僕が死ぬ日・・生まれる日 -65ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

たまに夫婦の意味と言う何とも厄介な意味について考える。


なぜに自分はこの女と一緒に暮らしてるのか??


また妻にしてみれば、自分は何でこの男と一緒に暮らしてるのか??


愛があるから!なんて戯言は最初の頃のだけの戯言で・・


夫婦なんて形になって見て初めて疑問が持ち上がる・・


自分はなぜにこいつと一緒に暮らしてる?


生活の為?老後に孤独になりたくないから・・


子供が欲しいから?世間体???


何時の間にか愛とか相手を労わる気持ちが消えてしまい・・


うざったく思う気持ちしか無くなる夫婦と言う形・・・


この女は誰なんだ?なぜに俺と一緒の家にいる???


そんな疑問を抱かない人間が存在するのだろうか?男にしても女にしても・・


愛する結果は何時の間にか束縛に変わって行く・・


2人で幸せになろう・・


彼を彼女を絶対に幸せにしようなんて言葉は何時の間にか記憶から消され・・


出来れば居ないほうが気が楽だ!


妻は金さえ持って来てきれれば、存在など無い方が良いと考え・・


旦那は出来るだけ家に帰りたくないと夜の街を赤ら顔でさ迷い始める・・


家とは?家族とは・・・何なのか??


人は何を守るために家族を維持をしょうと我慢を繰り返すのだろう??


ならば、結婚などしない方が良いではないか??


そう言う人間が居ると思う・・


結婚をする意味とは永遠の謎である。


ただ、一言、言わせてもらえれば・・


人間とは家族を作ると言う本能の生き物なのかもしれない。


孤独と言う何とも恐ろしい言葉に怯えながら・・


それから逃れる為に家族と言う絶対的な世界を男と女が作ろうと努力する。


そしてその世界を作った数年後に気が付くのだ・・


私はなぜに・・こいつと一緒に暮らして居ると・・・



部屋に一枚の写真が飾られている・・・


葵の入園式の時の写真だ。


「明和幼稚園入園式」と書かれた手造りの看板の前でカッパとタヌキが笑顔で笑っている。


その横にはお互いの子供が手を繋いで笑っている・・


今、考えると今日子にとってこの時が一番、幸せだったのかもしれない・・


幼稚園が始まった。


今までとは考えられない程の毎朝の戦争が始まる。


1人の子供を幼稚園に送り出す事がこんなにハードだったとは今日子は夢にも思っていなかった。


新しい友達が出来た。


今日子の住むアパートからほんの数分の一軒家に住む女性だ。


彼女には葵と同じ年の女の子が1人居た。


今日子は彼女を「オカメ」とあだ名を付けていた。


毎朝、今日子のアパートの駐車場が2人の待ち合わせ場所になっていた。


2人で時間を決めて幼稚園に一緒に通った。


オカメは自分の両親と同居をしている。旦那は婿養子では無いがオカメの実家に住んでいる感じだ。


年は26歳で今日子よりも大分、年下であったが話が合わないと言うことは無く・・


新たに出来た友達に今日子は心を弾ませていた。


畑にも毎週のように出かけていた。


そんなある日の日曜日にある事件が起こる。


その日は収穫した量が多かった。いつもなら自転車で貰った野菜を持って帰って来るのだが・・


あまりにも多かったので今日子は日曜で休んでいる誠に電話かける。


しかし、誠は遊びに出かけていて携帯の電源は切っていた。


「ねぇ~タヌキ!悪いけど家まで車で運んでもらえないかしら?」


車の運転が出来ない今日子にとってそれはある意味、何時のも光景であった。


地元に居た時は、周りの友人達はあたり前のように今日子のそんな願いに快く答えてくれた。


「えっ??」


一瞬、タヌキが不機嫌な顔をした。


何てずうずうしい事を言うの?って感じで今日子を一瞬見つめた・・


それでもタヌキは笑顔で「良いわよ!」と運ぶ事を受けてくれた。


今日子は助かったと自転車でタヌキの車を追った。


その時、タヌキの心の中に少しだけ今日子に対してのいら立ちが沸いた・・


ウザイ女・・・そのいら立ちを表現するとそんな言葉になる。


デリカシーの無い女・・・そんな感じか??


少しづつ、消えないはずの友達との距離が開いた瞬間であった。


今日子は何も解っていなかった・・・


人間の感情と言う物の本当の恐ろしさを・・


そう・・彼女は本当にわかって居なかったのである。


行きはオカメと一緒に幼稚園に向かい・・・


帰りはタヌキとオカメと一緒に幼稚園を後にする・・


見た目にはとても仲の良いママ友の3人であった。


でも、そう思っていたのは今日子だけで・・・


それから数ヵ月後に1人・・また1人と・・彼女達は消えて行く・・・


そんな事を夢にも思わずに久々の幸せに1人笑顔の今日子が居た。


「今度は・・3人で遊びに行きましょうね!タヌキの車で・・・

私が皆のお弁当を作ってくるから・・」


そんな戯言を呟きながら・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・


人はなぜに平気で他人を傷つける事が出来るのだろう?


それも20年も30年も生きている完成された大人のくせに・・


まして人の親としてこれから幼い我が子の人生を導くと言う重大な指名を得ている人間が・・


他人を傷つける人間は何を求めて他人をいじめるのか?


それは永遠の謎である。


それは無意識な場合もあるし、それは自己の優越感?ストレスの発散なのか?


誰かを苦しめる事により優越感を得て自己のストレス・・いや卑しい心を補っているのか?


何にせよ・・そんな人間は寂しい心の持ち主である。


ならば、いじめられる人間は何を守るために我慢をするのか??


それも永遠の謎である。


集団と言う群れの中での自分の場所なのか??


それとも孤独になる事が怖いのか???


どちらにしても悪はいじめる人間だ。


そしてそれをどうにも出来ない人間もある意味・・悪なのかもしれない・・


大人になれない大人が子供を育てている・・


くだらない正論・・


大人にもなれて居ない人間が他人を攻撃しながら自分は大人だと自分に言い聞かせている・・


実にくだらない・・なんとも情けない世界である・・



誠には自分の娘の葵を自分の娘と感じる感情が欠落していた。


あまり関心が無いと言う表現が正しいのかもしれない。


妻の今日子に対しても同じであった。


それは結婚してからの今日子の行動にも問題があったに違いない。


結婚してしばらくは何時も一緒に居る二人であった。


2人でそれなりに将来の事等も話し合っていた。


男にとって夫婦生活を送る一番大切な物は何か??


それは自分が家族を守らなければいけないと言う自覚である。


結婚をする時に既に今日子のお腹の中には葵が居た。


だから、2人には夫婦2人だけの新婚生活と言う物が無い。


お腹の子供が成長する。それまでは誠の中に主としての自覚はあった。


しかし、出産のために実家に戻った今日子は変わってしまった。


本来は母親になって戻ってくる所を・・・


今日子は娘になって戻って来てしまったのだ・・・


箱入り娘の母親べったりの娘に・・・


葵が生まれて父親として一番、大事な時期であった。


父親としての自覚が生まれる・・一番、大事な時期であった。


葵が生まれて3年間・・


今日子は1年のうち殆どを実家に帰省をしていた。


そして残りの半分は誠の家に今日子の両親が来ていた。


ある日、誠は今日子に意見をした。


理由さえ思い出せないような些細な事であったと思う。


「ママに聞いてみる・・」


その時、誠は思った・・


あ~この女には自分は必要ではないのだ・・と


自分は跡取りを作る道具であり、生活の為の金を稼いでくる手段であれば良いのだと・・


全ての家族の取り決めは今日子の母親の意見で左右される・・・


それが坂本家の実情であった。


そして何度も離婚と言う言葉が口に出され始めた頃・・・


誠は家族の主である事を放棄した・・


そして、娘の父親である事もある意味、放棄してしまったのだ。


勝手にしろ!その代り俺に迷惑だけはかけるなよ!


何度も・・何度も・・誠はそう呟いた・・


そんな家族が常識のある子供なんか育てられる訳が無い・・


ある意味、葵も被害者なのかもしれない・・


大人のくだらない理屈の・・被害者なのかもしれない・・


だから誠に父性本能と言う物は無い。


ただ、自分の子供は可愛い・・


この子を手放したくない・・・


それが、誠が離婚を決意できない大きな理由でもあったのは間違いないのかもしれない。


ならば、俺はロボットになれば良い・・


感情を持たないロボットに・・


そう思ったのは今から2年前・・


2度目の離婚話が出た時であった。


今は表面的には今日子の両親たちと上手くやっている・・・


しかし、その時、彼らから言われた一言、一言を誠は絶対に忘れては居ない・・


「欠陥商品」


誠は旦那として「欠陥商品」であった・・・


ならば・・欠陥商品は欠陥商品なりに生きれば良いのだ・・


家族なんかに無関心で・・


ただ、決められた日に生活の為のお金を持って来れば厄介な事には巻き込まれないのだから・・


葵の幼稚園の入園日の日・・


誠は事前に入園式に出席をするつもりで有給を取っていた。


しかし、部下が大きなミスをして会社に行かなくて行けなくなった・・・


「悪い!会社に出る事になってしまった・・・」


今日子は不機嫌に言った・・・


「人生で1度しかない事なのに・・

あなたは葵が可愛くないのね・・」と


誠は無表情で無言で家を出た・・・


よく、私の気持ちなんて全然、旦那は理解をしてくれない!なんて女性が言っている・・


でも、そんなあなたも・・旦那の立場や想いを理解してあげようとしていないのでは??


誠は何時もそんな話を聞くたびに思うのだ・・


女には女の事情があるように・・


男には男の事情があるのだから・・


それをお互いが補うのが夫婦なのでは無いのだろうか???


ふと、会社に向かう道を歩きながら・・誠はそう考える・・


俺だって・・行きたかった・・でも、仕事も大事なんだよ!と呟きながら・・


人生は辛すぎて私の手には負えない

誠は念押すように何度も今日子に言った。


「その女とはあまり関わりになるな!」と


彼女は友達ではない。お前はお客・・いや良いカモなのだからと・・・


今日子はその会の会員も辞めてしまった。


多分、それなりの会からペナルティーがカマキリにあったに違いない。


次の週から畑に行くとカマキリの態度は急変した。


今日子はそう言う人間の心の変化にうとい女であった。


そして急によそよそしくなったカマキリの態度に落ち込んだ・・


丁度、その日に1人の女性が畑に現れる。


年は今日子より3つ程年上の少し小太りの女である。


葵と同じ年の男の子が1人・・・


結婚して10年ほど子供に恵まれず不妊治療の末にやっと授かった子供だそうだ。


旦那は誠よりも5歳年上の40代らしい。


子供が生まれる前は看護婦をしており旦那は小さな町の病院で医者をしている。


カマキリに疎遠にされた今日子は彼女に気軽に話しかけた。


今日子は彼女を「たぬき」とあだ名をつけた。


たぬきはとても感じが良い女性であった。


数回、今日子の家に夕食を食べに来たり、車の無い今日子を色々な所に連れて行ってくれた。


あ~私にもやっと友達が出来た。


その時の今日子はきっとそう思っていたに違いない。


ある意味、たぬきは大人だったのかも知れない。


ある意味であるが・・・


タヌキとであって数ヵ月後、少しだけ今日子とタヌキとの間に距離が出来始める。


また、カマキリの登場である。


「タヌキ!おはよう・・」


畑に来ると気軽にカマキリがタヌキに親しみを込めて話しかける・・・


「おはよう!」


それにつられて今日子もカマキリに挨拶をする・・・


一瞬、カマキリは今日子を不機嫌そうに睨みつけ何も言わずに他の友達の所へ行ってしまう。


少しだけ旦那の誠を怨んだりした。


誠が賛成をしてくれていたら・・・そう何度も考える・・


しかし、その時の誠の判断は正しかった。


なぜなら、利害関係だけで繋がっている友達など所詮はそれだけなのだ・・


下手をしたら・・大切な地元の友達までも今日子は無くしていたかもしれないからだ・・


「ごめん!少し、カマキリに話があるから・・」


タヌキはそう今日子に告げるとカマキリ達のグループの輪に消えて行く・・


今日子を何とも言えない孤独感が襲った。


ただ、全ての畑に来るママ達がカマキリの仲間ではなく今日子はそれなり農作業を楽しんでいた。


ただ、タヌキとの関係は別に変わらなかった。


お互いの子供も凄く仲良しで一緒に遊びに行ったり月に一度の夕食会も今日子の家ばかりであったが続けられた。


タヌキの旦那もとても楽しい人間で旦那の誠も「あんな人は大事にした方が良いよ!」なんて言うくらいだ・・


ただ、その時の誠夫婦は、タヌキの本性に気が付いていなかった。


彼女は極度の潔癖症であったのだ。


娘の葵は自由奔放な性格であった。


今日子や今日子の母親の教育方針とでも言うのか・・


「怒らないし付け」がもたらした結果であった。


旦那の誠はその教育方針に何度も意見をした。


悪い事は叱って解らせないといけない・・


それは誠の子育ての方針であった。


何度もその事で今日子と議論をしたが所詮は誠は昼間は仕事に行ってしまう・・


「育ててるのは私とママなのよ!」


そんな言葉を言われた瞬間に誠は子育てをある意味、放棄してしまったのかもしれない・・


自分の子供なのに・・・


育てているのは妻と妻の母親だと言い切られた事に対して・・


ならば、将来、お前が勝手に困れば良い!俺には関係が無い!と・・


案の定・・それは現実の物となり、これから先、今日子を悩ませる事になる・・


子供とは夫婦の責任で育てるものである。


祖父や祖母には所詮は責任は無いのだ・・・


責任は父親と母親にある。


それを上手く今日子に説明できなかった誠にも少しは責任はあるのかもしれない。


そんな我が侭な性格だからタヌキに会う度に葵は汚れた手でも平気でタヌキの服を触った・・・


その度にタヌキは引きつった笑顔で今日子を見つめる・・


感の良い人間ならそこで気が付くのだろうが・・今日子は気が付かなかった・・


そんな頃から少しずつタヌキの不満はストレスに変わって行ったのかもしれない・・


それは葵が幼稚園に入園する一ヶ月ほど、前の出来事であった。


人生は辛すぎて私の手には負えない。