悲しい現実 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「今からなんて無理だよ!今日は副店長が休みなんだ!

店を閉めて行かないといけないから・・」

「あら、そんな悠長な事を言っていて良いのかしら?

あなたが、今、一番、知りたいと思っている事に関係してるだけど」

今日子は少しだけ私を脅すような口調でそう呟いた。

「えっ・・わ・・解った!何とかする!」

私はそう今日子に告げ電話を切ると主任の佐伯を呼んだ。

「悪いが急用でね!店の戸締りをお願いできるかな?」

そんな私の言葉に佐伯は素直に応じた。

私は急いで私服に着替えると店を出て蒲田に向かった。

「駅に着いたら連絡をしてね!」

途中で今日子からそうメールが入る。

私が蒲田の駅に着いたのは8時を少しだけ過ぎた頃であった。

「坂本だけど!今、駅に着いた!」

そう今日子にメールをすると直ぐに返事が来た。

「今、迎えに行くから待っててね!ダ~リン!」

そんな軽いメールになんとなく気が抜ける。

しばらくすると今日子が現れる。久々にあの甘い香水の香りに包まれた。

「良い!今から見る事、聞く事が現実だからね!逃げないでね!

裏口から入るから!そうしたら私の指示に従ってね!」

「ああ・・わかった!でも、何があると言うんだ?」

「えっ!それは見てからのお楽しみ・・

いや・・見てからの苦しみかな・・」

私は今日子に連れらて店の裏口にまわり息を潜めながら店に入った。

「いや~こんなに上手く行くとは思わなかったよ!

これも皆、あなたのおかげだ!恩に着ますよ!」

どこか聞き覚えのある声・・

誰だ??この声は・・何処で聞いた・・

「別にあいつを騙すなんて簡単ですよ!あいつは基本的に馬鹿ですから!

昔から・・それにあいつは私を信用しきってますからね

この年になってまだ、「親友」なんて青臭い事を言ってる馬鹿だから!

この前なんかも「お前が居てくれて助かった!」なんて泣きながら言って!

その俺に騙されている事も知らないでね!

それより加藤さん、例の話し、お父様にお願いしますよ!

頼りにしてるんですからね!20年来の親友をこれでも裏切ったのですから!」

そう呟いた男の声にも聞き覚えがあった。

私は今日子に案内をされて人目につかない席に座った。

薄暗い店内で聞き覚えのある二人の声が妙に私の耳に入ってくる。

その二人の正体を本当は私は知っていた。

ただ、それを認める事が怖かっただけなのかもしれない。

店の天井で何とも申し訳なさげに回転するミラーボールの光が二人を照らす。

暗闇が一瞬、薄いピンク色の光で明るくなる・・

そして暗闇に包まれ隠されていた二人の男の顔を照らした・・

「木村・・何でお前が・・」

私は落胆したように木村を見つめた。

もう一人の相手を見て私は驚きの声を上げそうになる!

「な・・何でお前がここに居る!」

そう木村と楽しげに話をしていた男は・・

副店長の加藤であった。

「どうそ・・」

今日子がボトルとグラスを持って私の席に現れる。

「お前・・知っていたのか?」

私は静かに今日子の目を睨みながら呟いた。

今日子は一瞬、目をそらし辛そうに言った。

「仕方が無かったのよ!」と

「何時からだ!何時から・・」

「あの日、糀谷の居酒屋で偶然に会った日からか・・」

「俺を誘惑しろとでも命令されたのか?

幾らもらった?見返りは何だ??」

愛なんて信じては居なかった。

女は愛なんか無くったって男に抱かれる事が出来る・・

男も愛なんか無くったって女を抱ける・・

それが人間だと言う事も十分に知っているつもりである。

だけど・・少しだけそんな事を忘れていた自分が居た。

もしかしたら・・俺は今日子を本当に愛してしたのかもしれない。

そんな自分が情けなかった。

「仕方が無かったの!私の売り上げの殆どが木村さんの売り上げだから!

あの人に嫌われたら私はこの店で生きていけないの!

私達、親子は飢え死にをするしか無いのだから・・」

き・・木村・・お前・・

私は悲しそうな目をする今日子をこれ以上,責める気持ちは無かった。

「悪かったな!辛い想いをさせて・・」そう呟き今日子を見つめた・・