僕が死ぬ日・・生まれる日 -40ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

それにしても解らないのは木村と加藤との接点であった。

木村と加藤がどのようにして出会ったのかが私には理解できなかった。

そして二人が企む目論見とは??

きっと、加藤の目論見と木村の目論見が何処かで結びついたに違いない。

しかし、なぜに私が??

きっと、どちらかの目論見が私に関係してる事は確かであった。

私は悩んでいた。

どうする?今、ここで怒鳴り声を上げながら二人の前に出るか?

それとも、もう少し事実関係を探るか?どうする??

知らず知らずにグラスを持つ手が怒りで震えているのが自分でも解る。

ふと、私の掌に温もりを感じる・・

そこには今日子の柔らかい真っ白な手があった。

「お前・・俺を騙すために俺に抱かれたのか?」

私は口にしてはいけないと何度も思っていた言葉を言ってしまった。

そんな私の言葉に今日子は少しだけ悲しそうな顔をした。

「信じてもらえないかも知れないけど、最初はあなたを騙すつもりだったの!

木村さんにあなたをそそのかせって言われたから・・

でもね!あなたに接する度にその心が揺らいだ・・

あなたの優しさに触れるたびに・・心が揺らいだ!

あなたに抱かれたのはあなたを騙すためでは無いわ!

こう見えても夜の女よ!あなたなんか体を使わなくっても簡単に騙せる!

でもね!私・・あなたをいつの間にか愛してしまった。

あなたに抱かれて思ったの・・

今まで色々な男に抱かれた・・

でも、あんな安らぎを感じた事は今まで無かった・・」

男も女も基本的に嘘つきである。

そんな事は百も承知だ!今日子の言葉は本当は嘘なのかもしれない・・

でも、私は信じる事にした。

なんとなく、もしも今日子が私を騙しているのなら・・

最後まで騙され続けるのも悪くは無いと思ったからだ。

私はきっと、大馬鹿なのかもしれない。

私は今日子の手を強く握り直し呟いた。

「ありがとう!その言葉だけで十分だ!」と

今日子はそんな私を見つめながら恥ずかしそうに微笑んだ。

「お前・・俺にこんな事を知らせてしまって大丈夫なのか?」

そう私が今日子に尋ねると今日子は笑顔で言った。

「愛する男の為なら女は何でも出来るものなのよ!

自分を守るために一生後悔をするよりかはマシだわ!」と

そんな話をしてると木村が席を立つ。

「それでは加藤さん!例の話、本当にお父様にお願いしますよ!

頼りにしてるんですから!坂本は地獄の底まで落としてやります!

その後はあなたが煮るなり焼くなりお好きにしてください!」

そこには私が知っている木村の姿は無かった。

加藤はそんな木村の言葉に小さく頷いた。

木村が席を離れると栞が慌てて席を立つ。

会計に向かう木村に甘えるしぐさを見せた。

木村は数回、栞のお尻を助平そうになぞり耳打ちした。

「今夜、何時ものホテルで可愛がってやるからな!」と

そんな木村の言葉に栞は少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。

木村が会計を済ませ店を出ると加藤は直ぐに席を立った。

栞は慌てて加藤の元に戻る。

「加藤さん!また来てくださね!」

そう栞が加藤に微笑むと加藤は少し不機嫌そうに言った。

「使い古しはいらね~~んだよ!気安く俺に話しかけんじゃね~よ!」と

栞の顔が一瞬、引きつる・・しかし、さすがはプロである。

そんなの関係が無いとばかりに・・甘えた声で言った。

「今度は一人で来てね!サービスするからね!」と

加藤はまんざらでもない様にニャッと笑うと数回、栞の尻をなでて店を出た。

私は栞に気づかれないように店の外に出でた。

「ふざけやがって!」

その時、初めて木村に対する怒りが口に出た私は携帯電話を取り出し木村に電話をかける。

「はい!どうした誠??」

「あっ・・なんか辛くてさ!また今度、飲まないか?」

「そうか!解るよ!その気持ち・・俺でよければ何時もで付き合うぜ!遠慮するなよ!

俺達は親友だろ!こんな時のために俺が居るんだからな!

また、電話しろよ!待ってるから・・」

タクシー乗り場に携帯電話を耳に当てながら笑っている木村が見える

きっと、この馬鹿が!何時まで親友ごっこだよ!なんて思ってるに違いない!

私はそっと携帯電話をポケットにしまった。

このままでは終わらせない!絶対に・・この代償は払ってもらうからな!木村・・

私はそう心の中で何度も呟き歩き出す。

そしてもう一度、携帯を取り出すと電話をした。奴の天敵のもとに・・笑いながら

「今からなんて無理だよ!今日は副店長が休みなんだ!

店を閉めて行かないといけないから・・」

「あら、そんな悠長な事を言っていて良いのかしら?

あなたが、今、一番、知りたいと思っている事に関係してるだけど」

今日子は少しだけ私を脅すような口調でそう呟いた。

「えっ・・わ・・解った!何とかする!」

私はそう今日子に告げ電話を切ると主任の佐伯を呼んだ。

「悪いが急用でね!店の戸締りをお願いできるかな?」

そんな私の言葉に佐伯は素直に応じた。

私は急いで私服に着替えると店を出て蒲田に向かった。

「駅に着いたら連絡をしてね!」

途中で今日子からそうメールが入る。

私が蒲田の駅に着いたのは8時を少しだけ過ぎた頃であった。

「坂本だけど!今、駅に着いた!」

そう今日子にメールをすると直ぐに返事が来た。

「今、迎えに行くから待っててね!ダ~リン!」

そんな軽いメールになんとなく気が抜ける。

しばらくすると今日子が現れる。久々にあの甘い香水の香りに包まれた。

「良い!今から見る事、聞く事が現実だからね!逃げないでね!

裏口から入るから!そうしたら私の指示に従ってね!」

「ああ・・わかった!でも、何があると言うんだ?」

「えっ!それは見てからのお楽しみ・・

いや・・見てからの苦しみかな・・」

私は今日子に連れらて店の裏口にまわり息を潜めながら店に入った。

「いや~こんなに上手く行くとは思わなかったよ!

これも皆、あなたのおかげだ!恩に着ますよ!」

どこか聞き覚えのある声・・

誰だ??この声は・・何処で聞いた・・

「別にあいつを騙すなんて簡単ですよ!あいつは基本的に馬鹿ですから!

昔から・・それにあいつは私を信用しきってますからね

この年になってまだ、「親友」なんて青臭い事を言ってる馬鹿だから!

この前なんかも「お前が居てくれて助かった!」なんて泣きながら言って!

その俺に騙されている事も知らないでね!

それより加藤さん、例の話し、お父様にお願いしますよ!

頼りにしてるんですからね!20年来の親友をこれでも裏切ったのですから!」

そう呟いた男の声にも聞き覚えがあった。

私は今日子に案内をされて人目につかない席に座った。

薄暗い店内で聞き覚えのある二人の声が妙に私の耳に入ってくる。

その二人の正体を本当は私は知っていた。

ただ、それを認める事が怖かっただけなのかもしれない。

店の天井で何とも申し訳なさげに回転するミラーボールの光が二人を照らす。

暗闇が一瞬、薄いピンク色の光で明るくなる・・

そして暗闇に包まれ隠されていた二人の男の顔を照らした・・

「木村・・何でお前が・・」

私は落胆したように木村を見つめた。

もう一人の相手を見て私は驚きの声を上げそうになる!

「な・・何でお前がここに居る!」

そう木村と楽しげに話をしていた男は・・

副店長の加藤であった。

「どうそ・・」

今日子がボトルとグラスを持って私の席に現れる。

「お前・・知っていたのか?」

私は静かに今日子の目を睨みながら呟いた。

今日子は一瞬、目をそらし辛そうに言った。

「仕方が無かったのよ!」と

「何時からだ!何時から・・」

「あの日、糀谷の居酒屋で偶然に会った日からか・・」

「俺を誘惑しろとでも命令されたのか?

幾らもらった?見返りは何だ??」

愛なんて信じては居なかった。

女は愛なんか無くったって男に抱かれる事が出来る・・

男も愛なんか無くったって女を抱ける・・

それが人間だと言う事も十分に知っているつもりである。

だけど・・少しだけそんな事を忘れていた自分が居た。

もしかしたら・・俺は今日子を本当に愛してしたのかもしれない。

そんな自分が情けなかった。

「仕方が無かったの!私の売り上げの殆どが木村さんの売り上げだから!

あの人に嫌われたら私はこの店で生きていけないの!

私達、親子は飢え死にをするしか無いのだから・・」

き・・木村・・お前・・

私は悲しそうな目をする今日子をこれ以上,責める気持ちは無かった。

「悪かったな!辛い想いをさせて・・」そう呟き今日子を見つめた・・

「あんた!何で晃の事を知っているの?」

そう今日子から電話が来たのは私が聖夜と会って3日後の事であった。

「晃?そんな男と会った覚えは無いけど・・」

「この前!歌舞伎町の「ゼロ」に会いに行ったでしょ!」

「えっ??聖夜って君の別れた旦那だったの?」

私は白々しくそう驚いたように今日子に言う。

「そうよ!あいつ昨日の夜に私の家に電話をかけて来たのよ!

昼間の仕事と夜の仕事とどっちの俺が父親として相応しいと思う?

なんて言いながら・・

聞けば昼間の仕事がしたければ何時でも電話をしろ!なんて

名刺を置いて行ったオヤジが来たそうじゃない!

あんたでしょ!名刺に坂本誠って書いてあったそうよ!

何で知ってるのよ!私の事を調べたの?」

今日子の口調が少しだけ激しくなる。

「いいや・・違うよ!聖夜が君の別れた旦那だなんて知らなかった。

個人的な用事でね!彼を訪ねたんだ。

その時の話の中で嫁さんと子供を何時か迎えに行くと言うから・・

飲み屋を手土産になんて言ってるからさ!

昼間の仕事がしたいのなら連絡しなとお節介おやじになった訳さ!」

「ふぅ~~~ん!そうなんだ!」

今日子はまだ疑わしそうにそう呟いた。

「どうでも良いけど、私はあいつとよりを戻すつもりは無いからね!

余計なお節介は止めてよね!

それに私は今、あなたが好きなのよ!あなたと付き合いたいと思ってるのよ!

だから・・抱かれたのよ!私・・そんな好きでも無い男に簡単に抱かれるような

安い女じゃ無いんだからね!」

男と女の関係は何時も騙し合いだ。

その嘘に騙されるのもよし・・

嘘だと去るのもよし・・

それは自分自身が決める事である。

「実は嫁が家を出て行ったんだ!

俺、とんでもない勘違いをしてあいつをもの凄く傷つけてしまってさ!

実はあの聖夜と嫁が浮気をしてるって勘違いしていてさ!」

一瞬、今日子が深いため息をついたのが感じられる。

お前も一枚、この件に噛んでいるんじゃないのか?黒幕の指図で・・

私はそう喉まで出た言葉を必死に飲み込んだ。

「そうなの・・それはお気の毒に・・

なら、夕ご飯とか洗濯とか大変でしょ??

私、行ってあげようか?」

「えっ?それは遠慮しておくよ!気持ちはありがたいけど・・

実は誰かにはめられたみたいなんだ!理由は解らないけど!

まんまとね!正直、俺が馬鹿だったのは確かだけど・・

少しね!このままでは済まさないぞ!なんて思ってたりして!

君に迷惑をかけたくないんだ!解るだろ?」

そんな意味深な私の言葉の意味を悟ったのか今日子はそれ以上何も言わなかった。

「そう!何か困った事があったら電話してね!」

そう言いながら今日子は電話を切る。

疑いたくないが、今、一番、疑わしいのは木村である。

私に嘘の報告をして来た私の親友・・

あいつと知り合って何年になるのだろう?

もう二十年近くの付き合いになる。

私は燦然、あいつに世話になって来た。

何時もおごって貰っていた。遊びにも連れて行ってもらった!

人付き合いがあまり得意で無い私を孤独な世界から救ってくれた・・

何時も私が励ましながら飲んでくれたのは木村だった。

そんな彼が私を騙す理由があるのだろうか?

私が持っていない沢山の物を持っている彼が何のために私を騙すと言うのか?

信じたくなかった・・

いや!まだ、その時点で私は親友を信じていたのかもしれない。

友美が家を出て2週間が過ぎたある日、私の家に一枚の封筒が届いた。

中身は確認しなくても宛名を見て想像が出来た。

友美からの手紙・・

そして中身は薄っぺらな紙に署名と印鑑が押された紙切れが一枚・・

「離婚」と言う言葉にまったく現実身を感じない。

他人事のように私はその送られて来た「離婚届」を見つめていた。

それでも私は友美に連絡をする事はしなかった。

全てを明らかにしなければ何と謝罪してよいか解らなかったし・・

私が妻以外の女を抱いた事実は永遠に消すことは出来ないのだから。

そんなある日、私が仕事をしてると携帯電話が鳴る。

「今から蒲田の店に来れない?面白いものを見せてあげるから・・」

それは今日子からの電話であった。

そんな1本の電話から私の新たな苦しみが始まった。