僕が死ぬ日・・生まれる日 -74ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

静岡県の東部に三島と言う町がある。


富士山の湧き水に恵まれた水の都とでも言うのだろうか・・


近くには三島大社と言う大きな神社があり昔から信仰の町としても知られている。


そしてその三島から一本の電車が修善寺と言う町まで走っている。


ボディは真っ白で車体の下に青い線が引かれたそんな電車だ。


昭和の初めから観光列車として多くの観光客を沿線の温泉場に運んで来た。


このお話はそんな電車で通勤をしているしがないサラリーマンの小さな小さな恋の話である。


ジリリリ・・・・・・・・ッ!ジリリ・・・・・・ツ!!


時刻は5時30分・・


私は何時も決まった時刻に携帯電話のアラームで目が覚める。


何時ものように食パンとタイマーでセットされたコーヒーメーカーのコーヒーを無理矢理に胃に流し込む・・


そして、あたり前のように玄関に置かれてる生ゴミを持って月曜日と木曜は駅へと自転車を走らせる。


駅に着くと駐輪場に自転車を止め、何時もと同じように改札に定期を差し込む・・


5時55分・・・


そして、何時もと同じ席に座ると同時に出発のベルがなる。


昼間は観光客で混雑するこの電車も早朝と深夜は殆ど乗る人間は居ない。


これが、あと30分もすればそんなほのぼのとした光景は消え・・


三島から東海道線で東京方面に通勤するサラリーマンで大混雑をするのだが・・


僕の指定席のある車両には何時も同じメンバーが座っている。


それも毎朝、変わらない光景である。


ファ~~~ン・・・


そんな合図と共に列車は走り出す・・・


それも毎朝・・同じ光景だ・・


ただ、違うのはその日、僕は運命の出会いをした事だけだろうか??


そう・・自分の人生がひっくり返るような・・


そんな偶然の出会いを・・


列車は山の間をすり抜けるように走っている。


そして、その場所を過ぎると一面、畑が広がっている。


私は次の停車駅の牧野郷の駅が見え始める鞄から文庫本を取り出し読み始める。


大切なプライベートの時間が始まる。


結婚をして15年・・


私の唯一の自由な時間は変わらない。


そんな少しの時間に自分の自由な時間を感じなければいけない自分を少しだけ哀れに思う・・


「次は~牧野郷・・牧野郷・・」


車掌のアナウンスが車内に響き渡る・・・


そして私の朝が始まった・・



ペタ・・・ペタ・・ペタ・・


静かな廊下にスリッパの何とも言えない音が響き渡る・・・


廊下で立ち話をしていた生徒達がその音が近づいて来るにつれて次々と教室に戻って行く・・


「ったく・・イラツク・・どいつも・・こいつも・・」


彼女はそんな生徒達を見ながらイラついていた。


彼女の名前は、佐藤 友美・・


この学校の新入生だ。


クラスは1年B組である。


髪の毛はアフロと言うのか何と言うのか奇妙なパーマをかけていてまるで鳥の巣のようである。


目つきは鋭く何時もガンと飛ばしている。


口元には何時もトレードマークのマスクを付けていて上履きは履かずに何時も・・


中学校の来客用のスリッパを愛用している。


友美は韮山北小学校の出身であった。


小学生の当時から周りから恐れられていた・・


とにかく気が短く喧嘩が好きであった。


そんな彼女がある日、偶然に屋上である少年を見かけた・・


目の上に大きな傷のある少年・・


彼は数人の上級生に囲まれながらも・・・


鋭い眼差しを崩す事は無かった・・


友美は直感で感じていた・・


こいつは・・強い・・・絶対に・・・


案の定、彼は、数秒の後に上級生達を地面に叩きのめしていた・・・


「やっぱり・・」


物陰に隠れて彼を見つめていた友美はそう呟いた・・


友美がその少年の名前を知ったのはそれから数日後の事であった。


浅田 晃・・・


そんな名前の男・・・


友美は初めて男性に興味を持った・・


もしかして・・これを初恋と言うのかもしれない・・


友美は暇があると必ず、晃のクラスの不良仲間の所に現れるようになった。


ドカンと机の上に座り・・・


引きずるほど長い制服のスカートをめんどくさそうに捲り上げる・・・


友美は何時と何も変わらない・・


何時ものように仲間のスケ番達と馬鹿話をしている・・


しかし、何時も目線は・・


窓際の席に座りボォ~つと外を眺める晃を見つめていた。


ある日、思いもよらない偶然が友美に訪れた。


学校からの帰り道に隣町の中学の不良数人に狩野川の堤防で待ち伏せされたのだ・・・


相手は10人以上居ただろうか・・


しかし、彼女は怯む事無く・・全ての相手にガンをくれていた・・


「大人数だからって舐めんじゃね~~~よ!

私は最強だよ!ムカツク!まったく・・ムカツク!!」


そう叫びながら友美はリーダー格の生徒に殴りかかる!


しかし、次の瞬間・・


数人の生徒に羽交い絞めにされ身動きが出来なくなっていた・・・


「泣けよ!友美・・助けて下さい!って泣いたら許してやるよ!」


そんな相手の言葉に友美はさらに睨む返す。


「誰が泣きを入れるかよ!私を誰だと思ってるんだ!」


すると1人の男がズボンのポケットからキラリと光る物を取り出す・・


その光を見た瞬間・・


さすがの友美も固まった・・・


「そのトレードマークのマスクの下には何があるのかな?

可愛い唇ちゃんかな??どれどれ・・・」


その男はそう呟きながら友美のマスクを取り外す・・


その瞬間・・周りから笑いが起こる・・・


「友美ちゃん・・可愛い唇でちゅね~~~」


それが友美の唯一のコンプレックスであった。


友美は美人であった。しかし、周りの人間に舐められないようにあえてキツイ化粧をしている。


しかし、目の鋭さや髪型は何とかなるが、唇だけはどうにもならない・・


小さな可愛い唇・・・


それが、余計に友美の可愛さを引き立てる・・


その反面、相手に恐怖心を失わせる・・・


「お前・・可愛い唇をしてるな!

口裂け女って知ってる???

なぁ~知ってる??」


ナイフをちらつかせながら彼はそう友美に問い掛けた。


そして、友美の頬をナイフの背でぬるっと1度、口元までなぞった・・・


鳥肌が立った・・・恐怖とはこんな事を言うのか・・


本当の恐怖とは・・


「お前ら!何やってるんだ!女1人に・・・」


不意にそんな声が聞こえる・・・・


友美にはその声の主が直ぐに解った・・


「浅田・・晃・・・」


そう呟くと友美はあまりの恐怖のために気を失ってしまったのだ。


それが、友美と晃の小さな恋の始まりとも知らずに・・

晃の中学生活が始まった。


父の義明の新しい店は最初は抵抗を感じられていたが便利だと口コミで広がり少しずつ繁盛し始める。


小雪の旅館は毎日、多くの観光客が珍しい露天風呂を目当てに訪れていた。


そんなある日、晃が自宅に帰ると小雪が真っ青な顔をして寝込んでいた。


「小雪ちゃん!具合が悪いの??」


そんな晃の問いに・・


「うん・・昨日からなんとなくね・・」と


「オヤジには言ったの??」


そんな問いに小雪は首を横に振った。


晃はそのまま近くの小さな診療所に先生を迎えに走った・・


「おめでたですね!4ヶ月ぐらいかな?

詳しい事は今、わからないので・・

体調が戻ったら1度、大きな病院に見せに行きなさい・・」


晃はそんな医師の言葉に耳を疑った・・・


「俺に妹か弟が出来るのか???」


小雪は突然の幸せに目にいっぱい涙を溜めて言った・・


「もう、赤ちゃんなんて授からないと思って居たのに・・」と


その知らせは直ぐに義明に連絡をされた。


義明がその後直ぐに駆けつけたのは言うまでも無い・・・


「で・・出来たのか!俺たちの子供が・・」


義明は小雪を抱きしめながらそう呟いた。


そんな光景を見ながら・・


晃は少しだけ不機嫌そうな顔をした。


なんとなく・・なんとなく・・孤独であった。


なんとなく・・・


目の上にある大きな傷・・


それは晃にとって大きなコンプレックスになっていた。


そして、その傷を多くの人間が生意気の象徴として見ていた。


その日も晃は2年生の不良たちに屋上に呼び出されていた。


「お前・・俺らにガンくれたべ!」


リーダー格の少年が晃にそういんねんを吹っかける・・


「そんな・・僕は・・」


晃はそんな奴らがうざったく仕方が無かった・・・


そんな全ての人間が・・


「うざいんだよ!お前・・・」


1人の男がそう言いながら晃の腹に重い拳を・・・


ウッ・・・・


晃の口の中にすっぱい胃液が逆流し・・


口の中が何とも言えない違和感に包まれる・・・


「俺は別に不良でもなんでもない・・

そっとしておいてくれよ!

俺は別に目立ちたくないんだ・・

目立つということは・・苦しみしか生まないのだから・・」


晃のそんな言葉に余計に彼は憤激した。


周りの仲間も集まり集団のリンチが始まった・・・


薄れる意識の中である心が何かを解き放った・・・


晃に心に住む・・・


悪魔と言う名の・・感情を・・・


次の瞬間・・・


1人・・また・・1人・・


次々と血まみれの2年生達がひび割れたアスファルトに倒れ込む・・


「こ・・拳は!誰かを痛めつけるために使うんじゃね~んだよ!

拳はな!大切な相手を守るために使うんだ!」


地面に倒れこむ彼を見つめながら晃はそう呟いた。


そんな彼を屋上の建物の影からじっと見詰める一人の人間が居た・・


そんな存在にその時の晃は気が付く事は無かった・・・


それが、晃の激動の中学生活の幕開けのゴングであった・・