあり、背中は丸く、顔には無数のシワとシミがあり、顎が小刻みに震えて、しゃべるのも超スローテンポでした。
私がTさんに、「ここの利用者さんで、あなたが最高齢ですよ」と言うと、「そうですか。わたしがいちばん年上ですか。迷惑をかけますなあ」と応えながら、悪い気はしないようすでした。
帰りのバスを待っているとき、たまたまTさんがひとりで座っていたので、私は横に座り、「今、何か気になることとか、心配なことはありませんか」と訊ねました。
何気なく聞いたこの問いの答えが意表を衝くものでした。
「心配ですか。そうですねぇ、強いて言えば、日本の将来ですかねぇ」 驚いて詳しく聞くと、日本の少子化が心配だというのです。
「わたしが言うのも何ですが、年寄りが増えすぎることは、国にとってあまりええことではないと思うんです。むかしはどこの家でも子どもが五人も六人もおったでしょう。今は子どもが減って、年寄りばかりが多くなったのでは、国の力が弱りますよ。そのうち、よその国に追い抜かれるのやないかと思うと、それが心配で」 どこでそんな知識を得るのかと訊ねると、新聞でもテレビでも見ていたらわかるとの答え。
思わず「頭もしっかりしていますね」と感心すると、Tさんは平然とこう言いました。
「そりゃ今でもときどき孫たちにご飯を作ってやりますからね。自分の食べたいものではなく、孫たちの好きなものを考えて、今度は何をご馳走してやろうかと思いながら寝るんです。わたしは今、自分のことは何も心配ありませんの。二人の息子も孫たちもしっかり家庭を築いてくれてますし、みんな健康で仲よく暮らしてくれていますから。この前、曽孫(ひ まご)が幼稚園で『月の沙漠』を歌うので、わたしが衣装を縫ってやったのを思い出しました。その曽孫が、もう大学生になってるんです」
感謝の気持ちを忘れず、高齢になっても社会への関心を失わずに、かくしゃくとしているTさんには、ほとほと感心させられました。
さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)
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