僕が死ぬ日・・生まれる日 -75ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

狩野川の土手沿いの桜が今年も満開に咲き乱れていた。


晃は真新しい学生服を着て中学校に向っていた。


中学は4つの小学校の生徒が集まる。


また、ややこしい人間関係の始まりであった。


背がとても高く体つきが良い晃は何時も目立っていた。


それにもまして、目の上にある大きな傷も晃を目立たせる原因の1つであった。


入学式の次の日に今年、入学した1年の各小学校の番格の少年達が体育館の裏に集まっていた。


人数は晃を入れて6人・・・


誰を見ても強そうである。


ダボンダボンのボン丹と呼ばれるズボンを履き少し長めの学生服を来ている。


昔の不良はわかりやすい・・


ひと目見ただけで不良だとわかる。


それに比べて現在はどうだろう??


皆、同じ格好をして誰が誰だか解らない・・・


ある意味、こんな晃の時代の方が個性があったのかも知れない・・


「俺は北小から来た唐沢だ!ヨロシク!」


その中でもリーゼントをバッチリと決めたいかにも不良と言った1人の少年がそう言った。


そして順番に挨拶をした。


くだらない・・晃はそんな茶番を心の中で笑っていた・・・


「加藤だ!ヨロシク!」


同じ小学校から来た加藤が凄みのある声でそう呟く・・


そして晃の番になった。


「晃だ!ヨロシク・・」


なんとも気が抜けたような低い声で晃はそう言った。


早く帰りたいな~そんな事を思いながら・・


「そんで、誰が1年を仕切るかだけど・・」


唐沢が俺だ!と言いたげにそう呟いた。


ここに集まった全ての人間が彼の噂は知っていた。


高校生4人を病院送りにした!とか・・


教師を半殺しにしたとか・・


「唐沢君が仕切れば良いよ!」


何処の世界にもコバンザメのようなお調子者が居る。


そう、呟いたのは南小から来た雨宮であった。


「俺か!俺で良いのか?

出切れば無駄な喧嘩はしたくない!

俺で皆が賛成なら、俺が1年の番をはらしてんもらうけど!」


そう言いながら唐沢を晃達を睨みつける・・


「納得・・いかね~~な!」


そう呟いたの加藤であった。


どこの世界にも・・一応、反論して自分をアピールしたい人間が居る。


本当は無難に済ませたいと思っているくせに・・・


「ああ??加藤・・お前・・俺とやるって言うの??

てめ~~死にたいのか??」


鋭い眼差しが加藤に向けられた。


まるで蛇にのうな目であった。


加藤はカエルなのか??そんな唐沢の眼差しに恐怖の顔を見せた。


「で?晃は!お前はどうなんだ!」


晃は少しだけ偉そうな彼にムッとしたが面倒な事は御免だと首を静かに縦に振った。


「よし!全員一致だな!なら、俺が1年を仕切るから!

ヨロシク!そんじゃ~解散!」


唐沢の号令のもと、晃達は解散をした。


ダボンダボンのズボンを履いた強面の学生達が集団で校内を歩き回る・・・


先頭に立っている唐沢を見ながら全ての生徒が自分達のリーダーを確認した。


「じゃ~俺、帰るから!それに別に俺、不良じゃないから・・

もう、話しかけないでね!」


晃は笑いながら唐沢にそう言った・・・


唐沢はそんな晃を不機嫌そうに見つめていた・・


生意気な奴・・・


それが晃に付けられた印象であった。


そして、晃の中学生活が始まった・・

「小雪!温泉旅館を作るぞ!」


義明の見当違いの言葉に小雪は耳を疑った・・


「温泉旅館ですか??あなた・・」


何とも呆れた話であった。


しかし、小雪は感の良い女であった。


嬉しそうに図面を見つめる義明を見ながら・・


「あなた・・まだ、忘れていないのね・・」と呟いた。


「小雪!これを見てみろ!旅館の屋上に露天風呂を作るんだ!

天空露天風呂となずけて見た!」


義明の発送は実に面白かった。


風呂に入りながら多くの山々や海を見下ろす・・


そんな露天風呂など聞いた事が無い。


これは面白い・・小雪は素直にそう思う・・


そんで地下に居酒屋「小雪」を復活させる!


それで、飲みに来たい宿泊客を食事が終っても気軽に飲みに来れる様にする。


当時の温泉旅館は食事の時、以外はお酒を出す事はしなかった。


それは旅館の周りにある小さなスナックへの配慮からであった。


しかし、初めての土地でスナックに入る事は結構、勇気がいるのだ。


だから、気軽に安心して飲みに来れる・・そんな場所を作りたかった。


「それで、場所は???」


小雪は不安そうにそう義明に聞いた。


「ああ・・ここだ!」


義明は笑いながら地面を指差す・・


「ここって・・あなた!長屋の皆はどうするのよ!

皆にここを出て行けとあなたは言うの??」


「いや・・違う!彼らには俺の旅館で働いてもらう!

そして社員寮を近くに作る!」


その発想は貧しい長屋の住人達には願っても無い話であった。


「なら、あんたは店は??お店はもう辞めるの??」


「いや・・辞めないよ!この旅館を経営するのは・・

小雪、お前だ!」


「ええええ・・・っ!私・・・」


小雪は驚きのあまりに後ろにひっくり返ってしまった。


それから義明は旅館を開業するために精力的に動いた・・


山田屋に復讐するため・・


あいつらを地獄の底に落す為に・・・


それから、半年後、温泉旅館「小雪」はオープンをした。


そして、そのオープンに合わせるかのように「伊豆横断道路」の工事が始まる。


列車の旅から、自家用車の旅に・・・


そんな時代が動いた瞬間であった。


小雪の旅館は、天空露天風呂が話題となり連日、超満員であった。


なかなか予約が取れない状態が続いた。


小雪は温泉街の旅館の店主と話し合い。


「小雪」に宿泊しなくても提携している旅館のお客なら露天風呂に入れるようなパスを作った。


山田屋以外の全ての旅館がそのグループに属し・・


伊豆長岡の温泉街に久々に活気が戻った。


「もっと、大きな旅館を作れば良かったのに・・」


義明にそんな事を言った人間が居た。


義明は笑いながら言った・・


「もう、団体客を呼んでどうこうする時代ではもう直ぐ無くなるんだよ!

皆、バスや電車で来る時代ではない・・

自家用車で来る時代になるのだから・・」と


少しずつ時代が移り変わろうとしていた。


本当に少しづつ・・・


旅館の成功に気を良くした義明は次の挑戦を始めた。


「お客さんが勝手にカゴを持って商品を選べる大きな店を作ろうと思うんだ!」


当時は専門店しか存在していなかった。


何でもそこに行くだけで揃う店。


「そうスーパーマーケットって言うだそうだ!

アメリカではそんな店が主流だそうだ!

日本にも絶対に定着する!そんな店が・・」


義明は嬉しそうにタバコをくわえながら小雪に話をしていた・・


それから数年後、晃は中学生になろうとしていた・・・


そんな頃の話である。

義明は次の日から自宅にまったく戻ってこなかった。


彼と鰐淵は必死に自分達が持っている道路の予定地図の裏づけを行っていた。


そして、数日後、鰐淵が言った。


「完璧だ!これなら行ける・・・」


彼らは次の日にダミーの不動産会社を設立した。


「儲けの振り分けは??」


そんな義明の問いに鰐淵は笑いながら言った。


「お前の情報料は俺の労力でチャラだ!

あとは自分が用意できる金の金額で分配の金額を決める!」


その言葉から義明の金策の日々が始まった。


その日のうちに義明は自分のメインバンクの三菱銀行の担当者に連絡をした。


「出来るだけ上限いっぱいの金が必要なんだ・・

担保は全店舗の権利書、それに会社の預金全て・・

明日までに用意できる見積もりを持って来てくれ!」


「社長がお金を借りたいなんて珍しいですね!

わかりました!浅田商店は優良企業です。

きっと、ご期待にお答えできると思います・・・」


担当者の高木はそう電話で呟く。


正直、担当者の高木も必死であった。


なぜなら、彼の営業成績の殆どは義明の店関係から生まれている。


義明の機嫌を損ねる事は高木にとって致命的であった。


所詮、エリートなどと威張っても彼らはサラリーマンなのだ。所詮は・・


それから数日後、なかなか返事を持ってこない高木に痺れを切らし義明は不機嫌そうに電話をした。


「何時・・答えが出るんだ!俺だって冗談で言ってるンじゃないんだぞ!」


鰐淵は既に驚く程の金額を集めていた。


正直、義明は焦っていた・・


「い・・いや・・見積もりは出来ているのですが・・

じ・・上司の承認が出ないのです・・」


「ウチの会社に何か問題でもあると言うのか??」


「い・・いや・・会社には何も問題は無いのですが・・」


なんとも気が抜けた曖昧な返事であった。


「解った!あと、3日待つから・・

俺ももたもたとしてはいられないんだ!

期日が迫っている。

何らかの結果を持って来てくれ!

出来れば、君とは長い付き合いだから・・

君にお別れを言いたくないのでね・・」


そんな義明の言葉の意味を一番、解っていたのは高木本人であった。


その後、義明は三島信用金庫の営業の人間に電話を入れた・・


「メインバンクを変えようと思っているのだが・・」


それから3日後、義明の元に高木が現れる。


その悲痛な疲れきった表情から結果が推測された。


「も・・申し訳ございません!社長!

どうしても、融資課長の印が取れないんです!」


融資課長??三菱銀行の???誰だ!そいつは・・


ふと、義明と遠い記憶を探った・・


小池??そんな名前が思い出されるのにそう時間はかからなかった。


「小池か!そいつは・・」


高木は驚いたように義明の顔を見つめた・・


「お知り合いですか??課長と・・」


「ああ・・なんとなくな!」


そんな義明の言葉の次の言葉に高木は最悪の事態は免れた事を感じる・・


俺が悪いのでは無い!俺はやるだけの事はやったのだ・・


あんたと、ウチの課長の人間関係のせいだろ!


あんたが・・何かやったのだろ!


「わかった!」


そう言いながら義明は机の中から通帳と印鑑を取り出す。


「悪いが全部、解約をしてくれ!おい!出てきて良いぞ!」


そんな義明の言葉に部屋のドアがすっと静かに開き一人の男が入ってきた。


高木は胸のネームプレートを覗き込む・・


三島信用金庫 営業 雨宮 進


そう書かれた名札を見た瞬間・・高木はその場に倒れこみ泣きながら叫んだ!


「し・・社長!解約だけは勘弁して下さい!何でもしますから・・何でも・・」と


義明はその瞬間・・・


三菱銀行と言う大きな銀行に1つの自由自在に操れる駒を手にいいれた。


義明は4冊の通帳から3冊を高木に手渡した。


「一冊は残してやる!これで何とか頑張れよ!」


それは最後の義明の優しさであった。


そんな言葉に高木は床にへばりつきながら泣いた・・


金は出来た。しかし、義明が計画をしていた金額には届かなかった。


しかし、もたもたしてもいられない。


鰐淵は、毎晩、怒ったように電話をして来た。


「お前・・時間が無いんだよ!皆がきずく前に動かないと!いい加減にしろよ!」


その日の晩に義明は全額振り込まれた通帳を片手に鰐淵の自宅に訪れた・・・


「まあまあの金額だな!それじゃ~ゲームの始まりだ!」


次の日から鰐淵が動き出す・・・


そして、さすがと言うべきか・・


義明達が買いたいと思っていた土地の殆どを数週間のうちに全て買ってしまった。


土地は全て田んぼである。


鰐淵は相場の2倍の額を提示して地主から土地を買いあさっていた。


全ての土地が買い終わった数日後・・


政府は「伊豆横断道路」の建設計画を発表した!


その後、いろいろな鰐淵の同業者が血相を変えて土地の購入に動き出す・・


2倍で買った土地は・・・


5倍の金額になり義明の手元に帰ってきた・・・


「勝ったんだ!ゲームに俺は・・勝ったのだ・・・」


マルが無数に記入されている預金通帳を眺めながら義明はほっ・・とため息を1度・・


それが、山田屋への復讐の戦いの幕開けであった。