僕が死ぬ日・・生まれる日 -20ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

私も朝、旦那を送り出すとよくモーニングを食べにこの店に来ている。

何とも美味そうなコーヒーの香が店内を包み込み何とも言えない空間を作り出している。

一つ笑えるのはマスターは何時もそんな絶品の自分が入れたコーヒーは飲まずにインスタントのコーヒーを飲んでいる事だ。

ある日、マスターに「何で飲まないの?」と聞いたら彼は笑いながら・・

「これは売り物だからね!お客様にしか出さないのさ!私のような人間はインスタントで十分なんだ!」と呟く。

最近、知った事だが、実はマスターはコーヒーがあまり好きではないらしい。

そう聞いてよくマスターを見ていると何時も飲んでいるのは紅茶であった。

マスターは何時も暇な時は本を読んでいるか、何かカウンターの奥に置いてあるパソコンのキーを叩いている。何時か私が「マスターはブログとかやらないの?これだけ本好きなら自分のお勧めの本とかを紹介するブログを作れば良いのに!結構、人気が出ると思うよ!」といった事がある。

そんな私の言葉に彼は苦笑いを浮かべながら言った。

「私はどうも文字を書くのが苦手でね!」と

そんなマスターの言葉を横で聞いていた一人の老人が楽しそうに笑っていた。

最近、聞いた話だが実はマスターは「花子」と言うペンネームで小説を書いている本物の小説家の先生らしい。

「花子」、そう言えばあまり読書をしない私でも何度かは聞いて事がある名前であった。

私は知らぬ事とは言え、本物の小説家に偉そうに文字について能書きを熱く語っていた事に赤面した。

その日も私は旦那を送り出すとパートに行く前に「寄り道」で寄り道をしてパート先に向った。最近は大分、仕事にも慣れて従業員達とも気軽に話が出来るようになって来た。

しかし、店長とはどうしても話が上手く出来ない。

それはパート仲間の共通な感じだと最近知った。

どうもあの店長は話にくい。何時も不機嫌そうにしているから・・

その反面、副店長は笑顔を絶やさず話しやすいと評判である。

「今日も一日、お疲れ様ね!」

「なう」に一日を終えそう書き込む瞬間がなんとなく一番、安らぎの時間に最近なっていりる。旦那は相変わらず帰宅して夕食を食べると逃げるように書斎に行ってしまう。

たまにテレビも何も無いあの部屋で彼がいったい何を深夜までしているのか知りたいと思う事がある。

しかし、世の中には知らない方が幸せな事もある。何かを知る事は必ずしも正解では無いのだと私は思っている。だから、探る事はしない。

ただ、何となくポンちゃんの言葉を思い出す。

本当に彼は不倫をしてるのだろうか?と・・

「皆は夜、自宅に帰ったら何をしてるの?」

そんなどうでも良い独り言を書いてみる。

「僕は早く帰れた日は子供の世話に追われています!」

そう書いて来たのは子煩悩のヒデちゃんであった。

「私はどうだろう?最近は家に帰りたくないの!だから夜の街をさ迷っている」

雪ちゃんがそう書き込みをすると直ぐに

「私は自分の部屋にこもって小説を書いています!」とポンちゃんが書き込みをした。

みんなの書き込みを見ているとあまり奥さんと会話をしてるようには感じられない。

やはり何処の家も同じような物なのかもしれない。

すると突然に見慣れない訪問者が現れた。

HNみゆき・・・

「突然に失礼します!よろしければ私も仲間に入れて頂けませんか?ポンさんの板から参りました!みゆきと申します。」

そんな書き込みにポンちゃんは何も言葉を発しなかった。

仕方が無いので私が書き込みをした。

「別に勝手に集まっている仲良し5人組です!お気軽に発言してください!」と

すると直ぐに私のブログのメッセージ欄にメッセージが送られて来た。

送り主はポンちゃん

「あいつには関わりにならない方が良い!」

そんな言葉にポンちゃんはあまり「みゆき」と言う住人を好きでない事が感じられた。

「ありがとうございます!時間がある時に遊びに来ますね!ポンさんの「なう」に常駐していますから皆さんもお気軽に私に話しかけてくださいね!」

そうみゆきは書き込むと姿を消した。

「あいつ嫌いなんだよね!なんとなく・・」

メッセージにそう再びポンちゃんからメッセージが届く。いったいどんな感じの人なのか?少しだけ迷惑に思った。

せっかく仲良くやっているのに・・・何となくこの世界を壊されたく無いと・・

佐々木清美は、みいの「なう」への書き込みを終えると静かにパソコンの電源を落とした。

最近、こんな感じの夜を毎晩のように過ごしている。

同期入社の同僚たちは皆、数年前に寿なんとかで退社してしまった。昔からの友人も居るが皆、結婚してるのでどうも話が合わない。

社内では「おつぼね」なんてあだ名で言われている事は十分に知っている。まだ35歳なのに40歳を越えていると噂をされている事は少しだけ心外であった。

結婚できない女と言われる事を屈辱だと思っている。自分は決して結婚が出来ない訳ではない。結婚をしないのだ!昔した忘れられない恋愛で愛した男の事を今でも忘れられず引きずっていた。

ヒデちゃんは確かに話しやすい。でもなんとなく何時も言葉に重みが無いような気がしていた。自分の事を真剣に心配してくれるいるのは凄く感じられる。でもなんとなく頼る気持ちにはなれない。反対にポンちゃんは言葉が重過ぎる。なんか不倫の相談なんかしたら大事になりそうな感じがする。こんな二人を2で割ったような感じの存在がきっと、ベッキーに違いない!今日子はそんな事を思いながらベッキーにメッセを送った。

「なんか、落ち込んでいます!迷惑でなければ話聞いてもらえませんか?皆には内緒でお願いします!」

そんなメッセを送るとその日の夜にベッキーから返事が来た。

「上手く返事が出来るか解りませんが、私で良ければお気軽にお話ください!」

そんなメッセに少しだけ安心をした。

みいさんの「なう」が更新された。そう言えば今日がパートの初日だったな!そう思いながら今日子はみいの「なう」を開いた。

「無事に初パート終了して来ました!」

私は旦那が書斎に入るとパソコンの電源を入れ自分の「なう」にそう書き込みをした。

すると直ぐにネットの住人たちが現れた。

「お疲れ様!みいちゃんどうだった?」

そう最初に書き込んで来たのはヒデちゃんだった。

「うん!なんか感じの悪い店長だったけどなんとかクリヤ~」

「マジ!居るんだよね!そんな感じの悪い奴!同じスーパーの人間として恥ずかしい!」

「ヒデちゃん!スーパー関係なの?」

「あっ!言って無かったかい!そうだよ!おいらも店長様だ!」

ヒデちゃんがスーパーの店長だったとは意外であった。

私的には会社の社長さんみたいなイメージがあったのだが・・

「でも旦那に内緒だからばれないようにしないとね~」

そう書き込むと今度はポンちゃんが現れた。

「みいさん!旦那に黙ってパート始めたの?ばれたら怒られるんじゃないの?」

「そうね!でも大丈夫よ!ばれない自信があります!ポンちゃんの奥さんも働いているの?」

そう私が彼に尋ねると彼は言った

「いや、僕はね!奥さんを働かせない主義なの!」と

「何で?そう言えばうちの旦那様もそうなんだけど・・その働かせない主義はなんとなく横暴よね!」

「前にも言っただろ!浮気が心配なんだよ!浮気が・・」

「あら、ポンちゃんもそんな事をしているの?意外だわ!」

「いや、僕は違うけどね!一般論だよ!一般論!でも、みいさんの旦那は解らないぜ!

もしかして??」

「そうね!男なんて皆ね~~~」

「それは心外だな!男が全て浮気性とは限らないぜ!おいらなんか嫁さん一筋だもん!」

そう横からヒデちゃんが入って来て何気に浮気論で盛り上がっていた。

「浮気する男なんてサイテーよね!」

そう書き込んで来たのは雪ちゃんでベッキーは今夜は現れないようであった。

私の自宅の少しは離れた所に一軒の喫茶店が営業をしている。

店の名前は「寄り道」

なんとも不思議な喫茶店でその店が閉まっている所を私は見た事が無い。

朝も5時くらいに何時もの日課のウォーキングをしながら通りかかると店の明かりはついているし深夜遅く帰宅した時の店の明かりはついてる。24時間営業の年中無休の喫茶店である。

「寄り道」は早朝から混んでいる。朝はモーニングを食べる通勤前の会社員でそしてお昼は絶品のランチを求め暇な主婦達の溜まり場である。

深夜はお酒も出している。しかし、午後の6時以降はあまり近所の人間は近寄らない。

最初の頃は不思議に思っていたがしばらくしてその謎が解明された。

午後の6時を過ぎ喫茶店からバーに変わると次々と体つきの良い女性達が集まり始める。

それにしても体格が良い。何度かそんな光景を目撃していて実に不思議だと思っていた。

旦那は殆ど最近は家に居るが少し前までは出張だと言ってはよく家をあけていた。

そんなある日、私は勇気を出して「寄り道」に入ってみる。

入ってみて私はその光景に唖然とした。

「いらっしゃい!」

そんなマスターの気さくな声に一斉に客達が私を見つめた。

お・・男よね・・この人達は・・

そう、ここは女装男子の溜まり場だったのだ。

綺麗に着飾った女?達が楽しそうに酒を飲みながら自慢話をしていた。

ドギツイ香水の香に包まれた店内に昼間のコーヒーの何とも心地よい香はかき消されていた。

その日から私はこの店の常連になった。何とも居心地が良い場所を発見したような気になったからだ。

マスターを皆は花子さんと呼んだ。花子さんの本名は山田政信と言うらしい。

しかし、それも噂で聞いただけなので定かではない。

花子さんの店には溢れるほどの小説が店の本棚に収められている。

何でも初版のハードカバーを集めるのが唯一の趣味だそうだ。

店の奥には読書スペースとなっていて座り心地のよさそうな椅子が数台置かれている。

暇な読書好きの老人達がマスターご自慢のスペシャルコーヒーをチビチビ飲みながら一日中読書をしていた。

きっと、メッセでポンちゃんに返事をしてるには違いないと思って居たがそれでも私も書き込みをしたのだから返事が来ても良いのでは?なんて少しだけ不満に思う。

なんとなくポンちゃんのあの心配用はただ事ではない様な気がした。

もしかしたらポンちゃんは雪ちゃんの事が好きなのかもしれない。まぁ~お互い独身同士だからこんなおばさんが出る幕ではないないのだが・・

ポンちゃんはヒデちゃんが雪ちゃんの相談に乗っているかも知れないことを知ってるのだろうか?そう考えると少しだけ嵐の予感がしたのは私だけなのかもしれない。

長いような短い一日が終わった。まぁ~3時間だからそんなに長くは無い。

しかし、私は久々の仕事に何とも言えない充実感を持っていた。

「佐藤さん!お疲れ様!どうでした?疲れませんでしたか?」

帰り際に店長にそう言われ私は笑顔で言った。

「大丈夫です!今後もよろしくお願いします!」と

丁度、そんな頃、ポンちゃんは雪ちゃんにメッセを流していた。

「いったい何があったんだ?死にたいなんてただ事では無いだろ??」

そんなメッセを雪ちゃんは仕事場で受け取っていた。

雪ちゃんは少しだけポンちゃんが苦手であった。

何と言うのか?凄く真面目とでも言うのだろうか?なんとなく言葉が重い・・

40代という事と結婚してる事だけは知っているけどそれ以外は殆ど彼がどのような人間かは知らない。ブログで日記でも書いてる人間ならばこんな感じの人?と言うイメージが湧くのだが残念な事にポンちゃんは小説書きである。彼の作品はなんとなく今風と言うのだろうか?学生が好みそうな俗に言う携帯小説のような感じの話でレイプとか妊娠とか!

主人公が不良で重い病気とか・・なんとなくありがちな話が多い。しかし、結構な人気ブログで読者も多いしランキングも常に上位に居る。反面、同じ小説を書いているベッキーさんは、まったく作風が違い大人のドロドロした恋愛話的な内容が多い。

ベッキーさんもそれなりに人気はあったがポンちゃんには何時も敵わないでいた。

しかし、今日子的にはポンちゃんの小説よりもベッキーの話が好きで毎日の更新を心待ちにしている読者の一人であったのだ。

今日子は正直、何とポンちゃん言えば良いか悩んでいた。ある意味、めんどくさいとまで心の何処かで思っていた。見た事も無い人間で現実的な自分の生活には何の影響も及ぼさない相手である。別に嫌われても痛くも痒くも無い!でも何となくこの5人の絆を自分が壊すわけにはいかない。ネットでの人間関係はある意味、利害関係無い分、面倒な所があるような気がする。

「実は失恋してしまってね!」

そんな無難な答えをやっとの事で今日子は選び出し「でも、復活したからね!」とこれ以上、関わりにならないでくれと無言のメッセージを送る。

するとポンちゃんから直ぐに返事が来て。

「姉さんを振る大馬鹿も居るんだね!」と何となく意味ありげな返事を返してきた。