僕が死ぬ日・・生まれる日 -19ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「あんた、アメーバーのある人物のパスワードを手に入れられる?」

「えっ?誰のですか?出来ない事はありませんが・・・」

「そう!IDは解ってるのよ!それでなんとかお願い出来ないかしら?」

IDが解ってるなら直ぐに解ると思います!」

便利なオタクだと清美は薄笑いを浮かべた。

それから20分後に清美の携帯に須藤からメールが入った。

「本当は違法なんですよ!気をつけてくださいね!」

そんな題名のメールには雪のパスワードが記載されていた。

清美は管理画面からログインを行い雪の管理画面に繋げた。

雪と今日子が同一人物である事は確実らしい・・

今、まさに誠は今日子を捨ててこの雪と言う女を自分の手に入れようとしている。

これは使わない手は無い。

清美は雪の管理画面からポンにメッセージを送った。

「ポンさん!凄く悩んでいます。良かったら皆に内緒で相談に乗って貰えませんか?

メッセージだとお返事を見逃す危険性があるので直接メールを頂けませんか?」

そうメールを打ち最後に自分のメールアドレスを記載した。

自然と顔がほころんだ。とうとう・・時は来た!絶対にお前を地獄に落としてやる。

私が味わったあの苦しみをお前にも絶対に味合わせてやる。

清美は何度もそう呟きながらゆっくり送信ボタンを押した。

一つだけ不安が残された。ポンが自分が送ったメルアドを無視して返信で返事を送って来る可能性があると言う事だ。もしも、返信で返されたらこの計画は全てダメになる。

清美は祈るような気持ちで管理画面を見つめていた。

しかし、その心配は直ぐに解消された。メッセージを送って数分後に清美の携帯がメールの着信を知らせたからだ。

清美は震える手で携帯を取るとメールを開いた。

ポンからの返信メール・・

地獄の扉は開かれた!そしてその時から清美の復讐の始まりの合図であったのだ。

「君からそんな事を言われるとは思って居なかったよ!力になれるか自信はないけど気軽に話しかけてください。」

清美はそんなポンからのメールを薄笑いを浮かべながら見つめていた。

みゆきと言う女が私の「なう」に現れポンちゃんはあまり私の「なう」に来なくなってしまった。何度かポンちゃんにメッセージを送ったが結局返事は無い。

そして、仲間に入れてくれと言っていたみゆきさんもあれ以来、「なう」に姿を現す事はなかった。ふと、ポンちゃんとみゆきさんの間に何かあったのか?などと要らない詮索をしてしまう。まぁ・・大人なので何があろうとそれは基本的には個人の問題だと思うのだが

ただ、なんとなく嫌な感じがしたのはなんとなくな私の感なのかもしれない。

パートの仕事は自分が思っていた以上にハードな仕事であった。

そして、何よりも自分が会社員として働いていた時、以上にパートの世界の人間関係は複雑であった。そして元々、そんなに人間関係の要領が良くない私はそんな複雑な人間関係に困惑をしていた。

「あいつ、ちょっと生意気よね!」

3時間しか居ない職場なのにそんな陰口を何度、聞かされただろう。

私は要領が悪いのに他人の悪口や陰口を聞かされる事が苦痛であった。

川口さんと言う40代の女性のパートさんが居た。

なんとも仕事の要領が悪い絶好のいじめの標的になりそうな女性である。

そんな彼女を気遣って店長の石川は事あるごとに川口さんを気にかけていた。

そんな光景が面白くない数人のパート達がある日、川口さんに攻撃を開始した。

実に大人気ない子供じみたいじめ・・

私は見かねてそんないじめ軍団に注意をしてしまった。

「なに?あいつ・・新入りのくせに・・」

殆どの人間が余計な口を出す事がどれだけ自分のリスクになる事を知っている。

だからどんなに他人が酷いいじめにあっていても知らぬ存ぜぬを通すのだ。

ましてこの辺でここぐらい時給が良い職場など存在しない。

この職場を追われる事は生活に追われている主婦にとって大きな痛手であるに違いない。

そして次の日から私に対しての卑劣ないじめが始まった。

制服はゴミ箱に生ゴミまみれで捨てられていた。

あれだけ私に話しかけて来てくれた数人のパート達もその日から誰も口を聞いてくれなくなった。

事有るごとに私に対してのくだらない中傷が飛び交った。

そんな中、私は川口さんだけは自分の味方になってくれると信じていた。

だって、彼女の為に私はこんな状態になったのだ!そう言っても決して言い過ぎでは無いと思う。

「邪魔なんだよ!ゴミ!!」

そんな心無い言葉を言われながら私は多くのパート達に殴られ蹴られた・・

「助けて!」そんな目で川口さんを見つめる!

しかし、川口さんは私を助けようとしなかった。

それどころか、いじめグループの先頭になって私に罵声を浴びせた。

すがる様に私は川口さんを見つめる。

彼女はそんな私を見つめ薄笑いを浮かべて言った。

「あんた・・馬鹿ね!でも有難う!替わってくれて・・」と

私はこんな奴のためにこんな苦しみを背負ってしまったのか?

私は何とも言えない憤りを感じ唇を噛み締めた。

終わる事の無い卑劣ないじめ!私はきっと、ただのストレス解消の道具だったに違いない。

ポンと言うハンドネームで小説を書いてる居るらしい・・

そんな噂を聞いたのは今から2ヶ月前の事であった。

何気にパソコンを開きポンのブログを探し彼の書いた小説を読みながら清美は苦笑いを浮かべる。

彼らしいなんとも薄っぺらな小説である。しかし、結構人気があり、小説ランキングでは常に50位以内にランキングされている人気小説ブログである。

多くのポンと言うブログ小説家を崇拝するファンがそこでは毎日のように激励のコメントをコメント欄に残していた。

「皆のイメージを壊すといけないから、申し訳ないけどコメント返しは出来ません!

でも、その分の時間を作品に使いますから!」

なんとも彼らしい言葉だ!どうせコメント返しが面倒なだけなのに・・

ブログに「なう」と言う独り言の機能ある事を知ったのは彼のブログを読み始めてしばらくした頃の事であった。

私はみゆきと言うHNでとりあえずアメプロにブログを開設してみた。

その「なう」ではオーナーの独り言にフオローしてる読者が返信が出来る。

なんとも楽しそうな会話がポンと読者達の間で交わされていた。

こいつ・・何様?

清美はそんな会話を読みながらそう呟く。

そんな中で「みい」「雪姉さん」「ヒデちゃん」「ベッキー」とこの4人は仲良しグループのようでぽんも何気に気を許してるような会話をしてる。

私がこんなに孤独に苦しんでいるのに、なんであんたはそんなに幸せそうなの??

許さない!お前だけは・・絶対に許さない・・

お前に私と同じ屈辱と孤独を与えてあげる。

真っ暗な地獄に絶対にお前を落としてやる。絶対に・・

その日の夜から清美はポンのなうに頻繁に顔を出すようになった。

そして小説の更新がある度に頻繁にコメントを残した。

好きにならして振ってやる!お前が私を捨てようにもっと、もっと屈辱的に・・

お前の心の中に一生、みゆきと言う女が残るように・・

そしてお前が一生、みゆきと言う女の幻影を追い求めるように・・

しかし、清美の目論見は見事に外れる事になる。

ポンはみゆきと言う訪問者に好意を持つどころかかえって嫌悪感を感じ始めたのだ。

「なんか、ストカーみたいな女が居るんだ・・マジ!やばそう・・」

偶然に見つけたポンの発言に少しだけ清美は困惑した表情を浮かべた。

何か違う方法を考えないといけない!このポンと言う男を苦しめる・・

何か?違う方法を・・

そんな時に偶然に「みい」と言う女の「なう」で雪との会話を見つける。

ポンはもしかしたらこの「雪」と言う女に関心があるのかも??

そう感じ始めたある日、偶然に泣きながらトイレに駆け込む今日子の姿を目撃した。

清美の適当な想像はそんな今日子の姿を見た瞬間に確信に変わった。

この女も捨てられたんだ!ざあ~ない!誠は今日子を捨てて次の女を愛し始めている。

そして、その女は絶対にあの「雪」と言うネットの住人に違いない!

清美はそう確信すると、とりあえず雪と言う女がどんな女なのか探る事にした。

そして今夜、初めてみいのなうに書き込みをしたと言う訳だ。

清美は電源を落とすと静かにタバコに火を付けた。

雪?この女をどうにかしなければいけない。どうにか・・

そんな事を考えていると携帯電話が鳴った。

「清美さん!あいつのアドレスを入手できました。」

それは同じ課の須藤と言う男からであった。

あいつのアドレス??清美は須藤に今日子のアドレスを調べるように命令していた事忘れていた。

「ああ・・今日子のアドレスね!」

「ええ・・あと、あいつのメールボックスのパスワードも入手出来ましたよ!」

「へぇ~あなたにしては上出来ね!ご褒美は後日・・」

清美は自分の体を抱かせる事で社内でもネクラオタクで有名な須藤を手なずけていたのだ。

「はい!また、ご連絡をください・・愛しています。あなたの事を・・」

フッ!清美は何とも意味ありげな苦笑いを浮かべると静かに電話を切った。

電話を切り再びパソコンの電源を入れる。

今日子のメールボックスに繋がるように事前に須藤に自宅のパソコンに設定をさせていた。

しかし、今となっては今日子と言う女などはどうでも良い存在であった。

きっと、あの様子だとあいつが完全に誠に捨てられる日は近いに違いない。

しかし、清美は今日子のメールボックスの内容を見つめながらある重大な事に気が付いたのだ。

アメーバーからのお知らせ

そんな題名のメールが何度も送られて来ていた。

あいつもブログをやっているのか?開封済みのアメーバーからのメールを何個か開いて見てみる。

「雪姉さん様」

そんな言葉に清美の手は震えた・・・

そしてブログ関係と言うフォルダーから今日子のIDを探し出す。

もしかして・・そんな事・・本当に??

清美は須藤に直ぐに電話をした。

だからあの男以上の男性と出会う事が出来たのならきっと、自分は結婚するに違いない。だから私は「結婚できない」のではない!「結婚しないのだ!」

30歳を越えては居るが決して女を捨てた訳ではない。エステにも通っているしファッションにも興味はある。しょぼくれた独身女だけにはなりたくない!それに同年代の女性と比べたら自分は有る程度のランクの顔立ちだとも自負をしている。

あいつに捨てられなければ、自分は絶対に幸せになれたのに・・・

見得で買った高層マンションの窓から毎晩、新宿の夜景を見ながらお気に入りのブランディーを飲んでいる。そんな時に不意に清美はよく呟くのだ。

「なんで!私はこうなってしまったの?」と・・

大きな瞳から溢れんばかりの涙を浮かべながら・・・

今から13年前、清美は大学を卒業しある貿易会社に就職した。

その時、新人研修で一人の男性と同じ班になってしまったのが、そもそも清美の不幸の始まりであった。

その年は美人が多く、社内の独身男性は「豊作」などと言う言葉を使いながら色めき立っていた。

清美も当時は社内で№1かと言われるほどの美人であった。

偶然出会った一人の男・・彼の名前を坂本誠と言った。

二人が恋に落ち特別な関係になるのにそんなに時間はかからなかったと思う。

入社して一年目のある晩に誠に綺麗なピアスをプレゼントされた。

夜景が綺麗なレストランで飲みなれないワインに酔いながら清美は恋に落ちた。

それから二人は6年程、付き合う事になる。

その間に多くの同僚達が適当な相手を見つけて寿と呼ばれこの会社を去って行った。

言い寄る男が居なかった訳ではない、上司から条件が良い見合いの話も沢山あった。

しかし、清美はそれらを全て断り、誠のある言葉を待ち続けていたのだ。

「結婚しょう!お前を絶対に幸せにするから・・」

そんな言葉を・・

誠の自分に対する態度がおかしいと思い始めたのは付き合い始めて7年目の事である。

その間、清美は別に結婚について誠に催促した事など一度も無い。

偶然に見かけた一組のカップル。

そこは清美が誠に愛の告白をされた夜景の綺麗なレストラン・・

「接待で今夜は会えない・・」

そんな言葉を信じた自分が情けなく、清美は窓際の席で楽しそうにワインを飲んでいる誠を美しい相手の女性をただ、見つめていた。

「別れよう!」

そう誠に言われたのはその日から一週間後の日曜日であった。

始まりのレストランに誠に呼び出され、清美は終わりを告げられた。

それから2年後、誠はその女と結婚した。安藤友美と言う名の女。

誠と同じ営業1課のマドンナ的存在の女性であった。

嫌味なのか清美の自宅に二人の結婚式の招待状が友美から送られて来た。

当時、清美はもう既に社内では古株の女子社員として恐れられていた。

別に意地悪とか怖いとかではない。女の世界は男と違い実に複雑なのである。

この友美と言う女は多分、清美が誠の女で合った事は知らないはずである。

そうだ、社内で二人が付き合って居た事を知る人間は一人も居なかったのだから・・

清美は送られて来た招待状を握り締めながら、ただ、泣いた・・

「本当は私の名前が横に載るはずだったのよ!」

そんな言葉を呟きながら・・

それからしばらくして、総務課に在籍していた清美は友美の代わりに営業課に移動になった。実は清美本人が移動願いを出していたのだ。

少しだけ清美の事を疎ましく思っていた上司はその願いに快く応じた。

まだ忘れる事が出来なかった。結婚などもう望んで居なかった。でも側に居たかった。

誠の側に何時も居たかった。清美はそんな女だった・

誠が結婚して2年目に一人の新入社員が営業課に配属された。

彼女の名前を佐藤今日子と言った。

髪の長い色白の誠が好きそうな女であった。清美はなんとなく不安な気持ちになりながら今日子の挨拶を聞いていた。

それから半年後のある晩、清美は偶然に誠と今日子の姿を新宿の街で見かけた。

今日子は幸せそうに誠の肩に寄りかかりながら歩いていた。

向う先は解っていた。新大久保のラブホテル街・・・

「私は何であんな男が好きなんだろう??何で忘れられないの??」

そう叫びながら清美はその場に座り込んだ。

その晩、浴びるように酒を飲み見ず知らずの男に抱かれた・・・

男のタバコ臭い息を感じる度になぜか涙がこぼれ出した。

「どうだ!気持ち良いか??どうだ・・」

男のそんな言葉にわざと淫靡な目つきで男を見つめ呟く・・

「もっと、メチャクチャにして!もっと・・」と

男に激しく抱かれる度に誠への思いは愛から憎しみに変わって行く・・

「あいつにさえ会わなければ・・あいつにさえ・・」

清美は見ず知らずの汚らわしい男に体を愛撫されながら悪魔に魂を売った・・

復讐してやる!あんな奴の家庭なんか絶対に壊してやる!

そしてあいつの人生を地獄に落としてやる・・

その晩から清美の生きる希望は愛を貫く事から復讐に変わった・・

最近、清美はある情報を手に入れた。

誠は最近、ブログにはまっていると言う情報を・・