僕が死ぬ日・・生まれる日 -76ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

義明は晃から受け取ったメートを大切そうに抱きかかえながらある場所に向っていた。


長岡不動産


そう書かれた看板の店。


店にはポツンと1人の女性が暇そうに座っている。


「佳代ちゃん!薫はいるかな??」


そんな義明の言葉に佳代と呼ばれた女は迷惑そうに奥を指差した。


義明は自分が佳代に嫌われている事を知っていた。


自分の旦那をダメにする悪友・・


それはきちんと、大きな商売をしている今でも変わらない彼女の思いであった。


義明はそんな佳代の無愛想な顔を別に気にする事も無くスタスタと奥の住居に入っていった。


中に入ると一人の男が丁度、今から晩酌を始めようと一升瓶と粗末なつまみを用意していた・・


そして、彼は義明の姿を見つけると嬉しそうに言った。


「よう!義明ちゃん!新婚生活はどうだい??」と


鰐淵 薫


彼の名前をそう言った。


鰐淵と義明は俗に言う「ダメ友」であった。


「ダメ亭主友」とも言う・・


悦子が生きていた頃は毎晩のように飲み歩いていた。


鰐淵の家は不動産屋をやっていたが店は殆ど妻の佳代がやっていた。


それなら彼は何をやっていたかと言うと・・


彼は俗に言う「土地ころがし」を正業としていたのだ。


その腕は素晴らしく法律にもたけていて法の目を潜りながら今まで多くの大金を掴んで来た。


しかし、彼は根っからの怠け者なのだ。


自分の中で自分が一ヶ月に稼ぐべき金額を決めていた。


大きな仕事を終え大金が手に入ると何時もその金を一ヶ月の自分が稼ぐべき金額で割り算をする。


そして、その答えの月分は仕事もしないで家でダラダラとしていた。


そんな鰐淵と義明はなぜか昔から仲が良かった。


まぁ~同じダメ亭主だからか?目に見えない不思議な絆で結ばれていた。


「薫ちゃん!凄い物が手に入ったんだ!」


義明は嬉しそうにもう既にコップに酒をついでいる鰐淵に言った・・


「凄いもの??」


鰐淵はそう興味深げに義明を見つめる。


「金になりそうな物かい??」


「ああ・・とんでもない金額の金の成る木だよ!」


義明はそう呟くと鰐淵に例のノートを手渡した。


鰐淵はコップ酒をチビチビ飲みながら一ページづつページをめくる。


すると、急に鼻がピクピク動き出す。


どうやら興味をしめたようだ・・


鰐淵には癖がある。


真剣な仕事モードになると何時も鼻をピクピク動かす。


そんな癖が・・・


そして、読み終えその作成者の名前を見ながら深いため息をついた。


秋山 純一


「こいつが関係してるなら本物かもしれないな!

少し、調べてみないとはっきりとは言えないけど・・」


鰐淵はこの秋山と言う男をよく知っていた。


以前は静岡の県庁に勤めていた。


道路族と言われる国会議員とも太いパイプを持っている男であった。


鰐淵はもう一杯、コップに酒をなみなみつぐと勢い良く栓をしめた。


「しばらくこいつは封印だな!」


そう鰐淵は言いながら一気にその酒を飲み干した


「おい!佳代!スーツを出して来い!」


そんな言葉が彼の戦闘の合図であった。


妻の佳代は、鰐淵のそんな言葉を待ってました!とばかりに聞きつけ・・


奥のタンスから高そうなスーツとその他、一式を用意した。


「義明!付き合えよ!探りに行くぞ!

こいつはもしかしたら、大勝負になるかもしれない!

これで、10年はダラダラと暮らせる!」


そう言いながら鰐淵は嬉しそうに笑った。


義明が自宅に戻ったのは翌日の昼過ぎであった。


えらく疲れた顔に小雪は少しだけ心配をした。


「あまた・・何をやっているの??」


小雪は心配そうに義明に尋ねる。


「小雪!しばらく家に帰ってこれないかもしれない・・

一世一代の大勝負が始まる!

悪いが晃を頼むぞ!」


そんな義明の言葉に心配そうに・・


「あなた・・無理しないでね!

私は今の生活で満足なのだから・・」と呟いた。






人はなぜに孤独を怖がるのだろう・・


何時も仲間に囲まれていたい・・


1人になりたくない・・


そんな戯言を繰りかえりながら・・・


孤独以上の人間関係と言う名の苦しみに心を痛めていく・・


別に1人でも良いではないか??


別に親友などと言える人間など必要が無いでは無いか??


所詮は人間など冷たい者である。


結局は自分が可愛いのだ。


そんな事をわかっているくせに・・


多くの人間は仲間を常に求めそんな複雑な人間関係に心を痛めている。


晃から言わせればそれはあまりにも子供じみた考えであった。


ただ、残念な事に晃は子供であったのだが・・


彼の名前を秋山と言った。


彼の父親は三島市の偉い役人であった。


晃はその事をよく知っていた。


だから、そんな秋山の道路が出来ると言う話にも現実味を感じた。


昔、父の義明が話してくれた。


商売とは人を観察する事から始まる・・・と


才能や商品を選ぶ能力はその次であると・・


お客を観察できる経営者が成功するのだと・・・


晃はその言葉を大切にしていた。


そしてクラスの人間を毎日、よく観察をしていた。


「道路が出来る・・・」


秋山の話は実に現実的であった。


「凄いな!お前!その情報・・何処から??」


情報源など聞かなくてもわかっていた。


彼の父親からに決まっている。


「晃ちゃん!君だけに言うけど・・」


君だけに言うけど・・


人間はそんな言葉が好きである。


それが友情の証のような錯覚をしているからだ・・


「家のオヤジの机の上に書類があるんだ!

伊豆横断道路計画書とか書いたぶ厚い書類が・・

それで、最近、毎晩、その書類を見ながらオヤジが誰かと電話で話をしてる・・

絶対に道路が出来るんだぞ!凄いよな!」


晃はその書類が見たくて仕方がなくなった・・


「秋山!今度、お前の家に遊びに行って良いか??」


秋山はがり勉タイプの子供であった。


それに一応はキャリヤの役人の子供である。


周りに居る多くの子供達は彼を敬遠していた・・・


「えっ!本当に!ぜひ!来てくれよ!

お母さんに美味しいお菓子を用意するように言っておくから・・」


それから3日後、晃は秋山の家に居た。


大きな一戸建ての家であった。


部屋が何個もあるような・・そんな晃の住む長屋とはまるで別世界のような・・


応接間に通されると秋山の母親が嬉しそうに紅茶とケーキを持って現れる・・


「雄一がお友達を連れてくるなんて初めてなのよ!

晃君・・仲良くしてあげてね!」


そんな優しそうな母親の笑顔に少しだけ晃はイラついた・・・


「なんか!かくれんぼが出来そうな広い家だな!」


晃は笑いながら言った。


そんな晃に秋山は照れくさそうに・・


「晃ちゃん!俺たち、親友になろうよ!」と馴れ馴れしく笑顔で言った・・


くだらない・・何が親友だ・・


晃は心の中でそう思ったが笑顔で答える・・


「ああ・・俺たちは親友になろう・・」と


人間とはなんて愚かな生き物なのだろうか??


そんな言葉に安心をする・・そんな戯言に・・・


それから、数回、晃は秋山の家を訪れた。


その度に探検だ!と言って彼の父親の書斎を探した。


そして彼の父親の書斎を発見した数日後、晃は計画を実行した。


「雄一!マジでかくれんぼしないか!」


その日、丁度、秋山の母親は不在であった。


「うん!良いよ!」


秋山が鬼になり晃が隠れる。


秋山が目をつぶり数を数え始めると急いで晃は書斎に向った。


何処だ!何処にある・・その書類は・・・


晃は必死に・・それでいてとても冷静に彼の父親の机の上を物色した。


そして、とうとう一冊の書類を発見する。


「伊豆横断道路計画(最終版)」


そう書かれた書類・・


晃はむさぼるようにその書類をめくった。


そして、その文章を暗記しはじめる。


前の晩に晃は義明にそれとなくこの計画を話してみた。


「そうだな!道路のルートがわかれば大きな商売になるな!

まぁ~そんな事は無理だけど・・」


そんな言葉を思い出す。


晃は必死に道路の予定ルートを暗記した。


「晃君!どこだよ!何処!!」


幾ら探しても晃を見つけることが出来ない秋山がふてくされながらそう叫び出す!


晃は一旦、暗記する事を中止するとそっと、その部屋を後にした。


そして直ぐにトイレに駆け込み、今、覚えた内容を丁寧にノートに書き写した。


晃はその行為を5回、鬼ごっこをしながら繰り返した。


「ただいま!あら、晃ちゃん!来ていたの・・」


そんな言葉を呟きながら秋山の母親が帰宅したの丁度、晃が全ての内容を書き写した後であった。


「ええ・・あっ!もうこんな時間だ!そろそろ帰ります・・」


晃は丁寧に母親にお辞儀をするとまるで逃げるように秋山の家を後にした。


ドキドキしてた・・とても・・


しかし、それドキドキは、盗み見た行為によるものではなく・・


これから訪れる自分が考えも出来ないゲームの訪れを予感させるドキドキであった。


自宅に戻るともう、義明は自宅の戻り夕食を食べていた。


「おう!晃・・遅かったな!」


そんな義明の言葉に晃が嬉しそうに鞄から例のノートを出した。


「オヤジ!これ、見てくれよ!昨夜の話の内容をメモって来たんだ!」


義明はまるで晃の子供の遊びに付き合うかのようにそのノートを開き読み始める・・


しかし、数分後・・手が震えだした・・


「お前・・これ、どうやって手に入れたんだ!」


震える声で義明は晃に聞いた・・


「秋山のオヤジ・・三島市の役人なんだぜ・・」


そんな息子の言葉に一瞬、義明はニャっと微笑んだ・・


「お前はやはり、俺の子供だな・・

このノート少し貸してくれよ!」


義明はそう晃に言うと食事もそこそこに急いで何処かに出かけて行った・・


「なんか・・新しい遊びを見つけた顔ね・・あの人の顔・・」


小雪は笑いながら晃にそう呟いた・・


※今回のお話はこれでお終いです!

皆様!ごきげんよ~~~う(=^_^=)



「義明さん!トイレットペーパー100ケース確保出来ました!」


そう義明に三島店の店長の佐々木は誇らしげに言った。


「そうか!今、何処も品不足だからな!引き続き探してくれ!」


そんな義明の言葉に佐々木は言った


「でも、なんか人間って不思議ですよね!

無いと言われるとどうしても欲しくなる・・

店がわからしてみれば、1個100円のこんな物が何個売れようが

あまり関係が無いのに・・・」


そんな佐々木の言葉に義明にふとアイデアが浮かんだ。


「なぁ~佐々木!トイレットペーパーあげちまうか???」


「えっ?意味がわかりませんが??」


「だから・・お客に無料で配ってしまうか!と言ってるんだよ!」


正直、佐々木は義明が気が狂ったのかと思った。


「しかし、今、一番、お客が求め居るものですよ!

飛ぶように売れるのにもったいないじゃないですか??」


そんな佐々木の言葉に義明は笑いながら言った・・


「だからお前は甘いのだ・・」と


義明はそう呟くと大きな模造紙を取り出しマジックで何やら書き始める。


「緊急速報!売り切れ御免!

3千円以上お買い上げのお客様にトイレットペーパー1個を

無料サービス」


そう書き上げると義明は満足そうにその紙を三島店の店頭に貼り付ける。


「明日から限定50ケースずつでやるぞ!佐々木・・・」と言った。


佐々木はそんな義明を尊敬の眼差しで見つめるのであった。


義明のアイデアは成功をした。


多くの店は通常の3倍近い値段で売っているのに義明の店ではそれを無料で配ると言う!


それも3千円違う商品を買うだけで・・


トイレットペーパーを買うだけではそれしか残らない・・


しかし、彼の店は違う!違う商品を手に居いれてトイレットペーパーも手に入れられるのだ!


多くの客が早朝より長い列を作った。


それから数ヵ月後、そのあまりの集客力に周りの馬鹿にしていた店の店主も真似をし始めた。


「佐々木!今、トイレットペーパーの在庫はどの位だ??」


そんな義明の言葉に・・


「200ケースぐらいです!

でも、問屋はウチが望めば幾らでも回すと言っていますよ!」と


佐々木は誇らしげに言った!


「解った!もう、トイレットペーパーを仕入れるのは止めろ!

今の在庫を売り切ったらイベントも中止する!」


「えっ?でも・・・」


佐々木が言いたい事は解っていた。


世間ではまだ、トイレットペーパーを探している。


仕入れれば仕入れただけその日に売れていたのだ。


「な・・何でですか??」


そんな佐々木の問いに義明は笑いながら言った・・


「成功する秘訣は、腹八分目だからだ!」と・・


その言葉通りに義明の店の在庫が全て無くなった数日後・・・


「石油!輸入再開!」と大きな見出し・・・・


義明は誇らしげにその新聞記事を眺めていた。


それと同時に多くの店の店主が溢れる在庫の処分に真っ青になった。


今回の事件で義明の店は大変な利益を上げた。


「義明さん!もう一店舗ぐらい出せるんじゃないですか??」


そんな佐々木の問いに義明は不機嫌そうに考え事をしていた。


「こんなはした金では足りない・・」


義明の瞳の奥に・・


決して消える事が無い野望・・


小雪には忘れると言ったが義明は決して忘れてはいなかった・・


あの日の・・


悦子が死んだ夜の・・


山田屋の人間の楽しそうな笑い声を・・


晃は3年生になっていた。


そんなある日、教室で皆が雑談をしていた。


「すげ~情報!今度、この辺に大きな道路が通るらしいぜ!

国道から伊豆まで伊豆半島を真ん中から突き通すんだって!」


そう自慢げにクラスの1人の生徒が言った。


小学生にそんな話は正直、興味の無い事であった。


しかし、そんな中、1人、彼の話を真剣に聞いている生徒が居た。


晃である。


「おい!なんか面白そうな話だな!もっと詳しく教えてくれよ!」


そう晃は微笑みながら言った。


金の匂いがした。


カエルの子はカエルなのか・・


晃もそんな男であった。


時の総理大臣が「日本列島大改造論」なんて事をしきりに国民に語りかけていた・・


そんな頃の話であった・・


※今回のお話はこれでお終いです!

皆様!ごきげんよ~う(=^_^=)