義明は晃から受け取ったメートを大切そうに抱きかかえながらある場所に向っていた。
長岡不動産
そう書かれた看板の店。
店にはポツンと1人の女性が暇そうに座っている。
「佳代ちゃん!薫はいるかな??」
そんな義明の言葉に佳代と呼ばれた女は迷惑そうに奥を指差した。
義明は自分が佳代に嫌われている事を知っていた。
自分の旦那をダメにする悪友・・
それはきちんと、大きな商売をしている今でも変わらない彼女の思いであった。
義明はそんな佳代の無愛想な顔を別に気にする事も無くスタスタと奥の住居に入っていった。
中に入ると一人の男が丁度、今から晩酌を始めようと一升瓶と粗末なつまみを用意していた・・
そして、彼は義明の姿を見つけると嬉しそうに言った。
「よう!義明ちゃん!新婚生活はどうだい??」と
鰐淵 薫
彼の名前をそう言った。
鰐淵と義明は俗に言う「ダメ友」であった。
「ダメ亭主友」とも言う・・
悦子が生きていた頃は毎晩のように飲み歩いていた。
鰐淵の家は不動産屋をやっていたが店は殆ど妻の佳代がやっていた。
それなら彼は何をやっていたかと言うと・・
彼は俗に言う「土地ころがし」を正業としていたのだ。
その腕は素晴らしく法律にもたけていて法の目を潜りながら今まで多くの大金を掴んで来た。
しかし、彼は根っからの怠け者なのだ。
自分の中で自分が一ヶ月に稼ぐべき金額を決めていた。
大きな仕事を終え大金が手に入ると何時もその金を一ヶ月の自分が稼ぐべき金額で割り算をする。
そして、その答えの月分は仕事もしないで家でダラダラとしていた。
そんな鰐淵と義明はなぜか昔から仲が良かった。
まぁ~同じダメ亭主だからか?目に見えない不思議な絆で結ばれていた。
「薫ちゃん!凄い物が手に入ったんだ!」
義明は嬉しそうにもう既にコップに酒をついでいる鰐淵に言った・・
「凄いもの??」
鰐淵はそう興味深げに義明を見つめる。
「金になりそうな物かい??」
「ああ・・とんでもない金額の金の成る木だよ!」
義明はそう呟くと鰐淵に例のノートを手渡した。
鰐淵はコップ酒をチビチビ飲みながら一ページづつページをめくる。
すると、急に鼻がピクピク動き出す。
どうやら興味をしめたようだ・・
鰐淵には癖がある。
真剣な仕事モードになると何時も鼻をピクピク動かす。
そんな癖が・・・
そして、読み終えその作成者の名前を見ながら深いため息をついた。
秋山 純一
「こいつが関係してるなら本物かもしれないな!
少し、調べてみないとはっきりとは言えないけど・・」
鰐淵はこの秋山と言う男をよく知っていた。
以前は静岡の県庁に勤めていた。
道路族と言われる国会議員とも太いパイプを持っている男であった。
鰐淵はもう一杯、コップに酒をなみなみつぐと勢い良く栓をしめた。
「しばらくこいつは封印だな!」
そう鰐淵は言いながら一気にその酒を飲み干した
「おい!佳代!スーツを出して来い!」
そんな言葉が彼の戦闘の合図であった。
妻の佳代は、鰐淵のそんな言葉を待ってました!とばかりに聞きつけ・・
奥のタンスから高そうなスーツとその他、一式を用意した。
「義明!付き合えよ!探りに行くぞ!
こいつはもしかしたら、大勝負になるかもしれない!
これで、10年はダラダラと暮らせる!」
そう言いながら鰐淵は嬉しそうに笑った。
義明が自宅に戻ったのは翌日の昼過ぎであった。
えらく疲れた顔に小雪は少しだけ心配をした。
「あまた・・何をやっているの??」
小雪は心配そうに義明に尋ねる。
「小雪!しばらく家に帰ってこれないかもしれない・・
一世一代の大勝負が始まる!
悪いが晃を頼むぞ!」
そんな義明の言葉に心配そうに・・
「あなた・・無理しないでね!
私は今の生活で満足なのだから・・」と呟いた。