僕が死ぬ日・・生まれる日 -25ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

山梨の老舗の小さなデパートの特設会場がまいの晴れ舞台であった。

手作りの看板に乙女委員会!TV委員会来る!と書かれていた。

舞台の前には椅子など無く観客達は全て立ち見である。

司会者はプロディユーサーの加藤でなんとも頼りない。

しかし、何時の間に増えたのか会場はまい達のファンで異様な盛り上がりを見せている。

そんな光景を安藤君は冷ややかな目で見つめていた。

「先生!これが夢の舞台なのでしょうか?あいつが夢見ている舞台なのでしょうか?」

そんな彼の言葉に私は言った。

「夢を掴むと言う事はそんなに簡単な事では無いんだよ!誰でも最初はこんなものだ!

どんな大スターだって下積み時代があるものさ!僕にだってあったんだよ!誰にも見向きもされない小説をただ書き続けていた時代がね!最初からレールが引かれている人間なんてめったに居ないよ!皆、こんな屈辱をばねに頑張るんだと思う」と

華やかな音楽が流れ司会者が二人を紹介した!大歓声?のなかTV委員会の二人が現れる

「まい!まい!!」きらびやかな団扇を持ったファン達がまいに声援を送る!

まいは嬉しそうに微笑んだ。

「それでは!聞いてください!私達のデビュー曲!「ロックが静かに流れる夜・・」

そうまいが言うと曲のイントロが流れ始める。

何度聞いても恥ずかしい・・やはり私には作詞なんか無理なようだ。

しかし、ファン達の評価は上々のようである。

「さすが!ベッキーだな!俺、実はあいつの小説のファンなんだ!そしてあいつに詩を書いてもらえるまいちゃんも凄いよ!認められている証拠だ!」

ベッキーという名のネームバリュー!歌詞とか曲とかあまり関係が無い!ベッキーが作った事に意味がある。そんな物なのか?いや・・きっと、世間とはそんな物だと思う。

大盛り上がりの会場!買い物客達が何事かと驚きの表情を浮かべていた。

そして私の曲が終わると途端に会場が静寂に包まれる。

バラード聞く時の常識は持っているようだ。静かな優しいピアノのメロディーが流れ始める。

「この曲はなんだか歌っていて悲しくなるの!何でかわからなけど!でも、きっと皆にもそんな大切な人が居ると思う!心で相手を抱きしめてあげるような相手が!そしてそんな人の自分が居場所で居てあげたいと心から願えるような相手が。

それでは聞いてください!今夜も何処かの星の下で・・」

静かなピアノの音が流れ出し観客は静かに目をつぶる。そして何時の間にか観客達の瞳は切ない涙で濡れ始めとどかぬ思いに涙する。

この曲はきっとそんな届かぬ思いへの応援歌なのかも知れない。

曲が終わってもしばらく全ての空間が静寂に包まれた。

そして一人の拍手が何時の間にか大歓声に変わっていた。

そんな中、一人、こんな世界に不似合いに微笑む男が居た。

プロデューサーの加藤である。

「これ・・いけるんじゃない!いや!絶対に行ける!」

加藤はそう呟くとTV委員会の二人の少女を見つめた。

新曲発表会は大成功で幕を閉じた。安藤君の目から涙が尽きる事は無かった。

何時でも帰ってきなよ!僕は何時までも君の居場所だから・・

そんな言葉が素直に言える彼が少しだけ羨ましかった。そして、そんな言葉を素直に言える相手が居る彼に嫉妬した。

私はきっと、心の小さい男なのだと思う。きっと・・

「ベッキーさん!少し良いですか?なんか、印税とか権利とか難しい話をあの加藤とか言う人に言われてまして!印鑑とサインをしろと言われているのですが、僕にはチンプンカンプンで!契約の時に同席してもらって良いですか?」

ライブの後、事務所に呼ばれ細かい契約を結ぶ事になっているらしい。

その場に私が一緒に行くと加藤は少しだけ顔をしかめた。

契約書を読みもしないで彼はサインをしようとするので私は焦りながらその書類を彼から取り上げる。

「加藤さん!これ!あまりにも悪戯じゃないですか?幾ら素人だって・・」

契約書はあまりにも一方的な内容で作詞者の安藤君に殆ど権利が無い内容であった。

加藤は焦りながら呟く。

「おかしいな~直ぐに作りなさせますから!」と

私は自分の予備の契約書を取り出すと「これで良いですよね!これに彼にサインをしてもらえば!」と言った。

加藤はそんな私の言葉に苦い顔をした。きっと余計な事を言いやがって!みたいな感じだろう。

契約が終わりTV委員会の二人が部屋に現れる。

二人は私達に深々と頭を下げて言った。

「これからも応援してください!よろしくお願いします!」と

まい&ハル!二人合わせて「TV委員会」

まいのパートナーのハルと名乗る女性は何度も見ているが話をしたのはその時が初めてような気がする。まいよりも少しだけ年上のようである。ハルは部屋から出ようとする私を呼び止め笑顔で言った。

「先生!よろしくお願いします!可愛がってやってください!」と

なんとなくまいと違いきな臭い匂いのする女であった。

その日の夜に私は安藤君と二人で居酒屋に夕食を食べに行った。

「ベッキーさん!まいは売れるんでしょうか?夢を掴めるのかな?あいつ・・」

そう彼に言われ私は笑顔で彼に言った。「それは神のみぞ知るってやつだよ!」と

過ぎ去った時間は元には戻らない。

君のあの笑顔も・・

君のあの悲しげな顔も・・

君は今でも覚えているかい?

あの雄大な北の大地の景色を

君が変わっても僕は決して変わりはしない

僕は何時までも君を愛している。

今夜も何処かの星の下で・・

何時も君を抱きしめている。

今夜も何処かの星の下で・・

君の心を抱きしめている。


過ぎ去った時間は元には戻らない

でも僕達の想い出は永遠に消える事は無いだろう

夜行列車の窓から寂しげに顔を覗かせる君の顔を

僕は何時までも忘れない。

何時でも戻って来いよ!

そんな言葉を言うのがやっとだったあの頃・・

きっと僕は今よりも全然、子供だったに違いない。

今夜も何処かの星の下で・・

君の幸せを祈っている

今夜も何処かの星の下で・・

君の笑顔を夢見ている


何時か君が傷つきボロボロになって帰って来ても

この町は絶対に変わらずに君を優しく包み込んでくれるだろ

もしも、この街が変わって君を拒絶しても僕の思いは変わらない。

僕は君は永遠に抱きしめると誓ったのだから

だから安心して帰っておいでよ!

今夜も何処かの星の下で君の帰りを待っている。

だって僕は君の居場所だから・・・



Kenさんおめでとうございます!私、この詩を読んで泣いてしまいました!遠く離れた恋人への想いを詩にされたのですが?でも、失礼かと思いますがこの詩を読んでその相手の方は涙を流しながらこう言うだろうと思います!

「帰れないよ!だって夢の途中だもの」と、きっと涙をいっぱい瞳に溜めながら・・

この詩を書いた北海道在住のKenがあの安藤君であることは直ぐに解った。そしてその相手が誰なのかも。まいがブログで書いた最後の言葉が私の頭の中から消える事は無かった。

「帰れないよ!だって夢の途中だもの・・」

それはきっと、まいの安藤君へのメッセージだったに違いない。

安藤君の詩はB面に使われるそうだ。ならば、メインは??

さらに一週間後、まいのブログかまた更新される。

「デビュー曲が決定しました!」そんな題名の記事。


な・・なんと!あの有名な小説家のベッキー先生がまいの為に詩を書き下ろしてくれたのよ!まい!チョ~びっくりなんですけど!


そんな書き出しで始まったまいのブログ、そんな記事を読んで私のあの変てこな詩がデビュー曲に採用された事を知った。

「ロックが静かに流れる夜・・」

何ともベタベタな題名だ!やはり私には作詞の才能は無いらしい。そんなブログを読んでいると私の携帯が急に鳴る。

「どうも!加藤です!先生!覚えてらっしゃいますか?」

加藤?はて?誰だっけ??

「乙女委員会のプロデューサーの加藤です!」

「ああ・・加藤さん!お久しぶりです!何か??」

「ええ・・ご連絡が遅くなって申し訳無いのですがまいのデビュー曲の歌詞に是非、先生のお書きになった「ロックが静かに流れる夜・・」を使わせて頂きたいのですが!」

思わず使わせもなにも、もう発表してるじゃん!なんて思わず突っ込みたくなる

「それで正式なご契約を結びたいのですが・・どうでしょう!一度、山梨にお越し頂けませんか?もう直ぐ曲も完成いたしますので!」

「ああ・・こんな私でもまいちゃんのお役に立てるのならお伺いしましょう!」

こうして私の作詞家デビューが決まった。しかし、売れる見込みは99%無いのだが!

TV委員会のデビュー曲はアップテンポの私の曲とKenのバラードの2曲になった。

私が山梨に行った1ヶ月後にまい達のデビュー曲の発表の単独ミニライブが開催された。

「ベッキー先生!お久しぶりです!」

ライブ会場で久々に安藤君と会う。

「君だろKenって!」

そう私が彼に言うと彼は照れくさそうに笑った。

「凄く心に響く言葉だったよ!」

そう私が彼に言うと彼は少しだけ暗い顔をして呟いた。

「でも夢には思いは敵わないようです!」と






「先生!領収書を絶対に貰ってください!私が本間に怒られますから!」

酔っていても一応はこれが仕事であると言う認識はあるらしい。

私は笑顔で小さく頷いた。

「タクシーを呼んでもらうから!」

そんな私の言葉に友美は小さく首を左右に振りそれを拒否した!

「絶対に吐くと思います!歩きましょう!ホテルまでそんなに遠くないですから!」

ふらつく足を必死に動かしながら友美がそう言った。

「すいません!お酒なんか久しぶりに飲んだものですから!昔は送り狼殺しとまで言われた酒豪だったのに・・ダメですね!飲んで居ないと・・」

不意に友美がバランスを崩し私にしがみ付いた・・

私はその時、何であんな行動を取ってしまったのだろう?今でも正直、不思議である。

私はバランスを崩し私に寄りかかる友美をそのまま強く抱きしめていた。

「せ・・先生!ダメです!わ・・私!ダメです!」

友美のそんな言葉に私は意識を取り戻す。

「ああ・・ごめん!私も少し酔っているようだ!バランスを崩した!」

苦しい言い訳であった。なぜなら、私の両腕はそう言いながらも友美の細いひ弱な体をしっかりを抱きしめていたのだから。

「もぉ~勘弁してくださいよ!酔っ払いなんだから・・」

そんな私の行動を否定するかのように友美はそう笑いながら言った。

しかし、その目はあまりにも冷たく私を見つめている。そんな友美の視線を感じた瞬間に私の心はまるで凍るように感じられる。

友美は私の手を逃げるように振り解きフラフラとする足取りで歩き始める。

私を甘い香水の香が包み込み何とも言えない気持ちで友美の後姿を私は見つめていた。

次の日、何事も無かったような朝が勝手に訪れる。

私と友美は何事も無かったように朝食を済ませ静岡の町を目指して走り出した。

三島の駅で行きと同じように友美を降ろし私は近くのパチンコ屋に向かい少しだけ時間を潰した。今でも鮮明に友美の体の温もりとあの甘い香水の香が私の体に残っている。

ダメだ!ダメだ!あの女にこれ以上、関わってはいけない!そうだ!絶対に・・・

その時、私の台に熱めの演出が起こる。そうだ!この演出で当たらなかったら本間に言って担当を替えてもらおう!そうだ!それが良い!あの女に近づいてはいけない!神は私にそう忠告した。私は賭けをしてその神の言葉を現実の物に変えようとした。

当たるはずの無い画面に何時の間にか7が3個揃っていた。

画面に写る間抜け面の私の顔の横で悪魔が微笑んだ・・

どうやら私に付いているのは神では無く悪魔のようである。

彼は私に向かい優しく呟いた。

「地獄の扉は開かれた!ようこそ!地獄に・・」と

無事に20連の終わらない連ちゃんを終了させ自宅に戻ったのはもう10時を過ぎた頃であった。私は台所をあさり遅い侘しい夕食を食べていた。ふと隣の部屋から男と女の声が聞こえる。

「本当に女だったんだろうな!本間とグルになって俺を騙したんじゃないだろうな!」

「違うわよ!本当に女よ!」

「嘘言うな!俺に逆らうな!体に聞いてやる!本当に抱かれて無いか聞いてやる!」

「やめてよ!疲れているの!それに今夜はそんな気分じゃないの!」

バシッ!バシッ!数回、頬を叩かれる音が響き渡る。

「脱げ!その服を!汚らわしい男の匂いがするその服を脱げ!」

「止めて!あなた!勘弁して!だめ・・許して・・あぁ~~ん!だめ・・」

友美の何とも言えない拒否の言葉は何時の間にか淫靡なメスの喘ぎ声に変わっていた。

「俺が一番だろ!俺の事を愛してるんだろ!もって聞かせろ!お前の艶かしい声を!もっと!もっと!俺に聞かせろ!」

私は持っていた箸を床に叩きつけ両手で耳を覆った!

そして声にならない雄叫びを上げる・・

「止めてくれ!止めてくれ!抱かれないでくれ!そんな声を出さないでくれ!

俺をこれ以上!苦しめないでくれ!!」

私は何で泣いている?別にあの女と何の関係も無いのに・・

私は何で泣いてるのだ?

私はその場に蹲りただ、時間が過ぎるのを待っていた。

そんな事しか出来ない自分が情けなくまた涙がこぼれる。

意味の無い涙!なぜに自分が泣いてるのかも解らない涙

俺は彼女を愛してしまったのか?そんな馬鹿な!そんな馬鹿なことは絶対にない!

なぜなら私は二度と誰も愛さないと今日子と別れた瞬間に誓ったのだから。

友美の声が消えた

それと同時に私は深い眠りに堕ちて行った。

私はもしかしたら本当に地獄に堕ちてしまったのかもしれない。

次の日の朝、まいのブログを開くとデビュー曲の歌詞の募集の告知がされていた。

私は友美との約束をふと思い出す。

そして原稿用紙を取り出し歌詞を書き始める。

何時もなら勝手に頭に浮かんでくる文字がまったく浮かんで来ない。

やはり小説とは勝手が違うようである。

それでもその日の夕方にはなんとか歌詞を書き上げまいのブログから投稿した。

それから一週間後、まいのブログにある詩が掲載された。

「おめでとう!」そんな題名の記事にまいのデビュー曲の原型になる採用された歌詞が掲載された!北海道在住ken 題名「今夜も何処かの星の下で・・」