親友「タヌキ」 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

誠は念押すように何度も今日子に言った。


「その女とはあまり関わりになるな!」と


彼女は友達ではない。お前はお客・・いや良いカモなのだからと・・・


今日子はその会の会員も辞めてしまった。


多分、それなりの会からペナルティーがカマキリにあったに違いない。


次の週から畑に行くとカマキリの態度は急変した。


今日子はそう言う人間の心の変化にうとい女であった。


そして急によそよそしくなったカマキリの態度に落ち込んだ・・


丁度、その日に1人の女性が畑に現れる。


年は今日子より3つ程年上の少し小太りの女である。


葵と同じ年の男の子が1人・・・


結婚して10年ほど子供に恵まれず不妊治療の末にやっと授かった子供だそうだ。


旦那は誠よりも5歳年上の40代らしい。


子供が生まれる前は看護婦をしており旦那は小さな町の病院で医者をしている。


カマキリに疎遠にされた今日子は彼女に気軽に話しかけた。


今日子は彼女を「たぬき」とあだ名をつけた。


たぬきはとても感じが良い女性であった。


数回、今日子の家に夕食を食べに来たり、車の無い今日子を色々な所に連れて行ってくれた。


あ~私にもやっと友達が出来た。


その時の今日子はきっとそう思っていたに違いない。


ある意味、たぬきは大人だったのかも知れない。


ある意味であるが・・・


タヌキとであって数ヵ月後、少しだけ今日子とタヌキとの間に距離が出来始める。


また、カマキリの登場である。


「タヌキ!おはよう・・」


畑に来ると気軽にカマキリがタヌキに親しみを込めて話しかける・・・


「おはよう!」


それにつられて今日子もカマキリに挨拶をする・・・


一瞬、カマキリは今日子を不機嫌そうに睨みつけ何も言わずに他の友達の所へ行ってしまう。


少しだけ旦那の誠を怨んだりした。


誠が賛成をしてくれていたら・・・そう何度も考える・・


しかし、その時の誠の判断は正しかった。


なぜなら、利害関係だけで繋がっている友達など所詮はそれだけなのだ・・


下手をしたら・・大切な地元の友達までも今日子は無くしていたかもしれないからだ・・


「ごめん!少し、カマキリに話があるから・・」


タヌキはそう今日子に告げるとカマキリ達のグループの輪に消えて行く・・


今日子を何とも言えない孤独感が襲った。


ただ、全ての畑に来るママ達がカマキリの仲間ではなく今日子はそれなり農作業を楽しんでいた。


ただ、タヌキとの関係は別に変わらなかった。


お互いの子供も凄く仲良しで一緒に遊びに行ったり月に一度の夕食会も今日子の家ばかりであったが続けられた。


タヌキの旦那もとても楽しい人間で旦那の誠も「あんな人は大事にした方が良いよ!」なんて言うくらいだ・・


ただ、その時の誠夫婦は、タヌキの本性に気が付いていなかった。


彼女は極度の潔癖症であったのだ。


娘の葵は自由奔放な性格であった。


今日子や今日子の母親の教育方針とでも言うのか・・


「怒らないし付け」がもたらした結果であった。


旦那の誠はその教育方針に何度も意見をした。


悪い事は叱って解らせないといけない・・


それは誠の子育ての方針であった。


何度もその事で今日子と議論をしたが所詮は誠は昼間は仕事に行ってしまう・・


「育ててるのは私とママなのよ!」


そんな言葉を言われた瞬間に誠は子育てをある意味、放棄してしまったのかもしれない・・


自分の子供なのに・・・


育てているのは妻と妻の母親だと言い切られた事に対して・・


ならば、将来、お前が勝手に困れば良い!俺には関係が無い!と・・


案の定・・それは現実の物となり、これから先、今日子を悩ませる事になる・・


子供とは夫婦の責任で育てるものである。


祖父や祖母には所詮は責任は無いのだ・・・


責任は父親と母親にある。


それを上手く今日子に説明できなかった誠にも少しは責任はあるのかもしれない。


そんな我が侭な性格だからタヌキに会う度に葵は汚れた手でも平気でタヌキの服を触った・・・


その度にタヌキは引きつった笑顔で今日子を見つめる・・


感の良い人間ならそこで気が付くのだろうが・・今日子は気が付かなかった・・


そんな頃から少しずつタヌキの不満はストレスに変わって行ったのかもしれない・・


それは葵が幼稚園に入園する一ヶ月ほど、前の出来事であった。


人生は辛すぎて私の手には負えない。